磁気センサ
【課題】 高周波信号処理回路の組み合わせの不要な磁気センサを提供する。
【解決手段】 数MHz以上の高周波キャリア電流を高透磁率の磁性薄膜10に流し、表皮効果が顕著に表れる条件のもと、前記磁性薄膜にかかる外部磁場の強さに応じてインピーダンスが変化することを利用する磁気−インピーダンスセンサである。前記高周波キャリア電流と外部磁場による前記磁性薄膜のインピーダンス変化量によって決定される温度変化量を検出する温度センシング手段として薄膜サーモパイル11を備える。
【解決手段】 数MHz以上の高周波キャリア電流を高透磁率の磁性薄膜10に流し、表皮効果が顕著に表れる条件のもと、前記磁性薄膜にかかる外部磁場の強さに応じてインピーダンスが変化することを利用する磁気−インピーダンスセンサである。前記高周波キャリア電流と外部磁場による前記磁性薄膜のインピーダンス変化量によって決定される温度変化量を検出する温度センシング手段として薄膜サーモパイル11を備える。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気センサ、特に地磁気等の検出に適した高感度の磁気−インピーダンスセンサ(以下、MIセンサと呼ぶ)に関する。
【0002】
【従来の技術】高周波帯の表皮効果を利用したMIセンサは、磁気抵抗(MR)センサ、ホールセンサなどに比べて非常に高い磁気感度を有し地磁気等の微弱な磁気変化量の検出も可能である。しかしながら、MIセンサは、原理上、数MHz以上の高周波帯における表皮効果を利用したものであるため、信号処理回路として高周波処理技術が必要となる。
【0003】具体的には、図11に示すような回路構成が用いられている。図11において、CMOSインバータなどを利用した発振回路1の出力を微分回路2を経由して得られる、少なくとも数MHz以上の高い周波数成分を含む一定振幅のインパルス電流Iを磁気検知部であるMIセンサ6に印加する。そして、外部磁場Hexに対するMIセンサ6のインピーダンス変化に伴う電圧信号レベルをピークホールド回路3を用いて直流電圧信号に変換する。この直流電圧信号を増幅回路4によって増幅し、磁気検出信号を取り出す。この回路は特願平8−149427号に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】磁気検出時の信号処理回路には、十分なS/N比を確保するために高周波信号処理特有の寄生インダクタンス、寄生容量対策が必要となる。また、各部の電子部品類も高周波対応のものが必要となり回路構成が複雑なものとなっている。
【0005】そこで、本発明の課題は、高周波信号処理回路の組み合わせの不要な磁気センサを提供することにある。
【0006】本発明の他の課題は、高いS/N比を実現できる磁気センサを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、数MHz以上の高周波キャリア電流を高透磁率の磁性体あるいは磁性薄膜に流し、表皮効果が顕著に表れる条件のもと、前記磁性体あるいは磁性薄膜にかかる外部磁場の強さに応じてインピーダンスが変化することを利用する磁気−インピーダンスセンサにおいて、前記高周波キャリア電流と外部磁場による前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化量によって決定される温度変化量を検出する温度センシング手段を備えたことを特徴とする磁気センサが提供される。
【0008】本磁気センサにおいては、マイクロマシニング技術を利用して形成された熱容量を小さくした架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を支持体として前記磁性体あるいは磁性薄膜を宙に浮かせるようにして外部への熱伝達及び熱伝導量を少なくすることにより、前記磁性体あるいは磁性薄膜の外部磁場によるインピーダンス変化量に伴う温度変化量を著しく増大させる構造とし、さらに前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に前記温度センシング手段を配して、前記温度変化量を検出する。
【0009】本発明によればまた、上記の磁気センサにおいて、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を介して支持された磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に配置された、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体と同等の熱容量及び熱コンダクタンスを持つ別の支持体上に形成された前記磁性体あるいは磁性薄膜と同等の電気抵抗を持つ導電体あるいは導体薄膜を有し、前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化に伴う温度変化量と前記導電体あるいは導体薄膜のインピーダンスと前記高周波キャリア電流によって決定される温度変化量を参照用とし、前記温度センシング手段による温度変化量と前記参照用の温度変化量の差を検出信号とする差動構成としたことを特徴とする磁気センサが提供される。
【0010】本磁気センサにおいてはさらに、磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜の磁気バイアスポイントを設定するための別の磁性体あるいは磁性薄膜又はバイアスコイルを有する構成を特徴とする。
【0011】本磁気センサにおいてはさらに、前記磁性体あるいは磁性薄膜に前記高周波キャリア電流を印加するための発振回路と、前記温度センシング手段の出力信号を増幅するための増幅回路を有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明によれば、外部磁場Hexに対するインピーダンス変化△Zを温度変化△Tとしてとらえることができるようにすることで、高周波信号処理における寄生インタクダンス、寄生容量対策を低減でき、高周波キャリア電流に起因するノイズレベルの増加及び信号レベルの低下を抑制し、S/N比の高い高感度のMIセンサを提供することが可能となる。
【0013】以下、本発明における温度センシング機構を持つMIセンサの動作原理について説明する。従来のMIセンサの動作原理に従って、一定レベルの高周波キャリア電流Iを磁気検知部である高透磁率の磁性体あるいは磁性薄膜に通電し、外部磁場HexによってインピーダンスZが変化する条件のもとでは、高周波キャリア電流Iが通電することによって磁性体あるいは磁性薄膜は単位時間当たりジュール熱Pを発生する。インピーダンスの変化量△Zに伴う、ジュール熱Pの変化量△Pは、磁性体あるいは磁性薄膜を流れる高周波キャリア電流Iと外部磁場Hexに応じたインピーダンス変化量△Zによって以下の数1に従って決定される。
【0014】
【数1】
【0015】磁性体あるいは磁性薄膜に流れる高周波キャリア電流Iによって発生したジュール熱Pによって、磁性体あるいは磁性薄膜自体又は磁性体あるいは磁性薄膜の支持体の温度変化△Tは以下の数2のように表される。
【0016】
【数2】
【0017】ここで、Cは磁性体あるいは磁性薄膜自体又はこれらの支持体の熱容量、Gは発熱体である磁性体あるいは磁性薄膜から外部への熱コンダクタンスである。
【0018】従って、数1及び数2より、温度上昇△Tは下記の数3で表現される。
【0019】
【数3】
【0020】上記の数3より、磁性体あるいは磁性薄膜自体又はこれらの支持体の温度変化△Tはインピーダンスの変化量△Zによって変化することから、外部磁場Hexの強さを温度変化△Tとして検知することが可能である。
【0021】図2は、本発明により上記の温度変化△Tを検出するための温度センシング機構を持つ回路構成を示した図である。
【0022】本回路は、MIセンサ6のインピーダンス変化△Zが顕著になる周波数帯を含む発振信号を発生しインパルス電流Iを通電するための発振回路1及び微分回路2と、磁気検知部及び発熱部であるMIセンサ6と、温度変化△Tを検出する温度センシング機構9及び温度変化△Tに基づく信号を増幅するための増幅回路4のみの構成によって、磁気検知システムを構築している。
【0023】温度センシング機構9としては、熱電対や複数の熱電対を直列接続した構成のサーモパイルなどを用いることで、直接、磁気検知部である磁性体あるいは磁性薄膜自体、更にはまたこれらの支持体にて生じた温度変化△Tを直流電圧Vに変換することができる。
【0024】次に、本発明のいくつかの実施例について説明する。尚、以降の実施例では磁気検知部として磁性薄膜を用いる場合について説明するが、磁性体の場合も同じであることは言うまでも無い。
【0025】[実施例1]図1は、本発明によるMIセンサの第一の例を示す。この例では、半導体マイクロマシニング技術によって形成された架橋構造体14を支持体として、磁気検知部である磁性薄膜10を、いわば宙に浮かせるような状態で配置できるようににしている。架橋構造体14上にはまた、磁性薄膜10に近接した位置に温度センシング機構として薄膜サーモパイル11を配置している。架橋構造体14は、空洞部13aを持つ基礎部13に橋渡し部を形成して構成される。磁性薄膜10の両端には電極12a、12bが形成され、薄膜サーモパイル11の両端には電極12c、12dが形成されている。尚、図中、空洞部13は下方、つまり図面の裏側に向けて形成されていることを示している。
【0026】図3は、図1の例の変形例を示し、図1の架橋構造体14に代わる支持体として、カンチレバー構造体15を採用している。カンチレバー構造体15は、空洞部13aを持つ基礎部13に、レバー体を、このレバー体が空洞部13aに位置するように形成して構成される。また、図1の薄膜サーモパイル11に代えて薄膜熱電対16を磁性薄膜10の周囲に配置している。
【0027】これらの構造体の製作は、シリコンのKOHやヒドラジンなどの異方性エッチャントと半導体微細加工技術におけるフォトリソグラフィーによって、選択的にシリコンウエハー内に空洞部13aを形成でき、更に電解エッチストップ法や高濃度ボロン拡散層あるいはSOI基板を利用したエッチストップ法によって容易に2〜3μm厚の薄膜層からなる架橋構造体14やカンチレバー構造体15を形成できる。
【0028】また、これらの構造体上に磁気検知部である2μm程度の厚さの磁性薄膜10がマグネトロンスパッタリング法によって堆積され、フォトリソグラフィー法によってパターン化が行われる。同様に、温度センシング機構としての金とニッケル薄膜などの対を組み合わせた薄膜熱電対16あるいは複数の薄膜熱電対の直列接続を行った薄膜サーモパイル11も、マグネトロンスパッタリング法及びフォトリソグラフィーによって、堆積、パターン化が行える。更に、磁気検知部及び温度センシング機構としての薄膜熱電対16あるいは薄膜サーモパイル11の保護膜として、二酸化シリコン薄膜や窒化シリコン薄膜を前記磁気検知部や薄膜熱電対16などと同様の手法によって形成することができる。
【0029】磁気検知部のバイアスポイント設定用のバイアスコイルは、次のようにして取り付けられる。
【0030】図4に示すように、磁気検知部及び温度センシング機構を含むシリコン構造体(架橋構造体14あるいはカンチレバー構造体15)と、磁気センサ本体17を保護するためのガラスカバー16とを陽極接合法によって両者を接合し、磁気センサ本体17に異方性エッチャントによって予め刻み込まれたV溝18を利用してバイアスコイル19を巻きつける。
【0031】図5は、磁性薄膜10によるMIセンサ6の外部磁場Hexに対するインピーダンス変化及び磁気感度Sを示したものである。バイアスコイル19に流れる電流値Ibによって、最大磁気感度Spを示す磁気バイアスポイントHpを設定する。この状態のMIセンサ6において地磁気レベルHeの外部磁場Hexがかかると、バイアスポイントHpは図5に示されるように(Hp+He)点に移動し、MIセンサ6のインピーダンスZは増加し、上記の数3に従いMIセンサ6は温度変化△Tを示す。温度変化△Tは、図1及び図3に示されているように、磁気検知部である磁性薄膜10に近接した位置に形成された薄膜熱電対16あるいは薄膜サーモパイル11によって検出される。
【0032】図6は、MIセンサ6にかかる外部磁場Hexによって生じる温度変化△Tとそのときのインピーダンス特性を示したものである。図6中の温度変化△Tは、数3に示されるようにインピーダンス変化△Zに比例する。そして、架橋構造体14あるいはカンチレバー構造体15などの磁気検知部である磁性薄膜10及び温度センシング機構である薄膜熱電対16あるいは薄膜サーモパイル11の支持体の熱容量C及び熱コンダクタンスGをともに小さくすることで、温度変化△Tを増大させることが可能である。
【0033】図7は、薄膜熱電対16として金とニッケル薄膜を適用した場合の磁気検出信号5及び支持体の温度変化△Tを示したものである。薄膜熱電対の熱起電力は、バルクの状態で示される各種材料の熱電能の値にほぼ等しく、前記金−ニッケル薄膜の場合には熱起電力は21μV/℃である。架橋構造体14あるいはカンチレバー構造体15による支持体の構造を熱容量C及び熱コンダクタンスGを小さくすることによって、温度変化△Tを増大させることは容易であり、最終段での増幅回路4のゲインは、1000倍程度で十分に地磁気レベルの磁気検出が可能である。
【0034】以上、高周波対策を必要とする従来のMIセンサで用いられてきた外部磁場Hexに対するインピーダンス変化△Zを電圧の変化量として検知する信号検出法を用いることなく、MIセンサのインピーダンス変化△Zを温度変化△Tとして検知することが示された。
【0035】[実施例2]図8は、本発明の第2の実施例として、差動構成による高感度MIセンサを示す。この実施例は、図3に示された実施例1の変形例と同様に、半導体マイクロマシニング技術によって形成されたカンチレバー構造体15を支持体として、磁気検知部である磁性薄膜10を宙に浮かせ、その近接した位置に温度センシング機構として薄膜熱電対16を配置した構成を持つ磁気センサに更に、参照用の磁気不感知部として参照用抵抗薄膜21を配置した参照用カンチレーバー構造体22を組み合わせている。つまり、カンチレバー構造体15の延在方向と反対方向から参照用カンチレーバー構造体22を空洞部13a上に延ばし、参照用カンチレーバー構造体22の上には参照用抵抗薄膜21を配置すると共に、その周囲に参照用薄膜熱電対23を配置している。そして、参照用抵抗薄膜21の両端には磁気検知部と同様の高周波キャリア電流を流すための参照用電極12e、12fを形成し、参照用熱電対23の両端には参照用電極12g、12hを形成している。
【0036】勿論、この実施例は、図1に示された実施例1にも適用可能である。いずれにしても、この実施例では、磁気不感知部においては、前記の数3中の熱容量C及び熱コンダクタンスGが磁気検知部と等価なものとし、外部磁場Hexによる磁気検知部のインピーダンス変化△Zを、前記薄膜熱電対16からの信号と参照用薄膜熱電対23からの信号とを入力とする差動増幅回路を介して検出するように構成される。
【0037】[実施例3]図9は、図4で説明した実施例1のバイアスポイント設定用のバイアスコイル19の代わりにバイアス用薄膜インダクタ24を使用した場合の実施例である。つまり、本発明による磁気センサ本体17の断面部分に対応する、例えば側面部分に、ポリイミド材28を支持体としたバイアス用薄膜インダクタ24を接着剤などを利用して取り付ける。バイアス用薄膜インダクタ24は、ポリイミド材28上に薄膜化された銅箔を利用し、実施例1で説明したフォトリソグラフィー法によって容易に形成することができる。このバイアス用薄膜インダクタ24にはバイアス電流Ibが流される。
【0038】[実施例4]図10は、上記実施例3のバイアスポイント設定用のバイアス用薄膜インダクタ24の代わりに永久磁石体あるいは磁性薄膜による磁極26a、26b、27a、27bを図のように配置させた状態で磁気センサ本体17の断面部分に対応する、例えば側面部分に取り付けたものである。ここでは、磁気センサ本体17の一方の側にバイアス用永久磁石S極26aを、他方の側にバイアス用永久磁石N極26bをそれぞれ取り付ける。
【0039】
【発明の効果】以上に述べた、本発明に係るMIセンサは、外部磁場変化に伴うMIセンサのインピーダンス変化量を温度変化量としてとらえることで、高周波信号処理における寄生容量、寄生インダクタンス対策を軽減でき、信号レベルの低下及び高周波キャリア電流に起因するノイズレベルの増加を低減でき、従来に比べより高いS/N比を持つ高感度のMIセンサを実現できる。
【0040】また、従来の信号検出におけるMHz帯のピークホールド回路などに代表される高周波信号処理回路が不要となり、信号処理にともなう部品点数を大幅に減らすことが可能となるので低コストで高感度なMIセンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロマシニング技術による温度センシング機構を有する、本発明の第1の実施例によるMIセンサの平面図である。
【図2】本発明によるMIセンサに組み合わされる回路のブロック図である。
【図3】図1のMIセンサの変形例を示した平面図である。
【図4】本発明によるMIセンサ本体へのバイアス用コイルの取り付け法を説明するための断面図である。
【図5】MIセンサのインピーダンス特性を示した図である。
【図6】本発明によるMIセンサの外部磁場に対するインピーダンス及び温度特性を示した図である。
【図7】本発明によるMIセンサの磁気検出信号特性を示した図である。
【図8】マイクロマシニング技術による差動構成形の温度センシング機構を有する、本発明の第2の実施例によるMIセンサの平面図である。
【図9】本発明の第3の実施例である、薄膜インダクタを利用した磁気バイアス印加方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第4の実施例である、永久磁石薄膜を利用した磁気バイアス印加方法を説明するための断面図である。
【図11】従来のMIセンサ回路のブロック図である。
【符号の説明】
1 発振回路
2 微分回路
3 ピークホールド回路
4 増幅回路
6 MIセンサ
10 磁性薄膜
11 薄膜サーモパイル
12a〜12h 電極
13 基礎部
14 架橋構造体
15 カンチレバー構造体
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気センサ、特に地磁気等の検出に適した高感度の磁気−インピーダンスセンサ(以下、MIセンサと呼ぶ)に関する。
【0002】
【従来の技術】高周波帯の表皮効果を利用したMIセンサは、磁気抵抗(MR)センサ、ホールセンサなどに比べて非常に高い磁気感度を有し地磁気等の微弱な磁気変化量の検出も可能である。しかしながら、MIセンサは、原理上、数MHz以上の高周波帯における表皮効果を利用したものであるため、信号処理回路として高周波処理技術が必要となる。
【0003】具体的には、図11に示すような回路構成が用いられている。図11において、CMOSインバータなどを利用した発振回路1の出力を微分回路2を経由して得られる、少なくとも数MHz以上の高い周波数成分を含む一定振幅のインパルス電流Iを磁気検知部であるMIセンサ6に印加する。そして、外部磁場Hexに対するMIセンサ6のインピーダンス変化に伴う電圧信号レベルをピークホールド回路3を用いて直流電圧信号に変換する。この直流電圧信号を増幅回路4によって増幅し、磁気検出信号を取り出す。この回路は特願平8−149427号に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】磁気検出時の信号処理回路には、十分なS/N比を確保するために高周波信号処理特有の寄生インダクタンス、寄生容量対策が必要となる。また、各部の電子部品類も高周波対応のものが必要となり回路構成が複雑なものとなっている。
【0005】そこで、本発明の課題は、高周波信号処理回路の組み合わせの不要な磁気センサを提供することにある。
【0006】本発明の他の課題は、高いS/N比を実現できる磁気センサを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、数MHz以上の高周波キャリア電流を高透磁率の磁性体あるいは磁性薄膜に流し、表皮効果が顕著に表れる条件のもと、前記磁性体あるいは磁性薄膜にかかる外部磁場の強さに応じてインピーダンスが変化することを利用する磁気−インピーダンスセンサにおいて、前記高周波キャリア電流と外部磁場による前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化量によって決定される温度変化量を検出する温度センシング手段を備えたことを特徴とする磁気センサが提供される。
【0008】本磁気センサにおいては、マイクロマシニング技術を利用して形成された熱容量を小さくした架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を支持体として前記磁性体あるいは磁性薄膜を宙に浮かせるようにして外部への熱伝達及び熱伝導量を少なくすることにより、前記磁性体あるいは磁性薄膜の外部磁場によるインピーダンス変化量に伴う温度変化量を著しく増大させる構造とし、さらに前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に前記温度センシング手段を配して、前記温度変化量を検出する。
【0009】本発明によればまた、上記の磁気センサにおいて、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を介して支持された磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に配置された、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体と同等の熱容量及び熱コンダクタンスを持つ別の支持体上に形成された前記磁性体あるいは磁性薄膜と同等の電気抵抗を持つ導電体あるいは導体薄膜を有し、前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化に伴う温度変化量と前記導電体あるいは導体薄膜のインピーダンスと前記高周波キャリア電流によって決定される温度変化量を参照用とし、前記温度センシング手段による温度変化量と前記参照用の温度変化量の差を検出信号とする差動構成としたことを特徴とする磁気センサが提供される。
【0010】本磁気センサにおいてはさらに、磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜の磁気バイアスポイントを設定するための別の磁性体あるいは磁性薄膜又はバイアスコイルを有する構成を特徴とする。
【0011】本磁気センサにおいてはさらに、前記磁性体あるいは磁性薄膜に前記高周波キャリア電流を印加するための発振回路と、前記温度センシング手段の出力信号を増幅するための増幅回路を有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明によれば、外部磁場Hexに対するインピーダンス変化△Zを温度変化△Tとしてとらえることができるようにすることで、高周波信号処理における寄生インタクダンス、寄生容量対策を低減でき、高周波キャリア電流に起因するノイズレベルの増加及び信号レベルの低下を抑制し、S/N比の高い高感度のMIセンサを提供することが可能となる。
【0013】以下、本発明における温度センシング機構を持つMIセンサの動作原理について説明する。従来のMIセンサの動作原理に従って、一定レベルの高周波キャリア電流Iを磁気検知部である高透磁率の磁性体あるいは磁性薄膜に通電し、外部磁場HexによってインピーダンスZが変化する条件のもとでは、高周波キャリア電流Iが通電することによって磁性体あるいは磁性薄膜は単位時間当たりジュール熱Pを発生する。インピーダンスの変化量△Zに伴う、ジュール熱Pの変化量△Pは、磁性体あるいは磁性薄膜を流れる高周波キャリア電流Iと外部磁場Hexに応じたインピーダンス変化量△Zによって以下の数1に従って決定される。
【0014】
【数1】
【0015】磁性体あるいは磁性薄膜に流れる高周波キャリア電流Iによって発生したジュール熱Pによって、磁性体あるいは磁性薄膜自体又は磁性体あるいは磁性薄膜の支持体の温度変化△Tは以下の数2のように表される。
【0016】
【数2】
【0017】ここで、Cは磁性体あるいは磁性薄膜自体又はこれらの支持体の熱容量、Gは発熱体である磁性体あるいは磁性薄膜から外部への熱コンダクタンスである。
【0018】従って、数1及び数2より、温度上昇△Tは下記の数3で表現される。
【0019】
【数3】
【0020】上記の数3より、磁性体あるいは磁性薄膜自体又はこれらの支持体の温度変化△Tはインピーダンスの変化量△Zによって変化することから、外部磁場Hexの強さを温度変化△Tとして検知することが可能である。
【0021】図2は、本発明により上記の温度変化△Tを検出するための温度センシング機構を持つ回路構成を示した図である。
【0022】本回路は、MIセンサ6のインピーダンス変化△Zが顕著になる周波数帯を含む発振信号を発生しインパルス電流Iを通電するための発振回路1及び微分回路2と、磁気検知部及び発熱部であるMIセンサ6と、温度変化△Tを検出する温度センシング機構9及び温度変化△Tに基づく信号を増幅するための増幅回路4のみの構成によって、磁気検知システムを構築している。
【0023】温度センシング機構9としては、熱電対や複数の熱電対を直列接続した構成のサーモパイルなどを用いることで、直接、磁気検知部である磁性体あるいは磁性薄膜自体、更にはまたこれらの支持体にて生じた温度変化△Tを直流電圧Vに変換することができる。
【0024】次に、本発明のいくつかの実施例について説明する。尚、以降の実施例では磁気検知部として磁性薄膜を用いる場合について説明するが、磁性体の場合も同じであることは言うまでも無い。
【0025】[実施例1]図1は、本発明によるMIセンサの第一の例を示す。この例では、半導体マイクロマシニング技術によって形成された架橋構造体14を支持体として、磁気検知部である磁性薄膜10を、いわば宙に浮かせるような状態で配置できるようににしている。架橋構造体14上にはまた、磁性薄膜10に近接した位置に温度センシング機構として薄膜サーモパイル11を配置している。架橋構造体14は、空洞部13aを持つ基礎部13に橋渡し部を形成して構成される。磁性薄膜10の両端には電極12a、12bが形成され、薄膜サーモパイル11の両端には電極12c、12dが形成されている。尚、図中、空洞部13は下方、つまり図面の裏側に向けて形成されていることを示している。
【0026】図3は、図1の例の変形例を示し、図1の架橋構造体14に代わる支持体として、カンチレバー構造体15を採用している。カンチレバー構造体15は、空洞部13aを持つ基礎部13に、レバー体を、このレバー体が空洞部13aに位置するように形成して構成される。また、図1の薄膜サーモパイル11に代えて薄膜熱電対16を磁性薄膜10の周囲に配置している。
【0027】これらの構造体の製作は、シリコンのKOHやヒドラジンなどの異方性エッチャントと半導体微細加工技術におけるフォトリソグラフィーによって、選択的にシリコンウエハー内に空洞部13aを形成でき、更に電解エッチストップ法や高濃度ボロン拡散層あるいはSOI基板を利用したエッチストップ法によって容易に2〜3μm厚の薄膜層からなる架橋構造体14やカンチレバー構造体15を形成できる。
【0028】また、これらの構造体上に磁気検知部である2μm程度の厚さの磁性薄膜10がマグネトロンスパッタリング法によって堆積され、フォトリソグラフィー法によってパターン化が行われる。同様に、温度センシング機構としての金とニッケル薄膜などの対を組み合わせた薄膜熱電対16あるいは複数の薄膜熱電対の直列接続を行った薄膜サーモパイル11も、マグネトロンスパッタリング法及びフォトリソグラフィーによって、堆積、パターン化が行える。更に、磁気検知部及び温度センシング機構としての薄膜熱電対16あるいは薄膜サーモパイル11の保護膜として、二酸化シリコン薄膜や窒化シリコン薄膜を前記磁気検知部や薄膜熱電対16などと同様の手法によって形成することができる。
【0029】磁気検知部のバイアスポイント設定用のバイアスコイルは、次のようにして取り付けられる。
【0030】図4に示すように、磁気検知部及び温度センシング機構を含むシリコン構造体(架橋構造体14あるいはカンチレバー構造体15)と、磁気センサ本体17を保護するためのガラスカバー16とを陽極接合法によって両者を接合し、磁気センサ本体17に異方性エッチャントによって予め刻み込まれたV溝18を利用してバイアスコイル19を巻きつける。
【0031】図5は、磁性薄膜10によるMIセンサ6の外部磁場Hexに対するインピーダンス変化及び磁気感度Sを示したものである。バイアスコイル19に流れる電流値Ibによって、最大磁気感度Spを示す磁気バイアスポイントHpを設定する。この状態のMIセンサ6において地磁気レベルHeの外部磁場Hexがかかると、バイアスポイントHpは図5に示されるように(Hp+He)点に移動し、MIセンサ6のインピーダンスZは増加し、上記の数3に従いMIセンサ6は温度変化△Tを示す。温度変化△Tは、図1及び図3に示されているように、磁気検知部である磁性薄膜10に近接した位置に形成された薄膜熱電対16あるいは薄膜サーモパイル11によって検出される。
【0032】図6は、MIセンサ6にかかる外部磁場Hexによって生じる温度変化△Tとそのときのインピーダンス特性を示したものである。図6中の温度変化△Tは、数3に示されるようにインピーダンス変化△Zに比例する。そして、架橋構造体14あるいはカンチレバー構造体15などの磁気検知部である磁性薄膜10及び温度センシング機構である薄膜熱電対16あるいは薄膜サーモパイル11の支持体の熱容量C及び熱コンダクタンスGをともに小さくすることで、温度変化△Tを増大させることが可能である。
【0033】図7は、薄膜熱電対16として金とニッケル薄膜を適用した場合の磁気検出信号5及び支持体の温度変化△Tを示したものである。薄膜熱電対の熱起電力は、バルクの状態で示される各種材料の熱電能の値にほぼ等しく、前記金−ニッケル薄膜の場合には熱起電力は21μV/℃である。架橋構造体14あるいはカンチレバー構造体15による支持体の構造を熱容量C及び熱コンダクタンスGを小さくすることによって、温度変化△Tを増大させることは容易であり、最終段での増幅回路4のゲインは、1000倍程度で十分に地磁気レベルの磁気検出が可能である。
【0034】以上、高周波対策を必要とする従来のMIセンサで用いられてきた外部磁場Hexに対するインピーダンス変化△Zを電圧の変化量として検知する信号検出法を用いることなく、MIセンサのインピーダンス変化△Zを温度変化△Tとして検知することが示された。
【0035】[実施例2]図8は、本発明の第2の実施例として、差動構成による高感度MIセンサを示す。この実施例は、図3に示された実施例1の変形例と同様に、半導体マイクロマシニング技術によって形成されたカンチレバー構造体15を支持体として、磁気検知部である磁性薄膜10を宙に浮かせ、その近接した位置に温度センシング機構として薄膜熱電対16を配置した構成を持つ磁気センサに更に、参照用の磁気不感知部として参照用抵抗薄膜21を配置した参照用カンチレーバー構造体22を組み合わせている。つまり、カンチレバー構造体15の延在方向と反対方向から参照用カンチレーバー構造体22を空洞部13a上に延ばし、参照用カンチレーバー構造体22の上には参照用抵抗薄膜21を配置すると共に、その周囲に参照用薄膜熱電対23を配置している。そして、参照用抵抗薄膜21の両端には磁気検知部と同様の高周波キャリア電流を流すための参照用電極12e、12fを形成し、参照用熱電対23の両端には参照用電極12g、12hを形成している。
【0036】勿論、この実施例は、図1に示された実施例1にも適用可能である。いずれにしても、この実施例では、磁気不感知部においては、前記の数3中の熱容量C及び熱コンダクタンスGが磁気検知部と等価なものとし、外部磁場Hexによる磁気検知部のインピーダンス変化△Zを、前記薄膜熱電対16からの信号と参照用薄膜熱電対23からの信号とを入力とする差動増幅回路を介して検出するように構成される。
【0037】[実施例3]図9は、図4で説明した実施例1のバイアスポイント設定用のバイアスコイル19の代わりにバイアス用薄膜インダクタ24を使用した場合の実施例である。つまり、本発明による磁気センサ本体17の断面部分に対応する、例えば側面部分に、ポリイミド材28を支持体としたバイアス用薄膜インダクタ24を接着剤などを利用して取り付ける。バイアス用薄膜インダクタ24は、ポリイミド材28上に薄膜化された銅箔を利用し、実施例1で説明したフォトリソグラフィー法によって容易に形成することができる。このバイアス用薄膜インダクタ24にはバイアス電流Ibが流される。
【0038】[実施例4]図10は、上記実施例3のバイアスポイント設定用のバイアス用薄膜インダクタ24の代わりに永久磁石体あるいは磁性薄膜による磁極26a、26b、27a、27bを図のように配置させた状態で磁気センサ本体17の断面部分に対応する、例えば側面部分に取り付けたものである。ここでは、磁気センサ本体17の一方の側にバイアス用永久磁石S極26aを、他方の側にバイアス用永久磁石N極26bをそれぞれ取り付ける。
【0039】
【発明の効果】以上に述べた、本発明に係るMIセンサは、外部磁場変化に伴うMIセンサのインピーダンス変化量を温度変化量としてとらえることで、高周波信号処理における寄生容量、寄生インダクタンス対策を軽減でき、信号レベルの低下及び高周波キャリア電流に起因するノイズレベルの増加を低減でき、従来に比べより高いS/N比を持つ高感度のMIセンサを実現できる。
【0040】また、従来の信号検出におけるMHz帯のピークホールド回路などに代表される高周波信号処理回路が不要となり、信号処理にともなう部品点数を大幅に減らすことが可能となるので低コストで高感度なMIセンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロマシニング技術による温度センシング機構を有する、本発明の第1の実施例によるMIセンサの平面図である。
【図2】本発明によるMIセンサに組み合わされる回路のブロック図である。
【図3】図1のMIセンサの変形例を示した平面図である。
【図4】本発明によるMIセンサ本体へのバイアス用コイルの取り付け法を説明するための断面図である。
【図5】MIセンサのインピーダンス特性を示した図である。
【図6】本発明によるMIセンサの外部磁場に対するインピーダンス及び温度特性を示した図である。
【図7】本発明によるMIセンサの磁気検出信号特性を示した図である。
【図8】マイクロマシニング技術による差動構成形の温度センシング機構を有する、本発明の第2の実施例によるMIセンサの平面図である。
【図9】本発明の第3の実施例である、薄膜インダクタを利用した磁気バイアス印加方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第4の実施例である、永久磁石薄膜を利用した磁気バイアス印加方法を説明するための断面図である。
【図11】従来のMIセンサ回路のブロック図である。
【符号の説明】
1 発振回路
2 微分回路
3 ピークホールド回路
4 増幅回路
6 MIセンサ
10 磁性薄膜
11 薄膜サーモパイル
12a〜12h 電極
13 基礎部
14 架橋構造体
15 カンチレバー構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】 数MHz以上の高周波キャリア電流を高透磁率の磁性体あるいは磁性薄膜に流し、表皮効果が顕著に表れる条件のもと、前記磁性体あるいは磁性薄膜にかかる外部磁場の強さに応じてインピーダンスが変化することを利用する磁気−インピーダンスセンサにおいて、前記高周波キャリア電流と外部磁場による前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化量によって決定される温度変化量を検出する温度センシング手段を備えたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】 請求項1に記載の磁気センサにおいて、マイクロマシニング技術を利用して形成された熱容量を小さくした架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を支持体として前記磁性体あるいは磁性薄膜を宙に浮かせるようにして外部への熱伝達及び熱伝導量を少なくすることにより、前記磁性体あるいは磁性薄膜の外部磁場によるインピーダンス変化量に伴う温度変化量を著しく増大させる構造とし、さらに前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に前記温度センシング手段を配して、前記温度変化量を検出することを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】 請求項2に記載の磁気センサにおいて、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を介して支持された磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に配置された、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体と同等の熱容量及び熱コンダクタンスを持つ別の支持体上に形成された前記磁性体あるいは磁性薄膜と同等の電気抵抗を持つ導電体あるいは導体薄膜を有し、前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化に伴う温度変化量と前記導電体あるいは導体薄膜のインピーダンスと前記高周波キャリア電流によって決定される温度変化量を参照用とし、前記温度センシング手段による温度変化量と前記参照用の温度変化量の差を検出信号とする差動構成としたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項4】 請求項2あるいは3に記載の磁気センサにおいて、磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜の磁気バイアスポイントを設定するための別の磁性体あるいは磁性薄膜又はバイアスコイルを有する構成を特徴とする磁気センサ。
【請求項5】 請求項2〜4のいずれか1つに記載の磁気センサにおいて、前記磁性体あるいは磁性薄膜に前記高周波キャリア電流を印加するための発振回路と、前記温度センシング手段の出力信号を増幅するための増幅回路を有することを特徴とする磁気センサ。
【請求項1】 数MHz以上の高周波キャリア電流を高透磁率の磁性体あるいは磁性薄膜に流し、表皮効果が顕著に表れる条件のもと、前記磁性体あるいは磁性薄膜にかかる外部磁場の強さに応じてインピーダンスが変化することを利用する磁気−インピーダンスセンサにおいて、前記高周波キャリア電流と外部磁場による前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化量によって決定される温度変化量を検出する温度センシング手段を備えたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】 請求項1に記載の磁気センサにおいて、マイクロマシニング技術を利用して形成された熱容量を小さくした架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を支持体として前記磁性体あるいは磁性薄膜を宙に浮かせるようにして外部への熱伝達及び熱伝導量を少なくすることにより、前記磁性体あるいは磁性薄膜の外部磁場によるインピーダンス変化量に伴う温度変化量を著しく増大させる構造とし、さらに前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に前記温度センシング手段を配して、前記温度変化量を検出することを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】 請求項2に記載の磁気センサにおいて、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体を介して支持された磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜と接近した位置に配置された、前記架橋構造体あるいはカンチレバー構造体と同等の熱容量及び熱コンダクタンスを持つ別の支持体上に形成された前記磁性体あるいは磁性薄膜と同等の電気抵抗を持つ導電体あるいは導体薄膜を有し、前記磁性体あるいは磁性薄膜のインピーダンス変化に伴う温度変化量と前記導電体あるいは導体薄膜のインピーダンスと前記高周波キャリア電流によって決定される温度変化量を参照用とし、前記温度センシング手段による温度変化量と前記参照用の温度変化量の差を検出信号とする差動構成としたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項4】 請求項2あるいは3に記載の磁気センサにおいて、磁気検知部である前記磁性体あるいは磁性薄膜の磁気バイアスポイントを設定するための別の磁性体あるいは磁性薄膜又はバイアスコイルを有する構成を特徴とする磁気センサ。
【請求項5】 請求項2〜4のいずれか1つに記載の磁気センサにおいて、前記磁性体あるいは磁性薄膜に前記高周波キャリア電流を印加するための発振回路と、前記温度センシング手段の出力信号を増幅するための増幅回路を有することを特徴とする磁気センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2003−107141(P2003−107141A)
【公開日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−301537(P2001−301537)
【出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(000134257)エヌイーシートーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(000134257)エヌイーシートーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】
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