説明

磁化性熱可塑性エラストマー

熱可塑性ポリマー(例えば熱可塑性エラストマー)、硬化エラストマー性ポリマー材料(例えば熱硬化エラストマー)、および磁化性(フェライト)粉末の混合物から磁化性材料が比較的高い充填率であることを特徴とする熱可塑性エラストマーが得られる。この混合磁化性熱可塑性エラストマー組成物は、その硬化は任意に行われるが、これから磁気部品成形での成形特性が良好であると同時に強靱な材料特性が得られる。この材料は、エンコーダでの磁気標的ホイールにとって有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序 論
本発明は磁化性熱可塑性エラストマー、およびかかるエラストマーを磁気速度センサの標的(エンコーダ)として使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
回転速度センサ、例えば自動車用に用いるものは、一般に磁界検知の原理に基づいている。速度センサの標的(ターゲット)、例えば磁気エンコーダは、一般に磁化性物質がこの磁化性物質の周囲に生じた交互する磁極を有する構造的支持環に結合されている。熱硬化エラストマーがフェライト粉末の担体として用いられており、自動車の車輪速度の用途で共通するプレス-嵌め条件下で必要とされる充分な機械的、動的、熱的挙動が得られている。しかし、熱硬化エラストマーに基づく磁気コンパウンドは、フェライトの充填レベルからコンパウンドが高密度となるため、生産規模でのゴム混合練り装置でのブレンドが困難である。これに関しては、生産バッチの容積は標準的ゴムコンパウンドバッチの2〜4倍の重さになり、それ故材料の取扱いが困難である。また、熱硬化エラストマーに基づく磁気コンパウンドの処理は、完全に硬化した物品の製造には比較的高価な装置、かなりの時間、かなりの労力を必要とする。
【0003】
熱可塑性エラストマーは、エンコーダ用磁化性コンパウンドでの熱硬化ゴムの可能性のある代替物であるが、耐久性に関しての材料特性からそれの可能性のある使用性が限定されている。これに関しては、市販の熱可塑性エラストマーは、磁化性フェライトを充填したとき、極度の熱条件下ではかなりの伸び損失があり、従って例えば自動車回転速度センサの如き用途では耐久性が損われる。充填率約50%でストロンチウムフェライトを含有する熱可塑性エラストマーに基づく磁気エンコーダは、ある条件下では受け入れられる程度に作動するが、かかるエンコーダは一般にこのタイプの用途での広範囲の使用するとき、特に金属粒子充填の熱硬化樹脂に基づくエンコーダと比べると脆すぎる。例えば、自動車で使用するエンコーダは、操作温度範囲が-40℃〜125℃になることがある。磁気速度センサ標的に有用な高度の磁化性コンパウンドを得るには、このコンパウンド中のフェライトの容積充填率は25%を超えることが好ましい。これらの充填率の磁気材料を製造するために、磁気フェライト用担体としてエンジニアリング熱可塑性樹脂を使用する試みは、エンジニアリング熱可塑性樹脂が極めて脆く、また取扱いが難かしいという点では失敗であった。更に、エンジニアリング熱可塑性樹脂は、磁気エンコーダ用途で充分な静的、動的、熱的耐久性を示さない。熱可塑性エラストマーに基づく磁気コンパウンドの使用上でのもう一つの重要な点は、熱的条件による材料の膨張と収縮で応力割れを生じ、特に磁気コンパウンドを熱膨張係数の異なる支持部材と組合せたときに問題がある。かかる組合せの相手方の構造材料には、例えばステンレス鋼、または焼結鉄が含まれる。従って、高温下で、且つ磁気エンコーダに要求される他の条件下で何週間も連続操作に耐えることができる高フェライト粉末含有率のエンジニアリング熱可塑性樹脂はこれまで利用することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、磁気エンコーダの用途で所望の性質を維持しながら、磁気エンコーダに容易に製作できる磁化性材料を得ることが望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
総 括
本発明は、熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、および磁化性粉末の混合物としての磁化性熱可塑性エラストマー組成物を提供するものである。
【0006】
本発明の一観点では、熱可塑性ポリマーが熱可塑性エラストマーであり、エラストマー性ポリマーが熱硬化エラストマーである。
本発明の一実施態様では、混合物は第1の相と第2の相を有し、
(a)第1の相は熱可塑性ポリマー材料から成り、
(b)第2の相は硬化エラストマー性ポリマー材料から成り、
(c)磁化性粉末はこの第1の相中と第2の相中に分散しているものである。
【0007】
また、本発明は
(a)隣接磁界の変化の検出用の磁気センサと
(b)この磁気センサに隣接した表面を有し、この磁気センサに対して可動性である標的 ホイールとから成り、この標的ホイールは熱可塑性ポリマー(例えば熱可塑性エラス トマー)、硬化エラストマー性ポリマー材料(例えば熱硬化エラストマー)および磁化 性粉末から作られており、更にこの標的ホイールは磁化されて表面に沿って交互する 磁極性を発生させ、操作中はこの磁界は変化する
エンコーダを提供するものである。
【0008】
一実施態様では、本発明は熱可塑性ポリマー(例えば熱可塑性エラストマー)、硬化エラストマー性ポリマー材料(例えば熱硬化エラストマー)および磁化性粉末の混合物から作られた一般的に円板状の部材から成る、エンコーダ用の標的ホイールを提供するものである。
【0009】
また、本発明は熱可塑性ポリマー(例えば熱可塑性エラストマー)、硬化エラストマー性ポリマー材料(例えば熱硬化エラストマー)および磁化性粉末を混合することで磁化性熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法を提供するものである。一実施態様では、本発明は、エラストマー性ポリマー材料を磁化性エラストマー材料中で動的加硫することから成る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁化性熱可塑性エラストマー組成物と方法は技術的に公知の組成物と方法に比べて、車輌エンコーダ用途で必要とされる条件範囲内で、熱硬化エラストマーに基づく磁気コンパウンドの機械的および耐久性での利点と、エンジニアリング熱可塑性樹脂の加工、製造上の利点とを含んだ一つ以上の利益が得られる。これ以外の用途分野は、以下の詳細な説明から明らかとなる。以下の詳細な説明と特定の実施例は本発明の実施態様を示すものであるが、単に例示を目的とするものであって、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
説 明
以下の定義と非限定的ガイドラインは、ここに述べられた本発明の説明を検討する際に考慮されたい。
【0012】
ここで用いた見出し(例えば「序論」、「総括」)は、本発明の開示内での論点の単なる一般的構成を意図したもので、本発明の開示または本発明の如何なる観点をも限定するものではない。特に、「序論」で開示した主題は、本発明の範囲内の技術の観点を含んでおり、先行技術の記述を構成するものではない。「総括」に開示した主題は、本発明の全範囲、または本発明の如何なる実施態様の包括的または完全開示ではない。
【0013】
ここでの引例の記載は、これらの引例が先行技術であり、またはここに開示した本発明の特許性へのなんらかの関連性があることを認めるものではない。本明細書の「説明」の項で引用した引例は、すべてこれを言及することにより引例全部が組入れられる。
【0014】
説明と特定の実施例は、本発明の実施態様を示すものであるが、単に例示の目的としたものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。更に、述べられた特徴がある複数の実施態様の記載は、追加的特徴があるこの他の実施態様、または述べられた特徴の異なった組合せを組込んだこの他の実施態様を排除するためのものではない。
【0015】
本明細書で用いた用語「好ましい」および「好ましくは」は、ある状況下でいくつかの利点が得られる本発明の実施態様を指す。しかし、この他の実施態様も、同一またはこの他の状況下で好ましいこともある。更に、一つまたはそれ以上の好ましい実施態様の記載は、この他の実施態様が有用でないことを意味するものでなく、本発明の範囲からこの他の実施態様を排除するためのものではない。
【0016】
ここで用いる用語「含む」およびその変形は非限定的であることを意図するもので、例えばリストでの項目の列挙は、本発明の材料、組成物、装置、方法においてでも有用である、この他の類似の項目を排除するためのものではない。
【0017】
一実施態様では、熱可塑性エラストマー(TPE)と非加硫状態の熱硬化エラストマーと、磁化性フェライト粉末とのブレンド混合物が提供される。好ましくは、かかる混合物は本質的に十分に熱可塑性であり、柔軟性で磁化性の熱可塑性エラストマー組成物が得られる。各種の実施態様では、ある量の望ましい成分をブレンドすることにより、これらの熱可塑性材料は標準的加工装置、例えば射出成形機、プラスチック押出機、および吹込み成形機で溶融加工でき、しかも磁気エンコーダの用途で必要な材料の性質が引続き維持される。一実施態様では、かかる材料は自動車で直面する極度の環境条件下で使用する磁気エンコーダに用いられる。
【0018】
いくつかの組成物の実施態様では、非硬化エチレンアクリル(AEM)エラストマー、またはアクリレートと架橋性モノマー(ACM)とのゴムコポリマーが望ましい量、好ましくは例えば磁化性エンコーダにとって必要とするフェライト粉末のレベルでも材料が充分に強くかつ柔軟性があり、強靱な部品を製造できる量で含むものである。
【0019】
熱硬化ゴムが好ましくは非硬化状態が維持される間は、各種の実施態様の利点が達成され、順に磁化性フェライトの担体としてのブレンド材料の熱可塑性相と熱硬化相の両相が得られる。望ましい材料特性が本質的に維持され、これにより好ましくはフェライト粉末の高容積充填が達成される。
【0020】
更に、上記の実施態様では上記の量で未硬化ゴムを添加することで、好ましいことに加工性は損われない。これに関して、混合物は例えば二軸押出機による連続的コンパウンディング、取扱上の利点のための裁断による小ペレットへの断片化、次いで既存の熱可塑性加工装置を用いての構成要素の製造で容易に加工される。
【0021】
一実施態様では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)材料は、熱硬化エラストマーと、好ましくは未加硫状態で、更に磁化性フェライト粉末とブレンドして現実には、好ましくは本質的に完全に熱可塑性である、柔軟性で磁化性の熱可塑性エラストマーコンパウンドを作る。そのように、磁化性熱可塑性エラストマーコンパウンドは、それから好ましくはTPE材料を用いた在来の技術で加工し、さらに磁界発生に必要な磁化性粉末の充填率を有する望ましい材料特性が得られる。
【0022】
熱可塑性エラストマーは、加硫エラストマーの最終用途特性が熱可塑性樹脂の加工上の長所と組合されたポリマーの一種類である。それらは、在来の加工技術、例えば練り、射出成形、押出し、吹込み成形、真空成形が可能であり、コンパウンディングまたは加硫せずに真のエラストマー特性を有する有用な物品の製造ができる。
【0023】
実施態様で有利に使用できるTPEの一例は、デュポン社が販売するハイトレル(登録商標)熱可塑性ポリエステルエラストマーである。実施態様で有用な熱硬化エラストマーの例には、エチレンアクリルエラストマー(AEM)、例えばデュポン社が販売するベーマック(登録商標)Gが含まれる。AEMエラストマーは「固体可塑剤」として使用され、TPEコンパウンドを強靱にさせる、即ち、その伸びを増加させ、引張り強度を低下させても、ヒートエージング性能は犠牲にしない。他の選択可能な実施態様では、アクリレートのコポリマーと、架橋性モノマー(ACM)エラストマーがAEMエラストマーの代りに用いられ、TPEに基づくコンパウンドを“可塑化”する。ACMの例には、ゼオンが販売するナイポール(登録商標)とハイテンプ(登録商標)、ユニマテックが販売するノックスタイト(登録商標)が含まれる。
【0024】
本組成物は、硬質磁気材料、例えば(技術的に公知のかかる粉末を含んだ)磁化性粉末を含む。実施態様で用いる硬質磁気材料は、好ましくは強磁性であるが、一度磁界がかけられると、その結晶構造を保持する材料である。これらは永久磁石を形成するのに使用する材料である。そのように、それらはそれ自体一度磁化すると消磁には強い抵抗性がある。一般に、かかる材料は公知であり、約10〜約100kA/mの保磁力Hcを示し、A/mはエルステッド単位を表わす。ある場合には、かかる材料が100kA/mよりも高い保磁力Hcを示すことに留意されたい。各種の実施態様では、磁化性粉末は磁化性フェライト(例えば、ストロンチウムフェライトオキサイド、バリウムフェライトオキサイド)、フェライト合金(例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト含有フェライト合金)、稀土類フェライト粒子、およびこれらの混合物から成る群から選択される。アルミニウム、ニッケル、コバルト含有の適切なフェライト合金の一例は、アルニコ(登録商標)で、これはニューヨーク、ホーポージュのMMCマグネチックス社から市販されている。
【0025】
バリウムフェライトは名目上の構造がBaO・6Fe2O3であり、一方ストロンチウムフェライトはSrO・6Fe2O3である。アルニコフェライトはアルミニウム、ニッケル、コバルト、これ以外の任意の金属を含有する鉄合金である。特定例はアルニコ3、アルニコ8、アルニコ9を含む。これらの列挙したアルニコ・フェライトは、約34〜約50%の鉄、約24〜約35%のコバルト、約15%のニッケル、および約7〜約8%のアルミニウムを含有する。パーセントは合金の全重量基準である。この他の硬質材料は、原子式がFe65Cr32Co3とFe63Cr25Co12の鉄合金を含む。原子式がCo5Smのコバルトサマリウム合金も利用できる。
【0026】
延長単一磁区(ESD)Fe-Co材料も、硬質磁気材料として利用できる。これは、約9.9%の鉄Fe、約5.5%のCo、約77%のPb、約8.6%のSnを含有する合金であり、パーセントは合金の全重量基準である。磁化性組成物実施態様を構成するのに有用な硬質磁気特性を有するこの他の公知の合金は、Mn-Al-C(70重量%Mn、29重量%Al、0.5重量%Ni、0.5重量%C)、Co-Pt(77重量%Pt、23重量%Co)およびFe-Nd-B(66重量%Fe、33重量%Nd、1重量%B)を含む。
【0027】
磁化性熱可塑性エラストマーコンパウンド成分の充填率の範囲により、エンコーダ用および類似の用途での有用な実施態様が得られる。未加硫(未硬化)熱硬化エラストマーを熱可塑性エラストマー担体に重量基準で約25%〜約75%の割合でブレンドすると、加工性と磁気性能を損わずに操作温度での耐用性を延長させることができる。次いで、磁化性材料をこのブレンド物に重量基準で約1%〜約90%のレベルで、随意的には約70%〜約90%のレベルで加える。充分な磁気強度を得るには、これは磁化性熱可塑性エラストマーコンパウンドの用途で必要とするフェライトの容積充填率如何に左右されるが、組成物は磁化性粉末を容積基準で約25%〜70%、任意的には約30〜約67%、任意的には約40〜約60%のレベルで含む。好ましくは、磁化性粉末のこのレベルで充分な加工性、材料強度、耐用性が得られる。
【0028】
熱可塑性相をブレンドした硬化(または加硫)エラストマー相を有する多相実施態様では、磁化性組成物は二種のブレンドポリマー相を含み、硬質磁気材料の磁化性粒子は両方のポリマー相に分散している。第1のポリマー相は熱可塑性ポリマー材料から形成され、第2のポリマー相は硬化エラストマー性ポリマー材料を含有する。このエラストマー性ポリマー材料は完全硬化または部分硬化していてもよい。厳密な意味では不均一のブレンド物であるが、ブレンド物相は好ましくは充分に小さい個々の相領域からなるので、外面的には全体が均一なブレンド物を呈する。
【0029】
多相実施態様の組成物は、硬質磁気材料型の磁気粉末が比較的多量に充填されているので、磁気原理で操作するエンコーダと回転センサ用標的に形成できる組成物が得られる。特に、この磁化性組成物実施態様から作った成形品は、公知の方法で磁化されて、成形品の表面に沿って交互する反対磁極を形成する。
【0030】
熱可塑性材料と硬化エラストマー性材料とは、標準的プラスチック装置での良好な加工性を保持しながら、用途に必要な材料強度と耐用性を充分に与えるレベルでこの磁化性組成物実施態様中に存在する。熱可塑性材料の重量レベルを100とすると、硬化エラストマー性材料のレベルは一般に約10〜約300の範囲になる。好ましくは、エラストマー性材料レベルは25である。もう一つの好ましい実施態様では、エラストマー性材料のレベルは少くとも約50である。即ち、組成物実施態様での熱可塑性材料に対する硬化エラストマー性材料の比は約1:10〜約3:1の範囲である。好ましい実施態様では、硬化エラストマー性材料は熱可塑性材料に対して約1:1またはそれ以下の比で存在する。好ましくは、熱可塑性材料に対するエラストマー性材料の比は少くとも約1:4である。もう一つの好ましい実施態様では、エラストマー性材料は熱可塑性材料の約50%〜約75%で存在する。
【0031】
好ましい多相実施態様では、硬化エラストマー性材料は連続熱可塑性材料相中に分散した粒子として存在する。従って、熱可塑性材料の連続相がブレンド物中に生ずるような比でエラストマー性材料と熱可塑性材料を供給することが好ましい。エラストマー性相と熱可塑性相の構造に関係なく、硬質磁気材料は好ましくは両相中に一様に分散させる。硬化エラストマー性相と熱可塑性相の両方に硬質磁気材料を組み入れることは、以下に詳述する如く、引続く硬化工程の前に、熱可塑性材料、硬質磁気材料および未硬化状態のエラストマー性材料を充分な時間混合して磁気材料を両相に分散させることで達成される。
【0032】
好ましい実施態様では、この実施態様で用いる熱可塑性ポリマー材料は、熱可塑性エラストマー(TPE)であってよい。既に述べたように、熱可塑性エラストマーはいくつかのゴムの物性、例えば軟質性、可撓性、レジリェンスを有しているが、熱可塑性樹脂と同じように加工できる。溶融組成物から固形ゴム状組成物への転移は、冷却することでかなり急速に行われる。この転移は、加熱することで容易に可逆的である。これは加熱することでゆっくりと硬化する(一般的に不可逆的である)従来のエラストマーとは対照的である。熱可塑性エラストマーは、従来のプラスチック装置、例えば射出成形機、押出機で加工できる。スクラップは一般に容易にリサイクルできる。
【0033】
熱可塑性エラストマーは多相構造で、各相は一般に緊密に混合している。多くの場合、各相はグラフトまたはブロック共重合で互に保持されている。少くとも一つの相は室温で硬質であり、加熱すると流体となる材料から成る。もう一つの相は室温でゴム状のより軟質な材料から成る。通常、この硬質相を「結晶性」と呼び、軟質相を「無定形性」と呼ぶ。
【0034】
多くの熱可塑性エラストマーは公知である。これらは一般にA-B-Aの三ブロック構造か、または(A-B)nの繰返し構造のいずれかをとり、Aは硬質セグメントを表わし、Bは軟質セグメントを表わす。ほとんどのポリマー材料は互に不相溶性を示す傾向があり、熱可塑性エラストマーの硬質セグメントと軟質セグメントは互に会合する傾向があり、硬質相と軟質相を形成する。例えば、硬質セグメントは連続エラストマー相に分散した球状の領分または領域を形成する傾向がある。室温では、この領域は硬質で、エラストマー鎖を立体網目状に結びつける物理的架橋として作用する。この領域は材料が加熱または溶媒中に溶解したとき、強度を失う傾向がある。一番普通の市販熱可塑性エラストマーには硬質セグメントとしてポリスチレンを含むものがある。
【0035】
A-B-A型熱可塑性エラストマーの非限定的例には、ポリスチレン/ポリシロキサン/ポリスチレン、ポリスチレン/ポリエチレン−コ−ブチレン/ポリスチレン、ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン、ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン/ポリブタジエン/ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−α−メチルスチレン/ポリイソプレン/ポリ−α−メチルスチレンおよびポリエチレン/ポリエチレン−コ−ブチレン/ポリエチレンが含まれる。三ブロックエラストマーは、ポリスチレンを硬質セグメント、ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはポリエチレン−コ−ブチレンのいずれかを軟質セグメントとするものが利用される。
【0036】
(A-B)n繰返し構造の熱可塑性エラストマーの非限定的例には、ポリアミド/ポリエーテル、ポリスルフォン/ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン/ポリエステル、ポリウレタン/ポリエーテル、ポリエステル/ポリエーテル、ポリカーボネート/ポリジメチルシロキサンおよびポリカーボネート/ポリエーテルが含まれる。同様に、スチレン/ブタジエン繰返しコポリマーも、ポリスチレン/ポリイソプレン繰返しポリマーと同様に、市販されている。
【0037】
好ましい一実施態様では、ポリエステル熱可塑性エラストマーを用いて磁化性組成物実施態様を形成する。かかる熱可塑性エラストマーは、一般に(A-B)n型ブロックコポリマーである。一実施態様では、硬質セグメントは二酸と低分子量のジオール、例えばエチレングリコールおよびブチレンから形成したポリエステル構造から成る。軟質セグメントは、長鎖ポリエーテルグリコールに基づくポリエステル構造から成る。ポリエステルTPE(例えば、前述のハイトレル;登録商標)は若干のゴム状の性質を有するが、いろいろの熱可塑性樹脂加工技術で容易に部品に形成できる。これらは良好な靱性、レジリエンス、耐クリープ、衝撃、曲げ疲労性、低温可撓性、高温下での特性の保持、動的特性を示す。
【0038】
また、この熱可塑性ポリマー材料は、固形、一般的には高分子量のプラスチック材料から選択される。好ましくは、これらの材料は結晶性または半結晶性のポリマーであり、更に好ましくは示差走査熱量測定法で測定した結晶性が少くとも25%のものである。また、ガラス転移温度の高いポリマーも、熱可塑性ポリマー材料として受け入れることができる。また、熱可塑性ポリマー材料は、好ましくは溶融温度またはガラス転移温度が80℃〜350℃の範囲内であるが、溶融温度は好ましくは熱可塑性加硫物の分解温度よりも低いものとする。
【0039】
熱可塑性ポリマーの非限定的例にはポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、スチレン・アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリフェニレンオキサイド、ポリオキシメチレン、およびフッ素含有熱可塑性樹脂が含まれる。ポリオレフィンはα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、およびこれらの混合物(但しこれらに限定されるものではない)を重合することにより形成する。エチレンとプロピレン、またはエチレン、もしくはプロピレンともう一つのα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、またはこれらの混合物のコポリマーも考えられる。これらのホモポリマー、コポリマー、およびこれらのブレンド物は実施態様の熱可塑性材料として組入れられる。
【0040】
実施態様の硬化エラストマー性ポリマー材料は、技術的に公知のエラストマー性材料の加硫または硬化生成物に基づくものである。硬化すると、エラストマー性材料は物性がゴム状になる。例えば、ゴム状材料はレジリエンス、柔軟性、および圧縮永久歪が高レベルであることを特徴とする。多くの適切なエラストマー性ポリマー材料は公知であり、公知の方法、例えばEncyclopedia of Polymer Science and Engineering、第17巻中の「加硫」という項目に記載の方法で硬化または加硫することができる。好ましいエラストマーには、自動車用途にみられるように、流体に対して充分な化学的耐性と同様に高温に対しても耐性のあるものが含まれる。磁化性組成物実施態様で使用する好ましいエラストマー中では、アクリルエラストマーとエチレンアクリルエラストマーがある。
【0041】
アクリルエラストマーは、ASTM標示でエチルアクリレートとこの他のアクリレートのポリマーにはACM、アクリロニトリルとエチルアクリレート、またはこの他のアクリレートのコポリマーにはANMで表わす。アクリルエラストマーはいわゆるバックボーンモノマーを随意的に少量の硬化サイトモノマーと重合させて作る。バックボーンモノマーはエチルアクリレート、およびこの他のアクリルモノマーから選択される。エチルアクリレートと共重合させてアクリルエラストマーを作るこの他の好ましいアクリルアクリレートモノマーには、n−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレートが含まれる。
【0042】
アクリルエラストマー(例えば、前述のナイポール、ハイテンプおよびノックスタイト)は、約1〜約5モル%または重量%の硬化サイトモノマーを含み、引続く架橋での反応サイトが導入される。アクリルエラストマーで用いる特定の硬化サイトモノマーは、一般にエラストマー供給者の専有下にある。普通の硬化サイトモノマーでは、不飽和炭素結合とこれらの側鎖を含むもの、および側鎖中に炭素−塩素結合を含むものがある。
【0043】
エチレンアクリルエラストマーは、ASTM標示でAEMで表わす。これらは通常側鎖にカルボキシル基を含む、少量の硬化サイトモノマーを有するエチレンとアクリレートモノマーのコポリマーに基づくものである。次いで、硬化剤、または架橋剤を用いて硬化サイトモノマー内の官能基と反応させてエチレンアクリレートエラストマーを硬化、または加硫させることができる。架橋剤の正確な性質は、エチレンアクリルエラストマーの供給者の専有下にあるが、かかるエラストマーに使用する硬化剤または加硫剤の硬化は主に二種類に分類され、一つはジアミンによるものと、他はパーオキサイドによるものである。ジアミンは硬化が遅いが、余りにも速い硬化によるスコーチを受けずにより高い温度で用いることができる。当業者には周知のように、硬化剤の混合物も用いることができ、反応の温度条件を考慮して望ましい硬化速度を得ることができる。エチレンアクリルエラストマーは市販されており、ベーマックG(ジアミン硬化エラストマー)とベーマックD(パーオキサイド硬化エラストマー)が含まれる。
【0044】
磁化性組成物の実施態様を達成するためには、硬質磁気材料をエラストマー性材料の硬化開始前にエラストマー性材料と熱可塑性材料のブレンド物中に分散させる。一旦この硬質磁気材料が熱可塑性相と未硬化エラストマー相の両相全体に分散されると、エラストマー相を硬化して、好ましくは両相の混合を続けながら、組成物実施態様を得る。
【0045】
エラストマー性材料と熱可塑性材料は溶融ブレンドするので、混合はより高い溶融成分の軟化点、または融点よりも高いところで必然的に行われる。このより高い溶融成分は通常熱可塑性材料である。かかる混合温度は硬化剤がエラストマー性材料と反応する温度よりも高いこともある。かかる場合は、一方では磁気材料が熱可塑性相とエラストマー相の両相に分散し、他方ではエラストマー性材料が熱可塑性相の存在下で硬化させるように混合させた後に、硬化剤を添加させる点に注意が必要である。これに関して、高溶融点熱可塑性材料の溶融ブレンド中に発生する高温度の悪影響を受けないジアミンの如き硬化剤を用いることが好ましい。ジアミン硬化剤を用いるときは架橋促進剤を用いることが好ましい。好ましい促進剤には、グアニジン誘導体、例えばジ−オルト−トリルグアニジン(DOTG)が含まれる。
【0046】
好ましい実施態様では、磁化性多相組成物は混合物を混合、または素練りしながら熱可塑性材料の存在下にエラストマー性粒子を動的加硫させてつくる。上述のように、硬質磁気材料は熱可塑性流れ、またはエラストマー性材料の流れのいずれの相か、または両相に添加できる。
【0047】
組成物実施態様の形成に用いる合成での温度設定値グラフ500(経過時間の関数として)の非限定的例を図5に示す。図5は熱可塑性流れIとエラストマー性流れIIの温度対時間を図示したものである。時間範囲A期間中は、両方の流れはポリマー材料を軟化させるのに充分な温度でそれぞれ溶融ブレンドされる。硬質磁気材料が、このとき流れI、流れI、または両方の流れに、M点で図示したように添加される。磁気材料の添加と共に、または添加中、または添加後に硬化剤パッケージを流れIIに添加する。この他の従来の添加剤と加工助剤も流れIとIIに添加できる。時間範囲Bの期間中に、流れIIの温度は流れIと一緒にさせる前に高温度まで上昇させる。これは流れIIとその硬化剤パッケージへの熱衝撃を回避する上で通常は好ましい。図示するように、流れIIの温度は流れIの温度まで上昇させてから両流れを一緒にする。または、両流れを異なる温度で一緒にさせてもよい。硬化剤パッケージは、時間範囲Bの間に流れIIに添加してもよい。
【0048】
硬化剤パッケージは、時間範囲A、または時間範囲、または両時間範囲中に添加しても、両流れが一緒にされてから後流れII中のエラストマーの硬化をかなりの程度まで進めることができるのに充分なときに、流れIIに添加する。図5の工程は、二軸押出し機装置で都合よく行える。かかる装置では、可変時間は流れの進む押出し流路にほぼ対応する。連続工程はスクリューのパラメータ、時間、温度を調節することで行うことができる。または、これらの流れを別々の混合機で処理して、図5の計画500に示したような時間で配合できる。いずれの場合でも、例えばかき混ぜ、攪拌、混合、練り、ブレンド等による機械的エネルギを未硬化エラストマー性ポリマー材料、熱可塑性ポリマー材料および硬質磁気材料粒子の組合せに時間範囲Cの硬化段階で加えることが好ましい。
【0049】
非限定的例では、熱可塑性材料を溶融して硬質磁気材料と共に攪拌する。別個に、エラストマー性材料を溶融し、任意的に硬質磁気材料をこの溶融エラストマー性材料に添加する。一般に、熱可塑性溶融物はエラストマー性溶融物よりも高温である。一実施態様では、溶融攪拌された熱可塑性流れとエラストマー性流れを、例えば2軸スクリュー押出機で一緒にすることもできる。熱可塑性流れとエラストマー性流れを一緒にすると、各相は引続き混合し、その間に硬化剤パッケージを添加する。かかる添加を2軸スクリュー押出機装置内の入口から行うのが都合がよい。硬化剤パッケージとの混合は、部分的にまたは完全にエラストマー性粒子を硬化させるのに充分な時間継続して行う。2軸スクリュー押出機装置では、混合と硬化時間は押出機の流路長を変えることで都合よく調整できる。上記の方法は、硬化剤パッケージが熱可塑性溶融物の高温の攪拌混合物への添加に耐えられるときには適切な方法である。
【0050】
もう一つの実施態様では、硬化剤パッケージを、エラストマー流れを熱可塑性流れと一緒にする前に、エラストマー流れに添加することが望ましい。かかる場合は、硬化剤パッケージとエラストマーの混合物(または、硬質磁気材料粒子も含む)を硬化剤パッケージへの熱衝撃を少くして熱可塑性流れに添加するまで、エラストマー流れの温度を望ましい速度で上昇させることができる。この実施態様では、エラストマー流れに硬化剤パッケージ添加した後、エラストマーがかなり硬化したときの時間よりも短い時間内で熱可塑性流れとエラストマー性流れを一緒にすることが好ましい。大ざっぱなやり方として、キュラティブ剤添加後エラストマーのTs2よりも短い時間内にエラストマー流れと熱可塑性流れを混合することが望ましい。Ts2は、ある温度で、2%硬化が完了するのに要した時間である。
【0051】
好ましい実施態様では、この磁化性組成物は磁気エンコーダ、例えば磁気車輪速度センサ用標的として自動車工業、その他の工業で用いられる磁気エンコーダに組入れられる。エンコーダは磁化性組成物実施態様を予め接着剤処理した金属ケース上に上張り成形を含む方法で作ることができる。この上張り成形法は圧縮成形で行えるが、好ましくは射出成形法で行うことができる。または、エンコーダは二重材料成形法で組成物から作ってもよく、ここでは異なる熱可塑性樹脂が本磁化性組成物実施態様の構造的基質として成形される。
【0052】
本材料組成物実施態様を用いる実施態様応用の一例は、車輪速度測定システム用の磁気エンコーダである。かかる車輪速度測定システムは、自動車で、または部品の速度測定の必要性があるこの他のシステムで特定の用途がある。かかるエンコーダの一例は、予め接着剤処理した金属ケース上に上張り成形した前記の混合物を用いて作られる。エンコーダ製作法の別の例は、混合物を二重材料成形法で成形することであり、ここでは熱可塑性樹脂が磁化性TPE物質用の構造的基質として成形される。この上張り成形法は、一実施態様では圧縮成形法であるが、その代替の一実施態様では射出成形法である。
【0053】
本組成物実施態様を有利に用いた磁気エンコーダアセンブリとセンサ標的アセンブリの例を、図1〜図4に図示する。回転速度検出装置に使用するエンコーダアセンブリ20を図1に示す。エンコーダアセンブリ20は、軸受集合体の内レース22と外レース24の間に配置される。軸受アセンブリは、例えば車体の車輪軸受アセンブリの一部品であり、外レース24は車体のフレーム(または車体フレームに対して回転的に固定された他の部品)に取付けられており、内レース22は車体の車輪に回転的に固定されている。当業者に理解されるように、かかる磁気エンコーダアセンブリは別のタイプの回転軸にも使用でき、固定体に対する軸の速度および/または回転位置を検出する。
【0054】
エンコーダアセンブリ20は、内レース22に回転的に固定した第1の支持部材26と、外レース24に回転的に固定した第2の支持部材28を含む。第1、第2の支持部材26、28は好ましくはステンレス鋼であるが、その代替としてその他の適切な材料、例えば熱可塑性、または熱硬化プラスチック材料から作ってもよい。第2の支持部材28は、回転検出装置30と、好ましくは検出装置30の周囲に成形されたエラストマー性シール32と、これから突き出たセンサリード線34を保持し、支持する。回転検出装置30は、例えばホール(Hall)効果センサであり、代替実施態様では磁気抵抗装置である。
【0055】
多極環状部材36(標的ホイールとしても知られている)は、第1の支持部材26に取付けられる。多極環状部材36は、回転検出装置30に面する表面があり、回転検出装置から予め定められた距離で配置されている。多極環状部材36は、前述の磁化性熱可塑性エラストマー混合物から作られている。多極環状部材36は、好ましくは前述のTPE材料加工に関する技術、例えば二軸スクリュー押出しによる連続コンパウンディング、押出物の小ペレットへの裁断、標準熱可塑性樹脂加工装置を用いての製造により形成される。環状部材36は、次いで磁化され、磁化性材料を環状部材36の円周方向で交互するN極とS極にする。操作中は、内レース22は、外レース24に対して回転するので、これらの極は交互に回転検出装置30を移動して通過し、装置30による検出用の変化する磁界を発生させる。
【0056】
図2、図3は、支持体126に取付けたエンコーダ136を有するセンサ標的アセンブリ200を示す(図3は、図2のA-A断面でのアセンブリ図300である)。エンコーダ136は好ましくは前述の磁化性熱可塑性エラストマー混合物から形成されている。
【0057】
図4は、支持体226に固定したエンコーダ236のセンサ標的アセンブリ400を示す。また、エンコーダ236は、好ましくは前述の磁性化熱可塑性エラストマー混合物から形成されている。
【実施例】
【0058】
実施例1〜2
ハイトレル(登録商標)熱可塑性ポリエステルエラストマー中に混在するエチレンアクリルエラストマーの硬化エラストマー(ベィマック;登録商標)とフェライト粉末の二種の組成物の実施例(実施例1が混合物A、実施例2が混合物B)を表1に示す。更に、これら二種の組成物のヒートエージング性を表2、表3に示して、更に特定の実施態様を説明する。
表1
二種の磁化性熱可塑性エラストマー混合物の組成























表2
空気中125℃下の磁化性熱可塑性エラストマー混合物のヒートエージング性

混合物中のベィマック(登録商標)エチレンアクリルエラストマー(AEM)のレベル如何で伸びは増加し、硬度は減少することに留意のこと。表3は表2のヒートエージング性の%変化率を示す(%変化率は常にヒートエージング開始前の当初の特性値に対するものである)。表2、表3の両方に示したように、ヒートエージングは一般に混合物の特性を積極的に向上させる。
表3
空気中125℃下の磁化性熱可塑性エラストマー混合物のヒートエージング性の%変化率

【0059】
実施例3〜4
磁化性組成物実施例の実施態様を、実施例3と実施例4に示す配合例により調製する。実施例3、4に示す重量%、容量%は、最終磁化性組成物でのパーセントである。実施例3、4では、それぞれ別々の流れで、フェライト材料の半分をポリエステルエラストマーと一緒にし、あとの半分をエチレンアクリルエラストマーと一緒にする。これらの流れは溶融し、フェライト材料と一緒に攪拌する。これらの混合物の流れを二軸スクリュー押出機で一緒にし、次いでエチレンアクリルエラストマー用のジアミンキュアリング剤パッケージを添加する。ベィマックG材料を硬化するために充分な時間更に混合した後、磁化性組成物を二軸スクリュー押出機から取出す。押出機から取出した材料をカーボンブラックと任意のこの他の加工助剤と一緒にし、円板状、または円環状のリングに成形する。この円板または円環を公知の方法で磁化して、本実施態様で使用するエンコーダエラストマーを製造する。

【0060】
実施例5〜6
実施例5〜6は、ジアミン硬化剤と促進剤を用いる磁化性組成物実施例の実施態様を形成するための配合例を示す。別々の流れの混合、加熱、昇温、配合、混合は、二軸スクリュー押出機を用いて容易に達成できる。フェライトとポリエステルエラストマーは、第1の熱可塑性流れとして一緒にし、溶融混練する。別の流れでは、アクリルエラストマー、硬化促進剤、ジアミン硬化剤が約100℃またはそれ以下の温度で溶融混練される。この温度は架橋活性化温度よりも低いので、このエラストマー流れでは著しい架橋は生じない。熱可塑性流れは約200℃の温度で攪拌するが、この温度はポリエステルポリマーを軟化または溶融するのに充分な温度である。硬化剤と促進剤への熱的衝撃を回避するため、エラストマー性流れは200℃の熱可塑性流れを一緒にする前に昇温させる。エラストマー性流れの昇温速度は、温度が200℃に達し、エラストマー性流れが熱可塑性流れと一緒にされる時まで、アクリルエラストマーが著しく硬化または加硫しないように選択する。熱可塑性流れとエラストマー性流れが一旦一緒にされると、この両流れはアクリルエラストマーを部分的または完全に硬化または加硫するのに充分時間更に混合される。次いで、組成物を取出し、更に標準的熱可塑性樹脂加工装置で加工される。

【0061】
これの代替する方法では、ストロンチウムバリウムフェライトが熱可塑性流れとエラストマー性流れを混合する前に、この両相中に配分される。フェライトは如何なる仕方でもこの両流れに分配してもよいが、両流れにフェライトを等重量%または等容量%含有させることが好ましい。一般的には、二軸スクリュー法で形成した磁化性組成物の熱可塑性相とエラストマー性相中にフェライト粒子をこれにより均一に分散されると考えられる。
【0062】
磁気材料がエラストマーの硬化前に熱可塑性材料とエラストマー性材料のブレンド物中に添加される、本組成物の実施態様を達成する方法は、磁気材料の担体としての混練材料に熱可塑性相と熱硬化相の両相を形成させる。これにより望ましい材料特性が得られた上に磁気材料の高容積マトリックス充填率が達成される。これに関して、本実施態様の利点は、(a)車輌エンコーダ用途で必要な環境条件の範囲内で熱硬化エラストマーに基づく磁気コンパウンドの機械的、環境的耐用性の利点と(b)意図された熱可塑性樹脂が持っている加工と製造の容易性とを兼ね備えた材料が得られるということである。
【0063】
本明細書に記載の実施例とこの外の実施態様は例示的なものであり、本発明の組成物と方法の全範囲の記載を制限するものではない。特定の実施態様、材料、組成物、方法の均等的改変、修正、変更は本発明の範囲内で行うことができ、実質的に同様の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】エンコーダアセンブリの断面図である。
【図2】センサ標的アセンブリのもう一つの実施態様の平面図である。
【図3】図2のA-A線に沿った部分断面図である。
【図4】センサ標的アセンブリのもう一つの実施態様の断面図である。。
【図5】本発明の組成物の製造法の一つの実施態様を例示するものである。
【0065】
ここに示した図は、ここにかかる実施態様を説明する目的で、本発明の装置、材料、方法の内のこれらの一般的な特徴を例示するためのものである点に留意されたい。これらの図は、いずれの実施態様の特徴を正確に反映したものではなく、本発明の範囲内での特定の実施態様を必ずしも定義しまたは限定するものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、および磁化性粉末の混合物から成る磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
上記熱可塑性ポリマーが上記組成物中の第1の相を形成し、上記エラストマー性ポリマーが上記組成物中の第2の相を形成し、上記磁化性粉末が上記第1の相と上記第2の相中に分散している、請求項1記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
上記エラストマー性ポリマーが完全硬化または部分硬化している、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
上記熱硬化エラストマーが加硫処理していないエラストマーである、請求項1または2記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
上記熱可塑性ポリマーが熱可塑性エラストマーであり、上記エラストマー性ポリマーが熱硬化エラストマーである、請求項1乃至4のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
上記エラストマー性ポリマーがエチレンアクリルエラストマー、アクリレートエラストマー、架橋性モノマーエラストマー、およびこれらの混合物から成る群から選ばれた、請求項5記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
上記熱可塑性エラストマーが組成物の5%〜50%(重量)である、請求項1乃至6のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
上記エラストマー性ポリマーが組成物の3%〜40%(重量)である、請求項1乃至7のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
上記磁化性粉末が組成物の1%〜90%(重量)である、請求項1乃至8のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
上記磁化性粉末がストロンチウムフェライトオキサイド、バリウムフェライトオキサイド、アルミニウム、ニッケル、コバルト含有フェライト合金、稀土類フェライト、およびこれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項9記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
上記エラストマー性ポリマーが熱可塑性ポリエステルエラストマーである、請求項1乃至10のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
(a)隣接する磁界の変化を検出するための磁気センサと、(b)磁気センサに隣接する表面を有し、磁気センサに対して可動である標的ホイールであって、上記標的ホイールは請求項1乃至11のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物から成り、上記標的ホイールは磁化されて上記表面に沿って交互する磁極性を発生し、操作中は上記磁界がこれにより変化することから成る、エンコーダ、好ましくは半径方向のエンコーダまたは軸方向のエンコーダ。
【請求項13】
上記磁気センサは車輌の車輪および車体の一つに取付けられ、上記標的ホイールは車輪と車体の他の一つに取付けられる、請求項12記載のエンコーダ。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれかに記載の磁化性熱可塑性エラストマー組成物から成る、一般的に円板状の部材から成るエンコーダで使用する標的ホイール。
【請求項15】
磁化性熱可塑性エラストマー組成物の製造法において、(a)請求項1乃至3のいずれかに記載の組成物の熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、および磁化性粉末を混合し、(b)上記組成物を動的硬化または加硫して上記エラストマー性ポリマーを硬化させることから成る、上記製造法。
【請求項16】
(a)請求項1乃至11のいずれかに記載の組成物の熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、および磁化性粉末を混合し、(b)上記混合物を標的ホイールに成形し、(c)上記の標的ホイールを磁化して上記の標的ホイールの表面に沿って交互する磁極性を発生させ、回転操作中はセンサが検出する変化する磁界を発生させることから成る、回転エンコーダ用の標的ホイールの製造法。
【請求項17】
(a)請求項1乃至11のいずれかに記載の組成物の熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、および磁化性粉末を混合し、(b)熱可塑性ポリマーを上記標的ホイールの構造的基質として成形し、(c)上記混合物を上記構造的基質上に上張り成形し、(d)上記標的ホイールを磁化して上記標的ホイールの表面に沿って交互する磁極性を発生させ、回転操作中はセンサが検出する変化する磁界を発生させることから成る、回転エンコーダ用の標的ホイールの製造法。
【請求項18】
更に(e)上記の標的ホイールをヒートエージングさせることから成る、請求項15または16記載の製造法。
【請求項19】
上記の成形は圧縮成形法または射出成形法のいずれかを用いて行う、請求項15乃至18のいずれかに記載の製造法。
【請求項20】
請求項1乃至11のいずれかに記載の組成物から成る成形品。
【請求項21】
磁化性物質から成り、回転部材に固定された標的内の磁界を検出することから成る、上記回転部材の回転速度の測定法において、上記の磁化性物質が請求項1乃至11のいずれかに記載の組成物から成る測定法。
【請求項22】
(a)硬質磁気材料を熱可塑性材料とエラストマー性材料のブレンド物中に分散させ、(b)上記熱可塑性材料と上記硬質磁気材料の存在下で上記エラストマー性材料を硬化させることから成る、磁化性ポリマー組成物の製造法。
【請求項23】
上記分散が(1)熱可塑性ポリマー材料、未硬化エラストマー性ポリマー材料および硬質磁気材料を一緒にして配合物を形成し、上記硬質磁気材料が上記配合物の約10容量%〜約90容量%から成り、(2)機械的エネルギーを上記配合物に加えて上記ブレンド物を形成し、上記硬化は更に機械的エネルギーを上記硬化中に継続して加えることから成る、請求項22記載の製造法。
【請求項24】
更に、上記熱可塑性材料と上記硬質磁気材料の上記分散中に上記エラストマー性材料を動的加硫することから成る、請求項22または23記載の製造法。
【請求項25】
二軸スクリュー押出装置で実施する、請求項22乃至24のいずれかに記載の製造法。
【請求項26】
上記組成物は熱可塑性材料100部当り上記エラストマー性材料が約10〜約300部から成る、請求項22乃至25のいずれかに記載の製造法。
【請求項27】
上記組成物は熱可塑性材料100部当り上記エラストマー性材料が約25〜約100部から成る、請求項26記載の製造法。
【請求項28】
上記エラストマー性材料がアクリルエラストマー、エチレンアクリルエラストマー、およびこれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項22乃至27のいずれかに記載の製造法。
【請求項29】
上記熱可塑性材料が熱可塑性エラストマーから成る、請求項22乃至28のいずれかに記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−525542(P2007−525542A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501070(P2006−501070)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/001540
【国際公開番号】WO2004/065476
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(599039289)フロイデンベルグ−エヌオーケー ジェネラル パートナーシップ (7)
【氏名又は名称原語表記】FREUDENBERG−NOK GENERAL PARTNERSHIP
【Fターム(参考)】