説明

硬化性組成物

【課題】 揮発しやすく特有の不快臭をもつ重合開始剤を含んでなる硬化性組成物において、その不快臭を軽減することにより快適に用いることができ、また保存安定性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 (A)重合性単量体、
(B)25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物、好適には、該蒸気圧を有する、有機過酸化物、芳香族ケトン、およびアミンから選ばれる少なくとも1種を含んでなる重合開始剤、および
(C)シクロデキストリン系包接化合物
を含有してなることを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関する。詳しくは、重合開始剤として揮発し易い化合物が含まれているものを用いながら、その揮発による減少を高度に抑制した硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物として、重合性単量体と重合開始剤とを基本組成に含む材料が知られている。こうした硬化性組成物において、上記重合性単量体としては通常、ラジカル重合性のものが使用され、これに対応して重合開始剤もラジカル重合開始剤が使用されている。しかして、ラジカル重合開始剤としては、化学重合型のものであれば、有機過酸化物等が、また、光重合型のものであれば、芳香族ケトン等が、その重合活性の高さ等から汎用されている。
【0003】
ところが、これらラジカル重合開始剤の中には、揮発し易い化合物(25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物;以下、この化合物を単に「揮発性化合物」とも称する)を構成成分に含むものが多数にあり、これを採択した場合、得られる硬化性組成物は、該揮発性化合物が保存中に散失して含有量が減少する問題が生じていた。すなわち、これら硬化性組成物は、通常、樹脂製等の密閉性の高い容器に保存されることが多いが、それでもこの容器を完全に密閉することは難しく、この場合、前記揮発性化合物の散失が徐々に生じることが避けられなかった。このため、保存期間が長期化すると、揮発性化合物の散失量が多量に及び、硬化性組成物の硬化性が低下し、十分に硬化しなくなったり、硬化体の機械的強度や耐久性が満足できないものになっていた。
【0004】
その上、硬化性組成物に含有されている揮発性化合物が、有機過酸化物、芳香族ケトン、およびアミン等である場合、これら化合物は一般に強い不快臭を有しているため、使用者に不快感を与えることが多かった。特に、上記硬化性組成物の主用途の一つに、歯科用コンポジットレジン等の歯科材料があるが、これは患者の口腔内において、歯牙の治療箇所に充填して硬化させるものであるため、術者の医師のみならず、患者にとっても、上記不快臭はより直接的に感知され大きな苦痛になっていた。
【0005】
このため、硬化性組成物に含まれる、重合開始剤の揮発性化合物の散失を抑えることにより、保存安定性を改良し、不快臭も軽減する技術が求められていた。
【0006】
なお、こうしたラジカル重合性単量体とラジカル重合開始剤とを基本組成とする硬化性組成物において、クラウンエーテル等の包接化合物を配合させる技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、係る包接化合物の配合目的は、ラジカル重合性単量体に不溶のラジカル重合開始剤を用いた場合において、陽イオンを包接してこれを可溶にすることであり、該ラジカル重合開始剤として極めて多数の化合物が例示されているが、そのほぼ全てのものが、蒸気圧の低い非揮発性のものにすぎない。すなわち、前記揮発性化合物を構成成分とするラジカル重合開始剤を採択した硬化性組成物において、該揮発性化合物の散失を防止することについては、何ら具体的開示はなく示唆もされていない。
【0007】
【特許文献1】特開2005−248137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の背景にあって本発明は、揮発性化合物を構成成分とする重合開始剤を用いた硬化性組成物において、該揮発性化合物の散失を高度に防止し、長期間の保存によってもその硬化性が低下せず、使用者に不快臭も感じさせないものを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の技術課題を解決すべく鋭意検討を行ってきた。その結果、前記硬化性組成物に、シクロデキストリン系包接化合物を含有させることにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、(A)重合性単量体、
(B)25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物を少なくとも1種類含有してなる重合開始剤、および
(C)シクロデキストリン系包接化合物
を含有してなることを特徴とする硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物では、重合開始剤が、揮発性化合物を含んでいるにも関わらず、併せてシクロデキストリン系包接化合物を含んでいるため、その空孔に上記揮発性化合物を包接して揮発性を大きく低減させることができる。この結果、該揮発性化合物の散失は高度に抑制され、硬化性組成物の保存安定性は向上し、長期間保存してもその硬化性は良好に維持され、硬化体の機械的強度や耐久性が損なわれない。また、該揮発性化合物が、有機過酸化物、芳香族ケトン、およびアミンから選ばれるもの等の不快臭を有するものの場合でも、硬化性組成物の使用者に、これに起因した苦痛を感じさせることなく、快適に取り扱いさせることができる。
【0012】
これらの効果は、硬化性組成物が、齲蝕歯牙の修復に使用される歯科材料である場合には極めて大きく、揮発性化合物の不快臭による医師や患者の苦痛を軽減でき、しかも、硬化体の機械的強度や耐久性を高度に保持することができ、再治療のリスクを大幅に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の(A)成分で用いられる重合性単量体としては、公知のものが特に制限なく使用できる。カチオン重合性やアニオン重合性等のものも何ら不都合なく適用可能であるが、通常は、ラジカル重合性単量体が使用される。
【0014】
当該ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルプロピオネート、2−メタクリロキシエチルアセトアセテート等のラジカル重合性不飽和基を1つ有する(メタ)アクリレート系単量体類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和基を複数有する脂肪族系(メタ)アクリレート系単量体類、2,2−ビス(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン等のラジカル重合性不飽和基を複数有する芳香族系(メタ)アクリレート系単量体類等の、ラジカル重合性不飽和基として(メタ)アクリルオキシ基を有する単量体、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基として(メタ)アクリルアミド基を有す単量体や、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物類、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体類、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物類や、酢酸ビニル、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0015】
これらのラジカル重合性単量体は単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明において(B)成分の重合開始剤としては、前記した(A)成分の重合性単量体がカチオン重合性やアニオン重合性等のものであれば、それに応じたものが使用される。通常は、ラジカル重合性単量体に対応して、ラジカル重合開始剤が使用される。しかして、これら重合開始剤は、その構成成分の少なくとも1種類として揮発性化合物、すなわち、25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上、好ましくは0.82mmHg以上である化合物を含んでいることが必須の要件である。前記したとおり本発明は、重合開始剤における該揮発性化合物の散失を防止することを目的とするものであるから、係る性状の化合物が使用されていない系では、効果が発現されない。
【0017】
このようなラジカル重合開始剤に含有される揮発性化合物としては、前記蒸気圧の要件を満足するものであれば、化学重合型のものであっても光重合型のものであっても制限なく使用可能であり、いずれも優れた保存安定性の向上効果が発揮される。その中でも、臭いが不快で、前記した使用者に苦痛を与えない効果がより顕著に発揮されることから次の化合物、すなわち、有機過酸化物、芳香族ケトン、またはアミンを対象とするのが好ましい。
【0018】
このうち、有機過酸化物は、単独で使用しても化学重合型のラジカル重合開始剤になるものである。こうした有機過酸化物であって、前記した揮発性化合物の要件を満足するものとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシドデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチルオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチルペンタノエート、t−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチルプロパノエート、過安息香酸−t−ブチル、m−メチル過安息香酸−t−ブチル、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチルペンチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチル、ビス(2−メチルペンチル)パーオキサイド、2−メチルペンチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2−メチルペンチルパーオキシ−2,2−ジメチルオクタノエート、2−メチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2−メチルペンチルパーオキシ−2,2−ジメチルプロパノエート、過安息香酸2−メチルペンチル、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、4−メチルシクロヘキシルハイドロパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ビス(2−メチルプロパノイル)パーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(2−メチルプロピル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0019】
これらの有機過酸化物は一種でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0020】
また、芳香族ケトンは、単独で使用しても光重合型のラジカル重合開始剤として機能するものであり、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、アセトフェノン、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンゾスベロンなどが挙げられる。
【0021】
これらの芳香族ケトンは一種でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0022】
上記の有機過酸化物および芳香族ケトンは、アミンと組み合わせることによりラジカル発生能の効果を高めて使用してもよい。
【0023】
このように組み合わせて使用できるアミンは、第1級〜第3級のいずれのものであってもよいが、その活性の高さの観点から第3級のものがより好ましい。また、芳香族ケトンと組み合わせて使用する場合は脂肪族アミンよりも芳香族アミンを用いるほうが好ましい。
【0024】
こうしたアミンであって、前記した揮発性化合物の要件を満足するものとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、プロピルアミン、ペンチルアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、オクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ドデシルアミン、N−テトラデシルアミン、トリブチルアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、アミノエチルエタノールアミン、ピペラジン、ピペリジン、エチレンジアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジンなどが挙げられる。
【0025】
これらのアミンは一種でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0026】
本発明では、これら有機過酸化物、アミン、および芳香族ケトンの中でも、その不快臭がより強烈であることから、少なくとも有機過酸化物またはアミンを含有している場合において効果が高く、その保存安定性の悪さから有機過酸化物を含有している場合において効果が最も高い。
【0027】
上記有機過酸化物とアミンとを組み合わせて使用する場合、有機過酸化物とアミンの使用比率は、質量比で、有機過酸化物/アミンが0.01〜50、より好ましくは0.1〜20であるのが普通である。一方、芳香族ケトンとアミンとを組み合わせて使用する場合、芳香族ケトンとアミンの使用比率は、質量比で、芳香族ケトン/アミンが0.05〜30、より好ましくは0.2〜15であるのが普通である。
【0028】
本発明の硬化性組成物における、重合性単量体と重合開始剤の量比は、重合性単量体が硬化するのに十分な量比であれば特に限定されないが、硬化速度や得られる硬化体の機械的強度等の物性の点から、重合性単量体100質量部に対して、重合開始剤が0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部となる範囲であるのが一般的である。
【0029】
なお、重合開始剤は、上記揮発性化合物を成分として構成される重合開始剤以外の重合開始剤、すなわち非揮発性の重合開始剤も、一部として使用されていても良い。しかしながら、前記重合開始剤の含有量中において、重合性単量体100質量部に対して少なくとも0.005質量部、より好適には0.01質量部は揮発性化合物で占められているのが、本発明の効果の顕著性から良好である。
【0030】
こうした非揮発性の重合開始剤のうち、有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、エチルメチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。また、芳香族ケトンとしては、例えば、カンファーキノン、4,4’−ジメトキシベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、ベンゾフェノン、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。さらに、アミンとしては、例えば、トリブチルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどが挙げられる。
【0031】
さらに、これら以外の非揮発性の重合開始剤を併用してもよく、そのような重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩のようなアゾ系重合開始剤、トリエチルホウ素、トリブチルホウ素のようなトリアルキルホウ素系等の、単一で使用してラジカル発生能を有する化合物からなる開始剤;バルビツール酸,第二銅イオン,塩化物イオンからなる系、アリールボレート化合物と酸性化合物からなる系、アリールボレート化合物、酸性化合物、遷移金属化合物からなる系等の、2種以上の化合物を組合せて使用することによりラジカル発生能を発揮することができる開始剤などが挙げられる。
【0032】
本発明の(C)成分で用いられるシクロデキストリン系包接化合物は、公知のものが制限なく使用される。一般には、下記一般式(1)
【0033】
【化1】

(上式中、R、RおよびRは置換していてもよい直鎖もしくは分岐アルキル基または水素原子を表し、これらR、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、nは6,7または8のいずれかである。)
で示される化合物が使用される。
【0034】
ここで、式(1)で、R、RおよびRで表される直鎖もしくは分岐アルキル基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1〜6のアルキル基が包含される。また、上記アルキル基は、さらに場合により、メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基;トリメチルシリル、トリエチルシリル、エチルジメチルシリルなどのトリアルキルシリル基;フェニルジメチルシリルなどの芳香族ジメチルシリル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基などの基によって置換されていてもよい。
【0035】
したがって、上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、(フェニルジメチルシリル)メチル基、第三級ブトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、4−ペンテニロキシメチル基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)で示される化合物の中でも、R、RおよびRはメチル基または水素原子のものが、本発明の効果をより良好に発揮する上で有利であり、また、nも7または8のものが同様の理由から有利である。
【0037】
本発明の一般式(1)で表されるシクロデキストリンを具体的に例示すると、α−シクロデキストリン、6−O−メチル−α−シクロデキストリン、2,3,6−トリ−O−メチル−α−シクロデキストリン、6−O−t−ブチルジメチルシリル−2,3−ジ−O−メチル−α−シクロデキストリン、6−O−メチル−2,3−ジ−O−エチル−α−シクロデキストリン、6−O−メチル−2,3−ビス−O−(2−メトキシエチル)−α−シクロデキストリン、6−O−t−ブチルジメチルシリル−2,3−ビス−O−(2−トリメチルシリルエチル)−α−シクロデキストリンなどの置換α−シクロデキストリン;β−シクロデキストリン、6−O−メチル−β−シクロデキストリン、2,3,6−トリ−O−メチル−β−シクロデキストリン、6−O−t−ブチルジメチルシリル−2,3−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリン、6−O−メチル−2,3−ジ−O−エチル−β−シクロデキストリン、6−O−メチル−2,3−ビス−O−(2−メトキシエチル)−β−シクロデキストリン、6−O−t−ブチルジメチルシリル−2,3−ビス−O−(2−トリメチルシリルエチル)−β−シクロデキストリンなどの置換β−シクロデキストリン;γ−シクロデキストリン、6−O−メチル−γ−シクロデキストリン、2,3,6−トリ−O−メチル−γ−シクロデキストリン、6−O−t−ブチルジメチルシリル−2,3−ジ−O−メチル−γ−シクロデキストリン、6−O−メチル−2,3−ジ−O−エチル−γ−シクロデキストリン、6−O−メチル−2,3−ビス−O−(2−メトキシエチル)−γ−シクロデキストリン、6−O−t−ブチルジメチルシリル−2,3−ビス−O−(2−トリメチルシリルエチル)−γ−シクロデキストリンなどの置換γ−シクロデキストリンなどが挙げられる。
【0038】
(C)成分に用いられるシクロデキストリン系包接化合物の配合量は、特に制限されないが、(B)成分に含まれる揮発性化合物に対して、0.1〜15モル当量、より好ましくは0.5〜10モル当量で用いるのが好適である。この値が、0.1モル当量より少ない場合には、包接される揮発性化合物の絶対量が少ないため、散失を抑止する効果が十分でなくなる。また、この値が、15モル当量を超える場合には、シクロデキストリン系包接化合物の濃度が高いために硬化体の機械的強度が低下する場合がある。
【0039】
本発明の硬化性組成物には、上記した必須成分の他に、必要に応じて(D)充填材を添加することにより、硬化体の機械的強度や耐久性をさらに向上させることができ好ましい。この(D)成分としては、一般に用いられる有機フィラー、無機フィラーを何ら制限なく用いることができる。
【0040】
好適に使用できる代表的なフィラーを具体的に例示すれば、有機フィラーとしてポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0041】
また、代表的な無機フィラーを具体的に例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに無機フィラーの内、カチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これらもまた、一種または二種以上を混合して用いてもなんら差し支えない。
【0042】
また、これら無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合フィラーを用いる場合もある。
【0043】
これらフィラーの粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm〜100μmの平均粒子径のフィラーが目的に応じて適宜使用できる。また、フィラーの屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用フィラーが有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
【0044】
さらに、上記したフィラーの中でもとりわけ球状の無機フィラーを用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得る。
【0045】
上記した無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0046】
これら充填材の形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られるような粉砕形粒子、あるいは球状粒子でもよい。
【0047】
また、これら充填材の粒子径も特に限定されるものではないが、良好な適合性を得るための被膜厚さの点で100μm以下のものが好適に、より好ましくは30μm以下のものが使用される。
【0048】
これら充填材の添加量は全重合性単量体量100重量部に対して、50〜900重量部の範囲が好ましい。より好ましくは100〜800重量部である。50重量部未満では材料の物理的強度が低下し、900重量部より多い場合は材料の流動性が減少し、操作性が低下する傾向がある。
【0049】
さらに、添加可能な成分として、必要に応じて重合禁止剤や酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0050】
本発明の硬化性組成物は、上記(A)重合性単量体、(B)揮発性化合物を少なくとも1種類含んでなる重合開始剤、および(C)シクロデキストリン系包接化合物からなる必須成分と、(D)充填材等の必要に応じて用いられる任意配合成分とを均一に混合して使用する。ここで均一とは、全成分が相互に溶解した状態のみならず、重合性単量体中に充填材のような不溶性成分が分散した状態であってもよく、肉眼で相分離等が確認できない程度に均一な状態でもよい。なお、揮発性化合物とシクロデキストリン系包接化合物とは、予め、これら成分のみを混合させてから、他の成分と混合させるのも好適な態様である。
【0051】
また、本発明の硬化性組成物は、揮発性化合物の少なくとも1種類を含む2種以上の成分からなる重合開始剤を用いる場合には、保存安定性などを考慮して、該重合開始剤を分割して、該重合開始剤以外の成分を上記分割された何れかの重合開始剤成分と混合して、2剤以上の包装形態にしても良い。この場合、各包装は、使用直前に1剤に混合して使用される。こうした包装形態において、揮発性化合物が含まれる包装に、シクロデキストリン系包接化合物も配合されなければならない。すなわち、本発明の対象になる硬化性組成物は、こうした包装形態では、該揮発性化合物とシクロデキストリン系包接化合物とを含む包装になる。
【0052】
この揮発性化合物とシクロデキストリン系包接化合物とが共存する包装において、該シクロデキストリン系包接化合物の含有量は、前記した揮発性化合物に対して、0.1〜15モル当量、より好ましくは0.5〜10モル当量の範囲であるのが好適である。なお、このような分割された包装形態においても、重合開始剤の含有量は、各包装に分割された成分の総量が、重合性単量体の同総量100質量部に対して0.01〜20質量部であるのが好適である。
【0053】
これら硬化性組成物を収容する容器はとくに制限されないが、樹脂製のものを用いるときに本発明の効果が顕著に現れる。すなわち、一般的に樹脂製の容器は嵌合部の気密性が不十分であるが、そのような場合においても揮発性化合物をシクロデキストリン系包接化合物が包接することにより、その散失を良好に抑え、本発明による保存安定性の効果が顕著に発揮され好ましい。
【0054】
また、本発明の硬化性組成物の用途は、前記した歯科用途のみならず、工業用接着剤、コート剤、塗料等の一般工業にも利用できる。前記した揮発性化合物が不快臭を有するものである場合には歯科材料において効果が高く、その場合、具体的には、セメント、ボンディング材、コンポジットレジン、ホワイトニング材、矯正用接着材等の歯科材料に適用するのが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によってなんら制限されるものではない。
【0056】
なお、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を以下に示す。
【0057】
[ラジカル重合性単量体]
AAEM;アセトアセトキシエチルメタクリレート
ND;ノナメチレンジオールジメタクリレート
HD;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
14G;ポリエチレングリコール(14)ジメタクリレート
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA;ヒドロキシエチルメタクリレート
Bis−GMA;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
D−2.6E;2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
[重合開始剤成分]
〔25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上であるアミン〕
DMPT;N,N−ジメチル−p−トルイジン(25℃における蒸気圧:0.93mmHg)
PEAT;N,N−ジエチル−p−トルイジン(25℃における蒸気圧:1.04mmHg)
〔25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である有機過酸化物〕
パーオクタH;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(25℃における蒸気圧:0.86mmHg)
パーブチルC;t−ブチルクミルパーオキサイド(25℃における蒸気圧:0.83mmHg)
〔25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である芳香族ケトン〕
AcPh;アセトフェノン(25℃における蒸気圧:1.66mmHg)
BIBE;ベンゾインイソブチルエーテル(25℃における蒸気圧:0.94mmHg)
〔25℃における蒸気圧が本発明で規定する要件を満足しない、他の重合開始剤成分〕
DMBE;N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
BPO;ベンゾイルパーオキサイド
DMA;N,N−ジメチルアニリン(25℃における蒸気圧:0.7mmHg)
[充填材]
3Si−Zr;不定形シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:3μm)
0.3Si−Ti;球状シリカ−チタニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:0.3μm)
〔臭気確認方法〕
硬化性組成物、またはこれを分割して包装した液の臭気を嗅ぎ、次に示す3段階で評価した。
重合開始剤の臭気がまったくない・・・・○
重合開始剤の臭気がややある・・・・・・△
重合開始剤の臭気があり不快である・・・×
〔揮発性測定方法〕
硬化性組成物をシリンジ(テルモ株式会社製テルモシリンジ、SS−05SZ)に充填し、4〜5mmHgの減圧下に15分間放置した。硬化性組成物中の重合開始剤の量を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定し、減圧前の重合開始剤の量に対する減圧後のその残存率を求めた。
【0058】
〔曲げ強度測定方法〕
幅4mm、厚さ2mm、長さ40mmの長方形の孔を有するポリアセタール製の型に、硬化性組成物を填入し、湿潤条件下37℃恒温槽中で15分間放置し硬化させるか、もしくは可視光線照射器(トクヤマ社製、パワーライト)により光照射を30秒間行い硬化させた。強度試験機(島津製作所社製、オートグラフ)によりクロスヘッド速度1mm/分、スパン距離15mmの条件で3点曲げ試験を行い曲げ強度を求めた。
【0059】
実施例1
ラジカル重合性単量体として、AAEMとNDとが質量比60:40の組成で混合されたものを用いて評価を行った。即ち、この組成のラジカル重合性単量体100質量部に、DMPTを3質量部と、シクロデキストリンを該DMPTに対して1.5モル当量を混合したA液と、同じラジカル重合性単量体100質量部に、BPOを4質量部混合したB液とを調製した。このA液とB液を質量比で1:1となるように計りとり、混合して硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。このA液の臭気を確認し、揮発性試験を行った。次いで、揮発性試験に用いたA液を用いて同様に硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。結果を表1に示した。
【0060】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のR、RおよびRのいずれもが水素原子であり、n=8のものであった。
【0061】
実施例2〜10
A液に混合するアミンとシクロデキストリンを表1に示す組み合わせに変えて、実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示した。
【0062】
実施例11
実施例1で用いたものと同じラジカル重合性単量体100質量部に対しパーオクタHを4質量部と、シクロデキストリンを該パーオクタHに対して1.5モル当量を混合したA液と、同じラジカル重合性単量体100質量部に対しDMBEを3質量部混合したB液とを調製した。このA液とB液を質量比で1:1となるように計りとり、混合して硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。このA液の臭気を確認し、揮発性試験を行った。次いで、揮発性試験に用いたA液を用いて同様に硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。結果を表1に示した。
【0063】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のR、RおよびRのいずれもが水素原子であり、n=8のものであった。
【0064】
実施例12〜14
A液に混合する有機過酸化物とシクロデキストリンを表1に示す組み合わせに変えて、実施例11と同様にして評価した。結果を併せて表1に示した。
【0065】
実施例15
実施例1で用いたものと同じラジカル重合性単量体100質量部に対しAcPhを0.15質量部と、該AcPhに対して1.5モル当量のシクロデキストリンを混合したA液を調製した。このA液に可視光を照射して硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。このA液の臭気を確認し、揮発性試験を行った。次いで、揮発性試験に用いたA液を用いて同様に硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。結果を表1に示した。
【0066】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のR、RおよびRのいずれもが水素原子であり、n=8のものであった。
【0067】
実施例16〜18
A液に混合する光重合開始剤とシクロデキストリンを表1に示す組み合わせに変えて、実施例15と同様にして評価した。結果を併せて表1に示した。
【0068】
比較例1〜3
シクロデキストリンを用いずに、表1に示す重合開始剤の組み合わせで実施例1と同様に評価した。結果を併せて表1に示した。
【0069】
実施例1〜18と比較例1〜3の結果より、シクロデキストリンを含む硬化性組成物はアミン、有機過酸化物、芳香族ケトンの残存率が高く、不快臭がないことが明らかである。
【0070】
【表1】

比較例4
実施例1で使用したラジカル重合性単量体成分と同じ、AAEMとNDの重量比60:40の混合物100質量部に、25℃における蒸気圧が0.7mmHgであるDMAを配合しA液を製造し、その臭気を確認した。しかしながら、A液は、シクロデキストリンを用いない状態でありながら、ある程度(△評価)しかないものであった。
【0071】
実施例19〜24
アミンとシクロデキストリンの量を表2に示す組み合わせにした以外は実施例1と同様に硬化性組成物を調製した。硬化体の曲げ強度、臭気、揮発性試験を評価し、結果を併せて表2に示した。
【0072】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のRが水素原子で、RおよびRがヘキシル基であり、n=8のものであった。
【0073】
実施例6と19〜24の結果より、シクロデキストリンの量を表2に示す範囲で変えても効果があることが明らかである。
【0074】
【表2】

実施例25
実施例1で用いたものと同じラジカル重合性単量体100質量部に対しDMPTを3質量部と、該DMPTに対して1.5モル当量のシクロデキストリンを混合したA液と、同じラジカル重合性単量体100質量部に対しパーオクタHを4質量部と、該パーオクタHに対して1.5モル当量のシクロデキストリンを混合したB液とを調製した。このA液とB液を質量比で1:1となるように計りとり、混合して硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。このA液とB液の臭気を確認し、それぞれ揮発性試験を行った。次いで、揮発性試験に用いたA液とB液を用いて同様に硬化体を作製しその曲げ強度を測定した。結果を表3に示した。
【0075】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のR、RおよびRのいずれもが水素原子であり、n=8のものであった。
【0076】
実施例26〜29
用いるラジカル重合性単量体を、表3に示す組成に変えた以外は実施例25と同様に硬化性組成物を調製した。硬化体の曲げ強度、臭気、揮発性試験を行い、結果を併せて表3に示した。
【0077】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のRが水素原子で、RおよびRがヘキシル基であり、n=8のものであった。
【0078】
実施例25〜29の結果より、ラジカル重合性単量体の種類を変えても効果があることが明らかである。
【0079】
【表3】

実施例30
ラジカル重合性単量体、重合開始剤、フィラーを表4に示す組み合わせにして用いて硬化性組成物を調製し、臭気を確認し、揮発性試験を行った。結 果を併せて表4に示した。
【0080】
なお、ここで用いたシクロデキストリンは、一般式(1)のRが水素原子で、RおよびRがヘキシル基であり、n=8のものであり、A液のDMPT、B液のパーオクタHそれぞれに対し1.5モル当量を用いた。
【0081】
実施例30の結果より、充填材を含む硬化性組成物についても効果があることが明らかである。
【0082】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体、
(B)25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物を少なくとも1種類含有してなる重合開始剤、および
(C)シクロデキストリン系包接化合物
を含有してなることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
(B)重合開始剤の、25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物が、有機過酸化物、芳香族ケトン、およびアミンから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(B)25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物を少なくとも1種類含有してなる重合開始剤の含有量が、(A)重合性単量体100質量部に対して0.01〜20質量部であり、
(C)シクロデキストリン系包接化合物の含有量が、上記(B)重合開始剤に含有される25℃における蒸気圧が0.8mmHg以上である化合物に対して0.1〜15モル当量である請求項1または請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、(D)充填材50〜900質量部を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物からなる歯科材料。

【公開番号】特開2009−114221(P2009−114221A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285063(P2007−285063)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】