説明

硬組織に標的化された化学物質送達用の機能的ミセル

【解決手段】 硬組織に標的化された薬剤に関する組成物および方法を提供する。1つの方法において、対象にミセルを含む組成物を投与する工程を有するものであって、前記ミセルは、少なくとも1つの歯への標的化部分に結合された少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体を有するものである。前記組成物はさらに、少なくとも1つの封入された化合物を有するものであり、薬学的に許容される担体中に提供されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2008年7月9日付け出願済み米国仮特許出願第61/134,343号および2009年2月9日付け出願済み米国仮特許出願第61/207,132号の優先権を主張するものである。これらの出願は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所(NIH)から付与されたAR053325に基づく政府支援により成されたものである。米国政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、化学物質(例えば薬剤)の担体と、その使用方法とに関する。より具体的にいうと、本発明は、硬組織(例えば骨や歯)を標的とするミセルに関する。
【背景技術】
【0004】
歯および骨を含む硬組織は、う蝕(虫歯)、骨粗しょう症、および骨肉腫など多種多様な疾患に罹患する。これまで多数の治療薬が開発されているが、その大半は硬組織特異性を有さず、硬組織の疾患部位で有効な濃度を保てないため、その成果はおおむね限られている。
【0005】
例えば、う蝕とは、食餌性炭水化物の細菌発酵で生じる酸性副産物に影響を受けやすい歯の硬組織の局部的破壊と定義される(Selwitzら(2007)Lancet 369:51−9)。口腔内における酸生成細菌の過剰な増殖は、う蝕原性の過程について取り上げられる病理学的3大要因の1つである(Featherstoneら(2003)J.Calif.Dent.Assoc.、31:257−69)。う蝕を抑制または根絶するには、う蝕の細菌に関する側面に重点を置かなければならない(Featherstone,J.D.(2000)J.Am.Dent.Assoc.、131:887−99)。
【0006】
う蝕原性細菌に対する抗菌療法の有効性は、組織レベルの2つの主な要因に応じて異なり、それらの要因とは抗菌剤の特異性と、効果的な抗菌剤の濃度を局所に維持することである。例えば、グルコン酸クロルヘキシジンは、ミュータンス菌(Streptococcus Mutans)の減少に有効であると示されている一方、ヒトの歯垢中の乳酸菌(Lactobacilli)への有効性は見られない。これは、グルコン酸クロルヘキシジンのエナメル質への結合力が一部原因とされる(Anderson,M.H.(2003)J.Calif.Dent.Assoc.、31:211−4)。市販の抗菌剤の多くが、う蝕原性細菌に対する活性を有するが、その大半は、歯の表面に露出した際に残らない。したがって、抗菌剤の歯の表面における局所濃度を維持する残存メカニズムを開発し、効果的な治療を送達する必要がある(Liuら(2006)J.Drug Target、14:583−97;Featherstone,J.D.(2006)BMC Oral Health 6(Suppl 1):S8)。
【0007】
これまで、口腔内の薬剤濃度を維持する種々の送達システムが開発されてきた。それらのシステムは、生体接着性の錠剤(Aliら(2002)Int.J.Pharm.、238:93−103;Giunchediら(2002)Eur.J.Pharm.Biopharm.、53:233−9;Minghettiら(1997)Boll.Chim.Farm.、136:543−8)、生体接着性のパッチまたはフィルム(Nafeeら(2003)Acta Pharm.、53:199−212;Senelら(2000)Int.J.Pharm.193:197−203)、および生体接着性のゲルや半固体(Jones(1999)J.Pharm.Sci.、88:592−8;Schiff,T.(2007)J.Clin.Dent.、18:79−81;Vinholisら(2001)Braz.Dent.J.、12:209−13)などを含む。これらの残存メカニズムは生体接着性のポリマーを基礎とし、口腔粘膜に付着するものである。これらの製剤は一般的に口腔内の薬剤維持に有効ではあるが、最も高い薬剤濃度を歯の表面よりも粘膜上皮に提供する。この薬剤付着部分への局所的な刺激と異物の不快感とによって患者の服薬コンプライアンスが損なわれることが多い(Mulhbacherら(2006)Int.J.Biol.Macromol.、40:9−14;Sudhakarら(2006)J.Control Release、114:15−40)。直接的で長期的な抗菌剤と歯との相互作用をもたらすようなワニス製剤も開発されている。当該製剤は一般的に、歯科医療従事者が定期検診の際に塗布するものである。しかしながら、断続的な治療からの長期的な恩恵は、不規則なう蝕の性質により制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、対象の口腔系疾患または疾病を治療、抑制(阻害)、および/または予防する方法が提供される。特定の一実施形態において、前記方法は、組成物を対象に投与する工程を有し、前記組成物は、a)ミセルであって:i)少なくとも1つの歯への標的化部分(moiety)に結合された少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体と、ii)少なくとも1つの化合物(例えば生物活性剤)とを有するミセルと、b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを任意選択的に含む組成物を投与する工程を有する方法である。特定の一実施形態において、前記口腔系疾患または疾病は、う蝕である。さらに別の実施形態において、前記化合物は、ファルネソールなどの抗菌剤である。さらに別の実施形態において、前記歯への標的化部分はアレンドロネートである。

対象の口腔系疾患または疾病を治療もしくは抑制する方法であって、当該方法は、前記対象に組成物を投与する工程を有するものであり、前記組成物は、
a)ミセルであって
i)少なくとも1つの歯への標的化部分(moiety)に結合した少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体と、
ii)少なくとも1つの封入化合物と、を有するミセルと、
b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、を有する組成物である
方法。

【0009】
本発明の別の態様によれば、対象の骨の疾患または疾病を治療、抑制(阻害)、および/または予防する方法が提供される。特定の一実施形態において、この方法は、組成物を対象に投与する工程を有し、前記組成物は、a)ミセルであって、i)少なくとも1つの骨への標的化部分(moiety)に結合された少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体およびii)少なくとも1つの化合物(例えば骨関連治療薬)を有するミセルと、任意選択で、b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含有する。特定の一実施形態において、前記骨関連治療薬は、化学療法薬である。さらに別の実施形態において、前記骨の疾患または疾病は、骨肉腫である。さらに別の実施形態において、前記骨への標的化部分はアレンドロネートである。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本発明の方法を実施するための組成物が提供される。特定の一実施形態において、この組成物は、a)ミセルであって、i)少なくとも1つの歯または骨への標的化部分に結合された少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体およびii)少なくとも1つの化合物(例えば生物活性剤)を有するミセルと、任意選択で、b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含有する。本発明の特定の一実施形態において、前記組成物は、マウスウォッシュ(洗口液)、練り歯磨き、歯磨剤、フィルム、デンタルフロスのコーティング剤、歯磨き粉、局所経口ゲル剤、洗口液(mouth rinse)、義歯製品、マウススプレー、トローチ剤(lozenge)、経口錠剤、チュアブル錠、またはチューインガムとからなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、Pluronic(プルロニック)(登録商標)123−アレンドロネート複合体(conjugate)(ALN−P123)合成の概略図である。
【図2】図2Aは、種々の量のALN−P123(ALN−P123および全ポリマーの重量比で)を含んだ歯結合性ミセルの、ハイドロキシアパタイト(ヒドロキシアパタイト、略称HA)表面に対する結合反応速度(結合動態)を示すグラフである。図2Bは、種々の量のファルネソール(ファルネソールおよびポリマーの重量比で)を封入した歯結合性ミセルの、HA表面上での生体外(in vitro)放出を示したグラフである。
【図3】図3は、培養開始から48時間後にハイドロキシアパタイトディスク1つあたり回収されたミュータンス菌(S.mutans)のコロニー形成単位(colony forming units、略称CFU)平均数のグラフである。この棒グラフで、A、B、C、およびDは、それぞれ0.4%、0.7%、1%、および0%のファルネソールを封入した1.6%のP85および0.4%のALN−P123を含有する歯結合性ミセル溶液である。Eは、1%のファルネソールを封入した2%のP85を含有する非結合性ミセル溶液である。Fは、1%のファルネソールを含有したエタノール溶液である。Gは、ブランク対照群である。これらのパーセンテージはすべて重量に基づく。
【図4】図4Aは、ローダミンB(略称RB)、RBで標識したP123ミセル、およびALN−P123ミセルの、ハイドロキシアパタイトに対する結合比(30分間の定温放置後)を示すグラフである。図4Bは、RBで標識した骨への標的化ミセルの結合反応速度のグラフである。
【図5】図5は、骨への標的化ミセルおよび非標的化ミセルの、HA表面上における生体外(in vitro)放出のグラフである。
【図6】図6は、マウスにおける骨への標的化ミセルの生体内(in vivo)同化作用のグラフである。TMSはシンバスタチン封入骨標的化ミセル、TMEは(封入物のない)空の骨標的化ミセル、NMSはシンバスタチン封入非標的化ミセル、ORALはシンバスタチン溶液、CONTROLは無治療をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、これまでの送達システムに伴う欠点および問題に対処するため、単純な硬組織(例えば骨や歯)を標的とし、対象である硬組織の表面で薬剤濃度を効果的に保つミセル送達プラットフォームを提供する。バイオミネラルに結合する部分(例えばビスフォスフォネート、酸性ペプチド)を、生体適合性ブロック共重合体鎖の末端(例えばPluronic(プルロニック)(登録商標)や、ポリ(エチレングリコール)(略称PEG)およびポリ(D,L−乳酸)(略称PLA)から構成されたブロック共重合体(例えばPEG−PLA−PEG))と共有結合することによって前記形成されたミセルは、硬組織表面上に露出すると直ちに前記表面に結合可能である。固定されたミセルは薬剤貯留部として作用し、封入された化学物質(例えば治療薬または香料)を徐放する。これまで開発されてきた製剤と対照的に、本発明の歯に結合する(歯結合性)ミセルは、洗口液(mouth rinse)その他の経口的に許容される水溶液に配合できる。そのため、本発明は簡単に適用でき、文化的に受け入れられやすく、患者の服薬コンプライアンスが改善されるという利点を有する。
【0013】
う蝕原性細菌(例えばミュータンス菌(S.mutans))に対処するには、歯面で抗菌剤を有効な局所濃度に保つことが非常に重要である。実際、抗菌剤では、バイオフィルム(biofilm)の形成とそれに続くう蝕の発現を防ぎ(例えば抑制し)、または既存のバイオフィルムを治療(例えば軽減)することができる。本明細書において、歯に結合する単純なミセル薬剤送達プラットフォームの設計は、当該薬剤を歯面に効果的に結合させることで提供される。生体適合性共重合体(例えばPluronic(登録商標)、PEG−PLA−PEG)鎖の末端を、バイオミネラルに結合する部分(moiety)(例えばアレンドロネート、酸性ペプチド)で修飾すると、歯を標的とすることができる。このポリマーを配合したミセルは、本明細書において、歯のエナメル質の主構成要素であることから歯面のモデルとしたハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite:HA)にすばやく結合できるものと示している。また、ミセルは、封入するモデル抗菌剤(ファルネソール)を徐放する。これらの歯結合性ミセルは、通常、負の電荷を帯びており、有効流体力学的直径(Deff)は100nm未満と平均的である。予備的な生体外(in vitro)バイオフィルム抑制研究では、対照群(例えばファルネソール、非結合性ファルネソールミセル、封入物のない(空の)歯結合性ミセル、および無治療)と比べ、ファルネソールを封入した歯結合性ミセルはS.mutans UA159が介在するバイオフィルム形成に著しく強力な抑制作用をもたらすことがわかっている。
【0014】
抗菌剤は、通常、疎水性である。実際、ファルネソールは、水溶性がわずか1.2mMの疎水性化合物である(Hornbyら(2001)Appl.Environ.Microbiol.、67:2982−92)。これまでの研究では、ファルネソールの溶解を補助するため、有機溶剤(例えばエタノールやDMSO)が必要とされている(Kooら(2002)Oral Microbiol.Immunol.、17:337−343;Kooら(2002)Antimicrob.Agents Chemother.、46:1302−9;Kooら(2005)J.Dent.Res.、84:1016−20)。本発明のミセル送達システムでは、Pluronic(登録商標)ミセルの疎水性コア(例えばPPOセグメント)が前記貯留部となり、ファルネソールなどの疎水性薬剤を容易に水中で溶解および分散させるよう作用する。そのため、この製剤には、有機溶剤による刺激を防ぎ、そのため患者の服薬コンプライアンスも改善するという利点がある。
【0015】
また、歯のバイオフィルムを予防または治療する特定の送達システムのサイズも重要な要因である。唇、頬粘膜、および舌が歯面上で動くことによる機械的研磨性の浄化により、歯のバイオフィルム(プラーク)沈着の典型的なパターンは、歯肉縁に隣接した歯間隣接面、頬面、および舌面に局在化していると見られる(Lamontら(2006)Oral Microbiology and Immunology、Washington DC:ASM Press)。サイズの小さい薬剤担体では、上記領域への自由なアクセスが容易になる。それらの薬剤担体が歯面に付着すると、上記の研磨性運動で除去される可能性は低い。本明細書で以下に示すように、本発明のファルネソール封入歯結合性ミセルの有効流体力学的直径(Deff)は100nmより小さいが、ミセルの封入量が増える場合はこれより若干大きくともよい(Torchilin,V.P.(2004)Cell Mol.Life Sci.、61:2549−59)。この100nm未満の送達システムサイズは、明らかにこの特定用途のニーズを満たすため、生体内(in vivo)での安定性と薬効がより改善される。
【0016】
本発明のミセルが歯に結合する速度と度合いを評価するため、(HA粒子(HA:hydroxyapatite)でモデル化した)結合反応速度(結合動態)アッセイを行なった(実施例を参照)。この実験では、歯の表面積がHA粒子と比べて小さいことを考慮し、大幅に過剰なミセルを適用した。使いやすさを考慮すると、結合反応速度は高い方が好ましい。本明細書で以下に実証するとおり、結合部分(binding moiety)の含有量と、HAとのミセル結合度との間には正の相関が見られた。曲線開始部の勾配は、HA表面で最もアクセスしやすい結合部位に対するミセルの結合反応速度が高いことを示している。それ以降、アクセスしやすさが劣る他の部位については、ミセル表面における結合部分の密度をより高め(Hengstら(2007)Int.J.Pharm.、331:224−7)、またはより長時間かけて結合を実現する必要がある。全体として、このデータは、結合部分の含有量が比較的低い場合でも当該ミセルの歯面への結合反応速度は高いことを示している。
【0017】
ファルネソール封入ミセルを充填したHA粒子面からの生体外(in vitro)放出試験の目的は、新設計された当該製剤がその放出動態を持続させ、有効な薬剤濃度を歯面で長時間保てるか調べることであった。本明細書において以降わかるように、ファルネソール封入ミセルを充填したHA粒子面からのファルネソール放出は、かなり緩慢である。薬剤充填度を高めると、相対パーセンテージの観点では放出の低速化、薬剤絶対量からいうと高速化がみられる。持続的な薬剤放出プロファイルは、おそらくPluronic(登録商標)のPPOコアセグメントと、ファルネソールとの間の強力な疎水性凝集力によるものである(Gaucherら(2005)J.Control Rel.、109:169−88)。なお、口腔内での放出は、唾液の流れ、口内でのタンパク質分解、および口腔内の研磨性運動などの生理学的要因から、より高速である可能性が高い。
【0018】
本発明は、う蝕のほか、歯周炎や歯肉炎といった口腔疾患の治療に使用することもできる。抗菌剤が歯面に残留すると、それに隣接する感染した軟組織で薬剤濃度が持続し、炎症が効果的に緩和される。さらに、この送達システムでは、他の化学物質も歯面に送達できる。送達可能な化学物質としては、これに限定されるものではないが化粧品用途の香料や色素などがある。
【0019】
また、本発明のミセルおよび薬物送達システムは、少なくとも1つの骨治療薬を局所的または全身的に適用して、対象体内のバイオミネラル(例えば骨)へ特異的に送達することができる。これらの送達システムでは、骨治療薬に骨指向性を与えることができるため、治療指数の劇的な改善が可能である。骨を標的とした他の技術と比べると、本発明は、化学物質(例えば薬剤)を担体に化学結合させる必要がなく、治療薬や診断薬を含む多様な化学物質を充填(封入)できる能力を備えことから充填能力がはるかに高い。
【0020】
癌の骨転移治療に関する現行の技術は、自由な剤形での非特異的な投薬を伴う。全身投与により薬剤を骨病変部に送達するには、通常、当該薬剤の最大許容濃度が長期投与される。この戦略は、治療の副作用を有意に増大させる。本発明の新規性のある薬物送達システムは、投与すると骨転移病変部などのバイオミネラルと特異的に結合する。当該薬剤は骨病変部に直接送達されるため、打撃の大きい癌化学療法薬による有害な全身性副作用が有意に軽減され、薬剤濃度をより低くできる。また、本発明では、送達システムの骨組織への結合度を操作することができる。これにより、薬剤の反応速度および体内分布を制御できるという利点が加わる。
【0021】
本発明によれば、骨や歯などのバイオミネラルに生物活性化合物を輸送する組成および方法が提供される。具体的には、両親媒性の共重合体を有するミセルの疎水性コア内に生物活性化合物が含まれる。硬組織(またはバイオミネラル)を標的としたミセルの概念は、ミセルを形成できるすべての両親媒性ブロック共重合体に適用される。上記の両親媒性共重合体は、Pluronic(登録商標)などの生体適合性共重合体であることが好ましい。また、その両親媒性共重合体は、骨および/または歯への標的化部分(moiety)に結合させることが好ましい。以下、前記薬物送達システムの構成要素について説明する。
【0022】
I.両親媒性共重合体
本発明のミセルのポリマーは、ポリマー(例えばブロック共重合体、イオン性ポリマー)を形成する任意のミセルであってよい。特定の一実施形態において、このポリマーは、両親媒性ポリマー、特に両親媒性ブロック共重合体である。当該両親媒性共重合体は、Pluronic(登録商標)ブロック共重合体(BASF Corporation、米国ニュージャージー州、マウントオリーブ(Mount Olive))などの生体適合性ポリマーであることが好ましい。他の生体適合性の両親媒性共重合体としては、Gaucherら(J.Control Rel.(2005)109:169−188)により説明されているものなどがある。他のポリマーの例としては、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸(PEG−PLA)、PEG−PLA−PEG、ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−グリコリド共重合体)(Poly(lactide−co−glycolide))(PEG−PLG)、ポリエチレングリコール−ポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(Poly(lactic−co−glycolic acid))(PEG−PLGA)、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(PEG−PCL)、ポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸(PEG−PAsp)、ポリエチレングリコール−ポリ(グルタミン酸)(PEG−PGlu)、ポリエチレングリコール−ポリ(アクリル酸)(PEG−PAA)、ポリエチレングリコール−ポリ(メタクリル酸)(PEG−PMA)、ポリエチレングリコール−ポリ(エチレンイミン)(PEG−PEI)、ポリエチレングリコール−ポリ(L−リジン)(PEG−PLys)、ポリエチレングリコール−ポリ(2−(N,N−ジメチルアミノ)メタクリル酸エチル)(PEG−PDMAEMA)、およびポリエチレングリコール−キトサン誘導体などがある(これに限定されるものではないが)。さらに別の実施形態において、前記ポリマーは次式を有する。
【0023】
【化1】

式中、n、m、およびlは、任意の数字、つまり特に約1〜約1000、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約20、または約1〜約5であり、Xは、水素、アルキルラジカル、アルコキシラジカル、アリールラジカル、エステルラジカル、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリ炭水化物、または他の任意の共重合体(コポリマー)若しくは重合体(ポリマー)(任意選択で、骨を標的とする官能基を末端としたもの)のうちの任意の1つである。
【0024】
Pluronic(登録商標)ミセルシステムについては、その単純さと生体適合性等から選択した。Pluronic(登録商標)ブロック共重合体(「poloxamer」(ポロキサマー、別称ポロクサマー)の名称で米国および英国の薬局方に記載されている)は、酸化エチレン(エチレンオキシド)(略称EO)および酸化プロピレン(プロピレンオキシド)(略称PO)のセグメントがA−B−Aの基本構造に構成されたEO−PO−EO構造から成る(式中、「a」はPOブロックの両側で同じである必要はない)。この構成からは両親媒性の共重合体が得られ、EO単位の数(a)およびPO単位の数(b)を変更すると、全体のサイズ、親水性、および親油性を変更できる。Pluronic(登録商標)共重合体の特徴は、水溶液中でミセルへと自己組織化する能力である。Pluronic(登録商標)ミセルの疎水性POコアに薬剤およびポリペプチドを共有結合的に取り込むことは、これまで十分特徴付けられてきており、溶解性の増加、代謝安定性の増加、そして循環時間の増加を薬剤にもたらす(KabanovおよびAlakhov(2002)Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、19:1−72;Allenら(1999)Coll.Surfaces、B:Biointerfaces、16:3−27;Kabanovら(2002)Adv.Drug Deliv.Rev.、54:223−233;米国特許出願公開第2006/0051317号)。
【0025】
α2GPの抗体と共役したPluronic(登録商標)ミセルは、神経遮断薬(神経弛緩薬)および蛍光色素をマウスの脳に送達することが示されている(Kabanovら(1989)FEBS Lett.、258:343−345;Kabanovら(1992)J.Contr.Release、22:141−157)。なお、Pluronic(登録商標)共重合体は、多剤耐性(multidrug resistant、略称MDR)癌の治療において、抗癌剤とも併用されてきている(Alakhovら(1996)Bioconjug.Chem.、7:209−216;Alakhovら(1999)Colloids Surf.、B:Biointerfaces、16:113−134;Venneら(1996)Cancer Res.、56:3626−3629)。実際、食道腺癌および軟部組織肉腫の治療用にPluronic(登録商標)を配合したドキソルビシン(「SP1049C」)に関する研究が行なわれており、どちらの癌も多剤耐性の発生率が高い(Ransonら(2002)5th international symposium on polymer therapeutics:from laboratory to clinical practice、pp.15、The Welsh School of Pharmacy、Cardiff University、英国Cardiff)。
【0026】
上記のように、両親媒性ブロック共重合体(Pluronic(登録商標)など)は、親水性の「A」ブロックセグメントおよび疎水性の「B」ブロックセグメントを有するものとして説明することができる。本発明の両親媒性ブロック共重合体は、トリブロック共重合体(A−B−A、式中、AおよびAは同じ若しくは異なる)、ジブロック共重合体(A−BまたはB−A)、グラフトブロック共重合体(A(B))、スターブロック共重合体(A)、デンドリマーベースの共重合体、ハイパーブランチ(例えば少なくとも2つの分岐点を有する)ブロック共重合体、およびTetronic(テトロニック)(登録商標)であってよい。前記両親媒性ブロック共重合体は、トリブロック(A−B−A)であることが好ましい。ブロック共重合体のセグメントは、約2〜約1000、約2〜約300、または約5〜約100の繰り返し単位またはモノマー(単量体)を有することができる。当業者であれば、トリブロックの式EO−PO−EOにおいて、x、y、およびzの値は、通常、統計的平均を表し、xおよびzの値は同じことが多いが、必ずしも同じである必要はないことが理解できるであろう。
【0027】
これらのブロック共重合体は、例えば米国特許第2,674,619号の方法により調製でき、Pluronic(登録商標)としてBASFから市販されている。Pluronic(登録商標)ブロック共重合体は、文字のプレフィックス(接頭辞)とそれに続く2桁または3桁の数により命名される。文字プレフィックス(L、P、またはF)は、各ポリマーの物理的形態(液体、ペースト、またはフレーク化可能な固体)を示す。上記の数字コードは、ブロック共重合体の構造的パラメータを定義する。このコードの最後の桁(下1桁)は、EOブロックの重量含有量を10重量パーセント単位でおおまかに示す(例えば、この桁が8であれば80重量%、1であれば10重量%を示す)。残りの上1桁または上2桁は、中央のPOブロックの分子質量を示す。前記コードを解読する場合は、対応する数値に300を乗算しておおよその分子質量をダルトン(Da)単位で得る。これにより、Pluronic(登録商標)命名法では、参考資料がない場合にブロック共重合体の特徴を推定する上で便利なアプローチが得られる。例えば、コード「F127」により定義されるブロック共重合体は、固体フレーク形態で、3600Da(12×300)のPOブロックと、70重量%のEOとを有する。各Pluronic(登録商標)ブロック共重合体の精確な分子的特徴は、製造元から得られる。
【0028】
BASF Corp.からは、親水性酸化エチレンブロック長(NEO)および疎水性酸化プロピレンブロック長(NPO)の異なる30あまりのPluronic(登録商標)共重合体が入手可能である(例えば表1を参照)。これらの分子は、親水親油バランス(hydrophilic−lipophilic balance、略称HLB)およびCMC(臨界ミセル濃度。critical micelle concentrationの略称)が異なることにより特徴付けられる(Kozlovら(2000)Macromolecules、33:3305−3313;例えば表3および4を参照)。HLB値は、Pluronic(登録商標)ブロック共重合体の場合、通常1〜31の範囲になるが、ポリマーの親水性基および親油性基のサイズおよび強度のバランスを反映するもので(例えばAttwoodおよびFlorence(1983)「Surfactant Systems:Their Chemistry,Pharmacy and Biology」、Chapman and Hall、New Yorkを参照)、例えばMarszallのフェノール滴定法により実験的で決定できる(例えば「Parfumerie,Kosmetik」、Vol.60、1979、pp.444−448;Rompp、Chemistry Lexicon、8th Edition 1983、p.1750;米国特許第4,795,643号を参照)。Pluronic(登録商標)ポリマーのHLB値は、BASF Corp.から入手できる。Pluronic(登録商標)の例を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明の特定の一実施形態において、前記ミセルはPluronic(登録商標)P85、P123、および/またはF127、特にP85および/またはP123を有する。一実施形態において、前記ミセルは、骨または歯への標的化部分(moiety)をPluronic(登録商標)P85およびPluronic(登録商標)P123に結合させたものを有する。特定の一実施形態において、前記ミセル中のPluronic(登録商標)の100%は、骨または歯への標的化部分と共役している。さらに別の実施形態において、前記ミセル中のPluronic(登録商標)の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%は、骨または歯への標的化部分と共役している。
【0031】
II.封入された化合物
上記のように、本発明のミセルは、少なくとも1つの化合物(例えば生物活性剤)を封入する。これらの薬剤または化合物としては、ポリペプチド、ペプチド、核酸、合成薬剤、天然薬剤、化合物(例えば色素や香料)、および脂質などがある(これに限定されるものではないが)。当該化合物は、親水性、疎水性、または両親媒性であってよい。特定の一実施形態において、前記生物活性剤は疎水性である。
【0032】
前記ミセルを使って、前記化合物を歯に送達する場合(例えば口腔系疾患または疾病を治療および/または予防するため)、当該化合物は抗菌剤であってよい。特定の一実施形態において、前記抗菌剤は、乳酸菌(Lactobacilli)および連鎖球菌(Streptococcus)特にミュータンス菌(S.mutans)などの酸耐性口腔細菌および/または酸生成口腔細菌に対し有効である。抗菌剤としては、ファルネソール、クロルヘキシジン(グルコン酸クロルヘキシジン)、アピゲニン、トリクロサン、Ceragenin(セラゲニン)CSA−13などがある(これに限定されるものではないが)。特定の一実施形態において、前記抗菌剤はファルネソールである。別の実施形態において、前記抗菌剤は、β−ラクタム系物質(例えばペニシリン、アンピシリン、オキサシリン、クロキサシリン、メチシリン、およびセファロスポリン)、カルバセフェム系物質、セファマイシン系物質、カルバペネム系物質、モノバクタム系物質、アミノグリコシド系物質(例えばゲンタマイシン、トブラマイシン)、グリコペプチド系物質(例えばバンコマイシン)、キノロン系物質(例えばシプロフロキサシン)、モエノマイシン、テトラサイクリン、マクロライド系物質(例えばエリスロマイシン)、フルオロキノロン系物質、オキサゾリジノン系物質(例えばリネゾリド)、リポペプチド系物質(例えばダプトマイシン)、アミノクマリン系物質(例えばノボビオシン)、コトリモキサゾール系物質(例えばトリメトプリムやスルファメトキサゾール)、リンコサミド系物質(例えばクリンダマイシンやリンコマイシン)、メトロニダゾール、ポリペプチド系物質(例えばコリスチン)、およびこれらの誘導体といった抗生物質である(これに限定されるものではないが)。
【0033】
ファルネソール(3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール)は、プロポリス中に見られる抗う蝕性の(虫歯予防作用のある)天然生成物であることが近年認められており(Kooら(2002)Oral Microbiol.Immunol.、17:337−343;Kooら(2002)Antimicrob.Agents Chemother.、46:1302−9;Kooら(2005)J.Dent.Res.、84:1016−20)、本明細書で以下に示す研究においてモデル薬剤として使用した。ファルネソール製剤は、S.mutans UA159が介在するバイオフィルム形成を完全に阻害できることがわかった。
【0034】
本発明のミセル投与で治療および/または予防できる口腔系疾患および疾病としては、う蝕、歯肉炎、歯周炎、歯周炎に伴う骨量の低下、象牙質知覚過敏症、口腔粘膜疾患、口腔粘膜炎、水疱びらん性の口腔粘膜疾患、変色歯、口内乾燥症(ドライマウス)、および口臭などがある(これに限定されるものではないが)。特定の一実施形態において、前記封入化合物は、抗菌剤、抗炎症剤、メントール、香料(例えばリモネン、オレンジ油)、香味剤、冷却剤、フッ化物、ビタミン、栄養補助食品、歯のホワイトニング剤、歯の着色剤、漂白剤、酸化剤、増粘剤、甘味剤である。そのような薬剤の例は、例えば米国特許出願公開第2006/0286044号およびPCT/EP2005/009724に見られる。
【0035】
前記ミセルを使って、前記生物活性剤を骨に送達する場合(骨関連の疾患や疾病を治療および/または予防するためなど)、当該生物活性剤は骨関連治療薬であってよい。「骨関連治療薬」とは、患者に投与する上で適した薬剤のうち、1)骨の成長を高める、2)感染などの望ましくない生物学的作用を防ぐ、3)骨関連の疾患に起因した病状(例えば疼痛や炎症)を緩和する、および/または4)骨の疾患(癌などの)を緩和し、軽減し、または取り除くなどの(これに限定されるものではないが)望ましい生物学的または薬理学的な作用を誘発するものをいう。前記骨関連治療薬は、骨同化作用および/または骨安定化作用を有する。骨関連治療薬としては、カテプシンK阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、プロスタグランジンE受容体作動薬(アゴニスト)、プロスタグランジンE1またはE2とその類似体、副甲状腺ホルモンとその断片、グルココルチコイド(糖質コルチコイド。例えばデキサメタゾン)とその誘導体、化学療法薬、およびスタチン系物質(例えばシンバスタチン)などがある(これに限定されるものではないが)。
【0036】
化学療法薬とは、抗癌活性を呈し、かつ/または細胞に有害な化合物である(例えば毒素)。適切な化学療法薬としては、毒素(例えばサポリン、リシン、アブリン、臭化エチジウム(エチジウムブロマイド)、ジフテリア毒素、および緑膿菌外毒素);タキサン系物質;アルキル化剤(例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イソファミド(isofamide)、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;チオテパなどのアジリジン;ブスルファンなどのメタンスルホン酸エステル;カルムスチン、ロムスチン、およびストレプトゾシンなどのニトロソウレア;白金錯体(シスプラチン、カルボプラチン、テトラプラチン、オルマプラチン、チオプラチン(thioplatin)、サトラプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ヘプタプラチン、イプロプラチン、トランスプラチン、およびロバプラチンなど);マイトマイシン、プロカルバジン、ダカルバジン、およびアルトレタミンなどの生体還元性アルキル化剤);DNA鎖切断剤(例えばブレオマイシン);トポイソメラーゼII阻害剤(アムサクリン、メノガリル、アモナファイド(amonafide)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、N,N−ジベンジルダウノマイシン、エリプチシン、ダウノマイシン、ピアゾロアクリジン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン(m−AMSA)、ビサントレン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、デオキシドキソルビシン、エトポシド(VP−16)、リン酸エトポシド、オキサントラゾール、ルビダゾン、エピルビシン、ブレオマイシン、およびテニポシドなど);DNA副溝結合剤(例えばプリカミジン);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサートやトリメトレキサートなどの葉酸拮抗剤);フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、シタラビン、フロクスウリジンなどのピリミジン拮抗薬(アンタゴニスト);メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチンなどのプリン拮抗薬;アスパラギナーゼ;ヒドロキシウレアなどのリボヌクレオチド還元酵素阻害剤;およびチューブリン相互作用剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびパクリタキセル(タキソール))などがある(これに限定されるものではないが)。
【0037】
本発明により治療および/または予防できる骨の疾患や疾病としては、骨肉腫、骨粗しょう症、骨髄炎、骨減少症、骨折、骨損傷、パジェット病(変形性骨炎)、骨分解、骨強度の低下、骨格の変形、骨ミネラル濃度の低下、脊柱側弯症、骨軟化症、骨髄炎、骨形成不全症、大理石骨病、内軟骨腫症、骨軟骨腫症、軟骨形成不全症、歯槽骨欠損、脊椎圧迫、脊髄損傷後の骨量低下、虚血壊死、線維性骨異形成症、歯周疾患(歯周病)、副甲状腺機能亢進症(嚢胞性線維性骨炎)、低ホスファターゼ症、進行性骨化性線維形成異常症、および骨の疼痛・炎症などがある(これに限定されるものではないが)。
【0038】
特定の一実施形態において、本発明のミセルは、骨移植片(ボーングラフト)と併用することができる。特定の一実施形態において、前記ミセルは、少なくとも1つの骨関連治療薬(例えば成長因子)および/または少なくとも1つの抗菌剤を有することができる。特定の一実施形態において、前記骨関連治療薬は、プロスタグランジンE1若しくはE2、またはスタチン系物質(例えばシンバスタチン)である。当該ミセルは、骨移植(ボーングラフト)と同時に(グラフトに塗布し、または同時に投与する)、および/または骨移植後に、投与することができる。
【0039】
III.バイオミネラル標的化部分(moiety)
本発明のミセルには、標的の設定された部分(標的化部分)が少なくとも1つ含まれ、その部分は骨、軟骨、歯など特定の組織へと当該送達システムを方向付けるため使用される。標的化部分の具体例としては、葉酸、マンノース、ビスフォスフォネート(例えばアレンドロネート)、第4級アンモニウム基、ペプチド(約2〜約100の(特に6の)D−グルタミン酸残基、L−グルタミン酸残基、D−アスパラギン酸残基、L−アスパラギン酸残基、D−ホスホセリン残基、L−ホスホセリン残基、D−ホスホトレオニン残基、L−ホスホトレオニン残基、D−ホスホチロシン残基、および/またはL−ホスホチロシン残基を有するペプチド)、テトラサイクリンとその類似体または誘導体、シアル酸、マロン酸、N,N−ジカルボキシメチルアミン、4−アミノサリチル酸、および/または骨または歯に特異的なこれらの抗体か断片か誘導体(例えばFab(抗原結合性断片)、ヒト化抗体、および/または一本鎖可変領域(single chain variable fragment、略称scFv))などがある(これに限定されるものではないが)。特定の一実施形態において、前記標的化部分はアレンドロネートである。
【0040】
アレンドロネートはビスフォスフォネートの一種で、ハイドロキシアパタイト結晶(歯のエナメル質の主成分)に高い親和性を有し、骨粗しょう症治療のため臨床的に長年使用されてきている(Russell,R.G.(2007)Pediatrics 119(Suppl 2):S150−62)。
【0041】
前記標的化部分は、共有結合または物理的な結合(linkage)により前記共重合体(例えば共重合体骨格)に結合することができる。標的化部分と両親媒性ポリマーとの間の結合は、当該ポリマー末端の官能基と、当該標的化部分の官能基との間の直接的な連結である。任意選択的に、標的化部分と前記ポリマー骨格との間の結合(スペーサー又はリンカーによる)は、これらに限定されるものではないが、次のような刺激によって開裂する:pH変化、特定の酵素活性の存在(すなわち、プロテアーゼによって開裂されたアミノ酸配列を有する結合)、還元酵素(reductase)の存在(すなわち、ジスルフィド結合を有する結合)、および酸素レベルの変化、などである。言い換えると、前記結合は、非分解性または分解性(例えば実質的に開裂された結合)でもよい。生分解性の結合(例えば、L−Asp ヘクサペプチド)を使用すると薬剤放出前の前記ミセル蓄積の可能性を防ぐことができる。
【0042】
その一例として、Cuを触媒としたアジドおよび末端アルキンのヒュスゲン1,3−双極子環化付加(HDC反応)により、アレンドロネートをP123鎖の末端に共役された。前記HDC反応は、効率と信頼性が高く、反応条件の許容範囲が広いという利点があり、広い温度範囲(0〜160℃)において、種々の溶媒(水を含む)中で、広範囲なpH値(例えば5〜12)にわたり行うことができる(Heinら(2008)Pharm.Res.、25:2216−30)。この反応で得られる1,2,3−トリアゾールリンカーは、極めて水溶性が高く、典型的な生体条件下での加水分解に対し安定で(Kolbら(2003)Drug Discov.Today 8:1128−37)、ミセルと結合部分との間の連結がうまくいかず歯面から薬剤が早期に失われるのを防ぐ。
【0043】
IV.治療
本明細書で説明する化学物質含有ミセルは、一般に、医薬品として患者に投与されることになる。本明細書における用語「患者」とは、対象となるヒトまたは動物をいう。前記ミセルは、医師の指導の下で治療用に使用できる。また、当該ミセルを使用すると、化粧品化合物または栄養補助食品を送達することもできる。
【0044】
本発明の組成物は、1)少なくとも1つの生物活性剤を含有する上記ミセルのうち少なくとも1つと、2)任意選択的に少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含有する。
【0045】
本発明に係る組成物のうち特定の患者への投与に適したものの用量および用法は、患者の年齢、性別、体重、一般身体疾患、および当該組成物を投与する特定の疾患とその重度を考慮する医師が決定する。その医師は、前記組成物の投与経路、前記ミセルに混合する医薬品基材、および当該ミセルの生物活性を考慮することもできる。
【0046】
本発明の組成物は、血流中への静脈注射、経口投与、皮下注射、筋内注射、または腹腔内注射など、任意の方法により投与できる。注射用の医薬品は、当該技術分野で知られている。前記組成物の投与方法として注射が選択された場合、十分な量の分子が各々の標的細胞に確実に達して生物学的作用を発揮するよう、一定の工程(段階)を経なければならない。
【0047】
医薬品基材との完全な混合物(intimate admixture)中の活性成分として本発明の複合体(conjugate)を含有した医薬組成物は、従来の製薬配合技術に基づいて調製することができる。その担体は、点滴、経口投与、直接注射、頭蓋内投与、および硝子体内投与などの投与に望ましい製剤の形態に応じ、多種多様な形態をとることができる。前記両親媒性ポリマータンパク質複合体を調製する際は、経口液体製剤の場合、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存料、着色剤など(例えば懸濁剤、エリキシル剤、および液剤);または経口固体製剤の場合、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体(例えば散剤、カプセル剤、および錠剤)といった通常の製薬媒体の経口剤形の形態であればどれでも採用できる。投与が容易であることから、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口単位剤形の代表であり、その場合は固体医薬品基材が使用される。必要に応じて、錠剤は、標準的な技術で糖衣加工または腸溶加工される。また注射用懸濁剤も調製され、その場合は、適切な液体担体や懸濁剤などを使用することができる。また、本発明の複合体(conjugate)は、徐放マトリックス中から投与することができる。例えば、前記複合体は、非共役(unconjugated)ポロキサマーを有するゲル剤で投与できる。
【0048】
本発明の医薬品は、投与しやすく用量が均一になる単位剤形で配合することができる。本明細書における「単位剤形」とは、治療中の患者に適した物理的に個別の医薬品単位をいう。各用量には、選択された医薬品基材とともに望ましい作用をもたらすよう計算された一定量の活性成分が含まれるべきである。適切な用量単位を決定する手続きは、当業者によく知られている。
【0049】
用量単位は、患者の体重に比例して増減できる。特定の病態を緩和するための適切な濃度は、当該技術分野で公知の用量濃度曲線計算により決定される。
【0050】
本発明によれば、本発明の組成物の投与に適した用量単位は、当該分子の毒性を動物モデルで評価することにより決定できる。最小用量および最大用量については、種々の医薬品濃度をマウスに投与し、その治療の結果観測された有益な結果と副作用とに基づき決定できる。また、適切な用量単位は、医薬品を他の標準的薬剤と組み合わせた治療の効能(薬効)を評価しても決定できる。医薬品の用量単位は、検出された作用に基づき、個別に、または各治療との組み合わせで決定することができる。
【0051】
医薬品は、病理学的症状が軽減または緩和されるまで少なくとも1日2回以上など、適切な間隔をおいて投与でき、その後、用量を維持レベル(maintenance level)まで減らすことができる。特定の症例に適した間隔は、通常、患者の病態に応じて異なる。
【0052】
本発明の組成物を使用すると、う蝕を治療および/または予防することができる。う蝕の治療には、ミュータンス菌(Streptococcus Mutans)などのう蝕原性細菌を減量し、かつ/または口腔内、口内、および/または歯からミュータンス菌を完全に排除することを目的として、う蝕に罹患した治療対象に対し本発明の組成物を投与することを含めてよい。う蝕の防止には、う蝕の予防(prophylaxis)が含まれる。本発明の組成物は、ミュータンス菌などのう蝕原性細菌に相対するリスクを有した(例えば、う蝕原性細菌にまだ相対しておらず、かつ/または現在、口腔内にう蝕原性細菌を有していない)対象に投与できる。幼児または小児の口腔内には、通常、ミュータンス菌がないため、当該組成物は、う蝕予防のため幼児または小児に投与することができる。
【0053】
本発明のミセルは、口腔系疾患や疾病を治療および/または予防するため使用する場合、少なくとも1つの許容される経口担体(安全かつ効果的な態様で当該組成物を口腔内に適用するため使用できる薬学的に許容される担体)を有する組成物内に含めることができる。本発明の組成物は、経口的に適用することが好ましい。これを受け、当該組成物は、口内洗浄液(mouthwash)、練り歯磨き、歯磨剤(ペースト状、液状、または粉末状)、デンタルフロスのコーティング剤、歯科用フィルム、歯磨き粉、局所経口ゲル剤、洗口液(mouth rinse)、義歯製品、マウススプレー、トローチ剤(lozenge)、経口錠剤、チュアブル錠、またはチューインガムの形態にすることができる。そのような組成物は、さらに、キレート剤、フッ化物、歯のホワイトニング剤、歯の着色剤(非自然色を含む)、漂白剤、酸化剤、冷却剤、ビタミン、栄養補助食品、増粘剤、保湿剤、香味剤、香料、甘味剤、および他の抗菌剤などの、これに限定されるものではないが、他の経口活性剤を有する。これらの薬剤は、前記ミセルに封入でき、または前記ミセルを有する組成物に含有させることができる。
【0054】
定義
本発明の理解を助けるため、以下の定義を提供する。
【0055】
本明細書における用語「ポリマー」とは、2若しくはそれ以上の繰り返し単位またはモノマーの化学結合により形成された分子を示す。用語「ブロック共重合体」とは、最も簡単に説明すると、少なくとも2つの異なるポリマーセグメントの複合体(conjugate)をいい、その場合、各ポリマーセグメントは、隣接する同種の単位を2若しくはそれ以上有する。
【0056】
「疎水性」とは、非極性環境になじみやすいことを示す(例えば、疎水性の物質または部分(moiety)は、水よりも炭化水素などの非極性溶媒に容易に溶解し若しくは湿潤される)。
【0057】
本明細書における用語「親水性」は、水に溶解する能力を意味する。
【0058】
本明細書における用語「両親媒性」は、水にも脂質にも溶解する能力を意味する。通常、両親媒性化合物は、親水性の部分と疎水性の部分とを有する。
【0059】
用語「実質的に開裂される」とは、両親媒性ポリマーが、好ましくはリンカー部分(moiety)において、本発明の複合体のタンパク質から開裂されることをいう。「実質的な開裂」は、少なくとも50%の複合体が開裂され、好ましくは少なくとも75%の複合体が開裂され、より好ましくは少なくとも90%の複合体が開裂され、最も好ましくは少なくとも95%の複合体が開裂された場合に生じる。
【0060】
「薬学的に許容される」とは、動物、より具体的にはヒトへの使用について、連邦政府または州政府の規制当局から承認されており、米国薬局方その他の一般に認められた薬局方に記載されていることを示す。
【0061】
「担体」とは、例えば本発明の活性剤とともに投与される希釈剤、アジュバント、保存料(例えばチメロサール、ベンジルアルコール)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、可溶化剤(例えばTween 80、ポリソルベート80)、乳化剤、緩衝液(例えばトリスHCl、酢酸塩、リン酸塩)、充填物質(例えばラクトース、マンニトール)、補形剤(excipient)、補助剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、結合剤、安定剤、保存料、または賦形剤(vehicle)をいう。薬学的に許容される担体は、水や油などの滅菌液体であってよく、これには、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、野菜、または合成物由来のものが含まれる。水または食塩水(aqueous saline solution)と、ブドウ糖(デキストロース)およびグリセロールの水溶液は、特に注射剤用に、担体として使用されることが好ましい。組成物は、ポリ乳酸やポリグリコール酸などのポリマー化合物の粒子状製剤、あるいはリポソームまたはミセルに組み込むことができる。そのような組成物は、本発明の医薬組成物成分の物理的状態、安定度、生体内(in vivo)放出率、および生体内クリアランス率に影響を及ぼす。本発明の医薬組成物は、例えば液状または乾燥粉末(例えば凍結乾燥)の形態に調製できる。適切な医薬品基材は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(E.W.Martin、Mack Publishing Co.、米国ペンシルバニア州Easton);Gennaro,A.R.「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」20th Edition(Lippincott,Williams and Wilkins)、2000年;Libermanら、Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms(Marcel Decker、米国ニューヨーク州New York、1980年;およびKibbeら、Eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients(3rd Ed.)(American Pharmaceutical Association、米国ワシントン州、1999年)に説明されている。
【0062】
化合物または医薬組成物の「治療有効量」とは、特定の疾病または疾患の症状を予防、抑制、または治療する上で有効な量をいう。
【0063】
以下の例では、本発明を実施する例示的な方法を提供しているが、これらの例は決して本発明の範囲を限定するよう意図されたものではない。以下の特定の例は、特定のタイプのPluronic(登録商標)ブロック共重合体(例えばPluronic(登録商標)P85やP123)を具体的に示しているが、いかなる両親媒性ブロック共重合体またはPluronic(登録商標)の使用も本発明の範囲内に含まれる。
【実施例1】
【0064】
材料および方法
化学物質
Ultratech India Ltd.(インドNew Mumbai)からアレンドロネート(alendronate、略称ALN)を購入した。TCI America(米国オレゴン州Portland)からファルネソールを取得した。Bio−Rad(米国カリフォルニア州Hercules)ハイドロキシアパタイト粒子(HA、DNA grade Bio−Gel HTP gel)を購入した。Clarkson Chromatography Products,Inc.(米国ペンシルバニア州South Williamsport)からハイドロキシアパタイトディスクを購入した。GE Healthcare(米国ニュージャージー州Piscataway)からLH−20樹脂を購入した。BASF米国ニュージャージー州(Florham Park)からPluronic(登録商標)共重合体(P85およびP123)を取得した。その他すべての試薬および溶剤は、別段の断りがない限り、Fisher Scientifics(米国ペンシルバニア州Pittsburgh)またはAcros Organics(米国ニュージャージー州Morris Plains)から購入した。
【0065】
方法
H NMRスペクトルをVarian Inova Unity 500 NMR Spectrometerで記録した。測定は、5mmのNMR管により室温で行なった。Shimadzu UV−1601PC UV−Visible Spectrophotometerで、紫外・可視分光スペクトルを測定した。電気泳動移動度の測定は、ZetaPlus分析器(Brookhaven Instrument Co.)を使い、波長635nmで動作する30mW固体レーザーにより行なった。ミセルのゼータ電位(ζ)は、スモルコフスキーの式を使って電気泳動移動度値から算出した。ミセルの有効流体力学的直径(Deff)は、光子相関分光法(DLS)により、恒温セル(恒温槽)内において、散乱角90°で、Multi Angle Sizing Option(BI−MAS)を備えた同じ計器を使って測定した。測定は、すべて25℃で行われた。粒子のサイズおよび多分散度指数の計算には、製造元から提供されたソフトウェアを使用した。直径の平均値は、3回の測定から計算した。薬剤放出分析には、クォータナリポンプとデガッサー、オートサンプラー、蛍光検出器、およびダイオードアレイベースのUV検出器を装備したAgilent 1100 HPLCシステムを使用した。
【0066】
ペンチン酸 2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル(pentynoic acid 2,5−dioxo−pyrrolidin−1−yl ester)(1)の合成
まず、4−ペンチン酸(2.0g、20mmol)をCHCl(80mL)に溶解した。次に、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、2.54g、22mmol)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、4.22g、22mmol)を前記溶液に加えた。室温で撹拌しながら一晩反応させた後、前記反応混合液を濃縮させ、シリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)でその純粋な生成物を得た。収率85%。H NMR(CDCl)δ(ppm)2.88−2.83(m,6H)、2.60(td,J=2.44Hz,J=7.81Hz,2H)、2.04(t,J=2.44Hz,1H)。
【0067】
1−ヒドロキシ−4−ペント−4−インアミドブタン−1,1−ジイルジホスホン酸(1−hydroxy−4−pent−4−ynamidobutane−1,1−diyldiphosphonic acid)(2)の合成
アレンドロネート(3.15g、10mmol)を水またはPBS(60mL、pHを7.0に調整)に溶解した。この溶液に、3バッチ分のペンチン酸 2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル エステル(pentynoic acid 2,5−dioxo−pyrrolidin−1−yl ester)(化合物1、0.78g×3、合計12mmol、すべてアセトニトリル中)を1滴ずつ、12時間にわたり、4時間間隔で加えた。その反応溶液を濃縮させ、エタノール中に3回沈殿させて純粋な生成物を得た。収率90%。H NMR(D0)δ(ppm)3.20(t,J=6.84Hz,2H)、2.44(m,4H)、2.37(t,J=2.44Hz,1H)、1.90(m,2H)、1.80(m,2H)。
【0068】
p−トルエンスルホニル基を末端に有するPluronic(登録商標) 123(Tos−P123、3)の合成
トルエン(3×50mL)との共沸蒸発によりP123(10.5g、2mmol)を乾燥させ、アルゴン雰囲気下で無水ジクロロメタン(DCM、20mL)と、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.122g、1mmol)と、トリエチルアミン(TEA、2.02g、20mmol)とに溶解したこの反応混合物を0℃に冷却したのち、塩化p−トルエンスルホニル(3.18g、20mmol)を加えた。室温で一晩反応させた後、その混合物を塩酸(0.1M、2×10mL)、水(2×10mL)、食塩水(2×10mL)で洗浄したのち、無水硫化マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧除去し無水硫化マグネシウムで乾燥させた後、粗生成物をLH−20カラムでさらに精製した。収率60%。H NMR(DMSO−d)δ(ppm)7.79(d,J=8.29Hz)、7.48(d,J=8.29Hz)、4.11(t,J=4.88Hz)、3.65−3.43(m)、1.04(d,J=4.39Hz)。
【0069】
アジド基を末端に有するPluronic(登録商標)123(Azido−P123、4)の合成
Tos−P123(1.64g、0.27mmol)をジメチルホルムアミド(DMF、20mL)に溶解した。次に、アジ化ナトリウム(0.176g、2.7mmol)を加えた。100℃で2日間撹拌して、この反応を進めた。ろ過して溶媒を除去した後、その粗生成物をDCMに溶解し、水(2×10mL)および食塩水(2×10mL)で洗浄したのち、無水硫化マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した後、生成物が得られた。収率96.2%。H NMR(DMSO−d)δ(ppm)3.61(t,J=4.88Hz)、3.56−3.43(m)、1.04(d,J=4.39Hz).
Pluronic(登録商標)123−アレンドロネート複合体(ALN−P123、5)の合成
Azido−P123(2.9g、0.5mmol)、1−ヒドロキシ−4−ペント−4−インアミドブタン−1,1−ジイルジホスホン酸(0.395g、1mmol)を、EtOH/HO溶液(1/1、15mL)に溶解した。次に、アスコルビン酸ナトリウム(0.198g、1mmol)および硫化銅五水和物(25mg、0.1mmol)を加えた。この反応混合液を室温で3日間撹拌した。溶媒を除去した後、生成物を酸性化し、メタノールを溶離液として使ってLH−20カラムで精製した。収率70%。H NMR(D0)δ(ppm)7.81(s)、3.93(t,J=4.90Hz)、3.80−3.39(m)、3.14(t,J=6.83Hz)、1.86(m)、1.75(m)、1.12(d,J=7.81Hz)。
【0070】
歯に結合するミセル(歯結合性ミセル)の調製および特徴付け
種々の量のファルネソール(20、40、70、または100mg)を、10mLの2%(w/w)Pluronic(登録商標)水溶性に(ALN−P123:P85比を変化させて)加えた。その混合物を30秒間ボルテックス混合し、一晩37℃で平衡状態まで穏やかに振盪した。その結果生じたミセル溶液をろ過(0.45μmフィルター)したのち、ゼータ電位および有効流体力学的直径(Deff)を測定した。
【0071】
歯結合性ミセルのHA粒子に対する結合反応速度(結合動態)
前記ミセル溶液(0.2mL/遠心管、4mg/mLのファルネソールを含む)を遠心分離管でHA粒子(20mg/遠心管)と混合した。前記遠心管をLabquake(登録商標)回転機にかけ、室温で結合させた。所定の時点ごとに3本の遠心管を取り出して遠心分離機にかけ(12,000rpm、0.5分間)、100μLの上清を回収した。次に、回収した試料を100倍希釈し、HPLCで分析した。Agilent C18逆相カラム(4.6×250mm、5μm)を、流量1ml/分のアセトニトリル/水(体積比80:20)移動相で使用した。UV検出は、210nmに設定した。ミセル製剤を介してHA粒子に結合したファルネソールの量は、初期に加えた薬剤量から、上清中に残ったファルネソールの量を減算して計算した。
【0072】
生体外(in vitro)における、HA粒子に固定された歯結合性ミセルからのファルネソール放出
ミセル溶液(1mL、ALN−P123とP85との比=1/4)をHA粒子(100mg)と60分間混合して、ミセルをHAに結合させた。この混合物を遠心分離機にかけ、HA粒子を水で3回洗浄して、結合していないミセルを除去した。次に、ミセルを充填したこのHA粒子を1mLの放出媒体(0.1MのPBS、pH=7.4)に再懸濁させ、Labquake(登録商標)回転機にかけて37℃で薬剤を放出させた。所定の時間間隔で試料を遠心分離し、その上清を除外して1mLの新鮮な媒体と入れ替えたのち、再懸濁させた。回収された上清(1mL)をアセトニトリル(0.5mL)と混合し、ろ過(0.2μm)して、HPLCで分析した。この実験の最後に、HA粒子をアセトニトリルで3回洗浄して残りの薬剤を放出させ、HA粒子に充填されたファルネソールの総量を算出した。
【0073】
生体外(in vitro)における、HAディスク上でのミュータンス菌(S.mutans)バイオフィルム成長の抑制
この試験では、S.Mutans UA159を使用した。このミュータンス菌は−80℃で冷凍保管されていたものである。各実験前に、新鮮な培養物を調製した。当該ミュータンス菌の単一コロニーを3mLのTHYE(Todd−Hewitt Yeast Extract(Todd−Hewitt酵母抽出物)の略称)培地に植菌し、37℃で5%のCOとともに一晩統計的に成長させた。この培養物を既知組成バイオフィルム培地(chemically defined biofilm media、略称CDM)で5×10CFU/mlの密度に希釈した(Biswasら(2007)J.Bacteriol.、189:6521−6531)。
【0074】
オートクレーブしたHAディスク(7mm×1.8mm)を、種々のミセル溶液、ファルネソールのエタノール溶液、またはCDMにより、24ウェルプレートで1時間培養して充填度を最大にした。次いで前記ディスクを前記ウェルから取り出し、ボルテックスにより食塩水で2回10秒間洗浄した。続けて前記ディスクを培地で洗浄して、結合していないミセルを除去した。ファルネソールのエタノール溶液群については、ディスクをエタノールで2回洗浄したのち、食塩水で洗浄した。次に、前記HAディスクを希釈したミュータンス菌1mL中へ移し、48時間統計的に培養して、37℃、5%のCOでバイオフィルムを成長させた。
【0075】
上記の植菌後3日めに、HAディスクを前記THYE培地に浸けて3回洗浄し、軽く付着した細菌を除去したのち、1mLのTHYE培地に配置した。HAディスクの表面に付着した細胞を、滅菌したヘラで軽くこすり取った。その細胞の懸濁液を10秒間ボルテックス混合したのち、1:10比で5回希釈した(ブランク対照群、封入物のない(空の)ミセル群、非結合性ミセル群、およびファルネソールのエタノール溶液群に使用するため)。最後3回の希釈液(各10μL)をTHYE寒天プレートに入れ、48時間、37℃、5%のCOで培養した。歯結合性ミセル群については、100μLの非希釈溶液、あるいは10μLの非希釈溶液または10倍に希釈した溶液をTHYE寒天プレートに入れ、48時間同じ条件で培養した。3回の異なる実験において、バイオフィルムアッセイを3回行った。
【0076】
結果
歯結合性ミセルの調製および特徴付け
Pluronic(登録商標)123アレンドロネート複合体(ALN−P123)の多段階合成は、歯結合性ミセルの生成を成功させる上で重要である。各反応段階(工程)では、少なくとも60%という妥当な収率が実現された。ミセル調製後、種々調製したミセルの有効流体力学的直径(Deff)およびゼータ電位を、光子相関分光法(DLS)で測定した(表2)。空のミセルと、ファルネソールを封入した非結合性ミセルとは、どちらも粒径が約100nmと最大である。ファルネソールを封入した歯結合性ミセルのサイズは比較的小さく、ファルネソール封入量が増えるとともに大きくなる。ただし、試験した範囲の封入量では、歯結合性ミセルに封入されたファルネソールのDeffは、100nmを超えない。
【0077】
【表2】

【0078】
歯結合性ミセルのHA粒子に対する結合反応速度(結合動態)
図2Aに示すように、ミセル表面に存在する結合部分(アレンドロネート)の量は、ミセルの結合効率に対して有意に影響を及ぼした。HA粒子に結合するミセルの量は、ALN−P123含有量の増加に伴い向上した。0.1%、0.2%、または0.4%のALN−P123を含有した製剤は、すべてHA粒子にすばやく結合し、5分以内に結合の飽和状態に達する。
【0079】
生体外(in vitro)における歯結合性ミセルの放出
HA粉末に結合した歯結合性ミセルからのファルネソール生体外放出プロファイルを、4日間にわたり評価した。図2Bからわかるように、HAに結合した歯結合性ミセルからは、ファルネソールの徐放プロファイルが観測された。
【0080】
HAディスク上におけるミュータンス菌(S.mutans)バイオフィルム成長の抑制
図3に示すように、ブランク対照群と比べ、すべての歯結合性ミセル群で高レベルのバイオフィルム抑制作用が示された。実際、CFU/バイオフィルム値については、4桁もの減少が観察された。非結合性ミセルでは、どちらかというと弱い抑制作用が示されたが、これはおそらく前記ミセルの非特異的結合によるものであろう。ファルネソール溶液は、HA上に残留せず、洗浄段階で洗い流されてしまい、抑制作用を示さなかった。
【0081】
このようにして、抗う蝕剤(例えばファルネソール)を送達する新規性のある歯結合性ミセル送達システムが適切に開発された。この歯結合性ミセルは、歯面にすばやく結合して、持続的に前記抗う蝕剤を放出する。細菌のバイオフィルムに関する研究により、前記製剤は、HAディスク上でミュータンス菌(S.mutans)バイオフィルムの成長を効果的に抑制できることが明らかになった。
【実施例2】
【0082】
骨へと標的化したミセル(骨標的化ミセル)の調製
45mgのP123、5mgのALN−P123、およびローダミンBで標識した1mgのP123(RB−P123)を、フラスコ内で2mLのメタノールに溶解した。溶媒を減圧蒸発させて、前記フラスコの内壁上にポリマー薄膜を得た。次に、形成されたこのポリマー薄膜を10mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)に50℃で水和させてミセルを形成させた。
【0083】
ハイドロキシアパタイト(HA)上における、骨標的化ミセルの結合能および結合率
骨標的化ミセルについては、上記の方法、すなわち0.9%のP123、0.1%のALN−P123、0.02%のRB−P123により調製した(対照群は1%のP123、0.02%のRB−P123)。この溶液1mLにHA(100mg)を加えた。この混合物を、1、5、10、または30分間、室温で穏やかに攪拌した。遠心分離機(10000rpm、0.5分間)でHAを除外した。その上清のスペクトルを、UV(紫外線)−可視光域の分光光度計で記録し、初期のミセル溶液のものと比較した。この実験の対照群としては、RB−P123を含有し、ALN−P123およびRBは含有しないミセルを使用した。
【0084】
骨を標的とし薬剤を封入したミセル(骨標的化薬剤封入ミセル)の調製
135mgのP123、15mgのALN−P123、および15mgのシンバスタチンを、フラスコ内で2mLのメタノールに溶解した。溶媒を減圧蒸発させて、前記フラスコの内壁上にポリマー薄膜を得た。形成されたポリマー薄膜を3mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、10mM、pH7.4)により50℃で水和させた。その懸濁液をシリンジの0.22μmフィルターに通してろ過し、封入されなかったシンバスタチンを除去した。ミセルの薬剤含有量は、HPLC(Agilent C18、逆相カラム、4.6×250mm、5μm)、移動相(アセトニトリル/水、体積比70:30、流量1ml/分)、UV検出(335nm)で決定した。
【0085】
骨標的化ミセルによるHA表面への薬剤充填
1mLのシンバスタチン封入ミセルに、250mgのHAを加えた。その混合物を少なくとも30分間振盪したのち、ろ過し乾燥させて、シンバスタチンを充填したHAを得た。100mgのシンバスタチンを充填したHAをメタノール水溶液で5回抽出し、HPLC(Agilent C18逆相カラム、4.6×250mm、5μm)、移動相(アセトニトリル/水、体積比70:30、流量1ml/分)、UV検出(235nm)で分析した。
【0086】
結果
骨標的化ミセルのHAに対する結合能および結合反応速度(結合動態)
HAとともに定温放置した後、HAに結合していないALN−P123の量を、UV/可視光域の分光光度計で測定した。元の溶液と比べ、ALN−P123に関する565nmでのUV吸収度は30分間の定温放置後55%に減少し、ALN−P123の大部分が、ビスフォスフォネート部分(moiety)を介してHA表面に結合したことを示した(図4A)。一方、骨標的化部分およびRBを伴わないミセルは、HAに若干結合したのみで、これは可能性としてHA表面への非特異的結合によるものであろう。HAを水で繰り返し洗浄して、白色粉末が得られた(ただし、ALN−P123で処理したものだけは、ピンク色のままであった)。前記複合体(conjugate)は、非常にすばやくHA表面に結合することが観測された。ALN−P123の結合は10分でほぼ飽和状態に達し、45%の前記複合体がHAに結合した(図4B)。ALN−P123およびHAを30分間と長時間定温放置したところ、最終的に55%の結合平衡に達した。この卓越したHA結合能力は、新規性のある当該ミセルに強力な骨指向性と、骨格組織に特異的な治療薬送達能力とがあることを示している。HA(モデル化した骨)へのこの高速結合は、特に、強力な骨同化特性を有しながら肝臓により循環系からすばやく排出されるスタチン系物質の全身性送達に応用できる。
【0087】
骨標的化ミセルによるHA表面への薬剤充填
骨標的化ミセルによるHA表面への薬剤充填の結果を表3に示す。薬剤を封入した標的化ミセルは、非常に効率的にHAと結合できる。前記非標的化ミセルは、有意にHAに結合できない。
【0088】
【表3】

【0089】
骨標的化ミセルによるHA表面への生体外(in vitro)放出
上記の方法でミセルを調製した(骨標的化ミセルの場合、2.25%のALN−P123、4.25%のP85、8.5%のP123、および1.5%のシンバスタチン。非標的化ミセルの場合、5%のP85、10%のP123、および1.5%のシンバスタチン)。骨標的化ミセルまたは非標的化ミセル(50mg、2mL)を過剰なハイドロキシアパタイト(HA)(500mg)と30分間混合し、骨標的化ミセルをHAに完全に結合させた。その混合物を透析袋(分画分子量12,000)に密閉した。前記透析袋を20mLの放出培地(0.1MのPBS、pH7.4、浸漬条件(sink condition)を保つよう2.5%のP123を含む)中で、穏やかに振盪しながら(50rpm)、37℃で定温放置した。所定の時間間隔で、0.5mLの放出培地を回収し、新鮮な培地と入れ換えた。回収された試料を0.5mLのアセトニトリルと混合し、0.2μmのフィルターでろ過して、HPLC(移動相のアセトニトリル:水の体積比70:30)で分析した。その結果を図5に示す。骨標的化ミセルも非標的化ミセルも同様な放出プロファイルを示し、前記薬剤の大半(約80%)が24時間以内に放出された。
【0090】
マウスにおける骨標的化ミセルの生体内(in vivo)骨同化作用
上記の方法でミセルを調製した(骨標的化ミセルの場合、2.25%のALN−P123、4.25%のP85、8.5%のP123、および1.5%のシンバスタチン。非標的化ミセルの場合、5%のP85、10%のP123、および1.5%のシンバスタチン)。マウス(繁殖退役マウス)を5つの群へと無作為に分け、各群にシンバスタチン封入骨標的化ミセル(simvastatin loaded bone−targeting micelle、略称TMS)、(封入物のない)空の骨標的化ミセル(empty bone−targeting micelle、略称TME)、シンバスタチン封入非標的化ミセル(simvastatin loaded non−targeting micelle、略称NMS)、シンバスタチン溶液(ORAL)、または無治療(CONTROL)を適用した。ミセルはマウスの尾から4日ごとに静脈注射し、40mg/体重Kgのシンバスタチン用量を28日間与えた。シンバスタチン溶液(1mg/mL、0.5%メチルセルロース溶液)は、10mg/体重Kgのシンバスタチン用量を、毎日28日間強制経口投与した。28日後、マウスを屠殺し、P−Dexaを使った骨ミネラル濃度(BMD)測定用に脛骨(×2)を分離した。その結果を図6に示す。シンバスタチン封入骨標的化ミセル(TMS群)および空の骨標的化ミセル(TME群)は、どちらも対照群と比べてBMDを有意に増加させた(P<0.05)。TMS群は、TME群より高いBMDを示した。シンバスタチン溶液の強制経口投与と、非標的化ミセルの尾静脈注射とでは、BMDが有意に増えなかった(P>0.05)。
【0091】
本発明の関連分野における技術水準について説明するため、上記本明細書の全体にわたり刊行物および特許文献をいくつか引用している。これらの開示については、各々の全体を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0092】
以上、本発明の特定の好適な一実施形態について説明し、具体的に例示したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。以下の請求項に記載した本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更形態が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の口腔系疾患または疾病を治療もしくは抑制する方法であって、当該方法は、前記対象に組成物を投与する工程を有するものであり、前記組成物は、
a)ミセルであって
i)少なくとも1つの歯への標的化部分(moiety)に結合した少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体と、
ii)少なくとも1つの封入化合物と、を有するミセルと、
b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、を有する組成物である
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記口腔系疾患または疾病は、う蝕である方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記両親媒性ブロック共重合体は、少なくとも1のポリ(エチレンオキシド)(EO)セグメントと、少なくとも1つのポリ(プロピレンオキシド)(PO)セグメントとを有するものである方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記両親媒性ブロック共重合体は、式:EO−PO−EOを有し、当該式中、x、y、およびzは、約2〜約300の値を有するものである方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記両親媒性ブロック共重合体は、開裂性結合によって前記歯への標的化部分に結合しているものである方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記封入化合物は:抗菌剤と、抗炎症剤と、メントールと、香料と、香味剤と、冷却剤と、フッ化物と、ビタミンと、栄養補助食品と、歯のホワイトニング剤と、歯の着色剤と、漂白剤と、酸化剤と、増粘剤と、および甘味剤とからなる群から選択されるものである方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法において、前記封入化合物は抗菌剤である方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記抗菌剤はファルネソールである方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記歯への標的化部分はアレンドロネートである方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記組成物は:口内洗浄液(mouthwash)と、練り歯磨きと、歯磨剤と、フィルムと、デンタルフロスのコーティング剤と、歯磨き粉と、局所経口ゲル剤と、洗口液(mouth rinse)と、義歯製品と、マウススプレーと、トローチ剤(lozenge)と、経口錠剤と、チュアブル錠と、およびチューインガムとからなる群から選択されるものである方法。
【請求項11】
対象の骨の疾患または疾病を治療もしくは抑制する方法であって、当該方法は、前記対象に組成物を投与する工程を有するものであり、前記組成物は、
a)ミセルであって、
i)少なくとも1つの骨への標的化部分(moiety)に結合した少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体と、
ii)少なくとも1つの骨関連治療薬と、を有するミセルと、
b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、を有する組成物である
方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記両親媒性ブロック共重合体は、少なくとも1つのポリ(エチレンオキシド)(EO)セグメントと、少なくとも1つのポリ(プロピレンオキシド)(PO)セグメントとを有するものである方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記両親媒性ブロック共重合体は、式:EO−PO−EOを有し、当該式中、x、y、およびzは、約2〜約300の値を有するものである方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法において、前記両親媒性ブロック共重合体は、開裂性結合によって前記歯への標的化部分に結合しているものである方法。
【請求項15】
請求項11記載の方法において、前記骨関連治療薬は、化学療法薬である方法。
【請求項16】
請求項11記載の方法において、前記骨の疾患または疾病は、骨肉腫である方法。
【請求項17】
請求項11記載の方法において、前記骨への標的化部分はアレンドロネートである方法。
【請求項18】
組成物であって:
a)ミセルであり、
i)少なくとも1つの歯または骨への標的化部分に結合した少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体と、
ii)少なくとも1つの生物活性剤と、を有するミセルと、
b)少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、
を有する組成物。
【請求項19】
請求項18記載の組成物において、前記両親媒性ブロック共重合体は、少なくとも1つのポリ(エチレンオキシド)(EO)セグメントと、少なくとも1つのポリ(プロピレンオキシド)(PO)セグメントとを有するものである組成物。
【請求項20】
請求項18記載の組成物において、前記両親媒性ブロック共重合体は、式:EO−PO−EOを有し、当該式中、x、y、およびzは、約2〜約300の値を有するものである組成物。
【請求項21】
請求項18記載の組成物において、前記歯または骨への標的化部分はアレンドロネートである組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527702(P2011−527702A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517628(P2011−517628)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/050140
【国際公開番号】WO2010/006192
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511008698)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ (1)
【Fターム(参考)】