説明

硬貨入出金機

【課題】オーバフロー庫等の金種混在収納庫における1円硬貨の残留を防止する手段を提供する。
【解決手段】金種別収納庫5と、硬貨の金種を混在させて収納するオーバフロー庫8等の金種混在収納庫とを備えた硬貨入出金機1において、各金種別収納庫5および金種混在収納庫に収納されている硬貨の枚数を金種別に計数する場合に、金種混在収納庫に収納されている硬貨を、全て金種別に各金種別収納庫5に収納した後に、1円硬貨を金種別収納庫5aから金種混在収納庫に搬送して収納し、再度金種別収納庫5aに収納して、1円硬貨の枚数を計数し、1円硬貨の計数後に、他の金種の硬貨を、順次に、当該金種別収納庫5から金種混在収納庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫5に収納して当該金種の硬貨の枚数を計数する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動預払機等の自動取引装置に装着され、硬貨の入出金を行う硬貨入出金機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現金自動預払機に装着された硬貨入出金機は、入出金口等から搬送された硬貨を1枚毎に分離して繰出す分離部と、硬貨の真偽、正損、金種等を鑑別する鑑別部と、硬貨を金種別に収納する金種別収納庫と、硬貨の補充、回収を行う補充回収カセットと、入金時に取込まれた硬貨を一時保留する一時保留部と、過剰硬貨や出金リジェクト硬貨を収納するオーバフロー庫とを備え、入金時には、入出金口に投入された硬貨を分離部で1枚毎に分離して鑑別部へ搬送し、鑑別部で金種等を鑑別して一時保留部へ搬送して一時保留し、入金金額が確定された後に、鑑別部で鑑別された金種を基に各金種別収納庫に金種別に収納し、金種別収納庫に収納しきれない過剰硬貨および、出金時に鑑別部で出金リジェクト硬貨と鑑別された硬貨はオーバフロー庫へ搬送して収納し、補充時には、補充回収カセットに補充する硬貨を収納して硬貨入出金機に装着し、補充回収カセットから繰出された硬貨を鑑別部で鑑別して金種別に各金種別収納庫に収納し、回収時には各金種別収納庫およびオーバフロー庫に収納されている硬貨を補充回収カセットに搬送して収納している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−216207号公報(段落0006−0014、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、現金自動預払機等の自動取引装置においては、終業時等に、自動取引装置内の現金の在高を精査するために、自動取引装置に収納されている現金を金種毎に計数することが行われており、硬貨入出金機においては、各金種別収納庫およびオーバフロー庫の硬貨を金種別に計数し、計数後に金種別収納庫に金種別に再収納することが行われている。
しかしながら、上述した従来の硬貨入出金機においては、金種混在収納庫であるオーバフロー庫へは全ての金種が金種に関わらず収納され、金種が混在した状態で収納されているため、1円硬貨のように軽い硬貨は、オーバフロー庫の内部に張付き易く、オーバフロー庫からの繰出時に1円硬貨が内部に残留してしまう場合があり、精査時における硬貨の計数時に、オーバフロー庫に1円硬貨が残留すると、硬貨入出金機に記録されている硬貨の収納枚数と、計数された硬貨の枚数との不一致が生ずるという問題がある。
【0004】
この場合に、オーバフロー庫は、全ての金種の硬貨を繰出す構成が必要であるため、1円専用の金種別収納庫に較べて、1円硬貨が残留してしまう可能性が高く、特に問題となる。
また、補充処理における補充回収カセットに収納された硬貨の補充時や、硬貨の回収処理におけるオーバフロー庫に収納された硬貨の回収時にも、オーバフロー庫や補充回収カセットは、それぞれ金種を混在させて硬貨を収納する金種混在収納庫であるので、1円硬貨がそれらの金種混在収納庫の内部に残留してしまう場合があり、金種混在収納庫に1円硬貨が残留すると、補充時においては、補充すべき硬貨の枚数と、各金種別収納庫5に実際に補充された硬貨の補充枚数との不一致が生じ、回収時においては、硬貨入出金機1に記録されている硬貨の収納枚数と回収された硬貨の枚数との不一致が生ずるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、オーバフロー庫等の金種混在収納庫における1円硬貨等の易残留硬貨の残留を防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、硬貨を金種別に収納する金種別収納庫と、硬貨の金種を混在させて収納する金種混在収納庫とを備えた硬貨入出金機において、前記各金種別収納庫および前記金種混在収納庫に収納されている硬貨の枚数を金種別に計数する場合に、前記金種混在収納庫に収納されている硬貨を、全て金種別に各金種別収納庫に収納する手段と、前記各金種別収納庫に収納した後に、易残留硬貨を当該金種別収納庫から前記金種混在収納庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫に収納して、前記易残留硬貨の枚数を計数する手段と、前記易残留硬貨の計数後に、他の金種の硬貨を、順次に、当該金種別収納庫から前記金種混在収納庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫に収納して、当該金種の硬貨の枚数を計数する手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、硬貨の金種を混在させて収納する金種混在収納庫と、硬貨の金種を鑑別する鑑別部とを備えた硬貨入出金機において、前記金種混在収納庫に収納されている硬貨を、収納先に収納する場合に、前記鑑別部で、易残留硬貨と鑑別された硬貨を、その収納先に収納する手段と、前記鑑別部で、他の金種の硬貨と鑑別された硬貨を、前記金種混在収納庫へ戻す手段と、前記易残留硬貨を全て当該収納先へ収納した後に、他の金種の硬貨をそれぞれの収納先に収納する手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明は、易残留硬貨の計数時に、金種混在収納庫に易残留硬貨が残留することがあったとしても、その後の他の金種の硬貨の計数時に、金種混在収納庫に収納される他の金種の硬貨により易残留硬貨を叩き落して、金種混在収納庫への易残留硬貨の残留を防止することができるという効果が得られる。
また、金種混在収納庫の硬貨の繰出時に、金種混在収納庫に易残留硬貨が残留することがあったとしても、他の金種の硬貨の金種混在収納庫への戻し時に、金種混在収納庫に収納される他の金種の硬貨により易残留硬貨を叩き落して、金種混在収納庫への易残留硬貨の残留を防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明による硬貨入出金機の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例1の硬貨入出金機の概略構成の側面を示す説明図、図2は実施例1の硬貨入出金機を示すブロック図、図3は実施例1の計数処理における残留防止処理を示すフローチャートである。
図1、図2において、1は硬貨入出金機であり、入金取引時等に顧客が投入した硬貨を受入れ、これを鑑別および計数して収納し、出金取引時等に顧客に支払う硬貨を繰出し、これを計数して顧客に払出す機能を有している。
【0011】
以下に説明する硬貨入出金機1は、銀行や日本郵政株式会社等の金融機関の支店や郵便局、コンビニエンスストア等の店舗に設置され、顧客との間での取引を自動で行う自動取引装置としての現金自動預払機に装着されているとして説明する。
2は硬貨の入出金口であり、入出金口2を開閉するための図示しないシャッタが設けられており、顧客が投入した硬貨を一括して受付ける機能等を有している。
【0012】
3は硬貨の分離部であり、入金時に入出金口2へ投入され搬送された硬貨、および出金時に搬送された硬貨等を受入れ、これを1枚毎に分離して繰出す機能を有している。
4は鑑別部であり、分離部3により1枚ずつに分離されて搬送された硬貨の材質や形状等により、硬貨の真偽、正損、金種等や、重送、連鎖等の搬送異常等の硬貨に関する各種の鑑別を行う機能を有している。
【0013】
5は金種別収納庫であり、硬貨を金種別に収納する収納庫であって、入金処理時に確定された硬貨や補充された硬貨を金種別に収納するために複数設けられており、それぞれ収納されている硬貨を1枚毎に繰出す繰出機構を有している。
本実施例では、1円硬貨を収納する金種別収納庫5a、5円硬貨を収納する金種別収納庫5b、10円硬貨を収納する金種別収納庫5c、50円硬貨を収納する金種別収納庫5d、100円硬貨を収納する金種別収納庫5e、500円硬貨を収納する金種別収納庫5fの6つの金種別収納庫5が設けられている。
【0014】
6は一時保留部であり、入金時に入出金口2に投入され、鑑別部4で真性硬貨と鑑別された硬貨を収納して一時保留する収納庫である。
7は返却口であり、入金処理おける返却時に、一時保留部6に一時保留された硬貨を排出して顧客に返却すると共に、入金時に鑑別部4で入金リジェクト硬貨と鑑別された硬貨を排出して顧客に返却する。
【0015】
8は金種混在収納庫としてのオーバフロー庫であり、入金処理時に金種別収納庫5に収納しきれなくなった過剰硬貨や、出金時に重送等により鑑別部4で出金リジェクト硬貨と鑑別された硬貨を収納する収納庫であって、硬貨の繰出機構を有している。
9は補充回収カセットであり、硬貨入出金機1に着脱可能に装着され、収納されている硬貨を金種別収納庫5へ補充し、金種別収納庫5に収納されている硬貨を回収するときに硬貨の運搬に用いられる収納庫であって、硬貨を繰出す繰出機構を有している。
【0016】
11は搬送路であり、搬送ベルトやリフタ、シュータ等により形成されており、上記の各部の間を接続して硬貨を搬送する機能を有している。
12は振分ゲートであり、硬貨の搬送方向を切替えるブレード等の振分機構を備えて、搬送路11の各分岐部に設けられている。
上記の搬送路11は、搬送路11a〜11gで構成され、搬送路11aは、入出金口2から分離部3に至るように、搬送路11bは、分離部3から鑑別部4に至るように、搬送路11cは、鑑別部4から振分ゲート12a、一時保留部6へ分岐する搬送路との分岐部に設けられた振分ゲート12b、各金種別収納庫5へ分岐する搬送路との分岐部に設けられた6つの振分ゲート12c、オーバフロー庫8へ分岐する搬送路との分岐部に設けられた振分ゲート12d、補充回収カセット9へ分岐する搬送路との分岐部に設けられた振分ゲート12eを経て入出金口2に至るように、搬送路11dは、一時保留部6の繰出口から搬送路11aを経由して分離部3に至るように、搬送路11eは、搬送路11dとの分岐部に設けられた振分ゲート12fから返却口7に至るように、搬送路11fは、入金リジェクト硬貨を返却口7に導くために、搬送路11cの鑑別部4と振分ゲート12bとの間に設けられた振分ゲート12aから搬送路11eに至るように、搬送路11gは各金種別収納庫5の繰出口、オーバフロー庫8の繰出口、補充回収カセット9の繰出口からそれぞれ分離部3に至るように、設けられている。
【0017】
なお、搬送路11a、11eにおいて、破線で示した部分は、他の搬送路11と立体交差となっており、互いに接続していないことを示す。
また、各振分ゲート12は、常時は、搬送路11cまたは11dで形成される搬送経路に沿って、硬貨を搬送する方向にセットされており、搬送方向の切替時に動作して、硬貨の搬送方向を切替え、その後に元の位置に復帰するよう構成されている。
【0018】
図2において、15は硬貨入出金機1の制御部であり、上位装置である現金自動預払機の図示しない主制御部からの指令により、硬貨入出金機1の各部を制御して、入金処理、出金処理、補充処理、回収処理、計数処理等の各種の硬貨処理を実行する機能を有している。
16は、硬貨入出金機1の記憶部であり、制御部15が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部15による処理結果等が格納される。
【0019】
上記の現金自動預払機の図示しない主記憶部には、顧客が選択した取引の入力を受付け、これを基に図示しないホストコンピュータと交信して顧客との取引を自動で行う機能等を有する通常の業務処理実行プログラムが予め格納されており、主制御部が実行する業務処理実行プログラムのステップにより本実施例の現金自動預払機のハードウェアとしての各機能手段が形成される。
【0020】
上記の現金自動預払機1の記憶部16には、顧客が選択した取引の入力を受付け、これを基にホストコンピュータ2と交信して顧客との取引処理を自動で行う機能等を有する通常の取引処理プログラムに、図4を用いて説明する本人確認処理(詳細は後述する。)を行う機能を有するアプリケーションプログラム等が追加された業務処理実行プログラムが予め格納されており、制御部15が実行する業務処理実行プログラムのステップにより本実施例の現金自動預払機1のハードウェアとしての各機能手段が形成される。
【0021】
上記の硬貨入出金機1の記憶部16には、上位装置である現金自動預払機の主制御部からの指令により、硬貨の鑑別、搬送、各金種別収納庫5等への収納、繰出等により、投入された硬貨を鑑別して各金種別収納庫5に収納する入金処理、硬貨を顧客に払出す出金処理、補充回収カセット9からの硬貨を鑑別して各金種別収納庫5へ補充する補充処理、硬貨入出金機1内の硬貨を全て補充回収カセット9に回収する回収処理、精査時における硬貨の金種別の枚数を計数する計数処理等の硬貨処理を実行する通常の硬貨処理プログラムに、精査時における計数処理のときに、図3を用いて説明する硬貨の残留防止処理を実行する機能を有するアプリケーションプログラム等が追加された硬貨取扱プログラムが予め格納されており、制御部15が実行する硬貨取扱プログラムのステップにより本実施例の硬貨入出金機1のハードウェアとしての各機能手段が形成される。
【0022】
また、記憶部16には、各金種別収納庫5に収納されている硬貨の収納枚数を金種別に計数する収納枚数カウントエリアが金種別収納庫5毎に確保されると共に、オーバフロー庫8に収納されている硬貨の収納枚数を金種別に計数する過剰硬貨枚数カウントエリア、計数処理の開始時に収納されている硬貨の総和である当初総枚数から、計数処理において計数された硬貨の枚数を減じて算出される残枚数を記録する残枚数記録エリアが確保されている。
【0023】
更に、記憶部16には、硬貨を取扱う処理における処理の順序を、先に処理する金種から順に、第1金種から第6金種まで設定した処理順テーブルが予め格納されている。
本実施例では、最初に計数する第1金種は、最軽量のためにオーバフロー庫8等の内部に張付いて残留する可能性が最も高い1円硬貨(易残留硬貨という。)の金種である「1円」に設定され、第2金種は5円硬貨の金種である「5円」に、第3金種は10円硬貨の金種である「10円」に、第4金種は50円硬貨の金種である「50円」に、第5金種は100円硬貨の金種である「100円」に設定され、最後に計数する第6金種は、最重量のために最も残留する可能性が低い500円硬貨(難残留硬貨という。)の金種である「500円」に設定されている。
【0024】
以下に、本実施例の硬貨入出金機1における入金処理、出金処理について説明する。
金融機関の店舗の係員が、現金自動預払機へ電源を投入すると、現金自動預払機の図示しない主記憶部に格納されている業務処理実行プログラム、および硬貨入出金機1の記憶部16に格納されている硬貨取扱プログラムが自動的に起動される。
業務処理実行プログラムが起動されると、現金自動預払機の図示しない主制御部は、出金取引、入金取引等の取引を選択するための取引選択ボタンを表示した取引選択画面を表示して待機し、顧客が取引選択ボタンにより、所望の取引を選択したときに、選択された取引の取引処理を実行する。
【0025】
以下、入金取引について説明する。
顧客が入金取引の取引選択ボタンを押下すると、現金自動預払機の主制御部は硬貨入出金機1の制御部15へ、硬貨の取込指令を送信する。
硬貨の取込指令を受信した制御部15は、硬貨取扱プログラムにより、硬貨の取込処理を開始し、入出金口2のシャッタを解放して硬貨の投入を受付け、硬貨が投入されるとシャッタを閉鎖して、入出金口2に投入された硬貨を搬送路11aにより分離部3へ搬送して集積し、分離部3により硬貨を1枚毎に繰出して搬送路11bにより鑑別部4へ搬送し、鑑別部4で硬貨の鑑別を行う。
【0026】
制御部15は、鑑別部4での鑑別結果が、真性硬貨(金種を鑑別することが可能な硬貨をいう。)である場合は、その金種別の取込枚数を記憶部16でカウントしながら、硬貨を搬送路11c、振分ゲート12bにより一時保留部6へ搬送して収納する。
鑑別結果が、真性硬貨でない場合、つまり偽硬貨や外国硬貨、変形や傷等により金種を鑑別できない硬貨等の入金リジェクト硬貨の場合は、搬送路11c、振分ゲート12a、搬送路11f、11eにより返却口7へ搬送して、顧客に返却する。
【0027】
また、制御部15は、図示しない通過検出センサにより分離部3から搬送路11bへ繰出された硬貨の搬送間隔を監視しており、搬送間隔が所定の判定間隔以内の場合は、上記の硬貨の鑑別を継続し、搬送間隔が所定の判定間隔を超えた場合は、取込処理を終了させ、記憶部16から金種別の取込枚数を読出し、各金種の金額にそれぞれの枚数を乗じ、これらを合計した取込金額を添付した取込終了通知を、現金自動預払機の主制御部へ送信する。
【0028】
取込終了通知を受信した主制御部は、その取込金額を表示し、顧客はこれを確認して確定操作を行い、これを認識した主制御部は、制御部15へ硬貨の収納指令を送信する。
なお、顧客が投入した硬貨の返却を要求したときは、主制御部は、制御部15へ硬貨の返却指令を送信し、これを受信した制御部15は、一時保留部6に収納されている硬貨を、搬送路11d、振分ゲート12f、搬送路11eにより返却口7へ搬送して顧客に返却し、入金処理を終了させる。
【0029】
硬貨の収納指令を受信した制御部15は、収納処理を開始し、一時保留部6に収納されている硬貨を、搬送路11d、11aにより分離部3へ搬送して集積し、分離部3により硬貨を1枚毎に繰出して搬送路11bにより鑑別部4へ搬送し、鑑別部4での硬貨の金種の鑑別結果に基づいて、鑑別された硬貨を搬送路11c、振分ゲート12cにより該当する金種別収納庫5へ搬送して収納する。
【0030】
このとき、制御部15は、記憶部16の収納枚数カウントエリアの当該金種の金種別収納庫5のカウント数に「1」を加えて各金種別収納庫5の金種別の収納枚数を計数する。
この場合に、収納すべき金種別収納庫5がフル状態の場合は、その過剰硬貨を、搬送路11c、振分ゲート12dによりオーバフロー庫8へ搬送して収納し、記憶部16の過剰硬貨枚数カウントエリアの当該金種のカウント数に「1」を加えて、オーバフロー庫8の金種別の収納枚数を計数する。
【0031】
そして、全ての入金硬貨の収納を終えた制御部15は、収納処理を終了させ、その旨の収納終了通知を、現金自動預払機の主制御部へ送信する。
収納終了通知を受信した主制御部は、入金取引を終了させ、取引選択画面を表示して待機する。
このようにして、本実施例の硬貨入出金機1における硬貨の入金処理が実行される。
【0032】
以下に出金取引について説明する。
顧客が出金取引の取引選択ボタンを押下すると、現金自動預払機の主制御部は、顧客に取引カードの挿入や暗証番号の入力を行わせ、顧客が出金金額を入力して、その確定操作を行ったときに、硬貨入出金機1の制御部15へ、出金金額を添付した硬貨の出金指令を送信する。
【0033】
これを受信した制御部15は、硬貨取扱プログラムにより、添付された出金金額を基に、出金すべき出金硬貨の金種別の繰出枚数を演算し、出金硬貨の金種に該当する金種別収納庫5から繰出枚数の硬貨を繰出し、搬送路11gにより分離部3へ搬送して集積する。
このとき、制御部15は、金種別収納庫5から出金硬貨を繰出す度に、記憶部16の収納枚数カウントエリアの当該金種のカウント数から「1」を減じて各金種別収納庫5の収納枚数を計数する。
【0034】
金種別収納庫5からの硬貨が分離部3に集積されると、制御部15は、上記取込処理と同様にして、鑑別部4で出金硬貨の金種を鑑別し、その金種別の出金枚数を記憶部16でカウントしながら搬送路11cにより、入出金口2へ搬送して集積する。
このとき、重送等の搬送異常により出金リジェクト硬貨と鑑別された硬貨は、搬送路11c、振分ゲート12dによりオーバフロー庫8へ搬送して収納する。
【0035】
この場合に、出金リジェクト硬貨の発生により、入出金口2に集積した出金硬貨が不足する場合は、演算した金種別の繰出枚数と、記憶部16でカウントした出金硬貨の金種別の枚数とを金種別に比較して、金種別の不足枚数を算出し、この不足枚数を前記と同様にして当該金種の金種別収納庫5から繰出し、入出金口2へ搬送して集積する。
このとき、不足枚数を構成する金種別の枚数を、記憶部16の過剰硬貨枚数カウントエリアの該当する金種のカウント数に加えて、オーバフロー庫8の金種別の収納枚数を更新する。
【0036】
そして、制御部15は、入出金口2に集積した硬貨が、演算した金種別の繰出枚数になったときに、入出金口2のシャッタを解放して出金硬貨を顧客に払出し、顧客の受取りを確認してシャッタを閉鎖し、出金処理を終了させてその旨の出金終了通知を、現金自動預払機の主制御部へ送信する。
出金終了通知を受信した主制御部は、出金取引を終了させ、取引選択画面を表示して待機する。
【0037】
このようにして、本実施例の硬貨入出金機1における硬貨の出金処理が実行される。
以下に、図3に示すフローチャートを用い、Sで示すステップに従って本実施例の硬貨の計数処理における残留防止処理について説明する。
金融機関の店舗の係員は、精査時等に、硬貨入出金機1に収納されている硬貨の金種別の収納枚数の計数が必要になった場合に、空の補充回収カセット9を硬貨入出金機1に装着し、または装着されている補充回収カセット9が空であることを確認して、現金自動預払機の図示しない係員操作部によって、計数処理を指示する計数ボタンを押下する。
【0038】
これを認識した現金自動預払機の主制御部は、硬貨入出金機1の制御部15へ、硬貨の計数指令を送信する。
S1、硬貨の回収指令を受信した制御部15は、硬貨取扱プログラムにより、硬貨の計数処理を開始し、記憶部16の収納枚数カウントエリアおよび過剰硬貨枚数カウントエリアから、各金種別収納庫5およびオーバフロー庫8のそれぞれの金種別の収納枚数を読出し、これらを合計して、処理の開始時に硬貨入出金機1の記憶部16に保存されている収納枚数の当初総枚数を算出し、これを記憶部16に保存すると共に残枚数記録エリアの記録数の初期値を当初総枚数にしてステップS2へ移行する。
【0039】
S2、当初総枚数を保存した制御部15は、オーバフロー庫8に収納されている硬貨を繰出し、搬送路11gにより分離部3へ搬送し、分離部3により硬貨を1枚毎に繰出して搬送路11bにより鑑別部4へ搬送し、鑑別部4での硬貨の金種の鑑別結果に基づいて、記憶部16の収納枚数カウントエリアの当該金種の金種別収納庫5のカウント数に「1」を加えて各金種別収納庫5の金種別の収納枚数を計数しながら、鑑別された硬貨を搬送路11c、振分ゲート12cにより該当する金種別収納庫5へ搬送して収納する。
【0040】
S3、制御部15は、図示しない通過検出センサによりオーバフロー庫8から搬送路11gへ繰出された硬貨の搬送間隔を監視しており、搬送間隔が所定の判定間隔以内の場合は、ステップS2へ戻り、前記の繰出、鑑別、収納を継続する。
搬送間隔が所定の判定間隔を超えた場合は、オーバフロー庫8が空になったことによりオーバフロー庫8の全ての硬貨の金種別収納庫5への収納の終了を判定して、ステップS4へ移行する。
【0041】
S4、オーバフロー庫8の全ての硬貨の金種別収納庫5への収納を終えた制御部15は、最初に計数対象とする金種を設定するために、第N金種のNを「1」に設定し、記憶部16の処理順テーブルから第1金種の硬貨の金種「1円」を読出し、最初に計数対象とする硬貨を第1金種の硬貨である1円硬貨、つまり易残留硬貨に設定する。
S5、計数対象の金種を設定した制御部15は、その金種、本ステップでは「1円」を収納する金種別収納庫5aから収納されている1円硬貨を繰出す度に、記憶部16の収納枚数カウントエリアの金種別収納庫5aのカウント数から「1」を減じて金種別収納庫5aの収納枚数を計数しながら、繰出した1円硬貨を、搬送路11gにより分離部3へ搬送し、分離部3により硬貨を1枚毎に繰出して搬送路11b、11cにより振分ゲート12a、12b、12cを通過させた後に、振分ゲート12dによって空になっているオーバフロー庫8へ搬送して収納し、図示しない通過検出センサにより分離部3から搬送路11bへ繰出された硬貨の搬送間隔が所定の判定間隔を超えたときに、繰出された全ての1円硬貨をオーバフロー庫8へ収納したと判定して、ステップS6へ移行する。
【0042】
S6、全ての1円硬貨をオーバフロー庫8へ収納したと判定した制御部15は、オーバフロー庫8に収納されている1円硬貨を繰出し、上記ステップS2と同様にして、鑑別部4での硬貨の金種の鑑別結果を基に、収納枚数カウントエリアの1円の金種別収納庫5aのカウント数に「1」を加えて金種別収納庫5aの収納枚数を計数しながら、鑑別された硬貨を金種別収納庫5aへ搬送して収納する。
【0043】
このとき、制御部15は、硬貨を該当する金種別収納庫5へ収納する度に、記憶部16の残枚数記録エリアの残枚数の記録数から「1」を減じて、残枚数を算出する。
S7、制御部15は、上記ステップ3と同様にして、オーバフロー庫8から繰出された硬貨の搬送間隔を監視しており、搬送間隔が所定の判定間隔以内の場合は、ステップS6へ戻り、前記の繰出、鑑別、収納を継続する。
【0044】
搬送間隔が所定の判定間隔を超えた場合は、オーバフロー庫8が空になったことを判定して、ステップS8へ移行する。
S8、第1金種の硬貨の計数を終えた制御部15は、次に計数する金種を設定するために、第N金種のNを「1+1=2」に設定し、記憶部16の処理順テーブルから第2金種の硬貨の金種「5円」を読出し、次に計数対象とする硬貨を第2金種の硬貨である5円硬貨に設定する。
【0045】
S9、計数対象の金種を設定した制御部15は、第N金種の現在のNの数が「6」を超えているとき、つまり第6金種の硬貨(難残留硬貨である500円硬貨)の計数を終えたときは、金種別の計数の終了を判定してステップS10へ移行する。
第N金種の現在のNの数が「6」以下である場合は、ステップS5へ戻って、ステップS5〜S9による次の第N金種の硬貨の計数を実行する。
【0046】
この場合に、ステップS6において、鑑別部4が現在計数中の第N金種以外の金種、つまり既に計数を終えたはずの金種と鑑別したときは、その金種に該当する金種別収納庫5へ搬送して収納する。
これは、易残留硬貨である1円硬貨が、その計数時にオーバフロー庫8に張付いて残留していた場合に、その後の金種の硬貨がオーバフロー庫8に収納されるときに、1円硬貨が収納される硬貨に叩き落されて、計数中の硬貨と共にオーバフロー庫8から繰出されるからである。
【0047】
S10、全ての金種の枚数の計数を終えた制御部15は、記憶部16の残枚数記録エリアから計数の度に算出した残枚数を読出し、算出された残枚数が「0」以外のときは、計数処理の異常終了を判定してステップS11へ移行する。
算出された残枚数が「0」、つまり当初総枚数と計数された枚数の総和である計数総枚数とが一致したときは、計数処理の正常終了を判定して計数処理を終了させ、正常終了の旨の計数終了通知を、現金自動預払機の主制御部へ送信する。
【0048】
正常終了の旨の計数終了通知を受信した主制御部は、係員操作部の画面にその旨を表示して、計数処理を終了する。
S11、計数処理の異常終了を判定した制御部15は、異常終了の旨に残枚数(正負を含む。)を添付した計数終了通知を、現金自動預払機の主制御部へ送信する。
異常終了の旨の計数終了通知を受信した主制御部は、係員操作部の画面にその旨および残枚数を表示すると共に、ブザー等により警報を発して、係員に異常を報知するエラー処理を行い、その後に計数処理を終了する。
【0049】
これにより、係員は、残枚数が「負」の場合は、保存されていた当初総枚数に、カウントミス等が存在したことを認識することができ、プログラムの見直しや、収納確認および繰出確認のためのセンサの異常等を異常終了の要因とし、残枚数が「正」の場合は、オーバフロー庫8への硬貨の残留や、搬送路11からの硬貨の落下等を異常終了の要因として異常要因の究明における調査対象を絞り込むことができる。
【0050】
このようにして、本実施例の硬貨の計数処理における残留防止処理が実行される。
上記のように、本実施例においては、計数処理時に、金種混在収納庫であるオーバフロー庫8に収納されている全ての硬貨を、金種別に各金種別収納庫5に収納した後に、最初に易残留硬貨である1円硬貨を当該金種別収納庫5aからオーバフロー庫8に搬送して収納し、再度1円の金種別収納庫5aに収納してその枚数を計数し、その後に他の硬貨を金種別に順次に計数するので、1円硬貨の計数時に、オーバフロー庫8に1円硬貨が残留することがあったとしても、その後の他の金種の硬貨の計数時に、オーバフロー庫8に収納される他の金種の硬貨により1円硬貨を叩き落して、オーバフロー庫8への1円硬貨の残留を防止することができる。
【0051】
また、最後に、難残留硬貨である500円硬貨を計数するので、それ以前の硬貨により叩き落すことができなった1円硬貨も確実に叩き落すことができると共に、最後に計数する500円硬貨の残留する可能性を極めて低くすることが可能になる。
更に、1円硬貨から順に、全ての金種の硬貨の枚数を金種別に計数した後に、記憶部16に保存されていた収納枚数の当初総枚数から、計数処理時に計数された硬貨の計数総枚数を減じた残枚数が「0」のときに、計測処理の正常終了を判定するので、1円硬貨の計数時に、1円硬貨がオーバフロー庫8に残留していたとしても、他の金種の硬貨で叩き落されて残留が解除されれば、異常終了と判定することなく正常終了と判定して計数処理を正常に終了させることができ、計数処理における無用の混乱を防止することができると共に、計数された硬貨の計数総枚数が不足の場合に、残枚数の正負によって、異常要因の究明における調査対象を絞り込むことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施例では、硬貨入出金機において、各金種別収納庫およびオーバフロー庫に収納されている硬貨の枚数を金種別に計数する場合に、オーバフロー庫に収納されている硬貨を、全て金種別に各金種別収納庫に収納した後に、最初に、易残留硬貨である1円硬貨を当該金種別収納庫からオーバフロー庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫に収納して、易残留硬貨の枚数を計数し、その計数後に、他の金種の硬貨を、順次に、当該金種別収納庫からオーバフロー庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫に収納して、当該金種の硬貨の枚数を計数するようにしたことによって、1円硬貨の計数時に、オーバフロー庫に1円硬貨が残留することがあったとしても、その後の他の金種の硬貨の計数時に、オーバフロー庫に収納される他の金種の硬貨により1円硬貨を叩き落して、オーバフロー庫への1円硬貨の残留を防止することができるという効果が得られる。
【0053】
また、他の硬貨の最後に、難残留硬貨を計数するようにしたことによって、それ以前の硬貨により叩き落すことができなった1円硬貨も確実に叩き落すことができる。
更に、全ての金種の硬貨の枚数を金種別に計数した後に、当初総枚数から計数された硬貨の計数総枚数を減じた残枚数によって、硬貨の残留の有無を判定するようにしたことによって、1円硬貨の計数時に、1円硬貨がオーバフロー庫に残留していたとしても、他の金種の硬貨で叩き落されて残留が解除されれば、正常終了と判定して計数処理における無用の混乱を防止することができる。
【0054】
なお、本実施例においては、残枚数を算出するための計数総枚数は、硬貨を該当する金種別収納庫へ収納する度に残枚数記録エリアの残枚数から「1」を減じて行うとして説明したが、上記ステップS6において 硬貨を該当する金種別収納庫へ収納する度に、記憶部によって計数した硬貨の枚数を加算しながら計数総枚数を計数しておき、全ての金種の硬貨の計数終了後に、ステップS10において、当初総枚数から、記憶部で計数した硬貨の計数総枚数を減じて残枚数を算出し、この残枚数によって硬貨の残留の有無を判定するようにしてもよい。
【実施例2】
【0055】
図4は実施例2の補充処理における残留防止処理を示すフローチャートである。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
以下の説明においては、補充回収カセット9を金種混在収納庫とした本実施例の残留防止処理について、補充処理の場合を例に説明する。
本実施例の硬貨入出金機1の記憶部16には、上記実施例1と同様の通常の硬貨処理プログラムに、補充処理や回収処理等のときに、図4を用いて説明する硬貨の残留防止処理を実行する機能を有するアプリケーションプログラム等が追加された硬貨取扱プログラムが予め格納されており、制御部15が実行する硬貨取扱プログラムのステップにより本実施例の硬貨入出金機1のハードウェアとしての各機能手段が形成される。
【0056】
また、記憶部16には、実施例1と同様の、収納枚数カウントエリア、過剰硬貨枚数カウントエリア、残枚数記録エリアに加えて、各金種別収納庫5に補充された硬貨の補充枚数を金種別に計数する補充枚数カウントエリアが確保され、実施例1と同様の処理順テーブルが予め格納されている。
なお、本実施例では、補充回収カセット9に予め収納された易残存硬貨である1円硬貨の補充すべき枚数と、1円の金種別収納庫5aに実際に補充された補充枚数との一致が、戻し搬送の終了条件として設定され、記憶部16には、その判定のために、補充回収カセット9に予め収納された1円硬貨の収納枚数が、戻し搬送終了判定値として保存される。
【0057】
以下に、図4に示すフローチャートを用い、SAで示すステップに従って本実施例の残留防止処理について、硬貨の補充処理を例に説明する。
金融機関の店舗の係員は、始業時や、硬貨入出金機1に収納されている硬貨の枚数が減少して金種別収納庫5への硬貨の補充が必要になった場合等に、補充する硬貨を金種を混在させて収納した補充回収カセット9を硬貨入出金機1に装着し、現金自動預払機の図示しない係員操作部によって、補充すべき硬貨の金種別の収納枚数(設定枚数という。)を入力し、その後に補充処理を指示する補充ボタンを押下する。
【0058】
これを認識した現金自動預払機の主制御部は、硬貨入出金機1の制御部15へ、入力された金種別の設定枚数を添付した硬貨の補充指令を送信する。
SA1、硬貨の補充指令を受信した制御部15は、硬貨取扱プログラムにより、硬貨の補充処理を開始し、補充指令に添付された金種別の設定枚数を記憶部16に保存し、記憶部16の処理順テーブルから第1金種の硬貨の金種「1円」を読出し、最初に処理対象とする硬貨を第1金種の硬貨である1円硬貨、つまり易残留硬貨に設定すると共に、1円硬貨の設定枚数を、戻し搬送終了判定値として記憶部16に保存する。
【0059】
SA2、戻し搬送終了判定値を保存した制御部15は、装着された補充回収カセット9から硬貨を繰出し、搬送路11gにより分離部3へ搬送し、分離部3により硬貨を1枚毎に繰出して搬送路11bにより鑑別部4へ搬送して硬貨の金種等を鑑別する。
SA3、硬貨の金種等を鑑別した制御部15は、その鑑別結果が、最初の処理対象である1円硬貨の場合は、ステップSA5へ移行する。
【0060】
鑑別結果が、1円硬貨以外の他の金種の硬貨の場合は、ステップSA4へ移行する。
SA4、鑑別結果が他の金種の硬貨であることを認識した制御部15は、その硬貨を元の金種混在収納庫である補充回収カセット9へ戻す戻し搬送を行う。
すなわち、制御部15は、鑑別された他の金種の硬貨を、搬送路11cにより振分ゲート12a、12b、12c、12dを通過させた後に、振分ゲート12eによって補充回収カセット9へ戻して収納し、ステップSA2へ戻って補充回収カセット9からの硬貨の繰出しを継続する。
【0061】
このとき、重送等によりリジェクト硬貨と鑑別された硬貨は、戻し搬送により補充回収カセット9へ戻して収納する。
SA5、鑑別結果が最初の処理対象である1円硬貨と認識した制御部15は、その1円硬貨を、搬送路11c、振分ゲート12cにより1円硬貨の収納先である金種別収納庫5aへ搬送して収納する。
【0062】
このとき、制御部15は、記憶部16の収納枚数カウントエリアの金種別収納庫5aのカウント数に「1」を加えて金種別収納庫5aの収納枚数を計数すると共に、補充枚数カウントエリアの金種「1円」のカウント数に1を加えて、1円の補充枚数を計数する。
SA6、1円硬貨を金種別収納庫5aへ収納した制御部15は、保存した戻し搬送終了判定値と、補充枚数カウントエリアの1円の補充枚数とを比較し、戻し搬送終了判定値と1円の補充枚数とが一致した場合は、戻し搬送の終了を判定してステップSA7へ移行する。
【0063】
戻し搬送終了判定値と1円の補充枚数とが不一致の場合は、ステップSA2へ戻って補充回収カセット9からの硬貨の繰出しを継続する。
SA7、戻し搬送の終了を判定した制御部15は、他の金種の硬貨を、鑑別部4での鑑別結果に基づいて、それぞれの収納先、つまり鑑別された金種に該当する金種別収納庫5b〜5fへ、記憶部16の収納枚数カウントエリアで金種別収納庫5b〜5fの収納枚数を計数すると共に補充枚数カウントエリアで金種別に補充枚数を計数しながら、搬送路11c、振分ゲート12cにより搬送して収納する。
【0064】
そして、制御部15は、全ての金種別収納庫5に設定枚数の硬貨を補充し、補充回収カセット9が空になったことを確認した後に、補充処理を終了させ、その旨の補充終了通知を、現金自動預払機の主制御部へ送信する。
補充終了通知を受信した主制御部は、係員操作部の画面にその旨を表示して、補充処理を終了する。
【0065】
このようにして、本実施例の補充処理における残留防止処理が行われる。
上記のように、本実施例においては、補充処理時に、金種混在収納庫である補充回収カセット9に収納されている硬貨を、収納先である各金種別収納庫5に収納する場合に、最初に補充する硬貨を易残留硬貨である1円硬貨とし、鑑別部4で1円硬貨と鑑別された硬貨は、その収納先である金種別収納庫5aに収納し、他の金種の硬貨と鑑別された硬貨は、補充回収カセット9へ戻し搬送して収納し、1円硬貨を全て金種別収納庫5aへ収納した後に、他の金種の硬貨をそれぞれの収納先である金種別収納庫5b〜5fに収納するので、1円硬貨の補充時に、補充回収カセット9に1円硬貨が残留することがあったとしても、他の金種の硬貨の戻し搬送時に、補充回収カセット9に収納される他の金種の硬貨により1円硬貨を叩き落して、補充回収カセット9への1円硬貨の残留を防止することができる。
【0066】
なお、本実施例では、補充処理の場合を例に説明したが、回収処理の場合は、金種混合収納庫をオーバフロー庫8とし、戻し搬送終了判定値を、記憶部16の過剰硬貨枚数カウントエリアに記録されている1円硬貨の収納枚数に設定し、最初に処理対象とする硬貨を1円硬貨として、上記と同様に、鑑別部4で1円硬貨と鑑別された場合は、その硬貨を搬送先の補充回収カセット9に搬送して収納し、他の金種の硬貨は、元の金種混合収納庫であるオーバフロー庫8へ戻し搬送して収納し、戻し搬送の終了を判定したときに、他の金種の硬貨を、それぞれの収納先である補充回収カセット9へ搬送して収納する。
【0067】
また、上記実施例1のステップS2、S3において、本実施例の残留防止処理を行う場合は、金種混合収納庫をオーバフロー庫8とし、戻し搬送終了判定値を、記憶部16の過剰硬貨枚数カウントエリアに記録されている1円硬貨の収納枚数に設定し、最初に処理対象とする硬貨を1円硬貨として、上記と同様に、鑑別部4で1円硬貨と鑑別された場合は、その硬貨を搬送先の金種別収納庫5aに搬送して収納し、他の金種の硬貨は、金種混合収納庫であるオーバフロー庫8へ戻し搬送して収納し、戻し搬送の終了を判定したときに、他の金種の硬貨を、鑑別部4での鑑別結果に基づいて、それぞれの収納先である金種別収納庫5b〜5fへ搬送して収納し、その後にステップS4へ移行させる。
【0068】
以上説明したように、本実施例では、硬貨入出金機において、金種混在収納庫である補充回収カセットやオーバフロー庫に収納されている硬貨を、収納先に収納する場合に、鑑別部で易残留硬貨と鑑別された硬貨は、その収納先に収納し、鑑別部で他の金種の硬貨と鑑別された硬貨は、元の金種混在収納庫へ戻し搬送して収納し、易残留硬貨を全て当該収納先へ収納した後に、他の金種の硬貨をそれぞれの収納先に収納するようにしたことによって、金種混在収納庫の硬貨の繰出時に、金種混在収納庫に易残留硬貨が残留することがあったとしても、他の金種の硬貨の戻し搬送時に、金種混在収納庫に収納される他の金種の硬貨により易残留硬貨を叩き落して、金種混在収納庫への易残留硬貨の残留を防止することができるという効果が得られる。
【0069】
なお、本実施例においては、戻し搬送終了判定値は、易残留硬貨の収納先に本来収納されるべき補充枚数や、処理の開始時に記憶部の過剰硬貨枚数カウントエリアに記録されている易残留硬貨の収納枚数であるとして説明したが、前記の易残留硬貨の補充枚数や収納枚数から所定の枚数(例えば、1枚)を減じた値に設定するようにしてもよい。このようにすれば、戻し搬送による易残留硬貨の叩き落しが、何らかの要因でできなかった場合に戻し搬送の無限ループを防止することが可能になる。
【0070】
上記各実施例においては、易残留硬貨は、最軽量の硬貨である1円硬貨、難残留硬貨は最重量の硬貨である500円硬貨として説明したが、最も小型の硬貨を易残留硬貨とし、最も大型の硬貨を難残留硬貨としてもよい。要は、収納庫の内部形状やそれを構成する材料等との相性によって、張付きや引っ掛かり等により残留し易い硬貨を易残留硬貨とし、同じ要因で残留し難い硬貨を難残留硬貨として設定すればよい。
【0071】
また、上記各実施例においては、本発明の硬貨入出金機を装着する自動取引装置は現金自動預払機であるとして説明したが、自動取引装置は前記に限らず、自動販売機や発券機、両替機等であってもよい。要は顧客との間で硬貨を用いた取引を自動で行うものであれば、本発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1の硬貨入出金機の概略構成の側面を示す説明図
【図2】実施例1の硬貨入出金機を示すブロック図
【図3】実施例1の計数処理における残留防止処理を示すフローチャート
【図4】実施例2の補充処理における残留防止処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0073】
1 硬貨入出金機
2 入出金口
3 分離部
4 鑑別部
5、5a〜5f 金種別収納庫
6 一時保留部
8 オーバフロー庫
9 補充回収カセット
11、11a〜11g 搬送路
12、12a〜14f 振分ゲート
15 制御部
16 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を金種別に収納する金種別収納庫と、硬貨の金種を混在させて収納する金種混在収納庫とを備えた硬貨入出金機において、
前記各金種別収納庫および前記金種混在収納庫に収納されている硬貨の枚数を金種別に計数する場合に、
前記金種混在収納庫に収納されている硬貨を、全て金種別に各金種別収納庫に収納する手段と、
前記各金種別収納庫に収納した後に、易残留硬貨を当該金種別収納庫から前記金種混在収納庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫に収納して、前記易残留硬貨の枚数を計数する手段と、
前記易残留硬貨の計数後に、他の金種の硬貨を、順次に、当該金種別収納庫から前記金種混在収納庫に搬送して収納し、再度当該金種別収納庫に収納して、当該金種の硬貨の枚数を計数する手段と、を備えることを特徴とする硬貨入出金機。
【請求項2】
請求項1において、
前記他の硬貨の最後に、難残留硬貨の枚数を計数することを特徴とする硬貨入出金機。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
全ての硬貨の枚数を金種別に計数した後に、収納枚数の当初総枚数から、計数された硬貨の枚数を減じた残枚数によって、硬貨の残留の有無を判定する手段を備えることを特徴とする硬貨入出金機。
【請求項4】
硬貨の金種を混在させて収納する金種混在収納庫と、硬貨の金種を鑑別する鑑別部とを備えた硬貨入出金機において、
前記金種混在収納庫に収納されている硬貨を、収納先に収納する場合に、
前記鑑別部で、易残留硬貨と鑑別された硬貨を、その収納先に収納する手段と、
前記鑑別部で、他の金種の硬貨と鑑別された硬貨を、前記金種混在収納庫へ戻す手段と、
前記易残留硬貨を全て当該収納先へ収納した後に、他の金種の硬貨をそれぞれの収納先に収納する手段と、を備えることを特徴とする硬貨入出金機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−15196(P2010−15196A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171813(P2008−171813)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】