説明

硬質表面用の液体洗浄剤

【課題】硬質表面に対して、高い洗浄力を発揮する硬質表面用の液体洗浄剤を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(D)成分を含有し、pH3以下であることよりなる。(A)成分:有機酸及び無機酸から選択される1種以上の酸。(B)成分:アニオン界面活性剤。(C)成分:炭素数6〜10のアルコールにアルキレンオキシドを平均付加モル数4〜20で付加したノニオン界面活性剤。(D)成分:増粘多糖類0.2〜0.8質量%。(B)成分/(C)成分で表される質量比が1.5〜10であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用の液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、便器(トイレ)等に付着した無機性又は有機性の付着物を除去するには、専用の液体洗浄剤が用いられている。この専用の液体洗浄剤として、無機酸と、陽イオン性
界面活性剤と、非イオン界面活性剤とを含有するトイレ用洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、強酸性の洗浄剤で、便器に付着した汚れを良好に除去できる。
【0003】
近年、節水に対する意識が高まってきており、便器等の住宅設備機器について節水型の製品の普及が進んでいる。節水型便器は、1回のフラッシュで流れる水の量が非常に少ない。このため、例えば、特許文献1の洗浄剤で清掃すると、掃除時のすすぎ水の量が少なく、便器の表面に洗浄剤が残りやすい。
便器の表面に洗浄剤が残存すると、その部分が疎水的になり、水をはじき、水滴が残ってしまう。さらに、水滴が乾いて水垢が発生することで、表面はより疎水的になる。この水垢のついた表面に有機汚れ、無機汚れ又はこれらの複合汚れが付着すると、黄ばみ汚れが発生しやすくなる。
また、便器や流し台等の住宅設備機器、特に便器には、垂直面又は傾斜面が多く形成されており、これら水平でない面に液体洗浄剤を塗布すると、液体洗浄剤が均一に広がらず、筋状となって垂れ落ちてしまう。このため、液体洗浄剤の洗浄力が十分に発揮されないという問題があった。
【0004】
従来、こうした問題に対し、便器等の硬質表面を洗浄対象とする液体洗浄剤(硬質表面用の液体洗浄剤)には、洗浄対象の面全体に行き渡らせ、効率的に洗浄できるような工夫がなされてきた。
例えば、界面活性剤、有機酸、粘度付与剤を組み合わせたトイレ用洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2の発明によれば、洗浄剤と汚れとの接触時間を長くすることで、便器の汚れ除去性が図られている。
また、特定のキサンタンガムを用いた液体洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献3)。特許文献3の発明によれば、洗浄剤組成物の付着滞留性を高めることで、洗浄力の向上が図られている。
また、特定の高分子とノニオン活性剤を組み合わせて粘度と接触角を特定の範囲とした液体洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献4)。特許文献4の発明によれば、垂直・傾斜面での塗れ広がり性を高めることで、洗浄効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−102293号公報
【特許文献2】特開2003−183697号公報
【特許文献3】特開2000−192100号公報
【特許文献4】特開2004−210808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2、3の発明は垂直面や傾斜面への付着性は向上するものの、洗浄剤の広がりが均一でないため汚れに対して効果的に作用しないという問題がある。
特許文献4の発明は、便器等の広範囲を覆うには洗浄剤の広がりが十分でなく、洗浄力を十分に発揮しにくいという問題がある。
そこで、本発明は、硬質表面に対して、高い洗浄力を発揮する硬質表面用の液体洗浄剤を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アニオン界面活性剤と中鎖ノニオン界面活性剤とを組み合わせることで、硬質表面上に洗浄剤が残らず、水滴残りによる水垢が生じず、かつ洗浄対象面の全体に行き渡り、効率的に洗浄できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明の硬質表面用の液体洗浄剤は、下記(A)〜(D)成分を含有し、pH3以下であることを特徴とする。
(A)成分:有機酸及び無機酸から選択される1種以上の酸。
(B)成分:アニオン界面活性剤。
(C)成分:炭素数6〜10のアルコールにアルキレンオキシドを平均付加モル数4〜20で付加したノニオン界面活性剤。
(D)成分:増粘多糖類0.2〜0.8質量%。
(B)成分/(C)成分で表される質量比が1.5〜10であることが好ましく、前記(C)成分は、下記一般式(I)で表されるアルコールエトキシレートであることがより好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
(上記(I)式中、RはC2x+1で表される直鎖アルキル基、RはC2y+1で表される直鎖アルキル基であり、xは1以上の整数、yは1以上の整数、x+yは4〜8の整数である。AOはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選択される1種以上のオキシアルキレン基を表し、mは平均付加モル数を表す4〜20の数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬質表面用の液体洗浄剤によれば、硬質表面に対して、高い洗浄力を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】広がり性の評価方法を説明する実験系の模式図である。
【図2】広がり性の評価方法を説明する印刷物の平面図である。
【図3】洗浄力の評価方法を説明するための陶器タイルの平面図である。
【図4】(a)洗浄力の評価方法を説明するための陶器タイルの平面図である。(b)洗浄力の評価方法を説明するための陶器タイルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(硬質表面用の液体洗浄剤)
本発明の硬質表面用の液体洗浄剤(以下、単に液体洗浄剤ということがある)は、(A)成分:有機酸及び無機酸からなる群から選択される1種以上の酸と、(B)成分:アニオン界面活性剤と、(C)成分:炭素数6〜10のアルコールにアルキレンオキシドを平均付加モル数4〜20で付加したノニオン界面活性剤と、(D)成分:増粘多糖類とを含有するものである。
なお、硬質表面とは、陶磁器、ガラス、金属等で形成された物品の表面を意味する。本発明の液体洗浄剤は、例えば、便器、台所周り、浴室、タイル、窓ガラス等の洗浄に好適であり、便器等を洗浄するためのトイレ用液体洗浄剤として特に好適である。
【0014】
液体洗浄剤のpHは、3以下であり、2以下がより好ましい。pHが3以下であれば、硬質表面に付着した汚れを良好に除去できる。なお、液体洗浄剤のpHの測定方法は、JIS K3362−1998に準拠したものである。液体洗浄剤のpHは、ガラス電極式pHメータ(商品名:ホリバF−22、株式会社堀場製作所製)を用い、25℃の液体洗浄剤に電極を浸漬し30秒後に読み取られる値である。
【0015】
液体洗浄剤の粘度は、特に限定されないが、例えば、50〜600mPa・sが好ましく、100〜400mPa・sがより好ましい。上記下限値以上であれば、洗浄対象面に適度に残留でき、上記上限値以下であれば、洗浄対象面に均一に広がりやすくなる。
なお、液体洗浄剤の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)により測定される値(測定条件:25℃、ロータNo.2、回転数60rpm、60秒後の粘度)を示す。
【0016】
<(A)成分>
(A)成分は、有機酸及び無機酸からなる群から選択される1種以上の酸である。(A)成分を含有することで、液体洗浄剤は任意のpHとなり、硬質表面に付着した無機系汚れを溶解し、高い洗浄力を発揮できる。
【0017】
(A)成分としては、リン酸、スルファミン酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、メタキシレンスルホン酸、グリコール酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられ、中でも、スルファミン酸が好ましい。スルファミン酸は、酸性度が強く、かつ塩素ガスを捕捉する機能を有するため、塩素化合物と混ざった時にも有毒な塩素ガスの発生を抑制することができる。
【0018】
液体洗浄剤中の(A)成分の含有量は、液体洗浄剤のpHが3以下になる量とされ、例えば、スルファミン酸を用いる場合、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が下限値未満であると十分に無機系汚れを溶解できないおそれがある。(A)成分の含有量が上記上限値超であると高温(40℃以上)保存時に酸臭気を発する等、安定性が低下したり、低温(0℃以下)保存時にスルファミン酸が析出したりして、安定性が低下するおそれがある。
【0019】
<(B)成分>
(B)成分は、アニオン界面活性剤である。(B)成分を含有することで、液体洗浄剤が硬質表面に広がって汚れを覆いやすく(広がり性)なり、洗浄力の向上が図れる。加えて、(B)成分を含有することで、液体洗浄剤は、比較的少量のすすぎ水であっても硬質表面に残留しにくくなり(洗剤残留性)、硬質表面に水垢を生じにくくする(水垢抑制性)。このため、液体洗浄剤の残留や水垢に起因する硬質表面の疎水化が防止され、黄ばみ汚れが発生しにくくなる。
【0020】
(B)成分としては、従来公知のアニオン界面活性剤を用いることができ、例えば、スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤を好適に用いることができる。スルホン酸塩型のアニオン界面活性剤であれば、pH3以下でも加水分解等せず、安定して本発明の効果を発揮できる。
【0021】
スルホン酸型のアニオン界面活性剤としては、例えば、炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸又はその塩(AOS)、炭素数10〜20の第二級アルカンスルホン酸又はその塩(SAS)、炭素数8〜16のアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS)、炭素数6〜20アルキルジフェニルエーテルスルホン酸又はその塩、炭素数14〜18の脂肪酸メチルエステルスルホン酸塩(MES)が挙げられる。これらのスルホン酸塩型のアニオン界面活性剤を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
上述したスルホン酸塩型のアニオン界面活性剤の中でも、(B)成分としては、炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸又はその塩(AOS)、炭素数10〜20の第二級アルカンスルホン酸又はその塩(SAS)、炭素数8〜16のアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS)、炭素数6〜20アルキルジフェニルエーテルスルホン酸又はその塩が好ましく、炭素数10〜20の第二級アルカンスルホン酸塩がより好ましい。
これらのスルホン酸塩型のアニオン界面活性剤は、pH3以下の条件下で安定しており、洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性、洗浄力において良好な効果を発揮する。特に、(B)成分を第二級アルカンスルホン酸(塩)とすることで、広がり性をより向上させ、洗浄力のさらなる向上が図れる。
(B)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
液体洗浄剤中の(B)成分の含有量は、例えば、0.7〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値未満であると、広がり性が低下し、洗浄力が低下しやすくなる。(B)成分の含有量が上記上限値超であると、広がり性が低下して、洗浄力が低下しやすくなる。
【0023】
<(C)成分>
(C)成分は、炭素数6〜10のアルコールにアルキレンオキシドを平均付加モル数4〜20で付加したノニオン界面活性剤である。(C)成分を含有することで、液体洗浄剤に広がり性を与え、洗浄力の向上が図れる。
【0024】
(C)成分に用いられるアルコールは、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。中でも、分岐鎖であることが好ましい。分岐鎖であれば、液体洗浄剤の洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性がより良好となり、さらなる洗浄力の向上が図れる。
【0025】
(C)成分に用いられるアルコールの炭素数は、6〜10であり、好ましくは10である。アルコールの炭素数が上記下限値未満であると、液体洗浄剤の広がり性が低下し、良好な洗浄力が得られない。アルコールの炭素数が上記上限値超であると広がり性、洗剤残留性、水垢抑制性が低下し、良好な洗浄力が得られない。
【0026】
(C)成分において、アルコールに付加させるアルキレンオキシドは、特に限定されないが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
2種以上のアルキレンオキシドを付加させる場合、その付加形態はランダム付加であってもよいし、ブロック付加であってもよい。
アルキレンオキシドの平均付加モル数は、4〜20であり、5〜10が好ましく、8がより好ましい。上記下限値未満であると、疎水性が高すぎるためにゲル化や分離を生じて均一な液体にならず、洗浄力が低下する。上記上限値超であると、液体洗浄剤の広がり性、洗剤残留性、水垢抑制性が低下し、十分な洗浄力が得られない。
【0027】
(C)成分としては、例えば、炭素数6の直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均5モル付加した化合物(Emulan HE-50、BASF社製)等、炭素数6〜10の直鎖アルコールにアルキレンオキシドを平均4〜20モルを付加した化合物(以下、(c1)成分ということがある)、2−エチルヘキサノールにエチレンオキシドを平均8モル付加した化合物(Newcol 1008−GC、日本乳化剤株式会社製)等、炭素数6〜10の分岐アルコールにアルキレンオキシドを平均4〜20モルを付加した化合物((以下、(c2)成分ということがある)が挙げられ、中でも(c2)成分が好ましく、下記一般式(I)で表される、ガーベットアルコールのエチレンオキシド平均4〜20モル付加物が好ましい。
【0028】
【化2】

【0029】
(I)式中、Rは、C2x+1で表される直鎖アルキル基であり、xが1以上のものである。Rは、好ましくはxが2〜6の直鎖アルキル基、より好ましくはxが3〜5の直鎖アルキル基、さらに好ましくはxが3の直鎖アルキル基である。
また、(I)式中、Rは、C2y+1で表される直鎖アルキル基であり、yが1以上のものである。Rは、好ましくはyが2〜6の直鎖アルキル基、より好ましくはyが3〜5の直鎖アルキル基、さらに好ましくはyが5の直鎖アルキル基である。
加えて、x+yは、4〜8の整数であり、6〜8が好ましく、8がより好ましい。
即ち、(I)式で表されるアルコールエトキシレートとしては、Rが炭素数3の直鎖アルキル基(即ち、x=3)、Rが炭素数5の直鎖アルキル基(即ち、y=5)であることが好ましい。Rが炭素数3の直鎖アルキル基、Rが炭素数5の直鎖アルキル基であれば、液体洗浄剤の広がり性、洗剤残留性、水垢抑制性に優れ、洗浄力のさらなる向上が図れる。
【0030】
(I)式中、AOは、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選択される1種以上であり、オキシエチレン基がより好ましい。
2種以上のオキシアルキレンが付加している場合、その付加形態は、ランダム付加でもよいし、ブロック付加でもよい。
【0031】
(I)式中、mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す4〜20の数であり、5〜10が好ましく、7〜8がより好ましく、8がさらに好ましい。mが上記下限値未満であると、疎水性が高すぎるためにゲル化や分離を生じて均一な液体にならず、洗浄力が低下する。mが上記範囲内であれば、親水基と疎水基とのバランスが取れ、液体洗浄剤の広がり性をより向上できる。
【0032】
前記(I)式で表される(C)成分としては、x=3、y=5、m=8、AOがオキシエチレン基であるLutensol XP80(商品名、有効成分100質量%、BASFジャパン株式会社製)、x=3、y=5、AOとしてオキシエチレン基7モルとオキシプロピレン基1モルとを付加した(m=8)Lutensol XL70(商品名、BASFジャパン株式会社製)、x=3、y=5、m=10、AOがオキシエチレン基であるLutensol XP100(商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
(C)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
液体洗浄剤中の(C)成分の含有量は、例えば、0.3〜2.0質量%が好ましく、0.4〜1質量%がより好ましい。上記下限値未満であると、液体洗浄剤の広がり性が低下し、洗浄力が低下するおそれがあり、上記上限値超であると、液体洗浄剤の広がり性が飽和し、さらなる洗浄力の向上が図れない、あるいは洗浄力が低下するおそれがある。
【0034】
(B)成分/(C)成分で表される質量比(B/C比)は、1.5〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。B/C比を上記範囲内にすることで、親水性と疎水性とのバランスがつりあい、広がり性をさらに高められる。また、上記下限値以上であれば、低温保存における安定性が良好となる。
【0035】
<(D)成分>
(D)成分は、増粘多糖類である。(D)成分を含有することで、液体洗浄剤の洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性を向上させると共に、硬質表面に適度な強度で付着し、洗浄力を高められる。
【0036】
増粘多糖類としては、液体洗浄剤を任意の粘度にできるものであれば特に限定されず、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、中でも、pH3以下での安定性に優れるキサンタンガムが好ましい。
キサンタンガムとしては、配合量を低減する観点から、重量平均分子量が10万〜1000万のものが好ましい。
【0037】
このようなキサンタンガムとしては、ケルザンT(商品名、キサンタンガム透明グレード、ケルコ社製)、ケルザンAST(商品名、キサンタンガム耐酸性グレード、ケルコ社製)等が挙げられ、中でも、ケルザンASTが好ましい。キサンタンガムの骨格には、末端の水酸基がアセチル基で修飾された箇所があり、これが高温酸性条件下で加水分解する原因となっている。ケルザンASTではこのアセチル基を外し遊離な水酸基となったキサンタンガムの割合を増やすことで通常のキサンタンガムよりも高い耐酸性を発揮できる。
【0038】
液体洗浄剤中の(D)成分の含有量は、0.2〜0.8質量%が好ましく、0.3〜0.6質量%がより好ましい。上記下限値未満では、液体洗浄剤の広がり性が著しく低下し、洗浄力が低下する。上記上限値超では、液体洗浄剤の洗剤残留性、広がり性が低下し、洗浄力が低下する。
【0039】
<その他の任意成分>
液体洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコール、(B)成分及び(C)成分以外の界面活性剤(任意界面活性剤)、香料、色素等を含有してもよい。
【0040】
<アルコール>
液体洗浄剤は、アルコール(以下、(E)成分ということがある)を含有してもよい。(E)成分を含有することで、水への各成分の分散性又は溶解性が高まり、液体洗浄剤を均一なものにできる。このため、高温保存における液体洗浄剤の安定性が高まる。
【0041】
(E)成分としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等、炭素数1〜6の1価のアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリグリコール等が挙げられ、中でも、高温保存における安定性をさらに高める観点からは、プロピレングリコール、へキレングリコールが好ましく、低温保存における安定性を高める観点からプロピレングリコールがより好ましい。
【0042】
液体洗浄剤中の(E)成分の含有量は、0.5〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。上記下限値未満であると高温保存における安定性が低下するおそれがあり、上記上限値超であると、広がり性が低下して、液体洗浄剤が汚れに接触しない等の不具合が生じて、洗浄力が低下するおそれがある。
【0043】
<任意界面活性剤>
任意界面活性剤としては、(C)成分を除くノニオン界面活性剤(任意ノニオン界面活性剤)、両性界面活性剤等が挙げられる。
任意ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アミンオキシド、アミドアミンオキシド、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン等が挙げられる。
【0044】
なお、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤を用いると、(B)成分の機能が低減し、洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性が著しく低下し、洗浄力が低下するおそれがある。従って、液体洗浄剤は、カチオン界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0045】
液体洗浄剤中の任意界面活性剤の含有量は、例えば、0.5〜10質量%が好ましい。
【0046】
本発明によれば、(A)成分を含有するため、硬質表面に付着した無機系汚れを良好に除去できる。
加えて、(B)成分と(C)成分とを含有するため、広がり性、洗剤残留性、水垢抑制性に優れ、洗浄力が高まり、黄ばみ汚れを好適に除去できる。
さらに、(D)成分を含有するため、硬質表面に対する広がり性が高まると共に、硬質表面に適度な強度で付着し、洗浄力をより高められる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、表中の各成分の組成は、純分換算の値である。
(使用原料)
<(A)成分>
A−1:スルファミン酸(扶桑化学工業株式会社製、商品名;スルファミン酸、有効成分;100質量%)
A−2:メタキシレンスルホン酸(東京化成工業株式会社製、商品名;メタキシレンスルホン酸、有効成分;100質量%)
A−3:グリコール酸(デュポン株式会社製、商品名;グリコール酸、有効成分;70質量%)
【0048】
<(B)成分>
B−1:第二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(クラリアント株式会社製、商品名;Hostapur SAS 30A、有効成分;30質量%)
B−2:アルキルベンゼンスルホン酸Na塩(テイカ株式会社製、商品名;テイカパワーL121、有効成分;95質量%)
B−3:アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩(日本乳化剤株式会社製、商品名;Newcol271−A、有効成分;45質量%)
B−4:α−オレフィンスルホン酸塩(ライオン株式会社製、商品名;リポランLB440、有効成分;30質量%)
【0049】
<(B’)成分:(B)成分の比較品>
B’−1:塩化ベンザルコニウム(ライオン株式会社製、商品名;アーカードCB−50、有効成分;50質量%)
【0050】
<(C)成分>
C−1:直鎖アルキル(C6)アルコールエチレンオキシド(平均5モル)付加物(BASFジャパン株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;Emulan HE−50)
C−2:分岐アルキル(2−エチルヘキシル)アルコールエチレンオキシド(平均8モル)付加物(日本乳化剤株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;Newcol1008−GC)
C−3:直鎖アルキル(C10)アルコールエチレンオキシド(平均5モル)付加物(後述の調製例1で調製したもの、有効成分;100質量%)
C−4:分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均8モル)付加物((I)式のxが3、yが5、mが8のものに相当、BASFジャパン株式会社製、有効成分:100質量%、商品名:Lutensol XP80)
C−5:分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールプロピレンオキシド(平均1モル)エチレンオキシド(平均7モル)付加物(BASFジャパン株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;Lutensol XL70)
C−6:分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均10モル)付加物(一般式(I)のxが3、yが5、mが10のものに相当、BASFジャパン株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;Lutensol XP100)
C−7:分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均20モル)付加物(後述の調製例2で調製したもの、一般式(I)のxが3、yが5、mが20のものに相当、有効成分;100質量%)
【0051】
<(C’)成分:(C)成分の比較品>
C’−1:テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(協和発酵ケミカル株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;ブチセノール40)
C’−2:分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均3モル)付加物(BASFジャパン株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;Lutensol XP30)
C’−3:分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均25モル)付加物(後述の調製例3で調製したもの、一般式(I)のxが3、yが5、mが25のものに相当、有効成分;100質量%)
C’−4:直鎖アルキル(C12)アルコールエチレンオキシド(平均3モル)付加物(日本エマルジョン株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;EMALEX703)
C’−5:直鎖アルキル(C12)アルコールエチレンオキシド(平均10モル)付加物(日本エマルジョン株式会社製、有効成分;100質量%、商品名;EMALEX710)
【0052】
<(D)成分>
D−1:キサンタンガム(ケルコ社製、商品名;ケルザンAST、重量平均分子量;約200万)
D−2:キサンタンガム(ケルコ社製、商品名;ケルザンT、重量平均分子量;約200万)
【0053】
<(E)成分>
E−1:プロピレングリコール(ADEKA株式会社製、商品名;化粧用プロピレングリコール、有効成分;100質量%)
E−2:ヘキシレングリコール(三井石油化学株式会社製、商品名;キシレングリコール(85%)、有効成分;85質量%)
【0054】
(調製例1)C−3の調製
下記手順により、デシルアルコールにエチレンオキシドを付加し、エチレンオキシド5モル付加物を調製した。
4Lのオートクレーブ中に、デシルアルコール(花王株式会社製、カルコール1098)158gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド220gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数5の反応物を得た。
【0055】
(調製例2)C−7の調製
下記手順により、分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均14モル)付加物(BASFジャパン株式会社製、Lutensol XP140)にさらにエチレンオキシドを付加し、エチレンオキシド20モル付加物を調製した。
4Lのオートクレーブ中に、Lutensol XP140を774gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド264gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数20の反応物を得た。
【0056】
(調製例3)C’−3の調製
下記手順により、分岐アルキル(C10ガーベット)アルコールエチレンオキシド(平均14モル)付加物(BASFジャパン株式会社製、Lutensol XP140)にさらにエチレンオキシドを付加し、エチレンオキシド25モル付加物を調製した。
4Lのオートクレーブ中に、Lutensol XP140を774gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド484gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数25の反応物を得た。
【0057】
(評価方法)
<洗剤残留性>
各例の液体洗浄剤に青色1号を液体洗浄剤中0.0015質量%となるように添加して、青色に着色したサンプルを調製した。
このサンプル30gを便器(TOTO株式会社製、ウォッシュレット一体形便器ZK1)内のフチ裏全体1周に略均一にかけ、30秒間放置した。その後、10Lの水道水をフラッシュし、フラッシュし終わった直後の便器表面の洗剤の残り具合を目視で確認した。
実施例1の液体洗浄剤に、青色1号を液体洗浄剤中の濃度が下記評価基準に示す濃度となるように添加して、基準サンプルを調製した。この基準サンプル30gを便器(TOTO株式会社製、ウォッシュレット一体形便器ZK1)内のフチ裏全体1周に略均一にかけ、30秒間放置した。基準サンプルをかけ、30秒間放置した後の便器表面の着色状況と、各例のサンプルをかけ、フラッシュし終わった直後の便器表面の着色状況とを比較し、下記評価基準に従って洗剤残留性を評価した。
【0058】
≪評価基準≫
◎:青色1号を添加していない基準サンプルと同等である(液体洗浄剤の残留が全く認められない)。
○:青色1号0.00005質量%の基準サンプルと同等の着色状態である(液体洗浄剤の残留が殆ど認められない)。
△:青色1号0.0002質量%の基準サンプルと同等の着色状態である(液体洗浄剤の残留がやや認められる)。
×:青色1号0.00075質量%の基準サンプルと同等の着色状態である(かなり多くの液体洗浄剤が残留している)。
【0059】
<水垢抑制性>
各例の液体洗浄剤30gを便器(TOTO株式会社製、ウォッシュレット一体形便器ZK1)内のフチ裏全体1周に略均一にかけ、30秒間放置した後、10Lの水道水をフラッシュした。フラッシュ終了後、1日間放置し、便器表面の水垢汚れの発生具合を目視で確認し、下記評価基準に従って水垢抑制性を評価した。
【0060】
≪評価基準≫
◎:水垢が全くできていない。
○:水垢がほとんどできていない。
△:水垢がややできている。
×:水垢がかなりできている。
【0061】
<広がり性>
以下の便器ベール率の測定結果に基づいて、広がり性を評価した。
各例の液体洗浄剤に青色1号を液体洗浄剤中0.0015%となるように添加して、青色に着色したサンプルを調製した。
サンプル30gを便器(TOTO株式会社製、ウォッシュレット一体形便器ZK1)内のフチ裏全体1周に略均一にかけ、その30秒後に便器内の撮影を行った。便器内の撮影には、図1に示すように、便器10の上縁12から30cmの高さにデジタルカメラ(FUJIFILM FINEPIX F50fd)14を設置したものを用いた。このデジタルカメラ14で便器10内の斜面全体が映るように撮影した。
【0062】
便器10内の写真をA4コピー用紙いっぱいに映るように印刷して、全体印刷物とした。図2(a)に示すように、全体印刷物20における便器の斜面部分(傾斜部分印刷部)22を切り取り、精密天秤にて傾斜部分印刷部22(図2(b))の質量(αg)を測定した(小数点以下4桁)。さらに傾斜部分印刷部22から、便器の斜面部分に広がった液体洗浄剤の部分(洗剤画像印刷部)24を切り取った。傾斜部分印刷部22から洗剤画像印刷部24が切り取られた状態を図2(c)に示す。全ての洗剤画像印刷部24の質量を精密天秤で測定し(小数点以下4桁)、その合計(βg)を求めた。
求めたαとβとの値から下記(1)式により便器ベール率を算出し、算出した便器ベール率を下記評価基準に分類して広がり性を評価した。
【0063】
便器ベール率(%)=(β÷α)×100 ・・・(1)
【0064】
≪評価基準≫
◎◎◎:便器ベール率が80%以上。
◎◎:便器ベール率が70%以上80%未満。
◎:便器ベール率が60%以上70%未満。
○:便器ベール率が50%以上60%未満。
△:便器ベール率が40%以上50%未満。
×:便器ベール率が40%未満。
【0065】
<洗浄力>
洗浄力は、下記方法により黄ばみ汚れを作製し、この黄ばみ汚れに対する洗浄力により評価した。
≪黄ばみ汚れの作製≫
20cm×20cmの略正方形の陶器タイル(株式会社INAX製)を、その一辺が水槽の底面に接触するように水槽内の水道水(水深5cm)に浸した。その後、水槽から引き上げた陶器タイルをドラフト内で24時間自然乾燥して、任意の一辺に沿って約1cm幅の帯状の水垢を形成させた。
次いで、図3に示すように、陶器タイル30に形成された帯状の水垢34に、スポイト32で人尿1gを略均一に塗布した。人尿を塗布後、ドラフト内で24時間、自然乾燥させて、黄ばみ汚れのモデルとした。
【0066】
≪洗浄力の評価方法≫
図4は、洗浄力の評価方法の手順を示す模式図である。図4(a)に示すように、帯状の黄ばみ汚れ36が形成された面を鉛直方向上方とし、辺35と対向する辺37から1cm内側に、スポイト32で各例の液体洗浄剤40(25℃)2gを辺37に沿って帯状(長さ約20cm、幅約1cm)に塗布した。次いで、図4(b)に示すように、液体洗浄剤40を塗布した面が上方に向くように、陶器タイル30を水平面Pに対し60°に傾け、液体洗浄剤40を辺35に向けて流した。陶器タイル30を傾けてから1分間後、液体洗浄剤40を塗布した面に水道水10Lをかけ、30分間自然乾燥させた。乾燥後、黄ばみ汚れ36の状態を目視で確認し、下記評価基準に従って洗浄力を評価した。
【0067】
≪評価基準≫
◎◎:黄ばみ汚れが完全に落ちている。
◎:黄ばみ汚れがかなり落ちている。
○:黄ばみ汚れがやや落ちている。
△:黄ばみ汚れがほとんど落ちていない。
×:黄ばみ汚れが全く落ちていない。
【0068】
<高温保存安定性>
各例の液体洗浄剤を100mLのガラス瓶(PS−11瓶広口規格)に充填し、キャップをして50℃の恒温槽(ヤマト科学株式会社製、DK600)に1ヶ月間保存した。保存終了後、25℃の恒温槽(THOMAS T−22L)で1時間静置した後、下記評価基準に従って高温保存安定性を評価した。
【0069】
≪評価基準≫
◎:保存前と同等の臭気で不快臭を全く感じない。
○:保存前と臭気の変化が僅かに認められるが不快臭を感じない。
△:保存前に比べ不快臭を感じる。
×:保存前に比べ不快臭を非常に強く感じる。
【0070】
<低温保存安定性>
各例の液体洗浄剤を100mLのガラス瓶(PS−11瓶広口規格)に充填し、キャップをして凍結復元保存(−20℃24時間⇔0℃24時間を6回繰り返す)をした。凍結復元保存をした後、液体洗浄剤を0℃とし、外観を観察した。その後、液体洗浄剤を25℃に5時間放置した後、外観を観察し、下記評価基準に従って低温保存安定性を評価した。
【0071】
≪評価基準≫
◎:0℃での外観が均一透明である。
○:0℃での外観には僅かににごりが認められるが、25℃の外観は均一透明である。
△:0℃で白濁、析出又はゲル状の塊が認められ、25℃の外観が均一透明ではない。
×:0℃で多くの白濁、析出又はゲル状の塊が認められ、25℃でも白濁、析出又はゲル状の塊が認められる状態が継続している。
【0072】
(実施例1〜26、比較例1〜9)
表1〜3の組成に従い、下記の手順で各例の液体洗浄剤物500gを調製した(表中に記載のない成分は添加しなかった)。
500mLビーカーに、バランス量の精製水を入れ、マグネチックスターラー(Fine製、F−606N)で撹拌しながら、(D)成分を添加し、1時間攪拌して(D)成分を十分に膨潤させた。次いで、(A)成分を加えて10分間攪拌し、さらに(B)成分及び(C)成分を添加し10分間攪拌し、各例の液体洗浄剤を得た。得られた液体洗浄剤について、洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性及び洗浄力を評価し、その結果を表中に示した。なお、「バランス量」は、液体洗浄剤の総量を100質量%とするのに必要な量である。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
表1〜3の通り、本発明を適用した実施例1〜26は、いずれも洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性が「○」以上であり、洗浄力が「○」以上であった。
(A)成分としてA−1(スルファミン酸)を用いた実施例1は、A−2を用いた実施例2、A−3を用いた実施例3に比べて、洗浄力が向上していた。
(C)成分としてC−4を用いた実施例1は、(C)成分として直鎖アルコールのエチレンオキシド付加物を用いた実施例17、19に比べて、広がり性及び洗浄力が向上していた。実施例1は、炭素数6の分岐鎖アルコールのエチレンオキシド付加物を用いた実施例18に比べて、広がり性及び洗浄力が著しく向上していた。エチレンオキサイドの平均付加モル数が8のC−4を用いた実施例1は、エチレンオキシドの平均付加モル数を10以上とした(C)成分を用いた実施例21、22、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとを付加した(C)成分を用いた実施例20に比べて、広がり性及び洗浄力が向上していた。これらの結果から、(C)成分として、C−4を用いることで、広がり性及び洗浄力を向上できることが判った。
また、B/C比を1.5〜10とした実施例1、6は、B/C比を10超とした実施例7に比べて、広がり性及び洗浄性が向上していた。B/C比を1.5〜10とした実施例1、6は、B/C比を1.5未満とした実施例4、5に比べて、広がり性及び洗浄性が向上していた。
(C)成分に換えて(C’)成分を含有する比較例1、4、6、7は、いずれも広がり性が「△」、洗浄力が「△」又は「×」であった。(C)成分に換えてC’−2(エチレンオキシドの平均付加モル数3)を用いた比較例5は、液体洗浄剤が分離していたため、各種評価を行わなかった。
pHを4とした比較例2は、水垢抑制性が「△」であり、洗浄力が「×」であった。
(B)成分に換えてカチオン界面活性剤を用いた比較例3は、洗剤残留性及び水垢抑制性が「×」であり、洗浄力が「△」であった。
(D)成分の含有量を0.1質量%とした比較例8は、広がり性が「×」、洗浄力が「△」であった。また、(D)成分の含有量を1質量%とした比較例9は、洗剤残存性、水垢抑制性、広がり性及び洗浄力が「△」であった。
これらの結果から、本発明を適用した液体洗浄剤は、洗剤残存性、水垢抑制性及び広がり性に優れ、高い洗浄力を発揮できることが判った。
【0077】
(実施例27〜43)
表4〜5の組成に従い、(D)成分と共に(E)成分を添加した以外は、実施例1と同様にして各例の液体洗浄剤を得た。得られた液体洗浄剤について、高温保存安定性、低温保存安定性、洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性及び洗浄力を評価し、その結果を表中に示した。
【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
表4〜5に示すように、(E)成分を含有する実施例27〜42は、(E)成分を含有しない実施例43に比べて高温保存安定性が向上していた。
また、(E)成分の含有量を0.2質量%とした実施例32は、実施例33に比べて高温保存安定性が低下していた。
(E)成分の含有量を25質量%とした実施例35は、(E)成分の含有量を20質量%とした実施例34に比べて洗浄力が低下していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含有し、pH3以下であることを特徴とする硬質表面用の液体洗浄剤。
(A)成分:有機酸及び無機酸から選択される1種以上の酸。
(B)成分:アニオン界面活性剤。
(C)成分:炭素数6〜10のアルコールにアルキレンオキシドを平均付加モル数4〜20で付加したノニオン界面活性剤。
(D)成分:増粘多糖類0.2〜0.8質量%。
【請求項2】
(B)成分/(C)成分で表される質量比が1.5〜10であることを特徴とする請求項1に記載の硬質表面用の液体洗浄剤。
【請求項3】
前記(C)成分は、下記一般式(I)で表されるアルコールエトキシレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質表面用の液体洗浄剤。
【化1】

(上記(I)式中、RはC2x+1で表される直鎖アルキル基、RはC2y+1で表される直鎖アルキル基であり、xは1以上の整数、yは1以上の整数、x+yは4〜8の整数である。AOはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基から選択される1種以上のオキシアルキレン基を表し、mは平均付加モル数を表す4〜20の数である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229381(P2012−229381A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99979(P2011−99979)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】