説明

硬化性組成物

【課題】 シーリング材の施工を、硬化時の温度に影響されずに、特に冬場の低温下(例えば5℃)においても硬化後に良好な表面艶消し状態を与える硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはリン酸カルシウム等の多孔質無機カルシウム化合物の平均粒径が5−200μm、含有量が0.5−5重量%であり、更にアミン化合物を含む加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする艶消し硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物、詳しくは、硬化性組成物を例えば建築用シーリング材に適用する場合に、硬化時の温度に影響されずに、硬化後の表面が艶消しされ得る硬化性組成物に関する。
本発明はまた、その物性を低下させずに、硬化後の表面の良好な艶消し性と良好な非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)とを得ることのできる硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ポリマー材料を用いたシーリング材は従来知られており、これらは土木、建築または電機等、多岐の用途にわたり使用されている。これらのシーリング材は、使用目的や使用場所によっては、硬化後の表面を艶消し状態とすることが求められる。
例えば建築用にシーリング材が適用される場合、最近、シーリング施工後の硬化した表面に過度の艶が出る、いわゆる「てかり」感を回避するため、シーリング材の物性を低下させずに艶消しを付与する対策が望まれている。
【0003】
艶消しを付与する方法の一つとして、粒径の比較的大きい充填材や多孔物質を添加することが知られている。このような充填物や多孔物質には、例えば、平均粒径10〜80μmのガラスビーズ、シリカビーズ、アルミナビーズ、カーボンビーズ、スチレンビーズ、フェノールビーズ、アクリルビーズ、多孔質シリカ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、サランバルーン、アクリルバルーン等が含まれる(特許文献1〜3参照)。しかし、このような充填剤や多孔物質を添加した場合には、引っ張り物性が低下して、シーリング材としての充分な物性を有するものが得られにくくなる等の欠点があった。
【0004】
上記問題へ対応するため、例えば、特許文献1には、硬化後の表面が艶消しされた室温硬化性組成物として、架橋可能な加水分解牲シリル基を末端に有するプロピレンオキシド重合体、融点が10〜200℃であるアミン化合物、融点が10〜200℃であるアミド化合物、融点が10〜200℃である脂肪酸、融点が10〜200℃であるアルコール、及び、融点が10〜200℃である脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物からなる室温硬化性組成物が開示されている。しかし、このような室温硬化性組成物は、艶消し効果は問題ないものの、耐候性が不充分であることが指摘されている(特許文献4)。
【0005】
また、特許文献4には、耐候性が向上され、貯蔵安定性に優れ、貯蔵後も充分な艶消し性及び防汚性を与える目的として、架橋性シリル基含有有機重合体、アクリル系重合体、水と反応してアミン化合物を生成する化合物、及び硬化触媒を含有する硬化性組成物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−100408号公報
【特許文献2】特開2001−164237号公報
【特許文献3】特開平7−113073号公報
【特許文献4】特開2004−124093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの艶消し剤を配合した組成物を用いると、シーリング材の施工を、夏場を含む通常の温度下で行う場合には良好な艶消し表面が得られるものの、冬場の低温下(例えば5℃)では、充分な艶消し表面が得られにくい場合があった。
従って、シーリング材の施工を、硬化時の温度に影響されずに、特に冬場の低温下(例えば5℃)で行った場合であっても、硬化後に充分な艶消し表面を得ることのできる硬化性組成物を開発すべき課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記課題は、多孔質無機カルシウム化合物を含有する硬化性組成物よって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、例えばこれを建築用シーリング材に適用する際、硬化時の温度に影響されずに、好ましくは5〜50℃の範囲で硬化させた場合に、硬化後に良好な艶消し表面を得ることができる。
アミン化合物を更に含む本発明の硬化性組成物をシーリング材に適用すると、その物性を低下させずに、硬化後の表面の良好な艶消し性と良好な非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)とを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硬化性組成物において、シーリング材に適当な従来公知の任意のポリマーをその主成分として使用できる。このようなポリマーの具体例には、シリコーン系ポリマー、変成シリコーンポリマー、アクリル酸エステル等をベ一スとするアクリル系ポリマー、ポリサルファイド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、SBRやブチルゴム等のゴム系ポリマー、アルキッド系ポリマー等が含まれる。なかでも、加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする硬化性組成物が好ましい。加水分解性シリル基含有ポリマーとしては、変成シリコーンポリマーおよび/またはアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーが好ましく、特に、アルコキシシリル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー中でアルコキシシリル基を含有するアクリル系ポリマーを重合させることで得られるアクリル変性系変成シリコーンポリマー(代表的市販品としては(株)カネカの「MSポリマー S−943」を例示し得る。)が好ましい。
【0011】
本発明における変成シリコ一ンポリマーとは、ポリオキシアルキレンエーテルを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に加水分解性基(例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基など)を有するシリル基をもつ液状ポリマーを指称する。なかでもポリオキシプロピレンエーテルを主鎖とし、数平均分子量が9000〜25000のものが好ましい。
【0012】
本発明におけるアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーには、例えば以下のポリマーが含まれる:
(i)特公平3−80829号公報に開示された、(a)アクリル酸アルキルエステル(アルキル炭素数は好ましくは2〜4)(例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等)と、(b)ビニルアルコキシシラン(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等)および(メタ)アグリロキシアルコキシシラン(例えばγ一メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物とを、連鎖移動剤としてメルカプトアルコキシラン(c)(例えばγ一メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)の存在下で、ラジカル共重合[通常、α,α’−アゾビスイソブチロ二トリル(AIBN)、α,α’−アソビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシドなど重合開始剤を用いて公知の塊状重合、溶液重合などの手法;あるいはレドックス触媒、例えば、遷移金属塩、アミン等と過酸化物系開始剤を組合せたレドックス重合法により]させることによって製造されるもの(通常、数平均分子量3000〜100000,1分子中の平均アルコキシシリル基数1.5〜3個);および
【0013】
(ii)特公平4−69667号公報に開示された、ビニル系モノマー[例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクレート、プロピルアクリレート、ペンチルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート;スチレンもしくはその誘導体(α−メチルスチレン、クロルメチルスチレンなど);ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジプロピルフマレートなどのフマル酸ジエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニレンなどのハロゲン化ビニル類等]100部(重量部、以下同様)に、アルコキシシリル基含有ジスルフィド化合物[例えばビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等]0.05〜50部を加え、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレートなど)中で光重合(常温乃至50〜60℃で、4〜30時間の光照射)に付すことによって製造されるもの。
【0014】
かかるアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーを硬化性組成物の主成分として用いると、例えばシーリング材に適用した場合の薄膜耐候性(薄層部の白化現象抑制)を向上させることができる。
【0015】
前記のアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーに代えまたはこれに加えて、高温・高圧で連続塊状重合によって得られる、常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーを使用してもよい。
上記無溶剤型アクリル系ポリマーは、官能基を有しないアクリル系モノマー[たとえば上記のアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーの重合法(ii)で用いるようなアクリレートやメタクリレート]を用い、たとえば400℃付近の高温・高圧で連続塊状重合(開始剤は極少量もしくは不要、連鎖移動剤は不要)により、極めて短い反応時間(5分程度)で製造することができ、100%ポリマーおよび低Tgの常温液状を呈し、かつ変成シリコーン系ポリマーとの相溶性が良好で(∵組成分布・分子量分布が狭い)、優れた耐候性を付与する。代表的市販品としては東亞合成(株)製、「ARUFON UP−1000」を例示し得る。
【0016】
本発明における加水分解性シリル基含有ポリマーには、加水分解性シリル基含有イソブチレン系ポリマー(以下、単にイソブチレン系ポリマーと称す)も含まれる。イソブチレン系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくともイソブチレン単位で構成され[要すれば、イソブチレン単位以外に、イソブチレンと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子両末端に加水分解性シリル基、例えば式:
【化1】

[式中、RとR’は同一もしくは異なって、炭素数1〜5の低級アルキル;および。cは1〜3の整数である]
のアルコキシシリル基を含有し、好ましくは数平均分子量1000〜40000で常温ワックス状ないし高粘度液状のものを指称し、一般に、イニファー法と呼ばれるカチオン重合法で得られる全末端官能型イソブチレン系ポリマーを用いることにより製造することができる(特開平8−231758号公報参照)。代表的な市販品としては、式:
【化2】

[式中、nは5〜400およびmは5〜400である]
の化学構造を有する、(株)カネカ製の「エピオン」シリーズが例示される。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、多孔質無機カルシウム化合物を含有する。本発明の硬化性組成物において使用する多孔質無機カルシウム化合物は、硬化後のシーリング材に良好な艶消し表面を付与するためのものである。このような多孔質無機カルシウム化合物は、花弁状の結晶構造を有することが好ましく、その平均粒径は5〜200μmであることが好ましい。平均粒径が小さ過ぎると、多量に配合しても良好な艶消し表面が得られないばかりか、組成物の粘度が上昇するため作業性が悪化することがある。逆に、平均粒径が大きすぎると、硬化物が脆くなり伸長性などの物性が悪化することがある。平均粒径は10〜150μmがより好ましく、更には20〜100μmが好ましい。
【0018】
このような多孔質無機カルシウム化合物の具体的としては、多孔質珪酸カルシウム、多孔質炭酸カルシウム、多孔質リン酸カルシウム等が挙げられ、特に多孔質珪酸カルシウムが少量配合でも艶消し効果に優れる点から好ましい。なお、これら多孔質無機カルシウム化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上の混合物、複合体、反応物であってもよい。
【0019】
前記の多孔質珪酸カルシウムは、一般式:
2CaO・3SiO・mSiO・nH
[式中、mおよびnは、1<m<2、2<n<3である。]
で表され、その結晶構造はジャイロライト型であることが好ましい。
【0020】
前記の多孔質炭酸カルシウムとしては、一般式:CaCO3で表され(製造工程において添加されるリン系化合物、キレート化合物、あるいは表面処理剤としての脂肪酸、樹脂酸などを含むことがある。)、その結晶構造はカルサイト型であることが好ましい。
【0021】
前記の多孔質リン酸カルシウムとしては、非晶質リン酸カルシウム〔略号ACP、化学式Ca3 (PO42 ・nH2 O〕、フッ素アパタイト〔略号FAP、化学式Ca10(PO462 〕、塩素アパタイト〔略号CAP、化学式Ca10(PO46Cl2 〕、ヒドロキシアパタイト〔略号HAP、化学式Ca10(PO46 (OH)2 〕、リン酸八カルシウム〔略号OCP、化学式Ca82 (PO46 ・5H2 O〕、リン酸三カルシウム〔略号TCP、化学式Ca3 (PO42 〕、リン酸水素カルシウム(略号DCP、化学式CaHPO4 )、リン酸水素カルシウム二水和物(略号DCPD、化学式CaHPO4 ・2H2 O)等が例示でき、一種又は二種以上でもよく、中でも組成の安定性が高いという観点からヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウムが好ましく、ヒドロキシアパタイトが特に好ましい。
【0022】
本発明の硬化性組成物において使用する多孔質無機カルシウム化合物は、多数の細孔を有することに特徴があり、硬化後のシーリング材に良好な艶消し表面を付与するためには、連通する0.01〜1μmの細孔を有するものが好ましい。このような多孔質無機カルシウム化合物は、比表面積および吸油量が大きいものである。BET法による比表面積は100〜450m/gであることが好ましく、JIS K 6220による吸油量は300〜600mL/100gであることが好ましい。
【0023】
前記の多孔質珪酸カルシウムとしては、例えば特公昭60−29643号公報、特開昭63−45115号公報等に開示された、従来公知の種々の方法により製造されたものを使用でき、代表的な市販製品としては徳山曹達(株)製の「フローライト」「ソーレックス」シリーズを例示し得る。
また、前記の多孔質炭酸カルシウムとしては、例えば特開平9−183617号公報、特開平08−198623、特開2003−277050号公報等に開示された、従来公知の種々の方法により製造されたものを使用でき、代表的な市販製品としては白石工業(株)製「ポアカル−N」、「カルライトKT」(いずれも多孔質炭酸カルシウム)、(株)白石中央研究所製「IK−3000」、(有)ニューライム研究社製「PS−35A」(花弁状多孔質炭酸カルシウム)を例示しうる。
また、前記の多孔質リン酸カルシウムとしては、例えば特開平9−25108号公報等に開示された、従来公知の種々の方法により製造されたものを使用できる。
【0024】
このような多孔質無機カルシウム化合物は、本発明の硬化性組成物中の含有量が0.5〜5重量%となるよう配合することが好ましい。硬化性組成物中の含有量が少な過ぎると充分な艶消し性が付与されないことがあり、含有量が多過ぎると組成物の粘度が上昇するため作業性が悪化しやすく、またシーリング材の基本性能が損なわれることがある。本発明の硬化性組成物中の多孔質無機カルシウム化合物含有量は1.0〜2.5重量%であることがより好ましい。
【0025】
本発明の一つの実施態様において、硬化後の表面に良好な艶消し性および/または非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)を付与するために、硬化性組成物中にアミン化合物を更に配合することが好ましい。
【0026】
本発明の硬化性組成物中におけるアミン化合物の含有量は、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な艶消し性および/または非自己汚染性を付与する観点から、0.02〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。また、アミン化合物と多孔質無機カルシウム化合物の含有比率(重量基準)を5/1〜1/50とすることが、艶消し性と汚れ防止性(非自己汚染性)の観点から好ましい。
【0027】
このようなアミン化合物としては、硬化性組成物に適した従来公知の任意の化合物を使用することができる。その具体例には、ラウリルアミン、ステアリルアミン、トリベンジルアミン、ココアルキルアミンなどの融点10〜200℃のアミン化合物(例えば特開平9−100408号公報を参照)が含まれる。
アミン化合物として、融点が35℃以上、好ましくは50℃以上の、アミン表面に微粉体が固着された微粉体コーティングアミンを選定することが、その物性を低下させずに、硬化後の表面に良好な艶消し性と良好な非自己汚染性を付与する観点から特に好ましい(例えば特開2002−30227号公報を参照)。
【0028】
本発明で好ましく用い得る上記微粉体コーティングアミンは、融点50℃以上および中心粒径20μm以下の固形アミンの表面に、中心粒径2μm以下の微粉体を、該固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5となるように固着させて、表面の活性アミノ基を被覆したものである。このような微粉体コーティングアミンは、例えば固形アミンを中心粒径20μm以下に粉砕しつつ、同時にこれに微粉体を加えてその中心粒径2μm以下となるように混合粉砕するか;または予め中心粒径20μm以下に微粉砕した固形アミンを、中心粒径2μm以下の微粉体と共に、高速衝撃式混合撹拌機、圧縮せん断式混合撹拌機または噴霧乾燥装置を用いて固形アミンの表面に微粉体を固着させることにより製造することができる(特開2000−117090号参照)。
【0029】
上記固形アミンとしては、融点50℃以上の芳香族または脂肪族に属する任意のものが使用されてよく、たとえば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、2,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン等の芳香族、1,12−ドデカンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン等の脂肪族が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供してよい。かかる固形アミンは、中心粒径20μm以下、好ましくは3〜15μmに調整する。
【0030】
上記微粉体としては、無機系または有機系の中から任意に使用することができ、たとえば無機系物質として酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ジルコニア、カーボン、アルミナ、タルク等、また有機系物質としてポリ塩化ビニル、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供する。使用量は、固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5、好ましくは1/0.002〜0.4となるように選定する。
かかる微粉体コーティングアミンは、本発明の硬化性組成物中に0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で含有させればよい。0.05重量%未満では、硬化物表面の艶消し効果が発揮されず、また3重量%を越えると、硬化物表面に白化現象が著しく発生し、表面外観上の難点となる傾向にある。
【0031】
本発明に係る硬化性組成物は、上記所定割合のポリマーと多孔質無機カルシウム化合物、および必要に応じ、微粉体コーティングアミン等のアミン化合物を配合したものであって、通常、これに硬化触媒および着色剤を加え、有機溶剤に溶解した系で構成される。
上記硬化触媒としては、たとえばジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジエチルヘキサノエート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビスエトキシシリケート、ジオクチルスズオキサイドなどのスズ系触媒やテトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルエチルアセトアセテートなどのチタン系触媒等が挙げられる。
上記着色剤としては、たとえばベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料等が挙げられる。
上記有機溶剤としては、たとえばトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン系高沸点溶剤等が挙げられる。
【0032】
本発明の硬化性組成物は、これを特に建築用シーリング材等として用いる場合には、硬化物に意匠性を付与するため、平均粒径が30〜500μm(より好ましくは70〜400μm)の粒子(多孔質無機カルシウム化合物の粒子、アミン化合物の粒子を除く)を更に含有することが好ましい。このような粒子は無機系および/または有機系の物質から構成されてよく、また、球状(真球、楕円球、扁平球、中空)、粒状、立方形、直方形、鱗片状、針状、繊維状など任意の形状のものを使用し得る。その具体例としては、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、窒化珪素、合成ルビー、サファイヤ、ガラス粉、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、シリカ、ウレタン樹脂、珪砂、非孔質の炭酸カルシウム,寒水石、ガラスビーズ、シラス、セラミック、サラン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、珪石粉末、珪砂、シリカ、ゴム粉、粉砕したシーリング材硬化物、マイカ、タルク、木粉、金属粉、ガラス繊維、金属繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイトなどを挙げることができる。
なかでも、アクリル系樹脂から構成される有機粒子を用いると、硬化剤組成物に耐熱性、耐溶剤性または耐候性を付与し得るとともに、硬化表面に良好な艶消し性、若しくはマット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用に適した意匠性を付与することができる。このようなアクリル系樹脂粒子は、その耐熱温度が150〜300℃であることが好ましく、そのような粒子は架橋ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリルなどのポリマーから構成されることが好ましい。
上記無機粒子および有機粒子は、単独で若しくは2種以上を併用して使用でき、硬化性組成物中の含有量は0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0033】
さらに必要に応じて、本発明の硬化性組成物に、通常の充填剤(非孔質の重質炭酸カルシウム、非孔質の脂肪酸処理炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、酸化チタンなど)、可塑剤(フタル酸ジエステル類、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類など)、密着剤(エポキシ化合物、シランカップリング剤など)、老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類など)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、ポリアマイドワックス、水添ひまし油など)、水分保給剤(水、無機塩類の水和物など)、紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類など)等を適量範囲で配合してよい。
【0034】
上記成分から構成される本発明の硬化性組成物は、上記配合成分を一括混合した一液型で、あるいは上記ポリマー、多孔質無機カルシウム化合物、粒子等を含有する基材と、硬化触媒、着色剤および微粉体コーティングアミン等を含有するトナー液とする等して構成された二液型で、あるいはさらに着色剤等を別の1成分として分離して構成された三液型として使用してもよい。
【0035】
本発明の硬化性組成物は、特に冬場の低温下(例えば5℃)で硬化を行う場合であっても、硬化後に充分な艶消し表面を得ることができる。即ち、本発明の硬化性組成物は、5℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする。
本発明の硬化性組成物は、硬化時の温度に影響されずに、好ましくは5〜50℃の範囲で硬化させた場合に、硬化後に充分な艶消し表面を得ることができる。即ち、本発明の硬化性組成物は、50℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする。
【0036】
上記成分から構成される本発明の硬化性組成物は、とりわけ建築用シーリング材に適用する場合に有効であり、特に、マット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用のシーリング材として好適に使用することができる。本発明の硬化性組成物は、上記建築用シーリング材として以外にも、自動車、電器、土木用のシーリング材や、その他接着剤、塗料、コーティング材、ポッティング材、成形物などに適用することができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1〜8および比較例1〜7]
(1)微粉体コーティングアミンの製造
中心粒径約8μmの1,12−ドデカンジアミン(融点71℃)76.9部と中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタン23.1部を混合し、高速衝撃式混合攪拌機(日清エンジニアリング(株)製、Hi−Xミキサー)にて複合化処理することにより、中心粒径約8μmの1,12−ドデカンジアミンの表面に、中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタンが固着してなる微粉体コーティングアミン100部を得た。
【0038】
(2)基材
各成分を下記重量%にて配合し基材とした。

【0039】
(3)トナー液
各成分を下記重量%にて配合し、トナー液とした。

【0040】
※1カルシーズPLS−505[神島化学工業(株)製](平均粒径0.1μm)
※2S−943[(株)カネカ製](アクリル変性系変成シリコーンポリマー)
※3アルケン200P[新日本石油化学(株)製]
※4ARUFON(登録商標)UP−1000[東亞合成(株)製](高温・高圧の連続塊状重合により得られた常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマー)
※5アデカスタブ(登録商標)AO−60[旭電化工業(株)製]
※6アデカスタブ(登録商標)LA−62[旭電化工業(株)製]
※7アデカスタブ(登録商標)LA−32[旭電化工業(株)製]
※8サイラエース(登録商標)S−220[チッソ(株)製]
※9ディスパロン(登録商標)#6500[楠本化成(株)製]
※10酸化チタン/鉄黄/弁柄/カーボンブラック/ジイソノニルフタレート
=40/5/1/0.3/50(重量比率)の混合物
【0041】
(4)シーリング材の調整
上記(2)の基材と上記(3)のトナー液と、その他配合成分を、下記表1、2に示すように硬化性組成物全体が100重量%となるよう配合し、遊星式撹拌機を用いて混合し硬化性組成物を得た。
【0042】
実施例1において、配合する多孔質無機カルシウム化合物の成分、平均粒径、結晶構造、比表面積、吸油量、基材中の配合量、基材またはトナー液中に配合するアミン化合物または粒子を、表1に記載のものに変更した以外は同様にして、硬化性組成物を調製した。
【0043】
【表1】

【0044】
*1 フローライト(登録商標)R[(株)トクヤマ製]平均粒径25μm、比表面積115(m2/g)、吸油量500(mL/100g)、花弁状結晶(ジャイロライト型)構造を有する連通細孔の多孔質珪酸カルシウム
*2 ソーレックス(登録商標)CM[(株)トクヤマ製]粒径 〜100μm、比表面積115(m2/g)、吸油量120〜160(mL/100g)、非晶質多孔質珪酸カルシウム
*3 カルサイトKT[白石工業(株)製]平均粒径2.6μm、比表面積33(m2/g)、吸油量140(mL/100g)、多孔質炭酸カルシウム
*4 NYAD(登録商標)G[NYCO Minerals社製]平均粒径40μm、吸油量45(mL/100g)、非多孔質針状珪酸カルシウム
*5 サイリシア(登録商標)250[富士シリシア化学(株)製]平均粒径5.7μm、比表面積300(m2/g)、吸油量310(mL/100g)の多孔質シリカ
*6 タフチック(登録商標)AR650LL[東洋紡(株)製]
*7 ウインライト(登録商標)MSB−5021「(株)アクシーズケミカル製」平均粒径80μmのシリカバルーン
【0045】
【表2】

【0046】
各実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、下記評価方法を用いて性能試験を行った。評価結果を表3、4に示す。
[性能試験の評価方法]
各硬化性組成物をシーリング材として、約3mm(深さ)×30mm(幅)の溝を設けたフレキシブルボード上に打設し、23℃,50%RHで1日間の養生硬化を行った後、下記の試験に付した。結果を表3、4に記載する。
A)艶消し試験
5℃または50℃雰囲気下で表2に示す日数放置し、硬化表面の光沢(艶)の有無を目視にて判定した。
〇:艶なし、
△:やや艶あり、
×:艶あり
B)非自己汚染性試験
5℃または50℃雰囲気下で表2に示す日数放置し、火山灰を振りかけ、試験体小口面を床に3回落とし、余分な火山灰を振りおとした後、火山灰が付着しているか否かを判定した。
〇:付着せず、
△:やや付着、
×:多量に付着
C)硬化物性
硬化性組成物を、20℃,相対湿度65%で7日間、さらに35℃,相対湿度90%で7日間放置し硬化養生した2mm厚みのシートを用い、JIS K6251:2004に基づき、表3、4に示す硬化物性を測定した。ただし、試験片形状はダンベル状3号形、引張速度は200mm/minとした。
D)粘度
B型粘度計にて、ローターNo.7を用い、回転数10rpmで20℃の粘度(×104cps)を測定した。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
表1〜4の結果から判るように、本発明の硬化性組成物に相当する各実施例において得られた硬化性組成物については、硬化時の温度に影響されずに、特に低温においても硬化後に良好な表面艶消し状態が得られたが、各比較例において得られた硬化性組成物は、表面艶消し状態が不充分であった。
また、所定のアミン化合物を配合した本発明の硬化性組成物によれば、その物性を低下させずに、硬化後の表面の良好な艶消し性と良好な非自己汚染性(表面タックが無く、粉塵やほこりが付着しない性質)が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質無機カルシウム化合物を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
多孔質無機カルシウム化合物の平均粒径は5〜200μmであり、含有量は0.5〜5重量%である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
多孔質無機カルシウム化合物は、連通する0.01〜1μmの細孔を有する請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
多孔質無機カルシウム化合物は、比表面積が100〜450m/g(BET法による)である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
多孔質無機カルシウム化合物は、吸油量が300〜600mL/100g(JIS K 6220による)である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
多孔質無機カルシウム化合物は、多孔質珪酸カルシウム、多孔質炭酸カルシウムまたは多孔質リン酸カルシウムである請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
アミン化合物を更に含む請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
アミン化合物の含有量は0.02〜10重量%である請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
アミン化合物と多孔質無機カルシウム化合物の含有比率(重量基準)は5/1〜1/50である請求項7または8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
アミン化合物は、融点が35℃以上のアミン表面に微粉体が固着された微粉体コーティングアミンである請求項7〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
平均粒径が30〜500μmの粒子を更に含む請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項13】
加水分解性シリル基含有ポリマーは、変成シリコーンポリマーおよび/またはアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーである請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の艶消し硬化性組成物。
【請求項15】
5℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする請求項14に記載の艶消し硬化性組成物。
【請求項16】
50℃雰囲気温度下で硬化させた際の硬化表面が艶消し状態となることを特徴とする請求項14または15に記載の艶消し硬化性組成物。
【請求項17】
マット調仕上げ塗装外壁用、ゆず肌仕上げ塗装外壁用または砂岩調塗装外壁用のシーリング材としての請求項1〜16のいずれかに記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2006−96807(P2006−96807A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281988(P2004−281988)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】