説明

硬化性組成物

【課題】透明性に優れ、硬度が高く、かつガスバリア性に優れる硬化性組成物、該組成物の硬化物よりなる光学的または電気光学的部材を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1):
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−c (1)
〔式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子を示し、Rはパーマコール値が20以上の値を示す2価の有機基を示し、aおよびcは、それぞれ独立して、0〜2の整数を示し、bは1以上500以下の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーを、加水分解・重縮合して得られ、質量平均分子量(Mw)が6000以上である重縮合物を含有することを特徴とする硬化性組成物、該硬化性組成物を硬化させた硬化物よりなる光学的または電気光学的部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、より詳しくは、透明性に優れ、硬度が高く、ガスバリア性に優れ、圧膜成形が可能であり、光学的または電気光学的部材等に利用しうる硬化性組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下「LED」と略記する。)や半導体レーザー等の半導体発光デバイスにおいては、半導体発光素子を透明の樹脂等の部材(半導体発光デバイス用部材)によって封止したものが一般的である。
【0003】
この半導体発光デバイスなどの封止材料としては、例えばケイ素を含有した重合体が用いられている。主鎖にケイ素を含有した重合体(含ケイ素重合体)は、一般に高い耐久性を有する硬化体を得ることができ、コーティング材料等に利用されている。上記含ケイ素重合体としては、主鎖にケイ素原子と炭素原子とを有するポリカルボシランや、主鎖にケイ素原子と酸素原子とを有するポリシロキサン等が知られている。
【0004】
カルボシラン系材料は、ガスバリア性に優れるという特性を有している(例えば特許文献1参照)。一方、ポリシロキサン系材料は、基板上への密着性に優れ、圧膜成形可能であるという特性を有している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−168443号公報
【特許文献2】特開2008−4961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の半導体発光デバイスの発達に伴い、さらなるガスバリア性、密着性の向上が求められている。
特許文献1に記載のカルボシラン系材料としては、メチレン基を有するカルボシラン材料が提案されている。しかしながら、この材料は、ガスバリア性が低く、圧膜成形できず、その上、硬度が低いため、封止材料には不向きであった。
【0007】
また、特許文献2に記載のポリシロキサン系材料もガスバリア性が低い傾向にあり、半導体発光デバイスを長時間使用した際に半導体発光素子の電極に腐食が生じること、また水分の浸入により蛍光体や発光素子が劣化することがあるなどの課題があった。
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点が改善された、透明性に優れ、硬度が高く、かつガスバリア性に優れ、圧膜成形が可能であり、光学的または電気光学的部材等に利用しうる硬化性組成物、該組成物を硬化させた硬化物よりなる部材などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、パーマコール値の高い2価の有機基を主鎖にもつシラン化合物を、加水分解・重縮合して得られる重縮合物が、良好な成膜性(硬化性)を有し、該重縮合物の硬化物は、透明性に優れ、硬度が高く、かつガスバリア性に優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられものである。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、下記の〔1〕〜〔8〕に存する。
〔1〕下記一般式(1):
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−c (1)
〔式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子を示し、Rはパーマコール値が20以上の値を示す2価の有機基を示し、aおよびcは、それぞれ独立して、0〜2の整数を示し、bは1以上500以下の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーを、加水分解・重縮合して得られ、質量平均分子量(Mw)が6000以上である重縮合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
〔2〕加水分解・重縮合が、前記一般式(1)で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーと、下記一般式(2):
HO(−Si(R)(R)−O−)H (2)
〔式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、一価の炭化水素基、芳香族基または環状エーテル基を示し、nは1〜500の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物を反応させた後に、下記一般式(3):
Si(OR4−d (3)
〔式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、一価の炭化水素基、芳香族基、環状エーテル基、水素原子またはハロゲン原子を示し、dは0〜2の整数を示し、複数個のRは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表されるシラン化合物を反応させることよりなることを特徴とする〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔3〕加水分解・重縮合が、スズ触媒の存在下で行われることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕一般式(1)におけるRが2価の芳香族基であることを特徴とする〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔5〕硬化性組成物が、非平衡型オニウム塩触媒の存在下で硬化させるものであることを特徴とする〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔6〕硬化性組成物が、非平衡型オニウム塩触媒を含有することを特徴とする〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔7〕〔1〕ないし〔6〕のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物よりなることを特徴とする光学的または電気光学的部材。
〔8〕硬化物が、非平衡型オニウム塩触媒の存在下で硬化させたものであることを特徴とする〔7〕に記載に記載の光学的または電気光学的部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、良好な成膜性(硬化性)を有し、透明性に優れ、硬度が高く、かつガスバリア性に優れ、光学的または電気光学的部材(封止材料)等に利用しうる硬化性組成物、該組成物を硬化させた硬化物よりなる部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学的または電気光学的部材を用いた半導体発光デバイスの模式図である。
【図2】参考例1、実施例1〜3の硬化性組成物を成膜したサンプルのガスバリア性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本発明の硬化性組成物は、下記一般式(1):
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−c (1)
〔式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子を示し、Rはパーマコール値が20以上の値を示す2価の有機基を示し、aおよびcは、それぞれ独立して、0〜2の整数を示し、bは1以上500以下の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーを、加水分解・重縮合して得られ、質量平均分子量(Mw)が6000以上である重縮合物を含有することに特徴をもつものである。
【0015】
先ず、上記一般式(1)において、R、R、R、RおよびRの定義中の基および原子について説明する。
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子である。
【0016】
1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボニル基などが挙げられる。これらの中で、メチル基、フェニル基、シクロヘキシル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましく、耐熱性の観点からメチル基が特に好ましい。
【0017】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの中で、塩素原子が好ましい。
【0018】
は、パーマコール値が20以上の値を示す2価の有機基である。
ここで、パーマコール値とは、Rの2価の有機基を構成する原子団の凝集エネルギー密度と自由体積分率から算出される固有値である。
本発明では、パーマコール値はガス透過性の指標として用いられ、M. Salame著, ACS Polymer Preprints 8, 137 (1967(15))に記載の表から計算した値をいう。
【0019】
また、Rが連結している(bが2以上の)場合は、以下の式[A]のようにして(R全体のパーマコール値を算出することができる。
(各々のRのパーマコール値の累計)/(Rの総数) [A]
上記式[A]において、(各々のRのパーマコール値の累計)とは、連結しているRのパーマコール値の累計であり、(Rの総数)は、bの値のことである。
また、Rが例えばジメチルフェニレン基である場合など、R自体が分岐している場合においては、各々のRのパーマコール値として、そのRに含まれるすべての官能基のパーマコール値の累計値を用いることができる。
【0020】
のパーマコール値は、通常20以上、好ましくは30以上、より好ましくは60以上であり、通常400以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。また、Rが連結している又は分岐している場合、すなわち上記式[A]により求められる(R全体のパーマコール値は、通常20以上、好ましくは30以上、より好ましくは60以上であり、通常400以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。
【0021】
かかるパーマコール値をもつ2価の有機基(R)としては、例えば、エステル基、アミド基、イミド基、エーテル基、スルホン基、フェニレン基などが挙げられる。これらの中で、フェニレン基、エーテル、ビフェニル基が好ましく、フェニレン基、エーテル基がより好ましく、耐熱性の観点からフェニレン基が特に好ましい。また、これらの基は、互いに連結していてもよい。基の連結数と種類は、上記パーマコール値の範囲を満たすものであればよい。
【0022】
分岐した2価の有機基(R)としては、例えば、ジメチルフェニレン基、メチルフェニレン基などが挙げられる。これらの中で、作業性の観点からジメチルフェニレン基が特に好ましい。また、これらの基は、互いに連結していてもよい。基の連結数と種類は、上記パーマコール値の範囲を満たすものであればよい。
【0023】
aおよびcの数は、R、R、RおよびRの数を規定するものであり、それぞれ独立して、0、1、2の整数である。これらの中で、質量平均分子量を調整する観点から、aは2が好ましく、cは2が好ましい。
【0024】
bは2価の有機基の連結数であり、基の連結数と種類は、上記(R全体のパーマコール値の範囲を満たすものであれば特に制限されないが、bの数は、通常1以上の整数であり、通常500以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下の整数である。
【0025】
パーマコール値が高い(20以上の)2価の有機基を有すると、分子が凝集しやすくなる傾向にあり、そのため、ガスバリア性が向上するものと推測される。
【0026】
上記一般式(1)で表されるシラン化合物としては、例えば、ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼン(Rのパーマコール値:70)、ビスジメチルヒドロキシシリルジメチルベンゼン(Rのパーマコール値:130)、ビスジメチルヒドロキシシリルビフェニル(Rのパーマコール値:70)、オキシジフェニルビスジメチルシラノール(Rのパーマコール値:71)などが挙げられる。これらの中で、ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼン、オキシジフェニルビスジメチルシラノールが好ましく、作業性の観点からビスジメチルヒドロキシシリルベンゼンがより好ましい。
【0027】
また、上記一般式(1)で表されるシラン化合物は、オリゴマーであってもよく、その場合、重合数は、通常2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、通常100以下、好ましくは50以下、より好ましくは35以下である。重合数が低すぎると硬化不良を引き起こし、高すぎると硬化時の作業性が良好でない。
【0028】
本発明の硬化性組成物を構成する重縮合物は、上記一般式(1)で表される化合物および/またはそのオリゴマーを、加水分解・重縮合することにより得られる。加水分解・重縮合は、質量平均分子量(Mw)が6000以上であり、上記した所望の効果を奏する重縮合物が得られる方法であれば特に限定されない。
【0029】
具体的には、例えば、上記一般式(1)で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーと、下記一般式(2):
HO(−Si(R)(R)−O−)H (2)
〔式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、一価の炭化水素基、芳香族基または環状エーテル基を示し、nは1〜500の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物を反応させた後に、下記一般式(3):
Si(OR4−d (3)
〔式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、一価の炭化水素基、芳香族基または環状エーテル基を示し、dは0〜2の整数を示し、複数個のRは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表されるシラン化合物を反応させる方法が好ましい。
【0030】
上記一般式(2)において、RおよびRは、一価の炭化水素基、芳香族基または環状エーテル基であり、nは1〜500の整数である。
【0031】
1価の炭化水素基としては、一般式(1)の「一価の炭化水素基」と同義である。
芳香族基としては、例えば、フェニル基、ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中で、フェニル基が特に好ましい。
環状エーテル基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基などが挙げられる。これらの中で、反応性の観点からエポキシ基が特に好ましい。
【0032】
nは繰り返し単位「−Si(R)(R)−O−」の数を規定するものである。nは、質量平均分子量の調整の観点から通常1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、通常500以下、好ましくは50以下、より好ましくは35以下の整数である。
【0033】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジフェニルシラノール、ポリジメチルシラノール、ジメチルシラノール、メチルフェニルポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらの中で、ジフェニルシラノール、ポリジメチルシラノールが好ましく、耐熱性の観点からポリジメチルシラノールが特に好ましい。
【0034】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物の製品例としては、例えば、両末端シラノールジメチルシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のXC96−723、n=5〜10、YF3800、XF3905、YF3057)、両末端シラノールメチルフェニルポリシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYF3804)などが挙げられる。これらの中で、XC96−723、YF3800が好ましく、XC96−723がより好ましい。
【0035】
また、上記一般式(3)において、RおよびRは、それぞれ独立して一価の炭化水素基、芳香族基、環状エーテル基、水素原子またはハロゲン原子である。RおよびRにおける一価の炭化水素基、芳香族基、環状エーテル基は、一般式(2)におけるものと同義である。ハロゲン原子は、一般式(1)におけるものと同義である。
【0036】
dはSiの置換基R、ORの数を規定するものであって、通常0〜2の整数、好ましくは1である。dが0であると分子量が大きくなり、作業性が低下する傾向にあり、dが大きすぎると分子量が小さくなり、硬化不良を起こしてしまうことがある。また、複数個存在するSiの置換基ORは同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
上記一般式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
これらの中で、メチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが好ましく、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランがより好ましく、耐熱性の観点からメチルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0039】
上記一般式(3)で表されるシラン化合物の製品例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のLS−530)があるが、ただし、具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、例えば、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」9章のカップリング剤及び関連製品一覧表により示すことが出来る。また、当然のことながら、本発明に使用できるカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
これら一般式(3)で表されるシラン化合物は、カップリング剤としての機能を有するものである。
【0040】
一般式(1)で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマー(以下これを、「式(1)の化合物」と略記することがある。)を加水分解・重縮合する反応、例えば、式(1)の化合物と上記一般式(2)で表されるシラン化合物(以下これを、「式(2)の化合物」と略記することがある。)を反応させた反応物と、上記一般式(3)で表されるシラン化合物(以下これを、「式(3)の化合物」と略記することがある。)との反応は、触媒の存在下で行うのが好ましい。
【0041】
触媒としては、例えば、スズ触媒、チタニア触媒(テトラプロポキシチタン等)、アルミナ触媒、ゲルマニウム触媒、ジルコニア触媒、ガリウム触媒などが挙げられる。これらの中で、スズ(Sn)触媒が好ましい。スズ触媒としては、例えば、オクチル酸スズ(2価)、酸化スズ(2価)、塩化スズ(4価)などが挙げられる。これらの中で、反応の効率の観点からスズが2価であるものが好ましく、オクチル酸スズが特に好ましい。
【0042】
式(1)の化合物と式(2)の化合物の反応は、上記触媒の存在下で行うのが好ましい。この場合、この触媒は、式(3)の化合物を反応させる際の触媒としての機能も果たす。
【0043】
触媒の存在割合は、例えばスズ触媒の場合、式(1)の化合物と式(2)の化合物の存在量の合計に対して通常0.01質量以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは1質量%以下である。
【0044】
式(1)、(2)、(3)の化合物の割合は特に限定されないが、芳香族モノマーである式(1)の化合物の割合が、式(1)、(2)、(3)の化合物の全量に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0045】
式(1)の化合物(芳香族モノマー)の割合がこの範囲にあるとき、ガスバリア性向上効果が得られる硬化性組成物を得ることができる。式(1)の化合物(芳香族モノマー)の割合がこの範囲より大きい場合はその効果が飽和してしまう傾向にある。
【0046】
反応温度は特に限定されないが、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であり、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下である。
【0047】
反応時間は特に限定されないが、式(1)の化合物と式(2)の化合物の反応において、通常5分間以上、好ましくは10分間以上であり、通常1時間以下、好ましくは1時間以下である。反応の進行具合を制御することで質量平均分子量を調整することができる。この反応物と式(3)の化合物との反応において、通常5分間以上、好ましくは10分間以上であり、通常100時間以下、好ましくは50時間以下である。反応の進行具合を制御することで質量平均分子量を調整することができる。
【0048】
反応時の圧力は特に限定されず、例えば、コストを考慮して常圧下で反応させることができる。また、反応中は、攪拌してもしなくてもよい。
【0049】
本発明の硬化性組成物を構成する重縮合物の質量平均分子量(Mw)は、作業性の観点から6000以上、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上であり、またその上限は特に限定されないが、通常50000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下である。また、数平均分子量(Mn)は、通常2000以上、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上であり、またその上限は特に限定されないが、通常50000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下である。重縮合物の分子量がこの範囲にあるとき、作業性良好な粘度を有することができる。
【0050】
なお、上記質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography)により測定したポリスチレン換算値である。測定方法の詳細は、実施例の項で述べる。
【0051】
本発明の硬化性組成物を硬化させることにより、透明性に優れ、高度が高く、かつガスバリア性に優れる硬化物を得ることができる。かかる特性をもつ硬化物は、光学的または電気光学的部材等に特に好適に用いることができる。すなわち、本発明の光学的または電気光学的部材は、発明の硬化性組成物を硬化させた硬化物よりなることを特徴とするものである。
【0052】
硬化は加熱により行えばよいが、適当な触媒、例えば非平衡型オニウム塩触媒の存在下で行うのが好ましい。すなわち、本発明の硬化性組成物は、適当な触媒、好ましくは非平衡型オニウム塩触媒を含んでいてもよいものである。
【0053】
加熱温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。加熱温度が低すぎると硬化不良の傾向があり、高すぎると着色、分解となる傾向がある。
【0054】
また、加熱時間は加熱温度にもよるが、通常1分間以上、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上であり、通常5時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは3時間℃以下である。加熱時間が短すぎると硬化不良となる傾向があり、長すぎると着色、分解となる傾向がある。
【0055】
非平衡型オニウム塩触媒としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩のものであれば特に制限されないが、非平衡型アミン塩、非平衡型ホスホニウム塩などが挙げられ、反応性の観点から非平衡型アミン塩が好ましい。
【0056】
非平衡型アミン塩としては、例えば、グアニジンオクトノエート、n−ヘキシルアミン2−エチルカプロエートなどが挙がられる。これらの中で、反応性の観点からグアニジンオクトノエートがより好ましい。非平衡型ホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウム塩、ジフェニルホスホニウム塩、四級ホスホニウム塩などが挙がられる。これらの中で、耐熱性の観点から四級ホスホニウムブロマイド、四級ホスホニウムボレートがより好ましい。
【0057】
触媒の使用量は特に制限されないが、重縮合物の全量に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0058】
加水分解・重縮合の反応において存在させた触媒は、硬化触媒としての機能も果たすが、さらに硬化を、非平衡アミン触媒の存在下で行うことにより高架橋化することができる。
【0059】
本発明の硬化性組成物の用途は特に制限されないが、硬化により硬度が高く、ガスバリア性に優れる透明なエラストマー状の物質を形成することができるので、光学的または電気光学的部材として特に好適である。また、用途に応じて、その他の成分を併用することができる。例えば、封止材として用いる場合は、蛍光体、無機微粒子などを併用することが好ましく、ダイボンド剤として用いる場合は熱伝導剤、無機微粒子などを併用することが好ましく、パッケージ材として用いる場合は無機微粒子などを併用することが好ましい。
【0060】
本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物よりなる光学的または電気光学的部材としては、例えば、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー等の半導体発光デバイス(光半導体装置)、光検出器、電気光学的ディスプレイ、有機半導体、有機発光ダイオード(OLED)、電子発光ディスプレイ、有機太陽電池(OPV)装置、照明装置などに用いる発光素子の封止材料、光取出し膜、保持部材などが挙げられる。
【0061】
これら装置の部材として本発明の硬化性組成物を用いる場合、必要に応じて蛍光体や無機酸化物粒子を配合し、各用途や特性に応じた条件により硬化させて部材とすればよい。光学的または電気光学的部材への応用方法は、それ自体既知に通常用いられる方法で行うことができる。
【0062】
以下、本発明の光学的または電気光学的部材を、例えば、半導体発光デバイスの封止材(波長変換用部材)として用いる場合を一例として、より具体的に説明する。
本発明の硬化性組成物は、通常は液状であるので、それに、必要に応じて蛍光体、無機微粒子などを含有させた組成物とし、該組成物を半導体発光デバイスのパッケージのカップ内に充填後、硬化したり、適当な透明支持体上に薄層状に塗布したりすることにより、波長変換用部材として使用することができる。
【0063】
なお、蛍光体や無機微粒子などは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、蛍光体や無機微粒子の他に必要に応じてその他の成分を含有させてもよい。
【0064】
蛍光体としては、後述の半導体発光素子の発する光に直接的または間接的に励起され、異なる波長の光を発する物質であれば特に制限はなく、無機系蛍光体であっても有機系蛍光体であっても用いることができる。例えば、以下に例示するような青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体の1種または2種以上を用いることができる。所望の発光色を得られるよう、用いる蛍光体の種類や含有量を適宜調整することが好ましい。
【0065】
青色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常420nm以上、中でも430nm以上、更には440nm以上であり、また、通常490nm以下、中でも480nm以下、更には470nm以下の範囲にあるものが好ましい。
【0066】
具体的には、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましい。
【0067】
緑色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上であり、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲にあるものが好ましい。
【0068】
具体的には、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、β型サイアロン、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0069】
黄色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常530nm以上、中でも540nm以上、更には550nm以上であり、また、通常620nm以下、中でも600nm以下、更には580nm以下の範囲にあるものが好適である。
【0070】
具体的には、YAl12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、(La,Y,Gd,Lu)(Si,Ge)11:Ceが好ましい。
【0071】
橙色ないし赤色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常570nm以上、中でも580nm以上、更には585nm以上であり、また、通常780nm以下、中でも700nm以下、更には680nm以下の範囲にあるものが好ましい。
【0072】
具体的には、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
【0073】
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
【0074】
無機微粒子(フィラー)の種類としては、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子やダイヤモンド粒子が例示されるが、目的に応じて他の物質を選択することもでき、これらに限定されるものではない。無機微粒子を含有させることで光学的特性や作業性を向上させることができる。混合する無機微粒子の種類は目的に応じて選択すればよい。
【0075】
無機微粒子の形態は、粉体状、スラリー状等、目的に応じいかなる形態でもよいが、透明性を保つ必要がある場合は、本発明の部材、例えば半導体発光デバイス用の部材と屈折率を同等としたり、水系・溶媒系の透明ゾルとして、本発明の硬化性組成物に加えたりすることが好ましい。
【0076】
これらの無機微粒子(一次粒子)の質量平均メジアン径(D50)は特に限定されないが、蛍光体粒子の1/10以下程度であることが好ましい。具体的には、目的に応じて以下の質量平均メジアン径(D50)のものが用いられる。
【0077】
例えば、無機粒子を光散乱材として用いるのであれば、その質量平均メジアン径(D50)は0.1〜10μmが好適である。また、例えば、無機微粒子を骨材として用いるのであれば、その質量平均メジアン径(D50)は1nm〜10μmが好適である。また、例えば、無機微粒子を増粘剤(チキソ剤)として用いるのであれば、その質量平均メジアン径(D50)は10〜100nmが好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いるのであれば、その質量平均メジアン径(D50)は1〜10nmが好適である。
【0078】
また、分散性を改善するためにシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていてもよい。
【0079】
本発明において、半導体発光デバイスは、半導体発光素子を有し、且つ、少なくとも本発明の部材を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
【0080】
半導体発光デバイスにおける本発明の部材の使用方法に特に制限はないが、上述の通り封止材、ダイボンド剤等として用いることができる。具体的には、例えば、本発明の硬化性組成物を目的とする形状を有する型に入れた状態で硬化させて部材を形成してもよいし、本発明の硬化性組成物を目的とする部位に塗布した状態で硬化させることにより、目的とする部位に部材を直接形成してもよい。
【0081】
また、半導体発光素子としては、特に制限はないが、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等が使用できる。
【0082】
半導体発光素子の発光ピーク波長は、上述の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用される。
【0083】
半導体発光素子の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上であり、また、通常510nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは450nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。
【0084】
中でも、半導体発光素子としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDとしては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。中でも、発光強度が非常に高いことから、GaN系LEDとしては、InGaN発光層を有するものが特に好ましく、InGaN層とGaN層との多重量子井戸構造のものがさらに好ましい。
【0085】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0086】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
【0087】
なお、半導体発光素子は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0088】
半導体発光デバイスは、例えば図1に示す様に、半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、蛍光体含有部(波長変換部)4、リードフレーム5等から構成される。なお、本明細書においてリードフレーム5等の導電性材料と絶縁性の樹脂成形体からなるものを、パッケージと称することがある。
【0089】
半導体発光素子1は、近紫外領域の波長を有する光を発する近紫外半導体発光素子、紫領域の波長の光を発する紫半導体発光素子、青領域の波長の光を発する青色半導体発光素子などを用いることが可能であり、300nm以上520nm以下の波長を有する光を発する。図1においては半導体発光素子が1つのみ搭載されているが、複数個の半導体発光素子を線状に、あるいは平面状に配置することも可能である。半導体発光素子1を平面状に配置することで、面照明とすることができ、このような実施形態はより出力を強くしたい場合に好適である。
【0090】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、リードフレーム5と共に成形されていてもよい。パッケージの形状は特段限定されず平面型でもカップ型でもよい。本発明の部材は、この樹脂成形体2として用いることもできる。
【0091】
リードフレーム5は導電性の金属からなり、半導体発光デバイス外から電源を供給し、半導体発光素子1に通電する役割を果たす。
【0092】
ボンディングワイヤ3は、半導体発光素子1をパッケージに固定する役割を有する。また、半導体発光素子1が電極となるリードフレームと接触していない場合には、導電性のボンディングワイヤ3が半導体発光素子1への電源供給の役割を担う。ボンディングワイヤ3は、リードフレーム5に圧着し、熱及び超音波の振動を与えることで接着させる。本発明の部材は、このボンディングワイヤの接着に用いるダイボンド剤としても用いることができる。
【0093】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、半導体発光素子1が搭載され、蛍光体を混合した蛍光体含有部(波長変換部)4により封止されている。
【0094】
本発明の部材は、封止材として蛍光体含有部4に好適に用いることができる。蛍光体含有部4は、例えば、本発明の硬化性組成物に蛍光体、無機微粒子等を混合し、必要に応じて硬化させることで得ることができる。蛍光体含有部4に含まれる成分として本発明の部材を選択しない場合は、通常封止材に用いられることが知られている透光性の樹脂を適宜選択すればよく、具体的にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの透光性の樹脂と、本発明の部材とを併用してもよい。
【0095】
蛍光体は半導体発光素子1からの励起光を変換し、励起光と波長の異なる可視光を発する。蛍光体含有部4に含まれる蛍光体は、半導体発光素子1の励起光の波長に応じ、適宜選択される。白色光を発する半導体発光デバイス(白色LED)において、青色光を発する半導体発光素子を励起光源とする場合には、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。紫色光を発する半導体発光素子の場合には、青色及び黄色の蛍光体を蛍光体層に含ませること、または青色、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実験例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。また、下記の実験例において、得られた重縮合物や硬化物(膜)の物性等の測定は次のとおり行った。
【0097】
(1)GPC(Gel permeation chromatography)測定
硬化性組成物の質量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として示した。
装置:2695−2410(Waters社製)
カラム:KF602.5−KF603−KF604(昭和電工社製)
溶離液:THF、流量0.7mL/min、サンプル濃度5.0%、注入量100μL
カラム温度:40℃
【0098】
(2)成膜性評価
テフロン(登録商標)シャーレに作製した膜厚約0.5mmのサンプルを脱型した時、硬化サンプルの取り出し易さを下記評価基準で評価し、成膜性評価を行った。
「○」(成膜性良好):エラストマー状膜がテフロン(登録商標)シャーレより脱型可能
「×」(成膜性不良):硬化不良、硬度不足により、エラストマー状膜がテフロン(登録商標)シャーレより脱型不可能であるが、硬度測定は可能
「××」(成膜せず):エラストマー状膜が得られず、硬度測定も不可能
【0099】
(3)硬度測定
テフロン(登録商標)シャーレに作製した膜厚約0.5mmのサンプルについて、A型(デュロメータタイプA)ゴム硬度計(高分子計器社製)を使用し、JIS K6253に準拠して硬度(ショアA)を測定した。
【0100】
(4)ガスバリア性の測定
テフロン(登録商標)シャーレに作製した膜厚約0.5mmのサンプルについて、JISZ0208に準拠して測定した。容積20cmの容器内に2.0gの塩化カルシウムを秤量後、サンプルを仕込み密閉した。この容器を温度60℃および湿度95%RHで保管し、所定時間後、試験サンプルを秤量し質量増加(質量変化)で評価した。保管時間は24時間、48時間で実施した。図2が質量変化を示す図である。また、参考例1と比較して質量増加が少なかったものを「○」、参考例1と比較して質量増加が多かったものを「×」とした。
【0101】
[参考例1]
メチルトリメトキシシラン0.4gと、両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723(オリゴマー)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)8gと、触媒としてジルコニウムアセチルアセトネート40mgを、枝つき重合管中に計量し、室温にて大気圧下15分撹拌した。この後、内温が100℃になるまでメタノールを留去し、さらに100℃で2時間撹拌しつつ還流させた。この後、反応液を室温まで冷却し、加水分解・重縮合液(重縮合物1)を得た。GPC測定の結果、重縮合物1の数平均分子量(Mn)は8600、質量平均分子量(Mw)は14000であった。
【0102】
上記重縮合物1を3g、直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、150℃で3時間保持し硬化したところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、成膜性評価、硬度測定、ガスバリア性の測定を行なった。その結果を表1、図2に示す。
【0103】
[実施例1]
1,4−ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼン2.0g(ベンゼン環に含まれるフェニレン基のパーマコール値は60である。)と、両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723(オリゴマー)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)6.0gと、触媒としてオクチル酸スズ40mg(1,4−ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼンと両末端シラノールジメチルシリコーンオイルの合計に対し、0.5質量%となるようにした。)を、枝付き重合管に計量し、室温にて大気圧下15分撹拌し混合した後に、約150℃にて30分反応させた。この後、内温が100℃になるまで冷却しメチルトリメトキシシランLS−530(カップリング剤)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)0.4gを加え、100℃で1.5時間の条件でメタノールを留去した。続いて、内温が130℃になるまで昇温し1.5時間反応させ水を留去した。反応液を室温まで冷却し、加水分解・重縮合液(重縮合物2)を得た。GPC測定の結果、重縮合物2の数平均分子量(Mn)は7500、質量平均分子量(Mw)は13500であった。
【0104】
上記重縮合物2を3gと、触媒として1質量%グアニジンオクトノエート30mgとを混合攪拌し、直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、150℃で3時間保持し硬化したところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、成膜性評価、硬度測定、ガスバリア性の測定を行なった。その結果を表1、図2に示す。
【0105】
[実施例2]
実施例1において、1,4−ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼンの添加量を4.0gに変更し、両末端シラノールジメチルシリコーンオイルの添加量を4.0gに変更し、14時間反応させ水を留去した以外は実施例1と同様にして、加水分解・重縮合液(重縮合物3)を得た。GPC測定の結果、重縮合物3の数平均分子量(Mn)は8500、質量平均分子量(Mw)は19100であった。
【0106】
上記重縮合物3を実施例1と同様の方法で硬化したところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、成膜性評価、硬度測定、ガスバリア性の測定を行なった。その結果を表1、図2に示す。
【0107】
[実施例3]
実施例1において、1,4−ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼンの添加量を6.0gに変更し、両末端シラノールジメチルシリコーンオイルの添加量を2.0gに変更し、40時間反応させ水を留去した以外は実施例1と同様にして、加水分解・重縮合液(重縮合物4)を得た。GPC測定の結果、重縮合物4の数平均分子量(Mn)は8000、質量平均分子量(Mw)は16700であった。
【0108】
上記重縮合物4を実施例1と同様の方法で硬化したところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、成膜性評価、硬度測定、ガスバリア性の測定を行なった。その結果を表1、図2に示す。
【0109】
[比較例1]
1,2−ビスクロロジメチルシリルエタン4.0g(エチレン基に含まれるメチレン基のパーマコール値は10である。)と、両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723(オリゴマー)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)4.0gと、1.0質量%酢酸水溶液0.7gと、触媒としてジルコニウムアセチルアセトネート40mgを、枝付き重合管に計量し、室温にて窒素バブリング下10時間撹拌し反応した。この後、メチルトリメトキシシランLS−530(カップリング剤)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)0.4gを加え、100℃で0.5時間の条件でメタノールを留去した。続いて、内温が130℃になるまで昇温し1時間反応させ水を留去した。反応液を室温まで冷却し、加水分解・重縮合液(重縮合物5)を得た。GPC測定の結果、重縮合物5の数平均分子量(Mn)は16850、質量平均分子量(Mw)は33160であった。
【0110】
上記重縮合物5を3g、直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、150℃で3時間保持し硬化したところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、成膜性評価、硬度測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0111】
[比較例2]
実施例1において、触媒として0.5質量%オクチル酸スズ40mgの代わりに、ジルコニウムアセチルアセトネート100mgを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、加水分解・重縮合液(重縮合物6)を得た。GPC測定の結果、重縮合物6の数平均分子量(Mn)は3170、質量平均分子量(Mw)は5730であった。
【0112】
上記重縮合物6を3g、直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、150℃で3時間保持し硬化を試みたが、円形透明エラストマー状膜は得られなかった。
【0113】
【表1】

【0114】
表1中、「Zr」は、ジルコニウムアセチルアセトネート、「Sn」はオクチル酸スズ、「アミン」はグアニジンオクトノエートである。また、「仕込量」は反応原料の全仕込量に対する1,4−ビスジメチルヒドロキシシリルベンゼンまたは1,2−ビスクロロジメチルシリルエタンの割合(質量%)である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の硬化性組成物の用途は特に制限されず、何れの用途に用いても良いが、特に光学的または電気光学的部材、例えば封止材料に代表される各種の用途に、特に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 半導体発光素子
2 樹脂成形体
3 ボンディングワイヤ
4 蛍光体含有部(波長変換部)
5 リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−c (1)
〔式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、ハロゲン原子または水素原子を示し、Rはパーマコール値が20以上の値を示す2価の有機基を示し、aおよびcは、それぞれ独立して、0〜2の整数を示し、bは1以上500以下の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーを、加水分解・重縮合して得られ、質量平均分子量(Mw)が6000以上である重縮合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
加水分解・重縮合が、前記一般式(1)で表されるシラン化合物および/またはそのオリゴマーと、下記一般式(2):
HO(−Si(R)(R)−O−)H (2)
〔式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、一価の炭化水素基、芳香族基または環状エーテル基を示し、nは1〜500の整数を示す。〕
で表されるシラン化合物を反応させた後に、下記一般式(3):
Si(OR4−d (3)
〔式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、一価の炭化水素基、芳香族基、環状エーテル基、水素原子またはハロゲン原子を示し、dは0〜2の整数を示し、複数個のRは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表されるシラン化合物を反応させることよりなることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
加水分解・重縮合が、スズ触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
一般式(1)におけるRが2価の芳香族基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性組成物が、非平衡型オニウム塩触媒の存在下で硬化させるものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
硬化性組成物が、非平衡型オニウム塩触媒を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物よりなることを特徴とする光学的または電気光学的部材。
【請求項8】
硬化物が、非平衡型オニウム塩触媒の存在下で硬化させたものであることを特徴とする請求項7に記載に記載の光学的または電気光学的部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236913(P2012−236913A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106814(P2011−106814)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】