説明

磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー及びその方法

【課題】 フラックスゲートの分離された検出コイルからそれぞれ検出されたX軸及びY軸の出力値を用いて、外部磁場の影響に関係なく磁場の方向及び強さを測定し得る磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー及びその方法を提供する。
【解決手段】 磁場の歪みを自動補正する地磁気センサーは、互いに直交するX軸及びY軸フラックスゲートを備え、駆動信号が印加されると、地磁気に対応する起電力を検出する地磁気検出部、地磁気検出部から出力される起電力を所定のX軸及びY軸の出力値に変換し出力する信号処理部、及び地磁気検出部に駆動信号を印加する駆動信号生成部を備える。地磁気検出部のX軸及びY軸フラックスゲートは、それぞれコア、駆動信号を受信しコアを励磁させるソレノイド型励磁コイル、及びコアと励磁コイルによって誘導された起電力を検出できるようにコアをソレノイド状に巻線した構造であり、互いに異なる巻線数を有する少なくとも2つの検出コイルを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー及びその方法に係り、特に、検出コイルを分離し、分離した検出コイルからそれぞれ検出された出力値を用いて補正された磁場の強さ及び方位角を得る磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー及びその方法に係る。
【背景技術】
【0002】
地磁気センサーとは、地磁気の強さ及び方向を測定する装置のことを意味する。地磁気センサーの種類としては、ホール効果を利用するホールセンサー、量子化効果を利用するSQIDセンサー、磁化曲線の飽和領域を利用するフラックスゲート(fluxgate)型センサーなどがある。
フラックスゲート型センサーは、近年、地磁気を測定する際に有効に利用されており、特に、地磁場測定、鉱物探査、宇宙探査、及び海底探査などにセンサーとして使用されている。このようなフラックスゲート型センサーは、高透磁率材料からなる軟磁性コアと、このコアを巻いている励磁コイルと、検出コイルとで構成される。基本検出原理は、励磁コイルに交流で磁界を発生させて軟磁性コアを飽和させる非線形磁気特性を用いて、外部磁場に比例する第2の高調波電圧成分を測定することによって外部磁場の強さを測定するものである。フラックスゲート型センサーの磁場検出方法としては、第2の高調波検出、パルス位置検出、パルス大きさ検出法などがあり、現在は、第2の高調波検出法が最も多く利用されている。
【0003】
そして、近年、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術が発展するに伴い、それを用いた低消費電力型の超小型フラックスゲート型センサーの製造が可能となり、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パソコンなどの種々の携帯型電子機器などにも内蔵されて使用されている。
【0004】
図1は、従来の分離型構造の励磁コイルを有するフラックスゲートを示す。
同図に示すように、従来のフラックスゲートは、コア5、コア5に巻回された励磁コイル、及びコア5に巻回されている検出コイル3を備える。コア5は、高透磁率材料からなり、単一線形構造、2つの平行コア構造、リングコア構造などの種々の構造に形成できる。図1は、2つの平行コア構造で、1つの検出コイル3を有するフラックスゲートを示す。
【0005】
そして、励磁コイル1は、コア5をソレノイド形態に巻いた構成であり、外部からの電気的駆動信号を受信し、磁性体コア5を励磁させる。
検出コイル3もコア5をソレノイド形態に巻いた構成であり、駆動コイル1の駆動によって発生した磁気から誘導された起電力を検出する。
地磁気センサーは、図1に示すようなフラックスゲートを互いに直交する形態で備え、それぞれX軸及びY軸フラックスゲートに対応させる。このような地磁気センサーは、X軸及びY軸フラックスゲートから出力される出力値を用いて磁場の方向及び強さを計算する。任意の位置に対する磁場の強さは、方位角を計算することによって算出ことができ、方位角をΦとするとき、Φはtan-1(Hy/Hx)によって計算する。ここで、Hxは、X軸フラックスゲートから出力される出力値であり、Hyは、Y軸フラックスゲートから出力される出力値である。
【0006】
図2a及び図2bは、各々従来の補正された磁界検出結果及び外部磁場の影響を受ける前後の磁界検出結果を示す。
図2aは、互いに垂直な2軸、X軸及びY軸フラックスゲートに対し測定された磁気の強さを補正したもので、完全な円形になることが分かる。図示するように完全な円形の軌跡を得るためには、地磁気センサーシステムを360度回転することによって可能になる。
【0007】
図2bは、外部磁場の影響によって、図2aに示す磁界検出結果から円の中心が外部磁場の方向に変位し、座標軸における変位が生じたことを示す。測定された地磁気方向は、環境変化に応じて変化する。即ち、地磁気センサーは、建物、鉄橋、電鉄などの周辺磁界の影響に弱く、地磁気センサーの出力信号は、組み立て状態、傾斜程度や測定する環境による変化も極めて大きい。ここで、正確に方位を測定するためには、地磁気センサーに対する補正作業が要求される。適切な補正なしに地磁気センサーを使用する場合、磁場の方位が図2bに示すように、角度Φから角度Ψに急激に変化することがある。即ち、外部磁場の影響で円の中心が移動したにもかかわらず、それを補正しなければ、磁場の方向がII方向として検出されるのではなく、I方向として検出される。このように、外部磁場を連続して補正しない場合、地磁場の方位に対する歪みでデータの信頼性が低下する。外部磁場による影響を補正するため、円の中心がIII方向へ点Cから点C'に移動する必要がある。
【0008】
このような補正を行うために、地磁気センサーシステムを回転し、外部磁場の影響を受けた後の円形におけるX軸及びY軸の出力値を検出し、移動した円の中心を検出する。
一方、特許文献1(USP.4,953,305号)には、車両用磁気センサーとマイクロプロセッサを備えるシステムに関し、磁場をx軸、y軸の2軸で測定するもので、外部磁場による磁界検出座標軸の変位が検出制限領域を超える場合、自動で補正する方法が記載されている。しかし、このUSP.4,953,305号に述べられた補正方法は、環境変化による地磁気方向の変化程度が小さいときは補正可能であるが、変化程度が大きいときは補正できないという問題点がある。また、前記方法は、車両毎に異なり、地磁気システムが車両に装着されるまでは補正することができず、車両にシステムが装着されてからも補正のために車両を数回360度回転する必要があるという問題点がある。
【0009】
USP.4,953,305号に述べられた補正のために車両を数回回転させる方法は、実際のユーザー環境では回転できる空間が殆どなく回転が不充分になり、その結果補正が不完全になるのを改善するため、補正されたデータを再補正する必要があるか否かを判断する初期補正データとの比較を行う。
また、特許文献2(USP.5,390,122号)では、地磁気センサーを装着したシステムが16km/hの速度で動く場合、自動補正システムが作動する方法について述べている。この方法は、補正のため車両を回転させるのではなく、再補正されたデータと初期補正データを比較するものであって、場合によっては、地磁気センサーを補正するために必要な適正データが得られないという問題点がある。
【特許文献1】米国特許第4,953,305号公報
【特許文献2】米国特許第5,390,122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、フラックスゲートの分離された検出コイルからそれぞれ検出されたX軸及びY軸の出力値を用いて、外部磁場の影響に関係なく磁場の方向及び強さを測定し得る磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー及びその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するための本発明に係る磁場の歪みを自動補正する地磁気センサーは、互いに直交するX軸及びY軸フラックスゲートを備え、駆動信号が印加されると、地磁気に対応する起電力を検出する地磁気検出部、地磁気検出部から出力される起電力を所定のX軸及びY軸の出力値に変換し出力する信号処理部、及び地磁気検出部に駆動信号を印加する駆動信号生成部を備える。前記地磁気検出部のX軸及びY軸フラックスゲートは、それぞれコア、駆動信号を受信しコアを励磁するソレノイド型励磁コイル、及びコアと励磁コイルによって誘導された起電力を検出できるようにコアをソレノイド形態に巻線した構造であり、それぞれ異なる巻線数を有する少なくとも2つの検出コイルを備える。
【0012】
好ましくは、地磁気検出部から検出されたX軸及びY軸の出力値を用いて方位角を計算する制御部をさらに備える。
方位角(Φ)は次式によって計算する。
Φ=arctan((X22−X21)/(Y22−Y21))
ここで、X21、Y21は、外部磁場の影響を受ける前の検出コイルのうちの1つの検出コイルから検出されたX軸、Y軸の出力値であり、X22、Y22は、外部磁場の影響を受けた後の検出コイルのうちのもう1つの検出コイルから検出されたX軸、Y軸の出力値である。
【0013】
好ましくは、検出コイルは、第1検出コイル及び第2検出コイルからなり、巻線比はほぼ1:2である。
また、本発明の地磁気センサーの磁場の歪みを自動補正する方法は、相互に直交し、地磁気に対応して誘導される起電力を検出する少なくとも2つの検出コイルをそれぞれ備えるX軸及びY軸フラックスゲートを備える地磁気センサーにおいて、(a)前記X軸及びY軸フラックスゲートにそれぞれ駆動信号を印加する段階、(b)前記駆動信号によって前記X軸フラックスゲートに誘導された前記起電力を備えられた前記少なくとも2つの検出コイルからそれぞれ検出し、所定のX軸出力値に変換する段階、(c)前記駆動信号によって前記Y軸フラックスゲートに誘導された前記起電力を、設けられた前記少なくとも2つの検出コイルからそれぞれ検出し、所定のY軸出力値に変換する段階、(d)前記X軸及びY軸の出力値に対応する座標上の点のうちの2点を連結した直線の傾きに基づいて、磁場の方向及び強さを算出する段階を含む。
【0014】
ここで、検出コイルはそれぞれ異なる券線数を有する。好ましくは、前記検出コイルは、第1検出コイル及び第2検出コイルからなり、券線比はほぼ1:2である。
なお、(d)段階において、次式によって方位角(Φ)を計算し、磁場の強さを算出する。
Φ=arctan((X22−X21)/(Y22−Y21))
ここで、X21、Y21は、外部磁場の影響を受ける前の検出コイルのうちの1つの検出コイルから検出されたX軸、Y軸の出力値であり、X22、Y22は、外部磁場の影響を受けた後の検出コイルのうちのもう1つの検出コイルから検出されたX軸、Y軸の出力値である。
【発明の効果】
【0015】
前記のように、本発明は、地磁気検出部の検出コイルを分離し、分離された検出コイルから検出された出力値を用いて方位角を測定することによって、外部磁場に関係なく正確な方位角を容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
図3aは、本発明の一実施形態に係わる地磁気センサーのブロック図である。同図に示すように、本発明による地磁気センサーは、駆動信号生成部100、地磁気検出部200、信号処理部300、及び制御部400を備える。
まず、駆動信号生成部100は、地磁気検出部200を駆動する駆動信号を生成し出力する。このような駆動信号は、一般にパルス波及びその状態が反転されたパルス波を用いる。
【0017】
地磁気検出部200は、駆動信号生成部100から駆動信号が印加されると、地磁気に対応する所定の電気的信号を出力する。地磁気検出部200は、互いに直交するX軸及びY軸フラックスゲートを備える。
信号処理部300は、地磁気検出部200から検出された電気的信号を一定な処理過程を経て所定のデジタル値に変換し出力する。
【0018】
制御部400は、地磁気センサーの各構成要素を全体的に制御し、それぞれのX軸及びY軸フラックスゲートから検出された出力値を用いて方位角を演算する。
図3bは、本発明の一実施形態に係わる地磁気センサーの地磁気検出部200の一部を示す図であり、地磁気検出部200のX軸及びY軸フラックスゲートの1つを示す。同図では、地磁気検出部200のフラックスゲートが第1検出コイル20及び第2検出コイル30の2つの検出コイルを備えるものとして示したが、2つ以上の検出コイルを有する構造であっても良い。
【0019】
図3bに示すように、本発明の地磁気検出部200のX軸及びY軸フラックスゲートは、それぞれ励磁コイル10、第1検出コイル20、第2検出コイル30及びコア40を備える。
コア40には、透磁率が大きい材料として励磁コイル10、第1検出コイル20及び第2検出コイル30が巻かれる。そして、駆動信号を受信した励磁コイル10によってコア40に磁場が形成される。
【0020】
励磁コイル10は、駆動信号生成部100から出力された駆動信号を受信し磁性体コア40を励磁させる。図3bに示す2つの平行なコア40に巻かれた励磁コイル10は、上部コアと下部コアとで逆方向に形成される。これにより、励磁コイル10が駆動信号を受信し励磁されるコア40に形成される磁場の方向が逆方向に形成される。
第1検出コイル20及び第2検出コイル30には、励磁コイル10に駆動信号が印加されれば、外部磁界の強さに比例する起電力が誘導される。X軸及びY軸フラックスゲートそれぞれの第1検出コイル20及び第2検出コイル30から誘導起電力を検出する。このように、第1、第2検出コイル20、30に誘導された起電力は、信号処理部300に出力される。なお、第1検出コイル20と第2検出コイル30のコイル形成方向は、同じ方向である場合もあり、逆方向とすることもできる。コイル形成方向が同じ方向であるときは、第1検出コイル20及び第2検出コイル30から検出されたX軸及びY軸の出力値による座標上の点が原点を基準にして同じ方向に位置する。これに対し、コイル形成方向が逆方向であるときは、第1検出コイル20及び第2検出コイル30から検出されたX軸及びY軸の出力値による座標上の点が原点を基準にして逆方向に位置する。第1検出コイル20のコイルを巻いた巻数と第2検出コイル30の巻数が異なるように1:2の比率とする。しかし、第1検出コイル20と第2検出コイル30の巻数を1:2以外の比率で形成することもできる。
【0021】
図4は、本発明の一実施形態に係わる地磁気センサーによって検出されたX軸及びY軸の出力値及び方位角を示す図である。Hx軸とHy軸の座標上に表示されたX軸及びY軸の出力値及び方位角は、外部磁場の影響を受ける前の図であり、Hx’軸とHy’軸の座標上に表示されたX軸及びY軸の出力値及び方位角は、外部磁場の影響を受けた後の図である。外部磁場の影響を受ける前後の図において、それぞれ外部円は、第1検出コイル20から検出されたX軸及びY軸の出力値であり、内部円は、第2検出コイル30から検出されたX軸及びY軸の出力値である。
【0022】
ここで、Φは方位角を示し、Ψは外部磁場によってX軸及びY軸の出力値の中心が移動した角度を示す。そして、(Xc1、Yc1)と(Xc2、Yc2)はそれぞれ外部磁場の影響を受ける前後の中心である。X11、Y11とX12、Y12はそれぞれ外部磁場の影響を受ける前の第1検出コイル20、第2検出コイル30から検出されたX軸及びY軸の出力値である。X21、Y21とX22、Y22はそれぞれ外部磁場の影響を受けた後の第1検出コイル20、第2検出コイル30から検出されたX軸及びY軸の出力値である。
【0023】
図4を参照すれば、第1検出コイル20と第2検出コイル30から検出された出力値をX軸、Y軸に示すと、同じ方向のベクトルの大きさが異なる2点、つまりA1とA2、またはB1とB2が得られる。A1とA2は、外部磁場の影響を受ける前の図におけるX軸及びY軸座標上の点であり、B1とB2は、外部磁場の影響を受けた後の図におけるX軸及びY軸座標上の点である。
【0024】
外部磁場の影響を受ける前の磁場の方向は、原点OとA1を連結した直線の傾きであり、原点とA1を連結する直線の傾きは、検出された2点A1とA2を連結した傾きと同一である。また、外部磁場の影響を受けた後の磁場の方向は、外部磁場によって移動した原点O’とB1を連結した直線の傾きであり、原点とB1を連結する直線の傾きは、第1検出コイル20及び第2検出コイル30から検出された2点B1とB2を連結した傾きと同一である。
【0025】
ここで、外部磁場の影響によって2点A1とA2が相対的にそれぞれ2点B1とB2に移動する。従って、2点A1とA2を連結した直線の傾きと、2点B1とB2を連結した直線の傾きが同一である。その結果、移動した原点O’を地磁気センサーを回転させる補正によって求めなくても、分離された検出コイル第1検出コイル20及び第2検出コイル30から検出されたX軸及びY軸の出力値のみを用いて、磁場の方向及び強さを求めることができる。
【0026】
なお、外部磁場の影響を受ける前後の地磁気の方向が同一であるので、外部磁場の方向に関係なく磁場の方位角を求めることができる。
2つの検出コイルで検出されたX軸、Y軸の出力値を用いて示す外部磁場の影響を受ける前の方位角は次式で表される。
Φ=arctan((X11−X12)/(Y11−Y12))・・・(式1)
ここで、X11、Y11は、外部磁場の影響を受ける前の第1検出コイル20から検出されたX軸、Y軸の出力値であり、X12、Y12は、外部磁場の影響を受ける前の第2検出コイルから検出されたX軸、Y軸の出力値である。
【0027】
そして、2つの検出コイルで検出されたX軸、Y軸の出力値を用いて示した外部磁場の影響を受けた後の方位角は次式で表される。
Φ=arctan((X22−X21)/(Y22−Y21))・・・(式2)
ここで、X21、Y21は、外部磁場の影響を受けた後の第1検出コイル20から検出されたX軸、Y軸の出力値であり、X22、Y22は、外部磁場の影響を受けた後の第2検出コイル30から検出されたX軸、Y軸の出力値である。
【0028】
前記式1及び式2から分かるように、磁場の方位角がそれぞれ第1検出コイル20と第2検出コイル30から検出された2点に対する傾きの逆正接値(arctangent)であり、式1の結果と式2の結果は同一になる。これは前述したように、外部磁場の影響を受ける前の第1検出回路20及び第2検出回路30から検出されたそれぞれのX軸及びY軸の出力値による座標上の2点を連結した直線の傾きと外部磁場の影響を受けた後の第1検出回路20及び第2検出回路30から検出されたそれぞれのX軸及びY軸の出力値による座標上の2点を連結した直線の傾きが同一であるので、外部磁場に関係なく方位角が同一になる。
【0029】
一方、図4は、第1検出コイル20と第2検出コイル20のコイル形成方向が同じである場合を示し、第1検出回路から検出された出力値による座標上の点と、第2検出回路から検出された出力値による座標上の点が、それぞれ原点を基準にして座標上の第1象限の方向のベクトルとして同じ方向のベクトルで形成される。
図5は、本発明の一実施形態に係わる地磁気の歪みを自動補正する方法を示すフロー図である。
【0030】
同図を参照すれば、励磁コイル10が駆動信号生成部100から生成された駆動信号を受信する(S501)。駆動信号を受信した励磁コイル10は、地磁気検出部200のコア40を励磁させる。励磁コイル10に駆動信号が受信され、コア40が励磁された場合、第1検出コイル20及び第2検出コイル30には、外部磁界の強さと比例する起電力が誘導される。
【0031】
次に、外部磁界の強さと比例して第1、第2検出コイル20、30に誘導された起電力を検出する(S503)。第1、第2検出コイル20、30に誘導された起電力を信号処理部300に出力し、信号処理部300は、第1、第2検出コイル20、30から検出された電気的信号を一定の処理過程を経て所定のデジタル値に変換し出力する。
次に、第1、第2検出コイル20、30から検出された信号を用いて磁場の方向と方位角を計算する(S505)。X軸及びY軸の出力値を示す円形で外部磁場によって移動した原点を検出する必要が無く、外部磁場によって相対的に移動した第1、第2検出コイル20、30から検出されたX軸及びY軸の出力値を用いる。外部磁場の影響があったとしても、その影響で相対的に移動した第1、第2検出コイル20、30から検出された出力値による座標上の2点を連結した直線の傾きは、外部磁場の影響を受ける前の傾きと同一である。従って、原点と第1検出コイル20から検出された出力値による座標上の点を連結した直線の傾き、または原点と第2検出コイル30から検出された出力値による座標上の点を連結した傾きを利用して方位角を計算するのではなく、第1、第2検出コイル20、30から検出された出力値による2点の傾きを計算して磁場の方向と方位角を検出する。その検出方法は、図4を参照して説明した通りである。
【0032】
ここで、方位角は、制御部400が第1、第2検出コイル20、30から検出された出力値を用いて式2によって計算する。
以上では、本発明の好適な実施形態について図示し説明したが、本発明は、上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で請求している本発明の要旨を逸脱することなく当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも種々の変形実施が可能であることはもとより、そのような変更は、本発明の特許請求の範囲に含まれることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により製造された磁場の歪みを自動補正する地磁気センサーは、外部磁場の影響に関係なく磁場の方向及び強さを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の分離型構造の励磁コイルを有するフラックスゲートを示す。
【図2a】各々従来の補正された磁界検出結果及び外部磁場の影響を受ける前後の磁界検出結果を示す。
【図2b】各々従来の補正された磁界検出結果及び外部磁場の影響を受ける前後の磁界検出結果を示す。
【図3a】本発明の一実施形態に係わる地磁気センサーを示すブロック図である。
【図3b】本発明の一実施形態に係わる地磁気センサーの地磁気検出部の一部を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わる地磁気センサーによって検出されたX軸及びY軸の出力値及び方位角を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係わる地磁気の歪みを自動補正する方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0035】
10 励磁コイル
20 第1検出コイル
30 第2検出コイル
40 コア
100 駆動信号生成部
200 地磁気検出部
300 信号処理部
400 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するX軸及びY軸フラックスゲートを備え、駆動信号が印加されると、地磁気に対応する起電力を検出する地磁気検出部と、
前記地磁気検出部から出力される前記起電力を所定のX軸及びY軸の出力値に変換し出力する信号処理部と、
前記地磁気検出部に駆動信号を印加する駆動信号生成部と、
を備え、前記地磁気検出部のX軸及びY軸フラックスゲートは、それぞれコア、前記駆動信号を受信し前記コアを励磁させるソレノイド型励磁コイル、及び前記コアと前記励磁コイルによって誘導された前記起電力を検出できるようにコアをソレノイド状に巻線した構造であり、それぞれ異なる巻線数を有する少なくとも2つの検出コイルを備えることを特徴とする磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー。
【請求項2】
前記信号処理部から出力される前記X軸及びY軸の出力値に基づいて方位角を計算する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー。
【請求項3】
前記方位角(Φ)は、
Φ=arctan((X22−X21)/(Y22−Y21))
(ここで、X21、Y21は、外部磁場の影響を受ける前の前記検出コイルのうちの1つの検出コイルから検出された前記X軸、Y軸の出力値であり、X22、Y22は、前記外部磁場の影響を受けた後の前記検出コイルのうちのもう1つの検出コイルから検出された前記X軸、Y軸の出力値である)
によって計算することを特徴とする請求項2に記載の磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー。
【請求項4】
前記X軸及びY軸フラックスゲートの検出コイルは、巻線比がほぼ1:2である2つの検出コイルをそれぞれ備えることを特徴とする請求項1に記載の磁場の歪みを自動補正する地磁気センサー。
【請求項5】
互いに直交し、地磁気に対応して誘導される起電力を検出する少なくとも2つの検出コイルをそれぞれ備えるX軸及びY軸フラックスゲートを備える地磁気センサーの磁場の歪みを自動補正する方法において、
(a)前記X軸及びY軸フラックスゲートにそれぞれ駆動信号を印加する段階と、
(b)前記駆動信号によって前記X軸フラックスゲートに誘導された前記起電力を備えられた前記少なくとも2つの検出コイルを介してそれぞれ検出し、所定のX軸出力値に変換する段階と、
(c)前記駆動信号によって前記Y軸フラックスゲートに誘導された前記起電力を備えられた前記少なくとも2つの検出コイルを介してそれぞれ検出し、所定のY軸出力値に変換する段階と、
(d)前記X軸及びY軸の出力値に対応する座標上の点のうちの2点を連結した直線の傾きに基づいて、磁場の方向及び強さを算出する段階と、
を含むことを特徴とする磁場の歪みを自動補正する方法。
【請求項6】
前記X軸及びY軸フラックスゲートの検出コイルは、巻線比がほぼ1:2である2つの検出コイルをそれぞれ備えることを特徴とする請求項5に記載の磁場の歪みを自動補正する方法。
【請求項7】
前記(d)段階は、
Φ=arctan((X22−X21)/(Y22−Y21))
(ここで、X21、Y21は、外部磁場の影響を受ける前の前記検出コイルのうちの1つの検出コイルから検出された前記X軸、Y軸の出力値であり、X22、Y22は、前記外部磁場の影響を受けた後の前記検出コイルのうちのもう1つの検出コイルから検出された前記X軸、Y軸の出力値である)
によって算出した方位角(Φ)を用いて磁場の強さを算出することを特徴とする請求項5に記載の磁場の歪みを自動補正する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−53146(P2006−53146A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231132(P2005−231132)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】