説明

磁性の疎水性凝集塊

本発明は、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pと表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPとからなる凝集塊、その製造法ならびにこの凝集塊の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pと表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPとからなる凝集塊、この凝集塊の製造法、および粒子Pを前記粒子Pおよび他の成分を含有する混合物から分離するための前記凝集塊の使用に関する。
【0002】
少なくとも1つの磁性粒子および少なくとも1つの他の成分を含有する凝集塊は、公知技術水準から既に公知である。
【0003】
米国特許第4657666号明細書には、価値のある鉱石を富化する方法が開示されており、この場合脈石中に存在する価値のある鉱石は、磁性粒子と反応され、それによって疎水性の相互作用に基づいて凝集塊が形成される。磁性粒子は、疎水性化合物での処理によって表面上で疎水化され、したがって価値のある鉱石への結合が生じる。更に、凝集塊は、磁界によって前記混合物から分離される。記載された刊行物には、磁性粒子が添加される前に、価値のある鉱石が1%のナトリウム−エチルキサントゲネートの界面活性溶液で処理されることも開示されている。
【0004】
米国特許第4834898号明細書には、非磁性材料と界面活性剤からの2つの層で被覆されている磁性試薬との接触によって非磁性材料を分離する方法が開示されている。更に、米国特許第4834898号明細書には、分離されるべき非磁性粒子の表面電荷は、種々の種類および濃度の電解試薬によって影響を及ぼされうることが開示されている。例えば、表面電荷は、多価アニオン、例えばトリポリ燐酸イオンの添加によって変化される。
【0005】
WO 2007/008322A1には、磁気分離法によって不純物を鉱石(mineralischen Substanzen)から分離するために、表面上で疎水化された磁性粒子が開示されている。WO 2007/008322A1の記載によれば、溶液または分散液には、珪酸ナトリウム、ナトリウムポリアクリレートまたはナトリウムヘキサメタホスフェートから選択された分散剤が添加されてよい。
本発明の課題は、少なくとも1つの磁性粒子および少なくとも1つの他の粒子からなる凝集塊を提供することであり、この場合この少なくとも1つの他の粒子は、好ましくは1つの価値のある成分である。更に、本発明による凝集塊は、水中または極性媒体中で高い安定性を示すが、しかし、非極性媒体中では、安定性ではない。更に、この凝集塊は、疎水性の性質を有するはずである。更に、本発明の課題は、相応する凝集塊の磁性のために、磁界によって他の非磁性成分および他の非疎水性成分と分離されうる相応する凝集塊を提供することである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pと、表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPとからなる凝集塊によって解決される。
【0007】
更に、この課題は、前記凝集塊の製造法によって、および前記粒子Pおよび他の成分を含有する混合物から粒子Pを分離するための前記凝集塊の使用によって解決される。
【0008】
本発明の範囲内で、「疎水性」とは、相応する粒子が事後に少なくとも1つの界面活性剤での処理によって疎水化されうることを意味する。それ自体疎水性の粒子が少なくとも1つの界面活性剤での処理によって付加的に疎水化されることも可能である。
【0009】
「疎水性」とは、本発明の範囲内で、相応する「疎水性物質」の表面または「疎水化された物質」の表面が空気に対して水との90゜を上廻る接触角度を有することを意味する。「親水性」とは、本発明の範囲内で、相応する「親水性物質」の表面の表面が空気に対して水との90゜を下廻る接触角度を有することを意味する。
【0010】
本発明による凝集塊には、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pが存在する。
【0011】
本発明による凝集塊の1つの好ましい実施態様において、少なくとも1つの粒子Pは、少なくとも1つの金属化合物および/または炭素を含有する。
【0012】
特に好ましくは、少なくとも1つの粒子Pは、硫化鉱石、酸化物鉱石および/または炭酸塩含有鉱石、例えば藍銅鉱[Cu3(CO32(OH)2]またはマラカイト[Cu2[(OH)2[CO3]]]、または貴金属およびその化合物の群から選択された金属化合物を含有する。殊に好ましい実施態様において、少なくとも1つの粒子Pは、記載された金属化合物からなる。
【0013】
本発明により使用可能な硫化鉱石の例は、例えば銅藍CuS、硫化モリブデン(IV)、黄銅鉱(Kupferkies)CuFeS2、斑銅鋼Cu5FeS4、輝銅鉱(Kupferglanz)Cu2S、鉄、鉛、亜鉛またはモリブデンの硫化物、即ちFeS/FeS2、PbS、ZnSまたはMoS2およびこれらの混合物からなる銅鉱石の群から選択されたものである。
【0014】
適当な酸化物化合物は、金属および半金属の酸化物化合物、例えば金属および半金属の珪酸塩または硼酸塩または別の塩、例えば燐酸塩、硫酸塩または酸化物/水酸化物/炭酸塩および他の塩、例えばアズライト[Cu3(CO32(OH)2]、マラカイト[Cu2[(OH)2(CO3)]]、バライト(BaSO4)、モナザイト((La−Lu)PO4)である。
【0015】
適当な貴金属の例は、例えばAu、Pt、Pd、Rh等であり、この場合Ptは、主に合金化される。適当なPt/Pd鉱石は、スペルライト(Sperrlith)PtAs2、コオペリット(Cooperit)PtSまたはブラギット(Braggit)(Pt,Pd,Ni)Sである。
【0016】
本発明によれば、本発明による凝集塊中の存在する少なくとも1つの粒子Pは、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化されており、および少なくとも1つの磁性粒子MPは、表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化されている。本発明による凝集塊の1つの実施態様において、少なくとも1つの第1の界面活性剤と少なくとも1つの第2の界面活性剤とは、異なる。本発明による凝集塊のもう1つの実施態様において、少なくとも1つの第1の界面活性剤と少なくとも1つの第2の界面活性剤とは、同一である。
【0017】
本発明の範囲内の1つの好ましい実施態様において、「界面活性剤」は、粒子Pの表面が上記の定義の範囲内で疎水性になるように、粒子Pの表面が変化する状態にある物質を意味する。
【0018】
少なくとも1つの第1の界面活性剤として、好ましくは一般式(I)
A−Z (I)
〔式中、
Aは、直鎖状または分枝鎖状のC3〜C30アルキル、C3〜C30ヘテロアルキル、場合により置換されたC6〜C30アリール、場合により置換されたC6〜C30ヘテロアルキル、C6〜C30アラルキルから選択され、および
Zは、一般式(I)の化合物を少なくとも1つの粒子Pに結合する1つの基である〕で示される化合物が使用される。
【0019】
特に好ましい実施態様において、Aは、直鎖状または分枝鎖状のC4〜C12アルキルであり、殊に好ましいのは、直鎖状のC4アルキルまたはC8アルキルである。本発明によれば、場合によっては存在するヘテロ原子は、N、O、P、Sおよびハロゲン、例えばF、Cl、BrおよびIから選択される。
【0020】
更に、好ましい実施態様において、Aは、有利に直鎖状または分枝鎖状、好ましくは直鎖状のC6〜C20アルキルである。更に、Aは、有利に分枝鎖状C6〜C14アルキルであり、この場合有利に1〜6個の炭素原子を有する少なくとも1つの置換基は、有利に2位にあり、例えば2−エチルヘキシルおよび/または2−プロピルヘプチルである。
【0021】
更に、特に好ましい実施態様において、Zは、陰イオン性基−(X)n−PO32-、−(X)n−PO22-、−(X)n−POS22-、−(X)n−PS32-、−(X)n−PS2-、−(X)n−POS-、−(X)n−PO2-、−(X)n−PO32-、−(X)n−CO2-、−(X)n−CS2-、−(X)n−COS-、−(X)n−C(S)NHOH、−(X)n−S-からなる群から選択され、この場合Xは、O、S、NH、CH2からなる群から選択され、nは、0、1または2であり、および場合によっては陽イオンは、水素、NR4+、但し、この場合Rは互いに独立に水素および/またはC1〜C8アルキルであるものとし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる群から選択される。記載された陰イオンおよび相応する陽イオンは、本発明によれば、一般式(I)の非荷電化合物を形成する。
【0022】
記載された式中でnが2を表わす場合、2個の同一かまたは異なる、好ましくは同一の基Aは、基Zに結合して存在する。
【0023】
1つの特に好ましい実施態様において、キサンタンA−O−CS2-、ジアルキルジチオホスフェート(A−O)2−PS2-、ジアルキルジチオホスフィネート(A)2−PS2-およびこれらの混合物からなる群から選択された化合物が使用され、この場合Aは、互いに独立に直鎖状または分枝鎖状、好ましくは直鎖状のC6〜C20アルキル、例えばn−オクチルであるか、または分枝鎖状C6〜C14アルキルであり、この場合分枝鎖は、好ましくは2位に存在し、例えば2−エチルヘキシルおよび/または2−プロピルヘプチルである。対イオンとして、前記化合物中には,好ましくは水素、NR4+、但し、この場合Rは互いに独立に水素および/またはC1〜C8アルキルであるものとし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、殊にナトリウムまたはカリウムからなる群から選択される陽イオンが存在する。
【0024】
一般式(I)の殊に好ましい化合物は、ナトリウム−n−オクチルザンテートまたはカリウム−n−オクチルザンテート、ナトリウム−ブチルザンテートまたはカリウム−ブチルザンテート、ナトリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフィネートまたはカリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフィネート、ナトリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフェートまたはカリウム−ジ−n−オクチルジチオホスフェートおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0025】
貴金属、例えばAu、Pd、Rh等にとって特に好ましい界面活性剤は、ザンテート、チオカルバメートまたはヒドロキサメートである。更に、適当な界面活性剤は、例えば欧州特許第1200408号明細書B1中に記載されている。
【0026】
金属酸化物、例えばFeO(OH)、Fe34、ZnO等、炭酸塩、例えばアズライト[Cu3(CO32(OH)2]、マラカイト[Cu2[(OH)2CO3]]にとって特に好ましい界面活性剤は、オクチルホスホン酸(OPS)、(EtO)3Si−A、(MeO)3Si−Aであり、但し、Aは、上記の意味を有するものとする。
【0027】
金属硫化物、例えばCu2S、MoS2等の場合には、特に好ましい界面活性剤は、モノチオール、ジチオールおよびトリチオールまたはキサントゲネートである。
【0028】
本発明による方法のもう1つの好ましい実施態様において、Zは、−(X)n−CS2-、−(X)n−PO2-または−(X)n−S-を表わし、但し、この場合Xは、0であり、nは、0または1であり、陽イオンは、水素、ナトリウムまたはカリウムから選択される。殊に好ましい界面活性剤は、1−オクタンチオール、カリウム−n−オクチルザンテート、カリウム−ブチルザンテート、オクチルホスホン酸または次の式(IV)
【化1】

で示される化合物である。
【0029】
特に好ましくは、本発明による凝集塊中には、少なくとも1つの界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pが存在する。特に有利には、Pは、エチルキサントゲネートのカリウム塩、ブチルキサントゲネートのカリウム塩、オクチルキサントゲネートのカリウム塩、または別の脂肪族または分枝鎖状のキサントゲネートのカリウム塩、またはこれらの混合物で疎水化されたCu2Sである。更に、有利にエチルキサントゲネートのカリウム塩、ブチルキサントゲネートのカリウム塩、オクチルキサントゲネートのカリウム塩、または別の脂肪族または分枝鎖状のキサントゲネートのカリウム塩、またはこれらの混合物で疎水化されたPd含有合金である粒子Pが特に有利であり、殊に有利には、この粒子は、前記のカリウムザンテートとチオカルバメートとの混合物で疎水化されている。一般に、粒子PがRh、Pt、Pd、Au、Ag、IrまたはRuを含有する凝集塊は、好ましい。界面活性による疎水化は、相応する鉱石表面に適用され、従ってこの疎水化は、界面活性剤とRh、Pt、Pd、Au、Ag、IrまたはRuを含有する粒子Pとの最適な相互作用を生じる。
【0030】
本発明による凝集塊中に使用可能な粒子Pの表面を疎水化するための方法は、例えば物質中または分散液中での粒子Pと少なくとも1つの第1の界面活性剤との接触によって、当業者に公知である。例えば、粒子Pと少なくとも1つの界面活性剤は、他の分散剤なしに相応する量で一緒に供給され、および混合される。適当な混合装置、例えばミル、例えばボールミル(遊星振動ミル)は、当業者に公知である。更に、実施態様において、前記成分は、分散液中、有利に懸濁液中で一緒にされる。適当な分散剤は、例えば水、水溶性有機化合物、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルコール、およびこれらの混合物である。
【0031】
少なくとも1つの第1の界面活性剤は、一般に少なくとも1つの第1の界面活性剤と少なくとも1つの粒子Pとの総和に対して0.01〜5質量%、有利に0.01〜0.1質量%の量で少なくとも1つの粒子P上に存在する。界面活性剤の最適な含量は、一般に粒子Pの大きさに依存する。
【0032】
粒子Pは、一般に規則的に、例えば球状、ロール状、直方体状、または不規則に、例えば破片状に形成されていてよい。
【0033】
本発明によれば、粒子Pがなお少なくとも1つの他の粒子P2と結合していることは、可能である。粒子P2は、粒子Pに関連して記載された群から選択されてよい。粒子P2は、酸化物金属化合物または酸化物半金属化合物の群から選択されてもよい。
【0034】
表面が少なくとも1つの界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pは、一般に1nm〜10mm、有利に10〜100μmの直径を有する。非対称に形成された粒子の場合、当該粒子中に存在する最長の距離が直径と見なされる。
【0035】
更に、本発明による凝集塊は、表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPを含む。
【0036】
一般に、当業者に公知の全ての磁性物質および磁性粒子MPとしての物質を使用することができる。1つの好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子MPは、磁性金属、例えば鉄、コバルト、ニッケルおよびこれらの混合物、磁性金属の強磁性合金、例えばNdFeB、SmCoおよびこれらの混合物、磁性酸化鉄、例えば磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、一般式(II)
2+xFe2+1-xFe3+24 (II)
〔式中、Mは、Co、Ni、Mn、Znおよびこれらの混合物から選択され、xは、1以下である〕で示される立方晶フェライト、六方晶フェライト、例えばMFe619、但し、この場合Mは、Ca、Sr、Baおよびこれらの混合物であるものとし、からなる群から選択される。磁性粒子MPは、付加的に例えばSiO2からなる外層を有していてよい。
【0037】
本発明の特に好ましい実施態様において、少なくとも1つの磁性粒子MPは、鉄、磁鉄鉱またはコバルトフェライトCo2+xFe2+1-xFe3+24であり、但し、この場合xは、1以下であるものとする。
【0038】
磁性粒子MPは、一般に規則的に、例えば球状、ロール状、直方体状、または不規則に、例えば破片状に形成されていてよい。
【0039】
表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPは、一般に10nm〜1000mm、有利に100nm〜1mm,特に有利に500nm〜500μm、殊に有利に1〜100μmの直径を有する。非対称に形成された磁性粒子の場合、当該粒子中に存在する最長の距離が直径と見なされる。
【0040】
特に有利には、粒子Pと類似の粒径分布を有する磁性粒子MPが使用される。この粒径分布は、単峰性、双峰性または三峰性であってよい。
【0041】
磁性粒子MPは、場合によっては本発明による使用の前に当業者に公知の方法により、例えば粉砕によって相応する大きさに変換されてよい。
【0042】
本発明により使用可能な磁性粒子MPは、有利に0.01〜50m2/g、特に有利に0.1〜20m2/g、殊に有利に0.2〜10m2/gの比BET表面積を有する。
【0043】
本発明により使用可能な磁性粒子MPは、有利に3〜10g/cm3、特に有利に4〜8g/cm3の密度(DIN 53193により測定した)を有する。
【0044】
本発明による凝集塊中に存在する少なくとも1つの磁性粒子MPは、表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化されている。好ましくは、少なくとも1つの第2の界面活性剤は、一般式(III)
B−Y (III)
[式中、
Bは、直鎖状または分枝鎖状のC3〜C30アルキル、C3〜C30ヘテロアルキル、場合により置換されたC6〜C30アリール、場合により置換されたC6〜C30ヘテロアルキル、C6〜C30アラルキルから選択され、および
Yは、一般式(III)の化合物を少なくとも1つの磁性粒子MPに結合させる基である〕で示される化合物から選択される。
【0045】
特に好ましい実施態様において、Bは、直鎖状または分枝鎖状のC6〜C18アルキル、有利に直鎖状C8〜C12アルキル、殊に有利に直鎖状C12アルキルである。本発明によれば、場合によっては存在するヘテロ原子は、N、O、P、Sおよびハロゲン、例えばF、Cl、BrおよびIから選択される。
【0046】
更に、特に好ましい実施態様において、Yは、−(X)n−SiHal3、−(X)n−SiHHal2、−(X)n−SiH2Hal、但し、この場合Halは、F、Cl、Br、Iであるものとし、陰イオン性基、例えば−(X)n−SiO33-、−(X)n−CO2-、−(X)n−PO32-、−(X)n−PO22-、−(X)n−POS22-、−(X)n−PS32-、−(X)n−PS2-、−(X)n−POS-、−(X)n−PO2-、−(X)n−CO2-、−(X)n−CS2-、−(X)n−COS-、−(X)n−C(S)NHOH、−(X)n−S-、但し、この場合Xは、O、S、NH、CH2であり、nは、0、1または2であるものとし、場合によっては水素、NR4+、但し、この場合Rは、互いに独立に水素および/またはC1〜C8アルキルであるものとし、アルカリ金属、アルカリ土類金属または亜鉛、さらに−(X)n−Si(OZ)3、但し、この場合nは、0、1または2であり、Zは、電荷、水素または短鎖状アルキル基であるものとし、からなる群から選択される。
【0047】
記載された式においてnが2を表わす場合、2個の同一かまたは異なる、好ましくは同一の基Bは、基Yに結合して存在する。
【0048】
一般式(III)の殊に好ましい疎水性物質は、アルキルトリクロロシラン(6〜12個の炭素原子を有するアルキル基)、アルキルトリメトキシシラン(6〜12個の炭素原子を有するアルキル基)、オクチルホスホン酸、ラウリン酸、油酸、ステアリン酸またはこれらの混合物である。
【0049】
少なくとも1つの第2の界面活性剤は、少なくとも1つの第2の界面活性剤と少なくとも1つの磁性粒子MPとの総和に対して有利に0.01〜0.1質量%の量で少なくとも1つの磁性粒子MP上に存在する。少なくとも1つの第2の界面活性剤の最適な量は、磁性粒子MPの大きさに依存する。
【0050】
特に好ましくは、本発明による凝集塊中に、少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPとして、ドデシルトリクロロシランで疎水化された磁鉄鉱および/またはオクチルホスホン酸で疎水化された磁鉄鉱が存在する。
【0051】
少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された磁性粒子MPは、当業者に公知の全ての公知方法により、有利に疎水化された粒子Pに関連した記載と同様に製造されてよい。
【0052】
本発明による凝集塊中には、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pと表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPとが一般に任意の量比で存在する。
【0053】
本発明による凝集塊の1つの好ましい実施態様において、それぞれ全凝集塊に対して、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pは、10〜90質量%、有利に20〜80質量%、特に有利に40〜60質量%であり、および表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPは、10〜90質量%、有利に20〜80質量%、特に有利に40〜60質量%であり、この場合総和は、それぞれ100質量%である。特に好ましい実施態様において、本発明による凝集塊中には、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子P50質量%および表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MP50質量%が存在する。この場合、磁性粒子MPの磁気特性に応じて凝集塊は、全体としてなお外部磁界の影響下に磁気的に偏向されうることに注意すべきである。この場合、PとMPとの比は、凝集塊が外部磁石に対して90°の角度で300mm/秒で流れすぎる場合に、(例えば強いCoSm永久磁石により発生されうる)外部磁界が前記粒子をなお磁気的に偏向しうるように、特に有利に選択される。更に、凝集塊内でのPとMPとの疎水性の相互作用は、一般に前記の流速でPおよびMPを安定のままにしておく、即ち取り壊されないのに十分な強さである。
【0054】
表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pと表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子との結合は、本発明による凝集塊中で疎水性の相互作用によって生じる。
【0055】
本発明による凝集塊の直径は、粒子Pまたは磁性粒子MPの百分率での割合、粒子Pまたは磁性粒子MPの直径ならびに界面活性剤の種類および量に依存する粒子間の中間空隙に依存する。
【0056】
本発明による凝集塊は、一般に磁性を有し、したがって、凝集塊が300mm/秒の流速で外部磁石に対して90°で移動するならば、例えば強いCoSm永久磁石によって発生されうる外部磁界が前記粒子を少なくともなお磁気的に偏向しうる。凝集塊内でのPとMPとの疎水性の相互作用は、一般にこれらPとMPが記載された流速で安定したままであり、即ち取り壊されないのに十分な強さである。
【0057】
一般に、有利に少なくとも1つの粒子Pまたは少なくとも1つの磁性粒子MPが破壊されることなく、本発明による凝集塊は、非極性媒体中、例えばディーゼル油またはアセトン中で解離されうる。
【0058】
本発明による凝集塊は、例えば物質中または分散液中で、例えば少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された粒子Pと少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された磁性粒子MPとの接触によって製造されうる。例えば、疎水化された粒子Pと疎水化された磁性粒子MPとは、他の分散剤なしに相応する量で一緒に供給され、および混合される。もう1つの実施態様において、粒子Pと磁性粒子MP、但し、この場合これら双方の中の1つだけは疎水化されているものとし、は、なお疎水化されていない粒子のために界面活性剤の存在下で他の分散剤なしに相応する量で一緒に供給され、および混合される。もう1つの実施態様において、粒子Pと磁性粒子MP、但し、この場合これら双方は疎水化されていないものとし、は、少なくとも1つの第1の界面活性剤および少なくとも1つの第2の界面活性剤の存在下で他の分散剤なしに相応する量で一緒に供給され、および混合される。適当な混合装置、例えばミル、例えばボールミルは、当業者に公知である。
【0059】
更に、上記の方法は、適当な分散媒体の存在下で実施されてもよい。
【0060】
本発明による方法に適した分散剤は、例えば水、水溶性有機化合物、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルコール、およびこれらの混合物である。
【0061】
従って、本発明は、凝集塊を得るために、少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された粒子Pと少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された磁性粒子MPとの接触を含む、本発明による凝集塊を製造する方法にも関する。
【0062】
本発明による方法は、一般に5〜50℃の温度、有利に環境温度で実施される。
【0063】
本発明による方法は、一般に大気圧で実施される。
【0064】
本発明による凝集塊が得られた後に、この凝集塊は、場合により存在する溶剤または分散剤と、当業者に公知の方法、例えば濾過、デカンテーション、沈降および/または磁気的方法によって分離されうる。
【0065】
本発明による凝集塊は、前記粒子Pおよび他の成分を含有する混合物から相応する粒子Pを分離するために使用されてよい。例えば、粒子Pは、価値のある鉱石であり、他の成分は、脈石である。磁性粒子MPを粒子Pを含有する混合物に添加することにより本発明による凝集塊を形成させた後に、この凝集塊は、前記混合物から、例えば磁界の印加によって分離されることができる。この凝集塊は、分離後に当業者に公知の方法により分解されることができる。
【0066】
従って、本発明は、前記粒子Pおよび他の成分を含有する混合物から粒子Pを分離するため、例えば脈石を含有する粗製鉱石から価値のある鉱石を分離するための本発明による凝集塊の使用にも関する。
【実施例】
【0067】
実施例
磁鉄鉱3g(Fe34、直径4μm)を水30ml中のオクチルホスホン酸0.5質量%と一緒に半時間強力に攪拌する(200rpm)。引続き、液状成分を真空中で除去する。次に、硫化Cu0.7質量%を含有する鉱石混合物100gを添加する。この鉱石混合物の主成分は、SiO2である。この鉱石混合物および疎水化された磁鉄鉱にオクチルザンテート1kg/lを添加し、この系を5分間遊星ボールミル(200rpm、ZrO2ボール、直径1.7〜2.3mm)中で処理する。引続き、この系を水中に添加する。この媒体中で、本発明による疎水性凝集塊は、疎水性磁鉄鉱と選択的に疎水化された硫化銅との間で形成する。この凝集塊は、強力な永久磁石の作用によって320mm/秒を上廻る流速で磁石に対して垂直方向に留めておくことができ、この場合疎水性凝集塊は、破壊されることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pと、表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPとからなる凝集塊。
【請求項2】
少なくとも1つの粒子Pが少なくとも1つの金属化合物および/または炭素を含有する、請求項1記載の凝集塊。
【請求項3】
少なくとも1つの磁性粒子MPが、磁性金属およびその混合物、磁性金属の強磁性合金およびその混合物、磁性酸化鉄、一般式(II)
2+xFe2+1-xFe3+24 (II)
〔式中、Mは、Co、Ni、Mn、Znおよびこれらの混合物から選択され、xは、1以下である〕で示される立方晶フェライト、六方晶フェライトおよびその混合物からなる群から選択される、請求項1または2記載の凝集塊。
【請求項4】
少なくとも1つの第1の界面活性剤として一般式(I)
A−Z (I)
〔式中、
Aは、直鎖状または分枝鎖状のC3〜C30アルキル、C3〜C30ヘテロアルキル、場合により置換されたC6〜C30アリール、場合により置換されたC6〜C30ヘテロアルキル、C6〜C30アラルキルから選択され、および
Zは、一般式(I)の化合物を少なくとも1つの粒子Pに結合する1つの基である〕で示される化合物が使用される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の凝集塊。
【請求項5】
少なくとも1つの第2の界面活性剤が、一般式(III)
B−Y (III)
[式中、
Bは、直鎖状または分枝鎖状のC3〜C30アルキル、C3〜C30ヘテロアルキル、場合により置換されたC6〜C30アリール、場合により置換されたC6〜C30ヘテロアルキル、C6〜C30アリールアルキルから選択され、および
Yは、一般式(III)の化合物を少なくとも1つの磁性粒子MPに結合する1つの基である〕で示される化合物から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の凝集塊。
【請求項6】
それぞれ全凝集塊に対して、表面が少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの粒子Pは、10〜90質量%であり、および表面が少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された少なくとも1つの磁性粒子MPは、10〜90質量%であり、この場合総和は、それぞれ100質量%である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の凝集塊。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の凝集塊の製造法であって、少なくとも1つの第1の界面活性剤で疎水化された粒子Pと少なくとも1つの第2の界面活性剤で疎水化された磁性粒子MPとを接触させ、凝集塊を得ることを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の凝集塊の製造法。
【請求項8】
粒子Pおよび他の成分を含有する混合物から粒子Pを分離するための請求項1から6までのいずれか1項に記載の凝集塊の使用。

【公表番号】特表2012−519073(P2012−519073A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552428(P2011−552428)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052667
【国際公開番号】WO2010/100180
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】