説明

磁性ピグメントおよび磁性特性を向上するプロセス

真珠光沢を有するピグメントおよび真珠光沢を有するピグメントの磁性特性を向上させるための方法。真珠光沢を有するピグメントはγ−Feの領域とα−Feの領域を有する層を含む。真珠光沢を有するピグメントの磁性特性は0.1×10−5 /kg未満の磁化率を有し、Feの層を備えた板状のピグメントを提供すること、Feのうちのいくらかまたは全部をFeに還元すること、およびFeのうちのいくらかまたは全部をγ−Feへ酸化することにより増大される。提供されるピグメントと得られるピグメントの間の色差(ΔE)は、約5を超えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2008年4月9日に出願された同じ発明の名称の、出願番号12/100,026の仮特許出願の利益を要求する。その開示は、その全体が参照され本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
宝石(例えばダイヤモンド、ルビー、エメラルド、トパーズ、オパール、ヒスイ)、および貴金属(例えば金、銀、白金)に加えて、真珠が数千年の間人類にとって、最も重視された所有物(または贅沢品)であった。それらの自然な美、光り輝く色および光沢に加え、それらは、しばしば安楽な社会的身分および階層を表す。その結果、驚くべきことではないが、化粧品メーキャップの傾向は、真珠、宝石および貴金属の「自然で」、「審美的な」外観を、干渉ピグメント(例えば、金属酸化物でコーティングされた雲母)のようなそれほど高価でない材料で模倣するものであった。効果ピグメントの最も一般的なタイプは、微粉にされた二酸化チタン、金属酸化物でコーティングされた雲母、金属酸化物でコーティングされたアルミナ、金属酸化物でコーティングされたシリカ、塩基性炭酸鉛、オキシ塩化ビスマスおよび天然の魚銀である。
【0003】
金属酸化物でコーティングされた雲母ピグメントは、優れた光学的、化学的、機械的、毒物学的および環境上の特性により特徴づけられる。天然または合成雲母、および代替えの支持体、たとえばアルミニウムフレークまたはSiO板状物が単独で使用されるか、または二酸化チタン、酸化鉄(FeまたはFe)、鉄フェロシアン化物(紺青または紺青)、酸化錫および酸化クロムの担体として使用できる。これらのコーティングされた雲母ベースのピグメントにより定義された色空間は、使用されたコーティング(例えば金属酸化物、着色剤など)の種類、層の厚さおよびコーティングの層の数に基づく。
【0004】
天然真珠で、最も高価なものは黒真珠である。それは様々なアンダートーン(undertone)およびカラーフロップ(color flop)を呈する。化粧用のメーキャップにおいてこの審美的な光学的結果を誠実に模倣することは、化粧用のピグメントメーカーおよび配合者が直面する最も高い挑戦のうちの1つである。これらのピグメントへの従来のアプローチは、白い板状の真珠光沢のあるピグメント(例えば、TiOでコーティングされた雲母、TiOでコーティングされたホウケイ酸塩、TiOでコーティングされたアルミナ)に暗いソリッドカラーの無機顔料(例えば黒色酸化鉄またはカーボンブラック)を混ぜ合わせることである。板状の干渉ピグメントはつや、輝度(反射)、透明性および被写界深度を提供する。ソリッドカラーピグメントは暗いアンダートーンおよび表面被覆を提供する。しかしながら、この種の混合は天然真珠と比較して、通常過剰に「より汚く」、「つやが不足し」、「透明性が不足」している。その主な理由はソリッドカラー色素果粒による、白い真珠光沢のあるピグメントの滑らかな表面の汚損であり、これは光散乱および光干渉の破壊を導く。
【0005】
金属酸化物でコーティングされた板状ピグメントは磁性を有するか、または磁化率を示すことがある。液体コーティングに入れられた時、コーティングされたピグメント領域は外部から加えられた磁界によって整列し、角度彩色性(goniochromatic)または角度依存性の光学的効果を生ずる。この効果は、2次元または3次元のイメージを作成するために使用することができる。ピグメントが整列した後、コーティングは光学的結果を固定するために硬化されることができる。ピグメントおよびそれを整列する方法は、米国特許6,589,331;6,902,807;5,223,360;6,759,097;および7,258,900で議論されている。
【0006】
金属で着色(銅色、ブロンズ色、えび茶色/あずき色、金など)された真珠光沢を有するピグメントの使用は広範囲で、化粧品、プラスチック、高度なセキュリティ印刷および自動車・産業用コーティングのような分野に適用できる。現在商業的に利用可能なものとしては以下があげられる:メルク社のIriodin(登録商標)、Xirallic(登録商標)、Timiron(登録商標)、Xirona(登録商標)およびColorona(登録商標)シリーズ、BASF社のCloisonne(登録商標)およびTimica(登録商標)シリーズ、サンケミカル社のSunPearl(登録商標)およびSunshine(登録商標) シリーズ。これらのピグメントのシリーズに含まれている金属の真珠光沢の色合い(ブロンズ色、銅色、あずき色など)は、一般に、たとえば雲母、Al板状物、カルシウムホウケイ酸塩または他のラメラ状基体のような板状の基体の表面上にα−Fe(ヘマタイト)を堆積して作られる。このタイプの単層ピグメントは、酸化鉄層の厚さと直接関係する干渉色と組み合わされた黄色−赤の吸光色を有する。光反射、吸収および干渉の組合わせは、金色から深いえび茶色に及ぶ真珠光沢のある輝きを生むために利用できる。さらに、鉄酸化物が入射光の一部を吸収する場合には、これらのピグメントは、透明なTiOをコーティングされた真珠光沢ピグメントおよび不透明な金属効果ピグメント(たとえばアルミニウムフレーク)の中間の隠ぺい力によって定義される。
【0007】
α−Feでコーティングされた板状の基体で構成された真珠光沢を有するピグメントは、一般に0.01から0.02×10−5 /kgの質量磁化率値(magnetic mass susceptibility value)を有している。したがって、これらのピグメントは、たとえば米国特許5,223,360;6,645,286;および6,759,097に記載されるような、ピグメント配向を操作するために外部磁界を利用する印刷方法を利用することは容易ではない。Fe(マグネタイト)でコーティングされた板状の基体は、はるかに大きな磁化率によって定義される。例えば、Colorona(登録商標)Blackstar Red、およびBlackstar Goldは、それぞれ11.56×10−5および11.08×10−5 /kgの質量磁化率値を有している。これらのタイプのピグメントは磁気的に整列されてコーティングする用途において使用できる;しかしながら、それらは、非常に狭い色空間(暗い色合いまたは弱められた干渉色の暗い色合い)内に一般に制限される。
【0008】
従って、より大きな磁化率を備えたピグメントで、より多くの色を有し、製造が容易なピグメントに対する大きな必要性が存在している。
【0009】
概略
上記および他の欠点は、基体および層を含むピグメントであって、該層がγ−Fe領域およびα−Fe領域を有するものの提供により克服されることができる。
【0010】
ピグメントの磁性特性は以下の工程によって向上されることができる:
0.1×10−5 /kg未満の磁化率を有し、Feの層を備えた板状のピグメントを提供すること;
Feのうちのいくらかまたは全部をFeに還元すること;および
Feのうちのいくらかまたは全部をγ−Feへ酸化すること。
【0011】
1つの実施態様では、以下の工程を含むピグメントの製造方法が提供される:
板状のピグメントの提供;
質量磁化率を増加させること;
ここで、提供されるピグメントと得られるピグメントの間の色差(ΔE)は、約5を超えない。
【0012】
別の実施態様では、以下の工程を含む製造方法によって形成されたピグメントが提供される:
板状のピグメントの提供;
質量磁化率を増加させること;
ここで、提供されるピグメントと得られるピグメントの間の色差(ΔE)は、約5を超えない。
【0013】
これらおよび他の目的および効果は、添付の図面および詳細な説明から明らかにされる。
【0014】
詳細な説明
ピグメントの磁性特性を向上する方法は、Feの層を有し、0.1×10−5 /kg未満の磁化率を有する、板状のピグメントを提供する工程;
Feのうちのいくらかまたは全部をFeに還元すること;およびFeのうちのいくらかまたは全部をγ−Feへ酸化することを含む。
【0015】
1つの実施態様では、真珠光沢を有するピグメントは基体および層を有し、該層はγ−Feおよびα−Feの領域を有している。1つの実施態様では、γ−Feの領域は、α−Feの領域より基体から離れている。酸化鉄でコーティングされた基体は、高いつやと、強く色付けされた真珠光沢を有するピグメントとなる。基体および酸化鉄層の厚さを変えることにより、ピグメントの色、明るさおよび透明性を変更することができる。第一の層の平均厚さは、約1nmから約350nm、約10nmから約350nm、または約10nmから約250nmまでであることができる。
【0016】
1つの実施態様では、ピグメントは、基体と第1の層の間に位置する第2の層を含むことができる。該第2の層は約1.6より大きいか、または約1.4未満の屈折率を有することができる。第2の層は、約1.8以上の屈折率を有することができる。1つの実施態様では、第2の層は次のものを含む:TiO、Fe、FeOOH、ZrO、SnO、Cr、BiOClおよびZnO。第2の層は1つ以上の物質を含むことができる。第2の層はTiOであることができる。第2の層は、Fe、Fe、FeOOH、FeOおよびFe(OH)のような酸化鉄であることができる。第2の層の平均厚さは、約50nmから約800nmまで、または約100nmから約600nmまでであることができる。
【0017】
特定の色を有する真珠光沢を有するピグメントの合成は適切な基体材料の選択から始まる。基体は、天然雲母、合成雲母、ガラスフレーク、金属フレーク、タルク、カオリン、Al板状物、SiO板状物、TiO板状物、グラファイト板状物、BiOCl、カルシウムホウケイ酸塩、合成アルミナおよび窒化ホウ素で構成されることができる。
ガラスフレークの例はホウケイ酸塩である。ガラスフレークは、主としてSiOとAlからなり、ZnO、CaO、B、NaOおよびKO、並びにFeOおよびFeをさらに含むことができる。金属フレークの例としては、アルミニウム、銅、亜鉛、および展性を有する他の金属および合金があげられる。展性を有する他の金属および合金の例としては、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−亜鉛合金、アルミニウム−ニッケル合金およびアルミニウム−マグネシウム合金があげられる。金属フレークは、単独でまたはそれの任意の組合わせので使用されてもよい。基体は多層の材料であることができ、たとえば異なる屈折率の複数の材料を含むことができる。基体は雲母を含むことができる。真珠光沢を有するピグメントは、異なる基体の混合物を含むことができる。基体は、粒径が異なる同一または異なるフレークで作られることができる。基体の他の例は繊維である。繊維基体の例としては炭素繊維、ガラス繊維およびポリマーの繊維があげられる。
【0018】
1つの実施態様では、基体は板状で、約0.05から約1.5μmの平均厚さ、および約1から約750μmの平均幅を有することができる。基体は、約10から約60μm、約5から約25μm、約10から約100μm、約40から約250μm、または約95から約730μmの平均幅を有することができる。
【0019】
α−Feでコーティングされた板状の基体の製造方法は公知である。一般に、α−Fe表面層の堆積は、FeOOHまたはFeOOHの様々な変成物の沈殿と、引き続いて400℃から1100℃の間の温度でアニールすることによって達成される。このプロセスは染料およびピグメント(Dyes and Pigments),58(2003),239−244、並びに米国特許3,926,659;3,087,829;および3,926,659に記載されている。α−Feでコーティングされた板状のピグメントの色は、光干渉および吸収の相互作用によって決定される。α−Fe層の正確な制御を通じて、輝く金属の効果はブロンズ色黄色から深い赤まで生むことができる。
【0020】
ヘマタイト(α−Fe)は弱い酸化鉄磁性体である。α−Feの層を含んでいる天然雲母に基づいたピグメントは、一般に約0.01から0.02×10−5 /kgに及ぶ質量磁化率値を有している。それらのポピュラーで魅力的な色を維持しつつ、これらのような真珠光沢を有するピグメントの質量磁化率を増加させることは、磁気的に整列されたコーティングの利用可能な色空間を拡張して、適用された外部磁界を介して硬化されていないコーティングまたは液体に基づいたサスペンジョン中の板状の配向操作を許容する。
【0021】
質量磁化率はα−(Fe)の部分的な還元と、引き続くγ−(Fe)への酸化によって向上されることができる。還元は多くの方法で行うことができ、たとえばNaBHの使用、還元雰囲気中でのか焼、または貴金属触媒の存在下での懸濁された固体溶液の均一化された水素化のような多くの方法によって遂行される。均一化された水素化の例は米国特許出願11/931,534に記載され、その全体が参照され本出願に組み入れられる。
【0022】
懸濁された固体溶液の水素化の間、触媒と懸濁溶剤が一つの均一な相として挙動する場合には、α−Feでコーティングされた基体と触媒との間の十分な接触が達成される。触媒粒径がナノスケール(1から30nm)に接近するとともに、不均一触媒に固有の物質移動制限は、体積に対して非常に大きな触媒表面積のため緩和される。
【0023】
撹拌は溶剤中への水素輸送用の界面面積をコントロールし、基体の沈降を防ぐので、撹拌は還元に影響を及ぼす。増大した撹拌は一般に改良された還元速度に帰着するが、さらにそれは、ピグメントフラグメンテーション(特に60μm以上の粒子について)によりピグメントのつやの逸失に帰着することがある。増加した触媒量または時間は、Fe(III)表面層のさらなる還元とより大きな質量磁化率に帰着する。
【0024】
還元はFeをFeに変換する。これはγ−Feに酸化した時に、出発物質基体に比べて最終ピグメントの色を著しく変更しない。還元の後に生産されたピグメントは、その対応する出発物質基体より著しく暗い。還元の程度に依存して、出発物質基体の質量磁化率は最大3桁まで増加される場合がある。
【0025】
出発物質基体の元の色を回復するために、水素と化合したピグメントは酸化される。酸化鉄を酸化する1つの方法は、約350℃より高い温度でのか焼による。か焼は、400から1100℃の温度ですることができる。か焼は空気のような酸化雰囲気で行うことができる。か焼は外側のマグネタイト層を、他の高度に磁性を有する酸化鉄であるマグヘマイト(γ−Fe)に変換する。かくして出発物質ピグメントに比較して比較的等価な色(約1未満のΔE)を備えた磁性ピグメントを得る。
【0026】
再酸化後には、ピグメントに含まれているFeの全体量はほぼ等しい。ただ一つの変化は、Feの形態(つまり雲母+α−Feが雲母+α−Fe+γ−Feに変換される)であり、これは最小の色変化を与えるが、質量磁化率の劇的な変化に帰着する。1つの実施態様では、α−Feのγ−Feへの比率は約0.05から約50である。したがって、金属色調の真珠光沢を有するピグメントは、磁気的に整列されたコーティング用途のための著しく増大した利用可能な色空間を有する磁性ピグメントに変換される。1つの実施態様では、還元前と酸化後のピグメントの色差(ΔE)は、約5以下である。1つの実施態様では、ピグメントは、約0.1×10−5からl5xl0−5 /kgの磁化率を有している。
【0027】
1つの実施態様では、ピグメントは第1の層の上に付加的な外部の層を有することができる。外側の層は金属酸化物を含むことができる。金属酸化物の例としては、TiO、Fe、FeOOH、ZrO、SnO、Cr、BiOClおよびZnOがあげられる。外側の層はピグメントの色を変更することができ、還元前のピグメントの色にもはや類似しないようにすることができる。
【0028】
1つの実施態様では、真珠光沢を有するピグメントを作る方法は、以下の工程を含む:
板状のピグメントの提供;
質量磁化率を増加させること;
ここで、提供されるピグメントと得られるピグメントの間の色差(ΔE)は、約5以下である。
【0029】
別の実施態様では、以下の工程を含む方法で製造された真珠光沢を有するピグメントが提供される:
板状のピグメントの提供;
質量磁化率を増加させること;
ここで、提供されるピグメントと得られるピグメントの間の色差(ΔE)は、約5以下である。
【0030】
本発明の方法は従来の、金属色調の、低磁性Feでコーティングされた真珠光沢を有するピグメントを、それらの色を変化せずに、高い磁性のピグメントへ変換する。
これは、酸化鉄でコーティングされた磁性ピグメントの利用可能な色範囲を、黒または茶色、または弱められた干渉色を備えた暗い色合い、たとえばColorona(登録商標)Blackstar Blue,Red,Green,および Goldのような暗い色を超えて拡張する。記載されたプロセスに基づいて、従来のブロンズ色、銅色、あずき色および他の従来の金属の真珠光沢を有するピグメントは、磁気的に整列されたコーティングに適用できる。
【0031】
さらに、非磁性の出発物質と磁性を有する生成物との間の色差は、目視では容易に識別できない。これは、両方のピグメントを含む、興味深くコスト効率の良いデザインの機会を許容する。例えば、自動車用途では、記載された磁性の真珠光沢を有するピグメントは、ピグメントの磁性特性を利用して三次元の紋章、ロゴ、デザインなどのようなアクセントのために使用することができ、自動車のボディの残りの部分は同じ色の、磁性のない真珠光沢を有するピグメントを使用して、従来のプロセスによってコーティングされることができる。
【0032】
色のマッチングがされた磁性を有する真珠光沢を有するピグメントと磁性を有しない真珠光沢を有するピグメントは、2つのピグメント(乾燥したピグメントまたは硬化されていない液体に基づいたディスプレイ)の組合わせに基づいた、予め区切られたディスプレイに使用することができる。2つのピグメントは同じ色を有していて、判別不能である。したがって、ディスプレイセグメント(磁性ピグメントを含む)とディスプレイバックグラウンド(磁性のないピグメントを含む)の間に検出できない転移がある。ディスプレイセグメントおよびバックグラウンドはそれぞれ磁性のないピグメントと磁性を有するピグメントを含んでいることができる。磁界を加えることにより、磁性ピグメントは再配向し、それらは磁性がないピグメントとは異なる色を有することができる。異なる方向に磁界を加えることにより、磁性ピグメントが磁性のないピグメントと同じ色を有することを可能にするだろう。磁性ピグメントの配向は磁場を加え続けることなく持続するので、よりエネルギー効率の良いディスプレイを許容する。色マッチングされた磁性を有するピグメントと磁性を有しないピグメントの別の潜在的な用途はセキュリティと商標保護の領域にある。磁性フレークを含むインキまたはコーティングを機密文書上に塗布する間、または塗布後に1以上の磁場により、ある形状を追従する特定の方向に磁性フレークを優先的に配向することにより、3D効果を作り出すことができる。従来のグラフィックアートインキでそのような特徴を再現することはほとんど不可能である。さらに、物品上に隠された磁気模様を例えばイメージまたはコードの形で印刷することが可能である。ドキュメント上を進む磁性プローブまたはリーダによって、この隠れたイメージを読むことができ、あるいは判定することができる。物品の例としては、小切手や、パスポート、運転免許、身分証明書またはクレジットカードのような機密文書があげられる。
【0033】
α−Feでコーティングされた真珠光沢を有するピグメントの磁化率を、乾燥した顔料着色剤、およびコーティング中のピグメントの外観の両方において、全体として色を少し変えるだけか、または全く変えないで著しく向上させることができる。磁性ピグメントは記載された方法によって生産されることができる。コーティングの面に垂直な方向て゜の板状物の最大配向領域における、その対応する色は外部磁界によって制御され、黒(Fe表面コーティング)または赤(γ−Feコーティング)であることができる。
【0034】
光、水撥水性、耐候性、テクスチャー、分散安定性を改良するために、塗布の領域に応じて、最終のピグメントを表面処理することが多くの場合望ましい。表面処理の例としては、メチコン(ポリ(オキシ(メチルシリレン)))、金属セッケン、脂肪酸、水素化レシチン、ジメチコン(ポリジメチルシロキサン)、フッ素化化合物、アミノ酸、N−アクリルアミノ酸、グリセリルロジネート、シラン類およびそれらの組合わせがあげられる。多くのプロセスが、米国特許6,790,452;5,368,639;5,326,392;5,486,631;4,606,914;4,622,074;5,759,255;5,759,255;5,571,851;5,472,491;4,544,415;および5,759,255;ドイツ特許22 15 191;DE−A 31 51 354;DE−A 32 35 017;DE−A 33 34 598;DE 40 30 727 Al;EP 0 649 886A2;WO 97/29059;WO 99/57204;EP 0090259;EP 0 634 459;WO 99/57204;WO 96/32446;WO 99/57204;WO 01/92425;J.J.Ponjee,Philips Technical Review,Vol.44,No.3,81 ff;およびP.H.Harding J.C.Berg, J.Adhesion Sci.Technol.Vol.11 No.4,pp.471−493に記載されている。このポストコーティングは、化学安定性をさらに増大させ、ピグメントのハンドリングを簡単にし、特に様々な媒体への添加を容易にする。湿潤性、分散性および/またはユーザーの媒体との相容性を改良するために、Al、ZrOまたはそれらの混合物の機能性コーティングをピグメント表面に適用することができる。
【0035】
1つの実施態様では、カップリング剤を、真珠光沢を有するピグメント上に外側の層を形成するために使用することができる。好適なカップリング剤はEP 632 109に示される。例としては、シラン類、ジルコニウムアルミネート類、ジルコン酸塩類およびチタネート類があげられる。シラン類は構造Y−(CH)n−SiXを有することができ、式中、nは2−18、Yは有機官能基、例えばアミノ、メタアクリル、ビニル、アルキル、アリール、ハロゲンおよび/またはエポキシ基であり、Xはケイ素官能性基であり、その加水分解に引き続いて無機基体の活性部位と反応するか、または他のシリコン化合物と縮合する。例えば、Yは、ヒドロキシ、ハロゲンまたはアルコキシ基であることができる。
【0036】
これらの本質的に親水性のカップリング剤に加えて、疎水性シラン類、特にはアリール−、アルキル−およびフルオロアルキル置換されたジ−およびトリメトキシシラン類も使用することができる。これらの例としては、例えば、フェネチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリメトキシシラン、および(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシランがあげられる。カップリング剤の濃度はベースのピグメントに対して0.2−5重量%であることができる。
【0037】
1つの実施態様では、化粧用組成物はピグメントを含んでいる。化粧用組成物は、皮膚、目または髪の毛のためのメーキャップ生成物に有用なことがある。皮膚のためのメーキャップとして意図した組成物の例としては、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、ボディパウダーまたはフェイスパウダー、ファンデーション、頬紅、有色のクリーム、マニキュア液、口紅、リップグロス、ヘアージェルまたはボディジェル、ヘアーウォッシュまたはボディウォッシュ、カバースティック、ローション、コンシーラー、ファンデーションおよびアンチエージングクリームがあげられる。唇領域に関する化粧用途の例は、リップグロス、口紅および他のリップ組成物である。マニキュア液はネイルワニス、またはネイルエナメルと呼ばれることがある。化粧用の組成物の他の例としては、ヘアカラー組成物、シャンプー、スキンクリーム、スクラブ剤、剥離剤、洗浄またはにきび処理用のジェル、クリームまたはローションのような皮膚処理剤があげられる。
【0038】
真珠光沢を有するピグメントは米国特許6663852、6451294および6280714に記載されるように、メーキャップ化粧品を生産するために使用されてもよい。
【0039】
ピグメントは、乾燥形態で、または化粧用の用途に十分な量のバインダー/添加剤と組み合わせて適用されることができる。これらの化粧品は、高い明暗度(intensity)の色を作成することを可能にする。
【0040】
1つの実施態様では、組成物のピグメントは組成物の適用の間、またはその適用の後に整列される。組成物のピグメントを整列させるための例は、磁性アプリケーターで組成物を適用することである。磁性アプリケーターは化粧品内で磁性粒子を整列させるために使用されることができ、その外観を制御する。
【0041】
一般的な化粧用の組成物は、保存剤、安定剤、中和剤、水相の増粘剤(多糖生体高分子、合成高分子)、または油相の増粘剤、たとえばクレイ鉱物、フィラー、香料、親水性または親油性の活性物質、界面活性剤、酸化防止剤、フィルムを形成するポリマーおよびそれらの混合物を含むことができる。これらの様々な成分は、当該分野で従来使用されている量で使用することができ、たとえば組成物の合計重量の0.01から30%であることができる。1つの実施態様では、化粧用組成物はバインダーをさらに含むことができ、ピグメントは組成物の約0.5%から約99.5%までに相当する。
【0042】
リップ化粧用組成物は、当該分野で通常使用されている任意の成分を含むことができ、たとえば水を好ましくは組成物の総重量の0から95%の量で含むことができる。また水溶性または油溶性の染料、酸化防止剤、エッセンシャルオイル、保存剤、芳香剤、中和剤、油溶性ポリマー、特には炭化水素に基づくポリマー、たとえばポリアルキレン類またはポリビニルラウレート、水相のためのゲル化剤、液体脂肪相のためのゲル化剤、ワックス、ガム、界面活性剤、補足の化粧品または皮膚科用活性成分、例えば皮膚軟化薬、保湿剤(例えばグリセリン)、ビタミン、液体ラノリン、必須脂肪酸、脂肪親和性または親水性の日焼け止め、およびそれらの混合物を含むことができる。組成物は、さらにイオン性および/または非イオン性の脂質小胞を含むことができる。水以外のこれらの成分は、組成物の総重量の0から20%の割合で組成物中に存在することができる。
【0043】
1つの実施態様では、組成物または物品はピグメントを含む。組成物はコーティング、インキ、プラスチックまたはペイントであることができる。コーティング、インキ、プラスチックまたはペイントはバインダーをさらに含むことができ、ピグメントは組成物の約0.5%から約99.5%、約0.1%から約70%、または約0.2%から約10%に相当する。1つの実施態様では、組成物または物品は、さらに低い磁化率または磁性のないピグメントを含むことができる。別の実施態様では、物品は真珠光沢を有するピグメントを含む。
【0044】
コーティング、インキ、プラスチックまたはペイントは印刷インキ、表面コーティング、レーザーマーキングのためのコーティング、ピグメント調製物、乾燥した調製物、食品着色剤、自動車用コーティング、再仕上げ用コーティング、織物コーティング、建築用コーティング、合成繊維または繊維に基づいた生成物であることができる。コーティングは液体、蒸気または固形物として対象物に適用されることができる。コーティングを適用する方法の例は印刷、塗装、重合体のコーティングまたはスプレーである。コーティングは、粉末、エナメル、エアロゾル、ペイント、エポキシまたはポリマーであることができる。コーティング、インキ、プラスチックまたはペイントのための用途の追加の例は、機密文書、パスポート、紙幣、小切手、クレジットカードおよび自動車免許証などのための偽造防止用途;商標保護用途;種子および根覆い染色剤のような農業用途;織物染色;および食品用途である。
【0045】
1つの実施態様では、コーティングはピグメントを含んでいる。ペイントのための用途の例は次のとおりである:産業、自動車、家電、および建築用途。自動車用途の例は次のとおりである:OEM、再仕上げ、または特殊(カスタム)自動車用途。
【0046】
インキは磁性トナーであることができる。磁性トナーの例は磁性インキ文字認識(MICR)に使用されるものである。これらのトナーは小切手上に暗証番号を印刷するために使用されてもよく、廉価なリーダによって読まれる。MICRのために使用されるトナーの多くは黒い。MICRインキの色および磁化率は異なる真珠光沢を有するピグメントの使用により調節されることができる。
【0047】
コーティングおよびインキを作る技術、並びに様々な印刷工程(すなわち凹板、フレキソ、スクリーン、オフセット、グラビア印刷)は、当該技術分野において非常によく知られているので、ここでは繰り返されない[The Printing Ink Manual”,5th edition,R.H.Leach,ed.Taylor&Francis,Inc.を参照]。それほど一般的でない他の印刷工程としては、ヒューレッド−パッカード インジゴプロセスのようなディジタルオフセット方法がある。
【0048】
印刷またはコーティングのような局所的な適用に加えて、ピグメントは物品を作るための形成段階において基体に直接組み入れることができる。例えば、紙へ、ピグメントは、たとえば表面の近くの紙の開口気孔を満たす製紙中の方解石およびタルクのような他の一般的な紙賦形剤と共に導入できる。物品がプラスチックである場合、ピグメントは基体の押し出しの間に導入できる。物品の例としては、プラスチック、ガラス、セラミック製品、コンクリート、圧縮木材、錠剤、紙、歯磨き、ろうそく、食品または農産物があげられる。真珠光沢を有するピグメントが使用されてもよい場合、他の用途としては、洗剤および洗浄生成物のような家庭用品があげられる。
【0049】
角度彩色性、虹色および真珠光沢を有するとの用語は、視角に依存する色の変化を意味するために置き換え可能に使用されてもよい。
【0050】
本明細書の開示はいくつかの実施態様の記載により例証されている。例示された実施態様は詳細に記載されているが、それはいかなる意味においても特許請求の範囲に記載された発明を制限することを意図するものではない。追加の効果および変更は、当業者に取って容易に見出すことができる。
【0051】
実施例
実施例1−磁性ブロンズ色真珠光沢を有するピグメント
触媒調製:
無水エチレングリコール(320g)およびK15 ポリビニルピロリドン(40g)は、ハウスチャイルドミキサで3000rpmで混合され、溶解された。その後、混合物は、2インチのPTFEでコーティングされた3枚羽攪拌機と窒素パージラインを備えた、PTFEでライニングされた1リットルの円筒形反応器に加えられた。セパレートビーカー内では、無水エチレングリコール(320g)および水和クロロ白金酸結晶(2g、HPtCl−6HO)が均質になるまでかきまぜられた。その後、エチレングリコール混合物は酸素を除去するために10分間超音波で処理され、次に、PVP溶液を含んでいる反応容器へ投入された。追加の無水エチレングリコール(320g)が反応容器に加えられ、室温条件下でおよそ200rpmで撹拌した。その後、窒素パージラインが液表面のすぐ下までおろされ、不活性雰囲気を提供した。その後、混合物はおよそ100分でほぼ20℃から12O℃まで熱された。120℃で1時間保持した後、Pt−in−(PVP/EG)液体(液体1g当たりPt 0.75mg)が冷却され、ガラスジャーへつがれ、密封された。高度に活性の、PVP安定化白金ナノ粒子状物質で、2−10nmの範囲の平均粒径を有するものが得られた。
【0052】
還元:
Feでコーティングされた天然雲母ピグメント(20g、SunPearlブロンズ、組成は表1中で示される)、およびエチレングリコールの中のPVP安定化白金触媒(4g)をポリエチレングリコール400(96g)中で分散し、一対の45度ピッチのブレードインペラーを装備した600mLスチール製Parr反応器に加えた。撹拌はおよそ800rpmで維持された。反応溶液は、容器を窒素で加圧して、ついで真空下で排出することにより、数回パージされた。十分なパージングに続いて、混合物は220℃に加熱され、水素で10.3barまで加圧され、この条件下で6時間保持された。ピグメントはろ過され、脱イオン水(4リットル)、エタノール(1リットル)ですすがれ、60−80℃で乾燥した。深く、強い色の、金色−ベージュの磁性を有し真珠光沢を有するピグメントであって、α−Fe(ヘマタイト)の内側層とFe(マグネタイト)の表面層を有する天然雲母で構成されるピグメントが得られた(実施例1aと呼ばれる)。
【0053】
酸化:
実施例1aで生成された金色−ベージュのピグメント(3.5g)は、Barnstead Thermolyne Model 1400ボックス炉を使用して、空気中で350℃で45分間加熱された。か焼は、外側のマグネタイト層をマグヘマイト(γ−Fe)に変換し、輝きのある、ブロンズ色に着色された磁性を有し真珠光沢を有するピグメントを得た(実施例1b)。
【0054】
ピグメントドローダウン:
ピグメント(SunPearlブロンズ、実施例1aおよび実施例1b)ドローダウンは、DAC150FVZ−Kモデル(ハウスチャイルドエンジニアリング製;Hauschild Engineering)高速ミキサーを使用して、3分間3000rpmで、Delstar DMR499のアクリルエナメルの4.5g中にピグメントを0.5g分散させることにより調製された。その後、ピグメントサスペンジョンは3ミル(約76ミクロン)のバードアプリケーターを使用して、平坦な白いカード(BYK Gardner、AG−5142)に塗布された。
【0055】
磁性整列:
円形のボタン磁石(13mmのProMAG(登録商標)ネオジム(グレード35、12,300ガウス)磁石)が、0.32cm厚のガラス板の下に置かれた。ピグメントサスペンジョンの塗布の後で硬化前に、カードがガラス板上に置かれ、円形の磁石が各コーティングの選択された部分の下に直接位置するように配置された。
【0056】
カードを置くと、実施例1aおよび実施例1bで調製されたピグメントは、感知できるユニークな深さを備えた三次元の円形のパターンへ瞬間的に配向した。50℃でオーブン中に10〜15分保持した後、立体イメージはコーティング内に硬化され固定した。
【0057】
色分析
調製されたすべてのピグメント、それらの対応する出発物質ピグメント、および磁気的に整列されたピグメントに対するCIELab値が、Spectraflash SF600 Plus分光光度計(9mmの開口)で測定された。表2を参照。磁気的に整列されたピグメントは、整列された円形のイメージの中心部分、最も高い磁力領域で測定された。整列されたピグメントは、磁界の適用で引き起こされた劇的な色シフトを示す。
【0058】
水素化の後、実施例1aは出発物質ピグメントに対して低い L値(ΔL=−9.32)、a値(Δa=−12.68)、およびb値(Δb=−12.65)を示し、20.19の全体としての色差(ΔE)を与えた(表2を参照)。還元は、出発物質の0.019×10−5 /kgから5.056×10−5 /kgまでの磁性の質量磁化率の増加に帰着する(Bartington MS2磁化率メータを使用して測定された)。
【0059】
磁化率の増加は、板状のピグメントが適用された磁界により配向されることを可能にする。表2に示されたように、実施例1aで生成されたピグメントを含んでいる硬化されていないコーティングへの磁界の適用は、板状物の最大深さの領域で興味深い深さを備えた三次元の円形のイメージおよび非常に暗い黒い外観(L=29.75およびC=5.33)に帰着する。
【0060】
実施例1aで生成されたピグメントの酸化は、マグネタイト(Fe)表面コーティングをマグヘマイト(γ−Fe)に変換し、α−Fe(ヘマタイト)の内側層とγ−Feの表面層を有する真珠光沢を有する天然雲母基体を与える。γ−Feは、還元工程で獲得された磁性特性を保持し、オリジナルの基体の色を回復する(ΔE=1.62)。表2に示されたように、実施例1bで生成されたピグメントを含んでいる硬化されていないコーティングへの磁界の適用は、板状物の最大配向領域で、興味深い深さを備えた三次元の円形のイメージおよび高い色度の赤色外観(L=37.28、C=30.92、色相角度=34.41)に帰着する。
【0061】
ΔEは、所定の基体に対する還元と酸化において使用された条件を最適化することによってさらに低減されることができる。
【0062】
【表1】

【0063】
CIELab値は、視野角10度で、反射成分を含むD65光源(9mmの開口)を使用して、実施例1−3について測定された。
色差(ΔE)値は、実施例1、2および3について、それぞれSunPearlブロンズ、銅およびえび茶に関して測定された。
【0064】
【表2】

【0065】
実施例2および3−磁性を有する銅色およびえび茶色の真珠光沢を有するピグメント
α−Feコーティングされた金属色調の天然雲母が、SunPearl銅(サンケミカル社)およびSunPearlえび茶(サンケミカル社)であることを除き、真珠光沢を有するピグメントが、実施例1と同じ方法で生成された。還元されて再度酸化されたSunPearl銅はそれぞれ実施例2aおよび2bであり、還元されて再度酸化されたSunPearlえび茶はそれぞれ実施例3aおよび3bである。
【0066】
実施例1で使用されたドローダウン手順が実施例2および3で作られたピグメントに適用されち。実施例2a、2b、3aおよび3bについて、並びに実施例2a、2b、3aおよび3b中の整列された円形のイメージの中心部分について、CIELab値が測定された。結果を表2に示す。
【0067】
実施例1b、2bおよび3bのピグメントは異なる色を有している。なぜならそれらが異なる量のα−Feおよびγ−Fe層を有しているからである(ブロンズ色〈銅色〈えび茶色)。表3を参照。表4に示されるように、実施例1bの磁化率は実施例2bより大きく、実施例2bの磁化率は実施例3bより大きい。磁化率における傾向(ブロンズ色〉銅色〉えび茶色)は、出発物質の最初のα−Fe含量に帰することができる。それぞれの基体が同じ還元および酸化処理にさらされたとすれば、内側層中に存在するヘマタイトに対する、外側層中に存在するマグネタイトまたはマグヘマイトの全体としての比率は、実施例2bに対して実施例1bが大きく、実施例3bに対して実施例2bが大きい。
【0068】
各試料の異なる磁性特性により、各ピグメントに関連した整列の量はわずかに異なっていた。実施例1aおよび1bのピグメントは、磁界に暴露されて整列された領域と、磁界に暴露されない領域の間に鋭い遷移を有する。この鋭い遷移は、コーティング表面に垂直に整列したピグメント粒子状物質の大きな領域に帰着し、実施例1aにおいては黒い外観(マグネタイトコーティング)を与え、実施例1bにおいては赤い外観(マグヘマイトコーティング)を与える。実施例2のピグメントは、実施例1のピグメントよりわずかに鋭敏でない遷移を有し、より少ない深さを備えた3次元の円形の外観を与えた。実施例2aの整列されたピグメントの円形のイメージのまさに中心は、暗い黒い外観を有していた。実施例2bの整列されたピグメントの円形のイメージのまさに中心は、マグヘマイトの赤い吸光を有していた。実施例3のピグメントは、実施例2のピグメントより鋭敏でない遷移を有し、実施例2のピグメントより少ない深さを備えた3次元の円形の外観を与えた。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
実施例4−高い色度の磁性を有するオレンジの真珠光沢を有するピグメント(10―60ミクロン)
0.1MのHClの706.2g、38.4重量%FeCl溶液の33.3g、192gの小球にされた尿素、および実施例1bからのピグメントの40gを含む溶液が、180rpmの撹拌下で、1リットルのジャケットを有するポット反応器へ投入された。この最初の溶液は、約1.8のpHを有していた。その後、溶液は90℃に加熱され、尿素の分解および引き続くpHの上昇を促進した。約1〜2時間の後、90℃で、溶液のpHはおよそ6.3−6.5にあがり、反応の完了を示した。作業のために、ピグメントはろ過され、水ですすがれ、65℃で乾燥された。強く色づけられた、磁性を有し、輝くオレンジの真珠光沢を有するピグメントが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体および層を含むピグメントであって、該層はγ−Feおよびα−Feの領域を有しているピグメント。
【請求項2】
該基体は板状のピグメントである、請求項1記載のピグメント。
【請求項3】
γ−Feの領域はα−Feの領域より基体から離れている、請求項1記載のピグメント。
【請求項4】
ピグメントは、天然雲母、合成雲母、ガラスフレーク、金属フレーク、タルク、カオリン、Al板状物、SiO板状物、TiO板状物、グラファイト板状物、BiOCl、カルシウムホウケイ酸塩、合成アルミナおよび窒化ホウ素からなる群から選択される基体を含む、請求項1記載のピグメント。
【請求項5】
基体と層の間に位置する、TiO、Fe、FeOOH、ZrO、SnO、Cr、BiOClおよびZnOからなる群から選択される1つ以上の層を有する、請求項1記載のピグメント。
【請求項6】
層の平均厚さは約10nmから約350nmまでである、請求項3記載のピグメント。
【請求項7】
α−Feのγ−Feへの比率は0.05から50の間である、請求項1記載のピグメント。
【請求項8】
ピグメントは約0.1×10−5から15×10−5/kgの磁化率を有している、請求項1記載のピグメント。
【請求項9】
ピグメントはTiO、FeOOH、ZrO、SnO、Cr、BiOClおよびZnOから成る群から選ばれた金属酸化物の追加の層をさらに含み、
該追加の層がα−Feおよびγ―Feを含んでいる層の外表面に隣接している、請求項1記載のピグメント。
【請求項10】
基体は繊維である、請求項1記載のピグメント。
【請求項11】
以下の工程を含むピグメントの磁性特性を向上する方法:
1)0.1×10−5 /kg未満の磁化率を有する、Feを含む層を備えた基体を提供すること;
2)Feのうちのいくらかまたは全部をFeに還元すること;
3)次いで、Feのうちのいくらかまたは全部をγ−Feへ酸化すること。
【請求項12】
最初の工程におけるFeは部分的にまたは完全にα−Feで構成される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
Feは水素源によって還元される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
Feは酸化雰囲気中で、約350℃以上にピグメントを熱することにより酸化される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
ピグメントは、天然雲母、合成雲母、ガラスフレーク、金属フレーク、タルク、カオリン、Al板状物、SiO板状物、TiO板状物、グラファイト板状物、BiOCl、カルシウムホウケイ酸塩、合成アルミナおよび窒化ホウ素からなる群から選択される基体を含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
基体と酸化鉄層の間に位置する、TiO、Fe、FeOOH、ZrO、SnO、Cr、BiOClおよびZnOからなる群から選択される1つ以上の層を有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
酸化の後、ピグメントは約0.1×10−5から15×10−5 /kgの磁化率を有する、請求項11記載の方法。
【請求項18】
還元前と酸化の後のピグメントの色差(ΔE)が、約5以下である、請求項11記載の方法。
【請求項19】
以下の工程により形成されたピグメント:
1)板状のピグメントを提供すること;
2)質量磁化率を増加させること;
ここで、提供されたピグメントと工程2により得られるピグメントの間の色差(ΔE)は、約5以下である。
【請求項20】
工程2により得られるピグメントでは、α−Feのγ−Feに対する比率が約0.05から約50の間である、請求項19記載のピグメント。
【請求項21】
工程2により得られるピグメントは約0.1×10−5から約15×10−5 /kgの磁化率を有している、請求項19記載のピグメント。
【請求項22】
請求項19記載の工程2により得られるピグメントを含む組成物または物品であって、組成物がコーティング、インキ、プラスチックまたはペイントから成る群から選択される組成物または物品。
【請求項23】
組成物または物品は工程1で提供されるピグメントをさらに含む、請求項22記載の組成物または物品。
【請求項24】
コーティングは自動車用途で使用される、請求項22記載の組成物または物品。

【公表番号】特表2011−516688(P2011−516688A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504050(P2011−504050)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038199
【国際公開番号】WO2009/126437
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(596024024)サン・ケミカル・コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】