説明

硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】錫、鉛、水銀及びその化合物を使用しない、硬質ポリウレタンフォーム製造用触媒組成物、とフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオールとポリイソシアネートを、式(1)のアミン化合物(A)と、[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物(B)を含有する触媒組成物の存在下で反応させる。




[R〜Rはアルキル基、又は式(2)、R、Rは水素原子、又はアルキル基、pは1〜3の整数、R〜Rのうち1〜4つは式(2)の置換基。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物として特定のアミン化合物を用いた初期発泡性と成形性に優れた硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、クッション性、衝撃吸収性能、断熱性及び自己接着性等に優れることから、家具、自動車部品、電気冷蔵庫、建材等に幅広く利用されている。
【0003】
断熱材として使用される硬質ポリウレタンフォームの製造においては、従来、断熱性能を維持するため、発泡剤として有機フロン化合物が使用されてきた。近年、地球環境の保護という観点から、これらの使用を禁止する動きが出てきている。
【0004】
具体的には、オゾン破壊係数の高いクロロフルオロカーボン類(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC)を発泡剤として用いないで、オゾン破壊係数が0のハイドロフルオロカーボン類(HFC)、ハイドロカーボン類(HC)と、イソシアネートと水との反応により発生する二酸化炭素とを発泡剤として利用する硬質ポリウレタンフォームの製造方法が採用されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところが、地球温暖化係数が高いハイドロフルオロカーボン類や爆発限界があるハイドロカーボン類等の有機化合物を発泡剤として全く用いないで、地球温暖化係数がさらに低い二酸化炭素のみを発泡剤とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法に対する要望が大きくなっている。
【0006】
二酸化炭素のみを発泡剤として使用する硬質ポリウレタンフォームの製造方法としては、例えば、発泡剤として水のみを使用し、水とポリイソシアネート化合物との反応により発生する二酸化炭素を利用するのが一般的である。発泡剤として水のみを使用した場合、初期の発泡性が低下することから、通常、反応性を高く維持するために触媒としてアミン触媒やオクチル酸鉛のような鉛化合物が使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、アミン触媒は一般に揮発性が高いためアイレインボー(目の霞み)等の問題を引き起こすことがあり、特にスプレー方式で発泡する硬質ポリウレタンフォームの製造において大きな問題となっている。一方、鉛化合物及び水存在下でポリエステル系ポリオールは加水分解しやすく、ポリオール組成物の貯蔵安定性が悪くなる問題がある。また、鉛化合物は毒性が高いため取り扱いに十分な注意が必要であり、近年の環境意識の高まりを考えると鉛化合物の使用は避けることが好ましい。
【0008】
アミン触媒のこのようなアイレインボー現象を抑制する方法として、分子中に活性水素基を有する反応性アミン触媒が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、鉛化合物の代替としてビスマス化合物を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、反応性アミン触媒やビスマス化合物は初期の発泡性が十分ではないため、成形性が悪化する等の問題がある。
【0010】
また、発泡剤として、亜臨界流体、超臨界流体又は液体状態の二酸化炭素を使用する方法(すなわち、液化二酸化炭素を処方中へ直接添加する。)が提案されている(例えば、特許文献5参照)。特許文献5に記載の方法は、スプレー方式の成形には適しているが、低温度雰囲気下での接着性不良や、液体二酸化炭素を利用するための装置上の問題が指摘されている。
【0011】
さらに、発泡剤として、1級又は2級アミン化合物と二酸化炭素との付加物を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。また、二酸化炭素のみを発泡剤として使用する硬質ポリウレタンフォームの製造方法ではないが、触媒として、アミン類と二酸化炭素との塩を使用する方法が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0012】
しかしながら、特許文献6、特許文献7に開示されたアミン類と二酸化炭素の反応物は、発泡剤としての効果が低いため、フォームが高密度化したり、スプレー方式での成形においては初期の発泡性が十分ではないため、成形性が悪化する等の問題がある。
【0013】
これらの問題を解決すべく、種々検討されているが未だ十分な解決方法は見出されていない。
【0014】
なお、本件出願人は、特定のヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンを2種以上含有する組成物を用いてポリウレタン樹脂を製造する方法(特許文献8)、ポリオールとして特定のヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンを用い、触媒として分子内に活性水素基を1個以上含有する第三級アミン化合物を用い、かつ発泡剤として水をポリオール100重量部に対し1重量部以上用いて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法(特許文献9)について、既に特許出願している。
【0015】
ここで、特許文献8に記載の方法は、軟質乃至半硬質のポリウレタンフォームの製造に好適な方法であって、硬質ポリウレタンフォームの製造方法について具体的に開示するものではない。また、特許文献9に記載の方法は、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなく硬質ポリウレタンフォーム製品を成形性良く得る製造方法を提供するものではあるが、初期発泡性(クリームタイム)を高めるために、多量の第三級アミン化合物を用いる必要であり、アイレインボー(目の霞み)等の問題を解決するためには更なる検討が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−89714公報
【特許文献2】特開2000−256434公報
【特許文献3】特開2009−40961公報
【特許文献4】特開2005−307145公報
【特許文献5】特開2002−47325公報
【特許文献6】特開2001−524995公報
【特許文献7】特開2000−239339公報
【特許文献8】特開2006−152281公報
【特許文献9】特開2006−233044公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、錫、鉛、水銀及びそれらの化合物を使用することなく、フォームが高密度化する問題やフォームの初期発泡性低下による成形性悪化の問題を解決し得る硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、触媒組成物として特定のアミン化合物を硬質ポリウレタンフォームの製造に用いることにより、これらの課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの、硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォーム製造用の製造方法である。
【0020】
[1]下記一般式(1)
【0021】
【化1】

[式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜3のアルキル基、又は下記一般式(2)
【0022】
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。)
で示される置換基を表す。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは上記一般式(2)で示される置換基を表し、かつR〜Rの全てが上記一般式(2)で示される置換基になることはない。]
で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンからなる群より選択される1種又は2種以上のアミン化合物(A)と、[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のアミン化合物(B)とを含有し、分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物と、錫、鉛、水銀及びそれらの化合物を含有しないことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物。
【0023】
[2]アミン化合物(A)中、R〜Rにおける、炭素数1〜3のアルキル基と一般式(2)で示される置換基との割合が、[炭素数1〜3のアルキル基]/[一般式(2)で示される置換基]=80/20〜20/80(モル比)の範囲であることを特徴とする上記[1]に記載の触媒組成物。
【0024】
[3]アミン化合物(B)が、トリエチルアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の触媒組成物。
【0025】
[4]アミン化合物(A)と、アミン化合物(B)との混合比率が、[アミン化合物(A)]/[アミン化合物(B)]=1/20〜20/1(重量比)であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の触媒組成物。
【0026】
[5]アミン化合物(A)が、ジエチレントリアミンを、アルキル化剤により部分的にN−アルキル化し、次いでアルキレンオキサイドによりオキシアルキル化することにより得られたものであることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の触媒組成物。
【0027】
[6]N−アルキル化剤がホルムアルデヒドであることを特徴とする上記[5]に記載の触媒組成物。
【0028】
[7]ポリオールとポリイソシアネートとを、触媒組成物、及び発泡剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、触媒組成物が、上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の触媒組成物であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0029】
[8]触媒組成物の使用量が、ポリオール100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲であることを特徴とする上記[7]に記載のポリウレタン樹脂の製造方法。
【0030】
[9]発泡剤が水であり、その使用量がポリオール100重量部に対して1重量部以上であることを特徴とする上記[7]又は[8]に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の触媒組成物により、水とイソシアネートとの反応が促進されるため、錫、鉛、水銀及びそれらの化合物からなる重金属触媒を使用することなく、硬質ポリウレタンフォームの発泡開始時間を早くすることができる。このため、本発明の触媒組成物は、スプレー方式のポリウレタンフォームの製造方法に好適に使用される。また、本発明の触媒組成物は、発泡効果が高いため、フォームの低密度化に寄与するとともに、構造材としての接着強度の維持に効果的である。
【0032】
このように、本発明は、環境を汚染することなく高品質な硬質ポリウレタンフォームが製造できるため、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物は、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンからなる群より選択される1種又は2種以上のアミン化合物(A)と、[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のアミン化合物(B)とを含有すること、並びに分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物と、錫、鉛、水銀及びそれらの化合物を含有しないことをその特徴とする。
【0034】
本発明で使用される上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンは、例えば、特許文献8に記載の製造方法により製造することができる。具体的には、ジエチレントリアミンを炭素数1〜3のアルキル化剤により部分的にN−アルキル化し、次いで炭素数1〜4のアルキレンオキサイドによりオキシアルキル化することにより得ることができる。
【0035】
本発明において、上記したN−アルキル化の方法としては、具体的には、ジエチレントリアミンと、N−アルキル化剤として、ホルムアルデヒドを水素加圧下、水素化触媒の存在にて反応させる還元メチル化による方法が挙げられる。
【0036】
また、上記方法において、アルキレンオキサイドとしては特に限定するものではないが、例えば、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンの水酸基価は100〜1000mgKOH/gの範囲であり、好ましくは200〜800mgKOH/gの範囲である。水酸基価が100より小さい場合は得られる硬質ポリウレタンフォームの硬度が不十分となる可能性がある。一方、水酸基価が1000より大きい場合は、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンの粘度が大きすぎるため、ポリイソシアネートとの混合性が悪くなる可能性がある。
【0038】
本発明において、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンの水酸基価とは、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンが複数含まれる組成物として使用されている場合には、当該組成物の平均分子量あたりの水酸基価をいい、下式により定義される。
【0039】
水酸基価(mg/KOH)=分子中のOH基数÷平均分子量×56.1×1000。
【0040】
本発明で使用される水の量はポリオール100重量部に対して1重量部以上である。水の量が1重量部より少ない場合、炭酸ガスの発生量が少ないため硬質ポリウレタンフォーム製品が高密度化し、ポリオールやポリイソシアネート等の原料が多く必要となる。
【0041】
本発明の触媒組成物において用いられる第三級アミン化合物は、[泡化反応速度定数/樹脂化反応速度定数]の値が0.5以上の第三級アミン化合物であり、分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物でない限り、特に限定されない。
【0042】
本発明において、樹脂化反応速度定数(k1w)とは、以下の方法で算出されるパラメータである。
【0043】
すなわち、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールを、イソシアネート基/水酸基のモル比が1.0になるように仕込み、触媒として第三級アミン化合物を一定量添加し、ベンゼン溶媒中で一定の温度に保って反応させ、未反応イソシアナート量を測定する。ここで、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールの反応が各々の濃度に一次であると仮定すると、次式が成立する。
【0044】
dx/dt=k(a−x) (2)
x:反応したNCO基の濃度(mol/L)
a:NCO基の初期濃度(mol/L)
k:反応速度定数(L/mol・h)
t:反応時間(h)。
【0045】
上記式(2)に、初期条件であるt=0、X=0を代入して積分すると、次式が成立する。
【0046】
1/(a−x)=kt+1/a (3)
上記式(3)より反応速度定数kを求め、下記式(4)に代入して触媒定数Kcを求める。
【0047】
k=ko+KcC (4)
ko:無触媒の反応速度定数(L/mol・h)
Kc:触媒定数(L/g・mol・h)
C:反応系の触媒濃度(mol/L)。
【0048】
求めた触媒定数Kcを触媒の分子量で除して、重量当りの活性能とみなしうる樹脂化反応速度定数k1w(L/g・mol・h)を求める(次式参照)。
【0049】
Kc/mc=k1w (5)
一方、泡化反応定数(k2w)は、上記した樹脂化反応と同様の条件でトルエンジイソシアネートと水をベンゼン溶媒中で反応させることにより、上記と同様にして求める。
【0050】
[泡化反応速度定数/樹脂化反応速度定数]の値が0.5以上である第三級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等が例示される。
【0051】
[泡化反応速度定数/樹脂化反応速度定数]の値が0.5以上の第三級アミン化合物は、文献既知の方法にて容易に製造できる。例えば、ジオールとジアミンとの反応やアルコールのアミノ化による方法、モノアミノアルコール又はジアミンの還元メチル化による方法、アミン化合物とアルキレンオキサイドとの反応による方法等が挙げられる。
【0052】
本発明の触媒組成物は、分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物を含有することはない。
【0053】
分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物としては、例えば、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、2−アミノキヌクリジン、3−アミノキヌクリジン、4−アミノキヌクリジン、2−キヌクリジオール、3−キヌクリジノール、4−キヌクリジノール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2’−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)イミダゾール、1−(3’−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(3’−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミノプロピル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、及びN,N−ジメチルアミノエチル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン等が挙げられる。
【0054】
また、本発明の触媒組成物は、錫、鉛、水銀及びそれらの化合物を含有することはない。このような金属系触媒としては、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
【0055】
本発明において、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミン、又は[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物をそれぞれ単独でポリウレタンフォームの製造に用いても、本発明の目的を達成できない。すなわち、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンのみを用いた場合、硬化性が不十分となる可能性があり、硬質ポリウレタンフォーム製品を成形性良く得ることができない。また、[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物を単独で用いた場合、臭気問題を引き起こす可能性があり、また接着強度が低く、成形性の良い硬質ポリウレタンフォーム製品を得ることができない。ところが驚くべきことに、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンと、[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物を併用すると、臭気問題を引き起こすことなく硬質ポリウレタンフォーム製品を成形性良く得ることができる。
【0056】
本発明において、上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンと、第三級アミン化合物との混合比率は、特に限定するものではないが、通常、一般式(1)で表されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンと、第三級アミン化合物の重量比([一般式(1)で表されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミン]/[第三級アミン化合物])が、通常1/20〜20/1の範囲になるように混合比率を調節する。更に好ましくは1/10〜10/1の範囲である。重量比がこの範囲を超えると両触媒の相乗効果が得られない場合があり、ポリウレタン樹脂の物性及び触媒活性の点で満足できる性能を発揮しない場合がある。
【0057】
本発明において、触媒組成物として用いられる上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミン、及び第三級アミン化合物は、予め混合して調製したものを反応時に添加しても良いし、反応の際に同時に添加しても良い。また、それらを混合する際に溶媒に溶解して使用することもできる。溶媒としては特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等のアルコール類、トルエン、キシレン、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒、アセチルアセトン及びそのフッ素化置換体等のβ−ジケトン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル類等のキレート化可能な溶媒、水等が挙げられる。
【0058】
次に本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。
【0059】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオールとポリイソシアネートとを触媒組成物、及び発泡剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であり、触媒組成物として上記した本発明の触媒組成物を用いることをその特徴とする。
【0060】
本発明の方法において、本発明のポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物の使用量は、使用されるポリオ−ルを100重量部としたとき、触媒組成物として、通常0.1〜30重量部の範囲であるが、好ましくは0.5〜20重量部の範囲である。
【0061】
本発明の方法において、使用されるポリオールとしては、従来公知の化合物が使用でき、特に限定するものではないが、例えば、反応性水酸基を2個以上持つ、水酸基価が50〜1000mgKOH/gの範囲のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、フェノールポリオール、さらには含リンポリオール、ハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が挙げられる。
【0062】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。活性水素化合物としては、例えば、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、l,6−へキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールブロパン、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、シュークロース等)、多価フェノール(例えば、ピロガロール、ハイドロキノン等)、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、フェノールとホルムアルデヒドとの低縮合物等)、脂肪族アミン(例えば、プロピレンジアミン、へキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ぺンタメチレンヘキサミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等)、芳香族アミン(例えば、アニリン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等)、脂環式アミン(例えば、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等)、複素脂環式アミン(アミノエチルピペラジン等)、マンニッヒポリオール(例えば、前記した多価フェノール、前記した脂肪族アミン、及びホルムアルデヒドのマンニッヒ反応により得られる化合物)等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記した活性水素化合物に付加するアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びこれら2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びこれらの併用である。
【0064】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した多価アルコールと多塩基酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸、トリメリット酸等)とを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られるポリラクトンポリオール等が挙げられる。
【0065】
また、ポリマーポリオールとしては、例えば、上記したポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)とをラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオール等が挙げられる。
【0066】
これらのポリオールのうち、硬質ポリウレタンフォームの製造方法には、グリセリン系、ソルビトール系、シュークロース系、脂肪族アミン系、及び芳香族アミン系のポリエーテルポリオール、マンニッヒポリオール、フタル酸系のポリエステルポリオールが好適に使用できる。フタル酸系のポリエステルポリオールとしては、オルソフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等のフタル酸と、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を1種又は2種以上用いて、従来公知の方法によって製造されるポリオールや、ポリエチレンテレフタレート等のフタル酸系ポリエステル成形品を分解して得られるフタル酸系回収ポリエステルポリオール等が含まれる。
【0067】
本発明の方法において、使用されるポリイソシアネートとしては、従来公知の化合物が使用でき、特に限定するものではないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環式ポリイソシアネート及びこれらの変性物(例えば、カルボジイミド変性、アロファネート変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性、オキサゾリドン変性等)、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0068】
ここで、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン2,4’−又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)等が挙げられる。
【0069】
本発明の方法において、これらポリイソシアネートは単独で、又は適宜混合して併用することもできる。
【0070】
これらポリイソシアネートのうち、硬質ポリウレタンフォームの製造方法には、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン2,4’−又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)が好ましい。さらに好ましくはポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)である。
【0071】
これらポリイソシアネートの使用量は、フォーム強度、イソシアヌレート反応の完結等を考慮すると、ポリイソシアネートと反応しうる活性水素化合物(ポリオール、水等)とのINDEX(=[イソシアネート基]/[イソシアネート基と反応しうる活性水素基](モル比)×100)で、80〜400の範囲が好ましい(以下、このINDEXを、「イソシアネートIndex」と称する場合がある)。
【0072】
本発明の方法において、使用される触媒は、上記した本発明の触媒組成物であるが、それら以外に、分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物や、鉛、錫、水銀及びそれらの化合物以外の、従来公知の第三級アミン類、第四級アンモニウム塩類、有機金属化合物等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で併用することができる。
【0073】
ここで、第三級アミン類としては、例えば、トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N−ジメチルアミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール等の第三級アミン化合物類等が挙げられる。
【0074】
また、第四級アンモニウム塩類としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム有機酸塩類、ヒドロキシアルキル系四級アンモニウム有機酸塩類であり、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムギ酸塩、テトラエチルアンモニウム酢酸塩、テトラエチルアンモニウムギ酸塩、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等が挙げられる。
【0075】
また、有機金属化合物としては、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩類(例えば、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等)等が挙げられる。
【0076】
また、イソシアネートIndexが100以上の処方においては、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム及び第四級アンモニウム塩類はイソシアヌレート活性が高いことから好ましく使用される。
【0077】
これら触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、一般的にはポリオール100重量部に対し0.01〜20重量部の範囲である。
【0078】
本発明の方法において、使用される発泡剤としては、水が最も好ましいが、それ以外に有機化合物を用いてもよい。有機化合物は、フッ素系化合物や炭化水素系化合物が使用できるが、炭化水素系化合物が地球温暖化対策上好ましい。例えば、ペンタン類やシクロペンタンが、ポリオール100重量部に対し通常5〜30重量部の範囲で使用される。
【0079】
しかしながら、地球温暖化問題の観点より、水が最も好ましい発泡剤である。水の使用量としては、所望の密度やアミン炭酸塩の使用量に応じ、適宜変化させて使用されるため、特に限定するものではないが、例えば、ポリオール100重量部に対し、水1重量部以上使用することが好ましい。さらに好ましくは、ポリオール100重量部に対し、水3重量部以上である。
【0080】
本発明の方法においては、必要に応じて、添加剤として、整泡剤、難燃剤、架橋剤、その他助剤を使用することができる。
【0081】
整泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、オルガノポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリコール共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物が挙げられる。その使用量は特に限定するものではないが、通常、ポリオール100重量部対し0.1〜10重量部の範囲である。
【0082】
難燃剤としては、特に限定するものではないが、例えば、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン含有リン酸エステル類が好ましく、トリスクロロプロピルホスフェートは安定性が良く、難燃性が高いため特に好ましい。
【0083】
これら難燃剤の使用量は、要求される難燃性に応じて異なるため、特に限定するものではないが、難燃性とフォーム強度のバランスを考慮すると、ポリオール100重量部に対し、5〜500重量部の範囲が好ましい。難燃剤の量は、多いと難燃性が向上するものの、過剰に加えるとフォーム強度が低下するおそれがある。
【0084】
また、必要であれば、架橋剤若しくは鎖延長剤、着色剤、老化防止剤その他公知の添加剤等を添加することができる。
【0085】
本発明の方法においては、例えば、本発明のポリウレタンフォーム製造用の発泡性添加剤を、発泡剤の一部又は全部として触媒、発泡剤等と共にポリオール中に混合してプレミックス液とし、このプレミックス液とポリイソシアネート液の2液を低圧発泡マシン、高圧発泡マシン、スプレーマシン等を用いて混合し、適当な金型中に投入することで、発泡成形されたポリウレタンフォームを製造することができる。
【0086】
本発明の法により得られる硬質ポリウレタンフォームは、その密度が通常10〜500kg/mの範囲、好ましくは20〜100kg/mの範囲であり、その熱伝導率が通常40mW/m・K以下、及びその10%圧縮強度が通常3.0kg/cm程度(フォーム密度が50kg/m付近の場合)のフォーム物性を有するものである。本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームは、例えば、断熱材として好適に使用される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定して解釈されるものではない。
【0088】
本発明で使用される各ヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンのごとく、原料化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる多価アルコール類は、分子量に分布がある複数の化合物の混合物となり、それらの化合物の単離及び同定が困難であるため、水酸基価を測定し、製品の平均分子量当たりの水酸基数を算出する手法が用いられる。水酸基価(mgKOH/g)は、上記したとおり、下式により定義される。
【0089】
水酸基価=分子中のOH基数÷平均分子量×56.1×1000。
尚、ヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミン類の水酸基価は、JIS−K1557に準拠し測定した。
【0090】
製造例1 上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンの製造例.
1000mlの攪拌機付きオートクレーブ内に、ジエチレントリアミン200g(東ソー(株)社製DETA)、水100g及び触媒Pd−C(5%担持)2.0gを仕込んだ。オートクレーブを密閉、水素置換後、攪拌下に130℃まで昇温した。続けてオートクレーブ内に圧力3MPaで水素を導入しつつ、37%ホルマリン水溶液314gを7時間かけてポンプで供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却して反応液を取り出した。
【0091】
蒸留装置を用いて反応液から水を留去後、減圧下に生成物であるN−メチル化されたジエチレントリアミン類236gを得た。この生成物をガスクロマトグラフ分析及び1H−NMR分析した結果、ジエチレントリアミンの窒素原子に結合した水素基に対し40%がメチル基([炭素数1〜3のアルキル基]/[水素原子]=40/60)に変換していた。また、得られたアミン化合物の組成は、DETA/モノメチル体/ジメチル体/テトラメル体/ペンタメチル体=7.7/25.9/34.7/23.1/7.6/1.0であった(このアミン化合物を「化合物A」と称する。)
200mlの攪拌機付きオートクレーブ内に、化合物A 71gを仕込み、密閉、窒素置換後、攪拌下に120℃まで昇温した。続けて1,2−プロピレンオキサイド98gを5時間かけてポンプで供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却して反応液を取り出し、100℃/100mmgHgの条件下で2時間エバポレートし、ヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミン組成物A(以下、これを「アミン組成物A」と称する場合がある。)を168g得た。その水酸基価は630mgKOH/gであった。
【0092】
製造例2 上記一般式(1)で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンの製造例.
200mlの攪拌機付きオートクレーブ内に、製造例1で得られた化合物A 80gを仕込み、密閉、窒素置換後、攪拌下に120℃まで昇温した。続けてエチレンオキサイド82gを5時間かけてポンプで供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却して反応液を取り出し、ヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミン組成物B(以下、これを「アミン組成物B」と称する場合がある)を162g得た。その水酸基価は621mgKOH/gであった。
【0093】
<樹脂化反応速度定数の算出>
参考例1.
窒素置換した200mlの三角フラスコに、ジエチレングリコール(DEG)の濃度が0.15mol/Lになるように調製したDEG含有ベンゼン溶液50mlを採取し、これにN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製TOYOCAT−DT)を60.7mg(0.35mmol)を加え、A液とした。
【0094】
次に、窒素置換した100mlの三角フラスコに、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)の濃度が0.15mol/Lになるように調製したTDI含有ベンゼン溶液50mlを採取し、B液とした。
【0095】
A液及びB液をそれぞれ30℃にて30分間保温後、B液をA液に加えて、攪拌しながら反応を開始した。反応開始後、10分毎に反応液を約10ml採取し、未反応のイソシアナートを過剰のジ−n−ブチルアミン(DBA)溶液と反応させ、残存したDBAを0.2N塩酸エタノール溶液で逆滴定して未反応イソシアナート量を定量した。
【0096】
上記したとおり、反応速度定数k(L/mol・h)を、イソシアネートとアルコールの反応(樹脂化反応)が各々の濃度に1次であると仮定して求めた。また、触媒あたりの速度定数Kc(L/eq・mol・h)を、反応速度定数kを触媒濃度で除することで求めた。さらに、Kcを触媒の分子量で除して重量当りの活性能とみなしうる樹脂化反応速度定数k1w(L/g・mol・h)を求めた。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

参考例2〜参考例6.
触媒として表1に示した第三級アミン化合物を使用した以外は、参考例1と同様にして樹脂化反応速度定数k1wを算出した。結果を表1にあわせて示す。
<泡化反応速度定数の算出>
参考例7.
窒素置換した200mlの三角フラスコに、水の濃度が0.078mol/Lになるように調製した水含有ベンゼン溶液100mlを採取し、これにN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製TOYOCAT−DT)を60.7mg(0.35mmol)を加え、A液とした。
【0098】
次に、窒素置換した100mlの三角フラスコに、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)の濃度が0.78mol/Lになるように調製したTDI含有ベンゼン溶液10mlを採取し、B液とした。
【0099】
A液及びB液をそれぞれ30℃にて30分間保温後、B液をA液に加えて、攪拌しながら反応を開始した。反応開始後、10分毎に反応液を約10ml採取し、未反応のイソシアナートを過剰のジ−n−ブチルアミン(DBA)溶液と反応させ、残存したDBAを0.2N塩酸エタノール溶液で逆滴定して未反応イソシアナート量を定量した。
【0100】
上記したとおり、反応速度定数k(L/mol・h)を、イソシアネートと水の反応(泡化反応)が各々の濃度に1次であると仮定して求めた。また、触媒あたりの速度定数Kc(L/eq・mol・h)を反応速度定数kを触媒濃度で除することで求めた。さらに、Kcを触媒の分子量で除して重量当りの活性能とみなしうるk2w(L/g・mol・h)を求めた。結果を表1にあわせて示す。
【0101】
参考例8〜参考例12.
触媒として表1に示した第三級アミン化合物を使用した以外は、参考例9と同様にして泡化反応速度定数k2wを算出した。結果を表1にあわせて示す。
<泡化/樹脂化活性比の算出>
表1の結果から、第三級アミン化合物の泡化/樹脂化活性比(=[樹脂化反応速度定数k1w/泡化反応速度定数k2w])を求めた。その結果を表2にあわせて示す。
【0102】
【表2】

<硬質ポリウレタンフォームの製造>
実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例15.
ポリオールA、ポリオ−ルB、整泡剤、難燃剤、水、炭酸プロピレン、カリウム塩触媒、鉛触媒、製造例で合成したアミン組成物、表2のアミン化合物を表3又は表4に示す量比にて混合してプレミックス液とした。このプレミックス液60gを200mlポリエチレンカップに取り、5℃に温度調節した。この200mlポリエチレンカップに、別の容器で5℃に温度調節した表3のポリイソシアネートをイソシアネートIndex=100となる量を素早く添加した。高速攪拌機にて6000rpmで3秒間攪拌後、素早くこの混合液を0℃に温度調整したステンレス板付き2Lポリエチレンカップに移し発泡成形させた。この際、2Lポリエチレンカップ内での発泡反応性と接着強度を測定した。更に得られた硬質ポリウレタンフォームの成形性とフォーム密度を評価した。これらの結果を表3又は表4に併せて示す。
【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

なお、発泡反応性、接着強度の測定、フォームの成形性の評価、フォーム密度の測定は以下のとおり実施した。
【0105】
・発泡反応性の測定.
クリームタイム:発泡開始時間であり、混合液が発泡開始する時間を目視にて測定した。
ゲルタイム:樹脂形成時間であり、細い棒状物を発泡フォーム中に突っ込み引き抜くときに糸引き現象が起こる時間を測定した。
ライズタイム:発泡フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定した。
【0106】
・フォーム密度の測定.
2Lポリエチレン製カップ内で発泡させたフォームの中心部を7cm×7cm×15cmの寸法にカットし、寸法、重量を正確に測定してフォーム密度(kg/m)を算出した。
【0107】
・接着強度の測定.
2Lポリエチレンカップ内の底面に装着させておいた取っ手付きステンレス板(5×5×0.1cm)を発泡10分後に成形フォームと共に取り出しプルゲージにて取っ手を引張って90度剥離強度を測定し、フォームの接着強度(kg/cm)とした。
【0108】
・フォームの成形性.
得られたフォームの外観とセルの状態を観察して成形性を以下のとおり評価した。
【0109】
○:フォームの表面状態が平滑で且つフォームセルが細かい。
△:フォームの表面に若干凸凹が見られるがフォームセルは細かい。
×:フォームの表面に凸凹が見られフォームセルも大きい。
【0110】
実施例1〜実施例9は本発明の特定のアミン化合物を使用した例であるが、表3から明らかなように、発泡開始時間であるクリームタイムが5秒前後と早く、成形性に優れたフォームを得ることができた。
【0111】
一方、比較例1〜比較例2は鉛触媒を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造例であるが、表4から明らかなように、5秒前後のクリームタイム及び成形性に優れたフォームが得られるものの、毒性の高い鉛触媒を使う必要があった。
【0112】
また、比較例3〜比較例6は本発明のヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンのみを使用した硬質ポリウレタンフォームの製造例であるが、表4から明らかなように、5秒前後のクリームタイムを得るためには多量のヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンが必要であり、フォームの成形性が悪化し、密度が高くなった。
【0113】
比較例7〜比較例10は第三級アミン化合物として[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5より小さいものを使用した場合であるが、クリームタイムが6秒〜8秒と遅く、フォームの成形性が悪化し、密度が高くなった。
【0114】
比較例11〜比較例15は[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上第三級アミン化合物のみを使用した硬質ポリウレタンフォームの製造例であるが、接着強度が低く、フォームの成形性が悪化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜3のアルキル基、又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。)
で示される置換基を表す。ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは上記一般式(2)で示される置換基を表し、かつR〜Rの全てが上記一般式(2)で示される置換基になることはない。]
で示されるヒドロキシアルキル化ポリアルキレンポリアミンからなる群より選択される1種又は2種以上のアミン化合物(A)と、[泡化反応速度/樹脂化反応速度]の値が0.5以上の第三級アミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のアミン化合物(B)とを含有し、分子内に活性水素基を1個以上含む第三級アミン化合物と、錫、鉛、水銀及びそれらの化合物を含有しないことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒組成物。
【請求項2】
アミン化合物(A)中、R〜Rにおける、炭素数1〜3のアルキル基と一般式(2)で示される置換基との割合が、[炭素数1〜3のアルキル基]/[一般式(2)で示される置換基]=80/20〜20/80(モル比)の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
アミン化合物(B)が、トリエチルアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、及びヘキサメチルトリエチレンテトラミンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
アミン化合物(A)と、アミン化合物(B)との混合比率が、[アミン化合物(A)]/[アミン化合物(B)]=1/20〜20/1(重量比)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項5】
アミン化合物(A)が、ジエチレントリアミンを、アルキル化剤により部分的にN−アルキル化し、次いでアルキレンオキサイドによりオキシアルキル化することにより得られたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項6】
N−アルキル化剤がホルムアルデヒドであることを特徴とする請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
ポリオールとポリイソシアネートとを、触媒組成物、及び発泡剤の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、触媒組成物が、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の触媒組成物であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
触媒組成物の使用量が、ポリオール100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項9】
発泡剤が水であり、その使用量がポリオール100重量部に対して1重量部以上であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2011−111536(P2011−111536A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269223(P2009−269223)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】