説明

磁性体検知機

【課題】磁石が設置された室内に磁性体が侵入する事を告知する手段として、磁性体の入室による磁束密度の変化を検知する磁気センサのみでは、誤検知のため無関係の使用者に対しても告知をしてしまう。そこで、必要な場合だけ告知を有効にし、進行方向にも告知を出すことを可能にし、据付コストを低減させる磁性体検知機の提供を図る。
【解決手段】磁束密度の変化を検出する磁気センサの他に、物体の通過を検知する物体検知センサを備え、両方が有効になった場合のみ、告知を行う機能を備える。また、変位検知センサを備え、変位による誤検知を防止する。さらに、使用者の進行方向にも外部の告知機能を取り付けられるように、電気接点を備え、対応できるようにする。またさらに、センサや各機能をドア枠に内蔵することにより、据付コストを低減させ、かつ、外観を向上できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体検知機に関し、詳しくは、部屋に侵入する磁性体を検知可能とする磁性体検知機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の医療診断に欠かせない装置として、MRI(Magnetic Resonance Imaging)診断装置がある。この装置は、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像化する方法であり、強力な磁石を必要とする。近年、分解能向上と処理速度の向上のために、1.5T(テスラ)や3Tといった極めて強力な磁石を使用したMRI診断装置が開発されつつある。このような強力な磁石は、一般的に超伝導磁石を使用する。
【0003】
磁石が強力になると、当然ではあるが磁性体を引き付ける力も強くなる。鉄などの磁性体でできたドライバなどの工具や酸素ボンベなどの医療器具を診断室に持ち込んだ場合、これらが吸い寄せられて装置に貼り付いてしまう。強力な力で貼り付いたドライバ等の工具は、人間の力では外すことができない。これらを外すには、一旦超伝導磁石を停止しなければならないが、停止や再起動するには数日程の時間が掛かり、その間診断することができない。その他にも多額の費用も必要とする。一度起動した超伝導磁石は常時動作させ、特別な理由がない限り停止しない。
【0004】
磁性体の工具や医療器具を誤って診断室に持ち込んだ場合、被検者や検査技師等に磁性体が衝突して怪我等をする危険性もある。従って診断室に磁性体を持ち込むことは絶対に行ってはならない。被検者を診断室に運搬する場合も、アルミ等の非磁性体でできた専用のストレッチャーを使用する必要がある。
【0005】
検査技師や関係する看護士は、磁石の危険性について周知しており、基本的に磁性体の持ち込みはしない。被検者については、検査技師等が事前にペースメーカ等の体内磁性体の有無を確認するので問題はない。しかし、検査技師等が完全な知識を持っているとは限らない。例えば、フェライトは金属ではないので、磁石に付かないように見えるが、磁性体である。このような磁性体と思っていない物を持ち込む場合がある。検査中に被検者が緊急状態になり、看護士が酸素ボンベ等を持ち込んでしまう場合もある。MRI診断装置について詳しく知らない看護士もいる。磁石について何も知らない作業者が、診察室の整備のために脚立や工具などを持ち込む場合もある。
【0006】
これらの危険性を防ぐためには、MRI診断装置の診断室のドアに、磁性体を検知して警告する磁性体検知機を設置することが必要である。
【0007】
なお、磁性体検知機に似た装置として金属探知機がある。この装置は金属に流れる渦電流を検出するものであって、アルミ等の非磁性体金属も検知する。逆にフェライト等の電流を流さない磁性体は検知できない。従ってMRI診断装置の診断室のドアに金属探知機を用いても意味はない。
【0008】
かかる磁性体検知機に関する先行技術として、特開平5−52962号公報(特許文献1)では、ゲート又はドア状の筐体を通過する物体に磁性体があるかどうかを検出し、警告を行う発明が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−52962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1記載の発明では、磁性体の有無を検知するものは磁気センサであり、磁性体を所持した使用者が、ドアを通過する意思がないのに、ドアの近傍に近づいただけで告知を受けるという問題点があった。
【0011】
すなわち、ある磁界内に磁性体が侵入すると、磁束密度が変化する。磁束密度の変化は、磁性体を置いた場所だけではなく、磁気センサが設置されている場所の磁束密度も変化する。磁気センサはこの磁束密度の変化を検出し、磁性体を検知する。磁気センサの位置における磁束密度の変化量は、直流磁束密度の強さと、磁性体の大きさと、磁性体の透磁率と、磁性体と磁気センサ間の距離などのパラメータによって決定される。これらのパラメータのうち、磁束密度の変化量は、磁性体と磁気センサ間の距離の2乗に反比例する。この距離は立体的なものであり、磁気センサの周囲のある空間の磁性体を検出することになる。このような磁気センサの原理的な特徴から、磁性体がドアを通過しなくても、近傍であれば検出してしまう。したがって、磁性体を所持した使用者が、ドアを通過する意思がないのに、ドアの近傍に近づいただけで告知を受けることとなってしまい、無用な告知を連続して受けた場合、使用者は磁性体検知機について信用しなくなったり、あるいは無視したり、機能を停止させるなど、告知行為が無駄になるという問題があった。
【0012】
また、前記特許文献1記載の発明では、前述のように磁束密度の変化量は、磁性体と磁気センサ間の距離の2乗に反比例するため、磁気センサはドアの直近に設置しなければならない。しかし、ドアには人体やストレッチャーなどが衝突する場合があり、この衝撃によって機械的な変位が生じてしまう。磁性体検知機の基本的な原理から、磁気センサが衝撃等により機械的に変位した場合、磁気センサが検知する磁束密度が変化する。磁性体の有無に係わらず、磁性体があると誤検知してしまう場合があった。
【0013】
またさらに、前記特許文献1記載の発明では、ドアを通過する磁性体を持った使用者が、通過した後で告知された場合、反転して告知部を確認しなければ、何を告知されたのか認識することができない。自分が告知されたという認識を持っていなければ、反転することがないので、告知行為が無駄になるという問題があった。使用者が告知を受けてこれを認識しても、告知を無視した場合、磁性体を持ち込む事が可能である。使用環境にもよるが、告知を無視された場合には無効であるという問題があった。
【0014】
そしてまた、前記特許文献1記載の発明では、通過するドアとは別に設置する必要がある。設置の手間が掛かるので、設置コストが高いという問題があった。また、必要に応じて別の告知機能を設置する必要があり、その分設置コストが必要になる。その他にもケーブル等を接続しなくてはならないので、外観上の問題もあった。
【0015】
上記問題点に鑑み、本発明は、必要な条件が成立した時のみに告知を出すとともに、機械的な変位による誤検知を排除することで、告知認識を容易にするとともに、必要によって強制的に磁性体の侵入を禁止し、また設置コストの低減、さらには外観を向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、磁束密度の変化を検知する磁性体検知機能と、閾値を入力する閾値入力機能と、該磁気検知機能の出力値と該閾値を比較する比較機能と、該比較機能の比較結果を告知する告知機能と、該告知機能による告知動作を停止する解除機能からなる磁性体検知機において、物体の通過または近接を検出する物体検知機能を備え、該物体検知機能が物体を検知した場合のみ該告知機能を作動させる構成となっている。
【0017】
使用者がドアを通る場合、当然であるがドアを開けて通過する。一方、使用者が単にドアに近づいた場合は、これらの行為を行わない。従って、ドアを開いたり通過することを検出すれば、使用者がドアを通る事が判る。物体の通過または近接を検出する物体検知センサを用いて、物体の認識と同時に磁性体の検知を行った場合のみに告知する機能を追加する。この方法によって、無用な告知が低減する。
【0018】
また、本発明は、前記磁性体検知機において、第二閾値を入力する第二閾値入力機能と、前記磁気検知機能の出力値と該第二閾値を比較する第二比較機能を備え、該第二比較機能の第二比較結果によって前記告知機能を有効にする構成を採用し得る。
【0019】
すなわち、絶対持ち込んではならない酸素ボンベのような大きな磁性体をゲートやドアに近づけた場合、仮に通過する意思がなくても告知する必要もあるため、物体検知センサの検出出力に関係なく、告知する設定も必要になる。上記本発明にかかる構成によれば、告知する磁性体検知の閾値について、ゲートやドアを通過する時に使用する閾値とは別の値を設定することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、前記比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、前記第二比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、を選択するための選択機能を備えた構成とすることもできる。
【0021】
またさらに、本発明は、磁性体検知機において、前記比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、前記第二比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、比較結果及び第二比較結果の論理和によって前記告知機能を有効にする機能と、を選択するための第二選択機能を備えた構成とすることもできる。
【0022】
使用する環境によって、物体を検知した時の磁性体検知結果と、物体を検知しない時の磁性体検知結果の一方だけが必要な場合もある。また両方の結果が必要な場合もある。これらは、上記本発明にかかる構成とすることで、スイッチ等によって選択可能にして解決できる。
【0023】
さらにまた、本発明は、前記磁性体検知機において、前記磁気検知機能の変位を検出する変位検知機能を備え、該変位検知機能が変位を検知した場合に前記告知機能を無効にする機能を備える構成を採用することができる。
【0024】
そしてまた、本発明は、前記磁性体検知機において、第二告知機能を備え、前記変位検知機能が変位を検知した場合に該第二告知機能を動作させる構成とすることもできる。
【0025】
すなわち、磁気センサの機械的な変位が発生した場合、原理的に磁気センサは検知動作を行う。しかし、この検知動作が磁性体を検知した結果なのか、変位によって誤検知したものかの判定を行うことはできない。そこで変位を検知する変位センサを備え、変位があった場合は、告知を行わない機能を設ける。しかし、実際に磁性体が存在する可能性もある。そこで、別な告知機能を設けて、注意を促す等の告知動作を行う。
【0026】
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、電気接点を備えるとともに、前記告知機能に同期して該電気接点を開閉する機能を備える構成を採用し得る。
【0027】
ゲートやドアを通過した後でも容易に告知を認識させるには、進行方向に告知手段を設けることである。そこで、告知手段を動作させるために、電気接点を設け、告知手段を動作させれば問題はない。
【0028】
また、本発明は、前記磁性体検知機において、ドア枠を備え、該ドア枠に、前記磁性体検知機能と前記閾値入力機能と前記比較機能と前記告知機能と前記解除機能と前記第二閾値入力機能と前記第二比較機能と前記選択機能と前記第二選択機能と前記変位検知機能と前記第二告知機能と前記電気接点のうち少なくとも一以上を内臓させた構成とすることが可能である。
【0029】
設置コストを低減するために、ドア枠自体に各機能の全てまたは一部を組み込む手段を用いることが有効である。ドア枠内部に機能を持っているため、設置作業はドア枠を取り付ける作業と同等で済むため、安価に設置することができる。また外観にケーブル等が露出しないので、外観も向上する。
【0030】
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、ドアと、該ドアの開閉を制御する開閉機能を備え、前記告知機能と同期して該開閉機能を有効にする構成とすることができる。
【0031】
強制的に磁性体の侵入を防ぐ方法として、電気的にドアを入り口側から開かなくする施錠機構を設け、電気接点を用いて制御を行えば良い。どうしても磁性体を持ち込む必要がある場合は、電気接点を解除する機能を設け、これを使用する。なお、前記ドア枠に、該施錠機構を設けることも可能である。
【0032】
さらにまた、本発明は、前記磁性体検知機において、少なくとも一以上の第三告知機能を備え、前記ドア枠に該第三告知機能を内臓させる構成も考え得る。すなわち、該第三告知機能をドア枠に内臓させ、設置コストの低減が図られる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる磁性体検知機によれば、必要な条件が成立した時のみに告知を出すので告知が有効になるとともに、認識が容易な場所に外部の告知装置を設置できるので告知の認識を容易にし、また、必要によって強制的に磁性体の侵入を禁止でき、さらには、設置コストの低減並びに外観の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明にかかる磁性体検知機は、物体検知センサや複数の閾値設定や選択機能や変位検知センサや電気接点やドア枠一体型などの機能や構造によって、使用者が最適な状態で使用できることを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる磁性体検知機の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
図1は、本発明にかかる磁性体検知機の構成態様を示す概略説明図である。なお図1は、機能や構造等を誇張して表現したものであり、実際の比率や形状ではない。磁性体検知機は、制御部1とセンサユニット2から構成される。図面では制御部をドア3の上部に配置したが、必ずしも上部に設置する必要はなく、どの位置にあっても良い。図1ではセンサユニット2を2台で表現しているが、台数に制限されるものではない。制御部1とセンサユニット2はケーブル4にて接続する。センサユニット2は、磁気センサ5と物体検知センサ6と変位検知センサ7を内臓する。
【0036】
図2に、磁気センサ5が磁性体を検出する空間8を模式的に示す。実際の検出空間の形状や大きさは、磁性体検知機能の性能と特性と磁性体の形状や大きさや材質などによって変化し、球状とは限らない。磁性体検知機能は、磁性体9がドアを通って移動した場合、これを検知する。同様に、磁性体10がドアを通らずに移動した場合も、これを検知する。磁性体検知機能は、この空間8に磁性体があるかどうかを判断するものであって、その磁性体がドアを通るか通らないかを判断することは、原理的に不可能である。そこで、物体検知センサ6を使用して物体がドアを通過することを検知し、この検知結果を使用して告知判定を行う。
【0037】
図3に機能ブロック図を示す。すなわち、図3は機能を示したものであり、実際の部品や回路等を示すものではない。これらの機能はMPU(マルチ・プロセッサ・ユニット)を用いてソフトウェアで実現することも可能である。
【0038】
センサユニット2内部には、磁気センサ5と物体検知センサ6と変位検知センサ7を内臓する。磁気センサ5にはコイルやMR(磁気抵抗効果素子)センサやMI(磁気インピーダンス素子)センサやフラックスゲートセンサなど色々な種類があるが、ここでは限定しない。また、センサの数量についても限定しない。必要な性能を実現するための数量があれば問題ない。
【0039】
物体検知センサ6にも、光線遮断や超音波計測など色々な種類の検知方法があるが、ここでは限定しない。例えば光遮断の場合は一方が発光になり一方が受光になる。このように機能を分割したり、複数備えても問題はない。
【0040】
変位検知センサ7にも色々な種類がある。機械的変位を抵抗値の変化に変える可変抵抗器や、圧力を検知する圧力センサや、圧電振動を用いた角速度センサなどがあり、ここでは限定しない。数量についても、規定しない。
【0041】
センサユニット2内部に、磁気信号処理機能11や物体検知信号処理機能12や変位検知信号処理機能13の一部または全てを設けても問題はない。
【0042】
制御部1内部には、磁気センサ5の信号を処理する磁気信号処理機能12と、物体検知センサ6の信号を処理する物体検知信号処理機能13と、変位検知センサ7の信号を処理する変位検知信号処理機能14がある。
【0043】
磁気信号処理機能11の出力信号は、比較機能13と比較機能14にて比較される。比較する閾値は、閾値入力装置16から入力される閾値Aと、閾値入力装置17から入力される閾値Bである。具体的な閾値入力装置としては、可変抵抗器などがある。
【0044】
比較機能14の比較結果Aは、論理積機能18を用いて、物体検知信号処理機能12の出力信号と論理積をとり、信号Aとする。一方、比較機能15の出力である比較結果はそのまま信号Bとして使用する。信号Aと信号Bは、論理和機能19を用いて論理和をとり、信号Cとする。信号Aと信号Bと信号Cは、選択機能20を用いていづれかを選択する。選択機能20としては、切り替えスイッチなどがある。
【0045】
変位検知信号処理機能13の出力である信号Dは負論理機能21を用いて論理を反転させ、信号Eとする。選択機能20によって選択された信号と信号Eを論理積機能22を用いて、信号Fとする。信号Fを用いて、ラッチ機能23を動作させ、信号を保持する。保持された信号は、解除機能24を用いて解除する。
【0046】
解除機能24は使用者によって操作する方法と、一定時間で自動的に動作する方法と、両方の方法がある。使用者によって操作する解除機能24としては、押しボタンスイッチ等がある。
【0047】
保持された信号を用いて、告知機能25と電気接点26を動作させ使用者に告知する。告知機能25は使用者に告知aを知らせ、磁性体を検知したことを告知する。具体的な告知方法には色々な種類があり、光や音など、これらを組み合わせて使用する。告知光は、ランプやLEDなどを点灯させる方法や、点滅させる方法がある。告知音もブザーのような単純音や録音した音声をスピーカから出す方法などがある。音量については、調整機能が付いていても良い。
【0048】
電気接点26もいくつかの種類がある。電磁コイルを使用したリレーや、ソリッドステートリレーなどがある。電磁コイルを使用したリレーの場合には、必要に応じてリレーに磁気シールド等を施す。電気接点26には、制御部1の外部に他の装置を接続することが可能である。一例として、電源27と外部告知機能28を接続したものを示す。
【0049】
一方、変位検知信号処理機能13の出力である信号Dにより、告知機能29を動作させる。告知機能29は使用者に対して告知bを知らせる。告知機能25と告知機能29は具体的に独立して告知aと告知bを別に行う方法と、物理的には同一の機能を用いて、告知aと告知bを知らせる方法がある。物理的に同一の機能を用いる方法として、発光色を変えたり、音声の内容を変える方法などがある。
【0050】
ここで、比較結果Aに関する動作を説明する。図2に示す磁性体9が、ドア3を通して侵入した場合、磁性体9によって磁束密度が変化し、これを磁気センサ5が検出する。磁気センサ5が検出した信号は、磁気信号処理機能11によって処理され、閾値Aと比較される。比較した結果、閾値Aより大きな信号であれば、磁性体が近傍にあると判定し、比較結果Aを有効にする。一方、ドア3が開いて磁性体9が通過した場合、物体検知センサ6も物体検知動作を行う。その信号は物体検知信号処理機能12を通り、物体があると判定する。磁性体9を検知し、かつ、磁性体の通過があった場合、論理積機能18の出力Aは有効になる。選択機能20によってその信号がラッチ機能23に伝えられ、信号が保持される。その結果、告知機能25と電気接点26を動作させ、使用者に磁性体を検知したことを告知aにて知らせる。
【0051】
図2に示す磁性体10が、ドア3の近傍を通過して侵入ない場合、同様に磁気信号処理機能11の信号が閾値Aよりも大きければ、磁性体が近傍にあると判定し比較結果Aを有効にする。しかし、ドア3を通過しないため、物体検知信号処理機能13は物体がないと判定する。その結果、論理積機能18の信号Aは無効のままになるので、ラッチ機能23は動作しない。磁性体10がドアから侵入しなければ、無駄な告知を行う必要はなく、使用者を煩わせることはない。
【0052】
次に、信号Bに関する動作を説明する。例えば、MRI診断装置の近傍に鉄製の酸素ボンベのような大型の磁性体を近づけることは、極めて危険な行為である。このような危険な行為は、ドア3を通過する意図があってもなくても、告知しなければならない。従って、磁気信号処理機能11の信号と閾値Bを比較し、閾値B以上であれば、信号Bを有効にし、ドア3の通過には関係なく告知機能25を有効にする。
【0053】
なお、使用する環境によっては、信号Aだけで良い場合もあれば、信号Bだけで良い場合もある。どちらかを選択できるように、2種の方法を選択できる選択機能20を用いる方法がある。また、信号Aと信号Bの両方が必要になる場合もある。これらの要求に対応するため、論理和機能19を用いて信号Cを作成し、信号Aまたは信号Bまたは信号Cを選択できる選択機能20を用いる方法がある。これらを実現する1つの方法として、図4に閾値入力装置16と閾値入力装置17と選択機能20の配置例を示す。但し図4は配置例であり、具体的な形状を示すものではない。
【0054】
次に、機械的な変位に関する動作を説明する。図5に磁石30が発生する磁束線と磁気センサ5の関係を示す。磁性体31が磁界内に存在しない場合、磁束線は、磁束線32に示すような形になる。この磁界内に磁性体31が移動した場合、磁束線は、磁束線33に示すような形に変化する。磁性体31によって、磁気センサ5の位置における磁束線が移動し、磁束密度が変化するため、磁気センサ5はこれを検出する。
【0055】
また、図5と同様、図6に磁石30が発生する磁束線と磁気センサ5の関係を示す。この磁界内に磁性体がなければ、当然磁束線32は変化しない。しかし、機械的な力が加わり、磁気センサ5の位置が磁気センサ34の位置まで変位した場合、磁気センサ34が検出する磁束密度が変化してしまう。これは原理的なものであり、避けることは不可能である。そこで、この変位を検知する変位検知センサ7を用いて変位を検知する。
【0056】
変位検知センサ7と変位検知信号処理機能13により、変位を示す信号Dが出力された場合、信号Dを負論理機能21によって信号Eに反転する。選択機能20によって選択された信号は信号Eが無効になるため、論理積機能22の論理積信号である信号Fは無効であり、告知機能25は動作しない。
【0057】
磁気センサ5に機械的な変位が発生した場合、実際に磁性体が近傍にあるのかないのかを判定することは、原理的に不可能である。その場合は、使用者に対して注意を促すような告知を行う必要がある。変位を示す信号Dによって告知機能29を動作させ、告知bを知らせる。告知aと告知bは物理的に同じ機能を用いて、別な表現にて告知する方法もある。
【0058】
図7に電気接点26を用いた応用例を示す。磁性体を所持した使用者35がドア3を通過した時、制御部1の告知機能25が動作する。告知機能25は光や音にて使用者35に告知aを行うが、通常、使用者35は前方を見て歩くため、告知機能25を認識するのが困難である。そこで、電気接点26を用いて、外部告知機能28を動作させる。例えば、光を用いた外部告知機能28を使用者35の進行方向に設置すれば、使用者35は外部告知機能28を認識するのが容易になり、磁性体を所持していることに気が付く。このような外部告知機能28は、使用者35の前方だけでなく、制御室等に設置し、管理者に告知する応用方法もある。
【0059】
図8に電気接点26を用いた別の応用例を示す。電気的にドア3の開閉を制御する開閉機能36を設置し、電気接点26を用いてこれを制御する。磁性体を検知した場合、電気接点26を用いて開閉機能36を動作させ、磁性体の入室を阻止する。必要によっては、告知の有無に関係なく出室可能な開閉機能36を用いる場合もある。このような方法を用いれば、強制的に磁性体の入室を阻止することが可能である。どうしても入室する必要がある場合は、解除機能24を用いて解除すれば問題はない。
【0060】
図9にドア枠37に機能を内蔵した本発明の実施例を示す。図1の例では、ドア37とは別に制御部1とセンサユニット2を設置し、ケーブル4を使用して接続する必要がある。これらの機器の据付作業が必要であり、コストが掛かるだけではなく、センサユニット2やケーブル4が外部から見えるため、外観を損ねてしまうという問題があった。そこで、ドア枠37内に制御部1や磁気センサ5や物体検知センサ6や変位検知センサ7などの機能を内蔵することが有効である。各機能を内臓することにより、通常のドア枠を設置する場合とほぼ同じ据付作業で済み、かつ、外観も損ねない。
【0061】
開閉機能36もドア枠37に内臓することが可能であるので、生産工場で一体化したものを組み立て、使用場所での据付作業だけで済む。その他にも、必要によっては磁性体検知とは別の告示機能を備えなければならない場合もある。その場合、告示機能38を同じドア枠37に設置すれば、設置コストも低減でるだけでなく、外観も向上することが可能である。ドア3やドア枠37は、設置場所までの運搬性を考慮し、いくつかの部分に分割して輸送できるようにしても問題はない。その際、設置場所にて組み立て作業を行うこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明にかかる磁性体検知機の一の構成態様を示す概略説明図である。
【図2】磁性体検知機が磁性体を検知する空間を示す模式図である。
【図3】本発明にかかる磁性体検知機の一の機能ブロック図である。
【図4】閾値入力装置と選択機能の配置例を示す模式図である。
【図5】磁界内に磁性体が移動した場合の磁束線の模式図である。
【図6】磁界内の磁気センサが変位した場合の磁束線の模式図である。
【図7】電気接点を用いた一の実施例を示した概略説明図である。
【図8】電気接点を用いた一の実施例を示した概略説明図である。
【図9】本発明にかかる磁性体検知機の一の構成態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 制御部
2 センサユニット
3 ドア
4 ケーブル
5 磁気センサ
6 物体検知センサ
7 変位検知センサ
8 磁性体検知空間
9 磁性体
10 磁性体
11 磁気信号処理機能
12 物体検知信号処理機能
13 変位検知信号処理機能
14 比較機能
15 比較機能
16 閾値入力装置
17 閾値入力装置
18 論理積機能
19 論理和機能
20 選択機能
21 負論理機能
22 論理積機能
23 ラッチ機能
24 解除機能
25 告知機能
26 電気接点
27 電源
28 外部告知機能
29 告知機能
30 磁石
31 磁性体
32 磁性体がない場合の磁束線
33 磁性体がある場合の磁束線
34 変位した磁気センサ
35 使用者
36 開閉機能
37 ドア枠
38 告示機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束密度の変化を検知する磁性体検知機能と、閾値を入力する閾値入力機能と、該磁気検知機能の出力値と該閾値を比較する比較機能と、該比較機能の比較結果を告知する告知機能と、該告知機能による告知動作を停止する解除機能からなる磁性体検知機において、物体の通過または近接を検出する物体検知機能を備え、該物体検知機能が物体を検知した場合のみ該告知機能を作動させることを特徴とする磁性体検知機。
【請求項2】
前記磁性体検知機において、第二閾値を入力する第二閾値入力機能と、前記磁気検知機能の出力値と該第二閾値を比較する第二比較機能を備え、該第二比較機能の第二比較結果によって前記告知機能を有効にすることを特徴とする請求項1に記載の磁性体検知機。
【請求項3】
前記磁性体検知機において、、前記比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、前記第二比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、を選択するための選択機能を備えたことを特徴とする請求項2に記載の磁性体検知機。
【請求項4】
磁性体検知機において、前記比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、前記第二比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、比較結果及び第二比較結果の論理和によって前記告知機能を有効にする機能と、を選択するための第二選択機能を備えたことを特徴とする請求項2に記載の磁性体検知機。
【請求項5】
前記磁性体検知機において、前記磁気検知機能の変位を検出する変位検知機能を備え、該変位検知機能が変位を検知した場合に前記告知機能を無効にする機能を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の磁性体検知機。
【請求項6】
前記磁性体検知機において、第二告知機能を備え、前記変位検知機能が変位を検知した場合に該第二告知機能を動作させることを特徴とする請求項5に記載の磁性体検知機。
【請求項7】
前記磁性体検知機において、電気接点を備えるとともに、前記告知機能に同期して該電気接点を開閉する機能を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の磁性体検知機。
【請求項8】
前記磁性体検知機において、ドア枠を備え、該ドア枠に、前記磁性体検知機能と前記閾値入力機能と前記比較機能と前記告知機能と前記解除機能と前記第二閾値入力機能と前記第二比較機能と前記選択機能と前記第二選択機能と前記変位検知機能と前記第二告知機能と前記電気接点のうち少なくとも一以上を内臓させたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の磁性体検知機。
【請求項9】
前記磁性体検知機において、ドアと、該ドアの開閉を制御する開閉機能を備え、前記告知機能と同期して該開閉機能を有効にすることを特徴とする請求項8に記載の磁性体検知機。
【請求項10】
前記磁性体検知機において、少なくとも一以上の第三告知機能を備え、前記ドア枠に該第三告知機能を内蔵させることを特徴とする請求項8または請求項9のいずれかに記載の磁性体検知機。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−249584(P2008−249584A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92999(P2007−92999)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(501415523)株式会社ディード (11)
【Fターム(参考)】