説明

硬化性(メタ)アクリレート組成物

多官能性(メタ)アクリレート、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー及び重合開始剤を含んでなる硬化性組成物。この組成物は高い屈折率を示すと共に、重合後には優れた熱機械的性質を有するフィルムを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中には、硬化性(メタ)アクリレート組成物が開示され、さらに詳しくは紫外線(UV)硬化性(メタ)アクリレート組成物が開示される。かかる組成物は、光学物品用、特に光管理フィルム用として適している。
【背景技術】
【0002】
バックライト式コンピューターディスプレイその他のディスプレイ装置では、光を指向させるために光学フィルムが常用されている。例えば、バックライト式ディスプレイでは、調光フィルムはプリズム構造物(しばしばミクロ構造といわれる)を用いることで、視軸(即ち、ディスプレイに対して実質的に垂直な軸線)に光を指向させる。光を指向させることは、ユーザーが見るディスプレイの輝度を高め、所望レベルの軸上照明を生み出すために装置が消費する電力を減少させる。光を変向又は指向させるためのフィルムは、投射型ディスプレイ、交通信号灯及び照明看板のような広範囲の他の光学構造物でも使用できる。
【0003】
光を指向させるための調光フィルムを形成するために使用する組成物は、硬化後に光指向能力を与えるために必要なミクロ構造を複製できることが望ましい。さらに、硬化組成物のガラス転移温度(Tg)は貯蔵中及び使用中における形状保持のため十分に高いことが望ましい。また、硬化組成物で形成した調光フィルムは高い輝度を有することも望ましい。最後に、調光フィルムを形成するために使用する組成物は、高い屈折率(RI)を有する硬化組成物を与えるのが有利である。調光フィルム用には各種の材料が現在入手できるが、調光フィルムを形成するために使用する材料、特に調光フィルム用途のためのますます厳しくなる要件を満たすために所望される総合特性を硬化後に有する材料のさらなる改良についてのニーズは絶えず存在している。
【特許文献1】米国特許第4059618号明細書
【特許文献2】米国特許第4198465号明細書
【特許文献3】米国特許第4420527号明細書
【特許文献4】米国特許第4576850号明細書
【特許文献5】米国特許第4578445号明細書
【特許文献6】米国特許第4582885号明細書
【特許文献7】米国特許第4668558号明細書
【特許文献8】米国特許第4721377号明細書
【特許文献9】米国特許第4812032号明細書
【特許文献10】米国特許第5175030号明細書
【特許文献11】米国特許第5183597号明細書
【特許文献12】米国特許第5239026号明細書
【特許文献13】米国特許第5424339号明細書
【特許文献14】米国特許第5450235号明細書
【特許文献15】米国特許第5470892号明細書
【特許文献16】米国特許第5479555号明細書
【特許文献17】米国特許第5518789号明細書
【特許文献18】米国特許第5626800号明細書
【特許文献19】米国特許第5635278号明細書
【特許文献20】米国特許第5691846号明細書
【特許文献21】米国特許第5714218号明細書
【特許文献22】米国特許第5716681号明細書
【特許文献23】米国特許第5855983号明細書
【特許文献24】米国特許第5883607号明細書
【特許文献25】米国特許第5891931号明細書
【特許文献26】米国特許第5900287号明細書
【特許文献27】米国特許第5908874号明細書
【特許文献28】米国特許第5932626号明細書
【特許文献29】米国特許第5969867号明細書
【特許文献30】米国特許第5981113号明細書
【特許文献31】米国特許第5988820号明細書
【特許文献32】米国特許第6005137号明細書
【特許文献33】米国特許第6107364号明細書
【特許文献34】米国特許第6114010号明細書
【特許文献35】米国特許第6206550号明細書
【特許文献36】米国特許第6218074号明細書
【特許文献37】米国特許第6228500号明細書
【特許文献38】米国特許第6232359号明細書
【特許文献39】米国特許第6280063号明細書
【特許文献40】米国特許第6313187号明細書
【特許文献41】米国特許第6313245号明細書
【特許文献42】米国特許第6329485号明細書
【特許文献43】米国特許第6350035号明細書
【特許文献44】米国特許第6355754号明細書
【特許文献45】米国特許第6368682号明細書
【特許文献46】米国特許第6428889号明細書
【特許文献47】米国特許第6503564号明細書
【特許文献48】米国特許第2001/0025086号明細書
【特許文献49】米国特許第2002/0123589号明細書
【特許文献50】米国特許第2002/0126382号明細書
【特許文献51】米国特許第2002/0132928号明細書
【特許文献52】米国特許第2002/0192459号明細書
【特許文献53】欧州特許出願公開第0759448号明細書
【特許文献54】特開昭59−136310号公報
【特許文献55】国際公開第98/50805号パンフレット
【特許文献56】国際公開第01/30933号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述のニーズは、多官能性(メタ)アクリレート、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー(特に、アリールチオエーテル(メタ)アクリレート)及び重合開始剤を含んでなる硬化性組成物で緩和される。
【0005】
上述のニーズはまた、多官能性(メタ)アクリレート、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー、臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマー及び重合開始剤を含んでなる硬化性組成物で緩和される。
【0006】
一実施形態では、硬化性組成物は、次式で表される多官能性(メタ)アクリレートと、
【0007】
【化1】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、nは2以上であり、Rは次式で表される。
【0008】
【化2】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは1〜3である。))
次式の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
【0009】
【化3】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。)
重合開始剤とを含んでなる。
【0010】
別の実施形態では、硬化性組成物は、次式で表される多官能性(メタ)アクリレートと、
【0011】
【化4】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、nは2以上であり、Rは次式で表される。
【0012】
【化5】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは1〜3である。))
次式の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
【0013】
【化6】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。)
重合開始剤とから実質的になる。
【0014】
硬化性組成物は、次式で表される多官能性(メタ)アクリレートと、
【0015】
【化7】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、nは2以上であり、Rは次式で表される。
【0016】
【化8】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは1〜3である。))
次式で表される置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
【0017】
【化9】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。)
次式で表される臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーと、
【0018】
【化10】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、XはO又はSであり、mは1、2又は3であり、pは0又は1であり、qは4又は5である。)
重合開始剤とを含んでなる。
【0019】
硬化性組成物の製造方法、硬化性生成物の反応生成物を含んでなる硬化組成物、及び硬化性組成物を含んでなる物品を始めとする他の実施形態は、以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
今回、多官能性(メタ)アクリレートに置換又は非置換アリールチオエーテル(メタ)アクリレートモノマーを添加すると、優れたRIを有する硬化性組成物を与えると共に、ミクロ構造フィルムとして硬化させた場合に置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーを基材とする類似の組成物に比べて向上した輝度を与えるという予想外の知見が得られた。
【0021】
また、重合開始剤の存在下で多官能性(メタ)アクリレート及び置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーに臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーを添加すると、向上したRIを有する組成物を与えることも判明した。さらに、硬化後には、硬化組成物は向上したTgを示す。最後に、硬化性組成物から製造された硬化済みのミクロ構造フィルムは、臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーを含まない硬化性組成物から製造された硬化済みのミクロ構造フィルムに比べて向上した輝度を示す。
【0022】
本明細書中で使用する「(メタ)アクリレート」は、チオエステル(メタ)アクリレート官能基(例えば、CH=CH(R)(C=O)S−(式中、Rは水素又はメチルである。))に加え、アクリレート官能基及びメタクリレート官能基の両方を包含する。
【0023】
本明細書中の単数形の用語は数量の限定を意味するわけではなく、むしろ言及された品目が1以上存在することを意味する。本明細書中に開示された範囲はすべて、両端を含むと共に結合可能である。
【0024】
一態様では、本硬化性組成物は、優れたバランスの性質を有する硬化材料を与える無溶剤で高屈折率の放射線硬化性組成物である。かかる組成物は、調光フィルム用途にとって理想的に適している。一態様では、本硬化性組成物から製造された調光フィルムは良好な輝度を示す。
【0025】
本硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレート(即ち、2以上の(メタ)アクリレート官能基を有する分子)を含んでいる。好ましい実施形態では、多官能性(メタ)アクリレートは下記の式(I)で表される。
【0026】
【化11】

式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換C〜C300アルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル又はヘテロアリールであり、nは2、3又は4である。R上の置換基は、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。好ましいR基には、アルキレン及びヒドロキシアルキレン二置換ビスフェノールA又はビスフェノールFのような基、特に臭素化型のビスフェノールA及びビスフェノールFがある。好適なR基には、下記の式(II)に従ったものがある。
【0027】
【化12】

式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは約1〜約3である。
【0028】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸又はメタクリル酸と、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,3−ビス{4−[1−メチル−1−(4−オキシラニルメトキシフェニル)エチル]フェノキシ}プロパン−2−オール、1,3−ビス{2,6−ジブロモ−4−[1−(3,5−ジブロモ−4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−メチルエチル]フェノキシ}プロパン−2−オールなど、及び上述のジエポキシドの1種以上を含む組合せのようなジエポキシドとの反応で生成される化合物が挙げられる。かかる化合物の例には、2,2−ビス(4−2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス((4−(メタ)アクリルオキシ)フェニル)プロパン、アクリル酸3−(4−{1−[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−1−メチルエチル}−2,6−ジブロモフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピルエステル、アクリル酸3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−1−メチルエチル}−2,6−ジブロモフェノキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−3,5−ジブロモフェニル}−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモフェノキシ]−2−ヒドロキシプロピルエステルなど、及び上述の多官能性(メタ)アクリレートの1種以上を含む組合せがある。四臭素化ビスフェノールAジエポキシドの反応生成物を基材とする好適な多官能性(メタ)アクリレートは、UCB Chemicals社から入手できるRDX51027である。他の商業的に入手できる多官能性(メタ)アクリレートには、いずれもUCB Chemicals社から入手できるEB600、EB3600、EB3605、EB3700、EB3701、EB3702、EB3703及びEB3720、又はSartomer社から入手できるCN104及びCN120がある。
【0029】
一実施形態では、多官能性(メタ)アクリレートは下記の式(III)に従った化合物を含む。
【0030】
【化13】

式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは1であり、tは2であり、dは1であるか、或いはRは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは1であり、tは2であり、dは2であるか、或いはこれらの組合せである。組成物の多官能性(メタ)アクリレート成分を構成し得る組合せは、式(III)に従った化合物の2種以上を含んでいる。
【0031】
多官能性(メタ)アクリレートは、全組成物を基準にして約25〜約75重量%の量で硬化性組成物中に存在している。この範囲内では、約35重量%以上の量が使用でき、約45重量%以上が好ましく、約50重量%以上がさらに好ましい。やはりこの範囲内では、約70重量%以下の量が使用でき、約65重量%以下が好ましく、約60重量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本硬化性組成物はさらに、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーを含んでいる。好ましい置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーは、下記の式(IV)で表される。
【0033】
【化14】

式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。置換された場合、Arは一置換体、二置換体、三置換体、四置換体又は五置換体であり得る。本明細書中で使用する「アリールエーテル」という用語は、特記しない限り、アリールエーテル及びアリールチオエーテル(アリールスルフィドとしても知られる)の両方を包含する。特に好ましい置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーには、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−フェニルチオエチル(メタ)アクリレートがある。
【0034】
置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーは、全組成物を基準にして約15〜約70重量%の量で硬化性組成物中に存在している。この範囲内では、約20重量%以上の量を使用するのが好ましいことがあり、約30重量%以上がさらに好ましい。やはりこの範囲内では、約60重量%以下の量を使用するのが好ましいことがあり、約50重量%以下がさらに好ましく、約40重量%以下がさらに一段と好ましい。
【0035】
一態様では、本組成物は相異なる化合物である2種以上の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーを含み得る。一実施形態では、第一の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーはXがSである上記の式(IV)を有するものであり、第二の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーはXがOである式(IV)を有するものである。
【0036】
硬化性組成物の増大した屈折率又は硬化後の組成物の増大した熱機械的性質(例えば、上昇したTg)を付与するため、本硬化性組成物中には臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーが存在し得る。有用な臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、式(V)で表すことができる。
【0037】
【化15】

式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、XはO又はSであり、mは0、1、2又は3であり、pは0又は1であり、qは1、2、3、4又は5である。mが0である場合、pは0である。極めて好ましい臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーには、2,4,6−トリブロモベンジル(メタ)アクリレート、テトラブロモベンジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート及びペンタブロモベンジル(メタ)アクリレートがある。
【0038】
臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、全組成物を基準にして約1〜約20重量%の量で硬化性組成物中に存在し得る。この範囲内では、約3重量%以上の量が使用でき、約4重量%以上の量が好ましく、約5重量%以上の量がさらに好ましい。やはりこの範囲内では、約15重量%以下の量を使用するのが好ましいことがあり、約10重量%以下がさらに好ましく、約8重量%以下がさらに一段と好ましい。
【0039】
本組成物はさらに、(メタ)アクリレート成分の重合を促進するための重合開始剤を含んでいる。好適な重合開始剤には、紫外線に暴露されると成分の重合を促進する光開始剤がある。特に好適な光開始剤には、ホスフィンオキシド光開始剤がある。かかる光開始剤の例には、Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIRGACURE(登録商標)及びDAROCURE(商標)系列のホスフィンオキシド光開始剤、BASF Corp.からのLUCIRIN(登録商標)系列、並びにESACURE(登録商標)系列の光開始剤がある。他の有用な光開始剤には、ヒドロキシアルキルフェニルケトン及びアルコキシアルキルフェニルケトン並びにチオアルキルフェニルモルホリノアルキルケトンのようなケトン系光開始剤がある。
【0040】
重合開始剤は、熱活性化の下で重合を促進し得るペルオキシ系開始剤を含み得る。有用なペルオキシ開始剤の例には、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウリルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシ−3−イン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジ(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)ペルオキシド、トリメチルシリルフェニルトリフェニルシリルペルオキシドなど、及び上述の重合開始剤の1種以上を含む組合せがある。
【0041】
好ましい実施形態では、重合開始剤はホスフィンオキシド光開始剤からなる。
【0042】
重合開始剤は、組成物の全重量を基準にして約0.01〜約10重量%の量で使用できる。この範囲内では、約0.1重量%以上の重合開始剤量を使用するのが好ましいことがあり、約0.5重量%以上がさらに好ましい。やはりこの範囲内では、約5重量%以下の重合開始剤量を使用するのが好ましいことがあり、約3重量%以下がさらに好ましい。
【0043】
本組成物はさらに、組成物の重合に悪影響を及ぼさない限り、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、染料、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤など、及び上述の添加剤の1種以上を含む組合せから選択される添加剤を任意に含み得る。
【0044】
別の実施形態では、硬化性組成物は、次式の多官能性(メタ)アクリレートと、
【0045】
【化16】

(式中、RはH又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換C〜C300アルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル又はヘテロアリールであり、nは2、3又は4である。)
次式の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
【0046】
【化17】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、XはSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せである。)
重合開始剤とからなる。
【0047】
一態様では、硬化性組成物は約1.54以上のRIを有しており、約1.56以上が好ましく、約1.58以上がさらに好ましく、約1.59以上が最も好ましい。
【0048】
追加の態様では、硬化組成物は約1.54以上のRIを有することがあり、約1.56以上が好ましく、約1.58以上がさらに好ましく、約1.59以上が最も好ましい。
【0049】
さらに別の態様では、硬化組成物は約40℃以上のTgを有しており、約60℃以上が好ましく、約80℃以上がさらに好ましく、約90℃以上が最も好ましい。
【0050】
一実施形態では、硬化組成物が、次式で表される多官能性(メタ)アクリレートと
【0051】
【化18】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、nは2以上であり、Rは次式で表される。
【0052】
【化19】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは約1〜約3である。))
次式の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと
【0053】
【化20】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。)
の反応生成物である場合、硬化組成物は約40℃以上のTgを有しており、約45℃以上が好ましく、約50℃以上がさらに好ましい。
【0054】
別の態様では、臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化組成物から製造した調光フィルムは、約1400カンデラ/平方メートル(cd/m)以上の輝度を有しており、約1450cd/m以上が好ましく、約1490cd/m以上がさらに好ましい。
【0055】
置換又は非置換アリールチオエーテル(メタ)アクリレートモノマー、多官能性(メタ)アクリレート及び重合開始剤を含んでなる本発明の組成物は、公知の高屈折率添加剤を添加する必要なしに、優れた屈折率を有する材料を提供する。したがって、ミクロ構造フィルムとして硬化させた場合、かかる組成物は優れた輝度を示すフィルムを与える。
【0056】
本硬化性組成物は、均質な混合物を生み出すための効率的な混合により、その成分を単にブレンドすることで製造できる。硬化性組成物から物品を形成する場合には、混合物が粘稠であれば穏やかに加熱しながら、真空の適用などで気泡を除去することがしばしば好ましい。次いで、複製すべきミクロ構造を有し得る型に組成物を装填し、紫外線又は熱に暴露することで重合させて硬化物品を製造できる。
【0057】
代替方法は、ベースフィルム基体の表面に放射線硬化性の未硬化組成物を塗布し、ニップロールとミクロ構造の陰型パターンマスターを有するキャスティングドラムとで画成される圧縮ニップに、未硬化組成物被膜を有するベースフィルム基体を通すことを含んでいる。圧縮ニップは未硬化組成物及びベースフィルム基体に十分な圧力を加えることで、組成物被膜の厚さを調節すると共に、組成物を加圧してベースフィルム基体及びキャスティングドラムの両方に完全な二重接触を達成することで組成物とドラムとの間の空気を排除する。組成物がドラムに完全に接触しているうちに、組成物被膜を有する表面と反対側の表面からベースフィルム基体を通して放射線エネルギーを当てて放射線硬化性組成物を硬化させることで、硬化組成物層中にミクロ構造パターンを複製する。この方法は、基体との併用で硬化組成物を連続製造するために特に適している。
【0058】
本硬化性組成物は、UV線で硬化させるのが好ましい。UV線の波長は、約1800〜約4000オングストロームであり得る。UV線の好適な波長には、例えば、UVA、UVB、UVC、UVVなどがあり、上述のものの波長は当技術分野で公知である。かかるUV線を発生させるためのランプ装置には、紫外線ランプ及び放電ランプ(例えば、キセノンランプ、金属ハライドランプ、金属アークランプ、低圧又は高圧水銀ランプなど)がある。硬化とは、不粘着性材料を形成するための重合及び架橋の両方を意味する。
【0059】
熱硬化を使用する場合、選択される温度は約80〜約130℃である。この範囲内では、約90℃以上の温度が好ましいことがある。やはりこの範囲内では、約100℃以上の温度が好ましいことがある。加熱時間は約30秒ないし約24時間であり得る。この範囲内では、約1分以上の加熱時間を使用するのが好ましいことがあり、約2分以上がさらに好ましい。やはりこの範囲内では、約10時間以下の加熱時間を使用するのが好ましいことがあり、約5時間以下がさらに好ましく、約3時間以下がさらに一段と好ましい。かかる硬化を段階的に行うことで、部分的に硬化し、大抵は不粘着性の組成物を製造できる。次いで、上述の範囲内の長い時間又は温度で加熱することで、この組成物を完全に硬化させる。
【0060】
一実施形態では、組成物に熱硬化及びUV硬化の両方を施すことができる。
【0061】
一実施形態では、組成物を連続プロセスで処理することにより、基体との併用で硬化フィルム材料が製造される。連続プロセスを用いて硬化材料の迅速生産を達成するためには、組成物は短い時間で硬化することが好ましい。置換又は非置換ビス(4−(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィドを含む組成物は、かかる化合物を含まない対応組成物より低い硬化速度及び/又は低い硬化度を示すことが判明した。したがって、この実施形態の硬化性組成物は置換又は非置換ビス(4−(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィドを含まないことが好ましい。
【0062】
硬化フィルムの低コスト製造のための現行の製造方法では、材料の迅速で効率的な硬化が要求される。置換又は非置換アリールチオエーテル(メタ)アクリレートモノマー、多官能性(メタ)アクリレート(特に、式(I)及び(II)に対応するもの)及び重合開始剤を含んでなる組成物は、UV線を用いて硬化被覆フィルムを迅速に連続生産するために使用される典型的な条件下で効率的に硬化することが判明した。かかる組成物は、様々な加工条件下で優れた相対硬化度を示す。
【0063】
約0.289ジュール/cmのUVA線量に暴露した後の組成物の相対硬化度は、約70%を超え、好ましくは約80%を超え、さらに好ましくは約85%を超える。相対硬化度を測定する一方法は、本明細書中に後述する。
【0064】
一実施形態では、硬化性組成物は、約35〜約65重量%の多官能性(メタ)アクリレート、約30〜約45重量%の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー、約1〜約10重量%の臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマー、及び約0.1〜約5重量%のホスフィンオキシド光開始剤とを含んでいる。
【0065】
別の実施形態では、硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸と、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,3−ビス{4−[1−メチル−1−(4−オキシラニルメトキシフェニル)エチル]フェノキシ}プロパン−2−オール、1,3−ビス{2,6−ジブロモ−4−[1−(3,5−ジブロモ−4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−メチルエチル]フェノキシ}プロパン−2−オール、又は上述のジエポキシドの1種以上を含む組合せであるジエポキシドとの反応生成物、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート又はフェノキシエチル(メタ)アクリレート或いは上述の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーの1種以上を含む組合せ、及びホスフィンオキシド光開始剤を含んでいる。
【0066】
さらに別の実施形態では、本組成物の製造方法は、多官能性(メタ)アクリレート、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー、臭素化芳香族(メタ)アクリレートモノマー及び重合開始剤をブレンドすることを含んでいる。
【0067】
他の実施形態には、上記の硬化性組成物のいずれかを硬化させることで得られる反応生成物がある。
【0068】
さらに別の実施形態には、いずれかの硬化組成物から製造される物品がある。かかる組成物から製造できる物品には、例えば、バックライト式ディスプレイで使用するための調光フィルム、投射型ディスプレイ、交通信号機、照明看板、光学レンズ、フレネルレンズ、光ディスク、ディフューザーフィルム、ホログラフィー用基板、或いは通常のレンズ、プリズム又は鏡と組み合わされた基板のような光学物品がある。
【実施例】
【0069】
以下の非限定的実施例で本発明をさらに例示する。
【0070】
以下の実施例に関する配合物は、表1に示す成分から調製した。
【0071】
【表1】


基体上に被覆した硬化フラットフィルム及び硬化ミクロ構造フィルムの例を以下の手順に従って製造した。実施例中で使用する被覆フィルムとは、組成物及びフィルム基体からなる二層フィルムを意味する。厚さ0.005インチ(0.127センチメートル)のポリカーボネートフィルム基体上に厚さ7〜10マイクロメートルの硬化組成物層を有する被覆硬化フラットフィルムを、特注の積層ユニット及びFusion EPIC 6000UV硬化装置を用いて製造した。積層ユニットは、2つのゴムロール、即ち下部の変速駆動ロール及び上部の空気圧駆動ニップロールからなっている。この装置を用いて、ロール間に通された積層スタックを加圧する。積層スタックは、複製すべき所望の幾何学的形状を上面に有し又は有しない成形型(型としても知られる)、成形型上に被覆した硬化性組成物、及び硬化性組成物上に配置したフィルム基体を含んでいる。被覆フラットフィルムを製造するためには、5×7インチ(12.7×17.8センチメートル)の高度に研磨した平坦なクロムめっき鋼板成形型上に、板の前端(又は前縁)で連続線を描くようにして約0.5mLの硬化性組成物を転写した。次いで、フィルム基体片を硬化性組成物上に配置し、得られたスタックを積層ユニットに通すことで、硬化性組成物を加圧して成形型とフィルム基体との間に一様に分配した。高粘度の配合物に関しては、高い圧力及び低い速度を使用すると共に、成形型を加熱することで所望の厚さを得た。スタック中の硬化性組成物の光硬化は、高い電力及び2.1インチ(5.3センチメートル)の焦点距離を使用しながら600ワットのV型電球の下方にスタックを16フィート/分(0.081メートル/秒)の速度で2回通し、フィルム基体の上層を通して硬化させることで行った。次いで、被覆硬化フラットフィルムな平坦な成形型から剥離し、耐摩耗性、%曇り度、%透過率、色、黄色度指数及び密着性の測定のために使用した。
【0072】
高度に研磨した平坦な鋼板の代わりにプリズム状の幾何学的形状を有する電鋳成形型を使用することで、被覆硬化フラットフィルムと同様にして輝度測定用の被覆硬化ミクロ構造フィルムを製造した。プリズムの幾何学的形状は、2002年12月6日に提出した「向上した視覚を有する輝度増強フィルム」と称する同時係属米国特許出願第10/065,981号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)の図6中に見出すことができる。
【0073】
硬化組成物のガラス転移温度(Tg)は、1.0rad/sの周波数、0.01%のひずみ、及び2℃/分の昇温速度で引張り状態で動作するRheometrics Solids Analyzer RSAII0を用いた動的機械的分析(DMA)で測定した。DMA用の無支持フィルム(フィルム基体を有しないもの)は、2インチ(5.08センチメートル)の直径を有するアルミニウムパンに約1グラムの硬化性組成物を入れ、パンを傾けてその底に硬化性組成物を広げ、窒素雰囲気下で組成物を光重合させることで製造した。硬化性組成物が粘稠であれば、パン及び硬化性組成物を穏やかに加熱することで、粘度を低下させて流動性を高めた。光重合は、600ワットのV型電球を備えたFusion EPIC 6000UVプロセッサーを用いて行った。コンベヤーベルトからのランプの距離は2.1インチ(5.3センチメートル)であった。ベルト速度は16フィート/分(0.081メートル/秒)であり、試料はランプの下方に3回通した。
【0074】
液状硬化性組成物の屈折率(RI)はBausch and Lomb Abbe−3L屈折計を用いて測定し、測定に関連した波長は589.3ナノメートルであった。
【0075】
被覆硬化フラットフィルムの%曇り度及び%光透過率は、BYK−Gardner Haze−guard Plus Hazemeterを用い、ASTM D1003に従って測定した。
【0076】
振動砂摩耗試験(OST%曇り度)は、ASTM F735に記載された方法の変法を用い、被覆硬化フラットフィルムについて実施した。大きな変更点は、砂振動モードを線状振動から円形振動に変えたことからなっていた。摩耗操作のために使用した装置は、試料及び砂を保持するための金属トレーを備えた、Glas−Col Company製の渦振盪機であった。砂は、米国イリノイ州ウェドロンのFairmount Mineals社から入手したけい砂(C.A.S.14808−60−7)であった。試験のためには、10000ミリリットルの砂及び10分の振動時間を使用した。砂摩耗試験後の曇り度の変化を用いて耐摩耗性を表した。
【0077】
被覆硬化ミクロ構造フィルムの輝度は、ディスプレイ分析装置Microvision SS220を用いて測定した。コンピューター利用測定装置であるMicrovision SS220では、フィルムの様々な位置での軸内及び軸外データを収集するためにゴニオメーターアセンブリ及び機械的位置決め装置が使用される。輝度測定は、コリメーション用光学プローブを有する回折格子分光計を用いて達成される。ミクロ構造フィルム又は調光フィルムは、下部ディフューザーD177及び直交調光フィルムから構成されるLG−Phillipsバックライトモジュール上に装着される。13点試験及びヘミ試験を行うことで、フィルム上の13の特定位置にわたる輝度の一様性及びフィルムの中心位置での視角範囲が求められる。輝度はカンデラ/平方メートル(cd/m)単位で示される。
【0078】
密着性は、ASTM D3359に従い、被覆硬化フラットフィルムについて測定した。
【0079】
以下の実施例に含まれる各硬化性組成物の粘度は、CPE40又はCPE51スピンドルアタッチメント及び0.5mLの液状硬化性組成物試料容積を有するBrookfield LVDV−II Cone/Plate Viscometerを25℃で使用し、トルク範囲を特定のコーンアタッチメントに関する装置最大値の15〜90%維持しながら測定した。粘度測定値はセンチポアズ(cP)単位で示される。
【0080】
被覆硬化フラットフィルムの色は、L、a、b色空間、D65光源、及び正反射を含めた10度観測装置を使用するGetag Macbeth Color−Eye 7000A比色計を用いてL、a及びbを決定することで測定した。
【0081】
被覆硬化フラットフィルムの黄色度指数(YI)は、Getag Macbeth Color−Eye 7000A比色計を用いて測定した。
【0082】
表2には、PTEA及びRDX51027から製造した無支持フィルム(実施例1〜4)並びにPTEA、RDX51027及びPBrBAから製造した無支持フィルム(実施例5〜8)に関するガラス転移温度データを示す。結果は、PBrBAを含む処方で製造した硬化組成物のTgの劇的な上昇を例示している。以下の表中では、すべての量は組成物の全重量を基準にした重量%で示され、配合物の各成分の実際の量はカッコ内に(グラム単位で)示されている。
【0083】
【表2】


表3には、PEA及びRDX51027から製造した無支持フィルム(実施例9、13、17及び21)並びにPEA、RDX51027及びPBrBAから製造した無支持フィルム(実施例10〜12、14〜16、18〜20及び22〜24)に関するガラス転移温度データを示す。結果は、PBrBAを含む硬化組成物のTgの劇的な上昇を例示している。この場合にも、量は重量%で示され、配合物の各成分の実際の量はカッコ内に(グラム単位で)示されている。
【0084】
【表3】


表4には、RDX51027、PTEA及びPBrBAの組成物に関する処方を示す。
【0085】
【表4】


表5には、表4中の組成物のフィルムを硬化させることで製造した無支持フィルム及び被覆硬化フラットフィルムに関するデータを示す。結果は、組成物中のPBrBA濃度を増加させると、硬化性組成物の屈折率(RI)が増大し、硬化無支持フィルムのTgが上昇することを例示している。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】


表6には、RDX51027、PTEA及びPBrBAから導かれる組成物に基づく処方を示す。
【0088】
【表7】


表7には、表6中の組成物から製造した無支持フィルム、被覆硬化フラットフィルム及び被覆硬化ミクロ構造フィルムに関するデータを示す。輝度の読みの日別変動を打ち消すため、表7中の試料の輝度を同日に測定した。実施例33及び34の結果は、組成物中にPBrBAが存在すると、得られるミクロ構造フィルムの輝度が意外にも増大することを例示している。さらに、約70%のRDX化合物を含む配合物に少量のPBrBAを添加しただけで、実質的に上昇したTgを有する無支持フィルムが得られた(実施例38〜40)。
【0089】
【表8】

【0090】
【表9】


表8には、RDX51027、PEA及びPBrBAを含む組成物に関する処方を示す。
【0091】
【表10】


表9には、表8中の組成物を硬化させることで製造した無支持フィルム、被覆硬化フラットフィルム及び被覆硬化ミクロ構造フィルムに関するデータを示す。表6及び7のPTEA配合物の場合と同じく、実施例41及び42の結果は、PEAを含む組成物中にPBrBAが存在すると、得られるミクロ構造フィルムの輝度が意外にも増大することを例示している。また、約70%のRDX化合物を含む配合物に少量のPBrBAを添加すると、顕著に上昇したTgを有する硬化無支持フィルムが得られた(実施例47〜49)。
【0092】
【表11】

【0093】
【表12】


PTEA、RDX51027及びPBrBAからなる試料(実施例33)をPEA、RDX51027及びPBrBAからなる類似試料(実施例41)と比較すれば、PTEAを含む配合物はそのPEA対応品より良好なRIを有することがわかる。また、実施例33は実施例41より低い粘度を有する硬化性組成物を提供し、それによって一層粘稠な組成物より良好な加工性を与える。最後に、実施例33はそのPEA対応品と比較した場合に向上した輝度を有する硬化ミクロ構造フィルムを提供する。
【0094】
表10には、RDX51027及びPBrBAに加えてPTEA及びPEAの組合せを含む組成物の処方を示す。
【0095】
【表13】


表11には、表10中に見出される処方に基づく硬化無支持フィルム及び被覆硬化フラットフィルムのデータを示す。
【0096】
【表14】


PBrBAは粉末であり、RDX51027は固体であるので、RDX51027及び置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーのブレンドに添加できるPBrBAの最大量は、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー中でのPBrBAの溶解度に依存する。PEA又はPTEA中でのPBrBAの最大溶解度は以下のようにして測定した。PTEA、PEA又は50/50(wt/wt)PTEA/PEA中における様々な濃度のPBrBA溶液を、材料を加熱して溶解性を高めることで調製した。次いで、均質な溶液を室温で1晩放置し、晶出の有無を目視で観察した。得られたデータを表12に示す。結果は、PTEAがPEAより高いPBrBA溶解度を与えることを示している。
【0097】
【表15】


表13には、PBrBAの存在なしに、RDX51027に加えてPEA又はPTEAを含む組成物の処方を示す。さらに、これらの処方では2種の光開始剤を使用した。すべての量は重量%である。以下の実施例は、PEAから製造したミクロ構造フィルムに比べ、PTEAから製造したミクロ構造フィルムの輝度が意外にも増大するすることを例示している。
【0098】
【表16】


表14には、PEA及びPTEA配合物(実施例53〜56)を二重に比較するため、ミクロ構造フィルムに関して同日に測定した輝度データを示す。絶対輝度及び日別標準と比較した相対輝度の両方を95%信頼区間と共に示してある。また、実施例番号と共に複製試料の数もカッコ内に示してある。
【0099】
【表17】


いずれの比較も、PEAの代わりにPTEAを含む組成物から製造した場合にミクロ構造フィルムの輝度が統計的に有意に増大することを示している。
【0100】
実施例57〜62は、RDX51027、PTEA及びIrgacure 819から調製して様々な条件下で硬化させた組成物の相対硬化度を調べるために実施した。表16中に記載した処方に従い、上述のようにして被覆フラットフィルムを製造した。RX02686は、RDX51027及びPTEAの80/20(w/w)ブレンドである。硬化材料のフィルムの厚さは20〜30マイクロメートルであった。
【0101】
硬化被覆フィルムの相対硬化度は、減衰全反射フーリエ変換赤外分光(ATR−FTIR)分析法を用いて測定した。未硬化組成物及び対応する硬化フィルムの両方の減衰全反射(ATR)スペクトルを求めた。具体的には、表15中に示す3種の処理条件(線量はジュール/cm単位で示す)の1つを用いて硬化被覆フィルムを硬化させた。硬化被覆フィルムのATRスペクトルは、Nicolet Magna(R) 750 FTIRに取り付けられた単一はね返り型ASI DiComp(R)アクセサリを用いてフィルムを検査することで求めた。測定器は、臭化カリウム(KBr)ビームスプリッター及びMCT−B検出器で構成されていた。被覆側がダイヤモンドに接触するようにして、フィルムをダイヤモンド光学素子上に配置した。フィルムの裏側から圧力を加えて確実に密着させた。得られる最大圧力は、DiCompアクセサリ上の調整可能なプランジャーをその最低位置まで降下させることで設定した。64回の走査を平均してフーリエ変換を行うことにより、2の波数分解能でスペクトルを求めた。スペクトルは追加の処理なしに使用した。未硬化液状材料のスペクトルは、1滴の液状組成物をATR用ダイヤモンド光学素子上に配置することで求めた。
【0102】
【表18】


スペクトルはNicolet OMNIC(R)ソフトウェアパッケージを用いて分析した。スペクトルから、組成物のビニルピークに相当する1600〜1645cm−1の2つのピークの面積を求めた。加えて、未硬化材料及び硬化フィルムの両方に存在する非ビニル基準ピークに相当する1537cm−1のピークの面積を求めた。ピーク面積から、下記のようにして相対硬化度(Relative degree of cure)を算出した。
【0103】
【数1】

未硬化組成物に関するビニルピークの面積と基準ピークの面積との比は「Vinyl liquid/1537cm−1 liquid」に相当し、表16中では「Vinyl/1537液状」として示される。硬化フィルムに関するビニルピークの面積と基準ピークの面積との比は「Vinyl cured/1537cm−1 cured」に相当し、表16中では表15の高線量、中線量及び低線量条件で硬化させたフィルムに関してそれぞれ「Vinyl/1537高線量」、「Vinyl/1537中線量」及び「Vinyl/1537低線量」として示される。これらの比から硬化度が算出され、得られた硬化フィルムの追加特性データと共に表16中に示される。
【0104】
【表19】

【0105】
【表20】

【0106】
【表21】


図16中の結果で例示される通り、RDX及びPTEA組成物は、低線量のUVA線で処理された場合にも優れた特性及び(大抵は80%を超える)優れた硬化度を有する硬化材料を与える。表15中に略示された処理条件下でかかる高い硬化度が得られることは、本明細書中に記載した組成物が、特に連続プロセスで硬化被覆フィルムを高速生産するためによく適することを表している。かかる高い硬化度は、製造プロセスでの生産性の増加及びコストの削減を可能にする。
【0107】
以上、好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者には、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるため、数多くの修正を行うこともできる。したがって、本発明は本発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内に含まれるすべての実施形態を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式で表される多官能性(メタ)アクリレートと、
【化1】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、nは2以上であり、Rは次式で表される。
【化2】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは1〜3である。))
次式の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
【化3】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。)
重合開始剤と
を含んでなる硬化性組成物。
【請求項2】
組成物の全重量に基づいて、
約25〜約75重量%の多官能性(メタ)アクリレートと、
約15〜約70重量%の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
約0.1〜約10重量%の重合開始剤と
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
多官能性(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリル酸と、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,3−ビス{4−[1−メチル−1−(4−オキシラニルメトキシフェニル)エチル]フェノキシ}プロパン−2−オール、1,3−ビス{2,6−ジブロモ−4−[1−(3,5−ジブロモ−4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−メチルエチル]フェノキシ}プロパン−2−オール、又は上述のジエポキシドの1種以上を含む組合せからなるジエポキシドとの反応生成物であり、
置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーが次式のものである、請求項1記載の組成物。
【化4】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは二価C〜Cアルキルであり、Arはフェニルである。)
【請求項4】
多官能性(メタ)アクリレートが次式のものである、請求項1記載の組成物。
【化5】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは1であり、tは2であり、dは1であるか、或いは
Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは1であり、tは2であり、dは2であるか、或いは
これらの組合せである。)
【請求項5】
置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーがフェニルチオエチルアクリレート又はフェニルチオエチルメタクリレートである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
請求項1記載の組成物の反応生成物を含んでなる光学フィルム。
【請求項7】
約0.289ジュール/cmのUVA線量に暴露された後に約80%を超える硬化度を有する、請求項6記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1記載の組成物の反応生成物を含んでなる、バックライト式ディスプレイ用光学フィルム。
【請求項9】
次式で表される多官能性(メタ)アクリレートと、
【化6】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、nは2以上であり、Rは次式で表される。
【化7】

(式中、Qは−C(CH)−、−CH−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−であり、Yは二価C〜Cアルキル又はヒドロキシ置換二価C〜Cアルキルであり、bは各々独立に1〜10であり、tは各々独立に0、1、2、3又は4であり、dは1〜3である。))
次式の置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマーと、
【化8】

(式中、Rは水素又はメチルであり、XはO又はSであり、Rは置換又は非置換二価C〜Cアルキル又はアルケニルであり、Arはフェニルを始めとする置換又は非置換二価C〜C12アリールであり、R及びAr上の置換基は独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜Cアルキル、C〜Cペルハロゲン化アルキル、ヒドロキシ、C〜Cケトン、C〜Cエステル、N,N−(C〜C)アルキル置換アミド、又は上述の置換基の1種以上を含む組合せを包含する。)
重合開始剤と
からなる硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1記載の組成物の製造方法であって、
多官能性(メタ)アクリレート、置換又は非置換アリールエーテル(メタ)アクリレートモノマー及び重合開始剤をブレンドすることを含んでなる方法。

【公表番号】特表2007−507582(P2007−507582A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533466(P2006−533466)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/016771
【国際公開番号】WO2004/106396
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】