説明

硬化性組成物

【課題】低温条件下での粘度上昇を抑制し作業性に優れ、物性に優れる硬化物となり得る硬化性組成物の提供。
【解決手段】加水分解性シリル基を有するポリイソブチレン100質量部と、2−オクチル1−ドデセン1〜200質量部とを含有する硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、末端にシリル基を有しかつ主鎖としてポリイソブチレン骨格を有するポリマー(以下これを「末端シリル基含有ポリイソブチレン」ということがある。)は、主鎖が飽和炭化水素系の骨格であるため、ポリマー間の凝集力が高く一般的に高粘度体となる。
このため、末端シリル基含有ポリイソブチレンを含有する組成物を硬化させて、例えば、シーリング材等の不定形製品として使用する場合、一般的に組成物の粘度を低下させ作業性を確保する目的で、分子量が低く、末端シリル基含有ポリイソブチレンとの相溶性が確保できる飽和炭化水素系のプロセスオイルを可塑剤として組成物に添加する。
飽和炭化水素系のプロセスオイルとしては、例えば、鉱油系プロセスオイル(例えば、出光興産社製のダイアナプロセスPS−32)、合成プロセスオイル(例えば、デセン−1重合体水素添加物である出光石油社製のPAO5004)が挙げられる。
合成プロセスオイルを含有する硬化性組成物としては、例えば、特許文献1に記載されているものが挙げられる。
特許文献1には、反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体を主成分とする硬化性組成物の作業性、特に低温時の作業性を改善することを目的として、(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体と、(B)水添α−オレフィンオリゴマー、を含有することを特徴とする硬化性組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−182904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉱油系プロセスオイルはこれを精製して鉱油系プロセスオイルの分子量分布をシャープにすることが困難である。このため、揮発物を発生させないような範囲の分子量分布を有する鉱油系プロセスオイルを可塑剤として使用し、これと末端シリル基含有ポリイソブチレンとを混合し組成物とした場合、不純物の影響によって低温条件下での組成物の粘度上昇が激しくなること、およびこのような鉱油系プロセスオイルを多量に使用すると得られる硬化物のモジュラスが低下することを本願発明者は見出した。
また、従来の合成プロセスオイルであるデセン−1重合体水素添加物は、デセン−1重合体水素添加物を製造する際に生成する分子量が大きい副生成物(例えば、炭素原子数40等のもの)を含んでしまうため、低温条件下での組成物の粘度上昇が発生してしまい、特許文献1に記載の組成物は低温条件下での作業性が低いことを、本願発明者は見出した。
そこで、本発明は、低温条件下での粘度上昇を抑制し作業性に優れ、物性に優れる硬化物となり得る硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、加水分解性シリル基を有するポリイソブチレン100質量部と、2−オクチル1−ドデセン1〜200質量部とを含有する硬化性組成物が、低温条件下での粘度上昇を抑制し作業性に優れ、物性に優れる硬化物となり得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(5)を提供する。
(1) 加水分解性シリル基を有するポリイソブチレン100質量部と、2−オクチル1−ドデセン1〜200質量部とを含有する硬化性組成物。
(2) さらに、炭酸カルシウムを含有し、前記炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムおよびコロイダル炭酸カルシウムである上記(1)に記載の硬化性組成物。
(3) さらに、遥変剤を含有し、前記遥変剤が、水添ヒマシ油およびアマイドワックスである上記(1)または(2)に記載の硬化性組成物。
(4) さらに、バルーンを含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性組成物を材料として用いるシーリング材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性組成物は低温条件下での粘度上昇を抑制し作業性に優れ、物性に優れる硬化物となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の組成物は、加水分解性シリル基を有するポリイソブチレン100質量部と、2−オクチル1−ドデセン1〜200質量部とを含有する硬化性組成物である。
【0009】
本発明の硬化性組成物に含有されるポリイソブチレンは、加水分解性シリル基を有するものであれば特に制限されない。
ポリイソブチレンが有する加水分解性シリル基としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、R1、R2およびR3のうちの少なくとも1つまたはすべてが加水分解性基である。
加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基が挙げられる。
1、R2およびR3のうちの1つまたは2つが加水分解性基である場合残りの基は特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基のような炭化水素基が挙げられる。
なかでも、加水分解性が温和で取扱いが容易であるという観点から、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0012】
ポリイソブチレンの数平均分子量は、溶解性、粘着性に優れるという観点から、300〜30,000であることが好ましく、500〜10,000であることがより好ましい。
【0013】
ポリイソブチレンは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
また、ポリイソブチレンとして市販品を用いることができる。ポリイソブチレンの市販品としては、例えば、カネカ社製のEPION(E100S、E103S、E303S、E505S、EP−300S、EP−505S)が挙げられる。
ポリイソブチレンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
2−オクチル1−ドデセンについて以下に説明する。
本発明の硬化性組成物において2−オクチル1−ドデセンは可塑剤として含有される。
本発明の硬化性組成物に含有される2−オクチル1−ドデセンは、下記式(2)で表される化合物である。
【化2】

【0015】
2−オクチル1−ドデセンは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
2−オクチル1−ドデセンは、原料としてデセンを使用しこれの2量体として得ることができる。
このとき副生成物として3量体等が生成する場合があるが、2−オクチル1−ドデセンは3量体等の副生成物を2−オクチル1−ドデセン100質量部に対して1質量部以下の量で含有することができる。このような範囲の場合、低温での粘度上昇の抑制を阻害することがない。
2−オクチル1−ドデセンは、低温での粘度上昇をより抑制しより作業性に優れるという観点から、その分子量分布がシャープであるのが好ましい。
【0016】
2−オクチル1−ドデセンの量は、ポリイソブチレン100質量部に対して、1〜200質量部である。低温条件下での粘度上昇をより抑制し作業性により優れ、物性により優れる硬化物となり得るという観点から、2−オクチル1−ドデセンの量は、ポリイソブチレン100質量部に対して、20〜100質量部であるのが好ましく、40〜60質量部であるのがより好ましい。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、作業性を確保し、チクソ性に優れるという観点から、さらに、炭酸カルシウムを含有するのが好ましい。
炭酸カルシウムの量は、作業性により優れ、チクソ性に優れるという観点から、ポリイソブチレン100質量部に対して、150〜350質量部であるのが好ましく、200〜300質量部であるのがより好ましい。
【0018】
炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムが挙げられる。
炭酸カルシウムは、例えば、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物、シランカップリング剤等により表面処理された表面処理されたものであってもよい。
炭酸カルシウムは、作業性、チクソ性により優れるという観点から、重質炭酸カルシウムおよびコロイダル炭酸カルシウムを併用することが好ましい。
炭酸カルシウムとして重質炭酸カルシウムとコロイダル炭酸カルシウムとを併用する場合、重質炭酸カルシウムとコロイダル炭酸カルシウムとの量は、重質炭酸カルシウム100質量部に対して、コロイダル炭酸カルシウムが50〜350質量部であるのが好ましく、150〜250質量部であるのがより好ましい。
【0019】
本発明の硬化性組成物は、作業性を確保し、チクソ性に優れるという観点から、さらに、遥変剤を含有するのが好ましい。
遥変剤は、硬化性組成物に揺変性(チクソ性)を付与しうるものであれば特に制限されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。
具体的には例えば、水添ヒマシ油、アマイドワックス(例えば、脂肪族アマイドワックス)、表面処理炭酸カルシウム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、シリカ等の無機充填剤、タルクが挙げられる。
【0020】
なかでも、作業性により優れ、チクソ性に優れるという観点から、水添ヒマシ油、アマイドワックスであるのが好ましく、水添ヒマシ油およびアマイドワックスを併用するのがより好ましい。
水添ヒマシ油およびアマイドワックスを含む揺変剤として市販品を使用することができる。このような市販品としては例えば、ディスパロン#6100(楠本化成社製)が挙げられる。
【0021】
揺変剤の量は、作業性により優れ、チクソ性に優れるという観点から、ポリイソブチレン100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0022】
本発明の硬化性組成物は、作業性を確保し、得られる硬化物が軽量となるという観点から、さらに、バルーンを含有するのが好ましい。
バルーンは、硬化性組成物に加えることができるものであれば特に制限されない。例えば、樹脂バルーン;ガラスバルーンのような無機バルーンが挙げられる。
樹脂バルーンとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン−アクリロニトリル二元共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル二元共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼン三元共重合体が挙げられる。
【0023】
バルーンは、低比重化が容易で、安定的な物性を得ることができるという観点から、その平均粒径が5〜200μmであるのが好ましく、30〜50μmであるのがより好ましい。
また、均一な分散、低比重化が容易であるという観点から、その真比重が、0.01〜0.5であるのが好ましく、0.10〜0.30であるのがより好ましい。
バルーンは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
バルーンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
バルーンの量は、低比重化が容易で安定的な物性を得ることができるという観点から、ポリイソブチレン100質量部に対して、1〜30質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがより好ましい。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、さらに硬化触媒を含有するのが好ましい。
硬化触媒としては、例えば、2価の錫化合物、アミン系触媒が挙げられる。
2価の錫化合物は、通常シラノール縮合触媒として使用されるものであれば特に制限されない。例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ネオデカン酸錫が挙げられる。
【0026】
2価の錫化合物の量は、触媒効果が十分に発揮されるという観点から、ポリイソブチレン100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましく、1〜5質量部であるのがさらに好ましい。
【0027】
アミン系触媒は、シラノール縮合触媒として使用しうるものであれば特に制限されない。例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物またはこれらとカルボン酸等との塩等が例示される。
【0028】
アミン系触媒の量は、硬化性と貯蔵安定性を向上させることが可能となるという観点から、ポリイソブチレン100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましく、0.2〜1.5質量部であるのがさらに好ましい。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、ポリイソブチレン、2−オクチル1−ドデセンおよび必要に応じて用いることができる、炭酸カルシウム、揺変剤、バルーン、硬化触媒の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、目的、用途に応じて、または粘度、物性等を調整するために、例えば、架橋助剤、炭酸カルシウム以外の充填剤、2−オクチル1−ドデセン以外の可塑剤、溶剤、接着付与剤、安定剤、着色剤、物性調整剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化物、オゾン劣化防止剤、光安定剤、光硬化性樹脂、過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤のような添加剤を含有することができる。
各添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
架橋助剤としては、例えば、Na2SO4・10H2O、Na2SO3・7H2O、CaCl2・4H2O、Na2CO3・10H2O、Na223・5H2O、H2Oが挙げられる。
【0031】
2−オクチル1−ドデセン以外の可塑剤は、ポリイソブチレンと相溶するもの、またはプロセスオイルであれば特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族2塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル;部分水添ターフェニル等の炭化水素油;プロセスオイル類;アルキルベンゼン類等が挙げられる。
なかでも、ポリイソブチレンとの相溶性に優れるという観点から、プロセスオイル類が好ましい。プロセスオイル類としては、例えば、鉱油系プロセスオイル(例えば、出光興産社製のダイアナプロセスPS−32)、合成プロセスオイル(例えば、デセン−1重合体水素添加物である出光石油社製のPAO5004のような、αオレフィンをルイス酸でオリゴマー化したもの。)が挙げられる。デセン−1重合体水素添加物は例えば下記式(3)で表されるものが挙げられる。
【化3】

【0032】
2−オクチル1−ドデセン以外の可塑剤は、作業性により優れるという観点から、ポリイソブチレン100質量部に対して、0〜200質量部であるのが好ましく、50〜120質量部であるのがより好ましい。
【0033】
炭酸カルシウム以外の充填剤としては、例えば、カーボンブラック、タルク、クレー、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、珪藻土;塩化ビニルペーストレジン;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;黒鉛、金属粉末;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物による処理物が挙げられる。
【0034】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;ガソリンから灯油留分に至る石油系溶剤類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル等が挙げられる。
【0035】
接着付与剤としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック、ベンガラ等が挙げられる。
【0036】
本発明の硬化性組成物は、湿気硬化型であり、触媒等を調整すること(例えば、4価の錫触媒を使用する場合が挙げられる。)で1液型の硬化性組成物として使用することができる。
また、本発明の硬化性組成物を、例えば、ポリイソブチレンと2−オクチル1−ドデセンと必要に応じて使用することができる炭酸カルシウムと揺変剤とバルーンとを含む基剤と、硬化触媒と可塑剤と炭酸カルシウムとを含む硬化剤とを有する2液型とすることができる。貯蔵安定性に優れるという観点から、2液型であるのが好ましい。
【0037】
本発明の硬化性組成物は、その製造について特に制限されない。
例えば、各成分を減圧下に、ロール、ニーダー、混合ミキサー等の攪拌装置を用いて十分に混練し、均一に分散させて組成物とすることができる。
【0038】
本発明の硬化性組成物の23℃における粘度は、1,000〜2,500Pa・sであるのが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物の5℃における粘度は、1,000〜2,500Pa・sであるのが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、23℃における粘度と5℃における粘度との間の差が0〜600Pa・sであるのが好ましい。
なお、本発明において、組成物の粘度はBS粘度計にNo.7ローターを用いて回転数1rpmで測定されたものである。
【0039】
本発明の硬化性組成物の用途としては、例えば、シーリング材、複層ガラス用シーリング材、グレージングチャンネル、接着剤が挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、粘度が適正で、押出性に優れ、低温条件下での粘度上昇を抑制することができ、作業性に優れる。
このため、本発明の硬化性組成物を例えばコーキングガン、アプリケータ(シーリング吐出装置)を使用して施行する場合において、取扱いが良好で作業性に優れる。
また、本発明の硬化性組成物は、チクソ性、物性に優れ、このため、上述のような用途に好適に使用することができる。
【0040】
次に、本発明のシーリング材について以下に説明する。
本発明のシーリング材は、本発明の硬化性組成物を材料として用いるシーリング材である。
【0041】
本発明のシーリング材に使用される硬化性組成物は、本発明の硬化性組成物であれば特に制限されない。
本発明のシーリング材が適用される被着体としては、例えば、ガラス、複層ガラス、建築材料(例えば、塗装鋼板、プレキャストコンリート、ALC、押出成型セメント板、サイディングボード、モルタル)が挙げられる。
硬化性組成物を被着体に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、コーキングガン、アプリケータ(シーリング吐出装置)が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0043】
1.評価
得られた組成物について、粘度、チクソインデックス、押出性、物性を以下のとおり評価した。結果を第1表に示す。
(1)粘度
基剤および硬化剤を混合して得られる組成物の粘度を、23℃、60%RHまたは5℃、50%RHの条件下において、BS粘度計にNo.7ローターを用いて回転数1rpmで測定した。
【0044】
(2)チクソインデックス
組成物の粘度を、23℃、60%RHまたは5℃、50%RHの条件下において、BS粘度計にNo.7ローターを用いて10rpmで測定した。
10rpmの粘度に対する1rpmの粘度の比の値を算出し、これをチクソインデックス(Ti)とした。
【0045】
(3)押出性
JIS A 1439:2004に準じて、内径46.5mm、ストローク155mmのカートリッジに組成物を充填し、これを100kPaで加圧してカートリッジ内の組成物がカートリッジから押出されるのに必要な時間(単位:秒)を測定した。
【0046】
(4)物性(50%引張応力)
物性を測定するために用いた試験体について添付の図面を使用して以下に説明する。
図1は、本発明において本発明の組成物から得られる硬化物の物性を測定するために用いられた試験体の概略を模式的に示す斜視図である。
図1において、試験体100は、被着体102と被着体104との間にシーリング材106を具備する。被着体102と被着体104とは、縦50mm、横50mm、厚さ3mmの陽極酸化アルミニウムの板である。
試験体100の作製は、まず、被着体102と被着体104と間に、長さ50mm、高さ12mmの2つのスペーサー(図示せず。)を配置し、前記スペーサーと被着体102と被着体104とから形成される空間に組成物を充填し、次に、23℃の条件下で7日間、さらにその後50℃の条件下において7日間養生させた後、スペーサーを取り外して、試験体100を得る。
JIS A 1439:2004に準じて、得られた試験体100を引張試験機を用いて引張速度50mm/minの条件下で引張試験を行い、引張試験を行う前のシーリング材106の厚み(12mm)を基準として、シーリング材106の厚みが6mmとなるまでシーリング材106が伸張されたときの荷重を測定し、これを50%引張応力(M50、単位:N/mm2)とした。
【0047】
2.組成物の調製
下記の第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で基剤および硬化剤を調製し、基剤と硬化剤とを撹拌機(ミキスター社製)を用いて混合し組成物を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・ポリイソブチレン:エピオン505S、カネカ社製(エピオン505Sは、ポリイソブチレン66.7質量%と可塑剤33.3質量%とを含有する混合物である。第1表において記載したポリイソブチレンの量150質量部はエピオン505Sとしての量であり、したがって実施例1〜4および比較例1、2において使用されるポリイソブチレンの量は100質量部である。)
・基剤および硬化剤中の可塑剤:ダイアナプロセスPS−32、出光興産社製
・2−オクチル1−ドデセン:出光興産社製
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム、商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製
・基剤および硬化剤中の炭酸カルシウム2:コロイダル炭酸カルシウム、商品名カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・遥変剤:ディスパロン#6100、楠本化成社製
・バルーン:アクリル樹脂系マイクロバルーン、平均粒径40〜50μm、松本油脂社製
・硬化触媒:2価の錫触媒、商品名ニッカオクチックス錫(Sn28%)、日本化学産業社製
・アミン系触媒:ラウリルアミン、和光純薬工業社製
【0050】
第1表に示す結果から明らかなように、2−オクチル1−ドデセン以外の可塑剤を含有する比較例1は低温条件下での粘度が高くなってしまい作業性に劣った。また、2−オクチル1−ドデセンをポリイソブチレン100質量部に対して200質量部を超える量で含有する比較例2は23℃および5℃の条件下での粘度が低くなりすぎてしまった。
これに対して、実施例1〜4は、低温条件下での粘度の上昇を抑制し作業性に優れ、チクソ性、押出性に優れ、得られる硬化物は物性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明において本発明の組成物から得られる硬化物の物性を測定するために用いられた試験体の概略を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
100 試験体
102、104 被着体
106 シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有するポリイソブチレン100質量部と、2−オクチル1−ドデセン1〜200質量部とを含有する硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、炭酸カルシウムを含有し、前記炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムおよびコロイダル炭酸カルシウムである請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、遥変剤を含有し、前記遥変剤が、水添ヒマシ油およびアマイドワックスである請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、バルーンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物を材料として用いるシーリング材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−297480(P2008−297480A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146634(P2007−146634)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】