説明

硬質表面用洗浄剤組成物

【課題】硬質表面に対する洗浄力、優れ拭き取り性、拭き残り低減性に優れた硬質表面用の洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が12のアルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩及びアルキル基又はアルケニル基の炭素数が14のアルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩、(B)水溶性有機溶剤、(C)アミン化合物、並びに水を含有し、(A)成分以外の界面活性剤/(A)の質量比が1未満である、硬質表面用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居製品等の硬質表面用の洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、硬質表面上に形成される汚れは、室内ならば、空気中に室外から持ち込まれた砂もしくはタバコや調理などからくる煙などのハイドロカーボンや無機物質などの固体粒子、布団や衣類などから繊維フィラメントが脱離して浮遊するもの、又は人体由来、タバコもしくは調理により発生し、空気中でコロイド状態にある油脂、脂肪酸、ヤニなどの有機物汚れが、人の移動、外気からの空気の流れ、もしくはエアコンディショナーにより舞い上がり硬質表面に接触、沈降、又は静電的に付着したものであり、更には長期間放置することで、汚れが堆積されるだけでなく、複合汚れとして変性高分子化してしまう。また室外では、大気中に含まれる砂やハイドロカーボンなどの塵、油脂が汚れとして屋外の生活用品の硬質表面や窓などに付着したり、或いは雨に含まれる塵や塩類が、硬質表面上を流れた後、汚れとして残ることにより形成される。これらの汚れは、付着して間もない場合は、ハタキなどを用いて強制的に剥離させ、床に沈降させて清掃することで取り除いたり、雑巾などの布帛を用いて乾拭きや水拭きを行うことで除去することができるが、汚れがうまく布帛に移らずに硬質表面に汚れが寄ったような状態で残留する場合があったり、特に前記したように変性した汚れや、窓ガラスの表面の白化した状況の汚れを取り除く場合、乾拭きでは十分に除去することができず、一方で水拭きでは逆に硬質表面を汚してしまうという問題を生じる。
【0003】
従来、油汚れを硬質表面から除去するために、界面活性剤や溶剤による性質を利用する技術や、変性汚れに対してはアルカリで分解する技術が提案されている。しかしながら、対象とする基材が、ガラス製品および一部ガラスを使用した製品、プラスチック製品、スチール製品、家具、電化製品、机、椅子、床、窓などであるため、洗浄剤成分の基材自体が表面に残り、基材の残留によるくもりを生じるのを避けねばならない。特に窓ガラスなどのガラス製品に到っては、非常に重要な課題になっている。
【0004】
これらの問題を解決する為に、特許文献1には、陰イオン界面活性剤、テルペン系炭化水素及び2価金属イオン塩を含有するすすぎのいらない住居用液体洗浄剤組成物が、また特許文献2にはすすぎ性の良いものとしてアルキルグリコシド/溶剤/ビルダーからなる液体洗浄剤組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献3、特許文献4には、すすぎ性と光沢が良好である陰イオン界面活性剤アンモニウム塩/溶剤/アルカリ剤からなる液体洗浄剤組成物が提案されている。
【0006】
また、特許文献5には、2度拭きの必要のない洗浄剤として、アルケニルコハク酸誘導体、具体的にはアルケニルコハク酸をスルホアルキルアミド化した化合物に水溶性有機溶剤、アミン化合物を含有する硬質表面用洗浄剤が提案されている。更に特許文献6には、アルキルグリコシドまたはアルキルポリグリセリルエーテルと、アルキル基又はアルケニル基とアニオン性基を2つ有するアニオン界面活性剤とを併用するガラスなどの防曇作用を与える組成物が記載されており、アニオン界面活性剤としてアルケニルコハク酸塩が挙げられている。
【0007】
また、アルケニルコハク酸又はその塩を含有する洗浄剤として特許文献7が知られている。
【特許文献1】特開平2−29498号公報
【特許文献2】特表昭62−501570号公報
【特許文献3】特開平3−41200号公報
【特許文献4】特開平3−199297号公報
【特許文献5】特開平5−279699号公報
【特許文献6】特開2001−073653号公報
【特許文献7】特開昭63−000397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1はガラス面等を洗浄した時に仕上がり性が不十分であり、また特許文献2においては、無機系粉末のビルダーを使用しているが為に、拭き残りが見られ、また十分なすすぎが必要であった。
【0009】
また、特許文献3、4は、界面活性剤が表面に残存することにより拭き残りが見られ、2度拭きが必要であった。
【0010】
特許文献5、6は、洗浄力や拭き取り性、拭き残り性の更なる改善が望まれている。特に、特許文献6は、防曇効果を得るために炭素数14〜20のアルキルグリコシド又はアルキルポリグリセリルエーテルを用いるため、仕上がり性や洗浄力において不十分であった。
【0011】
特許文献7は、ヘビーデューティー液体洗浄剤に関する発明であり、起泡性を低下させ、泡を最小にすること目的とするものであり、住居内外の硬質表面の洗浄、特にはガラスなどの透明性が求められる硬質表面の洗浄についての言及はない。
【0012】
本発明の課題は、住居内外の硬質表面の洗浄、特にはガラスなどの透明性が求められる硬質表面の洗浄に関し、洗浄力に優れることはもちろん、一回の拭き取りの際に泡が直ぐ消える、いわゆる拭き取り性に優れ、洗浄後に濁りや曇りなどがない、いわゆる拭き残り性に優れる硬質表面用洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、(A)(A−i)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が12のアルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩、及び(A−ii)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が14のアルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩、(B)水溶性有機溶剤、(C)アミン化合物、並びに水を含有し、(A)成分に対する、(A)成分以外の界面活性剤[以下(D)成分という]に対する質量比(D)/(A)が1未満である、硬質表面用洗浄剤組成物に関する。
【0014】
なお、(A)成分におけるアルキル基もしくはアルケニル基は、アルキルもしくはアルケニルコハク酸からコハク酸由来の炭素を除いた部分であって、具体的には下記一般式で示される化合物においてRで示される部分(式中のXは水素原子又は塩となる対イオン)である。
【0015】
【化1】

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬質表面の洗浄に関し、洗浄力、拭き取り性、仕上がり性に優れる洗浄剤組成物を提供することができる。本発明の洗浄剤組成物は、拭き取り性に優れ、拭き残りが少なく、仕上り性に優れ、窓ガラスなどの透明性や簡易な拭き取り性が要求される住居製品に対して好適な硬質表面用洗浄剤組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、(A−i)アルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩であり、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が12の化合物及び(A−ii)炭素数が14の化合物の両方を含有する。
【0018】
特には(A−i)/(A−ii)の割合は、質量比で好ましくは0.4〜2.3、より好ましくは0.5〜2、最も好ましくは、1.0〜1.4であることが、ガラス面での仕上がり性や組成物の安定性の点で好ましい。
【0019】
(A)成分は、例えばα−オレフィンに無水マレイン酸を反応させたものを加水分解することによって得ることができる。(A)成分は、後述する(C)アミン化合物との塩又はアルカリ金属塩として配合することができるが、ジカリウム塩として配合することが好ましい。
【0020】
<(B)成分>
本発明に用いる(B)成分は水溶性有機溶剤であり、次の一般式(1)〜(4)で表わされる化合物、炭素数2〜12の二価アルコール〔一般式(4)以外のもの〕及び炭素数1〜5の一価アルコールから選ばれる水溶性溶剤の1種又は2種以上のものが挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
〔式中、R1及びR2はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示すが、R1及びR2の双方が水素原子となる場合を除く。mは0〜3の整数を、nは0〜3の整数を示すが、m及びnの双方が0である場合を除く。R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R5は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R6は炭素数4〜10のアルキル基であり、Xはヒドロキシ基又は−CH2CH(OH)CH2OH基を示す。〕
【0023】
上記一般式(1)で表わされる水溶性溶剤において、R3、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示すが、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。また、式(1)中、エチレンオキサイド(E.O.)及びプロピレンオキサイド(P.O.)の平均付加モル数のm及びnは、それぞれ0〜3のものが好ましい。また、これらの付加順序は特に限定されず、ランダム付加したものであってもよい。一般式(1)の化合物の具体例としては、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1)ポリオキシプロピレン(p=1)グリコールジメチルエーテル(pは平均付加モル数を示す)等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)のうち、特に洗浄力及び拭き取りの容易さの点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0025】
一般式(2)で表わされる化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンが好適なものとして例示され、一般式(3)で表わされる化合物としては3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−エトキシ−3−メチルブタノール等が好ましい。
【0026】
一般式(4)で示される化合物としては、R6のアルキル基の炭素数が好ましくは4〜10の化合物であり、より好ましくは最長のアルキル基の炭素数が5〜6であって、メチル又はエチルの分岐鎖を0〜2有する化合物である。具体的には、R6としてn−ペンチル基、イソペンチル基、及び2−エチルヘキシル基を有するものが挙げられる。
【0027】
また、一般式(4)以外の炭素数2〜12の二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、等が例示される。更に、炭素数1〜5の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が例示される。このような低分子の二価アルコールや一価のアルコールは、処理後の拭き残りが少ない上に、組成物の安定性を高める上でも有利である。
【0028】
本発明では特に、洗浄力の上で、水溶性有機溶剤として下記(B−i)及び(B−ii)からそれぞれ選ばれる一種以上を配合することが好ましい。(B−i)及び(B−ii)を併用する場合、質量比は(B−i)/(B−ii)=0.05〜1が好ましく、更には、0.1〜0.7がより好ましい。
(B−i)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アミルモノグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル
(B−ii)エタノール、プロパノール、イソプロパノール
【0029】
本発明での(B)成分の最善の組み合わせは、洗浄力と速乾性の観点から(B−i)プロピレングリコールモノメチルエーテルと(B−ii)エタノールである。
【0030】
<(C)成分>
本発明における(C)成分は、アンモニアを含むものであり、好ましくは、ヒドロキシ基で置換していてもよい炭化水素基のいずれもが炭素数4以下であるアミン化合物である。下記一般式(5)〜(8)で表わされるアミン化合物から選ばれる1種又は2種以上のものがより好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
〔式中、R7、R10、R12、R14、R16、R18、R19はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R8、R9、R11、R13、R15、R17はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0033】
一般式(5)で表わされる化合物としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。一般式(6)で表わされる化合物としては、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン等が挙げられる。一般式(7)で表わされる化合物としては、ジエチレントリアミン等が挙げられる。また、一般式(8)で表わされる化合物としては、モルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。これら(8)の中でもモルホリンが好ましい。
【0034】
本発明において最も好ましいアミン化合物は、モノエタールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2―アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルプロパノール、アンモニアであり、この中でも特にモノエタノールアミン、2―アミノ−2−メチル−1−プロパノールが好ましい。なお(C)成分のアミン化合物は、(A)成分の塩として配合しても良い。
【0035】
<(D)成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、(D)成分として、(A)成分以外の界面活性剤を配合することができる。(D)成分としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。具体的には次のものが挙げられる。
【0036】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキレンオキシド付加アルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキレンオキシド付加アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩及びそのエステル類等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、又はアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノール置換アミンの塩を挙げることができる。
【0037】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、蔗糖脂肪酸エステル類、脂肪酸グリセリンエステル類、アミンオキシド類、高級脂肪酸アルカノールアミド類又はそのアルキレンオキサイド付加物、次の一般式(9)で表わされるアルキルグリコシド等が挙げられる。
31(OR32xy (9)
〔式中、R31は炭素数8〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基を示し、R32は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Gは炭素数5〜6を有する還元糖に由来する残基を示し、xはその平均値が0〜5の数を示し、yはその平均値が1〜10の数を示す。〕
【0038】
陽イオン性界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち1つ又は2つが炭素数8〜18のアルキル基であり、残りがヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はベンジル基である3級アミン又は4級アンモニウム型界面活性剤が望ましい。陽イオン性界面活性剤には、塩化ベンザルコニウムのように、硬質表面の殺菌効果を期待できるものも多く含まれる。
【0039】
両性界面活性剤としては、例えば炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するスルホベタイン及びカルボベタイン等が挙げられる。
【0040】
本発明において、(D)成分のうち、洗浄力又は拭き取り性の向上の点から、高級脂肪酸アルカノールアミド類又はそのアルキレンオキサイド付加物、アミンオキサイド類、アルキルグリコシド類、スルホベタイン類又はカルボベタイン類が好ましく、この中でも、特にアルキルグリコシド類を用いることが好ましい。アルキルグリコシド類は、組成物の安定性に寄与する上、起泡させて使用する場合に、起泡性、泡質を高め、更には拭き取り後の、拭き筋、拭き残り、及びくもりを生じないため、ガラスなどの透明性の高い硬質表面用に対して最も併用が好ましい界面活性剤である。以下アルキルグリコシドについて更に詳しく説明する。
【0041】
アルキルグリコシドとしては、前記一般式(9)中、xはその平均値が0〜5である。好ましいxの値は0〜2であり、特に好ましくは0である。一方、yは、その平均値が1より大きい場合、つまり2糖以上の糖鎖を親水性基とする一般式(9)で表わされる界面活性剤を含有する場合、糖鎖の結合様式は1−2、1−3、1−4、1−6結合、更にα−、β−ピラノシド結合又はフラノシド結合及びこれらの混合された結合様式を有する任意の混合物を含むことが可能である。また、一般式(9)中のyの平均値は1〜10、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜1.5であるが、最も好ましい平均値は1.1〜1.4である。平均値はG部分が単糖と二糖の化合物の混合したものにより構成されることが好ましい。yの測定法はプロトンNMR法によるものである。
【0042】
また、一般式(9)中のR31は炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基であるが、溶解性、起泡性及び洗浄性向上の点から、好ましいのは炭素数10〜14のアルキル基である。但し、炭素数10〜12のものが、アルキルグリコシド全体の少なくとも80%を占めるものを用いる。R32は炭素数2〜4のアルキレン基であるが、水溶性の点から好ましい炭素数は2〜3である。更にGは単糖若しくは二糖以上の原料によってその構造が決定されるが、このGの原料としては、単糖ではグルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース等及びこれらの混合物等が、二糖以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、好ましい単糖類原料は、それらの入手容易性及びコストの点から、グルコース及びフルクトースであり、二糖以上ではマルトース及びスクロースである。この中でも、特に入手容易性の点からグルコースが好ましい。
【0043】
<硬質表面用洗浄剤組成物>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は前記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を配合してなり、洗浄力、特に変性した油汚れに対する洗浄力、拭き取り性及び仕上り性に優れる。(A)成分は組成物全量中に0.05〜3質量%(以下、単に「%」で示すこともある)、更には、0.1〜3%配合するのが好ましく、(B)成分は組成物全量中に1〜15%、更には1〜10%配合するのが好ましく、(C)成分は組成物全量中に0.01〜10%、更には0.05〜5%配合するのが好ましい。洗浄力を得るために(A)成分の配合量は0.01%以上であることが好ましく、拭き取り性と仕上がり性の点から3%以下が好ましい。(B)成分の配合量は、洗浄力と組成物の安定性の点から1%以上であることが好ましく、仕上がり性、拭き取り性などの点から15%以下が好ましい。更に(C)成分の配合量は、洗浄力の点で0.01%以上であることが好ましく、十分な効果を得るためには10%で十分であり、また、これ以下であれば匂いの問題や拭き取り性も良好である。
【0044】
本発明は(A)成分を主たる界面活性剤として用いる点に特徴がある。すなわち本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(A)成分以外の界面活性剤を(D)成分とするとき、(A)成分に対する(D)成分の割合(D)成分/(A)成分が質量比として、1未満であり、特に拭き取り性、拭き残り性の観点から、(D)成分/(A)成分の質量比は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.1〜0.5である。本発明の洗浄剤組成物中の(D)成分の含有量は、この質量比を満たした上で0〜2.5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%である。(D)成分のうち、前記のアルキルグリコシドは組成物の拭き残りを低減できることから好ましい界面活性剤である。本発明の洗浄剤組成物中のアルキルグリコシドの含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、最も好ましくは0.03質量%以上であり、2.5質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましく、更には1質量%以下、特には0.5質量%以下であることが望ましい。
【0045】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、上記成分の他、更に必要に応じて、パラトルエンスルホン酸などのハイドロトロープ剤、ポリアクリル酸などの分散剤、クエン酸やEDTAなどのキレート剤、香料、染料、顔料、防腐剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。またpH調整により多少の無機電解質を含有する場合がある。本発明では、これら任意成分由来の不揮発性分、特には拭き残り性に影響を与える有機酸塩系のハイドロトロープ剤及びキレート剤の含有量は、拭き取り後の仕上がり性の点から1.0%以下、好ましくは0.7%以下であり、特に窓ガラスなどの透明性の高いガラス用洗浄剤として用いる場合は、0.5%以下であることが望ましい。
【0046】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は上記(A)成分、(B)成分、(C)成分に必要に応じて(D)成分と任意成分を含有する。(A)〜(C)成分は水に溶解して用いる。本発明の組成物は、スプレーして用いられることが好ましく、スプレー方法としてエアゾールとする場合は、噴射剤に分散させる必要があり、(D)成分の選定において噴射剤との相溶性を考える必要がある。本発明ではトリガー式スプレーヤーに用いることが好ましく、従って、通常、組成物の残部は水である。使用される水は微量に存在する金属などの成分を除いたイオン交換水などを使用することが好ましい。水の含有量は好ましくは85〜98質量%、特に90〜98質量%である。
【0047】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物のpHは20℃において、9〜12、好ましくは10.5〜11.5である。pH調整剤としては、酸剤として硫酸、塩酸などが上げられるが、クエン酸、コハク酸などの有機酸を用いてもよい。またアルカリ剤としてはアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、(C)成分のアミン化合物をアルカリ剤として使用することができる。
【0048】
また、本発明の硬質表面用組成物の粘度は、特にスプレー用途に供される場合、1〜10mPa・sが好ましい。この粘度はB型粘度計(TOIMEC社製)を用い、ローターNo.1、20℃の条件で60rpm、1分間攪拌後の粘度を測定したものである。
【0049】
<硬質表面用スプレー容器入り洗浄剤>
本発明の洗浄剤組成物は、スプレー容器に充填してスプレー容器入り洗浄剤とすることができる。スプレー容器としては、泡形成機構を有するエアゾールやトリガー式スプレーヤーを具備する容器が挙げられる。本発明ではトリガー式スプレーヤーを具備した容器に充填することが好ましい。トリガー式スプレーヤーとしては実公平6−34858号公報、特公昭63−2668号公報に記載のものを用いることができる。本発明では特に(i)泡形成機構を有し、(ii)吐出口の吐出面積が0.3〜0.7mm2であり、(iii)1回のストロークで0.3〜2.0gの液体漂白剤組成物を吐出するトリガー式スプレーヤーが好適である。
【0050】
泡形成機構としては、好ましくはスピンエレメント及び直径4〜8mmの円形状の空間部分にじゃま板を数個設置された液体通過板を有するものが好適である。ここでスピンエレメントとは、スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構であり、その詳細な構造としては特開平8−332422号公報や特開平8−108102号公報の図4(b)、特開2002−68265号公報の図1などを参考にすることができる。
【0051】
泡形成機構のもう一つの部材である液体通過板は、直径5〜7mmの円形状の空間部分にじゃま板を好ましくは3〜8個設置されたものであり、通過する板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8〜1.2mm、長さ2〜4mmの長方形状のじゃま板が好適である。また、じゃま板を除いた空間部分に対するじゃま板の占める面積は30〜90面積%、好ましくは40〜80面積%、より好ましくは40〜70面積%が好適であり、このような液体通過板を設置することで、垂直表面への泡の付着滞留性が良好になる。
【0052】
本発明に用いるスプレー容器入り洗浄剤の容器は、一般に使用されている容器を用いることができる。例えば、ポリエチレンを原料として得られるものであり、ブロー成型などによって製造することができる。容器の肉厚は底面と側面と異なってもよく、0.05〜2.0mmである。容器を不透明化することによって、内容物の安定性が高まるが、不透明化のために容器に酸化チタン等を含有するものが用いられる。容器に充填される液体洗浄剤組成物の量は、取り扱い上、200〜700mlが望ましい。また液の充填は、常識的な空隙を残して行われる。
【0053】
本発明のスプレー容器入り洗浄剤は、前記トリガー式スプレーヤーを用いて硬質表面のである住居製品や窓ガラスなどの垂直表面或いは傾斜した表面に泡状に付着させるのに優れている。付着後はそのまま濯いでもよいが、タオルなどで拭き取ることで優れた洗浄力を得ることができる。また洗浄方法に関し、拭き取り前にスポンジなどの吸水性可撓性材料でこすり洗いしても差し支えない。
【実施例】
【0054】
表1に示される液体洗浄剤組成物を調製し、以下の評価を行った。拭き取り性と拭き残り性評価については、液体洗浄剤はトリガー式スプレーヤー容器としてガラスマジックリン(花王株式会社製)をイオン交換水にて十分洗浄し、乾燥させたものに充填して行った。結果を表1に併せて示した。
【0055】
〔洗浄力評価〕
モデル汚れとして、10cm×10cmのガラスプレートの表面にタバコの煙を接触させることによってヤニ汚れを付着させたガラスプレートを用意した。表1の洗浄剤組成物10mlを30mlビーカーに入れ、ヤニプレートの(短辺)の一辺をもって吊り下げた状態でビーカー内の洗浄剤組成物に静かに浸した。浸漬面積は4cm2である。浸漬されたヤニプレートは20℃、10秒間後放置され、静かに取り出し、取り出されたガラスプレートの表面からヤニが落ちていることを確認した。ヤニの落ち方は不規則であるため、目視により浸漬部に対するヤニが落ちた面積の程度を求め、以下の基準で判断した。
◎:ヤニが落ちた面積率が100%
○:ヤニが落ちた面積率が80%以上100%未満
△:ヤニが落ちた面積率が50以上80%未満
×:ヤニが落ちた面積率が50%未満
【0056】
〔拭き取り性の評価〕
実際の家庭の窓ガラスに、各洗浄液をガラスマジックリンの容器に充填し、スプレーヤーで3ccスプレーし、乾いたタオルで拭き取った。硬質表面用洗浄剤組成物の組成によっては、拭き取りの際に泡立ち、それが拭き筋となることがある。拭き筋が消失するまで拭き取りを行う必要がある。本発明では、泡が完全に消えるまでのふき取り回数を調べ、以下の基準で拭き取り性を評価した。
◎:2回以下のふき取りで消えた。
○:3回のふき取りで消えた。
△:4回のふき取りで消えた。
×:5回以上のふき取りで消えた。
【0057】
〔拭き残り性(仕上り性)の評価〕
拭き取り性の評価を行なった後、ガラスを20℃で120分放置することで十分乾燥させた。乾燥後、ガラスから目を10cmの距離から見ることで、拭き残り性を、次の如く視覚によって拭き残り跡の有無で評価し、以下の基準で評価した。なお、ガラスの拭き残り跡は、洗浄後のガラスを見る角度を変えてみることで判断しやすくなる。具体的には、見た目に透明性が遮られている場合や、明らかに基剤が残存しているような場合がある。そのため、本評価においても、複数の異なる角度からガラスを観察した。
○:拭き残り跡がない。
△:ところどころ拭き残り跡が確認できる。
×:拭き残り跡がわかる。
【0058】
【表1】

【0059】
(注)表1における化合物の詳細は次の通りである。なお、pHは配合成分のモノエタノールアミン及びクエン酸の他に、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整した。
・アルケニルコハク酸塩(1):アルケニル基の炭素数が12のアルケニルコハク酸ジカリウム塩
・アルケニルコハク酸塩(2):アルケニル基の炭素数が12のアルケニルコハク酸ジナトリウム塩
・アルケニルコハク酸塩(3):アルケニル基の炭素数が14のアルケニルコハク酸ジカリウム塩
・AG(1):アルキル基の炭素数12、糖残基は単糖体と二糖体の混合物であって糖平均縮合度1.3のアルキルグルコシド
・AG(2):アルキル基の炭素数10、糖残基は単糖体と二糖体の混合物であって糖平均縮合度1.3のアルキルグルコシド
【0060】
本発明の液体洗浄剤組成物の配合例を表2に例示する。なお、pHはクエン酸及び塩酸により調整した。
【0061】
【表2】

【0062】
(注)表2における化合物の詳細は次の通りである。表2中の記号が同じものは表1で用いたものと同じものである。
・脂肪酸ジエタノールアミド:ラウリル酸ジエタノールアミド
・アミンオキサイド:ドデシルジメチルアミンオキサイド
・スルホベタイン:N,N,N-ラウリルジメチル-N-2-ヒドロキシ-3-スルホプロピルアンモニウム
・アルキル硫酸エステル塩:ドデシル硫酸エステルナトリウム塩

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A−i)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が12のアルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩、及び(A−ii)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が14のアルキルもしくはアルケニルコハク酸又はその塩、(B)水溶性有機溶剤、(C)アミン化合物、並びに水を含有し、(A)成分に対する、(A)成分以外の界面活性剤[以下(D)成分という]に対する質量比(D)/(A)が1未満である、硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)成分を0.05〜3質量%、(B)成分を1〜15質量%、及び(C)成分を0.01〜10質量%、及び(D)成分を0〜2.5質量%の濃度で含有する請求項1記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A−i)成分と(A−ii)成分の質量比が、(A−i)/(A−ii)で0.4〜2.3である請求項1又は2記載の硬質表面用洗浄剤組成物
【請求項4】
(B)成分として、下記(B−i)及び(B−ii)からそれぞれ選ばれる一種以上を含有し、(B−i)と(B−ii)の質量比が(B−i)/(B−ii)で0.05〜1である請求項1〜3の何れか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
(B−i)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アミルモノグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル
(B−ii)エタノール、プロパノール、イソプロパノール
【請求項5】
(D)成分として、アルキルグリコシドを0.005質量%以上、2.5質量%以下含有する請求項1〜4の何れか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−44993(P2008−44993A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219798(P2006−219798)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】