説明

磁性粒子およびその製造方法、ならびにプローブ結合粒子

【課題】タンパクや核酸等の非特異吸着が少なく、特に、生化学・医薬品分野で特出する高感度と低ノイズを発現する磁性粒子およびその製造方法ならびにプローブ結合粒子を提供すること。
【解決手段】磁性粒子の製造方法は、粒径dの磁性母粒子の表面に、粒径d/2以下の非磁性子粒子を設ける第1の工程、前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように、グリシジル基を有する第1ポリマー層を形成する第2の工程、並びに、前記第1ポリマー層に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を導入する第3の工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子およびその製造方法、ならびにプローブ結合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性粒子は、磁気分離による洗浄が容易で、抗原と抗体との免疫反応やDNA同士またはDNAとRNAとのハイブリダイゼーション、医薬品候補物質と体内物質の相互作用などの研究において優れた反応場を提供できることから、特に診断薬や医薬品研究用などの生化学用途への応用が活発になっている。
【0003】
中でも、生化学用担体粒子としては、物理吸着感作用として主にポリスチレン粒子が、化学結合感作用として主にカルボキシル基変性ポリスチレン粒子が広く使用されている。しかしながら、これらの粒子は、細胞、タンパク、DNAなどの試験検体中に存在する、目的としない他の生理活性物質等の吸着(以下、本明細書において「非特異吸着」という)が大きく、この非特異吸着が感作粒子の性能を阻害する。すなわち、非特異吸着はこれらの粒子を使用するうえでの大きな障害になっていた。
【0004】
非特異吸着の少ない生化学用担体としては、アガロース、セファロースなど糖鎖に基づくゲル体が使用されているが、結合したプローブの活性が低くなる傾向があり、十分なシグナルが得られないことが多い。
【0005】
磁性粒子に関しても同様に、非特異吸着を低減させることが求められており、その目的から粒子表面にグリシジル基を導入した磁性粒子が提案されている。例えば、特開2006−131771号公報では、超常磁性微粒子をスチレンおよびグリシジルメタクリレートに分散させ、超音波処理で微分散させてから重合する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、磁性体の被覆が不十分で非特異吸着の低減が不十分であるうえに、平均粒子径が200nm以下と粒子径が小さいため磁気分離性も不十分である。
【0006】
本出願人は、特許第3738847号公報で、磁性体の脱落、鉄イオンなどの磁性体成分に由来する物質の溶出がなく、均一粒子径を有する診断薬用粒子を簡便かつ効率的に製造することを目的として、2層のポリマーコートを設ける工程を含む磁性粒子の製造方法を開示し、さらに、特開2005−83904号公報および特開2005−83905号公報で、非特異吸着を低減した磁性粒子を開示したが、さらなる非特異吸着の低減が望まれている。
【0007】
なお、必ずしも非特異吸着を低減させる目的ではないが、グリシジル基を導入した磁性粒子として、例えば、特表平2−501753号公報では、核粒子の存在下、磁性体とモノマーとの混合物を重合し、さらにポリマーコートする方法が提案されている。しかしながら、この方法では、磁性体とモノマーとの混合物のうち、核粒子上で重合する部分はわずかであり、結果的に極めて少量の磁性体しか核粒子に取り込むことができないため、磁気分離性に劣る。
【0008】
また、特表平10−505118号公報では、グリシジル基を導入した磁性粒子にアミノ基を導入する反応が記載されているが、この磁性粒子はイオン交換を目的とした多孔質の粒子であり、非特異吸着が著しい。
【0009】
さらに、特表2006−511935号公報では、粒子表面および内部に磁性体を析出させ、さらにグリシジル基を有するポリマーでコートする提案がなされている。しかしながら、この方法では、粒子表面にまで磁性粒子を析出させた場合、グリシジル基を有するポリマーでのコートのみでは磁性粒子の被覆が不十分であり、非特異吸着性を低減させることができない。
【特許文献1】特開2006−131771号公報
【特許文献2】特許第3738847号公報
【特許文献3】特開2005−83904号公報
【特許文献4】特開2005−83905号公報
【特許文献5】特表平2−501753号公報
【特許文献6】特表平10−505118号公報
【特許文献7】特表2006−511935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、タンパクや核酸等の非特異吸着が少なく、特に、生化学・医薬品分野で特出する高感度と低ノイズを発現する磁性粒子およびその製造方法ならびにプローブ結合粒子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、粒径dの磁性母粒子の表面に粒径d/2以下の非磁性子粒子を設けたうえで、最外層にグリシジル基を有する第1ポリマー層を形成し、さらにこの第1ポリマー層に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を導入することにより、生化学・医薬品分野で特出する高感度および低ノイズを発現し、かつ、表面が凸凹であることにより単位重量あたりの表面積が比較的大きいため捕捉物質の結合量が多い磁性粒子が得られることを見出し、本発明を完成させた。本発明によれば、以下の態様の磁性粒子およびその製造方法ならびにプローブ結合粒子を提供することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る磁性粒子の製造方法は、
粒径dの磁性母粒子の表面に、粒径d/2以下の非磁性子粒子を設ける第1の工程、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように、グリシジル基を有する第1ポリマー層を形成する第2の工程、並びに、
前記第1ポリマー層に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を導入する第3の工程
を含む。
【0013】
本発明において、母粒子とは、本発明の磁性粒子の中心体となる粒子をいい、子粒子とは、母粒子の表面を被覆する粒子をいう。
【0014】
上記磁性粒子の製造方法において、前記第3の工程が、アミノ基を導入する反応を含むことができる。
【0015】
上記磁性粒子の製造方法において、前記第3の工程が、アルデヒド基を導入する反応を含むことができる。
【0016】
上記磁性粒子の製造方法において、前記第3の工程が、カルボキシル基を導入する反応を含むことができる。この場合、前記第3の工程がさらに、前記カルボキシル基を活性エステル基に変換する反応を含むことができる。
【0017】
上記磁性粒子の製造方法において、前記第2の工程は、複数のグリシジル基を有する第1ポリマー層を形成する工程であり、前記グリシジル基の一部を加水分解する工程をさらに含むことができる。
【0018】
上記磁性粒子の製造方法において、前記磁性母粒子は、核粒子と、該核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、該磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、
前記第2の工程は、前記第2ポリマー層および前記非磁性子粒子を被覆するように前記第1ポリマー層を形成する工程であることができる。この場合、
前記磁性母粒子は、水系媒体中で正または負の表面荷電を有し、前記非磁性子粒子は、前記水系媒体中で負または正の表面荷電を有し、前記第1の工程は、前記磁性母粒子と前記非磁性子粒子とを前記水系媒体中で混合することにより、前記磁性母粒子の表面に前記非磁性子粒子を吸着させる工程を含むことができる。さらにこの場合、前記磁性母粒子は、前記水系媒体中で正の表面荷電を有し、前記非磁性子粒子は、前記水系媒体中で負の表面荷電を有することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る磁性粒子は、
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、アミノ基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む。
【0020】
本発明の一態様に係る磁性粒子は、
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、アルデヒド基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む。
【0021】
本発明の一態様に係る磁性粒子は、
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、カルボキシル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む。
【0022】
本発明の一態様に係る磁性粒子は、
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、活性エステル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む。
【0023】
上記磁性粒子において、前記磁性母粒子は、核粒子と、該核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、該磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、前記第1ポリマー層は、前記第2ポリマー層および前記非磁性子粒子を被覆するように形成されることができる。
【0024】
上記磁性粒子はプローブ結合に用いることができる。
【0025】
本発明の一態様に係るプローブ結合粒子は、上記磁性粒子と、該磁性粒子に結合するプローブとを含む。
【発明の効果】
【0026】
上記磁性粒子は、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように、上記極性基を有する第1ポリマー層が設けられていることにより、タンパク質や核酸等の非特異吸着が少ないため、生化学・医薬品分野で特出する高感度および低ノイズを発現し、生化学検査用として高いS/N比を得ることができる。また、上記磁性粒子は、磁性母粒子の表面上に非磁性子粒子が存在することにより、表面が凸凹であるので、単位重量あたりの表面積が大きいため、捕捉物質の結合量が多い。
【0027】
また、上記磁性粒子の製造方法によれば、タンパクや核酸等の非特異吸着が少なく、特に、生化学・医薬品分野で特出する高感度と低ノイズを発現できる磁性粒子を効率よく製造することができる。
【0028】
さらに、上記プローブ結合粒子によれば、プローブの脱離が少なく、非特異吸着が少なく、かつ高感度である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る磁性粒子およびその製造方法ならびにプローブ結合粒子について説明する。
【0030】
1.磁性粒子およびその製造方法
本実施形態に係る磁性粒子は、粒径dの磁性母粒子と、磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた第1ポリマー層とを含むことができる。この場合、第1ポリマー層は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を含むことができる。
【0031】
本実施形態に係る磁性粒子の製造方法は、粒径dの磁性母粒子の表面に、粒径d/2以下の非磁性子粒子を設ける第1の工程、前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように、グリシジル基を有する第1ポリマー層を形成する第2の工程、並びに、前記第1ポリマー層に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を導入する第3の工程を含む。
【0032】
1.1.磁性粒子の構成および製造
本発明の一実施形態に係る磁性粒子は、磁性母粒子および非磁性子粒子を含み、非磁性子粒子は磁性母粒子の表面上に存在する。ここで、「非磁性子粒子が磁性母粒子の表面上に存在する。」とは、(a)非磁性子粒子が磁性母粒子の表面と接触している場合だけでなく、例えば、(b)磁性母粒子が後述する第2ポリマー層を含む場合に、非磁性子粒子が磁性母粒子の表面と接触しておらず、非磁性子粒子が磁性母粒子の表面から浮き上がった状態にある場合も含む。(b)である場合、隣り合う非磁性体粒子の間に第2ポリマー層が存在することができる。
【0033】
本実施形態に係る磁性粒子においては、非磁性子粒子が磁性母粒子の表面上において、上記(a)および(b)の少なくとも一方の状態であることができる。
【0034】
本実施形態に係る磁性粒子は、複数の非磁性子粒子が磁性母粒子の表面を被覆するように存在するのが好ましく、複数の非磁性子粒子が均一な厚さを有する被覆層を構成していることがより好ましい。
【0035】
非磁性子粒子は、例えば、磁性母粒子の表面に吸着されていてもよいし、あるいは、磁性母粒子の表面または該表面の上方に固定されていてもよい。非磁性子粒子が磁性母粒子の表面に吸着されている場合、吸着は例えば物理的吸着および化学的吸着のいずれかであってもよい。また、磁性母粒子の表面または該表面の上方に非磁性子粒子を固定する方法としては、例えば、他の層(例えば後述する第1ポリマー層)によって、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆する方法が挙げられる。
【0036】
本発明において、「物理的吸着」とは、化学反応を伴わない吸着を意味する。「物理的吸着」の原理としては、例えば、疎水/疎水吸着、溶融結合または吸着、融着結合または吸着、水素結合、ファンデルワールス結合などが挙げられる。
【0037】
本実施形態に係る磁性粒子の粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。前記粒子径が0.1μm未満である場合、十分な磁気応答性が発現されず、当該粒子を分離するために相当に長い時間を要し、また、分離するために相当に大きい磁力が必要となるため好ましくない。一方、前記粒子径が10μmを超える場合、当該粒子が分散媒中で沈降しやすくなるため、標的物質を捕捉する際に分散媒を攪拌する操作が必要となり、また、粒子の重量に対する表面積の割合が小さくなるため、十分な量の標的物質を捕捉することが困難となることがある。
【0038】
本実施形態に係る磁性粒子は、分散体または乾燥粉体として使用することができる。分散体に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。水系媒体は特に限定されないが、例えば、水、水系溶剤を含む水が挙げられる。水系溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、エタノール、アルキレングリコール、モノアルキルエーテルなど)が挙げられる。分散媒には分散剤を含んでいてもよい。
【0039】
水系分散体は、通常、第3の工程の後、蒸留水などの水系溶媒で洗浄し、水系溶媒を加えて攪拌、ホモジナイザー、超音波などの処理により得られる。溶媒乾燥粉体は、水系分散体の加熱乾燥、真空乾燥、スプレードライ、凍結乾燥などによって得られる。
【0040】
次に、本実施形態に係る磁性粒子およびその製造方法を構成する各構成要素について詳細に説明する。
【0041】
1.2.磁性母粒子
1.2.1.磁性母粒子の構成および製造
磁性母粒子は、磁石で集めることが可能な公知の粒子状物質であり、その粒径dは、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。粒径dが0.1μm未満であると、磁力による分離精製に長時間を要する場合があり、一方、粒径dが10μmを超えると、生化学物質結合量が少ない場合がある。
【0042】
磁性母粒子は、均質な磁性体粒子であってもよく、あるいは不均質な磁性体粒子であってもよい。しかしながら、上述の好ましい粒径範囲にある均質な磁性体粒子は常磁性である物質が多く、磁力による分離精製を繰り返すと媒質への再分散が困難になる場合がある。このため、磁性母粒子は、残留磁化が少ない、超常磁性微粒子を含む不均質な粒子であるのが好ましい。
【0043】
このような不均質構造の磁性母粒子の具体的な形態としては、例えば、(a)有機ポリマー等の非磁性体の連続相中に超常磁性微粒子が分散している粒子、(b)超常磁性微粒子の2次凝集体をコアとし、有機ポリマー等の非磁性体をシェルとする粒子、(c)有機ポリマー等の非磁性体からなる核粒子と、該核粒子の表面に設けられた超常磁性微粒子の2次凝集体層(磁性体層)とを含む粒子が挙げられる。これらの中では、優れた磁気応答性を有し粒子径を均一に制御できる点で、(c)超常磁性微粒子を含む磁性体層が核粒子の表面に形成された磁性母粒子が好ましい。以下、(c)の磁性母粒子の構成について説明する。
【0044】
(c)の磁性母粒子においては、例えば、磁性母粒子は、核粒子と、核粒子の表面上に存在する超常磁性微粒子(2次凝集体)とを含むことができる。この場合、磁性母粒子は、例えば、核粒子の表面に超常磁性微粒子を物理的に吸着させることにより得ることができる。「超常磁性微粒子が核粒子の表面上に存在する。」とは、(i)超常磁性微粒子が核粒子の表面と接触している場合、(ii)例えば磁性母粒子が後述する第2ポリマー層を含む場合に、超常磁性微粒子が核粒子の表面と接触しておらず、超常磁性微粒子が核粒子の表面から浮き上がっている状態にある場合も含む。磁性母粒子においては、超常磁性微粒子が核粒子の表面上において、上記(i)および(ii)の少なくとも一方の状態であることができる。
【0045】
この場合、磁性母粒子は、磁性体層が核粒子の表面を被覆するように存在するのが好ましく、複数の超常磁性微粒子が均一な厚さを有する磁性体層を構成していることがより好ましい。
【0046】
1.2.2.核粒子
核粒子は、基本的に非磁性物質であり、有機物質および無機物質のいずれも使用可能であり、診断薬用粒子の使用目的等によって適宜選択することができる。有機物質の代表例としては、例えばポリマーを挙げることができる。かかるポリマーとしては、特に、ビニル系ポリマーが好ましく、最も好ましくは、架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレートである。これらポリマーは、カルボキシル基などの官能基が導入されていても良い。
【0047】
核粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜5μm、最も好ましくは0.3〜2μmである。核粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、磁気分離性に劣る場合がある。一方、核粒子の平均粒子径が10μmを超えると、重力沈降が著しくなり、プローブを結合した粒子として反応場が不均一になる場合がある。
【0048】
核粒子の材質は、複合化の際の加工性、軽量性の観点からポリマーなどの有機物質が好ましい。なお、本発明において「平均粒子径」とは、電子顕微鏡写真上にて100個の粒子の粒子径を無作意に測定して求めたものである。
【0049】
上述した特定範囲の平均粒子径を有する核粒子としてのポリマー粒子は、例えばビニル系モノマーの懸濁重合、あるいはポリマーバルクの粉砕によって得ることもできる。均一な粒子径を有する核粒子の作製方法としては、特公昭57−24369号公報記載の膨潤重合法、あるいは本出願人が先に提案した重合方法(特開昭61−215602号公報、同61−215603号公報、同61−215604号公報)によって容易に製造することができる。
【0050】
1.2.3.磁性体層
磁性体層は超常磁性微粒子から構成される。超常磁性微粒子としては、粒子径20nm以下(好ましくは粒子径5〜20nm)の酸化鉄系の微粒子が代表的であり、MnFe(Mn=Co、Ni、Mg、Cu、Li0.5Fe0.5等)で表現されるフェライト、Feで表現されるマグネタイト、あるいはγ−Feが挙げられ、飽和磁化が強く、かつ残留磁化が少ないγ−FeおよびFeのいずれか一方を含むことが好ましい。
【0051】
核粒子と超常磁性微粒子との比(核粒子:超常磁性微粒子)は、重量比で95:5〜20:80が好ましい。超常磁性微粒子がこの範囲の量より少ないと、磁気分離性に劣る場合がある。超常磁性微粒子がこの範囲の量より多いと、核粒子の対する量が過剰となり、複合化されない超常磁性微粒子が多くなる場合がある。
【0052】
超常磁性微粒子は、核粒子と後工程で使用する単量体モノマーとの親和性や相溶性との観点から、表面が疎水化されたものが望ましい。超常磁性微粒子の表面の疎水化処理方法としては、特許第3738847号に記載の方法が挙げられる。このような超常磁性微粒子は、公知の磁性流体から適当な貧溶媒で粒子を析出、洗浄することによっても得られる。
【0053】
1.2.4.磁性体層の形成
超常磁性微粒子を含む磁性体層を核粒子の表面に形成する方法としては、核粒子と超常磁性微粒子とを混合し、核粒子の表面に超常磁性微粒子を物理的に吸着させることにより、磁性体層を形成する方法が好ましい。核粒子の表面に超常磁性微粒子を吸着させる方法としては、例えば、核粒子と超常磁性微粒子とをドライブレンドして、物理的に強い力を外部から加えることにより双方の粒子を複合化させる方法により作製する方法が挙げられる。物理的に強い力を負荷する方法としては、例えば、乳鉢、自動乳鉢、ボールミル、ブレード加圧式粉体圧縮法、メカノフュージョン法のようなメカノケミカル効果を利用するもの、あるいは、ジェットミル、ハイブリダイザー等の高速気流中衝撃法を利用するものが挙げられる。効率よくかつ強固に複合化を実施するには、物理的吸着力が強いことが望ましい。物理的吸着力が強い複合化を実施するには、攪拌翼付き容器中で攪拌翼の周速度が好ましくは15m/秒以上、より好ましくは30m/秒以上、さらに好ましくは40〜150m/秒で複合化を実施することが挙げられる。撹拌翼の周速度が15m/秒より低いと、核粒子の表面に超常磁性微粒子を吸着させるのに十分なエネルギーを得ることができないことがある。なお、撹拌翼の周速度の上限については、特に制限はないが、使用する装置、エネルギー効率等の点から自ずと決定される。
【0054】
1.2.5.疎水性の第2ポリマー層
次に、磁性母粒子の最外層を構成することができる疎水性の第2ポリマー層(以下、単に「第2ポリマー層」ともいう)の構成およびその形成方法について述べる。
【0055】
第2ポリマー層は上述したように、磁性母粒子において、核粒子および磁性体層を被覆する。すなわち、磁性母粒子において、第2ポリマー層は、表面が超常磁性微粒子で覆われた核粒子をさらに被覆するように形成されることができる。磁性母粒子が第2ポリマー層を含むことにより、超常磁性微粒子が溶出するのを効果的に防止することができる。
【0056】
第2ポリマー層を形成するためのモノマー(以下、「第2モノマー部」ともいう)は、80重量%以上の疎水性モノマーを含み、好ましくは95重量%以上の疎水性モノマーを含み、さらに好ましくは98重量%以上の疎水性モノマーを含む。第2モノマー部中の疎水性モノマーが80重量%未満であると、非特異吸着が悪化する場合がある。ここで、疎水性モノマーとは、25℃における水への溶解度が2.5重量%以下の重合性モノマーの単体および混合物である。疎水性モノマーは単官能性(非架橋性)モノマー、架橋性モノマーのいずれであってもよく、単官能性モノマーおよび架橋性モノマーの混合物でもよい。
【0057】
磁性母粒子の存在下で、副原料である重合開始剤、乳化剤、分散剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤などが必要に応じて添加された液体中で、主原料である80重量%以上の疎水性モノマーを含む第2モノマー部を重合することにより、磁性母粒子の最外層を構成する第2ポリマー層を形成することができる。このように、重合によって第2ポリマー層を形成することにより、超常磁性微粒子の溶出を抑制することができ、かつ、後述する非磁性子粒子との結合を促進することができる。
【0058】
第2モノマー部に使用可能な疎水性モノマーのうち単官能性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルなどを例示することができる。また、疎水性モノマーのうち架橋性モノマーとしては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどを例示することができる。
【0059】
第2モノマー部は、20重量%以下の非疎水性モノマー(親水性モノマー)を含んでいてもよい。非疎水性モノマーのうち、単官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するモノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの親水性官能基(例えば水酸基、アミノ基、アルコキシ基、等)を有する(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、イソプレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびその塩化メチル4級塩、アリルアミンなどの共重合可能なモノマーとの共重合体などを例示できる。非疎水性モノマーのうち、架橋性モノマーとして、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリビニルアルコールのポリ(メタ)アクリルエステルなどの親水性のモノマーを例示することができる。第2モノマー部に含まれる非疎水性モノマーは、20重量%以下であり、好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0060】
第2モノマー部中の架橋性モノマー(疎水性モノマー、非疎水性モノマーあわせて)の比率は、第2ポリマー層を構成するモノマー部100重量%中に好ましくは1〜40重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。第2モノマー部中の架橋性モノマーの比率が40重量%を超えると、粒子が多孔質化して非特異吸着を増加させることがある。
【0061】
重合開始剤としては、水への溶解性の観点から分類すると、油溶性重合開始剤が好ましい。水溶性の重合開始剤を用いると複合粒子表面での重合でなく、磁性体被覆粒子を含まない疎水性モノマーのみが重合した新粒子が多量に生じる傾向がある。
【0062】
油溶性重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ターシャリーブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の過酸化化合物、アゾ化合物などを挙げることができる。
【0063】
水溶性開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、2−2アゾビス(2−アミノプロパン)鉱酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩等があげられ、また、過硫酸塩、過酸化水素塩と重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化第一鉄等を組み合わせたレドックス開始剤もあげられ、中でも過硫酸塩が好適に用いられる。これらの重合開始剤のモノマー全体に対する割合は0.01〜8重量%の範囲が好適に用いられる。
【0064】
乳化剤としては、通常使用されている陰イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等を単独もしくは組み合わせて用いることができる。例えば陰イオン性乳化剤としては、高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルのリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などの陰イオン性乳化剤の他、エレミノールJS−2、JS−5〔製品名、三洋化成(株)製〕、ラテムルS−120、S−180A、S−180、PD−104〔製品名、花王(株)製〕、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10〔製品名、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープSE−10N、SR−10〔製品名、旭電化工業(株)製〕などの反応性乳化剤などを挙げることができる。
【0065】
また、非イオン性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのほか、アクアロンRS−20(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−20(旭電化工業(株)製)などの反応性非イオン性乳化剤を挙げることができる。
【0066】
また、カチオン性乳化剤としては、アルキルアミン(塩)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(塩)、第4級アルキルアンモニウム(塩)、アルキルピリジニウム(塩)などを挙げることができる。
【0067】
第2ポリマー層の形成における重合系へのモノマーの添加方法は、とくに制限されず、一括方式、分割方式あるいは連続添加方式のいずれであっても良い。重合温度は重合開始剤によって異なるが、通常10〜90℃好ましくは30〜85℃であり、重合に要する時間は通常1〜30時間程度である。
【0068】
また、第2ポリマー層の厚さは、好ましくは0.005〜20μmであり、より好ましくは0.01〜5μmである。また、第2ポリマー層は磁性体層を完全に被覆していることが好ましい。
【0069】
本実施形態に係る磁性粒子において、第2ポリマー層が磁性母粒子の最外層を構成することにより、超常磁性微粒子の漏出を防止することができる。特に、本実施形態に係る磁性粒子において、磁性母粒子が核粒子と、核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層とを含む場合、第2ポリマー層が磁性母粒子の最外層を構成することにより、超常磁性微粒子の漏出を効果的に防止することができる。
【0070】
1.3.非磁性子粒子
非磁性子粒子は基本的に非磁性物質であり、有機物質および無機物質のいずれも使用可能であるが、好ましくは有機物質である。有機物質の代表例としては、例えばポリマーを挙げることができる。かかるポリマーとしては、上述の核粒子を製造する際に使用できるものを用いることができる。上述のようにモノマー成分を選択することにより、正または負の表面荷電を有する官能基を表面に有する非磁性子粒子を得ることができる。このような官能基としては特に限定されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、メルカプト基、スルホン基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基などが挙げられる。
【0071】
非磁性子粒子の粒径は、磁性母粒子の粒径dに対してd/2以下であり、好ましくはd/100〜d/4であり、より好ましくはd/50〜d/6である。非磁性子粒子の粒径がd/2を超えると、非磁性子粒子が磁性母粒子に吸着しないことがあり、また、吸着したとしても生化学物質結合量が劣ることがある。
【0072】
本実施形態に係る磁性粒子において、1つの磁性母粒子の表面上に存在する複数の非磁性子粒子のCV(Coefficient of Variation)値は、30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0073】
上述したように、非磁性子粒子は磁性母粒子の表面を被覆するように設けられる。ここで、非磁性子粒子を磁性母粒子の表面に設ける方法としては、磁性母粒子の表面に非磁性子粒子を物理的に吸着させる方法のほか、クーロン引力を用いる方法が好適である。クーロン引力を用いる方法としては、例えば、水系媒体中で正または負の表面荷電を有する磁性母粒子と、これと逆の表面荷電(負または正)を有する非磁性子粒子とを水系媒体中で混合する工程が挙げられる。中でも、(i)カルボキシル基など常用される、アニオン性官能基を磁性粒子表面に容易に導入可能であり、(ii)DNAなどのアニオン性生体物質の非特異的吸着が少なくなるという点で、磁性母粒子が正の表面荷電を有することが好ましい。この場合、正の表面荷電を有する磁性母粒子と負の表面荷電を有する非磁性子粒子とを水系媒体中で混合することにより、磁性母粒子の表面に非磁性子粒子を吸着させる。ここで、水系媒体としては、磁性粒子の欄で例示したものを使用することができる。
【0074】
磁性母粒子および非磁性子粒子の表面荷電を正または負に調整する方法は、公知のコロイド界面化学的手法を用いればよく、例えば、以下の(a)〜(f)の方法を使用することができる。
【0075】
(a)水系媒体中で正の表面荷電を有する磁性母粒子を作製する方法としては、例えば、(i)酸化鉄系の超常磁性微粒子を表面処理せずに使用することにより該超常磁性微粒で核粒子を被覆し、該超常磁性微粒子の等電点(通常pH9.5程度)未満の水分散体とする方法、(ii)N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系シランカップリング剤で表面処理した超常磁性微粒子を使用する方法、(iii)第2ポリマー層の形成時に、重合性モノマーとしてN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのカチオン基を有するモノマーを使用し、かつ/または、副原料として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩などのカチオン基を有する開始剤を使用し、かつ/または、乳化剤としてカチオン性乳化剤を使用して重合を行う方法などが挙げられる。
【0076】
(b)水系媒体中で負の表面荷電を有する磁性母粒子を作製する方法としては、例えば、(i)酸化鉄系の超常磁性微粒子を表面処理せずに使用することにより該超常磁性微粒で核粒子を被覆し、該超常磁性微粒子の等電点(通常pH9.5程度)を越える水分散体とする方法、(ii)長鎖脂肪酸などで表面処理した超常磁性微粒子を使用する方法、(iii)第2ポリマー層の形成時に、重合性モノマーとしてメタクリル酸などのアニオン基を有するモノマーを使用し、および/または、副原料として過硫酸カリウムなどのアニオン基を有する開始剤を使用し、および/または、乳化剤としてアニオン性乳化剤を使用して重合を行う方法などが挙げられる。
【0077】
(c)非磁性子粒子がポリマーからなる場合、水系媒体中で正の表面荷電を有する非磁性子粒子を作製する方法としては、ポリマー粒子の重合時に、重合性モノマーとしてN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのカチオン基を有するモノマーを使用し、かつ/または、副原料として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩などのカチオン基を有する開始剤を使用し、かつ/または、乳化剤としてカチオン性乳化剤を使用して重合を行う方法が挙げられる。
【0078】
(d)非磁性子粒子が酸化金属からなる場合、水系媒体中で正の表面荷電を有する非磁性子粒子を作製する方法としては、酸化金属の等電点を越える水分散体とする方法が挙げられる。
【0079】
(e)非磁性子粒子がポリマーからなる場合、水系媒体中で負の表面荷電を有する非磁性子粒子を作製する方法としては、ポリマー粒子の重合時に、重合性モノマーとしてメタクリル酸などのアニオン基を有するモノマーを使用し、かつ/または、副原料として過硫酸カリウムなどのアニオン基を有する開始剤を使用し、かつ/または、乳化剤としてカチオン性乳化剤を使用して重合を行う方法が挙げられる。
【0080】
(f)非磁性子粒子が酸化金属からなる場合、水系媒体中で負の表面荷電を有する非磁性子粒子を作製する方法としては、酸化金属の等電点未満の水分散体とする方法が挙げられる。
【0081】
磁性母粒子の表面に非磁性子粒子を吸着させるためには、水系媒体中で正の表面荷電を有する磁性母粒子と、負の表面荷電を有する非磁性子粒子とを水系媒体中で混合するのがより好ましく、上記(a)〜(c)の方法により作製された水系媒体中で正の表面荷電を有する磁性母粒子と、上記(e)の方法により作製された負の表面荷電を有する非磁性子粒子とを水系媒体中で混合するのがさらに好ましい。このような工程を採用することにより、鉄イオンなどの生化学反応妨害物質の溶出がよりいっそう少なくなり、かつ、生化学物質結合量がよりいっそう多くなる。
【0082】
水系媒体中で正または負の表面荷電を有する磁性母粒子と、これと逆の表面荷電を有する非磁性子粒子とを水系媒体中で混合する工程では、非磁性子粒子を攪拌および/または超音波分散しながら、磁性母粒子を徐々に加えていく方法が好ましい。また、磁性母粒子と非磁性子粒子との混合比率はそれぞれの粒径の比によって異なるが、非磁性子粒子の吸着が完了した状態で、なお、吸着していない非磁性子粒子が残留するような比率であると分散系が安定するため、本実施形態に係る磁性粒子の作製が容易となる。なお、残留した非磁性子粒子は、磁気分離により、本実施形態に係る磁性粒子と容易に分離精製することができる。
【0083】
水系媒体中で正または負の表面荷電を有する磁性母粒子と、これと逆の表面荷電を有する非磁性子粒子とを水系媒体中で混合する工程では、非磁性子粒子の結合を促進するイオン性化合物を添加することが好ましい。このようなイオン性化合物としては、磁性母粒子が正の表面荷電を有する場合、塩酸、硝酸、硫酸などの酸性化合物を、磁性母粒子が負の表面荷電を有する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基性化合物をそれぞれ例示することができる。
【0084】
磁性母粒子の表面に非磁性子粒子が吸着する様式は、非磁性子粒子がなるべく多く吸着した一層吸着が好ましい。このような吸着様式であると生化学物質結合量がよりいっそう多く、かつ、非特異な生化学物質の結合が少なくなり、ノイズが減少する。
【0085】
1.4.第1ポリマー層
本実施形態に係る磁性粒子は、磁性母粒子および非磁性子粒子の露出面を被覆する第1ポリマー層を含む。この第1ポリマー層は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む。また、この極性基は、グリシジル基を有する第1ポリマー層を磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように形成し、この第1ポリマー層のグリシジル基を化学修飾することにより得ることができる。
【0086】
1.4.1.第1ポリマー層の構成および形成方法
まず、グリシジル基を有する第1ポリマー層(以下、単に「第1ポリマー層」ともいう)の構成およびその形成方法について述べる。第1ポリマー層は上述したように、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように設けられている。
【0087】
また、磁性母粒子の表面を第2ポリマー層が構成する場合、第2ポリマー層ならびに第2ポリマー層を被覆する非磁性子粒子を被覆するように、第1ポリマー層を設けることができる。
【0088】
第1ポリマー層は、好適な低非特異吸着性の粒子表面を形成するための官能基導入を主目的とする。低非特異吸着性の粒子表面は、例えばプローブ結合用磁性粒子の表面として好適である。また、第1ポリマー層は、磁性母粒子の表面に非磁性子粒子を固定させる機能を有する。
【0089】
第1ポリマー層を形成するためのモノマー(以下、「第1モノマー部」ともいう)は、20重量%以上のグリシジル基含有モノマーを含み、好ましくは40重量%以上のグリシジル基含有モノマーを含み、さらに好ましくは80重量%以上のグリシジル基含有モノマーを含む。第1ポリマー層を構成するその他のモノマーとしては、上記第2モノマー部に使用するモノマーとして例示したものを使用することができる。所定量のグリシジル基含有モノマーを含む第1モノマー部を重合することにより、2以上のグリシジル基を有する第1ポリマー層を得ることができる。第1ポリマー層に含まれるグリシジル基は通常2以上である。
【0090】
第1ポリマー層は、第2ポリマー層の形成方法と基本的に同様の方法にて形成することができる。すなわち、第2ポリマー層が表面に形成された磁性母粒子の存在下で、副原料である重合開始剤、乳化剤、分散剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤などが必要に応じて添加された液体中で、主原料である第1モノマー部の重合を行うことにより、第1ポリマー層を形成することができる。
【0091】
ここで、グリシジル基を含む共重合性モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等を例示できる。
【0092】
第1モノマー部には、架橋性モノマーがさらに含まれることが好ましく、その比率は、第1モノマー部100重量%中に好ましくは1〜40重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。第1モノマー部中の架橋性モノマーの比率が40重量%を超えると、粒子が多孔質化して非特異吸着を増加させることがある。
【0093】
第1ポリマー層の形成における重合系へのモノマーの添加方法は、とくに制限されず、一括方式、分割方式あるいは連続添加方式のいずれであっても良い。重合温度は重合開始剤によって異なるが、通常10〜90℃好ましくは30〜85℃であり、重合に要する時間は通常1〜30時間程度である。
【0094】
第1ポリマー層の厚さは、第2ポリマー層に比較して薄くすることが可能であり、好ましくは0.005〜5μmであり、より好ましくは0.005〜1μmである。
【0095】
1.4.2.第1ポリマー層への極性基の導入
第3の工程すなわち第1ポリマー層への極性基の導入は例えば、第1ポリマー層中のグリシジル基を化学修飾することにより行うことができる。第3の工程は例えば以下の反応を含むことができる。これらの反応は2以上を組み合わせても良い。
(a)アミノ基を導入する反応、
(b)アルデヒド基を導入する反応、
(c)−1.カルボキシル基を導入する反応、
(c)−2.カルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基を活性エステル基に変換する反応
【0096】
すなわち、第1ポリマー層のグリシジル基を化学修飾することにより、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を導入することができる。ここで、前記極性基はプローブと反応可能な官能基であることが好ましく、例えば、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、および活性エステル基から選択される少なくとも1つであることが好ましい。例えば、得られた磁性粒子の第1ポリマー層が前記極性基および後述する2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する場合、プローブとの結合性が良好であり、かつ、非特異吸着が少ない。
【0097】
以下、上記反応について順に述べる。
【0098】
1.4.2−1.アミノ基を導入する反応
(a)アミノ基を導入する反応は、より具体的には、グリシジル基を有する第1ポリマー層が形成された粒子にアミノ化剤を作用させることにより、第1ポリマー層にアミノ基を導入する反応である。この反応により、アミノ基導入磁性粒子が得られる。このアミノ基導入磁性粒子は、プローブ結合用として好適に用いることができる。
【0099】
アミノ化剤としては、例えば、アンモニア、分子中に2個のアミノ基を有する有機化合物(ジアミン)、あるいは、分子中に3個以上のアミノ基を有する有機化合物を挙げることができ、分子中に2個以上のアミノ基を有する有機化合物がより好ましい。
【0100】
ここで、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、o−フェニレンジアミンなどの1級ジアミンなどが挙げられる。また、分子中に3個以上のアミノ基を有する有機化合物としては、1,2,3−トリアミノプロパン、テトラ(アミノメチル)メタン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,3,4−テトラアミノベンゼンなどが挙げられる。
【0101】
アミノ基を導入する反応は、乾燥粒子をそのままアミノ化剤に分散させて実施してもよいし、あるいは、粒子を水系溶媒に分散させた状態で実施しても良い。水系溶媒とは、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒、あるいは、水である。ここで、水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、ジメチルホルムアミドなどを例示できる。アミノ基を導入する反応の好ましい温度、時間は、第1ポリマー層中のグリシジル基の濃度、溶媒の有無、溶媒の種類などによって異なるが、通常、4℃〜100℃、好ましくは、20℃〜80℃で、通常、10分〜48時間、好ましくは、1時間〜24時間である。なお、アミノ基を導入する反応では、全てのグリシジル基がアミノ化される必要はない。
【0102】
本実施形態に係る磁性粒子におけるアミノ基の量は、好ましくは0.1μmol/g〜100μmol/gであり、より好ましくは0.5μmol/g〜50μmol/gである。アミノ基の量が0.1μmol未満ではプローブの結合量が少なくなりシグナルが劣る場合があり、100μmol/gを超えると非特異吸着が増える場合がある。
【0103】
アミノ基を導入する反応の前に、2以上のグリシジル基の一部を加水分解してもよい。また、アミノ基を導入する反応と同時に、2以上のグリシジル基の一部を加水分解してもよい。あるいは、アミノ基を導入する反応の後に、残留する2以上のグリシジル基の全てあるいは一部を加水分解してもよい。
【0104】
グリシジル基を加水分解することにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基が生成する。第1ポリマー層が2,3−ジヒドロキシプロピル基を有することにより、非特異吸着を低減することができる。グリシジル基の加水分解は、例えば、水系溶媒中で適当な酸触媒または塩基触媒によって進行する。好ましくは、アミノ基を導入する反応の前または後に、水溶媒中で、硫酸などの酸触媒を用いてグリシジル基を加水分解する。これにより、加水分解を速やかにかつ確実に行うことができる。この場合、加水分解の好ましい温度は、通常4℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃であり、加水分解の好ましい時間は、通常5分〜24時間、好ましくは30分〜12時間である。
【0105】
アミノ基を導入する反応によって得られる磁性粒子の一例としては、例えば、粒径dの磁性母粒子と、磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように設けられた、アミノ基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層とを含む磁性粒子が挙げられる。ここで、磁性母粒子は、核粒子と、核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層とを含み、第1ポリマー層は、第2ポリマー層および非磁性子粒子を被覆するように設けられることができる。第1ポリマー層がアミノ基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有することにより、プローブとの結合性が良好であり、かつ、非特異吸着が非常に少ない。
【0106】
1.4.2−2.アルデヒド基を導入する反応
(b)アルデヒド基を導入する反応は、より具体的には、第1ポリマー層に含まれるグリシジル基を加水分解によりジオール基に変換し、酸化剤を用いて該ジオール基を酸化的開列することにより、アルデヒド基を生成させる反応である。この反応により、アルデヒド基導入磁性粒子が得られる。このアルデヒド基導入磁性粒子は、プローブ結合用として好適に用いることができる。
【0107】
グリシジル基の加水分解の条件は、上記(a)アミノ基を導入する反応で説明した通りである。
【0108】
ジオールのアルデヒド化に適する酸化剤としては、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、四酢酸鉛などの公知の酸化剤が挙げられる。このうち、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウムなどの過ヨウ素酸塩は、水系溶媒中で容易に反応が進むため好ましい。
【0109】
アルデヒド基を導入する反応は、過ヨウ素酸塩など水系溶媒が適する酸化剤の場合、例えば、グリシジル基の加水分解の後、洗浄、磁気分離により上清を除き、酸化剤水溶液を加えて、反応を実施することができる。また、四酢酸鉛など有機溶媒が適する酸化剤の場合、グリシジル基を加水分解した後、洗浄、磁気分離により上清を除き、さらに乾燥させた後、酸化剤溶液に乾燥粒子を分散させてアルデヒド化を実施することが好ましい。アルデヒド基を導入する反応の好ましい温度および時間は、第1ポリマー層中のグリシジル基の濃度、加水分解の程度、溶媒の種類などによって異なるが、反応温度は通常4℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃であり、反応時間は通常1分〜12時間、好ましくは10分〜6時間である。なお、アルデヒド基を導入する反応では、全てのグリシジル基がアルデヒド化される必要はない。
【0110】
本実施形態に係る磁性粒子におけるアルデヒド基の量は、好ましくは0.1μmol/g〜100μmol/gであり、より好ましくは0.5μmol/g〜50μmol/gである。アルデヒド基の量が0.1μmol未満ではプローブの結合量が少なくなりシグナルが劣る場合があり、100μmol/gを超えると非特異吸着が増える場合がある。
【0111】
アルデヒド基を導入する反応によって得られる磁性粒子の一例としては、例えば、粒径dの磁性母粒子と、磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように設けられた、アルデヒド基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層とを含む磁性粒子が挙げられる。ここで、磁性母粒子は、核粒子と、核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、第1ポリマー層は、第2ポリマー層および非磁性子粒子を被覆するように設けられることができる。第1ポリマー層がアルデヒド基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有することにより、アミノ基を有するプローブと混合することにより該プローブと容易に結合するためプローブの結合が容易であり、かつ、非特異吸着が少ない。
【0112】
1.4.2−3.カルボキシル基を導入する反応
(c)−1.カルボキシル基を導入する反応としては、例えば、(i)第1ポリマー層に含まれるグリシジル基にカルボキシル化剤(例えば、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、あるいは、分子中に3個以上のカルボキシル基を有する有機化合物)を作用させる反応、(ii)第1ポリマー層に含まれるグリシジル基を加水分解して得られた水酸基に、カルボキシル化剤(例えば、カルボン酸無水物、カルボン酸塩化物)を作用させる反応、(iii)適当な脱水触媒の存在下で、第1ポリマー層に含まれるグリシジル基を加水分解して得られた水酸基に、分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機化合物(例えば、ジカルボン酸、あるいは、分子中に3個以上のカルボキシル基を有する有機化合物)を作用させる反応などが挙げられる。この反応により、カルボキシル基導入磁性粒子が得られる。このカルボキシル基導入磁性粒子は、プローブ結合用として好適に用いることができる。
【0113】
導入されるカルボキシル基量の制御のしやすさから、上記(ii)の反応が好ましく、(ii)第1ポリマー層に含まれるグリシジル基を加水分解して得られた水酸基に、カルボキシル化剤としてカルボン酸無水物を作用させる反応が特に好ましい。ここで、カルボン酸無水物は、多価カルボン酸無水物であり、その具体例としては、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸等の脂肪族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環族多価カルボン酸二無水物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。このうち、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などの1,2−ジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0114】
第1ポリマー層に含まれるグリシジル基を加水分解して得られた水酸基に、カルボキシル化剤としてカルボン酸無水物を作用させる具体的な方法としては、例えば、カルボン酸無水物を溶解させた有機溶剤に、加水分解した粒子の乾燥粉体を分散し、室温〜80℃で1〜24時間攪拌する方法が挙げられる。ここで用いられる有機溶剤としては、限定されないが、例えば、ピリジン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。また、触媒としては、硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛、酢酸ナトリウム、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、トリエチルアミンを使用してもよい。これらの有機溶剤、触媒のうち、ピリジンが有機溶剤兼触媒として好適である。
【0115】
なお、本実施形態に係る磁性粒子上の全ての水酸基がエステル化される必要はなく、水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残ることが好ましい。
【0116】
上記(i)〜(iii)の場合、カルボキシル基を導入する反応の前に、2以上のグリシジル基の一部を加水分解するか、あるいは、カルボキシル基を導入する反応と同時に、2以上のグリシジル基の一部を加水分解するのが好ましい。また、上記(i)の場合、カルボキシル基を導入する反応の後に、残留する2以上のグリシジル基の全てあるいは一部を加水分解してもよい。
【0117】
本実施形態に係る磁性粒子におけるカルボキシル基の量は、好ましくは0.1μmol/g〜100μmol/gであり、より好ましくは0.5μmol/g〜50μmol/gである。カルボキシル基の量が0.1μmol未満ではプローブの結合量が少なくなりシグナルが劣る場合があり、一方、100μmol/gを超えると非特異吸着が増える場合がある。
【0118】
カルボキシル基を導入する反応によって得られる磁性粒子の一例としては、例えば、粒径dの磁性母粒子と、磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように設けられた、カルボキシル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層とを含む磁性粒子が挙げられる。ここで、磁性母粒子は、核粒子と、核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、第1ポリマー層は、第2ポリマー層および非磁性子粒子を被覆するように設けられることができる。第1ポリマー層がカルボキシル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有することにより、非特異吸着が少ないうえに、生化学分野で広く扱われるカルボキシル基が導入されているため、従来の知見を生かして該粒子を利用することができる。
【0119】
1.4.2−4.カルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基を活性エステル基に変換する反応
(c)−2.カルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基を活性エステル基に変換する反応としては、例えば、上記カルボキシル基を導入する反応によって得られるカルボキシル基導入磁性粒子をさらに適当な活性化剤で修飾することにより、活性エステル基を導入する方法が挙げられる。この反応により、活性エステル基導入磁性粒子が得られる。この活性エステル基導入磁性粒子は、プローブ結合用として好適に用いることができる。適当な活性化剤としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドが挙げられる。また、活性エステル基は特に限定されないが、例えば、N−スクシンイミジルオキシカルボニル基、N−スルホスクシンイミジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0120】
活性エステル基を導入する具体的な方法としては、例えば、カルボキシル基導入磁性粒子の水分散体に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミドを加えて、室温〜80℃で1〜24時間攪拌する方法が挙げられる。
【0121】
本実施形態に係る磁性粒子における活性化エステル基の量は、好ましくは0.1μmol/g〜100μmol/gであり、より好ましくは0.5μmol/g〜50μmol/gである。活性化エステル基の量が0.1μmol未満ではプローブの結合量が少なくなりシグナルが劣る場合があり、一方、100μmol/gを超えると非特異吸着が増える場合がある。
【0122】
活性エステル基を導入する反応によって得られる磁性粒子の一例としては、例えば、粒径dの磁性母粒子と、磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように設けられた、活性エステル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層とを含む磁性粒子が挙げられる。ここで、磁性母粒子は、核粒子と、該核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、該磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、第1ポリマー層は、第2ポリマー層および非磁性子粒子を被覆するように設けられることができる。第1ポリマー層が活性エステル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有することにより、アミノ基を有するプローブと混合することにより該プローブと容易に結合するためプローブとの結合が容易であり、かつ、プローブの剥離が少ないうえに、非特異吸着が少ない。
【0123】
1.5.用途
本実施形態に係る磁性粒子は、プローブ結合用粒子として好適に使用することができ、より具体的には、生化学分野での化合物担体用粒子および診断薬用の化学結合担体用粒子等のアフィニティー担体として利用でき、特に、抗原または抗体等の一次プローブを結合させた免疫検査用およびプロテオーム用のプローブ結合用磁性粒子として、特出する高感度および低ノイズを発現することができる。
【0124】
本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子において、検査対象となる物質は、免疫検査用試薬および被検査試料に含まれる生体関連物質、化学物質、および生物である。本発明において、「生体関連物質」とは、生体に関わるすべての物質をいう。生体関連物質としては、例えば、生体に含まれる物質、生体に含まれる物質から誘導された物質、生体内で利用可能な物質が挙げられる。
【0125】
生体関連物質は特に限定されないが、例えば、タンパク質(例えば、酵素、抗体、アプタマー、受容体等)、ペプチド(例えばグルタチオン等)、核酸(例えば、DNAやRNA等)、糖質、脂質、ホルモン(例えば、黄体形成ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インシュリン、グルカゴン、成長ホルモン等)、およびその他の細胞または物質(例えば、血小板、赤血球、白血球等の各種血球細胞を含む各種血液由来物質、各種浮遊細胞や、ウイルス・細菌・真菌・原虫・寄生虫などの構成要素であるタンパク質や核酸)が挙げられる。タンパク質としては、より具体的には、生体由来のタンパク質、前立腺特異マーカー、膀胱ガンマーカー等の各種ガンのマーカーとなるタンパク質等が挙げられる。
【0126】
検査対象となる化学物質は特に限定されないが、例えば、ダイオキシン類等の環境汚染物質、医薬品(例えば、抗生物質、抗がん剤、抗てんかん剤等)があげられる。
【0127】
検査対象となる生物は特に限定されないが、例えば、各種癌細胞、各種浮遊細胞、ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HIVウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス等)、細菌(例えば、淋菌、MRSA、大腸菌等)、真菌(例えば、カンジダ、白癬菌、クリプトコックス、アルペルギルス等)、原虫・寄生虫(例えば、トキソプラズマ、マラリア等)等が挙げられる。
【0128】
本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子のうち、アルデヒド基導入粒子および活性エステル基導入粒子によれば、実際に使用するに当たり、プローブと該粒子とを混合するだけで、該粒子の表面にプローブを化学的に結合させることができる。
【0129】
本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子のうち、アミノ基導入粒子およびカルボキシル基導入粒子によれば、アミノ基またはカルボキシル基が粒子の表面に導入されているため、実際に使用するに当たり、水溶性カルボジイミドなどの公知の活性化剤により、プローブまたは該粒子のカルボキシル基を活性化させて、プローブと該粒子とを混合することで、該粒子の表面にプローブを化学的に結合させることができる。
【0130】
プローブを該粒子の表面に結合させた後、過剰のプローブを洗浄し、必要に応じて未反応の活性基を不活化する。不活化剤として、エタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン等の水酸基を含有する不活化剤を使用するのが好ましい。また、プローブを該粒子の表面に結合させた後、通常行われるブロッキングの操作は不要であるが、上述の不活化工程において、アルブミン、スキムミルク、カゼイン等のブロッキング剤を併用してもかまわない。以降は、粒子を用いた通常の工程に移行すればよい。
【0131】
本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子に担持することができるプローブは、タンパク質(抗原または抗体)、核酸、または、化合物であり、このうち抗原または抗体が好ましい。この場合、抗原または抗体としては、被検体中に一般に含まれている成分に反応するものであれば特に制限されないが、例えば、アンチプラスミン検査用抗アンチプラスミン抗体、Dダイマー検査用抗Dダイマー抗体、FDP検査用抗FDP抗体、tPA検査用抗tPA抗体、TAT検査用抗トロンビン=アンチトロンビン複合体抗体、FPA検査用抗FPA抗体等の凝固線溶関連検査用抗原または抗体;BFP検査用抗BFP抗体、CEA検査用抗CEA抗体、AFP検査用抗AFP抗体、フェリチン検査用抗フェリチン抗体、CA19−9検査用抗CA19−9抗体等の腫瘍関連検査用抗原または抗体;アポリポタンパク検査用抗アポリポタンパク抗体、β2−ミクロブロブリン検査用抗β2−ミクロブロブリン抗体、α1−ミクログロブリン検査用抗α1―ミクログロブリン抗体、免疫グロブリン検査用抗免疫グロブリン抗体、CRP検査用抗CRP抗体等の血清蛋白関連検査用抗原または抗体;HCG検査用抗HCG抗体等の内分泌機能検査用抗原または抗体;HBs抗原検査用抗HBs抗体、HBs抗体検査用HBs抗原、HCV抗体検査用HCV抗原、HIV−1抗体用HIV−1抗原、HIV−2抗体検査用HIV−2抗原、HTLV−1検査用HTLV−1抗原、マイコプラズマ症検査用マイコプラズマ抗原、トキソプラズマ検査用トキソプラズマ抗原、ASO検査用ストレプトリジンO抗原等の感染症関連検査用抗原または抗体;抗DNA抗体検査用DNA抗原、RF検査用熱変成ヒトIgG等自己免疫関連検査用抗原または抗体;ジゴキシン検査用抗ジゴキシン抗体、リドカイン検査用抗リドカイン抗体等の薬物分析用抗原または抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらを用いてもかまわない。
【0132】
また、本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子は、酵素・ホルモン等のタンパク質、DNA・RNA等の核酸、脂質、あるいは生理活性糖鎖化合物を粒子表面に化学結合法で感作させるアフィニティー担体としても利用できる。さらに、本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子に、解析対象の化学物質(被解析化学物質;リガンド分子に該当する)を化学結合により固定化し、タンパク物質等との特異的相互作用を用いて当該相互作用を解析および/または測定することによって、被解析化学物質と特異的な相互作用を有するタンパク質等(ターゲット分子に該当する)を選別し、精製することが可能である。
【0133】
具体的には、粒子に結合させるリガンド分子としては、本実施形態に係るプローブ結合用磁性粒子が有する官能基の少なくとも1つと反応しうる官能基を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、核酸、ペプチド核酸、ホルモン、分子量500〜100万のタンパク質、糖鎖、多糖類、細胞、アプタマー、ウイルス、酵素、各種のアフィニティー用タグ捕捉物質、ビオチン等の補酵素、特定の生理活性作用を有する(あるいは、特定の生理活性作用を有する可能性がある)化学物質等を使用することができる。
【0134】
2.実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、各実施例および比較例において、評価は以下の方法で行った。
【0135】
2.1.評価方法
2.1.1.抗体結合量
後述する各実施例で得られた粒子および比較例で得られた粒子をそれぞれ、抗AFP(αフェトプロテイン)抗体と化学結合させた後、BCA(Bicinchoninic Acid)法により粒子に対する抗体の結合量を評価した。
【0136】
2.1.2.CLEIA(化学発光酵素免疫法)によるシグナル測定
抗AFP抗体を感作させた、後述する各実施例・比較例で得られた粒子の分散液10μl(粒子50μg相当)をテストチューブに取り、ウシ胎児血清(FCS)で100ng/mLに希釈したAFP抗原(日本バイオテスト社製)の標準検体50μlと混合し、37℃で10分間反応した。磁気分離して粒子を分離し上清を除いた後、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ(以下、「ALP」という。)で標識した抗AFP抗体(富士レビオ株式会社製、ルミパルスAFP−Nに付属の試薬を使用)40μlを添加し、37℃で10分間反応させた。次いで、磁気分離し上清を除いた後、PBSで3回洗浄を繰り返して得られた粒子を50μlの0.01%Tween20に分散させ、新しいチューブに移し替えた。ALPの基質液(ルミパルス基質液:富士レビオ株式会社製)100μlを加え、37℃で10分間反応させた後、化学発光量を測定した。化学発光の測定には、ベルトールジャパン株式会社製の化学発光測定装置(商品名:Lumat LB9507)を用いた。
【0137】
2.1.3.ノイズ測定
上記CLEIA(化学発光酵素免疫測定)によるシグナルの測定で、標準検体と混合しなかったこと以外は同様の方法にて、ノイズとしての化学発光量を測定した。
【0138】
2.2.合成例(磁性粒子の作製)
2.2.1.合成例1(核粒子の作製)
75%ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド溶液(日本油脂製「パーロイル355−75(S)」、以下、「パーロイル」という)1gを1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液10gに混合し、超音波分散機にて微細乳化した。これを粒径0.77μmのポリスチレン粒子6.5gおよび水20.5gの入ったリアクターに入れ、25℃で12時間攪拌した。別の容器にて、スチレン48gおよびジビニルベンゼン2gを0.1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液200gで乳化させた液を前記リアクターに入れ、40℃で2時間攪拌した後、75℃に昇温して8時間重合した。室温まで冷却した後、遠心分離により粒子のみ取り出したものをさらに水洗し、乾燥および粉砕して核粒子(1)を得た。核粒子(1)の数平均粒径は1.5μmであった。
【0139】
2.2.2.合成例2(磁性母粒子(1)の作製)
油性磁性流体(商品名:「EXPシリーズ」,(株)フェローテック製)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性微粒子(1)(平均一次粒子径:0.01μm)を得た。
【0140】
上記核粒子(1)15gおよび上記超常磁性微粒子(1)15gをミキサーでよく混合し、この混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16200rpm)で5分間処理し、超常磁性微粒子(1)からなる磁性体層を表面に有する磁性母粒子(1)(平均数粒子径:2.0μm)を得た。
【0141】
2.2.3.合成例3(第2ポリマー層を有する磁性母粒子(A−1)の作製)
上記合成例2で得られた磁性母粒子(1)30gと、分散剤としてノニオン性乳化剤「エマルゲン150」(花王(株)製)0.25%およびカチオン性乳化剤「コータミン24P」(花王(株)製)0.25%を含む水溶液750gを1Lセパラブルフラスコに投入し充分に分散させた。別の容器にノニオン性乳化剤「エマルゲン150」0.25%およびカチオン性乳化剤「コータミン24P」0.25%を含む水溶液150gを入れ、これにモノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート30gおよびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド7.5g、重合開始剤としてターシャリーブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート(日本油脂(株)製;パーブチルO)1.5gを添加、混合して、モノマー乳化物を作製した。前記セパラブルフラスコをイカリ型撹拌羽を用いて200rpm撹拌下で、Nガスでパージしながら60℃に昇温した後、前記モノマー乳化物を2時間かけて前記セパラブルフラスコに連続添加した。連続添加終了後、80℃で2時間攪拌を続けて反応を完結させ、母粒子コート層(第2ポリマー層)が表面に形成された磁性母粒子を得た。この磁性母粒子の水分散体を磁気精製および遠心精製した。以上のようにして作製した磁性母粒子を磁性母粒子(A−1)とする。磁性母粒子(A−1)の粒径dを透過型電子顕微鏡写真の100個の粒子径の計測により測定した結果、2.8μmであった。
【0142】
2.2.4.合成例4(ヘテロ凝集磁性粒子の作製)
スチレン/メタクリル酸=95/5共重合体からなる平均粒径0.1μmの非磁性子粒子(B−1)5gを含む水分散体1000gをビーカーに入れ、水浴中で間接超音波をかけながら、別の容器で調製した磁性母粒子(A−1)6gと、0.1M HCl50gと、ノニオン性乳化剤「エマルゲン150」0.5%とを含む水溶液500gを前記ビーカーへ滴下して、磁性母粒子(A−1)に非磁性子粒子(B−1)を吸着させた。得られた粒子分散体を磁気精製し、磁性母粒子(A−1)に非磁性子粒子(B−1)が吸着した磁性粒子(1)を得た。
【0143】
この磁性粒子(1)をSEM観察したところ、磁性母粒子(A−1)の表面に非磁性小粒子(B−1)が吸着しているのが観察された。
【0144】
2.2.5.合成例5(第1ポリマー層の形成)
磁性粒子(1)6gと、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%を含む水溶液150gとを500mLセパラブルフラスコに投入し充分に分散させた。別の容器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%を含む水溶液0.75gを入れ、これにモノマーとしてグリシジルメタクリレート0.15gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート0.0214g、重合開始剤としてパーロイル0.0075gを添加、混合して、モノマー乳化物を作製した。前記セパラブルフラスコへ、イカリ型撹拌羽を用いた200rpm撹拌下で、Nガスでパージしながら前記モノマー乳化物全量を加え、80℃に昇温し3時間攪拌を続けて、磁性母粒子(A−1)および非磁性粒子(1)の表面に第1ポリマー層が形成された磁性粒子(2)を得た。
【0145】
この磁性粒子(2)の水分散体を磁気精製および遠心精製した。磁性粒子(2)をSEM観察したところ、磁性母粒子(A−1)の表面に非磁性子粒子(B−1)が吸着し、磁性母粒子(A−1)(第2ポリマー層)および非磁性子粒子(B−1)を被覆するように新たなポリマー層(第1ポリマー層)が形成されているのが観察された。また、磁性粒子(2)の断面の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、この断面の異なる30箇所で測定された第1ポリマー層の平均厚さは0.01μmであった。
【0146】
2.3.実施例(第1ポリマー層への極性基の導入)
2.3.1.実施例1(カルボキシル基導入プローブ結合用粒子)
上記合成例より得られた磁性粒子(2)の水分散液から磁気分離により単離した粒子1.0gに1%硫酸水溶液10gを加え、間接超音波を20分間照射して該粒子を分散させ、次いで、該粒子の分散液を60℃で5時間撹拌した(グリシジル基の加水分解)。
【0147】
続いて磁気分離により該粒子を単離し、純水に分散させ磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返し乾燥させた。得られた乾燥粒子1.0gを10mlのピリジンで洗浄した後5mlのピリジンに分散させ、無水コハク酸3g/25mlピリジン溶液を加え60℃で2時間反応させた(カルボキシル基の導入)。
【0148】
反応後、磁気を用いて前記粒子を分離し、アセトンで3回、続いて0.1M水酸化ナトリウム水溶液で3回、さらに蒸留水で4回洗浄してから蒸留水に分散させて、1.0gのカルボキシル基導入磁性粒子(Ca−2)を含む1%分散液を得た。
【0149】
カルボキシル基導入磁性粒子(Ca−2)の1wt%水分散液500μlをチューブに取り、磁気スタンドにて磁気分離し、上澄みを除去した。100mM MES(pH5)にて3回洗浄後、500μlの同Bufferに分散し、これに抗AFP抗体0.1mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)0.05mgを添加し、室温下5時間撹拌を行った。反応終了後、磁気分離して上澄みを除去した。次いで、PBS(−)緩衝液にて5回洗浄した後、PBS(−)緩衝液500μlで前記粒子を分散させて、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0150】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0151】
2.3.2.実施例2(活性エステル基導入プローブ結合用粒子)
実施例1で得られたカルボキシル基導入磁性粒子(Ca−2)を含む1%分散液100mLをビーカーに取り、磁気分離で上澄みを除去した。100mM MES(pH5)にて該粒子を3回洗浄後、100mLの同Bufferに分散させ、N−ヒドロキシコハク酸イミド0.16gおよびEDC0.18gを加えて、室温下2時間該粒子の分散液の撹拌を行った(活性エステル基の導入)。
【0152】
反応終了後、磁気分離および分散を繰り返して5回洗浄し、さらに蒸留水に前記粒子を分散させて、1.0gの活性エステル基導入磁性粒子(Ac−2)を含む1%分散液を得た。
【0153】
活性エステル基導入磁性粒子(Ac−2)の1wt%水分散液500μlをチューブに取り、磁気スタンドにて磁気分離し、上澄みを除去した。100mM MES(pH5)にて該粒子を3回洗浄後、500μlの同Bufferに分散させ、これに抗AFP抗体0.1mgを添加し、室温下2時間撹拌を行った。反応終了後、磁気分離して上澄みを除去した。次いで、PBS(−)緩衝液にて5回洗浄した後、PBS(−)緩衝液500μlで前記粒子を分散させることにより、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0154】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0155】
2.3.3.実施例3(アミノ基導入プローブ結合用粒子)
グリシジル基を有する第1ポリマー層が形成された磁性粒子(2)の水分散液から磁気分離によって単離した粒子をアセトンに分散させ、磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返した後、前記粒子を再びアセトンに分散させ、磁気分離により上清を除去した後、該粒子を乾燥させた。次に、該粒子0.50gを100mlフラスコに入れ、エチレンジアミン25gを加えた後、間接超音波を20分間照射して分散させてから、窒素雰囲気下で50℃にて3時間加熱攪拌した(アミノ基の導入)。
【0156】
冷却後、磁気分離により前記粒子を単離し、該粒子を蒸留水に分散させ、磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返した後、磁気分離により上清を除去し、次に、1%硫酸水溶液5gに該粒子を加え、間接超音波を20分間照射して分散させ、次いで、60℃で5時間攪拌した(残留グリシジル基の加水分解)。
【0157】
続いて、磁気分離により前記粒子を単離し、純水に分散させ磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返した後、乾燥させることにより、0.49gのアミノ基導入磁性粒子(Am−2)を得た。
【0158】
アミノ基導入磁性粒子(Am−2)を、濃度が1wt%になるように純水に希釈分散して、水分散液を調製した。次に、この水分散液500μlをチューブに取り、磁気スタンドにて磁気分離し、上澄みを除去した。100mM MES(pH5)にて3回洗浄後、500μlの同Bufferに分散し、これに抗AFP抗体0.1mgを添加し、さらに、EDC0.05mgを加え撹拌した後、室温下3時間撹拌を行った。反応終了後、磁気分離して上澄みを除去した。次いで、PBS(−)緩衝液にて5回洗浄した後、PBS(−)緩衝液500μlで粒子を分散させることにより、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0159】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0160】
2.3.4.実施例4(アルデヒド基導入プローブ結合用粒子)
グリシジル基を有する第1ポリマー層が形成された磁性粒子(2)の水分散液から磁気分離によって単離した粒子0.5gに、1%硫酸水溶液5gを加え、間接超音波を20分間照射して分散させ、次いで、60℃で5時間攪拌した(グリシジル基の加水分解)。
【0161】
続いて、磁気分離により前記粒子を単離し、純水に分散させ磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返した。さらに磁気分離により単離した前記粒子に5.6mg/mL過ヨウ素酸ナトリウム水溶液20mLを加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた(アルデヒド基の導入)。
【0162】
次に、磁気分離により前記粒子を単離し、その上清のホルムアルデヒド量をPIERCE社製Glycoprotein Carbohydrate Estimation Kitで定量したところ、粒子1g当たり11μmolのアルデヒド基が導入されていることが確認できた。次いで、この粒子を蒸留水に分散させ、磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返した後、蒸留水に分散させて、0.49gのアルデヒド基導入磁性粒子(AL−2)を含む1%分散液を得た。
【0163】
アルデヒド基導入磁性粒子(AL−2)の1wt%水分散液500μlをチューブに取り、磁気スタンドにて磁気分離し、上澄みを除去した。citrate−carbinateバッファー pH10にて3回洗浄した後、500μlの同Bufferに分散し、これに抗AFP抗体0.1mgを添加し、室温下5時間撹拌を行った。反応終了後、磁気分離して上澄みを除去した。次いで、tris−HClバッファー(pH7.4)500μlを加え、室温で2時間撹拌を行った。さらに、PBS(−)緩衝液にて5回洗浄した後、PBS(−)緩衝液500μlで前記粒子を分散させることにより、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0164】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0165】
2.3.5.比較例1(第1ポリマー層への極性基の導入を行わない例)
上記「合成例1〜4」と同様の工程手順に従って、微粒子からなる磁性体層を表面に有する磁性母粒子(A−1)を得た。次いで、グリシジルメタクリレート0.15gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート0.0214gの代わりに、スチレン0.075gおよびメタクリル酸0.075gを用いる以外は合成例5と同様の手順にて、磁性粒子(2)に相当する磁性粒子(2−1)を得た。この磁性粒子(2−1)の第1ポリマー層は、グリシジル基を含んでいない。
【0166】
磁性粒子(2−1)の1wt%水分散液500μlをチューブに取り、磁気スタンドにて磁気分離し、上澄みを除去した。100mM MES(pH5)にて該粒子を3回洗浄後、500μlの同Bufferに分散させ、これに抗AFP抗体0.1mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)0.05mgを添加し、室温下5時間撹拌を行った。反応終了後、磁気分離して上澄みを除去した。次いで、PBS(−)緩衝液にて5回洗浄した後、PBS(−)緩衝液500μlで前記粒子を分散させて、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0167】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0168】
2.3.6.比較例2(非磁性子粒子を含まない例)
上記「合成例1,2」と同様の手順に従って、超常磁性微粒子からなる磁性体層を表面に有する磁性母粒子(1)を得た。次に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量%水溶液375gを1Lセパラブルフラスコに投入し、次いで、磁性母粒子(1)15gを投入し、ホモジナイザーで分散した後、60℃に加熱した。別の容器に入れたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量%水溶液100gに、モノマーとしてメチルメタクリレート(MMA)18gおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)2g、ならびにパーロイル0.4gを入れて分散させたプレエマルジョンを、60℃にコントロールした前記1Lセパラブルフラスコに1時間30分かけて滴下した(以上、第2ポリマー層の形成)。
【0169】
滴下終了後、60℃に保持して1時間攪拌した後、別の容器に入れたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量%水溶液75gに、モノマーとしてグリシジルメタクリレート10.5gおよびTMP1.5g、ならびにパーロイル0.3gを入れて分散させたプレエマルジョンを、60℃にコントロールした上記1Lセパラブルフラスコに1時間30分かけて滴下した。その後75℃に昇温し、さらに2時間重合を続けて、反応を完了させた(以上、第1ポリマー層の形成)。
【0170】
次いで、磁気を用いて前記セパラブルフラスコ中の粒子を分離し、蒸留水を用いて洗浄した。以上の工程により、グリシジル基を有する第1ポリマー層が形成された磁性粒子(2−2)を得た。
【0171】
磁性粒子(2)の代わりに磁性粒子(2−2)を用いて、上記「実施例1〜4」と同様の工程手順により、カルボキシル基導入磁性粒子(Ca−2−2)、活性エステル基導入磁性粒子(Ac−2−2)、アミノ基導入磁性粒子(Am−2−2)、アルデヒド基導入磁性粒子(AL−2−2)を得た。
【0172】
さらに、これらの磁性粒子(Ca−2−2)、(Ac−2−2)、(Am−2−2)、(AL−2−2)を用いて「実施例1〜4」と同様の手法により抗AFP抗体を感作し、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0173】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0174】
2.3.7.比較例3(グリシジル基を有する第1ポリマー層を形成しない例)
第1ポリマー層の形成において、グリシジルメタクリレート10.5gおよびTMP1.5gの代わりに、シクロヘキシルメタクリレート10.5gおよびメタクリル酸1.5gを用いる以外は比較例1と同様の手順にて、磁性粒子(2−3)を得た。
【0175】
磁性粒子(2−3)の1wt%水分散液500μlをチューブに取り、磁気スタンドにて磁気分離し、上澄みを除去した。100mM MES(pH5)にて3回洗浄後、500μlの同Bufferに分散し、これに抗AFP抗体0.1mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)0.05mgを添加し、室温下5時間撹拌を行った。反応終了後、磁気分離して上澄みを除去した。次いで、PBS(−)緩衝液にて5回洗浄した後、PBS(−)緩衝液500μlで前記粒子を分散させて、プローブ(抗体)結合磁性粒子(抗体感作粒子)の分散液を得た。
【0176】
得られた抗体感作粒子の抗体結合量、CLEIAによるシグナル測定、およびノイズ測定の結果を表1に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
表1によれば、実施例1〜3で得られた磁性粒子は、磁性母粒子および非磁性子粒子を被覆するように、極性基(アミノ基、活性エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基)を有する第1ポリマー層が設けられていることにより、タンパク質や核酸等の非特異吸着が少ないため、生化学・医薬品分野で特出する高感度および低ノイズを発現し、生化学検査用として高いS/N比を得ることができることが理解できる。また、上記磁性粒子は、実施例1〜3で得られた磁性粒子は、磁性母粒子の表面を被覆するように非磁性子粒子が存在することにより、表面が凸凹であるので、単位重量あたりの表面積が大きいため、抗体の結合量が大きい。
【0179】
これに対して、比較例1で得られた磁性粒子は、第1ポリマー層への極性基の導入を行わなかったため、実施例1〜3で得られた磁性粒子と比較してノイズが大きかったと推測される。また、比較例2で得られた磁性粒子は、非磁性子粒子を含まないため、実施例1〜3で得られた磁性粒子と比較して抗体の結合量が少なかったと推測される。さらに、比較例3で得られた磁性粒子は、第1ポリマー層がグリシジル基を含まないため、実施例1〜3で得られた磁性粒子と比較してノイズが大きかったと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径dの磁性母粒子の表面に、粒径d/2以下の非磁性子粒子を設ける第1の工程、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように、グリシジル基を有する第1ポリマー層を形成する第2の工程、並びに、
前記第1ポリマー層に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む極性基を導入する第3の工程
を含む、磁性粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程が、アミノ基を導入する反応を含む、請求項1に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程が、アルデヒド基を導入する反応を含む、請求項1に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程が、カルボキシル基を導入する反応を含む、請求項1に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程がさらに、前記カルボキシル基を活性エステル基に変換する反応を含む、請求項4に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程は、複数のグリシジル基を有する第1ポリマー層を形成する工程であり、
前記グリシジル基の一部を加水分解する工程をさらに含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項7】
前記磁性母粒子は、核粒子と、該核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、該磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、
前記第2の工程は、前記第2ポリマー層および前記非磁性子粒子を被覆するように前記第1ポリマー層を形成する工程である、請求項1ないし6のいずれかに記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項8】
前記磁性母粒子は、水系媒体中で正または負の表面荷電を有し、
前記非磁性子粒子は、前記水系媒体中で負または正の表面荷電を有し、
前記第1の工程は、前記磁性母粒子と前記非磁性子粒子とを前記水系媒体中で混合することにより、前記磁性母粒子の表面に前記非磁性子粒子を吸着させる工程を含む、請求項7に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項9】
前記磁性母粒子は、前記水系媒体中で正の表面荷電を有し、
前記非磁性子粒子は、前記水系媒体中で負の表面荷電を有する、請求項8に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項10】
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、アミノ基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む、磁性粒子。
【請求項11】
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、アルデヒド基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む、磁性粒子。
【請求項12】
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、カルボキシル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む、磁性粒子。
【請求項13】
粒径dの磁性母粒子と、
前記磁性母粒子の表面上に存在する粒径d/2以下の非磁性子粒子と、
前記磁性母粒子および前記非磁性子粒子を被覆するように設けられた、活性エステル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する第1ポリマー層と、
を含む、磁性粒子。
【請求項14】
前記磁性母粒子は、核粒子と、該核粒子の表面に形成された超常磁性微粒子を含む磁性体層と、該磁性体層の表面に設けられた疎水性の第2ポリマー層と、を含み、
前記第1ポリマー層は、前記第2ポリマー層および前記非磁性子粒子を被覆するように形成された、請求項10ないし13のいずれかに記載の磁性粒子。
【請求項15】
プローブ結合に用いられる請求項10ないし14のいずれかに記載の磁性粒子。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれかに記載の磁性粒子と、該磁性粒子に結合するプローブとを含む、プローブ結合粒子。

【公開番号】特開2008−81574(P2008−81574A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261926(P2006−261926)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】