説明

磁性ポリマー粒子及びその製造方法

【課題】 グラフトされるポリマーの鎖長もしくはポリマー層の厚みが均一であり、ひいては粒径分布が狭く均一な磁性ポリマー粒子、また磁性粒子表面を覆うポリマー鎖が、使用目的に応じた分子設計を施したブロックポリマーからなる機能性磁性ポリマー粒子及び該磁性ポリマー粒子の製造方法を提供することである。
【解決手段】 磁性粒子と該磁性粒子とを被覆したポリマー鎖とを備え、該ポリマー鎖の分子量分布指数(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする磁性ポリマー粒子、又は磁性粒子を調製する工程と該磁性粒子をポリマーで被覆する工程とを含む磁性ポリマー粒子の製造方法であって、該ポリマーで被覆する工程がリビング重合によりポリマー鎖を形成することを特徴とする磁性ポリマー粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸やタンパク質等の生体物質の分離担体、磁性インクや磁性トナー、MRI造影剤、抗原抗体反応の担体、ドラッグデリバリー用薬物担体等として有用な磁性ポリマー粒子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子の周囲をポリマーで被覆した磁性ポリマー粒子は、従来、生物学・医学的な分野において、粒子が磁力により容易に分離・回収されるという特徴を利用して、核酸・タンパク・糖等の分離精製担体や、薬物をポリマー鎖に固定化したドラッグデリバリー用薬物担体、あるいは酵素をポリマー鎖に固定化することによる触媒担体、抗体・抗原反応による病原菌の検出担体等としての利用が検討されている。また、近年情報通信の著しい進歩と共に、情報記録媒体が広く利用されてきているが、これら媒体中には情報を記憶する部分を有している。情報記録の手法としては、光学的な記録と並んで、磁気記録は有用な記録方法であり、磁性ポリマー粒子は、印刷・転写・インクジェット等の手法により磁気記録層をパターン形成するのに広く利用されてきた。このように磁性ポリマー粒子は、生化学・医療用素材の分野や情報・通信・電子材料の分野において、その利用が広く検討されている。
【0003】
このような磁性ポリマー粒子の代表的な合成法としては、以下のような例が挙げられる。特許文献1では磁性体を水中に分散し、油溶性開始剤を用いて懸濁重合により1μm以上の粒径のカルボキシル基含有磁性粒子を得ている。また特許文献2では、核が樹脂で作製されたフェライト微粒子を、界面活性剤と重合開始剤との複塩、及びグリシジル基を有する重合性モノマーと混合、ラジカル重合を行って、ポリマーで保護被覆されたフェライト磁性粒子を得ている。また特許文献3では、ビオチン又はアビジンが刺激応答性のポリマーを介して磁性粒子に固定化された磁性ポリマー粒子の製造方法及び生体物質の分離法を開示している。
【特許文献1】特開平10−87711号公報
【特許文献2】特開平7−82302号公報
【特許文献3】国際公開第02/016571号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの手法を用いた場合、ポリマー合成に簡便な汎用のラジカル重合法を用いているため、得られる磁性ポリマー粒子のポリマー鎖の構造は一般に不均一であった。また生体材料の固定化を目的とする場合、磁性粒子にグラフトされているポリマー鎖中にランダムに分布する官能基を利用した固定化方法や、生体材料を含んだラジカル重合性単量体の重合により磁性ポリマー粒子を製造していたため、ポリマー鎖構造の不均一性に起因して、生体材料のポリマー鎖中における配置制御は困難であった。更に、界面活性剤を用いた場合にはポリマー鎖が磁性粒子へ物理的に吸着しているため、剥がれ落ちて分散性が低下したりする等の課題があった。以上のように、従来の製造法で得られる磁性ポリマー粒子は、その粒径分布が均一でなく、またポリマー鎖の構造(分子量や組成、配置等)も不均一であったため、粒子表面のポリマー鎖の機能特性・機械特性を能動的にコントロールすることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、具体的にはグラフトされるポリマーの鎖長もしくはポリマー層の厚みが均一であり、ひいては粒径分布が狭く均一な磁性ポリマー粒子を提供することである。
【0006】
また、本発明の目的は、磁性粒子表面を覆うポリマー鎖が、使用目的に応じた分子設計を施したブロックポリマーからなる機能性磁性ポリマー粒子及び該磁性ポリマー粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、磁性粒子と該磁性粒子とを被覆したポリマー鎖とを備え、該ポリマー鎖の分子量分布指数(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする磁性ポリマー粒子が提供される。
【0008】
また、本発明に従って、磁性粒子と該磁性粒子とを被覆したポリマー鎖とを備え、該ポリマー鎖が二種類以上のブロックから構成されるブロックポリマーであることを特徴とする磁性ポリマー粒子が提供される。
【0009】
また、本発明に従って、磁性粒子を調製する工程と該磁性粒子をポリマーで被覆する工程とを含む磁性ポリマー粒子の製造方法であって、
該ポリマーで被覆する工程がリビング重合によりポリマー鎖を形成することを特徴とする磁性ポリマー粒子の製造方法が提供される。
【0010】
更に、本発明に従って、磁性粒子を調製する工程と該磁性粒子をポリマーで被覆する工程とを含む磁性ポリマー粒子の製造方法であって、
該ポリマーで被覆する工程が、
磁性粒子表面に重合開始基を導入する工程と、
該重合開始基を重合開始源として一種類以上の単量体を単独重合又は共重合し磁性粒子表面にポリマーをグラフト化する工程と、
を含むことを特徴とする磁性ポリマー粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリビングラジカル重合法によって得られる磁性ポリマー粒子は、従来にない均一なポリマー鎖長からなるグラフト層からなり、ひいては粒子の粒径分布も狭い均一な磁性ポリマー粒子を提供することができる。また、本発明の重合方法を使用すれば、ブロックポリマーをグラフト鎖とする磁性ポリマー粒子をも容易に製造することができる。得られるブロックポリマーにおいては、官能基の配置をコントロールできるので磁性粒子中の生体材料や薬剤の固定化においても最適な配置をコントロールできると共に、刺激応答性ブロックの導入により、刺激に応答したポリマー鎖の収縮・凝集によるこれら生体材料の安定化や薬剤の放出を自律的に制御することができる。また、磁性インクとして用いる場合には、上記刺激により最適なインク粘度や定着性を持ったインク特性を付与することができ、高機能化された機能性磁性ポリマー粒子として好適に使用できるので、その利用価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の磁性ポリマー粒子を示した図である。本発明における磁性ポリマー粒子は、磁性粒子1とその周りを被覆するポリマー鎖2とから構成される。より具体的には、ポリマー鎖2は重合開始基を介して磁性粒子1の表面にグラフトされている。
【0013】
本発明の磁性粒子表面にグラフトされるポリマーの製造方法は、リビングラジカル重合法に基づいており、重合開始基を磁性粒子表面に導入する工程、及びその重合開始基を重合開始源としてラジカル重合性の単量体を重合し磁性粒子表面にポリマーをグラフト化する工程とからなる。リビングラジカル重合法は近年様々な手法が開発されており、以下の様な例が挙げられる。例えば、Macromol.Chem.RapidCommun.1982年,3巻,133頁に示されるイニファーター重合、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物等のラジカル捕捉剤を用いるもの、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、117巻、5614頁に示されるような有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)、及びマクロモレキュールズ(Macromolecules)、1998年、31巻、5559頁に示される「RAFT:Reversible Addition−Fragmentation chain Transfer重合」等が挙げられる。これらのうち、本発明を特に限定するものではないが、ニトロキシド化合物等のラジカル捕捉剤を用いた合成法又は原子移動ラジカル重合法による合成法が特に好ましく用いられる。
【0014】
まず、磁性粒子表面に導入する重合開始基について説明する。上記ニトロキシド化合物を用いた合成法において、磁性粒子表面に導入する重合開始基としては、次の一般式(1)〜(2)で表される化合物が好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
上記式中、R〜R10及びR12は、同一又は異なる、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基及びトリフルオロメチル基等の炭素数1〜10の(ハロゲン化)アルキル基、フェニル基、p−フルオロフェニル基、ナフチル基、トリル基、ビフェニル基及びベンジル基等の芳香族置換アルキル基、ヒドロキシルアルキル基、アルコキシアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、水酸基、アミノ基、カルボニル基、メルカプト基、アルデヒド基、アミド基又はスルホニル基から選ばれる置換基である。R11は、アルキレン基、脂環式アルキレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アリーレン基、アルキルシリレン基又は単結合であり、上記アルキレン基は−O−、−CO−、−COO−又はOCOO−結合を含んでいてもよい。Yはカルボキシル基、フォスフィン基、アルコキシシリル基又はハロゲン化シリル基から選ばれる置換基である。
【0017】
上記ニトロキシド化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(以下「TEMPO」ともいう)、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−アミノメチル−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO、4−t−ブチル−TEMPO、3−ヒドロキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−アセトアミド−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−メトキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−(アミノメチル)−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、及び3−t−ブチル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル等が挙げられる。
【0018】
また、原子移動ラジカル重合法における重合開始基としては、重合の開始点となるハロゲンを少なくとも1つ有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物であって、磁性粒子表面と結合又は相互作用する官能基を含むものであれば特に制限はないが、通常開始点となるハロゲンを1つ又は2つ有する化合物であり、次の一般式(3)〜(5)で表される化合物が特に好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
上記式中、R13は、アルコキシ基又はハロゲン原子から選ばれる置換基であり、R14は、アルキレン基、脂環式アルキレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アリーレン基、アルキルシリレン基又は単結合であり、上記の全ての基には−O−、−CO−、−COO−又はOCOO−結合を含んでいてもよい。Xはハロゲン原子を示す。
【0021】
このような開始基の一例としては、下記に示される方法によって合成される(4a)が挙げられるが、本発明の開始基はこれに限定されるものではない。
【0022】
【化3】

【0023】
一方、本発明において重合開始基を導入する磁性粒子としては、基本的には、鉄鉱、磁性酸化鉄やマグネタイト、フェライト、酸化ニッケル又は酸化コバルト等の何れも使用できるが、ドラッグデリバリー、分離担体、診断等の用途では磁力が強い粒子が要求される傾向にあるため、これらのうち強磁性体に分類されるものの方が好ましく、より好ましくはフェライト類であり、特にFeが好ましい。
【0024】
原料となる磁性粒子の平均粒径は、用途に応じて使い分けることができる。例えば、生体内で用いる場合には、血管内で異物として認識され血管の閉塞等の危険性が生じる400nmよりも小さく、例えば2〜200nmが好ましい。一方、磁気情報記録媒体として用いる場合には、磁気ムラを利用する際には磁性粒子の粒径は、磁気ムラを作るための比較的大粒径の1μm以上、一方高密度・高精細化を考慮した場合は5nm〜1μm程度が好ましい。磁性ポリマー粒子が40μmを超えると、塗膜にしたときに突起となり、積層性や走行性、滑り性といった媒体としての基体特性が悪くなる恐れがある。
【0025】
磁性粒子表面に重合開始基を導入する工程においては、これら原料となる磁性粒子と、前記重合開始基となる化合物を混合する。この際、重合開始基に含まれるカルボキシル基、フォスフィン基、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基等が磁性粒子表面に反応・吸着し、重合開始基が磁性粒子表面に導入される。また、この工程において、必要に応じて超音波処理、熱処理又はマイクロウェーブ処理等により磁性粒子の分散性を高めたり、重合開始基の導入を促進したりすることができる。
【0026】
次に、上記開始基を重合開始源として重合を行い、磁性粒子表面にポリマー鎖をグラフト化する工程について説明する。本発明におけるニトロキシド化合物によるラジカル重合及び原子移動ラジカル重合は、種々の形態で実施することが可能であり、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合及びバルク重合を挙げることができる。バルク重合以外の場合、使用する溶媒は、ラジカル重合に対する阻害作用がなければ、いかなる種類の溶媒も使用しうる。上記ラジカル重合で使用されるラジカル重合性単量体及び重合溶媒については、後述の化合物を用いることができる。
【0027】
本発明を実施するに際し、ニトロキシド化合物によるラジカル重合及び原子移動ラジカル重合においては、重合試薬の添加手順等は特に制限は無いが、試薬添加後、必要に応じて脱気、不活性ガスによる置換を行ったのち、所定の温度に設定し、反応を行わせる。
【0028】
ニトロキシド化合物を用いた合成法の場合、上記重合開始基を導入した磁性粒子とラジカル重合性単量体を混合し、必要に応じて適当な溶媒を添加し、所定の温度により重合を行えばよい。重合温度は、通常、20〜140℃、好ましくは40〜120℃の間で選択される。重合温度が、20℃未満では、重合反応が著しく遅くなり工業的に好ましくなく、一方、重合温度が140℃を超えると、分子量分布が広くなる傾向が強くなり好ましくない。
【0029】
原子移動ラジカル重合法を使用する場合は、上記重合開始基と共に、触媒としてハロゲン含有金属錯体を使用してラジカル重合性単量体をリビングラジカル重合させる。上記金属触媒としては、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属である金属錯体から成る触媒を使用するが、具体的に使用される金属(M)としては、Cu、Ni、Pd、Pt、Rh、Co、Ir、Fe、Ru、Re及びMnの群から選ばれる金属であり、中でも、Cu、Ru、Fe及びNiが好ましく、更に銅が特に好ましい。上記ハロゲン含有金属錯体の中心金属として銅を用いた場合、ハロゲン含有銅錯体としては、塩化第一銅や臭化第一銅が特に好適に用いられるが、特にこれらに限定されない。
【0030】
上記の金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶化及び金属錯体の可逆的なレドックス反応を可能にするため使用される。金属への配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子等が挙げられるが、好ましくは窒素原子である。有機配位子の具体例としては、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン及びトリフェニルホスフィン等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0031】
原子移動ラジカル重合法の場合、上記重合開始基を導入した磁性粒子、ラジカル重合性単量体、上記金属触媒及び必要に応じてその配位子を混合し、更に必要に応じて適当な溶媒を添加し、所定の温度により重合を行えばよい。重合温度は、通常、5〜140℃、好ましくは20〜120℃の間で選択される。重合温度が5℃未満では重合反応が著しく遅くなり工業的に好ましくなく、一方、重合温度が140℃を超えると、分子量分布が広くなる傾向が強くなり好ましくない。
【0032】
本発明の磁性粒子表面にグラフト化する工程において、使用し得るモノマーについては、上記ニトロキシド化合物を用いた場合又は原子移動ラジカル重合法を用いた場合、共に公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。本発明のラジカル重合方法で使用し得る上記不飽和モノマーを例示すれば、以下を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0033】
スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシル、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体;スチレンスルフォン酸、2,4−ジメチルスチレン、パラジメチルアミノスチレン、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンズアルデヒド、インデン、1−メチルインデン、アセナフタレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルフルオレン等の重合性不飽和芳香族化合物;
【0034】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル等の不飽和モノカルボン酸エステル類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;トリメチルシロキサニルジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキサニル)シリルプロピル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルプロピルジメチルシリルエーテル等のシロキサニル化合物類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミン含有(メタ)アクリレート類;クロトン酸2−ヒドロキシエチル、クロトン酸2−ヒドロキシプロピル、ケイ皮酸2−ヒドロキシプロピル等の不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アリルアルコール等の不飽和アルコール類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和(モノ)カルボン酸類;(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−β−プロピルグリシジル、α−エチルアクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−3−エチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−メチル−4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸−5−メチル−5,6−エポキシヘキシル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;及びこれらのモノ、ジエステル類;
【0035】
その他、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ポリカルボン酸(無水物)類、塩化ビニル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
また、得られる磁性ポリマー粒子の分散性を向上させる目的で、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン又はポリアクリルアミド等の高分子量セグメントにビニル基やメタクリロイル基等の重合可能な官能基を持つマクロモノマー類を好適に用いることもできる。
【0037】
更に、上記モノマーの他、架橋剤となりうる多官能性化合物を共存させてもよい。該多官能性化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、ビニル芳香族酸のN−アルキロールアミド(例えばN−メチロール−p−ビニルベンズアミド等)、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。更に、上述のモノマーのうち、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジプロペニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコール、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマー類は、架橋剤としても使用することが出来る。上記に例示したモノマー及びマクロモノマーは、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0038】
本発明において用いられる重合溶媒は、ラジカル重合に対する阻害作用がなければ、いかなる種類の溶媒も使用し得るが、その中でも、重合に供するモノマーと相溶し、かつ、後述の磁性粒子を効率良く分散し得る溶媒を選択することが、重合制御の点で有利である。その具体的な重合溶媒として、代表的なものを例示すると、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール(メトキシベンゼン)等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。これらは、上記溶媒の条件以外に特に制限されることは無く、重合方法の用途に合った溶媒を、適宜選択すればよい。また、これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
本発明における磁性ポリマー粒子中のグラフトされるポリマー鎖長もしくはポリマー層の厚みが均一であることは、グラフトされたポリマーをコアの磁性粒子から切り出し、回収・ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定することにより得られる分子量分布指数(Mw/Mn)により確認される。すなわち、分子量分布指数(Mw/Mn)の値が小さいほど、グラフトされたポリマーの鎖長が均一であることが示唆される。分子量分布指数(Mw/Mn)は1.6以下であることが必須であり、1.4以下であることが好ましい。分子量分布指数(Mw/Mn)が1.6以下であることにより均一なポリマー鎖長からなるグラフト層が得られ、粒子の粒径分布も狭い均一な磁性ポリマーが得られる。
【0040】
本発明の第二の発明は、磁性粒子表面にグラフトされるポリマー鎖が二種類以上のブロックから構成されるブロックポリマー鎖であることを特徴とする磁性ポリマー粒子である。本発明は、リビングラジカル重合法に基づいた製造方法を用いているため、重合可能なラジカル末端にニトロキシド(ニトロキシド重合の場合)やハロゲンX(原子移動ラジカル重合の場合)を結合させて重合を一旦停止した後、再度ニトロキシド末端やハロゲン末端からラジカル末端を生成して重合を開始したり、重合を自由自在に開始し且つ終了させたりすることができる。更に、本発明の製造方法で得られた重合体は、更なる重合を開始することが可能なニトロキシド又はハロゲン末端Xを有しているため、第1のモノマーが重合で消費されて第1のブロック鎖を形成した後、第2のモノマーを添加して第1のブロック鎖の末端から成長する第2のブロック鎖を形成することが出来る。そして、更にはマルチブロックコポリマーを製造することが出来る。また、本発明の製造方法で得られる重合体は、変成工程に供し、ハロゲン末端と官能基を有する化合物と反応させることにより、目的とする他の官能基を有する重合体に変換することができる。
【0041】
すなわち、磁性粒子表面に重合開始基を導入し、それを開始源としたリビングラジカル重合により第一のブロック鎖を形成した後、他のモノマーを添加し、第一のブロック鎖とは異なった機能を持たせたブロック鎖を形成し機能性の磁性ポリマー粒子を提供することができる。具体的には、第一のブロック鎖と異なる機能を持つブロック鎖として、分散安定性の機能を付与したポリマー鎖や、種々の刺激に応答して体積変化・構造変化を起こすポリマー鎖等の機能性磁性ポリマー粒子が好ましく用いられるが、ブロックポリマー鎖の種類は上記に制限されるものではなく、またブロックの数も特に制限はなく2種類以上のブロックからなるマルチブロックポリマー鎖を合成することができる。
【0042】
例えば分散安定性の機能を付与するには、使用環境が水系の場合には親水性のモノマー若しくはマクロモノマーを使用することが好ましい。親水性のマクロモノマーとしては、末端に重合性ビニル基を有し親水性で分子量が300〜3000のマクロモノマーが好適であり、その具体例としてはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクリルアミド等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0043】
また、例えば刺激応答性ポリマーに与える刺激としては、光、温度、pH、及び電場等が挙げられる。
【0044】
例えば、光応答性ポリマーとしては、光によって異性化反応を起こすアゾベンゼン誘導体、スピロピラン誘導体、又はトリアリールメタン誘導体等を含んだ高分子を用いることができる。
【0045】
また温度応答性ポリマーとしては、LCST(下限臨界溶液温度)を有する高分子が好ましく、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN−イソプロピルメタクリルアミド、ポリN−ビニルイソブチルアミド等のポリN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、又はポリビニルメチルエーテル等が特に好ましく使用される。
【0046】
また、pH応答性ポリマーとしては、カルボキシル基やアミノ基を官能基として有するポリマー等が好ましく、具体的には、高分子電解質が好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体やその塩、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びポリビニルベンゼンスルホン酸やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドやその塩等が挙げられる。
【0047】
また電場による酸化・還元によって応答するポリマーとしては、カチオン性電解質高分子が好ましく、電子受容性化合物と組み合わせてCT錯体(電荷移動錯体)として好ましく使用される。カチオン性電解質高分子としては、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド等ポリアミノ置換(メタ)アクリルアミド、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステル、ポリビニルピリジン、ポリビニルカルバゾール、又はポリジメチルアミノスチレン等を用いることができる。電子受容性化合物としては、ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノンやアントラキノン等のキノン類、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、メチレンブルー、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸又はヨウ素等が好ましく用いられる。
【0048】
これらを含んだポリマー鎖は各種刺激に対して凝集・収縮を繰り返すが、刺激応答性ポリマーとしては、特にこれらに限定されるものではない。
【0049】
更に、タンパク質等の生体材料や薬剤をポリマー鎖に導入する場合、生体材料の固定化方法としてはポリマー側鎖の官能基と反応させる手法が公知の技術として知られているが、本発明のリビングラジカル重合法を用いる場合には、それら官能基を第一ブロックあるいは第二ブロック等、固定化する位置を制御することができる。これら官能基の一例としては、グリシジル基、カルボキシル基及びアミノ基等が挙げられ、これら官能基を持ったラジカル重合性の単量体としては、前記単量体から選ばれるものが好適に用いられる。
【0050】
上記のポリマー鎖に導入する酵素、タンパク質、核酸、糖等の生体材料としては、用途に応じて、従来公知の各種物質を用いることができ、特に制約されない。例えば酵素としては、目的とする酵素反応に応じた最適なものが適宜採用され、グルコースオキシダーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、ウレアーゼ、プロテアーゼ、イソメラーゼ、ペプシン、パパイン、α−キモトリプシン、ヒドラーゼ、デスモラーゼ、チトクロームC、ヘモグロビン、リゾチーム、ノーゲンペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ及びアルカリ性ホスファターゼ等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0052】
(実施例1)
本実施例は、ポリスチレンがリビングラジカル重合によりグラフトされた磁性ポリマー粒子の作製例である。磁性流体(商品名:フェリコロイドHC−50、タイホー工業製)を加熱濃縮し、溶媒のケロシンを除去した後、濃縮されたフェライト系の超常磁性磁性体を得た。この磁性体3.0gをトルエン/メタノール(4/1、v/v)に超音波分散させた後、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン5.0gを添加し、還流温度で24時間反応を行い、磁性粒子表面に重合開始基を導入する工程を行った。反応後、トルエンで良く洗浄し、遠心分離により磁性粒子を回収後、真空乾燥することにより重合開始基が導入された磁性粒子を得た。この重合開始基が導入された磁性粒子0.7gを、スチレン6.1gとキシレン3.0gに良く分散させ、臭化銅(I)45mg、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル251mgを混合した後、窒素で溶存酸素を置換し、110℃で10時間重合を行い、磁性粒子表面にグラフト化する工程を行った。反応終了後、トルエン洗浄と遠心分離を繰り返し、ポリスチレンがグラフトされた磁性ポリマー粒子3.5gを得た。
【0053】
得られた磁性粒子の粒径をテトラヒドロフラン中で測定(マルバーン社製、HPPS)したところ、平均粒径80nm、粒径の範囲は60nm〜95nmであった。また、得られた磁性ポリマー粒子を濃塩酸(37%)に加え室温で3時間反応させ、コアの酸化鉄を溶解除去することによりグラフトされたポリスチレンを回収した。グラフトされたポリスチレンをGPCにより測定したところ、数平均分子量Mn:9700であり、Mw/Mnは1.30と狭い分子量分布を示した。
【0054】
(実施例2)
本実施例は、ポリメタクリル酸メチルがリビングラジカル重合によりグラフトされた磁性ポリマー粒子の作製例である。前記合成方法で式(4a)に示される重合開始基が導入されたフォスフィン誘導体1.0gとフェライトFe微粒子(戸田工業製)1.0gをテトラヒドロフランに加え、室温で良く超音波分散した。反応液はエタノール洗浄と遠心分離を繰り返し、重合開始基が導入された磁性粒子を得た。この磁性粒子0.5gをメタクリル酸メチル5g、アニソール5gに良く分散させ、更に塩化銅(I)28mg、ペンタメチルジエチレントリアミン30mgを加えた。窒素で溶存酸素を置換し、90℃で10時間重合を行った後、トルエン洗浄と遠心分離を繰り返し、ポリメタクリル酸メチルがグラフトされた磁性ポリマー粒子3.0gを得た。
【0055】
実施例1と同様にテトラヒドロフラン中の粒度分布、GPCを測定したところ、平均粒径100nm、粒径の範囲は85nm〜120nmであり、グラフトされたポリメタクリル酸メチルのMnは15000、Mw/Mnは1.26と実施例1と同様に狭いものであった。
【0056】
(実施例3)
本実施例は、ポリベンジルメタクリレートがリビングラジカル重合によりグラフトされた磁性ポリマー粒子の作製例である。実施例2と同様に、前記合成方法で式(4a)に示されるフォスフィン誘導体及びフェライトFe微粒子(戸田工業製)を用いて、重合開始基が導入された磁性粒子を得た。この磁性粒子0.5gをベンジルメタクリレート8.1g、アニソール7.5gに良く分散させ、更に塩化銅(I)20mg、ペンタメチルジエチレントリアミン21mgとを加えた。窒素で溶存酸素を置換し、30℃で1時間重合を行った後、トルエン洗浄と遠心分離を繰り返し、ポリベンジルメタクリレートがグラフトされた磁性ポリマー粒子4.3gを得た。
【0057】
実施例1と同様にテトラヒドロフラン中の粒度分布、GPCを測定したところ、平均粒径105nm、粒径の範囲は80nm〜127nmであり、グラフトされたポリベンジルメタクリレートのMnは17500、Mw/Mnは1.35と実施例1と同様に狭いものであった。
【0058】
(比較例1)
実施例1と同じ磁性粒子を原料として汎用ラジカル共重合を行い、磁性ポリマー粒子を作製した。実施例1と同様に磁性流体(フェリコロイドHC−50、タイホー工業製)よりフェライト系の超常磁性磁性体を得た。この磁性体3gにスチレン7g、メタクリル酸1gを加え均一に分散した後、ベンゾイルパーオキシド0.5gを溶解させた。これをポリビニルアルコール(商品名:PVA217EE、クラレ社製)0.4gを溶解した水800mlに添加し、超音波分散を行い懸濁液を得た。その後、この懸濁液を窒素雰囲気下、80℃で5時間重合を行い、磁性ポリマー粒子を得た。
【0059】
得られた磁性ポリマー粒子の粒子径は平均径1.7μm、粒子径の範囲は約0.3〜5μmであり、グラフトされたポリマーのMnは6700、Mw/Mnは3.55と実施例1〜3に比して分子量分布は広いものであった。またこの磁性ポリマー粒子の水分散液においては、1日間の静置後、一部の粒径の大きな磁性ポリマー粒子が沈澱した。これらの結果から明らかなように、本発明の製造方法で合成した磁性ポリマー粒子のポリマーは、比較例1と比べてポリマーの鎖長及び粒径が均一であり、その磁性ポリマー粒子は良好な分散性を示すことが確認された。
【0060】
(実施例4)
本実施例は、刺激(pH)に対してポリマー鎖の構造が変化するブロックポリマーがグラフトされた磁性ポリマー粒子の作製例である。実施例2で得られた磁性ポリマー粒子2.5gを1,2−ジクロロベンゼン4g、ジメチルアミノエチルメタクリレート4.6gに超音波分散し、更に塩化銅(I)12mg及びヘキサメチルトリエチレンテトラアミン26.7mgを混合した。この混合溶液を窒素で溶存酸素を置換し、90℃で10時間重合を行い、グラフトポリマー鎖がブロックポリマーである磁性ポリマー粒子を得た。反応液はトルエン洗浄と遠心分離を繰り返し、ブロックポリマー(ポリメタクリル酸メチル−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート)がグラフトされた磁性ポリマー粒子4.2gを得た。
【0061】
実施例1と同様にテトラヒドロフラン中の粒度分布、GPCを測定したところ、平均粒径150nm、粒径の範囲は130nm〜175nmであり、グラフトされたブロックポリマー(ポリメタクリル酸メチル−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート)のMnは24000、Mw/Mnは1.32と実施例2の前駆体ポリメタクリル酸メチルと同様に狭いものであった。この磁性ポリマー粒子をpH2の水溶液には分散するのに対して、pH11では一部沈澱した。このように、pHに応じて、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートの荷電状態が変化するため、pHによりポリマー鎖の構造を制御することが可能であった。
【0062】
(実施例5)
本実施例は、水への分散安定性を向上させる目的でポリマー鎖中に親水性マクロモノマーが組み込まれ、かつ酵素が固定化されたブロックを含んだブロックポリマーがグラフトされた磁性ポリマー粒子の作製例である。実施例3で得られた磁性ポリマー粒子3.0gをアニソール4.0g、メタクリル酸メチル4.5gに超音波分散し、更にポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(マクロモノマー、Mn〜480)1g、塩化銅(I)25mg、ペンタメチルジエチレントリアミン36mgを混合した。この混合溶液を窒素で溶存酸素を置換し、50℃で3時間重合を行い、グラフトポリマー鎖がブロックポリマーである磁性ポリマー粒子を得た。反応液はトルエン洗浄と遠心分離を繰り返し、ブロックポリマー{ポリベンジルメタクリレート−b−(ポリメタクリル酸メチル−co−ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)}がグラフトされた磁性ポリマー粒子4.8gを得た。
【0063】
実施例1と同様にテトラヒドロフラン中の粒度分布、GPCを測定したところ、平均粒径170nm、粒径の範囲は145nm〜190nmであり、グラフトされたブロックポリマー{ポリベンジルメタクリレート−b−(ポリメタクリル酸メチルメチル−co−ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)}のMnは34000、Mw/Mnは1.30と実施例2の前駆体ポリベンジルメタクリレートと同様に狭いものであった。
【0064】
このブロックポリマー中のポリベンジルメタクリレートをパラジウム/カーボンを用いた接触水素還元によりカルボン酸を有するポリメタクリル酸に変換し、更に、得られたポリメタクリル酸中のカルボキシル基を利用して、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼの固定化を行った。すなわち、上記で得られた{ポリメタクリル酸−b−(ポリメタクリル酸メチルメチル−co−ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)}がグラフトされた磁性ポリマー粒子を固形分濃度が3%となるように0.01Mホウ酸緩衝液pH8.2に分散させた。この磁性ポリマー粒子含有分散液2mlに、水溶性カルボジイミド(DOJIN社製、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、10mg/ml、0.01Mホウ酸緩衝液pH8.2)0.4ml、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(以下、HRPという。54mg/ml、比活性250〜350U/mg、0.01Mホウ酸緩衝液pH8.2)1.2mlを加え、4℃で12時間反応させることによりアミド結合を形成させメタクリル酸ブロックにHRPの固定化を行った。この磁性ポリマー粒子においては、HRP固定化メタクリル酸ブロックは粒子の内側に位置し、外側のブロック鎖により保護されているため、HRPの活性が安定に保たれていた。更に、粒子外側に親水性ポリエチレングリコールマクロモノマーが存在し、水への分散剤の役割を果たすため、水系への分散性が良好であった。
【0065】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の磁性ポリマー粒子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 磁性粒子
2 ポリマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子と該磁性粒子とを被覆したポリマー鎖とを備え、該ポリマー鎖の分子量分布指数(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする磁性ポリマー粒子。
【請求項2】
磁性粒子と該磁性粒子とを被覆したポリマー鎖とを備え、該ポリマー鎖が二種類以上のブロックから構成されるブロックポリマーであることを特徴とする磁性ポリマー粒子。
【請求項3】
一ブロックが分散安定性に寄与するポリマー鎖を含有してなるブロックから構成されるブロックポリマーである請求項2に記載の磁性ポリマー粒子。
【請求項4】
一ブロックが光、温度、pH及び電場からなる群から選ばれる刺激に応答して構造又は体積が変化するポリマー鎖を含有してなるブロックから構成されるブロックポリマーである請求項2に記載の磁性ポリマー粒子。
【請求項5】
一ブロックがタンパク質、酵素、核酸及び糖からなる群から選ばれる生体材料が固定化されたポリマー鎖を含有してなるブロックから構成されるブロックポリマーである請求項2に記載の磁性ポリマー粒子。
【請求項6】
磁性粒子を調製する工程と該磁性粒子をポリマーで被覆する工程とを含む磁性ポリマー粒子の製造方法であって、
該ポリマーで被覆する工程がリビング重合によりポリマー鎖を形成することを特徴とする磁性ポリマー粒子の製造方法。
【請求項7】
磁性粒子を調製する工程と該磁性粒子をポリマーで被覆する工程とを含む磁性ポリマー粒子の製造方法であって、
該ポリマーで被覆する工程が、
磁性粒子表面に重合開始基を導入する工程と、
該重合開始基を重合開始源として一種類以上の単量体を単独重合又は共重合し磁性粒子表面にポリマーをグラフト化する工程と、
を含むことを特徴とする磁性ポリマー粒子の製造方法。
【請求項8】
前記重合開始基がリビングラジカル重合開始能を有し、重合がリビングラジカル重合又はリビングラジカル共重合である請求項7に記載の磁性ポリマー粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−328309(P2006−328309A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157454(P2005−157454)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】