説明

硬貨処理装置

【課題】
蓄積している硬貨を釣銭として有効利用することのできる硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】
払い出し硬貨検知センサ18により、払い出し手段17が動作した際にコインチューブ14の下端から硬貨が引き出されなかったことが検出された際に、対応する金種の硬貨が蓄積されていないことを示す硬貨無しフラグを「硬貨無し」を示す状態に設定するとともに、エンプティ枚数カウンタ116が計数するカウンタ値121が「0」である場合でも、該カウンタ値121に対応する金種に対応する硬貨無しフラグが「硬貨無し」を示す状態に設定されていなければ、払い出し算出部114が当該金種の硬貨を払い出し可能であると判断して払い出す硬貨の金種と該金種毎の枚数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨処理装置に関し、特に、自動販売機等の機器内に配設され、硬貨の受け入れおよび払い出しを行う硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動販売機等の機器内に配設される硬貨処理装置は、投入された硬貨の正為判定を行い、正貨と判定した硬貨を受け入れて硬貨処理装置内のコインチューブ等に蓄積し、また、コインチューブ等に蓄積している硬貨を釣銭等として払いだすといった処理を行っている。
【0003】
このような硬貨処理装置は、釣銭の払い出しの際に、釣銭不足が生じることが無いように、コインチューブに何枚の硬貨が蓄積しているかを把握する必要がある。このため、コインチューブには、当該コインチューブ内に蓄積されている硬貨が所定枚数以下となったことを検出するための、エンプティスイッチが設けられている。
【0004】
また、硬貨処理装置は、受け入れた硬貨の枚数と払い出した硬貨の枚数とを計数するエンプティ枚数カウンタをソフトウェアにより実現し、これにより、コインチューブ内に蓄積されている硬貨の枚数を把握するようにもしている。ただし、エンプティ枚数カウンタは、ソフトウェアにより実現されるため、電源遮断時には、その計数結果が消去されてしまうため、電源投入時には、そのカウンタ値が0となるものである。
【0005】
この他にも、コインチューブ内の硬貨を払い出す払い出し手段として、コインチューブの下端から硬貨を一枚づつ引き出すペイアウトスライドと、このペイアウトスライドにより引き出された硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って引き出された硬貨の払い出しと非払い出しとを制御するチェンジスライドを用い、この払い出し手段がペイアウトスライドにより硬貨を引き出し、当該硬貨をチェンジスライドで支持しようとしている状態で、硬貨の有無を検知する払い出し硬貨検知センサを設け、コインチューブ内に少なくとも1枚の硬貨が蓄積されていることを確認するようにもしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4072844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、硬貨処理装置には、エンプティスイッチ、エンプティ枚数カウンタ、払い出し硬貨検知センサ等が設けられている。
【0008】
しかしながら、エンプティスイッチは、蓄積されている硬貨が所定枚数以下となった場合には、その枚数を検知することができず、エンプティ枚数カウンタは、そのカウンタ値が必ずしも蓄積している硬貨の枚数に一致しているとは限らないものである。また、払い出し硬貨検知センサは、払い出し手段を駆動させなければ、硬貨の有無を検知することができないものである。
【0009】
このため、従来の硬貨処理装置では、コインチューブ内に硬貨が残存している場合であっても、当該硬貨を釣銭として払い出すことができるとは限らなかった。
【0010】
そこで、本発明は、蓄積している硬貨を釣銭として有効利用することのできる硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、装置本体に配設されたコインチューブの下端から複数金種の硬貨を一枚づつ引き出し、該引き出された硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って該引き出された硬貨の払い出しと非払い出しとを制御する硬貨払出手段と、前記硬貨払出手段により前記コインチューブの下端から硬貨が引き出されたか否かを検出する硬貨検出手段と、前記金種毎に受け入れた硬貨の枚数を加算し、払い出した硬貨の枚数を減算した値を保持するカウンタ手段とを具備する硬貨処理装置において、前記硬貨検出手段により前記コインチューブの下端から硬貨が引き出されなかったことが検出された際に、対応する金種の硬貨が蓄積されていないことを示す情報を記憶する硬貨無し情報記憶手段と、前記カウンタ手段が保持する値が零である場合でも、該値に対応する金種に対応する硬貨が蓄積されていないことを示す情報が前記硬貨無し情報記憶手段に記憶されていなければ、該金種の硬貨を払い出し可能であると判断して払い出す硬貨の金種と該金種毎の枚数を算出する算出手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記硬貨無し情報記憶手段は、前記算出手段により払い出し対象として算出した硬貨が払い出せなかった際に、前記カウンタ手段が保持する値が零であった場合は、該値に対応する金種の硬貨が蓄積されていないことを示す情報を記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄積している硬貨の枚数を計数するエンプティ枚数カウンタの値が0の場合であっても、該当する硬貨を払い出し対象として用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】硬貨処理装置の構成例の概略を示した図である。
【図2】制御部の構成例を示した図である。
【図3】エンプティ枚数カウンタ116の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】エンプティ枚数カウンタ116の動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】硬貨処理装置1の釣銭払い出し時の動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】硬貨無しフラグ122を用いた場合と用いない場合の動作の違いを示したテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る硬貨処理装置の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、硬貨処理装置の構成例の概略を示した図である。なお、同図は、硬貨処理装置の断面を模式的に表したものである。なお、硬貨処理装置の構成自体は、従来のものと同様であるため、ここでは、概略のみを説明する。
【0017】
同図に示すように、硬貨処理装置1は、硬貨投入口10と、識別センサ11、受入検知センサ12、振分手段13、コインチューブ14、満杯検知スイッチ15(15−1〜15−4)、エンプティスイッチ16(16−1〜16−3)、払い出し手段17、払い出し硬貨検知センサ18(18−1〜18−5)を有している。
【0018】
硬貨投入口10は、投入された硬貨を受け入れる入り口である。
【0019】
識別センサ11は、硬貨投入口10から投入され、硬貨処理装置1内を転動する硬貨の材質や直径、模様等を検出する複数のセンサ群である。
【0020】
受入検知センサ12は、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が正貨と判定し、振分手段13の動作により受け入れ側に振り分けられた硬貨を検知するセンサである。
【0021】
振分手段13は、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が正貨と判定した硬貨を受け入れ、さらに、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が判定した金種毎にコインチューブ14の対応する箇所に受け入れた硬貨を振り分ける。また、コインチューブ14の満杯が検知されていた場合は、図示しない金庫に、受け入れた硬貨を振り分ける。
【0022】
コインチューブ14は、複数金種の硬貨を、その金種毎に蓄積する。このコインチューブ14は、硬貨処理装置1に対して着脱自在なものである。また、コインチューブ14の一部を、硬貨の受け入れを行わない払い出し専用の硬貨を蓄積するように利用することも可能である。なお、図1に示したコインチューブ14は、最大で5金種の硬貨を蓄積することが可能なものであり、そのうちの1金種を払い出し専用として利用するものである。もちろん、複数個所に同一金種を蓄積するようにした場合には、蓄積可能な金種の数は減少する。
【0023】
満杯検知スイッチ15−1、満杯検知スイッチ15−2、満杯検知スイッチ15−3、満杯検知スイッチ15−4は、それぞれ、コインチューブ14に蓄積された硬貨が満杯となったことを検知するセンサである。なお、コインチューブ14のうち、払い出し専用として利用する硬貨を蓄積する箇所には、満杯検知スイッチは、設けられていない。
【0024】
エンプティスイッチ16−1、エンプティスイッチ16−2、エンプティスイッチ16−3は、それぞれ、コインチューブ14に蓄積された硬貨が所定数よりも少なくなったことを検知するセンサである。エンプティスイッチ16−1、エンプティスイッチ16−2、エンプティスイッチ16−3が検知する所定数は、これらが配設された位置と蓄積する硬貨の厚みにより異なる。なお、エンプティスイッチは、全ての金種に対応して設ける必要は無い。
【0025】
払い出し手段17は、ペイアウトスライドとチェンジスライドにより、コインチューブ14に蓄積されている硬貨を選択的に払い出すものであり、モータやソレノイド等を利用して電力により払い出し動作を行うものである。
【0026】
払い出し硬貨検知センサ18−1、払い出し硬貨検知センサ18−2、払い出し硬貨検知センサ18−3、払い出し硬貨検知センサ18−4、払い出し硬貨検知センサ18−5は、それぞれ、ペイアウトスライドが動作した際に、同時に払い出すことができる各金種の硬貨の有無を検知するセンサである。この払い出し硬貨検知センサ18−1等による検知結果により、硬貨の払い出しが正常に行われた否かの確認を行うとともに、払い出し対象とならなかった硬貨が、少なくとも1枚、コインチューブ14内に蓄積されているか否かを確認することができる。
【0027】
なお、コインチューブ14には、例えば、コインチューブ14のうち満杯検知スイッチ15−1とエンプティスイッチ16−1が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−1で検知される箇所に500円硬貨、コインチューブ14のうち満杯検知スイッチ15−2とエンプティスイッチ16−2が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−2で検知される箇所に100円硬貨、コインチューブ14のうち満杯検知スイッチ15−3とエンプティスイッチ16−3が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−3で検知される箇所に10円硬貨、コインチューブ14のうち満杯検知スイッチ15−4が設けられ、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−4で検知される箇所に50円硬貨、コインチューブ14のうち満杯スイッチ、エンプティスイッチが設けられておらず、払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18−5で検知される払い出し専用の硬貨を蓄積する箇所に10円硬貨が蓄積される。
【0028】
次に、硬貨処理装置1を制御する制御部について説明する。図2は、制御部の構成例を示した図である。
【0029】
同図に示すように、制御部100は、自動販売機の全体を制御する自動販売機主制御部2と通信可能に接続されるとともに、識別センサ11と、受入検知センサ12、満杯検知スイッチ15(15−1〜15−4)、エンプティスイッチ16(16−1〜16−3)、払い出し硬貨検知センサ18(18−1〜18−5)の各検知結果を取得し、振分手段13と、払い出し手段17の両者を動作させる。
【0030】
また、制御部100は、演算部110と記憶部120に大別される。
【0031】
演算部110は、例えば、マイコンと称されるプロセッサやメモリ等を集積化したものを、プログラム等のソフトウェアにより実現される機能部の総称であり、硬貨識別部111、振分制御部112、硬貨有無判別部113、払い出し算出部114、払い出し制御部115、エンプティ枚数カウンタ115等の各機能部を含む。
【0032】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)等のメモリに確保される記憶領域の総称であり、カウンタ値121、硬貨無しフラグ122、エラーフラグ123、金種・枚数バッファ124等に記憶領域が割り当てられている。
【0033】
硬貨識別部111は、予め不揮発性の記憶部(不図示)に記憶された処理対象となる各種硬貨の特徴と、識別センサ11が検知した硬貨の特徴と比較することにより、硬貨投入口10に投入された硬貨の正為と、正貨であった場合の金種を識別する。なお、硬貨識別部111による処理は、従来の硬貨処理装置と同様のものである。
【0034】
振分制御部112は、硬貨識別部111による識別結果にしたがって、振分制御手段13を動作させる。なお、振分制御部112による処理は、従来の硬貨処理装置と同様のものである。
【0035】
硬貨有無判別部113は、払い出し硬貨検知センサ18の検知結果にしたがって、金種毎に(同一の金種であっても、コインチューブ14の異なる箇所に蓄積されているものは、別の金種とみなす)、コインチューブ14内に少なくとも1枚の硬貨が蓄積されているか否かを判定する。判定の結果、コインチューブ14内に1枚も硬貨が蓄積されていないとした金種については、硬貨無しフラグ122を、硬貨が存在しないことを示す値「1」に設定する。
【0036】
払い出し算出部114は、硬貨処理装置1から釣銭等を払い出す際に、払い出す金種と、各金種の払い出し枚数を算出する。算出結果は、金種・枚数バッファ124に一時的に記憶される。
【0037】
払い出し制御部115は、金種・枚数バッファ124に記憶されている払い出し算出部114による算出結果にしたがって、払い出し手段17を制御する。また、払い出し手段17による払い出しに失敗し、当該金種の払い出しを行うことができなくなった場合等は、当該金種に対応するエラーフラグ123をエラーが生じていることを示す値「1」に設定する。
【0038】
エンプティ枚数カウンタ116は、振分制御部112が振分手段13を制御して硬貨を受け入れた際に、該当する金種の数を増加し、払い出し制御部115が払い出し手段17を制御して硬貨を払い出した際に該当する金種の数を減少させ、その結果をカウンタ値121に記憶させる。また、エンプティ枚数カウンタ116は、満杯スイッチ15やエンプティスイッチ16、払い出し硬貨検知センサ18の検知結果に応じて、カウンタ値121を補正する。
【0039】
ここで、エンプティ枚数カウンタ116の動作について説明する。図3および図4は、エンプティ枚数カウンタ116の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図3は、コインチューブ14のうち、満杯スイッチ15とエンプティスイッチ16による検出が行われる箇所に蓄積される硬貨を計数する場合の処理を示したものであり、図4は、コインチューブ14のうち、満杯スイッチ15による検出が行われ、エンプティスイッチ16による検出が行われない箇所に蓄積される硬貨を計数する場合の処理を示したものである。なお、コインチューブ14のうち、払い出し専用に用いられる箇所は、硬貨を受け入れることが無いため、エンプティ枚数カウンタ116による計数は行わない。
【0040】
コインチューブ14のうち、満杯スイッチ15とエンプティスイッチ16による検出が行われる箇所に蓄積される硬貨を計数する場合、硬貨処理装置1の電源が投入されると、エンプティ枚数カウンタ116は、動作を開始する。このとき、カウンタ値121は、電源投入に伴う初期化により、「0」に設定される(ステップ201)。
【0041】
続いて、対応するエンプティスイッチ16が未検知、つまり、対応する硬貨が所定数以上存在する場合には(ステップ202でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121を、その所定数(以下、エンプティ値と称する)に設定する(ステップ203)。
【0042】
また、対応する満杯検知スイッチ15が対応する硬貨が満杯であることを検知していれば(ステップ204でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121を、満杯時の枚数(以下、満杯値と称する)に設定する(ステップ205)。
【0043】
その後、対応する硬貨が受け入れられた場合には(ステップ206でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121に「1」を加算し(ステップ207)、対応する硬貨が払い出された場合には(ステップ208でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121から「1」を減算する(ステップ209)。
【0044】
また、対応する硬貨の受け入れや払い出しにより、エンプティスイッチ16の検知状態が未検知から検知または検知から未検知に変化した場合には(ステップ210でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121を、エンプティ値に設定する(ステップ211)。
【0045】
その後、エンプティ枚数カウンタ116は、ステップ204以降の処理を繰り返し行う。
【0046】
コインチューブ14のうち、満杯スイッチ15による検出が行われ、エンプティスイッチ16による検出が行われない箇所に蓄積される硬貨を計数する場合は、硬貨処理装置1の電源が投入されると、エンプティ枚数カウンタ116は、動作を開始する。このとき、カウンタ値121は、電源投入に伴う初期化により、「0」に設定される(ステップ251)。
【0047】
続いて、対応する満杯検知スイッチ15が対応する硬貨が満杯であることを検知していれば(ステップ252でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121を、満杯値に設定する(ステップ253)。
【0048】
また、対応する硬貨が受け入れられた場合には(ステップ254でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121に「1」を加算し(ステップ255)、対応する硬貨が払い出された場合には(ステップ256でYES)、エンプティ枚数カウンタ116は、カウンタ値121から「1」を減算する(ステップ257)。
【0049】
その後、エンプティ枚数カウンタ116は、ステップ252以降の処理を繰り返し行う。
【0050】
ここで説明した動作から明らかなように、コインチューブ14のうち、満杯スイッチ15による検出が行われ、エンプティスイッチ16による検出が行われない箇所に蓄積される硬貨を計数する場合は、対応する硬貨が満杯とならない限り、カウンタ値121は、受け入れた硬貨の枚数から払い出した硬貨の枚数を減じた値となり、従来のように、カウンタ値121が「0」となった場合に、当該硬貨を払い出し対象から除外するとすれば、多くの硬貨が蓄積されているにも関わらず、払い出し対象から除外されることとなる。
【0051】
次に、硬貨処理装置1の釣銭払い出し時の動作について説明する。図5は、硬貨処理装置1の釣銭払い出し時の動作の流れを示すフローチャートである。なお、各金種に対応する硬貨無しフラグ122とエラーフラグ123は、いずれも、初期値として「0」に設定されているものとする。
【0052】
硬貨処理装置1は、自動販売機主制御部1から釣銭の払い出し指示があると、払い出し算出部114が、釣銭として払い出す硬貨の金種と、金種毎の枚数を算出する(ステップ301)。なお、ステップ301の算出処理の詳細については後述する。
【0053】
このとき、払い出し算出部114が釣銭として払い出す硬貨の金種と、金種毎の枚数を算出できなかった場合は(ステップ302でYES)、異常終了とする。なお、異常終了は、通常発生するものではなく、後述する硬貨の払い出し時に失敗し、ある金種の硬貨を払い出すことができなくなった場合等に発生するものである。
【0054】
払い出し算出部114が払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数を算出すると(ステップ302でNO)、払い出し算出部114は、続けて、払い出し手段の駆動回数が最小となる硬貨の組み合わせを算出する(ステップ303)。なお、この組み合わせの算出は、従来から行われている方法で行うため、ここでの説明は省略する。
【0055】
払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数、払い出しの組み合わせが算出されると、払い出し制御部115が払い出し手段17を駆動し(ステップ304)、払い出し動作を実行させる。
【0056】
この際に、払い出し硬貨検知センサ18の検知結果を確認し、払い出しが正常に行われたか否かを確認する(ステップ305)。この確認は、払い出し手段17が駆動している際に、払い出し硬貨検知センサ18の検知結果が「硬貨有り」から「硬貨無し」に変化した場合を正常に払い出しが行われたとして判断することで行う。
【0057】
確認の結果、払い出し対象の硬貨が全て正常に払い出された場合には(ステップ306でYES)、エンプティ枚数カウンタ116が払い出した硬貨のカウンタ値から1を減じる(ステップ307)。
【0058】
また、ステップ305で払い出しが正常に行われたか否かを確認した際に、払い出し対象でなかった硬貨が「硬貨有り」または「硬貨無し」として検知されたか、つまり、硬貨の有無を確認し(ステップ308)、「硬貨無し」として検知された金種があれば、当該金種の硬貨無しフラグ122を「1」に設定する。また、「硬貨有り」として検知された金種があれば、当該金種の硬貨無しフラグ122を「0」に設定する。
【0059】
続いて、払い出した硬貨の金額を釣銭金額から減じ(ステップ309)、その結果、釣銭残額が「0」とならなければ(ステップ310でNO)、続けて、釣銭残額の払い出しを行い、釣銭残額が「0」となれば(ステップ310でYES)、釣銭払い出しを終了する。
【0060】
一方、ステップ305で払い出しが正常に行われたか否かを確認した結果、払い出し対象の硬貨の少なくとも一部が正常に払い出されていなかった場合には(ステップ306でNO)、該当する金種のカウンタ値121が「0」であれば(ステップ311でYES)、該当する硬貨が蓄積されていないものとして当該金種の硬貨無しフラグ122を「1」に設定し(ステップ312)、払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出から、同様の処理を繰り返す。
【0061】
また、ステップ305で払い出しが正常に行われたか否かを確認した結果、払い出し対象の硬貨の少なくとも一部が正常に払い出されず(ステップ306でNO)、該当する金種のカウンタ値121が「0」でない場合には(ステップ311でNO)、その失敗が連続して生じたものでなければ(ステップ313でNO)、再度、払い出し手段17を動作させることで、払い出しが可能となる場合があるので、払い出し手段17の駆動から、同様の処理を繰り返す。
【0062】
また、払い出しの失敗が連続して生じたものであれば(ステップ313でYES)、当該金種の硬貨を払い出すことができないため、当該金種のエラーフラグ123を「1」に設定し(ステップ314)、カウンタ値121を「0」に変更して(ステップ315)、払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出から、同様の処理を繰り返す。このとき、エラーフラグ123を「1」とした金種を払い出すことができないために、払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出が不可能となった場合は、異常終了となる(ステップ302でYES)。
【0063】
次に、ステップ301における払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出処理について説明する。図6は、払い出し算出部114による払い出す硬貨の金種と金種毎の枚数の算出処理の流れを示すフローチャートである。なお、当該処理で用いる金種番号は、金額が高額なものを小さい値としており、例えば、500円が「1」、100円が「2」、50円が「3」、10円が「4」であるものとする。また、ここでは、説明の簡略化のためにエラーフラグ123が「1」となっている硬貨が存在しないものとするが、エラーフラグ123が「1」の場合でも、その処理は、類推可能であるものであるから、ここでの説明は省略する。
【0064】
払い出し算出部114は、処理を開始すると、まず、変数Aに釣銭金額を代入し(ステップ401)、仮カウンタにカウンタ値121を代入する(ステップ402)。なお、仮カウンタは、金種毎に必要なものでありエンプティ枚数カウンタ116と同様にソフトウェアで実現されるものであるが、エンプティ枚数カウンタ116を流用(計数対象を増加させる)してもよい。
【0065】
また、払い出し算出部114は、金種・枚数バッファ124をクリアするとともに(ステップ403)、変数Bに金種番号「1」を代入する(ステップ404)。
【0066】
次に、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」よりも大きく(ステップ405でYES)、金種Bの金額が釣銭金額を代入した変数Aの値以下であれば(ステップ406でYES)、金種・枚数バッファ124に、金種Bを1枚追加し(ステップ407)、金種Bに対応する仮カウンタの値から1を減じ(ステップ408)、変数Aの値から金種Bの金額を減じる(ステップ409)。
【0067】
その結果、変数Aの値が「0」になれば(ステップ410でYES)、算出処理を終了するが、変数Aの値が「0」でなければ(ステップ410でNO)、ステップ405に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0068】
一方、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」よりも大きい場合でも(ステップ405でYES)、金種Bの金額が釣銭金額を代入した変数Aの値よりも大きければ(ステップ406でNO)、変数Bの値を1だけ増加させ、ステップ405に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0069】
また、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」である場合は(ステップ405でNO)、金種Bに対応する硬貨無しフラグが「0」であれば(ステップ412でNO)、ステップ406に進み、金種Bに対応する仮カウンタの値が「0」よりも大きい場合の処理を行い、金種Bに対応する硬貨無しフラグが「1」であれば(ステップ412でYES)、変数Bの値を1だけ増加させ、ステップ405に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0070】
払い出し算出部114は、このような算出処理を行うことで、例えば、釣銭として880円を払い出す際に、500円に対応するカウンタ値121が「3」、100円に対応するカウンタ値121が「10」、50円に対応するカウンタ値121が「0」、10円に対応するカウンタ値121が「10」である場合でも、50円に対応する硬貨無しフラグが「0」であれば、500円硬貨1枚、100円硬貨3枚、50円硬貨1枚、10円硬貨3枚の組み合わせで、払い出しを行うような算出結果を得ることができる。
【0071】
なお、硬貨無しフラグを用いた算出処理は、どの金種であっても可能であるが、500円硬貨や50円硬貨等、釣銭として複数枚を払い出す可能性の低い硬貨に対して効果的である。
【0072】
また、10円硬貨に対して硬貨無しフラグを用いた算出処理を行うとすれば、払い出しが不可能となる場合も生じるが、10円硬貨に対応するエンプティスイッチ16がエンプティ状態を検出している場合は、自動販売機主制御部2に「釣銭なし」であることが通知されているため、実際には、10円硬貨に対して硬貨無しフラグを用いた算出処理を行う可能性は低くなる。
【0073】
最後に、硬貨無しフラグ122を用いた場合の特徴を、具体例を用いて説明する。図7は、硬貨無しフラグ122を用いた場合と用いない場合の動作の違いを示したテーブルである。
【0074】
ここでは、50円硬貨が3枚コインチューブ14に蓄積されているが、50円硬貨に対応するエンプティ枚数カウンタ116のカウンタ値121が「0」である状態で(カウンタ値が0となる理由については、前述の図3、図4を参照して説明したとおり)、50円の釣銭払い出し(例えば、200円の投入で150円の商品を販売した場合)が連続して行われた場合を例として、エンプティ枚数カウンタ116のカウンタ値121に従って釣銭の払い出しを行う場合と、エンプティ枚数カウンタ116のカウンタ値121が「0」の際に、払い出し処理の直前に全ての硬貨を払い出しの対象としないで払い出し手段17を動作させて払い出し硬貨検知センサ18で硬貨の有無を検知する処理(以下、空打ちと称する)を行った場合、エンプティ枚数カウンタ116のカウンタ値121が「0」の際に、他の硬貨を払い出しの対象とした払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18が硬貨を検知したときにカウンタ値121を「1」に変更する場合、硬貨無しフラグ122を用いた場合の対比を説明する。
【0075】
エンプティ枚数カウンタ116のカウンタ値121に従って釣銭の払い出しを行う場合は、50円硬貨に対応するカウンタ値121が「0」であるため、50円の払い出しを8回連続行ったとしても、毎回、10円硬貨が5枚払い出されることとなる。この場合には、蓄積されている50円硬貨を払い出すことはできない。
【0076】
一方、払い出しの直前に空打ちを行う場合、50円硬貨が蓄積されている1回目から3回目までは50円硬貨を払い出すことができるが、50円硬貨が蓄積されていない8回目の払い出しまでを含め、毎回、空打ちを行うこととなる。このため、払い出し処理に時間を要するのはもちろんのこと、硬貨処理装置1の耐久性が低下する原因ともなる。
【0077】
また、他の硬貨を払い出しの対象とした払い出し手段17の動作時に払い出し硬貨検知センサ18が硬貨を検知したときにカウンタ値121を「1」に変更する場合は、1回目の払い出しでは、カウンタ値121が「0」であるため10円硬貨が5枚払い出されるが、このときに硬貨検知センサ18が50円硬貨が有ることを検知するため、カウンタ値121が「1」に変更される。このため、2回目の払い出しでは、50円硬貨が払い出されるが、カウンタ値121は、再度「0」となるため、3回目の払い出しでは、10円硬貨が5枚払い出されることとなる。この場合には、50円硬貨が蓄積されているにも関わらず、50円硬貨が払い出されないといった事象が生じることとなる。
【0078】
硬貨無しフラグ122を用いた場合は、硬貨無しフラグ122が硬貨が有ることを示す「0」となっている1回目から3回目の払い出しでは、50円硬貨が払い出される。4回目の払い出しの際には、50円硬貨が蓄積されていないが硬貨無しフラグ122が「0」であるため、50円硬貨を払い出そうとして失敗し、10円硬貨が5枚払い出されることとなるが、この際に硬貨無しフラグ122が「1」となるため、5回目以降は、50円硬貨を払い出そうとして失敗するといった事象を生じさせることなく、10円硬貨が5枚払い出されることとなる。
【符号の説明】
【0079】
1 硬貨処理装置
2 自動販売機主制御部
10 硬貨投入口
11 識別センサ
12 受入センサ
13 振分手段
14 コインチューブ
15、15−1〜15−4 満杯検知スイッチ
16、16−1〜16−3 エンプティスイッチ
17 払い出し手段
18、18−1〜18−5 払い出し硬貨検知センサ
100 制御部
110 演算部
111 硬貨識別部
112 振分制御部
113 硬貨有無判別部
114 払い出し算出部
115 払い出し制御部
116 エンプティ枚数カウンタ
120 記憶部
121 カウンタ値
122 硬貨無しフラグ
123 エラーフラグ
124 金種・枚数バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に配設されたコインチューブの下端から複数金種の硬貨を一枚づつ引き出し、該引き出された硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って該引き出された硬貨の払い出しと非払い出しとを制御する硬貨払出手段と、前記硬貨払出手段により前記コインチューブの下端から硬貨が引き出されたか否かを検出する硬貨検出手段と、前記金種毎に受け入れた硬貨の枚数を加算し、払い出した硬貨の枚数を減算した値を保持するカウンタ手段とを具備する硬貨処理装置において、
前記硬貨検出手段により前記コインチューブの下端から硬貨が引き出されなかったことが検出された際に、対応する金種の硬貨が蓄積されていないことを示す情報を記憶する硬貨無し情報記憶手段と、
前記カウンタ手段が保持する値が零である場合でも、該値に対応する金種に対応する硬貨が蓄積されていないことを示す情報が前記硬貨無し情報記憶手段に記憶されていなければ、該金種の硬貨を払い出し可能であると判断して払い出す硬貨の金種と該金種毎の枚数を算出する算出手段と
を具備することを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記硬貨無し情報記憶手段は、前記算出手段により払い出し対象として算出した硬貨が払い出せなかった際に、前記カウンタ手段が保持する値が零であった場合は、該値に対応する金種の硬貨が蓄積されていないことを示す情報を記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−37424(P2013−37424A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170895(P2011−170895)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】