説明

硬化性組成物

【課題】シリル化メタロキサンオリゴマーをヒドロシリル化反応により架橋硬化させることができる硬化性組成物を提供すること、とくに熱硬化性で高屈折率を示し、薄膜のみならず厚膜としても適用可能な樹脂組成物及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【解決の手段】下記一般式で表されるシリル化メタロキサンオリゴマー、1分子中にSi−H結合含有基を少なくとも二つ有し、かつ、シロキサン結合を有していない化合物、及び、硬化触媒を含む硬化性組成物。
αβ(OSiRγ(OR)δ
上記式中、Mはチタン原子又はジルコニウム原子を表し、分子中の全てのR、R及びRのうち、少なくとも二つはアルケニル基である。α、β、γ及びδは、α≧2、1.8α≧β≧α、γ+δ=4α−2β、γ≧2を満たす自然数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化メタロキサンオリゴマーをヒドロシリル化反応可能な硬化剤により硬化させる硬化性組成物に関し、とくに熱硬化性で屈折率が高く透明安定性に優れる硬化性樹脂組成物及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
光素子、例えば、各種レーザー、発光ダイオード、受光素子、複合光素子、光回路部品、光集積回路等、の封止等の目的に、従来、透明エポキシ樹脂が使用されてきた。しかしながら、光素子においては、性質の異なる層間の界面での光の反射による光の取り出し又は取り込み効率の低下等を考慮して、屈折率がエポキシ樹脂より高い樹脂が求められている。
【0003】
例えば、太陽電池や有機ELには内部に透明電極層が、外部にガラス基板が採用されており、有機ELを例にとると、陰極層、有機材料層、透明電極層、ガラス基板が平行に配置された構造をとっており、有機材料層で発生した光はそれらの層を通過して外部に放出されるが、透明電極(n=1.9〜2.1)からガラス基板(n=1.5前後)を通過する際、界面で起こる全反射のために光の取り出し効率が下がるという問題がある。そこで、太陽電池や有機ELにおける透明電極とガラス基板の中間の屈折率を有する層を設けることで全反射角が小さくなり、光取り出し効率または光取り込み効率を飛躍的に向上させることが期待されている。
【0004】
高屈折率樹脂材料としては、例えば、特許文献1には、チタンアルコキシドの加水分解縮合物のシリル化誘導体と有機成分とからなる有機−無機複合体が開示されており、特許文献2には、ポリチタノキサン化合物とシリコーン樹脂とを混合してなる封止用樹脂が開示されており、特許文献3には、ポリシロキサンとポリチタノキサンを含有する光硬化性組成物が開示されており、特許文献4には、重合性有機化合物と感光性ポリチタノキサンとを含有する光硬化性組成物が開示されており、特許文献5には、ポリチタノキサンとカルボキシル基及び/又は酸無水物基を含む有機樹脂を含有する硬化性組成物が、それぞれ開示されている。また、特許文献6には、ラダー状ポリチタノキサンを焼成することでガラス基板上に高屈折率の酸化チタン薄膜を形成した構造物が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−299049号公報
【特許文献2】特開2007−63393号公報(実施例2)
【特許文献3】特開2000−109560号公報(実施例)
【特許文献4】特開平10−204110号公報
【特許文献5】特開平10−204182号公報
【特許文献6】特開平01−129032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の現状に鑑みて、本発明は、シリル化ポリメタロキサン化合物をヒドロシリル化反応可能な硬化剤により硬化させる硬化性組成物を提供すること、とくに熱硬化性で屈折率が高く透明安定性に優れ、薄膜のみならず厚膜もしくはバルクとしても適用可能な樹脂組成物及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)下記一般式(1)で表されるシリル化ポリメタロキサン化合物(本明細書中、シリル化ポリメタロキサン化合物(A)ともいう。)、
(B)1分子中にSi−H結合含有基を少なくとも二つ有し、かつ、シロキサン結合を有していない化合物(本明細書中、化合物(B)ともいう。)、及び、
(C)硬化触媒、を含む硬化性組成物である。

αβ(OSiRγ(OR)δ (1)

式(1)中、Mはチタン原子又はジルコニウム原子を表し、R、R及びRは、それぞれ、同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基である。分子中にそれぞれ複数存在するR、R、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、かつ、分子中の全てのR、R及びRのうち、少なくとも二つはアルケニル基である。α、β、γ及びδは、以下の条件(a)〜(d)を満たす自然数である:
(a)α≧2、
(b)1.8α≧β≧α、
(c)γ+δ=4α−2β、
(d)γ≧2。
【0008】
本発明の他の態様においては、さらに、ビニル基含有シルセスキオキサン(D)を含有する。
本発明の別の態様においては、さらに、(E)芳香環及び/又はイソシアヌル環を有し、かつ、(i)1分子中に炭素数2〜5のアルケニル基を少なくとも二つ有する、又は、(ii)炭素数2〜5のアルケニル基と水酸基を一つずつ有する、有機化合物を含有し、相溶溶液を形成する。
本発明はまた、上記組成物を硬化してなる硬化物又は薄膜でもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は上述の構成により、シリル化ポリジルコノキサン化合物やシリル化ポリチタノキサン化合物を、ヒドロシリル化反応により、1分子中にSi−H結合含有基を少なくとも二つ有する化合物を硬化剤として用いて硬化させることができる。その硬化物は、例えば、1.6前後またはそれ以上の高屈折率を示し、薄膜のみならず厚さ数mm程度の厚膜ないしバルクとしても適用可能である。本発明の組成物は、例えば、フィルム状レンズ、反射防止膜等の光学部品や、太陽電池、有機EL、LED等の光素子の高効率化に有用な高屈折率層形成用透明材料として使用することができ、更には太陽電池、有機EL、LED等の光素子の封止用樹脂としてエポキシ樹脂の代わりに使用することができ、高効率の発光素子を製造することができる。
【0010】
本発明の組成物は、上述の構成により、有機樹脂成分を必須成分として含まないので、無機成分と有機成分との相溶性に基づく問題が生じない。また、シリル化ポリメタロキサン化合物を硬化剤で硬化させる系であるので、組成物の粘度調整等が広い範囲で可能であり、溶剤型のみならず無溶剤でも注型や塗布が可能な程度の粘度にも調節が可能である。また、硬化剤の構造を自由に設計することができるので、硬化物の物性、例えば、機械特性、光学特性(屈折率)等を広い範囲で調整することができる。さらに、シリル化ポリメタロキサン化合物に導入するモノシラノールの種類を変えることでも屈折率の制御が可能である。
【0011】
本発明の組成物は、上述の構成により、本質的に脱離基を生じない硬化系とすることができるので、薄膜として基板上に形成することはもちろん、厚膜やバルクの硬化物を得る事が可能である。また、ヒドロシリル化硬化を採用しているので、熱や光の長期間に及ぶ暴露を受けてもほとんど透過率が低下することなくその透明性が維持される。
本発明の組成物は、上述の構成により、150℃前後で硬化する事が可能であり、焼成などの場合のように数百℃に加熱する必要がない。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明におけるシリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、上記一般式(1)で表される化合物である。式(1)中、Mはチタン原子又はジルコニウム原子を表し、R、R及びRは、それぞれ、同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を表す。Rは炭素数1〜12のアルキル基であれば特に限定されないが、原料の入手容易性からメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−エチルヘキシル等の炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。分子中にそれぞれ複数存在するR、R、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、かつ、分子中の全てのR、R及びRのうち、少なくとも二つはアルケニル基である。すなわち、本発明におけるシリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、分子中に少なくとも二つのアルケニル基を有し、好ましくは、2〜50個、より好ましくは4〜40個である。
【0013】
上記R、R及びRにおいて、炭素数1〜12のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、ドデシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチルである。上記炭素数6〜12のアリール基としては特に限定されず、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニルである。上記炭素数7〜12のアラルキル基としては特に限定されず、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルが挙げられる。上記炭素数2〜12のアルケニル基としては特に限定されず、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、CH=CH−(CH−等の直鎖状アルケニル基;3−シクロヘキセニル基、5−ビシクロヘプテニル基、シクロペンテニル基等の環状アルケニル基が挙げられる。好ましくはビニル、アリルである。
【0014】
上記式(1)中、α、β、γ及びδは、上記の条件(a)〜(d)を満たす自然数である。上記式(1)中のαとβの関係において、βが1.8αよりも大きいと、シリル化ポリメタロキサン化合物(A)がゲル化して硬化物が白濁する場合があり、βがαよりも小さいと組成物の屈折率が充分高くならないので、1.8α≧β≧αを満たす必要がある。シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、αが2以上であり、シリル化ポリメタロキサン化合物(A)中に、Ti−O−又はZr−O−のメタロキサンの単位構造が少なくとも二つ存在していることを示す。αの上限はとくに定めないが、通常、5〜30程度のオリゴマーである。
【0015】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、直鎖状、分枝状、三次元網目状、ペンダント状、ラダー状、籠状等のいずれの重合体形態であってもよいが、本発明の組成物が相溶性溶液を形成していることが好ましいので、上記化合物(B)及び硬化触媒(C)、又は、該当する場合はビニル基含有シルセスキオキサン(D)、もしくは有機化合物(E)との相溶性を保持していることが好ましい。相溶性を保持しているかぎり、いずれの重合体形態であっても好ましい。相溶性保持の観点から、αが5〜30のオリゴマーであることが好ましい。
【0016】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)中のチタン又はジルコニウムの含量としては、16〜49wt%が好ましく、18〜49wt%がより好ましい。
【0017】
上記シリル化ポリメタロキサン化合物(A)の製造方法は、例えば、(a)ポリメタロキサン化合物をアルケニル基含有モノシラノールと反応させてシリル化誘導体を得る方法、(b)金属テトラアルコキシドとアルケニル基含有モノシラノールとを反応させて得られる反応生成物を加水分解および縮合させる方法などを挙げる事ができる。
【0018】
上記(a)の方法においては、ポリメタロキサン化合物は、例えば、M(OR)[式中、4つのRは、それぞれ同一に、炭素数1〜12(好ましくは1〜8)のアルキル基である。Mは、チタン原子又はジルコニウム原子を表す。]で表される金属テトラアルコキシドを、1.0〜1.8倍モルの量の水を用いて加水分解縮合させて得ることができる。具体例には、例えば、チタニウムアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドを部分加水分解する方法が挙げられ、例えば、テトラアルコキシチタン又はテトラアルコキシジルコニウムを、溶剤にて希釈したのち、上記量の水を滴下し、還流する方法等を挙げることができる。加水分解の温度は、20〜90℃が好ましい。加水分解反応の反応混合物が常温でゲル化する場合には、冷却下(例えば−50〜−20℃程度)で撹拌しつつ水を滴下し、滴下後、20〜90℃に昇温して熟成すればよい。
【0019】
シリル化誘導体とするために使用するアルケニル基含有モノシラノールとしては、例えば、アルケニル基(例えば、上記に例示した基等、好ましい例も同様。)を含有するシラノール、例えば、ジメチルビニルシリルオキシ基、アリルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルビニルシリルオキシ基、CH=CH−(CH−Si(Me)−O−等を有するモノシラノールを使用することができ、具体的には、ジメチルビニルシラノール、ジメチルアリルシラノール等を挙げることができる。
【0020】
シリル化は、ポリメタロキサン化合物を溶剤に溶解し、アルケニル基含有モノシラノールと反応させればよく、反応条件としては、50〜90℃、1〜3時間程度である。
【0021】
また、上記(b)の方法においては、シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、例えば、以下の方法で得ることができる。まず、上記M(OR)で表される金属テトラアルコキシドに対し0.4〜2.0倍モル量のアルケニル基含有モノシラノール(例えば、上記に例示した化合物等。)を反応させてシリル化メタロキサン化合物を得る。反応条件としては、50〜90℃、1〜3時間程度である。その後、シリル化メタロキサン化合物に対して、1.0〜1.8倍モルの水で加水分解縮合させてシリル化ポリメタロキサン化合物を合成することができる。加水分解の温度は20℃から90℃が好ましい。
【0022】
上記化合物(B)としては、1分子中にSi−H結合含有基を少なくとも二つ有するとともに、高屈折率材料を得るという目的からシロキサン結合を分子中に含まない化合物を用いる。このような化合物(B)としては、例えば、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、メチルフェニルシラン、ジフェニルシラン等を挙げることができる。また、フェニルシラン等の1分子中にSi−H結合含有基を3つ又はそれ以上有する化合物であってもよい。これらの化合物は、上記シリル化ポリメタロキサン化合物(A)及び硬化触媒(C)、又は、該当する場合はビニル基含有シルセスキオキサン(D)、もしくは有機化合物(E)との相溶性を保持するためにも好ましい。なお、本明細書中、Si−H結合含有基とは、Si原子に少なくとも一つのH原子が結合してなる基をいい、例えば、ヒドロシリル基等である。
【0023】
上記化合物(B)としては、また、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと1分子中に炭素数2〜12のアルケニル基を少なくとも二つ有する有機化合物との反応物を使用することができる。上記反応物は、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと1分子中に炭素数2〜12のアルケニル基を少なくとも二つ有する有機化合物とのヒドロシリル化反応物であってよい。
【0024】
上記1分子中に炭素数2〜12のアルケニル基を少なくとも二つ有する有機化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−へプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2−ジアリルシクロヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、ジアリルエーテル、ジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジアリルエーテル、コハク酸ジアリル、シュウ酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、ジアリルカーボネート、1,2−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジアリルベンゼン、1,4−ジアリルベンゼン、ジビニルトルエン、1,4−ジビニルナフタレン、1,5−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、1,4−ジアリルナフタレン、1,5−ジアリルナフタレン、1,8−ジアリルナフタレン、9,10−ジビニルアントラセン、9,10−ジアリルアントラセン、ビスフェノールAジアリルエーテル、1,2−ジアリルオキシベンゼン、1,3−ジアリルオキシベンゼン、1,4−ジアリルオキシベンゼン、テレフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシロキシ)ベンゼン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジビニルジフェニルシラン、ジアリルジフェニルシラン等のアルケニル基を1分子中に二つ有する化合物;トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメリット酸トリアリル、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシメチル)メタン、1,3,5−ベンゼントリカルボキシ酸トリアリル、1,2,4,5−テトラアリルベンゼン、ピロメリット酸テトラアリル、等のアルケニル基を1分子中に三つ又はそれ以上有する化合物等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。好ましくは、アルケニル基を1分子中に二つ有する化合物である。
【0025】
上記反応物の具体例としては、例えば、上記の化合物であって、SiH基の官能基量がアルケニル基の官能基量より過剰になる様に配合してヒドロシリル化反応により得ることができる有機化合物を挙げることができ、例えば、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとフタル酸ジアリルとのモル比2:1〜1:1の反応物、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとビニルベンゼンとのモル比2:1〜1:1の反応物、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとペンタエリスリトールトリアリルエーテルとのモル比3:1の反応物等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。これらの反応物は、上記シリル化ポリメタロキサン化合物(A)及び硬化触媒(C)、又は、該当する場合はビニル基含有シルセスキオキサン(D)、もしくは有機化合物(E)との相溶性を保持するためにも、好ましい。
【0026】
上記ヒドロシリル化反応は、溶媒の存在、又は、非存在下において、好ましくは触媒の存在下、加熱することによって目的の化合物を得ることができ、上記触媒としては、白金触媒が使用できる。反応条件としては、例えば、窒素雰囲気下において溶剤、触媒の存在下70℃〜150℃の加熱処理によって合成する事ができる。
【0027】
本発明においては、上記化合物(B)に加えて、さらに、必要であればクラックの防止のためにSi−H結合含有基を少なくとも二つ有するシロキサン化合物を硬化性組成物の0〜30wt%の割合で使用することができる。このようなシロキサン化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン等を挙げることができる。また、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等の1分子中にSi−H結合含有基を3つ又はそれ以上有するシロキサン化合物であってもよい。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0028】
硬化触媒(C)としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが例えば、白金含有触媒、例えば、白金−オレフィン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、白金−ジビニルシロキサン錯体、白金環状ビニルメチルシロキサン錯体、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金、塩化白金酸、ビス(エチレン)テトラクロロ二白金、シクロオクタジエンジクロロ白金、ビス(シクロオクタジエン)白金、ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ジクロロ白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、白金カーボン等のヒドロシリル化触媒を使用することができる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0029】
本発明において、硬化性組成物中の固形分合計量(単に「固形分合計量」というときは以下同じ)に対するシリル化ポリメタロキサン化合物(A)の配合量は16〜91wt%が好ましく、20〜85wt%がより好ましい。また、シリル化ポリメタロキサン化合物(A)と化合物(B)との配合比(重量比)は、屈折率や光透過率の観点から、100:90〜100:10が好ましく、100:85〜100:20がより好ましい。
【0030】
また、硬化触媒(C)の配合比は、後述する(D)成分を使用する場合はそれも含めて、固形分合計量に対して質量基準で0.1〜1000ppmが好ましく、1〜100ppmがより好ましい。
【0031】
本発明においては、さらに(D)成分として、所望により、ビニル基含有シルセスキオキサンを使用することができる。上記シルセスキオキサンは籠型構造体、籠型構造体の部分開裂構造体、ラダー型構造体又は無定形構造体のいずれであってもよい。上記ビニル基含有シルセスキオキサンは、シルセスキオキサンの骨格構造を合成したものにビニル置換基を導入する方法、又は、ビニル基を有する3官能有機ケイ素モノマーの加水分解による方法等により得ることができる。ビニル基含有シルセスキオキサンとしては、ラダー型構造体が、入手の容易性からも好ましい。
【0032】
上記ビニル基含有シルセスキオキサン(D)の配合量は、固形分合計量の0〜75wt%が好ましい。
【0033】
本発明の他の態様においては、さらに、(E)芳香環及び/又はイソシアヌル環を有し、かつ、(i)1分子中に炭素数2〜5のアルケニル基(例えば、上記に例示した基のうち該当するもの等、好ましい例も同様。)を少なくとも二つ有する、又は、(ii)炭素数2〜5のアルケニル基と水酸基を一つずつ有する、有機化合物を含有し、組成物は相溶溶液を形成する。上記有機化合物(E)において、芳香環及び/又はイソシアヌル環を有し、かつ、1分子中に炭素数2〜5のアルケニル基を少なくとも二つ有するものとしては、さらに、水酸基も有するものであってよい。この場合の水酸基は複数有していてもよいが、一つだけであることが好ましい。上記有機化合物(E)としては、アルケニル基を二つ又はそれ以上有し、水酸基を一つ又は複数、好ましくは一つ、有していてもよい、芳香環含有化合物;アルケニル基を二つ又はそれ以上有し、水酸基を一つ又は複数、好ましくは一つ、有していてもよい、イソシアヌル環含有化合物;一つのアルケニル基と一つの水酸基を有する芳香環含有化合物;一つのアルケニル基と一つの水酸基を有するイソシアヌル環含有化合物;等を挙げることができる。
【0034】
この場合において、上記(A)としては、一般式(1)におけるγが8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
【0035】
上記有機化合物(E)としては、上記(A)、(B)及び(C)、該当する場合はさらに(D)とともに相溶溶液を形成するものであるかぎりとくに限定されず、具体的には、例えば、1,2−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジアリルベンゼン、1,4−ジアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,2,4,5−テトラアリルベンゼン、へキサアリルベンゼン、ジビニルトルエン、1,4−ジビニルナフタレン、1,5−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、1,4−ジアリルナフタレン、1,5−ジアリルナフタレン、1,8−ジアリルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、9,10−ジビニルアントラセン、9,10−ジアリルアントラセン、ビスフェノールAジアリルエーテル、1,2−ジアリルオキシベンゼン、1,3−ジアリルオキシベンゼン、1,4−ジアリルオキシベンゼン、テレフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸トリアリル、ピロメリット酸テトラアリル、ジアリルフェニルスルホン、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、ジビニルメチルフェニルシラン、ジビニルジフェニルシラン、ジアリルジフェニルシラン、イソシアヌル酸ジアリルプロピル、イソシアヌル酸トリアリル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1−アリルオキシ−3−フェノキシ−2−プロパノール、2−ヒドロキシ安息香酸アリル、3−ヒドロキシ安息香酸アリル、4−ヒドロキシ安息香酸アリル、リンゴ酸ジアリル、3−ヒドロキシイソフタル酸ジアリル、5−ヒドロキシイソフタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル(2−ヒドロキシエチル)等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1−アリルオキシ−3−フェノキシ−2−プロパノール、フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、リンゴ酸ジアリル、3−ヒドロキシイソフタル酸ジアリル、5−ヒドロキシイソフタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル(2−ヒドロキシエチル)である。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0036】
上記有機化合物(E)の配合量は、固形分合計量の0〜50wt%が好ましい。
【0037】
本発明の組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、その他の添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤、ヒンダードアミン系光安定化剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、メガファックR−08(商品名)、メガファックF−410(商品名)(いずれも大日本インキ化学工業社製)、EF−102(商品名)(株式会社ジェムコ製)等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定化剤としては、例えば、TINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)622LD(いずれもチバスペシャルティーケミカルズ社製)、アデカスタブ(登録商標)LA−57(旭電化工業社製)等が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)、ノクラックNS−30(商品名)(大内新興化学工業社製)、トミノックスTT(商品名)(吉豊ファインケミカル社製)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0038】
上記シランカップリング剤の配合量は、組成物中、0.1〜5phrが好ましく、より好ましくは0.5〜2phrである。
上記ヒンダードアミン系光安定化剤の配合量は、組成物中、0.01〜0.5phrが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3phrである。
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量は、組成物中、0.01〜0.5phrが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3phrである。
【0039】
本発明の硬化性組成物は、上記成分を、適宜、有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン等の周知の溶剤)により溶解することにより、又は、有機溶剤を用いることなく常温にて混合、攪拌することにより、調製することができる。また、必要により組成物の粘度調整のために有機溶剤を用いることができる。
【0040】
本発明の組成物は、硬化条件として、50〜300℃、さらに好ましくは70〜150℃、20分〜5時間程度を使用することができる。また、初めに比較的低温、例えば、50〜100℃程度で、比較的短時間、例えば、1分〜1時間の乾燥処理を施し、その後、より高温、長時間、例えば、100〜300℃、20分〜5時間、の硬化処理を行う方法を使用することもできる。
【0041】
本発明の硬化性組成物は、ディッピング、スピンコーターなどを用いて基材上に塗布することができ、硬化させることにより、硬化厚み0.5〜4μm程度の薄膜を形成することや、数mm程度の厚膜ないしバルクを形成することもできる。または、LEDやLD等の発光素子等を封止するために注型硬化させることができる。本発明は従って、このような本発明の組成物を硬化してなる薄膜、厚膜、バルクや封止体等の硬化物でもある。
【0042】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
製造例1
ビニル基含有シリル化チタノキサン(1)の合成
回転子、還流管、滴下ロートを備えた三つ口ナス型フラスコにイソプロピルアルコール22.72gとテトライソプロピルチタネート11.36g(0.04mol)を仕込み、よく撹拌しながら80℃で加温保持した。この中に蒸留水1.08g(0.06mol)とイソプロピルアルコール16.20gとの混合液を徐々に滴下した後、85℃で1時間還流し、反応を熟成させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をトルエン10.46gに溶解した後、ジメチルビニルシラノール4.50g(0.044mol)を加えて70℃に加温して2時間反応させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて溶媒を留去し、その後、真空乾燥させ、白色固体(ビニル基含有シリル化チタノキサン(1))(Ti含有量27.8%)6.04gを得た。
【0044】
製造例2
ビニル基含有シリル化チタノキサン(2)の合成
回転子、還流管、滴下ロートを備えた三つ口ナス型フラスコにイソプロピルアルコール17.04gとテトライソプロピルチタネート8.52g(0.03mol)を仕込み、よく撹拌しながら80℃で加温保持した。この中に蒸留水0.54g(0.03mol)とイソプロピルアルコール8.10gとの混合液を徐々に滴下した後、85℃で1時間還流し、反応を熟成させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をトルエン10.91gに溶解した後、ジメチルビニルシラノール6.75g(0.066mol)を加えて70℃に加温して2時間反応させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて溶媒を留去し、その後、真空乾燥させ、白色固体(ビニル基含有シリル化チタノキサン(2))(Ti含有量18.0%)7.53gを得た。
【0045】
製造例3
ビニル基含有シリル化チタノキサン(3)の合成
回転子、還流管、滴下ロートを備えた三つ口ナス型フラスコにイソプロピルアルコール22.72gとテトライソプロピルチタネート12.78g(0.045mol)を仕込み、よく撹拌しながら80℃で加温保持した。この中に蒸留水1.22g(0.068mol)とイソプロピルアルコール16.20gとの混合液を徐々に滴下した後、85℃で1時間還流し、反応を熟成させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をトルエン11.46gに溶解した後、ジメチルビニルシラノール2.53g(0.025mol)とジメチルフェニルシラノール3.77g(0.025mol)を加えて70℃に加温して2時間反応させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて溶媒を留去し、その後、真空乾燥させ、黄色固体(ビニル基含有シリル化チタノキサン(3))(Ti含有量24.3%)8.50gを得た。
【0046】
製造例4
ビニル基含有シリル化チタノキサン(4)の合成
回転子、還流管、滴下ロートを備えた三つ口ナス型フラスコにイソプロピルアルコール22.72gとテトライソプロピルチタネート11.36g(0.04mol)を仕込み、よく撹拌しながら80℃で加温保持した。この中に蒸留水1.22g(0.068mol)とイソプロピルアルコール18.36gとの混合液を徐々に滴下した後、85℃で1時間還流し、反応を熟成させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をトルエン8.82gに溶解した後、ジメチルビニルシラノール2.70g(0.026mol)を加えて70℃に加温して2時間反応させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて溶媒を留去し、その後、真空乾燥させ、白色固体(ビニル基含有シリル化チタノキサン(4))(Ti含有量35.4%)5.36gを得た。
【0047】
製造例5
ビニル基含有シリル化チタノキサン(5)の合成
回転子、還流管、滴下ロートを備えた三つ口ナス型フラスコにイソプロピルアルコール14.75gとテトライソプロピルチタネート17.04g(0.06mol)を仕込み、よく撹拌しながら80℃で加温保持した。この中に蒸留水1.62g(0.09mol)とイソプロピルアルコール24.30gとの混合液を徐々に滴下した後、85℃で1時間還流し、反応を熟成させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をトルエン15.0gに溶解した後、ジメチルビニルシラノール1.23g(0.012mol)を加えて70℃に加温して2時間反応させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて溶媒を留去し、その後、真空乾燥させ、白色固体(ビニル基含有シリル化チタノキサン(5))(Ti含有量34.4%)8.35gを得た。
【0048】
製造例6
ビニル基含有シリル化ジルコノキサン(1)の合成
攪拌装置、還流管、温度計、滴下ロートを備えた反応フラスコにn−プロピルアルコール170gとジルコニウムテトラ−n−プロポキシド13.09g(0.04mol)を仕込みよく撹拌した。これをドライアイス−メタノールのクールバスに浸漬し溶液を−30℃以下に冷却した。溶液を激しく攪拌しながら、蒸留水1.01g(0.056mol)とn−プロピルアルコール80gとの混合液を徐々に滴下した後、クールバスから外して自然昇温した。ウォーターバスを用いた加熱により混合液を80℃で3時間攪拌し、反応を熟成させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて濃縮し、白色固体を得た。得られた白色固体をトルエン20.73gに溶解した後、ジメチルビニルシラノール7.36g(0.048mol)を加えて70℃に加温して2時間反応させた。反応液を冷却した後、アスピレーターを用いて溶媒を留去し、その後、真空乾燥させ、白色固体(ビニル基含有シリル化ジルコノキサン(1))(Ti含有量39%)9.24gを得た。
【0049】
実施例1〜5及び比較例1
表1に示す各成分及び組成(重量部)でそれぞれ配合し室温で混合し、均一な組成物を調製した。ただし、白金−ジビニルシロキサン錯体の配合量は、固形分(ビニル基含有シリル化メタロキサンと1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとYOH1−AとYOH1−Bとの合計量)に対して質量基準で配合した値をppmで示した。
得られた各組成物をガラス基板上にスピンコートした後、それぞれ、下記の条件で硬化させて硬化物を得た。
【0050】
実施例6
実施例1と同じ成分及び組成(重量部)を無溶剤で配合し、均一な組成物を調製した。実施例1〜5及び比較例1と同様に白金−ジビニルシロキサン錯体の配合量は、固形分に対して質量基準で配合した値をppmで示した。得られた組成物を直系1cmの円柱形ガラス容器に注型した後、下記の条件で硬化させて硬化物を得た。
【0051】
実施例7
表1に示す各成分及び組成(重量部)でそれぞれ配合し室温で混合し、均一な組成物を調製した。ただし、白金−ジビニルシロキサン錯体の配合量は、固形分(ビニル基含有シリル化ジルコノキサンと1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン)に対して質量基準で配合した値をppmで示した。
得られた各組成物をシリコンウエハ上にスピンコートした後、150℃×2時間の条件で硬化させて硬化物を得た。
【0052】
実地例8
表1に示す各成分及び組成(重量部)を無溶剤で配合し、均一な組成物を調製した。実施例1〜7及び比較例1と同様に白金−ジビニルシロキサン錯体の配合量は、固形分に対して質量基準で配合した値をppmで示した。得られた組成物を直系1cmの円柱形ガラス容器に注型した後、下記の条件で硬化させて硬化物を得た。
【0053】
硬化条件(実施例1〜6及び8、比較例1):70℃×2時間+120℃×5時間
測定条件は以下のとおり。
厚み測定:触針式表面形状測定器
屈折率の測定:エリプソメーターを用いて589nmにおける屈折率を室温(25℃)にて測定した。
結果をそれぞれ表1に示した。なお、表中の略号は以下のとおりである。
YOH−1A:ナガセケムテックス社製ビニル基含有ラダー型シルセスキオキサン
YOH−1B:ナガセケムテックス社製Si−H結合含有基を1分子中に二つ有する化合物
【0054】
【表1】

【0055】
上記実施例から本発明の組成物は、70℃×2時間+120℃×5時間又は150℃×2時間の低い温度条件下であっても硬化物を得る事ができた。
上記実施例から、ビニル基含有シリル化メタロキサンを1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンで硬化した実施例1、3、4、5及び7硬化物は、薄膜にすることができ、高い屈折率を有していた。また、ビニル基含有シルセスキオキサンを混合した実施例2も、シルセスキオキサン硬化物(比較例1)と比べて高い屈折率を示し、シルセスキオキサンに本発明の組成物を配合することで屈折率を向上することができた。さらに、実施例6及び8から直径1cm、高さ5mmのクラックの無い円柱形硬化物を得た。本発明の組成物は同一の組成から薄膜及びバルクの硬化物を得る事ができた。
【0056】
実施例9〜14
表2に示す各成分及び組成(重量部)でそれぞれ配合し室温で混合し、均一な組成物を調製した。ただし、白金−ジビニルシロキサン錯体の配合量は、固形分(ビニル基含有シリル化ジルコノキサンと1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン)に対して質量基準で配合した値をppmで示した。
得られた各組成物をシリコンウエハ上にスピンコートした後、150℃×2時間の条件で硬化させて硬化物を得た。硬化物の屈折率を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示した。なお、表中の略号は以下のとおりである。
ビニル基含有シリル化チタノキサン(5):一般式(1)中のγが2に相当する化合物
DA−141:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
AFPrOH:1−アリルオキシ−3−フェノキシ−2−プロパノール
1,4−Bis−DA:1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとフタル酸ジアリルとのモル比2:1で配合し白金触媒を用いたヒドロシリル化反応によって得られた化合物。
【0057】
【表2】

【0058】
上記実施例から、芳香環及び/又はイソシアヌル環を有し、かつ、(i)1分子中に炭素数2〜5のアルケニル基を少なくとも二つ有する、又は、(ii)炭素数2〜5のアルケニル基と水酸基を一つずつ有する、有機化合物を配合した実施例9〜13、及び、化合物(B)として1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと一分子中に炭素数2〜12のアルケニル基を少なくとも二つ有する有機化合物との反応物を使用した実施例14は、いずれも、非常に高い屈折率を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるシリル化ポリメタロキサン化合物、
(B)1分子中にSi−H結合含有基を少なくとも二つ有し、かつ、シロキサン結合を有していない化合物、及び、
(C)硬化触媒、を含む硬化性組成物。

αβ(OSiRγ(OR)δ (1)

(式(1)中、Mはチタン原子又はジルコニウム原子を表し、R、R及びRは、それぞれ、同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基である。分子中にそれぞれ複数存在するR、R、R及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、かつ、分子中の全てのR、R及びRのうち少なくとも二つはアルケニル基である。α、β、γ及びδは、以下の条件(a)〜(d)を満たす自然数である:
(a)α≧2、
(b)1.8α≧β≧α、
(c)γ+δ=4α−2β、
(d)γ≧2)
【請求項2】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、M(OR)[式中、4つのRは、それぞれ同一に、炭素数1〜12のアルキル基である。Mは、チタン原子又はジルコニウム原子を表す。]で表される金属テトラアルコキシドを、1.0〜1.8倍モルの量の水を用いて加水分解縮合させ、ついで、環状又は直鎖状の、アルケニル基含有モノシラノールを反応させて得られる化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、M(OR)[式中、4つのRは、それぞれ同一に、炭素数1〜12のアルキル基である。Mは、チタン原子又はジルコニウム原子を表す。]で表される金属テトラアルコキシドに対し0.4〜2.0倍モル量の、環状又は直鎖状の、アルケニル基含有モノシラノールを反応させ、ついで、得られたシリル化メタロキサン化合物を、1.0〜1.8倍モルの水を用いて加水分解縮合させて得られる化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、アルケニル基含有モノシラノールとともにアルケニル基以外の炭化水素基を含有するモノシラノールも反応させて得られるものである請求項2又は3記載の組成物。
【請求項5】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、シリル化ポリジルコノキサン化合物である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
シリル化ポリメタロキサン化合物(A)は、シリル化ポリチタノキサン化合物である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
アルケニル基は、ビニル基又はアリル基である請求項1〜6のいずれか記載の組成物。
【請求項8】
化合物(B)は、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン又はメチルフェニルシランである請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
化合物(B)は、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと一分子中に炭素数2〜12のアルケニル基を少なくとも二つ有する有機化合物との反応物である請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
さらに、(D)ビニル基含有シルセスキオキサンを含有する請求項1〜9のいずれか記載の組成物。
【請求項11】
相溶溶液を形成する請求項1〜10のいずれか記載の組成物。
【請求項12】
さらに、(E)芳香環及び/又はイソシアヌル環を有し、かつ、(i)1分子中に炭素数2〜5のアルケニル基を少なくとも二つ有する、又は、(ii)炭素数2〜5のアルケニル基と水酸基を一つずつ有する、有機化合物を含有し、相溶溶液を形成する請求項1〜10のいずれか記載の組成物。
【請求項13】
有機化合物(E)は、1分子中に炭素数2〜5のアルケニル基を少なくとも二つ有するとともに、さらに、水酸基も有するものである請求項12記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか記載の組成物を硬化してなる硬化物又は薄膜。

【公開番号】特開2009−173910(P2009−173910A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329924(P2008−329924)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】