説明

硬貨処理装置

【課題】待機モードと省電力モードとを自己の省電力を向上させるべく柔軟に設定可能な硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨投入口と、硬貨投入口への硬貨の投入を検出する硬貨検出部と、硬貨投入口への投入後の硬貨を釣銭硬貨として金種別に収納する釣銭収納部と、釣銭収納部における硬貨の保留状態を検出する釣銭検出部と、自動販売機の制御を司る第1制御部から各販売の終了を示す販売待機信号が供給されると、硬貨検出部及び釣銭検出部に電源を供給する待機モードと、硬貨検出部のみに電源を供給する省電力モードとを、自己の判断で選択的に設定する第2制御部とを備えた硬貨処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、先の商品の販売時に、その代金として投入された硬貨を釣銭硬貨として収納し、後の商品の販売時に、投入された硬貨の金額に対し釣銭の返却が必要なときに、収納された釣銭硬貨の一部を払出す硬貨処理装置を備えた自動販売機が知られている。
【0003】
この硬貨処理装置には、硬貨の投入を検出する所定のセンサを備え、例えば、センサが硬貨の投入を検出すると硬貨の特徴(材質、外径、板厚等)を判別するための所定の判別手段に電源を所定時間供給し、その後は判別手段への電源の供給を停止することによって、省電力を図るものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−163539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される硬貨処理装置では、硬貨の投入を検出してから所定時間経過後に待機モードから省電力モードに入る。尚、省電力モードは前述した判別手段に電源を供給しないモードであり、待機モードはこの判別手段に電源を供給するモードである。
【0005】
このため、例えば自動販売機の設置場所や販売時間帯等によっては、実際に必要な待機モードの時間に対し固定された所定時間が不必要に長すぎて、その分だけ無駄な電力を消費するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、待機モードと省電力モードとを自己の省電力を向上させるべく柔軟に設定可能な硬貨処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための発明は、硬貨投入口と、前記硬貨投入口への硬貨の投入を検出する硬貨検出部と、前記硬貨投入口への投入後の硬貨を釣銭硬貨として金種別に収納する釣銭収納部と、前記釣銭収納部における前記硬貨の保留状態を検出する釣銭検出部と、自動販売機の制御を司る第1制御部から各販売の終了を示す販売待機信号が供給されると、前記硬貨検出部及び前記釣銭検出部に電源を供給する待機モードと、前記硬貨検出部のみに電源を供給する省電力モードとを、自己の判断で選択的に設定する第2制御部と、を備えた硬貨処理装置である。
この硬貨処理装置によれば、自動販売機の販売動作の終了を契機として、待機モードと省電力モードとが硬貨処理装置の判断で選択的に設定される。つまり、自動販売機の販売動作に応じて、待機モードと省電力モードとが、硬貨処理装置の省電力が向上するべく柔軟に設定される。
【0008】
また、かかる硬貨処理装置において、前記第2制御部は、前記販売待機信号が供給されると、前記待機モードを先ず設定する。
この硬貨処理装置によれば、例えば先の硬貨投入に対応する自動販売機の販売動作が終了した直後に次の硬貨投入の可能性がある場合に備えて、硬貨検出部及び釣銭検出部の双方に電源を供給しておくことによって、後者の硬貨投入に対しても例えば釣銭硬貨の払出し等を迅速に実行できる。
【0009】
また、かかる硬貨処理装置は、前記販売待機信号が供給されると計時を開始し、前記販売待機信号とは異なる信号が供給されると計時を停止するタイマを備え、前記第2制御部は、前記タイマの計時時間が所定時間を経過すると、前記省電力モードを設定する。
この硬貨処理装置によれば、例えば、販売待機信号の供給後にこれと異なる信号が供給されないまま所定時間が経過すれば、省電力モードが設定される。一方、この販売待機信号とは異なる信号が例えば待機モードを継続させる契機を与える信号である場合、たとえ所定時間が経過する前であっても、このような信号が供給されると、待機モードが継続される。つまり、待機モードと省電力モードとが、販売待機信号とは異なる信号の供給及び所定時間に応じて柔軟に設定される。
【0010】
また、かかる硬貨処理装置において、前記所定時間は、可変である。
この硬貨処理装置によれば、例えば自動販売機の設置場所や販売時間帯等に応じて所定時間を設定することにより、待機モードと省電力モードとが、硬貨処理装置の省電力が向上するべくより一層柔軟に設定される。例えば、自動販売機の販売頻度がより高い設置場所や販売時間帯等では、待機モードを継続するための所定時間をより長くし、自動販売機の販売頻度がより低い設置場所や販売時間帯等では、待機モードを継続するための所定時間をより短くすれば、硬貨投入に対する釣銭硬貨の払出し動作等を迅速に実行しつつ省電力を向上させることができる。
【0011】
また、かかる硬貨処理装置において、前記第2制御部は、前記硬貨検出部から前記硬貨投入口への硬貨の投入を示す信号が供給されると、前記待機モードを設定する。
この硬貨処理装置によれば、硬貨の投入を示す信号が供給されないまま所定時間が経過すれば、省電力モードが設定される。一方、たとえ所定時間が経過する前であっても、このような硬貨の投入を示す信号が供給されると、待機モードが継続される。つまり、待機モードと省電力モードとが、硬貨処理装置の省電力が向上するべく柔軟に設定される。
【0012】
また、かかる硬貨処理装置において、前記第2制御部は、前記自動販売機の扉が開放された後、前記釣銭硬貨の強制的な払出しを許可する信号が供給されると、前記待機モードを設定する。
この硬貨処理装置によれば、例えばルートマンが自動販売機の扉を開放すると、硬貨処理装置は釣銭硬貨の強制的な払出しを許可する信号の供給を契機として省電力モードから待機モードに設定されるため、ルートマンによる例えば釣銭硬貨の強制的な払出し操作に対して同払出しを迅速に実行できる。また、自動販売機の扉の開放に伴って待機モードに設定されることによって、硬貨処理装置は、ルートマンが釣銭硬貨を補給(手動補給)する操作に備えて、釣銭検出部に電源を供給することもできる。
【0013】
また、かかる硬貨処理装置において、前記第2制御部は、前記自動販売機の扉が開放された後、前記釣銭硬貨を強制的に払出す操作が行われたことを示す信号が供給されると、前記待機モードを設定する。
この硬貨処理装置によれば、例えばルートマンによる釣銭硬貨の強制的な払出し操作に対して同払出しを迅速に実行できる。
【0014】
また、かかる硬貨処理装置において、前記第2制御部は、紙幣処理装置に供給された紙幣に対して釣銭の払出しを要求する信号が供給されると、前記待機モードを設定する。
この硬貨処理装置によれば、例えば紙幣処理装置による紙幣の検出結果等を受けて硬貨処理装置に供給される釣銭の払出しを要求する信号を契機として、同硬貨処理装置は省電力モードから待機モードに設定されるため、釣銭硬貨の払出しを迅速に実行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、硬貨処理装置は待機モードと省電力モードとを、自己の省電力を向上させるべく柔軟に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
===硬貨処理装置の構成===
図1乃至図3を参照しつつ、本実施の形態の硬貨処理装置10の構成例について説明する。尚、図1は、本実施の形態の硬貨処理装置10の外観構成例を示す正面図である。図2は、図1の硬貨処理装置10からその正面パネル11aを取り外した正面図である。ここで、図1及び図2では、紙面の上下が鉛直方向の上下に対応し、紙面の表側・裏側が硬貨処理装置10の正面側・背面側にそれぞれ対応するものとする。図3は、本実施の形態の硬貨処理装置10の制御を司る構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
図1に例示されるように、硬貨処理装置10は、筐体11の正面側の開口に取り付けられた正面パネル11aの上部において、モニター用の複数のランプ17a、17b、17cを有する表示部17や、収納された硬貨Cを強制的に払出すためのインベントリスイッチ103等を備えている。この正面パネル11aは、筐体11の内部に収納された硬貨Cを外部から視認できるように例えば一部分が透明な樹脂板から構成されている。また、硬貨処理装置10は、筐体11の背面側において、例えば、投入された硬貨Cの検出やランプ17a、17b、17cの点灯等を制御するための紙面の上側の基板18(以後「上側基板18」と称する)と、釣銭硬貨としての硬貨Cの保留状態の検出等を制御するための紙面の下側の基板19(以後「下側基板19」と称する)とを備えている。更に、硬貨処理装置10は、本実施の形態の自動販売機1の主制御部(第1制御部)2や電源3等と電気的に接続するための通信用及び電源用のケーブル5を備えている。
【0018】
図2に例示されるように、硬貨処理装置10は、筐体11の上面側に硬貨投入口12を備え、同投入口12の下部における上方から下方にかけて、硬貨Cの投入を検出するとともにその種類や正偽等を判別する硬貨検出部13、判別の結果に基づいて受け入れた硬貨Cを金種別に振り分けるゲート14a、14b、14c、14d、振り分けた硬貨Cを釣銭硬貨として金種別に収納する複数のカセットチューブ(釣銭収納部)15等を備えている。尚、各カセットチューブ15において、その上部には、釣銭硬貨としての硬貨Cの満杯の有無を検出する満杯センサ16aが設けられているとともに、その下部には、釣銭硬貨としての硬貨Cの有無を検出する釣銭センサ16bと、釣銭硬貨を払出すための所定の払出し手段(不図示)とが設けられている。同図の点線の矢印で示されるように、硬貨投入口12から投入された硬貨Cは、硬貨検出部13で検出されるとともに所定の判別が行なわれた後、この判別結果に応じてゲート14a、14b、14c、14dによって金種別に振り分けられて、対応するカセットチューブ15に収納されるようになっている。
【0019】
図3に例示されるように、硬貨処理装置10は、制御部(第2制御部)100と、ROM101と、RAM102と、前述した硬貨検出部13と、釣銭検出部106と、前述した表示部17とを備えている。また、硬貨処理装置10は、前述したインベントリスイッチ103と、タイマ104とを更に備えている。ここで、制御部100は、所定のCPU(不図示)を有し、硬貨処理装置10を統括制御する。ROM101は、制御部100が後述する処理を実行するためのプログラム等を記憶し、RAM102は、この処理に必要なデータ等を記憶する。釣銭検出部106は、前述した満杯センサ16a及び釣銭センサ16bを有し、硬貨Cの収納及び払出しに際しカセットチューブ15における釣銭硬貨としての硬貨Cの保留状態を検出する。タイマ104は、後述する所定時間を計時する。
【0020】
また、同図に例示されるように、制御部100、ROM101、RAM102、硬貨検出部13、インベントリスイッチ103、タイマ104、及び表示部17は、上側基板18(図1)に搭載又は接続されており、電力も同基板18を通じてそれぞれに供給される。一方、釣銭検出部106は、下側基板19(図1)に搭載又は接続されており、電力も同基板19を通じて供給される。
【0021】
更に、同図に例示されるように、硬貨処理装置10は自動販売機1の内部に装着されており、その制御部100は、同自動販売機1を統括制御する主制御部2及び同自動販売機1側の電源3に対し、前述した通信用及び電源用のケーブル5を通じて接続されている。このような構成に基づいて、硬貨処理装置10の制御部100は、同制御部100が選択した対象のみに電源3からの電力を供給するようになっている。また、硬貨処理装置10の制御部100は、自動販売機1の主制御部2から後述する所定の信号を受信し、この信号等に基づいて電力供給先の選択等の処理を実行するようになっている。
【0022】
尚、同図に例示されるように、自動販売機1は、紙幣処理装置4を更に備えており、この紙幣処理装置4は、例えば紙幣の挿入を検出するとともにその種類や正偽等を判別する所定の紙幣検出部(不図示)を有し、紙幣の収納及び払出しを行なう。
【0023】
===硬貨処理装置の動作===
図4乃至図6を参照しつつ、前述した構成を備えた硬貨処理装置10の動作例について説明する。尚、図4は、本実施の形態の自動販売機1の各状態(待機状態、販売状態)に応じて硬貨処理装置10が動作する際の制御部100の処理手順の一例を示すフローチャートである。図5は、図4に示す待機モード処理の手順の一例を示すフローチャートである。図6は、図4に示す省電力モード処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0024】
図4に例示されるように、硬貨処理装置10の制御部100は、自動販売機1の主制御部2から、インベントリ許可信号又はインベントリ禁止信号の何れを受信しているかを判別する(S100)。
【0025】
尚、インベントリ許可信号とは、例えばルートマンによるインベントリスイッチ103の操作があれば硬貨処理装置10による釣銭硬貨の払出し動作(回収動作)を許可する信号であり、インベントリ禁止信号とは、同インベントリスイッチ103の操作があっても硬貨処理装置10による釣銭硬貨の払出し動作を禁止する信号である。本実施の形態の自動販売機1は、販売する商品を収納する筐体(不図示)の開口を開閉する扉(不図示)に対し同扉の開閉状態を検出するための扉スイッチ(不図示)が設けられており、インベントリ許可信号は、扉の開状態に伴う扉スイッチの出力と連動して主制御部2から供給されるようになっており、インベントリ禁止信号は、扉の閉状態に伴う扉スイッチの出力と連動して主制御部2から供給されるようになっている。
【0026】
インベントリ許可信号を受信していると判別した場合(S100:YES)、制御部100は、先ず、待機モード処理を実行する(S101)。即ち、制御部100は、表示部17に対する電力供給を開始してランプ17a、17b、17cを点灯させ(S200)、下側基板19に対する電力供給を開始し(S201)、釣銭センサ16aや満杯センサ16b等の検出結果である釣銭センサ情報を釣銭検出部106から制御部100に入力することを許可する(S202)(図5参照)。次に、制御部100は、タイマ104をリセットし(S102)、後述するステップS105の処理を実行する。
【0027】
インベントリ禁止信号を受信していると判別した場合(S100:NO)、制御部100は、タイマ104の計時した時間が所定時間(例えば5分間)に達したか否かを判別する(S103)。
【0028】
タイマ104の計時した時間が所定時間に達していないと判別した場合(S103:NO)、制御部100は、後述するステップS105の処理を実行する。
【0029】
タイマ104の計時した時間が所定時間に達したと判別した場合(S103:YES)、制御部100は、先ず、省電力モード処理を実行する(S104)。即ち、制御部100は、表示部17に対する電力供給を停止してランプ17a、17b、17cを消灯させ(S300)、釣銭センサ情報を釣銭検出部106から制御部100に入力することを禁止し(S301)、最新の釣銭センサ情報をRAM102に記憶させることによって釣銭保留状態のバックアップを行い(S302)、下側基板19に対する電力供給を停止する(S303)(図6参照)。次に、制御部100は、後述するステップS105の処理を実行する。
【0030】
以上により、自動販売機1が例えば待機状態にあるときにルートマンが扉を開けた場合、硬貨処理装置10は省電力モードから待機モードに設定される。この扉が開いている間、硬貨処理装置10は待機モードに維持されており、その後ルートマンが扉を閉じた場合、待機モード処理の設定が開始されてから所定時間後に、硬貨処理装置10は同待機モードから省電力モードに設定される。つまり、硬貨処理装置10は、ルートマンが自動販売機1の扉を開けている間は待機モードであり、扉を閉めてから一定時間経過後からは省電力モードであるため、省電力が向上する。また、硬貨処理装置10は、ルートマンが自動販売機1の扉を開けると自動的に待機モードに設定されるため、同ルートマンによるインベントリスイッチ103の操作に対し釣銭硬貨を迅速に払出すための準備ができている上に、同ルートマンによる釣銭硬貨の補給(手動補給)のための準備もできていることになる。尚、払出し及び補給の何れの場合も、釣銭検出部106には電源が供給されている必要がある。更に、硬貨処理装置10のランプ17a、17b、17cは、自動販売機1の扉が閉じている間は省電力のために消灯している一方、扉が開くのと略同時に点灯するため、硬貨処理装置10が例えば故障等によって停止しているものとルートマンに誤解される事態を回避できる。
【0031】
ステップS105において、制御部100は、硬貨検出部13を通じて、例えば利用者によって投入された硬貨Cを正貨として受け入れたか否かを判別する。
【0032】
正貨を受け入れたと判別した場合(S105:YES)、制御部100は、先ず、前述した待機モード処理を実行し(S106)、釣銭検出部106の釣銭センサ16aや満杯センサ16b等の検出結果に基づいて受け入れ硬貨Cの導入先を決定するとともに、この受入動作を実行するべくゲート14a、14b、14c、14dを制御する(S107)。これによって、自動販売機1が販売状態となる直前の待機状態において、硬貨処理装置10は、待機モードに設定される。尚、受け入れられた硬貨Cは、例えば、釣銭硬貨として金種別にカセットチューブ15に収納される。次に、制御部100は、RAM102に記憶される自動販売機1の状態を示すフラグを「販売状態」に設定し(S108)、後述するステップS113の処理を実行する。このフラグは、後述するステップS113において、硬貨処理装置10がモード設定に係る自己の判断のために参照する自動販売機1の状態(「販売状態」又は「待機状態」)を示すものであり、必ずしも自動販売機1の実際の状態を検出した結果を示すものである必要はない。
【0033】
正貨を受け入れていないと判別した場合(S105:NO)、制御部100は、釣銭硬貨の払出しを要求する釣銭返却信号を主制御部2から受信したか否かを判別する(S109)。
【0034】
釣銭返却信号を受信したと判別した場合(S109:YES)、制御部100は、前述した待機モード処理を実行し(S110)、釣銭検出部106の釣銭センサ16aや満杯センサ16b等の検出結果に基づいて釣銭返却動作を実行するべくゲート14a、14b、14c、14dを制御する(S111)。次に、制御部100は、RAM102に記憶される前述したフラグを「販売状態」に設定し(S112)、後述するステップS113の処理を実行する。尚、主制御部2は、例えば、紙幣処理装置4から挿入された紙幣の判別結果を示す信号を受信するとともに、商品選択釦(不図示)から選択された商品を示す信号を受信すると、挿入された紙幣の金額から選択された商品の代金を差し引いた金額分の釣銭硬貨を払出すべく硬貨処理装置10に所定の釣銭返却信号を供給するようになっている。或いは、主制御部2は、例えば、紙幣処理装置4から挿入された紙幣の判別結果を示す信号を受信すると、挿入された紙幣の金額から一定の商品の代金を差し引いた金額分の釣銭硬貨を払出すべく硬貨処理装置10に所定の釣銭返却信号を供給するようになっている。
【0035】
釣銭返却信号を受信していないと判別した場合(S109:NO)、制御部100は、後述するステップS113の処理を実行する。
【0036】
ステップS113において、制御部100は、RAM102に記憶されるフラグを参照して、同フラグが「販売状態」又は「待機状態」の何れに設定されているかを判別する。
【0037】
フラグが「待機状態」に設定されている(即ち、「販売状態」に設定されていない)と判別した場合(S113:NO)、制御部100は、ステップS100の処理を再度実行する。
【0038】
フラグが「販売状態」に設定されていると判別した場合(S113:YES)、制御部100は、自動販売機1の販売が終了したことを示す販売待機信号を主制御部2から受信したか否かを判別する(S114)。
【0039】
販売待機信号を受信していないと判別した場合(S114:NO)、制御部100は、ステップS105の処理を再度実行する。
【0040】
販売待機信号を受信したと判別した場合(S114:YES)、制御部100は、RAM102に記憶されるフラグをリセットし(即ち、「販売状態」に設定されていたフラグを「待機状態」に変更し)(S115)、タイマ104をリセットし(S116)、ステップS100の処理を再度実行する。
【0041】
尚、自動販売機1が待機状態にある場合、硬貨処理装置10の制御部100は、省電力モードを維持しつつ、ステップS100:NO、ステップS103:NO、S105:NO、S109:NO、及びS113:NOの処理を繰り返し実行する。一方、自動販売機1が販売状態にある場合、硬貨処理装置10の制御部100は、待機モードを維持しつつ、ステップS105:NO、ステップS109:NO、S113:YES、及びS114:NOの処理を繰り返し実行する。
【0042】
以上により、自動販売機1が例えば待機状態にあるとき、硬貨処理装置10に硬貨(但し正貨)が投入されたり又は紙幣処理装置4に紙幣(但し正札)が挿入されたりすると、硬貨処理装置10は、釣銭返却のために、省電力モードから待機モードに設定される。その後販売状態となった自動販売機1が販売を終了した後に再度硬貨投入又は紙幣挿入がないまま所定時間(例えば5分間)が経過すると、硬貨処理装置10は自動的に待機モードから省電力モードに設定される。一方、自動販売機1の販売終了後の所定時間内に再度硬貨投入又は紙幣挿入があれば、硬貨処理装置10の待機モードが継続される。
【0043】
つまり、硬貨処理装置10は、自動販売機1の主制御部2から供給される販売待機信号を通じて、販売動作に応じた且つ自己の判断に基づいたタイミングで、待機モードから省電力モードに入ることができる。また、硬貨処理装置10は、販売待機信号が供給されてから所定時間内に硬貨投入又は紙幣挿入がある場合に備えて待機モードを継続することにより、これらに対する例えば釣銭硬貨の払出し等を迅速に実行できる。更に、前述した所定時間を例えば自動販売機1の設置場所や販売時間帯等に応じて設定することにより、硬貨処理装置10は、待機モードと省電力モードとをより一層柔軟に設定できる。一例として、自動販売機1の販売頻度がより高い設置場所や販売時間帯等では、待機モードを継続するための所定時間をより長くし、自動販売機1の販売頻度がより低い設置場所や販売時間帯等では、待機モードを継続するための所定時間をより短くすればよい。尚、販売時間帯の情報は、例えば、硬貨処理装置10が個別に備えるタイマ(不図示)から得てもよいし、或いは、自動販売機1が備えるタイマ(不図示)の計時結果を示す信号を制御部100が主制御部2から定期的に受信しこの信号から得てもよい。これにより、例えば、昼間の時間端では所定時間を5分間に自動的に設定し、夜間の時間帯では所定時間を1分間に自動的に設定する等が可能となる。
【0044】
従って、硬貨処理装置10は、例えば自己への硬貨投入又は紙幣処理装置4への紙幣挿入に対する釣銭硬貨の払出し動作等を迅速に実行しつつ省電力を向上させることができる。
【0045】
尚、本実施の形態の硬貨処理装置10は、少なくとも、硬貨投入口12と、硬貨検出部13と、カセットチューブ15と、釣銭検出部106と、自動販売機1の主制御部2から各販売の終了を示す販売待機信号が供給されると、硬貨検出部13及び釣銭検出部106に電源を供給する待機モードと、硬貨検出部13のみに電源を供給する省電力モードとを、自己の判断で選択的に設定する制御部100とを備えていればよい。
【0046】
この硬貨処理装置10によれば、自動販売機1の販売動作の終了を契機として、待機モードと省電力モードとが硬貨処理装置10の判断で選択的に設定される。つまり、自動販売機1の販売動作に応じて、待機モードと省電力モードとが、硬貨処理装置10の省電力が向上するべく柔軟に設定される。
【0047】
また、前述した実施の形態では、制御部100は、インベントリ許可信号及びインベントリ禁止信号に応じて、待機モードと省電力モードとを選択的に設定するものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、これらの信号の代わりにインベントリスイッチ103の操作に応じて各モードを選択的に設定するものであってもよい。具体例として、ルートマンが硬貨処理装置10のインベントリスイッチ103をON操作すると、硬貨処理装置10が省電力モードから待機モードに設定され、その後ルートマンがインベントリスイッチ103をOFF操作すると、硬貨処理装置10が待機モードから省電力モードに設定されてもよい。これにより、硬貨処理装置10は、ルートマンがインベントリスイッチ103をON操作したときからOFF操作したときまでの間のみが待機モードでありそれ以外では省電力モードであるため、省電力が向上する。
【0048】
更に、前述した実施の形態では、制御部100は、ランプ17a、17b、17cを、省電力モードでは全て消灯し、待機モードでは全て点灯していたが、これに限定されるものではない。制御部100は、例えば、省電力モードにおいて1つのランプ17aのみを点滅させる以外は他の全てのランプ17b、17cを消灯させてもよい。これにより、点滅しているランプ17aの消灯時間分及びランプ17b、17cの消灯時間だけ省電力を向上できるとともに、ランプ17aの点滅によって硬貨処理装置10が例えば故障等によって停止しているものとルートマンに誤解される事態を回避できる。
【0049】
===その他の実施の形態===
前述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0050】
前述した実施の形態では、硬貨処理装置10の基板を上側基板18及び下側基板19の2つとしたが、これに限定されるものではない。例えば、基板は1つであっても、これに搭載された表示部17、硬貨検出部13、釣銭検出部106等に対し電源を個別に供給できるようになっていればよい。
【0051】
また、前述した実施の形態では、主として、硬貨検出部13及び釣銭検出部106の双方に電源を供給するか又は硬貨検出部13のみに電源を供給するものであったが、これに限定されるものではない。例えば前述したゲート14a、14b、14c、14dや所定の払出し手段等に対しても、釣銭検出部106の場合と同様の電力供給の仕方を適用してもよい。これによって、省電力がより一層向上する。
【0052】
また、前述した実施の形態では、釣銭検出部106は、釣銭センサ16a及び満杯センサ16bの検出結果に基づいて釣銭硬貨の保留状態を検出するものであったが、これに限定されるものではない。釣銭検出部106は、要するに、カセットチューブ15における釣銭硬貨の保留状態を検出するための所定の手段であれば、如何なるものであってもよい。
【0053】
また、前述した実施の形態では、自動販売機1の主制御部2から供給されるインベントリ許可信号やインベントリ禁止信号等は、硬貨処理装置10が待機モードと省電力モードとを選択的に設定する動作を直接命令する信号ではなかったが、これに限定されるものではない。例えば、主制御部2から硬貨処理装置10に対し待機モードと省電力モードとを選択的に設定する動作を直接命令する専用信号を供給するものであってもよい。
【0054】
また、前述した実施の形態では、紙幣処理装置4からの紙幣の判別結果等を示す信号に基づいて主制御部2が硬貨処理装置10に対し釣銭返却信号を供給するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、この釣銭返却信号は、紙幣処理装置4から硬貨処理装置10に対し直接供給されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態の硬貨処理装置の外観構成例を示す正面図である。
【図2】図1の硬貨処理装置からその正面パネルを取り外した正面図である。
【図3】本実施の形態の硬貨処理装置の制御を司る構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態の自動販売機の各状態(待機状態、販売状態)に応じて硬貨処理装置が動作する際の制御部の処理手順の一つの例を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す待機モード処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図4に示す省電力モード処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 自動販売機 2 主制御部 3 電源
4 紙幣処理装置 5 ケーブル 10 硬貨処理装置
11 筐体 11a 正面パネル 12 硬貨投入口
13 硬貨検出部 14a、14b、14c、14d ゲート
15 カセットチューブ 16a 満杯センサ 16b 釣銭センサ
17 表示部 17a、17b、17c ランプ
18 上側基板 19 下側基板 100 制御部
101 ROM 102 RAM 103 インベントリスイッチ
104 タイマ 106 釣銭検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨投入口と、
前記硬貨投入口への硬貨の投入を検出する硬貨検出部と、
前記硬貨投入口への投入後の硬貨を釣銭硬貨として金種別に収納する釣銭収納部と、
前記釣銭収納部における前記硬貨の保留状態を検出する釣銭検出部と、
自動販売機の制御を司る第1制御部から各販売の終了を示す販売待機信号が供給されると、前記硬貨検出部及び前記釣銭検出部に電源を供給する待機モードと、前記硬貨検出部のみに電源を供給する省電力モードとを、自己の判断で選択的に設定する第2制御部と、
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記第2制御部は、前記販売待機信号が供給されると、前記待機モードを先ず設定することを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記販売待機信号が供給されると計時を開始し、前記販売待機信号とは異なる信号が供給されると計時を停止するタイマを備え、
前記第2制御部は、前記タイマの計時時間が所定時間を経過すると、前記省電力モードを設定することを特徴とする請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記所定時間は、可変であることを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記硬貨検出部から前記硬貨投入口への硬貨の投入を示す信号が供給されると、前記待機モードを設定することを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記第2制御部は、前記自動販売機の扉が開放された後、前記釣銭硬貨の強制的な払出しを許可する信号が供給されると、前記待機モードを設定することを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記第2制御部は、前記自動販売機の扉が開放された後、前記釣銭硬貨を強制的に払出す操作が行われたことを示す信号が供給されると、前記待機モードを設定することを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記第2制御部は、紙幣処理装置に供給された紙幣に対して釣銭の払出しを要求する信号が供給されると、前記待機モードを設定することを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−102653(P2010−102653A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275883(P2008−275883)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】