説明

碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法

【課題】簡易な方法で接触子の表面の状態を測定することができる碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法を提供する。
【解決手段】 碍子型ガス絶縁開閉装置10の電気的接続部材の表面検査方法では、可動接触子23の先端から突出部材26を突出させ、突出部材26の先端と、固定側接触部25の先端との間を所定の距離とし、突出部材26と固定側接触部25との間に電圧を印加して、突出部材26の先端部から部分放電50を生じさせる。部分放電50により発生したX線の、可動接触子23の先端部および固定側接触部25の先端部からの反射波を、容器21の外部に設けたX線検知部40で検知する。検知結果に基づいて、可動接触子23の先端部および固定側接触部25の先端部の表面の状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、碍子型ガス絶縁開閉装置における、可動接触子や固定接触部などの電気的接続部材の表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置は、高電圧回路のある区画において事故が発生した場合に、事故が発生した高電圧回路を健全な高電圧回路から切り離すための遮断機能や、再度高電圧回路を接続する接続機能などを備えている。これらの機能を実現するため、ガス絶縁開閉装置の内部に、例えば、可動接触子および固定接触部を備え、これらの接触子を離脱または接触させることで上記した機能を実現させている。
【0003】
可動接触子および固定接触部を離脱または接触させる際、双方の接触子の接触部が摺動するため、接触部の表面は徐々に磨耗して粗くなる。接触部の表面が粗くなると、接触部間に印加される高電圧に対して絶縁不良を起こし、絶縁破壊が発生する可能性が高くなる。
【0004】
このような接触部の経年磨耗に起因する絶縁破壊を回避するため、定期的に接触子の表面の保守点検が行われている。ガス絶縁開閉装置における接触子の表面の従来の検査方法として、ガス絶縁開閉装置の運転を停止し、ガス絶縁開閉装置を開放して、内部の接触子の表面を目視して点検する方法がある。また、ガス絶縁開閉装置における接触子の表面の従来の検査方法として、X線照射装置から出射されたX線を外部からガス絶縁開閉装置に照射し、透過したX線を感知することで接触子の表面の状態を測定する方法などがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−77203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の目視による点検する方法では、ガス絶縁開閉装置に充填されている、例えばSFガスなどの絶縁ガスを回収し、ガス絶縁開閉装置を開放して接触子の表面を点検した後、装置内を真空状態として再度絶縁ガスを充填しなければならず、多くの労力や時間を費やしていた。
【0007】
また、X線照射装置から出射されたX線を照射して接触子の表面の状態を測定する方法では、X線照射装置などを別途備える必要があり、検査コストが増加するなどの問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な方法で接触子の表面の状態を測定することができる碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態の碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法において、絶縁ガスが封入され、電気絶縁材料で構成された容器と、前記容器内に収容された固定接触部と、当該固定接触部に向け直線的に進退可能に保持された可動接触子とを備え、前記可動接触子を進退させて前記可動接触子と前記固定接触部とを接続または離脱させる。また、本発明の実施形態の碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法は、前記可動接触子の前記固定接触部側の先端部に、外部に突出可能に設けられた針状電極を突出する工程と、前記針状電極と前記固定接触部との間隔が所定の放電間隔となるよう前記可動接触子と前記固定接触部間の間隔を調整する工程と、前記針状電極と前記固定接触部間に電圧を印加して前記針状電極の先端部から部分放電させてX線を発生させる工程と、前記可動接触子の先端部および前記固定接触部からの前記X線の反射波を、前記容器の外部に設けたX線検知部で検知する工程とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る一実施の形態の、電気的接続部材の表面検査方法が実施される碍子型ガス絶縁開閉装置の構成を示す側面図である。
【図2】図1に示された碍子型ガス絶縁開閉装置の遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
【図3】本発明に係る一実施の形態の電気的接続部材の表面検査方法を説明するための、遮断器の軸方向断面図である。
【図4】表面が摩耗していない状態における可動接触子や固定側接触部を使用して表面検査を行ったときの、X線検知部の感光面を示す図である。
【図5】表面が摩耗している状態における可動接触子や固定側接触部を使用して表面検査を行ったときの、X線検知部の感光面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る一実施の形態の、電気的接続部材の表面検査方法が実施される碍子型ガス絶縁開閉装置10の構成を示す側面図である。図2は、図1に示された碍子型ガス絶縁開閉装置10の遮断器20の構成を示す軸方向断面図である。
【0013】
図1に示すように、碍子型ガス絶縁開閉装置10において、遮断器20は、その容器21の軸線が据付面に対して垂直になるように設置されている。この遮断器20の上部口出し部22aには変流器30が設けられ、断路器31、接地開閉器32を経て、ケーブルヘッド33に接続されている。また、遮断器20の下部口出し部22bには、母線一体形断路器34を介して母線導体と接続されている。
【0014】
遮断器20の容器21は、例えば、絶縁樹脂やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの電気絶縁材料で構成され、容器21内には、例えば、SFガスなどの絶縁ガスが封入されている。また、この容器21内には、図2に示すように、可動接触子23、可動側接触部24および固定側接触部25が設けられ、遮断機構を構成している。
【0015】
可動側接触部24は、固定側接触部25と対向する位置で、かつそれぞれの中心軸がほぼ同一軸となるように設置されている。可動側接触部24内には、接点端子24aに側面が接触して摺動できるように、可動接触子23が設けられている。この可動接触子23は、図示しない駆動機構により、可動側接触部24内を進退可能に設けられ、可動側接触部24と固定側接触部25との間を電気的に開閉する。
【0016】
可動接触子23の一端(固定側接触部25と対向する側)には、図2に示すように、可動接触子23の先端から外部に突出可能に、タングステン、または銅とタングステンの合金などの耐熱性の導電材料からなる針状の突出部材26が備えられている。この突出部材26は、針状電極として機能する。図2には、突出部材26が外部に突出された状態が示され、突出部材26が可動接触子23の内部に収容された状態が破線で示されている。この突出部材26は、図示しない駆動機構により、可動接触子23の一端から進退される。
【0017】
次に、本発明に係る一実施の形態の電気的接続部材の表面検査方法について説明する。ここでは、上記した碍子型ガス絶縁開閉装置10の遮断器20における、電気的接続部材である可動接触子23および固定側接触部25の表面検査方法を例示して説明する。なお、本発明に係る一実施の形態の電気的接続部材の表面検査方法は、遮断器20における電気的接続部材に限らず、例えば、断路器31や母線一体形断路器34などの電気的接続部材にも適用することができる。
【0018】
図3は、本発明に係る一実施の形態の電気的接続部材の表面検査方法を説明するための、遮断器20の軸方向断面図である。図4は、表面が摩耗していない状態における可動接触子23や固定側接触部25を使用して表面検査を行ったときの、X線検知部40の感光面を示す図である。図5は、表面が摩耗している状態における可動接触子23や固定側接触部25を使用して表面検査を行ったときの、X線検知部40の感光面を示す図である。
【0019】
図3に示すように、X線検知部40は、容器21の外周に沿って環状に配置されている。X線検知部40の、遮断器20の軸方向における幅は、可動接触子23の先端部および固定側接触部25の先端部で反射したX線を漏れなく検知できるような幅に設定されている。ここでは、X線検知部として、X線感光紙を使用した一例を示している。
【0020】
まず、図示しない駆動機構を作動さることにより、可動接触子23の一端側の先端から突出部材26を外部に突出させる。続いて、図示しない駆動機構を作動さることにより、突出部材26の先端と、固定側接触部25の先端(可動接触子23側の端部)との間が所定の距離Lとなるように可動接触子23を移動する。
【0021】
ここで、距離Lは、遮断器20の出荷前の状態、すなわち、可動接触子23や固定側接触部25の表面が摩耗していない状態において、品質評価試験として行われる耐電圧試験(IEC62271−100またはJEC−2300)の際に設定される、可動接触子23の先端と固定側接触部25の先端との距離と等しくなるように設定される。なお、耐電圧試験の際に設定される上記距離は、碍子型ガス絶縁開閉装置10の仕様によって異なる。
【0022】
続いて、可動接触子23(突出部材26)と固定側接触部25との間に所定の電圧を印加して、突出部材の先端部から部分放電50を生じさせ、部分放電により発生したX線の、可動接触子23の先端部および固定側接触部25の先端部からの反射波を、X線検知部40で検知する。
【0023】
ここで、可動接触子23と固定側接触部25との間に印加される電圧は、上記した耐電圧試験の際に印加される電圧を1とした場合、1〜2の範囲の電圧である。また、印加電圧として、例えば周波数が60Hzまたは50Hzの交流電圧が使用され、固定側接触部25側が接地側となる。碍子型ガス絶縁開閉装置10の仕様に基づいて、この範囲内で印加電圧を調整して部分放電を生じさせる。なお、ここで発生するのは部分放電であるため、絶縁破壊には至らない。
【0024】
可動接触子23の先端部および固定側接触部25の先端部で反射したX線51は、図3に示すように、容器21を透過し、X線検知部40に入射する。そして、X線検知部40は、入射したX線51により感光される。
【0025】
ここで、表面が摩耗していない状態における可動接触子23や固定側接触部25を使用して表面検査を行ったときには、図4に示すように、全面が斑なく感光された状態となる。一方、表面が摩耗し、表面に凹凸を有する状態における可動接触子23や固定側接触部25を使用して表面検査を行ったときには、表面の凹凸によりX線が散乱し、X線検知部40の所定の位置に入射しない。そのため、感光面には、図5に示すように、X線によって感光されないため、または感光の度合いが低いため、斑60となる部分が生じる。この斑60の数や、斑60の総面積などに基づいて、可動接触子23や固定側接触部25の表面の摩耗状態を評価する。例えば、斑60の数が所定数以上や、斑60の総面積が所定値以上の場合には、可動接触子23や固定側接触部25の表面の摩耗が進行していると判断し、可動接触子23や固定側接触部25の補修または交換を行う。なお、感光面の情報を、例えば画像処理装置などで読み込み、斑60の総面積などを画像処理によって求めてもよい。
【0026】
また、上記したように、X線検知部40は、容器21の外周に沿って環状に配置されているため、可動接触子23や固定側接触部25の表面全体の状態を同時に測定することができる。なお、X線検知部40は、例えば、容器21の外周の半周または1/4周に相当する、容器21の外周の所定の部分のみに配置してもよい。そして、これらの所定の部分から得られた結果に基づいて、可動接触子23や固定側接触部25の表面の状態を評価してもよい。
【0027】
上記したように、一実施の形態の、碍子型ガス絶縁開閉装置10の電気的接続部材の表面検査方法によれば、X線照射装置などを用いずに、碍子型ガス絶縁開閉装置10の構成を利用してX線を出射することができる。そのため、低い検査コストで、電気的接続部材の表面を検査することができる。また、碍子型ガス絶縁開閉装置10を開放して検査する必要がないため、容易に検査を行うことができる。
【0028】
また、可動接触子23の先端から突出可能な突出部材26を備え、表面検査の際、突出部材26を外部に突出させて、可動接触子23(突出部材26)と固定側接触部25との間に所定の電圧を印加することで、突出部材26の先端から安定した部分放電50を確実に生じさせることができる。
【0029】
また、上記したような簡易な表面検査方法によって、可動接触子23や固定側接触部25の表面の状態を的確に把握し、補修または交換の必要を判断することができる。
【0030】
上記した実施の形態では、X線検知部40として、X線感光紙を使用した一例を示したが、X線検知部40の構成は、これに限られるものではない。
【0031】
X線検知部40は、X線感光紙で構成される代わりに、X線を検出して画像データとするX線検出装置と、X線検出装置からの画像データに基づいて画像処理を行う画像処理装置とで構成されてもよい。X線検出装置は、上記したように、容器21の外周に沿って環状に配置されても、容器21の外周の半周または1/4周に相当する、容器21の外周の所定の部分のみに配置されてもよい。
【0032】
ここで、X線検出装置は、例えば、X線が入射すると発光するシンチレータ(蛍光膜)と、シンチレータの光をデジタル画像データに変換するCCDカメラとを備え、画像データを収得する。画像処理装置は、この画像データを入力し、画像処理および表示を行うとともに、斑60の総面積などを算出する。なお、X線検出装置として、X線イメージインテンシファイアなどを用いてもよい。
【0033】
また、表面が摩耗していない状態における可動接触子23や固定側接触部25を使用して表面検査を行ったときの画像データを予め測定し、この画像データと、検査対象となっている可動接触子23や固定側接触部25の表面検査を行ったときの画像データとを比較して、斑60の総面積などの増加率などを算出して評価することもできる。さらに、測定した画像データを記憶手段に記憶するようにしてもよい。これによって、同一の、可動接触子23や固定側接触部25について過去に測定した画像データとの比較が可能となり、表面の劣化や摩耗の進行度合いなどを評価することもできる。
【0034】
このX線検知部40によれば、X線検知部40としてX線感光紙を使用した場合の効果に加え、可動接触子23や固定側接触部25の表面の画像データを自動的に得ることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
10…碍子型ガス絶縁開閉装置、20…遮断器、21…容器、22a…上部口出し部、22b…下部口出し部、23…可動接触子、24…可動側接触部、24a…接点端子、25…固定側接触部、26…突出部材、30…変流器、31…断路器、32…接地開閉器、33…ケーブルヘッド、34…母線一体形断路器、40…X線検知部、50…部分放電、51…X線、60…斑。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが封入され、電気絶縁材料で構成された容器と、前記容器内に収容された固定接触部と、当該固定接触部に向け直線的に進退可能に保持された可動接触子とを備え、前記可動接触子を進退させて前記可動接触子と前記固定接触部とを接続または離脱させる碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法であって、
前記可動接触子の前記固定接触部側の先端部に、外部に突出可能に設けられた針状電極を突出する工程と、
前記針状電極と前記固定接触部との間隔が所定の放電間隔となるよう前記可動接触子と前記固定接触部間の間隔を調整する工程と、
前記針状電極と前記固定接触部間に電圧を印加して前記針状電極の先端部から部分放電させてX線を発生させる工程と、
前記可動接触子の先端部および前記固定接触部からの前記X線の反射波を、前記容器の外部に設けたX線検知部で検知する工程と
を具備することを特徴とする碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法。
【請求項2】
前記X線検知部が、前記容器の外周に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法。
【請求項3】
前記X線検知部が、X線感光紙を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法。
【請求項4】
前記X線検知部が、前記X線を検出して画像データとするX線検出装置で構成され、前記X線検出装置からの画像データに基づいて画像処理装置において画像処理を行う工程をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載の碍子型ガス絶縁開閉装置の電気的接続部材の表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93123(P2012−93123A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238726(P2010−238726)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】