説明

磁性粒子分離装置

【課題】被処理流体中の磁性粒子の除去効率を向上させる。
【解決手段】サイクロン式処理容器2の内周面2gには、内径が上下方向の全体に亘って略一定となる円筒状部2fと、該円筒状部2fの下側に連設され、下側ほど内径が小さくなる上記上側逆円錐状部2bと、該上側逆円錐状部2bに隣接してその下側に形成された下側逆円錐状部2dと、両逆円錐状部2b,2d同士を接続する円錐状部2cとからなる。サイクロン式処理容器2の外周には、複数の永久磁石10が設けられている。円筒状部2fの上端部には、サイクロン式処理容器2内に被処理流体を導入して旋回流動させるための導入口3が形成されている。上側逆円錐状部2bには、断面形状が矩形、リード角が30°で、3条の螺旋溝2jが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械等において切削加工時や研削加工時に生じるスラッジ(加工屑)をクーラント液(被処理流体)から分離・除去するためなどに使用される磁性粒子分離装置に関し、特に、磁性粒子を含む被処理流体を内周面に沿って旋回下降流動させ、その旋回下降流動によって生じる遠心力により被処理流体内の磁性粒子を分離して下方に排出するサイクロン式処理容器を備えた磁性粒子分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の磁性粒子分離装置は、サイクロン式処理容器の内周面が下側ほど縮径する逆円錐状に形成されていて、該サイクロン式処理容器の上部側壁の導入開口から該容器内に導いたクーラント液をその内周面に沿って旋回流動させることでその遠心力により磁性粒子を該内周面近傍に集約して分離する。そして、このクーラント液の旋回流動に伴いその旋回中心部に生じる上昇流によって、磁性粒子を含まない浄化処理されたクーラント液を該旋回中心部に配設された排出管から容器外へと排出する。
【0003】
このような磁性粒子分離装置において、磁性粒子をより効率良く分離・除去するための技術が種々提案されており、例えば特許文献1に示す装置では、サイクロン式処理容器の外周面に沿って上下方向の略全体に亘って磁石を配設することで、旋回流動に伴う遠心力に加えてこの磁石の磁気吸引力でもって磁性粒子をサイクロン式処理容器の内周面近傍に集約するようにしている。
【0004】
この磁石は、サイクロン式処理容器の外周を囲むリング状の2分割体からなり、各分割体は、エアシリンダ等のアクチュエータ機構により互いに接近/離間する方向に変位可能に構成されている。そして、内周面近傍に集約された磁性粒子の量が所定量以上になったときには、アクチュエータ機構により該各分割体を径方向の外側(互いに離間する方向)に変位させて磁性粒子に作用する磁力を弱めることで、該磁性粒子を自重によりサイクロン式処理容器の下側の回収容器へと落下させるようになっている。
【特許文献1】特開2005−21835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の磁性粒子分離装置のように、旋回流動に伴う遠心力に加えて磁気吸引力でもって磁性粒子をサイクロン式処理容器の内周面近傍に集約するようにしても、必ずしも磁性粒子の分離が十分ではなく、特に、微小な磁性粒子や、被処理流体との比重の差が小さい磁性粒子は、サイクロン式処理容器の中心部の上昇流に巻き込まれて排出管から容器外へと排出されて装置全体の浄化能力の低下を招きやすい。このため、磁性粒子の除去効率を大幅に向上させることは困難という問題点を有していた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、特に微小な磁性粒子や、被処理流体との比重の差が小さい磁性粒子などであっても、被処理流体からの除去効率を大幅に向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、
磁性粒子を含む被処理流体を内周面に沿って旋回下降流動させ、その旋回下降流動によって生じる遠心力により被処理流体内の磁性粒子を分離して下方に排出するサイクロン式処理容器と、
上記サイクロン式処理容器の中心部にて上下方向に延び、下端に該サイクロン式処理容器の内部に開口する開口部を有し、浄化後の被処理流体を該サイクロン式処理容器の上方から該容器外へと導く排出管と、
磁性粒子に対して、上記サイクロン式処理容器の径方向外側に向かう磁気吸引力を作用させる磁石部材と、
を備えた磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器の内周面に形成された螺旋溝、上記排出管の外周面に形成された螺旋突起、および上記排出管の外周面に形成された螺旋溝のうち少なくとも何れかを有すること特徴とする。
【0008】
これにより、サイクロン式処理容器に流入した被処理流体が、サイクロン式処理容器の内周面または排出管の外周面に形成された螺旋溝や螺旋突起に沿って、またはこれらを横切るように旋回下降流動すると、被処理流体中の磁性粒子は、遠心力および磁力が作用して径方向外側に移動し、螺旋溝に捕捉され、またはサイクロン式処理容器の内周面に沿って旋回しながら下降する。上記螺旋溝に捕捉された磁性粒子は、磁石部材との距離がより近いことから螺旋溝の底に押しつけられる力が強いので、径方向内側への移動は大幅に抑制される。このように、サイクロン式処理容器の内周面に螺旋溝が形成されていることによって、遠心力等によって径方向外側に移動した被処理流体中の磁性粒子は螺旋溝に捕捉されると径方向内側へ移動しにくくなるので、被処理流体からの除去効率を大幅に向上させることができる。また、螺旋溝や螺旋突起によって旋回速度が増大する場合には、遠心力が一層強くなるので、やはり除去効率を大幅に向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝または螺旋突起が多条に形成されていることを特徴とする。
【0010】
これにより、例えば、概ね、螺旋溝または螺旋突起の条数を多くして磁性粒子の捕捉効果を大きくすることが容易にできる。
【0011】
請求項3の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝または螺旋突起のリード角が5°以上30°以下であることを特徴とする。
【0012】
これにより、螺旋溝または螺旋突起の方向が被処理流体の旋回下降流の方向に一致している場合には、被処理流体の流れがスムーズになって、磁性粒子が安定して内周面や螺旋溝の底に押しつけられる作用が大きくなる。一方、螺旋溝または螺旋突起の方向が被処理流体の旋回下降流の方向と異なる場合には、被処理流体が螺旋溝または螺旋突起を横切ることになるので、磁性粒子が螺旋溝に引っかかって捕捉されやすくなる作用や旋回速度が増大して遠心力の作用が大きくなる。それゆえ、被処理流体の流速や、磁性粒子の大きさ、形状、比重の相異などに応じて旋回溝のリード角を設定することによって、磁性粒子の捕捉効果を大きくすることが容易にできる。
【0013】
請求項4の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝または螺旋突起の断面形状が矩形状または略半円状であることを特徴とする。
【0014】
これにより、被処理流体の流量や流速などに応じて、螺旋溝または螺旋突起の断面形状を設定することができる。
【0015】
請求項5の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記磁石部材は、上記サイクロン式処理容器の内周面よりも径方向外側における上記排出管の開口部の上方位置から下方位置に亘って配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記磁石部材は、上記サイクロン式処理容器の内周面よりも径方向外側における上記排出管の開口部よりも上方の位置に配置された第1の磁石部材と、上記排出管の開口部よりも下方の位置に配置された第2の磁石部材とを含むことを特徴とする。
【0017】
これにより、排出管の開口部の上下に亘って、磁性微粒子を螺旋溝に捕捉し、または捕捉された磁性微粒子をサイクロン式処理容器の内周付近に止めることができるので、磁性粒子の除去効率を向上させることが容易にできる。
【0018】
請求項7の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、内径が下方位置ほど縮径する逆円錐状部を有し、
上記螺旋溝は、上記逆円錐状部の内周面に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、
請求項7の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、さらに、上記逆円錐状部の下方に配置され、内径が下方位置ほど縮径する下方側逆円錐状部を有し、
上記下方側逆円錐状部の上端の内径は、上方に位置する逆円錐状部の下端の内径よりも大きいものとされ、
上記排出管の開口部は、上記逆円錐状部と下方側逆円錐状部との境界部付近に配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、
請求項7の磁性粒子分離装置であって、
上記排出管の開口部は、上記逆円錐状部の上端と下端との間に配置され、
上記螺旋溝は、上記逆円錐状部の内周面における、上記排出管の開口部の上方位置から下方位置に亘って形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項10の発明は、
請求項9の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝は、上記排出管の開口部よりも当該排出管の直径分だけ下方の位置まで形成されていることを特徴とする。
【0022】
これらにより、サイクロン式処理容器に流入した被処理流体は、下方に行くほど回転速度が増加して大きな遠心力が作用するとともに、磁気吸引力が作用して、磁性粒子は径方向外側へと移動し、効率的に螺旋溝に捕捉される。
【0023】
請求項11の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、内径が上下位置に亘って一定の円筒状部を有し、
上記螺旋溝は、上記円筒状部の内周面に形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項12の発明は、
請求項11の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、さらに、上記円筒状部の下方に配置され、内径が下方位置ほど縮径する逆円錐状部を有し、
上記逆円錐状部の上端の内径は、上記円筒状部の内径よりも大きいものとされ、
上記排出管の開口部は、上記円筒状部と逆円錐状部との境界部付近に配置されていることを特徴とする。
【0025】
これらにより、円筒状部に螺旋溝が形成される場合、下降速度とともに回転速度も円筒状部の上端から下端に亘って略一定になる。そこで、螺旋溝のリード角が一定であれば、螺旋溝の方向(リード角)と旋回下降流の方向(リード角に相当する角度)との関係が一定に保たれるので、比較的一様に、磁性粒子を螺旋溝に捕捉させて分離効率を向上させることができる。
【0026】
請求項13の発明は、
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器の内周面に螺旋溝が形成されるとともに、
上記排出管の外周面に螺旋突起および螺旋溝の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、より磁性粒子を螺旋溝に捕捉されやすくすることが容易にできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、サイクロン式処理容器に流入し旋回下降流動した被処理流体中の磁性粒子は、遠心力および磁力が作用して径方向外側に移動し、螺旋溝に捕捉されて、径方向内側への移動が大幅に抑制されるので、特に微小な磁性粒子や、被処理流体との比重の差が小さい磁性粒子などであっても、被処理流体からの除去効率を大幅に向上させることが容易にできる。また、螺旋溝や螺旋突起によって旋回速度が増大する場合には、遠心力が一層強くなるので、やはり除去効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、他の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るサイクロン式分離除去装置1(磁性粒子分離装置)を含む被処理流体浄化システム100を示し、本実施形態では一例として、この被処理流体浄化システム100を、工作機械101のクーラント液(被処理流体)の浄化システムに適用した例を示す。
【0031】
すなわち、上記被処理流体浄化システム100は、工作機械101において、クーラント液(すなわち被処理流体)の中に混入する切粉(磁性粒子j)或いは該切粉と砥粒との溶着したもの等からなる切削屑である磁性粒子j(図2参照)と、クーラント液とを分離し、該磁性粒子jを分離回収する場合に適用したものである。より具体的には、この被処理流体浄化システム100は、上記サイクロン式分離除去装置1の他に、磁性粒子除去装置50と、コンベア式のダスト分離装置108と、ダーティタンク102と、ダスト分離用タンク103と、スーパクリーンタンク104とを備えており、工作機械101から排出されたダーティ液(磁性粒子jを除去する前の被処理流体)は先ず、ダーティタンク102内へと導かれて貯留される。ダーティタンク102内に貯留された被処理流体は、ポンプ105により汲み上げられてサイクロン式分離除去装置1へと導かれる。サイクロン式分離除去装置1では、後述するように、比重が比較的大きい磁性粒子jが遠心力により分離されて排出口4(図2参照)からダスト分離用タンク103へと排出され、比重が比較的小さい磁性粒子jが浮上物排出口21(図2参照)からダスト分離用タンク103へと排出され、浄化処理後の被処理流体が、筒状排出管6から排出されて磁性粒子除去装置50へと導かれる。
【0032】
磁性粒子除去装置50では、サイクロン式分離除去装置1で除去しきれなかった磁性粒子jを含む被処理流体が分離されてダスト分離用タンク103へと導かれる一方、浄化処理後の被処理流体はスーパクリーンタンク104内に排出される。尚、図1中、符号106は、磁性粒子除去装置50にて分離した磁性粒子jを吸引するためのエジェクタバルブである。
【0033】
ダスト分離用タンク103内では、該ダスト分離用タンク103の底部に沈殿した磁性粒子jがダスト分離装置108により回収されてダストボックス107に排出される。ダスト分離用タンク103内の上層の被処理流体は、その水位が所定水位h1に達すると戻り管103bからダーティタンク102へと戻されて、再度、サイクロン式分離除去装置1へと導かれる。尚、ダスト分離用タンク103内に戻された磁性粒子jを含む被処理流体が戻り管103bからダーティタンク102に戻されないように、仕切り壁103cが設けられている。
【0034】
尚、ダスト分離装置108は、例えば特開2003−251542号公報に示す公知の構造を有するものとされ、ここではその説明を省略する。
【0035】
上記スーパクリーンタンク104に導かれて貯留された、磁性粒子除去後のクリーンな被処理流体は、不図示のポンプにより工作機械101に供給されてクーラント液として使用される。尚、スーパクリーンタンク104内の被処理流体は、その水位が所定水位h2に達すると戻り管104bからダーティタンク102へと戻されるようになっている。
【0036】
−サイクロン式分離除去装置の構成−
サイクロン式分離除去装置1は、図2に示すように、ステンレス、アルミニウムや樹脂等の非磁性体からなるサイクロン式処理容器2と、該サイクロン式処理容器2の上側に配設される浮上物回収タンク15と、サイクロン式処理容器2内の浄化後の被処理流体を該サイクロン式処理容器2外(サイクロン式分離除去装置1外)へと排出する筒状排出管6とを備えており、該サイクロン式処理容器2及び浮上物回収タンク15は、上端部が閉塞された略円筒状の本体部2aと、該本体部2aの下端部に接続される略円筒状の流体渦流部2eとで構成されている。より具体的には、本体部2aの内側空間13は、仕切り板18により上下に仕切られており、この仕切り板18がサイクロン式処理容器2の上壁部を構成するとともに、浮上物回収タンク15の底壁部を構成している。
【0037】
このサイクロン式処理容器2は、上下方向に延びる内周面2gに、上側逆円錐状部2b,下側逆円錐状部2d等を形成した槽体からなるものであって、後述するように、磁性粒子jを含む被処理流体を該内周面2gに沿って旋回流動させることでその遠心力により該磁性粒子jを分離する。
【0038】
より詳細には、サイクロン式処理容器2の内周面2gは、その上端部に形成されて内径が上下方向の全体に亘って略一定となる円筒状部2fと、該円筒状部2fの下側に連設され、下側ほど内径が小さくなる上記上側逆円錐状部2bと、該上側逆円錐状部2bに隣接してその下側に形成された下側逆円錐状部2dと、両逆円錐状部2b,2d同士を接続する円錐状部2cとからなる。該円筒状部2f、両逆円錐状部2b,2d、及び円錐状部2cの軸心は一致しており、この軸心が、サイクロン式処理容器2の中心軸1Cとされる。そして、この中心軸1Cは、被処理流体の旋回中心軸に略一致している。尚、円筒状部2fは、上記本体部2aの内周面における仕切り板18よりも下側の部分とされ、両逆円錐状部2b,2d及び円錐状部2cは、上記流体渦流部2eの内周面とされている。
【0039】
上記円筒状部2fの上端部(つまりサイクロン式処理容器2の上端部)には、図3に示すように、上記サイクロン式処理容器2内に被処理流体を導入するための導入口3が形成されている。この導入口3は、該円筒状部2fに対してその接線方向から貫通して開口するとともに、該開口からサイクロン式処理容器2内に流入する被処理流体を該円筒状部2fの中心軸(サイクロン式処理容器2の中心軸1C)周りに反時計回りr方向に旋回流動させるように構成されている(なお、図2に示す断面には、実際には導入口3は現れないが、図2では、便宜上、同断面に投影した位置に表している。)。こうして、被処理流体は、該円筒状部2fにおいて反時計回りr方向に旋回流動されることで、その勢いで流体渦流部2e内においても同方向(反時計回りr方向)に旋回流動される。ここで、例えば導入口3の位置に応じて被処理流体を時計回り方向に旋回流動させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0040】
上記上側逆円錐状部2bには、被処理流体の旋回および下降流動に対応する方向の螺旋溝2jが形成されている。より具体的には、螺旋溝2jは、例えば断面形状が矩形、リード角が30°で、3条形成されている。ここで、螺旋溝2jの方向(右ネジ方向か左ネジ方向か)は、例えば旋回流動の方向に応じて決定すればよい。
【0041】
上記下側逆円錐状部2dの上端の内径は、上側逆円錐状部2bの下端の内径よりも大きくなっており(つまり拡径している)、上記下側逆円錐状部2dの上端と上側逆円錐状部2bの下端とは、下側ほど拡径する円錐状部2cを介して接続されている。磁性粒子jは、後述するように、上記下側逆円錐状部2dの上端部に分離集約されるようになっている。
【0042】
下側逆円錐状部2dの下端(つまりサイクロン式処理容器2(流体渦流部2e)の底部)には、磁性粒子jを排出するための排出口4が設けられている。これらの両逆円錐状部2b,2d及び円錐状部2cが構成される流体渦流部2eは、円筒外筒5に嵌合挿入されて着脱可能になっている。尚、円筒外筒5はステンレス、合成樹脂等の非磁性体で構成するが、後述する永久磁石10の磁力の作用上で影響が無ければ、鋼管としてもよい。また、本体部2a及び流体渦流部2eは別体で構成しているが、一体でもよい。
【0043】
円筒外筒5は、その上端部の外周面に形成された雄ねじ部9bを本体部2aの下端部に形成された雌ねじ部9aに螺合してねじ込み固定されている。流体渦流部2eの上端面の外周縁、及び、円筒外筒5の上端面の内周縁は共に面取り加工が施されていて、両面取り面によりV字状の溝部が形成され、この溝部にOリング8がセットされている。こうすることで、本体部2aと流体渦流部2eとの接続部から被処理流体が漏出するのを防止している。特に、円筒外筒5の上端部がねじ込まれて本体部2aの下端部に押しつけられ、且つ流体渦流部2eの上端面がスプリング(図示省略)で上方に押しつけられることで、組み付けでき且つシールできるので、組付性及びメンテナンス性に優れる。
【0044】
サイクロン式処理容器2の中心部には、上下方向に延びる筒状排出管6が配設されている。筒状排出管6の下端部に設けられた流体排出口7の高さ位置は、下側逆円錐状部2dの上端とほぼ同じ高さ位置か、その近傍(例えば、下側逆円錐状部2dの上端よりも上側で上側逆円錐状部2bの下端よりも下側)に位置するように設けられている。
【0045】
上記浮上物回収タンク15は、サイクロン式処理容器2内の上部に浮上した比較的比重の小さい浮上物(例えば、比重の小さい磁性粒子、油成分、浮遊カーボン、浮遊ゴミ等であり、以下浮上物と称す)を回収するためのものであって、上述のように、底壁部がサイクロン式処理容器2の上壁部(仕切り板18)で構成されている。
【0046】
浮上物回収タンク15の内周面15aは、上記サイクロン式処理容器2の円筒状部2fと同軸の円筒状をなしていて、上下方向において径寸法が略一定となるように形成されている。
【0047】
また、浮上物回収タンク15の内周面15aには、回収した浮上物を含む被処理流体を該浮上物回収タンク15外(装置1外)へと排出するための浮上物排出口21が形成されている。この浮上物排出口21は、図3に併せて示すように、該浮上物回収タンク15の内周面15aに対してその接線方向から貫通して開口している。より詳細には、該浮上物排出口21は、上記導入口3に対して、サイクロン式処理容器2の中心軸1C(浮上物回収タンク15の中心軸)を挟んで略相対向する位置に形成されており、該浮上物排出口21の軸心方向は、該導入口3の軸心方向に対して垂直な関係にある。
【0048】
上記浮上物回収タンク15の底壁部(つまりサイクロン式処理容器2の上壁部)を構成する仕切り板18には、該サイクロン式処理容器2の上部に浮上した浮上物を浮上物回収タンク15内に導くための回収用貫通孔が形成されている。
【0049】
この回収用貫通孔は、複数のスリット状孔19からなり、各スリット状孔19は、上側から見てサイクロン式処理容器2(円筒状部2f)の中心部側から径方向外側に延びるとともに、該サイクロン式処理容器2の中心軸1C(円筒状部2fの中心軸)周りに周方向に等間隔(本実施形態では90°間隔)に配設されている。
【0050】
各スリット状孔19は、仕切り板18の該各スリット状孔19に対応する部分を切り欠いて下側に折り曲げることで形成されている。該仕切り板18の該折り曲げた部分である折曲げ片は、各スリット状孔19から浮上物回収タンク15内へと浮上物を案内する案内用折曲げ片(本実施形態では、4つの折曲げ片のうちの3つ)と、仕切り板18の下面近傍の流れ(サイクロン式処理容器2内の上端部の流れ)を下方に向けることにより整流するための整流用折曲げ片とで構成されている。
【0051】
上記案内用折曲げ片は、仕切り板18のスリット状孔19に対応する部分をその幅方向の旋回下流側(被処理流体の旋回方向の下流側)の側縁部に沿って下方に折り曲げることで形成されている。換言すると、各案内用折曲げ片の基端部は、スリット状孔19の幅方向の旋回下流側の側縁部に接続されている。そして、各案内用折曲げ片は、該基端部から下側に行くにしたがって旋回上流側に向かうように形成されている。
【0052】
上記整流用折曲げ片は、仕切り板18のスリット状孔19に対応する部分をその幅方向の旋回上流側(被処理流体の旋回方向の上流側)の側縁部に沿って下方に折り曲げることで形成されている。整流用折曲げ片は、上記案内用折曲げ片の傾斜方向とは逆に、その基端部から下側に行くにしたがって被処理流体の旋回下流側に向かうように形成されている。
【0053】
なお、実施形態1では、案内用折曲げ片と整流用折曲げ片とを設けたが、旋回流の渦流形成状態によれば、案内用折曲げ片だけとして、整流用折曲げ片を省略することもあり得る。
【0054】
上記筒状排出管6(図1参照)は、サイクロン式処理容器2及び浮上物回収タンク15の中心部を通って上下方向に延びるとともに、該サイクロン式処理容器2の内外を連通することで該サイクロン式処理容器2内のクリーンな被処理流体を該サイクロン式処理容器2外(装置1外)へと導くように構成されている。
【0055】
より詳細には、筒状排出管6は、その下端部がサイクロン式処理容器2内に位置していて、そこから上側に向かって延びるとともに、該サイクロン式処理容器2の上壁部(仕切り板18であって浮上物回収タンク15の底壁部)及び浮上物回収タンク15の上壁部(本体部2aの上端部)を貫通して該サイクロン式処理容器2外(装置1外)へと延設されている。換言すると、上記筒状排出管6は、浮上物回収タンク15を串刺すようにその中心部を通って上下方向に延設されている。後述するように、磁性粒子jが除去されたクリーンな被処理流体は、該流体排出口7から筒状排出管6内を通って装置1外へと導かれる。また、流体排出口7が設けられた筒状排出管6の下端部の外周面は僅かに外側に拡径しており、こうすることで、流体により確実に遠心力が作用するようになっている。しかし、場合によれば、該下端部は筒状排出管6の本体部分(該下端部を除く部分)と同径のままでもよい。
【0056】
上記サイクロン式処理容器2(流体渦流部2e)における下側逆円錐状部2dの上端部および上側逆円錐状部2bの下端部付近の外周面2h(側壁部2iの外周面)には、図4に示すように円周溝12,11が形成され、それぞれ8個の永久磁石10が嵌め込まれている。これらの永久磁石10は、例えば矩形の薄板状をなし、円周方向に隣り合う2個ずつがヨーク20によって連結されている。上記ヨーク20は、例えばパーマロイの薄板が折り曲げられて形成されている。各永久磁石10の円周方向の位置決めは、間に交互に配置された薄肉スペーサ16および厚肉スペーサ17によってなされている。また、ヨーク20の円周方向の位置決めは、上記厚肉スペーサ17によってなされている。上記のようにヨーク20を設けることによって、該永久磁石10による磁気吸引力をより一層強めることができる。すなわち、ヨーク20を永久磁石10の径方向外側に配置し、2個ずつの永久磁石10を連結することで、径方向外側に逃げる磁力線を減らせるので、永久磁石10の径方向内側に作用する磁力が強くなる。したがって、永久磁石10のコンパクト化を図ることができる。また、永久磁石10の径方向外側に、鉄製部材等の強磁性体を配設したとしても該強磁性体に対して永久磁石10からの磁気吸引力の影響が低減される。このため、サイクロン式処理容器2やその周辺装置を設計する際の設計自由度を高めることができる。
【0057】
なお、図4においてはヨーク20の厚さを永久磁石10の厚さよりも薄く描いているが、例えば、永久磁石10としてネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などを用い、ヨーク20として鋼板を用いる場合には、ヨーク20を永久磁石10と同等以上の厚さに設定するなどしてもよい。
【0058】
また、上記ヨーク20に加えて、例えば図2に2点鎖線で示すように、円筒外筒5の外周にさらに同様のヨーク20’を設け、吸引力をより大きくできるようにしてもよい。
【0059】
各永久磁石10は、円周溝11,12共に、半径方向内側がS極になるものとN極になるものとが、互いに隣り合うように配設されている。
【0060】
また、上方側の円周溝11に設けられる永久磁石10の上下方向の長さおよび位置は、例えば1ピッチ以上の螺旋溝2jが形成されている範囲に設定される。
【0061】
−サイクロン式分離除去装置の動作−
以上のように構成されたサイクロン式分離除去装置1における磁性粒子jの分離回収動作について説明する。
【0062】
先ず、磁性粒子jを含む被処理流体が、高速で、導入口3(図2参照)からサイクロン式処理容器2内に導入される。導入された被処理流体は、該サイクロン式処理容器2の内周面2gの円筒状部2fに沿って筒状排出管6周りに旋回運動することで旋回流が生じる。ここで、被処理流体中に含まれる比重の小さい浮上物は、これを浮上させようとする浮力によって、サイクロン式処理容器2内の上部に浮上集約されることとなる。この浮上集約された浮上物は、被処理流体が筒状排出管6周りに旋回流動する過程で、スリット状孔19から浮上物回収タンク15内へと流入する。より具体的には、サイクロン式処理容器2内の上端部(仕切り板18の下面近傍)に集約された浮上物は、被処理流体の旋回流動により該処理流体と共にその旋回上流側から旋回下流側へと流れる中で、上記案内用折曲げ片の案内面に衝突することでその進路を上方へと変更し、浮上物回収タンク15内へと導かれる。浮上物回収タンク15内へと導かれた浮上物を含む被処理流体は、その旋回慣性により該浮上物回収タンク15内においてもその内周面15aに沿って上記筒状排出管6周りに旋回流動して、上記浮上物排出口21から接線方向に排出され、装置1外へと導かれる。
【0063】
一方、上記導入口3からサイクロン式処理容器2内に流入した被処理流体のうち、浮上物回収タンク15内に流入しなかった残りの流体(つまり比重の小さい浮上物が除去された被処理流体)は、上側逆円錐状部2bに導かれて下側に行くほど回転速度を増加させていく。これに伴って、被処理流体中の磁性粒子jは、遠心力が作用して径方向外側に移動し、螺旋溝2jに捕捉され、または内周面2gに沿って旋回しながら下降する。そして、被処理流体の回転速度が最も速くなる上側逆円錐状部2bの下端部にて、被処理流体中の磁性粒子jには、大きな遠心力が作用するとともに、上方側の円周溝11に嵌入された永久磁石10から径方向外側へと向かう磁気吸引力が作用することとなる。この結果、該磁性粒子jは、内周面2g側(径方向外側)に分離される。特に、螺旋溝2jに捕捉された磁性粒子jは、永久磁石10との距離がより近いことから螺旋溝2jの底に押しつけられる力が強いので、径方向内側への移動は大幅に抑制される。
【0064】
一方、磁性粒子jが極めて少なくなったクリーンな流体は上側逆円錐状部2bの中心部寄りに残ることとなる。ここで、磁性粒子jが極めて少なくなったクリーンな流体と表現した理由は、1μm〜5μmの磁性粒子が、軽いためにクリーンな流体と共に筒状排出管6に導かれることがあり、僅かに磁性粒子が含まれている可能性があるからである。
【0065】
そして、被処理流体は、主として5μm以上の磁性粒子jが内周面2g側に偏って分離された状態のまま円錐状部2cに導かれる。
【0066】
円錐状部2cにおいては、被処理流体の旋回流速は若干低下するものの、上記のように、螺旋溝2jに捕捉され、または既に内周面2g側に偏った状態にある磁性粒子jは、さらに径方向外側へと移動する。
【0067】
そうして、円錐状部2cを通過した被処理流体中の磁性粒子jは、下側逆円錐状部2dの上端部に流入すると、その径方向外側への流動慣性力に加えて、下方側の円周溝12に嵌入された永久磁石10から径方向外側へと向かう磁気吸引力を受けて、下側逆円錐状部2dの上端部に分離集約される。上記下側逆円錐状部2dの上端部に分離集約された磁性粒子jは、いずれ団塊状になってその自重により下側逆円錐状部2dの傾斜面に沿って落下し、排出口4から排出され、該排出された磁性粒子jは、図示しない回収容器内に回収される。
【0068】
一方、下側逆円錐状部2dに流入した被処理流体は、旋回流動(渦流)するとともに、中心部の被処理流体には上向き軸方向の力が作用して、流体排出口7から筒状排出管6を通って磁性粒子除去装置50へと供給される。
【0069】
上記実施形態では、下側逆円錐状部2dの内壁に吸着した磁性粒子は自重で落下するが、更に吸着した磁性粒子の落下を促進したい場合には、磁石部材の磁力を弱める機構、例えば、磁石部材及び/またはヨークを上下動させるような機構を設けて積極的に分離除去するようにしてもよい。
【0070】
上記のように、上側逆円錐状部2bに螺旋溝2jが形成されていることによって、遠心力によって径方向外側に移動した被処理流体中の磁性粒子jは、螺旋溝2jに捕捉されると径方向内側へ移動しにくくなるので、被処理流体からの除去効率を大幅に向上させることができる。具体的には、例えば、同様の構成で螺旋溝2jを形成しない場合に比べて、5μmの磁性粒子jの除去率を83%から95%に向上させることなどができる。
【0071】
ここで、螺旋溝2jの条数は、3条に限らず、1条でもよいし、2条や4条以上でもよいが、概ね、多い方が磁性粒子jの捕捉効果が大きい。また、リード角も、30°に限らず、例えば10°以上30°未満でもよいし、さらに10°未満や、30°より大きくてもよい。また、例えば条数が2条で5°にしたり1条でより小さい角度にするなど、条数などに対応して設定したりしてもよい。さらに、リード角を被処理流体の旋回下降方向に対応させて下方ほど小さくしたり大きくしたりするなどしてもよい。すなわち、螺旋溝2jの方向が被処理流体の旋回下降流の方向に一致している場合には、被処理流体の流れがスムーズになって磁性粒子jが安定して内周面2gや螺旋溝2jの底に押しつけられる作用が大きくなる。一方、螺旋溝2jの方向が被処理流体の旋回下降流の方向と異なる場合には、被処理流体が螺旋溝2jを横切ることになるので、磁性粒子jが螺旋溝2jに引っかかって捕捉されやすくなる作用が大きくなる。また、被処理流体の旋回下降流の方向よりも螺旋溝2jのリード角を小さく設定し、回転速度を増加させるようにして、より大きな遠心力を作用させるようにすることもできる。それゆえ、被処理流体の流速や粘度、磁性粒子jの大きさ、形状、比重の相異などに応じて、螺旋溝2jのリード角や条数、断面形状などを設定すればよい。
【0072】
《発明の実施形態1の変形例》
上記の例では、永久磁石10が、サイクロン式処理容器2(流体渦流部2e)の外周面2h(側壁部2iの外周面)に形成された円周溝11,12に設けられる例を示したが、これに限らず、例えば図5に示すように、円筒外筒5の外周に設けるようにしてもよい。
【0073】
永久磁石10は、円筒状のヨーク201によって円周方向の位置決めがなされるとともに、ヨーク201の上下に配置された位置決めリング202が押しボルト203によって円筒外筒5に固定されることにより、上下方向の位置決めがなされるようになっている。なお、上下の永久磁石10の間隔を広げる場合には、間にスペーサを介在させてもよい。
【0074】
また、例えば図6に示すように、上下の永久磁石10を一体化して、構成の簡素化を図るようにしてもよい。
【0075】
これらのように構成することにより、永久磁石10の位置を実際の動作条件に応じて調整し、磁性粒子jの分離効率を容易に高めることができる。
【0076】
《発明の実施形態2》
螺旋溝2jによる磁性粒子jの分離効率向上効果は、上記のように逆円錐状部に形成する場合に限らず、例えば図7に示すように、円筒状部302bを有するサイクロン式分離除去装置1に適用し、上記円筒状部302bに形成した場合でも同様に得られる。上記のような円筒状部302b内を被処理流体が旋回下降する場合には、下降速度とともに回転速度も円筒状部302bの上端から下端に亘って略一定になる。そこで、螺旋溝2jのリード角が一定であれば、螺旋溝2jの方向(リード角)と旋回下降流の方向(リード角に相当する角度)との関係が一定に保たれるので、比較的一様に、磁性粒子jを螺旋溝2jに捕捉させて分離効率を向上させることができる。
【0077】
なお、図7の例では、浮上物回収タンクが設けられていない例を示しているが、実施形態1と同様に浮上物回収タンク15を設けてもよい。(逆に実施形態1等において浮上物回収タンク15を設けなくてもよい。)
また、下側逆円錐状部2dは2つ設けられる例を示しているが、実施形態1と同様に1つでもよいし、3つ以上設けてもよい。(逆に実施形態1等において複数の下側逆円錐状部2dを設けてもよい。)
また、側壁部2i(上側逆円錐状部2bと円錐状部2c、および2つの下側逆円錐状部2d)は、それぞれ別体で構成されている例を示しているが、これに限らず、1つ以上が一体的に構成されてもよい。
【0078】
また、上記側壁部2iは円筒外筒5の底部との間に設けられたコイルばね311によって上方に付勢される例を示しているが、側壁部2iの固定方法はこれに限るものではない。
【0079】
《発明の実施形態3》
また、例えば図8に示すように、下側逆円錐状部を有さず、例えば流体渦流部2eの全長に亘って設けられた上側逆円錐状部2bに螺旋溝2jを形成してもよい。この場合、螺旋溝2jの下端は、限定されないが、例えば筒状排出管6の下端から筒状排出管6の略直径d程度下方まで形成すればよい。
【0080】
《発明の実施形態4》
また、例えば図9に示すように、筒状排出管6の外周に螺旋突起6aを形成してもよい。これによって、より磁性粒子jが螺旋溝2jに捕捉されやすいようにすることができる。上記のような螺旋突起6aの断面形状は、螺旋溝2jの断面形状に対応させてもよいし、異ならせてもよい。また、螺旋突起6aの位置も、螺旋溝2jに対応させてもよいし、所定のピッチだけずらして設けたりしてもよい。
【0081】
さらに、上記のような螺旋突起6aに代えて(または螺旋突起6aと伴に)、図10に示すような螺旋溝6bを形成したりしてもよい。なお、同図の例では螺旋溝6bが形成されたスリーブ6cが筒状排出管6に嵌挿される例を示しているが、これに限らず、肉厚を厚くした筒状排出管6に、直接、螺旋溝6bを形成してもよい。また、このようなスリーブを用いる手法を図9のように螺旋突起6aを形成するために用いてもよい。
【0082】
またさらに、各実施形態で説明したような上側逆円錐状部2bの螺旋溝2jは形成されていないサイクロン式分離除去装置1に、上記のように螺旋突起6aや螺旋溝6bが形成された筒状排出管6を適用したりしてもよい。
【0083】
これらにより、やはり、磁性粒子jが外周側に集約されやすくなるようにすることができる。
【0084】
《その他の変形例》
上記各実施形態では、螺旋溝2jの断面形状が矩形である例を示したが、これに限らず、例えば図11に示すように、略半円状などに形成してもよい。この場合、矩形の場合と幅および深さが同じであれば、螺旋溝2jの断面積(容積)は矩形の場合よりも小さくなるが、螺旋溝2jの幅および/または深さを矩形の場合よりも大きくして、矩形の場合と断面積が等しくなるようにしてもよい。
【0085】
また、螺旋溝2jの深さを一定にするのに限らず、螺旋溝2jの底の内径が一定になるようにしてもよい。この場合には、上側逆円錐状部2bの内径に係わらず、中心軸1Cに対する位置関係が一定の切削をすればよいので、螺旋溝2jの形成が容易になる場合がある。
【0086】
また、上側逆円錐状部2bに螺旋溝を形成するのに代えて、中心軸1Cに平行な方向の溝や突起を設けたり、被処理流体の旋回下降方向と逆ネジの関係になるようなリード角の螺旋溝2jを設けるなどしてもよい。
【0087】
また、永久磁石10の数や配置、連結数などは上記に限らず、例えば全ての永久磁石10をリング状のヨーク20で連結したり、逆に、各永久磁石10を連結せず、それぞれの裏側(径方向外側)に個別に同形状などのヨーク20を重ねるように配設するだけにしたりしてもよい。
【0088】
また、上記の例では筒状排出管6の外形は(流体排出口7の部分を除き)一定である例を示したが、例えば実施形態4で説明したようなスリーブを嵌挿するなどして下方ほど拡径するようにして、被処理流体の流路を絞るようにしたりしてもよい。
【0089】
また、上記各実施形態や変形例で説明した構成要素は、論理的に可能な範囲で種々組み合わせてもよい。具体的には、例えば実施形態2、3(図7、図8)に示した構成で、永久磁石10を、実施形態1(図2)や実施形態1の変形例(図5)で説明したように、サイクロン式処理容器2(流体渦流部2e)の外周面2h(側壁部2iの外周面)に形成された円周溝11,12や円筒外筒5の外周に、上下に分割して設けてもよい。また、例えば実施形態4で説明したような筒状排出管6の外周に螺旋突起6aや螺旋溝6bを形成する構成を実施形態2等に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明にかかる磁性粒子分離装置は、例えば工作機械等において切削加工時や研削加工時に生じるスラッジ(加工屑)をクーラント液(被処理流体)から分離・除去するためなどに使用される磁性粒子分離装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態1に係るサイクロン式分離除去装置1(磁性粒子分離装置)を含む被処理流体浄化システムの全体図である。
【図2】実施形態1に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】永久磁石の配設状態を示す横断面図である。
【図5】実施形態1の変形例に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【図6】実施形態1の他の変形例に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【図7】実施形態2に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【図8】実施形態3に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【図9】実施形態4に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【図10】実施形態4の変形例に係るサイクロン式分離除去装置1の筒状排出管6の構成を示す縦断面図である。
【図11】その他の変形例に係るサイクロン式分離除去装置1の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 サイクロン式分離除去装置
2 サイクロン式処理容器
2a 本体部
2b 上側逆円錐状部
2c 円錐状部
2d 下側逆円錐状部
2e 流体渦流部
2f 円筒状部
2g 内周面
2h 外周面
2i 側壁部
2j 螺旋溝
3 導入口
4 排出口
5 円筒外筒
6 筒状排出管
6a 螺旋突起
6b 螺旋溝
6c スリーブ
7 流体排出口
8 Oリング
9a 雌ねじ部
9b 雄ねじ部
10 永久磁石
11 円周溝
12 円周溝
13 内側空間
15 浮上物回収タンク
15a 内周面
16 薄肉スペーサ
17 厚肉スペーサ
18 仕切り板
19 スリット状孔
20 ヨーク
20’ ヨーク
21 浮上物排出口
50 磁性粒子除去装置
100 被処理流体浄化システム
101 工作機械
102 ダーティタンク
103 ダスト分離用タンク
103b 戻り管
103c 仕切り壁
104 スーパクリーンタンク
104b 戻り管
105 ポンプ
106 エジェクタバルブ
107 ダストボックス
108 ダスト分離装置
201 ヨーク
202 位置決めリング
203 押しボルト
302b 円筒状部
311 コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を含む被処理流体を内周面に沿って旋回下降流動させ、その旋回下降流動によって生じる遠心力により被処理流体内の磁性粒子を分離して下方に排出するサイクロン式処理容器と、
上記サイクロン式処理容器の中心部にて上下方向に延び、下端に該サイクロン式処理容器の内部に開口する開口部を有し、浄化後の被処理流体を該サイクロン式処理容器の上方から該容器外へと導く排出管と、
磁性粒子に対して、上記サイクロン式処理容器の径方向外側に向かう磁気吸引力を作用させる磁石部材と、
を備えた磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器の内周面に形成された螺旋溝、上記排出管の外周面に形成された螺旋突起、および上記排出管の外周面に形成された螺旋溝のうち少なくとも何れかを有すること特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項2】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝または螺旋突起が多条に形成されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項3】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝または螺旋突起のリード角が5°以上30°以下であることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項4】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝または螺旋突起の断面形状が矩形状または略半円状であることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項5】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記磁石部材は、上記サイクロン式処理容器の内周面よりも径方向外側における上記排出管の開口部の上方位置から下方位置に亘って配置されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項6】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記磁石部材は、上記サイクロン式処理容器の内周面よりも径方向外側における上記排出管の開口部よりも上方の位置に配置された第1の磁石部材と、上記排出管の開口部よりも下方の位置に配置された第2の磁石部材とを含むことを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項7】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、内径が下方位置ほど縮径する逆円錐状部を有し、
上記螺旋溝は、上記逆円錐状部の内周面に形成されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項8】
請求項7の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、さらに、上記逆円錐状部の下方に配置され、内径が下方位置ほど縮径する下方側逆円錐状部を有し、
上記下方側逆円錐状部の上端の内径は、上方に位置する逆円錐状部の下端の内径よりも大きいものとされ、
上記排出管の開口部は、上記逆円錐状部と下方側逆円錐状部との境界部付近に配置されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項9】
請求項7の磁性粒子分離装置であって、
上記排出管の開口部は、上記逆円錐状部の上端と下端との間に配置され、
上記螺旋溝は、上記逆円錐状部の内周面における、上記排出管の開口部の上方位置から下方位置に亘って形成されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項10】
請求項9の磁性粒子分離装置であって、
上記螺旋溝は、上記排出管の開口部よりも当該排出管の直径分だけ下方の位置まで形成されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項11】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、内径が上下位置に亘って一定の円筒状部を有し、
上記螺旋溝は、上記円筒状部の内周面に形成されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項12】
請求項11の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器は、さらに、上記円筒状部の下方に配置され、内径が下方位置ほど縮径する逆円錐状部を有し、
上記逆円錐状部の上端の内径は、上記円筒状部の内径よりも大きいものとされ、
上記排出管の開口部は、上記円筒状部と逆円錐状部との境界部付近に配置されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項13】
請求項1の磁性粒子分離装置であって、
上記サイクロン式処理容器の内周面に螺旋溝が形成されるとともに、
上記排出管の外周面に螺旋突起および螺旋溝の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする磁性粒子分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−88974(P2010−88974A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258961(P2008−258961)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(594190574)岡野機工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】