説明

磁力応用殺菌装置

【課題】本発明では、既存の設備に容易に設置することが可能な磁力応用殺菌装置を提供する。
【解決手段】
複数の磁石を2つの領域に分けて支持する支持部と、この領域間の距離を調整することが可能な調整部を設ける。そして、磁石が設置されている領域間に距離を調整部で調整し、水や油が流れる管に設置することにより、当該領域間を流れる水や油を殺菌する。すなわち、磁石によって形成されている磁界の間を水や油を通過させることにより、当該水や油に過酸化水素を発生させて殺菌を行うと共に、過酸化水素を含有する水や油の生成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力応用殺菌装置に関し、特に、水や油などの殺菌を行うことが可能な磁力応用殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理の方法として、過酸化水素を水に直接加えて殺菌する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、鉱石や炭、セラミックスなどに水を衝突させて水の浄化や殺菌を行う方法もあり、この方法では、次のような原理で水の浄化や殺菌を行っている。
【0004】
まず、水が鉱石などに衝突すると、鉱石に含まれているNaやK、Ca、Mgなどの金属(M)がイオン化して電子(e-)を発生させる。
M → M+ + e- (M:Na、Kなど)
M → M++ + 2e- (M:Ca、Mgなど)
【0005】
一方、水中には、酸素が溶け込んでおり(溶存酸素)、電子(e-)と反応していわゆる活性酸素であるスーパーオキサイド・アニオン(O2-)を生成する。
2 + e- → O2-
【0006】
水中では、通常、水の一部が解離して水素イオンが発生しており、この水素イオンとスーパーオキサイド・アニオンとが反応して、過酸化水素(H22)を生成し、この過酸化水素の酸化力を用いて水中の細菌やウイルスを殺菌する。
2O → H+ + OH-
2H+ + O2- → H22
【特許文献1】特開2004−66061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この方法では、殺菌を行う水を鉱石などに直接接触させる必要があり、既存の設備に容易に処理装置を取り付けることは困難であった。
【0008】
また、油など、水分の含まれている割合が少ないものでは、鉱石に直接接触させたとしても、十分に殺菌を行うことはできなかった。
【0009】
ところで、水や油には、Na、K、Ca、Mgなどの金属が含まれており、磁界を通過する際に電磁誘導により電子(e-)が発生する。
【0010】
そこで、本発明では、既存の設備に容易に設置することが可能な磁力応用殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁力応用殺菌装置では、複数の磁石と、前記磁石を支持する支持部と、前記支持部の幅を調整する調整部とを具備し、前記磁石は、複数の領域に配置され、該領域間で磁界を形成する。
【0012】
この構成では、磁石が設置されている領域間を水や油が通過することにより、当該水や油に過酸化水素が発生し、殺菌を行うことができる。
【0013】
そして、前記磁石は、2000ガウス以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る磁力応用殺菌装置では、水を流出する流出口又は流入口に設置する。
【0015】
ここで、前記流出口は、池に水を流出する流出口である。
【0016】
また、前記流入口は、池の水を取り込んで循環させるための流入口である

また、本発明に係る磁力応用殺菌装置では、油を循環供給する循環供給装置の流出口に設置する。
【0017】
また、本発明に係る磁力応用殺菌装置では、油を循環供給するための油溜に設置する。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、水や油などに含まれている細菌やウイルスの殺菌を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る磁力応用殺菌装置を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る磁力応用殺菌装置の構成の一例を示す概略構成図である。なお、図1(a)は、磁力応用殺菌装置の前面図であり、図1(b)は、図1(a)のAA断面図である。
【0021】
同図に示すように、磁力応用殺菌装置10は、磁石11と、磁石11を支持する支持部12と、支持部12の幅を調整して磁力応用殺菌装置10を水道管や排水管など設置する調節部13とで構成されている。
【0022】
磁石11は、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石など、任意の磁石を用いることが可能であり、好ましくは、熱にさらされることよって減少した磁力の回復が可能な温度範囲である可逆範囲が管を流れる水や油などの温度よりも高い磁石を用いる。また、例えば、鉄・ネオジウム磁石など、磁束密度の高い磁石が好ましく、さらに好ましくは、2000ガウス以上の磁石を用いる。
【0023】
そして、磁石は、相対する2つの領域(14、15)に配置され、この領域間で磁界を形成している。
【0024】
図2に、磁力応用殺菌装置を水道管や排水管などの管20に設置した場合の一例を示す該略図である。なお、図2(a)は、管20に磁力応用殺菌装置10を取り付けた場合の側面図であり、図2(b)は、図2(a)のBB断面図である。
【0025】
同図では、上下方向に2個、管の長さ方向に3個の計6個づつの磁石を管を挟んで対称に設置しているが、磁石の数や配置は、このような構成に限られるものではなく、管を挟んで対象に設置するのであれば、任意の数の磁石を設置することが可能であり、好ましくは、管の長さ方向に沿って磁石を長く配置する。
【0026】
また、磁力応力殺菌装置は、水や油などが流入する流入口(吸込口)や、流出する流出口、若しくはこれらの口の付近に設置することが好ましいが、流量を測定する測定器の付近など、水中の細菌やウイルスに対して影響を与えることが可能な任意の場所に設置することも可能であり、この際、好ましくは、非磁性体の部分に設置する。
【0027】
さらには、水や油が流れる経路の複数箇所に設置することが好ましく、管の細い部分に設置することが望ましい。
【0028】
なお、飲料水など、清潔に管理することが特に必要なものであれば、図2に示すように管外に設置することが望ましいが、足を洗浄して白癬菌を殺菌する場合など、清潔に管理することが特に必要ではない場合は、水流に磁石を直接接触させることが望ましい。この構成では、磁石と水との間の距離が短くなり、また、管などが磁石の間に存在しないため、磁石効率の損失を抑えることが可能であり、効率良く過酸化水素を生成することができる。
【0029】
上記構成を用いて、本発明に係る磁力応用殺菌装置では、磁力応用殺菌装置の磁石の間に水や油を通過させることにより、当該水中や油中に存在する細菌やウイルスなどの殺菌を行う。
【0030】
本発明に係る磁力応用殺菌装置では、次のような原理で水や油の浄化や殺菌を行っている。
【0031】
まず、水や油が管を流れ、磁力応用殺菌装置の磁石によって形成されている磁界を通過すると、水や油に含まれているNaやK、Ca、Mgなどの金属(M)が磁界を通過するため、電磁誘導によって電子(e-)が発生する。
M → M+ + e- (M:Na、Kなど)
M → M++ + 2e- (M:Ca、Mgなど)
【0032】
そして、水中や油中に溶け込んでいる溶存酸素と電子(e-)とが反応してスーパーオキサイド・アニオン(O2-)を生成する。
2 + e- → O2-
【0033】
また、スーパーオキサイド・アニオンと、水中や油中に含まれる水分の一部が解離して発生している水素イオンとが反応して、過酸化水素(H22)が生成する。
2O → H+ + OH-
2H+ + O2- → H22
【0034】
この過酸化水素は、強力な酸化力を有するため、水中や油中の細菌やウイルスを殺菌する。なお、過酸化水素は、水中の有機物を酸化分解するため、水に含まれている汚れ(有機物)を分解することもできる。
【実施例1】
【0035】
本実施例では、水道の蛇口に磁力応用殺菌装置を設置する。
【0036】
この構成では、磁力応用殺菌装置が設置された管の部分を水が通過することにより、水中に過酸化水素が発生し、この過酸化水素を含む水が蛇口(流出口)から流出する。
【0037】
このため、本実施例では、水を殺菌することが可能であり、さらに、蛇口から流出した水で野菜などの食品を洗うことにより、大腸菌などを殺菌することが出きるため、腸管出血性大腸菌O157などによる食中毒を防止することができる。
【0038】
また、白癬菌などの細菌を殺菌することができるため、足などを洗うことにより、いわゆる水虫を防止をすることができる。
【実施例2】
【0039】
本実施例では、鯉などの養殖池に水の供給や循環を行う装置の流出口に磁力応用殺菌装置を設置する。
【0040】
この構成では、磁力応用殺菌装置が設置された部分を水が通過することにより、水中に過酸化水素が発生し、この過酸化水素を含む水が流出口から流出する。
【0041】
このため、本実施例では、水を殺菌することが可能なため、水を循環させる際、殺菌された水を池に供給することが可能であり、さらに、池に供給された水によって、池の水に含まれる細菌やウイルスなどを殺菌することができるため、コイヘルペスウイルスを除去し、いわゆる鯉ヘルペスの発生を防止することができる。
【0042】
なお、本実施例では、流出口に磁力応用殺菌装置を設置しているが、吸込口などの流入口に設置しても良い。
【実施例3】
【0043】
本実施例では、食用油や工業用油、砥石油などを機器に循環供給する循環供給装置の流出口に磁力応用殺菌装置を設置する。
【0044】
この構成では、磁力応用殺菌装置が設置された部分を油が通過することにより、油中に過酸化水素が発生する。
【0045】
このため、本実施例では、油中に存在するバクテリアなどの殺菌を行うことが可能であり、バクテリアによる悪臭の発生抑制や除去を行うことができる。
【0046】
なお、本実施例では、循環供給装置の流出口に磁力応用殺菌装置を設置しているが、循環させる油を貯留する油溜に設置することも可能である。
【0047】
特に、機械油を循環させる場合などは、流出口付近にNC装置などが存在し、磁力応用殺菌装置を設置することができない場合があり、NC装置などから離れた油溜に設置することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る磁力応用殺菌装置の構成の一例を示す概略構成図
【図2】磁力応用殺菌装置を水道管や排水管などの管に設置した場合の一例を示す該略図
【符号の説明】
【0049】
10…磁力応用殺菌装置
11…磁石
12…支持部
13…調節部
14…第1の領域
15…第2の領域
20…管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石と、
前記磁石を支持する支持部と、
前記支持部の幅を調整する調整部と
を具備し、
前記磁石は、複数の領域に配置され、該領域間で磁界を形成する
ことを特徴とする磁力応用殺菌装置。
【請求項2】
前記磁石は、2000ガウス以上であることを特徴とする請求項1記載の磁力応用殺菌装置。
【請求項3】
水を流出する流出口又は流入口に設置することを特徴とする請求項1又は2記載の磁力応用殺菌装置。
【請求項4】
前記流出口は、池に水を流出するための流出口であることを特徴とする請求項3記載の磁力応用殺菌装置。
【請求項5】
前記流入口は、池の水を取り込んで循環させるための流入口であることを特徴とする請求項3記載の磁力応用殺菌装置。
【請求項6】
油を循環供給する循環供給装置の流出口に設置することを特徴とする請求項1又は2記載の磁力応用殺菌装置。
【請求項7】
油を循環供給するための油溜に設置することを特徴とする請求項1又は2記載の磁力応用殺菌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−35034(P2006−35034A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215863(P2004−215863)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(504283493)有限会社 日本ライフウォーター製作所 (1)
【Fターム(参考)】