説明

磁気ディスク媒体及び磁気ディスク装置

【課題】DTR構造のディスク媒体において、データ領域の記録データとしては不適切なデータを記録できる磁気ディスク媒体を提供することにある。
【解決手段】パターンドメディアにおけるサーボ領域300と、DTR構造のデータ領域302との境界部には、磁気記録部として有効な連続磁性領域301が設けられた構成の磁気ディスク媒体である。連続磁性領域301には、ヘッド位置決め制御時に使用される位置決め補正情報が記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、DTR構造の磁気ディスク媒体及び当該磁気ディスク媒体を有する磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブを代表とする磁気ディスク装置(以下ディスクドライブと称す)では、ディスクリート(またはDTR:discrete track recording)構造のパターンドメディアである磁気ディスク媒体(以下単にディスク媒体と称す)が注目されている。
【0003】
DTR構造のディスク媒体は、表面上が磁気記録部として有効な第1の部分と非有効な第2部分とが形成されている(例えば、特許文献1を参照)。第1の部分は、磁性膜が設けられた凸部の磁性領域である。第2の部分は非磁性領域、または凹部で磁気記録ができない領域である。即ち、第2の部分は、磁性膜が形成されている場合でも、凹部により実質的に非磁性領域として構成された部分である。
【0004】
このようなディスク媒体であれば、パターン転写工程を含むスタンパ製造方法により、通常のサーボトラックライタを使用することなく、サーボデータを高い効率で記録することができる。サーボデータは、第1の部分(例えば1ビット分)と第2の部分とが混在するサーボパターンとして、ディスク媒体上のサーボ領域に記録される(埋め込まれる)。
【0005】
一方、データ領域は、データトラックを構成する第1の部分(磁性領域)と、データトラック間を分離するガード帯を構成する第2の部分(非磁性領域)とから構成されている。従って、ディスク媒体の製造工程において、ディスク媒体上には、データトラックが形成されている。
【特許文献1】特開平8−293110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DTR構造のディスク媒体は、ディスク製造工程時に、サーボデータが記録されたサーボ領域と、データトラックが形成されたデータ領域とを構成することができる。従って、ディスク媒体をディスクドライブに組み込んだ後に、ディスク媒体上にサーボデータを記録するサーボライト工程は不要となる。また、ディスク媒体上には、トラック間の相互干渉を確実に回避できるデータ領域を構成することができる。
【0007】
しかしながら、DTR構造のディスク媒体では、サーボパターンが固定的に記録された状態であるため、サーボ領域には、新たなデータを書き込むことは不可能である。この新たなデータの書き込みとは、例えば、通常のサーボデータのフォーマットに対して、拡張フォーマットを採用して、位置補正情報を追記するような場合である。
【0008】
当然ながら、当該位置補正情報は、ヘッド位置決め制御時に使用されるため、データ領域に記録されるデータとしては不適切である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、DTR構造のディスク媒体において、データ領域の記録データとしては不適切なデータを記録できるディスク媒体及び当該ディスク媒体を使用するディスクドライブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点に従った磁気ディスク媒体は、周方向にサーボデータが記録されたサーボ領域と、ユーザデータが記録されるデータ領域とが隣接して配置されたトラックが設けられた磁気ディスク媒体であって、前記サーボ領域は、磁気記録部として有効な第1の部分と非有効な第2の部分とから構成されたサーボパターンとして前記サーボデータが記録されており、前記サーボ領域と前記データ領域との境界部には、磁気記録部として有効な連続磁性領域が設けられた構成である。
【0011】
また、本発明の観点に従ったディスクドライブは、当該磁気ディスク媒体が組み込まれたドライブであり、データ領域の記録データとしては不適切なデータを連続磁性領域に記録できる構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、データ領域の記録データとしては不適切なデータを、サーボ領域とデータ領域との間に配置さそれた連続磁性領域に記録することができる。従って、例えば通常のサーボデータのフォーマットの拡張フォーマットを採用して、通常のサーボデータ以外の位置補正情報などを追記することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1から図3は、本実施形態に関するディスク媒体1の構造及びフォーマットを説明するための図である。図4、図5、図7及び図9は、本実施形態に関するディスクドライブの構成を説明するためのブロック図である。
【0015】
(ディスク媒体の構成)
本実施形態のディスク媒体1は、図1に示すように、データ領域302が、非磁性領域310のガード帯により、隣接トラックからは磁気的に分離されて、事前に磁性領域311からなるデータトラックとして形成されたディスクリート(またはDTR:discrete track recording)構造である。このようなディスク媒体1は、ディスクリートメディアとも呼ばれるパターンドメディアである。
【0016】
ディスク媒体1は、図3に示すように、1周分のトラックにおいて、例えば100程度のセクタに分割されている。各セクタの先頭領域には、サーボデータが事前に記録されたサーボ領域300が設けられている。サーボデータは、図2に示すように、例えば1ビット分に相当する磁性領域311と非磁性領域310とからなるサーボパターンとして記録されている(埋め込まれている)。
【0017】
ここで、磁性領域311は、磁気記録部として有効な部分であり、磁性膜を有する凸部である。一方、非磁性領域310は、磁性膜を有するが、磁性領域311に対して相対的に凹部であり、磁気記録部として非有効な部分である。但し、非磁性領域310は、非磁性膜からなる場合には、必ずしも凹部である必要はなく、非磁性材が埋め込まれた部分でもよい。
【0018】
サーボ領域300には、基本的に通常のサーボデータと同様に、AGCパターン303、シリンダアドレスコード部304、パッド(PAD)部305、及びサーボバーストパターン306が記録されている。シリンダアドレスコード部304は、マンチェスタ符号が使用されており、磁性領域311を論理“1”とし、非磁性領域310を論理“0”とするパターンである。
【0019】
さらに、本実施形態では、後述する連続磁性領域301を検出するための検出用バーストパターン307が、サーボ領域300に記録されている。この検出用バーストパターン307は、ネガマーク(非磁性マーク)による反転バーストパターンである。
【0020】
連続磁性領域301は、ディスクリート構造のサーボ領域300とデータ領域302との間に配置されて、通常のデータ領域と同様に磁気記録領域として有効な領域である。即ち、連続磁性領域301は、非磁性のガード帯の干渉を受けることがない。本実施形態では、連続磁性領域301は、ヘッドの位置決め制御に使用される位置決め補正情報の記録領域として使用される。
【0021】
位置決め補正情報としては、リード動作時の位置決め補正に使用されるリード用位置決め補正情報308と、ライト動作時の位置決め補正に使用されるライト用位置決め補正情報309とに区別されている。また、連続磁性領域301は、データ領域302とは区別されているため、データ領域302の記録データと位置決め補正情報308,309とが相互に干渉することはない。
【0022】
位置決め補正情報308,309はそれぞれ、例えば8ビットからなるディジタルデータである。連続磁性領域301は、データをデコードするときに振幅と位相を合わせるためのAGCパターン部、データ開始を示すSYC部、及び「データ記録周波数×8ビット×2種類」の情報を記録することができる記憶容量を有する。
【0023】
但し、位置決め補正情報308,309は、8ビットのデータである必要はなく、任意のビット数のデータでよい。また、連続磁性領域301は、AGCパターン部やSYC部を含めて、自由なフォーマットを構成できる。
【0024】
(ディスク媒体の製造方法)
次に、ディスク媒体1の製造方法について、そのプロセスを簡単に説明する。
【0025】
製造プロセスは、転写工程、磁性加工工程、仕上げ工程に大別される。先ず、転写工程に使用するパターンの基となるスタンパの製造方法から説明する。
【0026】
スタンパの製造工程は、描画、現像、電鋳、仕上げに細分化される。パターン描画では、原盤回転型の電子線露光装置を用いて、ディスク媒体で非磁性化させる部位を、レジスト塗布された原盤上に、内周から外周まで露光描画する。
【0027】
次に、これを現像、RIE等の処理を実施して、凹凸パターンを持つ原盤が形成される。この原盤に導電化処理してニッケル(Ni)を表面に電鋳して剥離し、最後に内径/外径を打ち抜き加工することで、Niのディスク状スタンパが形成される。尚、スタンパは、非磁性化させる部位を凸部として形成され、このスタンパを使って、パターンドメディアが製造される。
【0028】
転写工程は、両面同時転写型のインプリント装置を用い、インプリント・リソグラフィー法により転写する。具体的には、垂直記録用ディスク媒体の両表面に、SOGレジスト塗布したディスク媒体を内周穴でチャッキングし、これを裏面用、表面用に準備した2種スタンパで、全面均等押圧で挟み込み、レジスト表面に凹凸転写する。この転写工程により、非磁性化させる部位が、レジストの凹部(310)として形成される。
【0029】
次に、磁性加工工程で、まず凹部レジストを除去し、非磁性化させる部位の磁性体表面を出現させる。この状態では、磁性層を残す部位は、二酸化珪素(SiO2)が凸部(311)として形成された状態になる。ついで、このSiO2をガード層としてイオンミリングすることで、凹部に位置する磁性層のみが除去され、所望のパターンの磁性体に加工される。
【0030】
さらに、SiO2を十分な厚さとなる様にスパッタして表面凹凸をなくし、これを磁性層表面まで逆スパッタする事で、凹部を非磁性体で埋め込み平坦化したパターンドメディアができあがる。
【0031】
最後の仕上げ工程では、この表面平坦度をさらに研磨仕上げして、DLC保護層を形成し、潤滑用ルブを塗布する事で、本実施形態のディスク媒体1が完成する。
【0032】
(ディスクドライブの構成)
本実施形態のディスクドライブは、図4に示すように、ディスク媒体1と、スピンドルモータ(SPM)2と、ヘッド3と、アクチュエータ4と、ヘッドアンプIC6とを含むヘッドディスクアセンブリ(HDA)100、及びプリント回路基板(PCB)200を有する。
【0033】
ディスク媒体1は、前述したように、両面をDTR用に加工した垂直磁気記録の可能な2層構造のパターンドメディアである。ヘッド3は、リードヘッド(例えばGMR素子)30とライトヘッド(例えば単磁極ヘッド)31とが同一スライダ(ABS)上に実装されたものであり、ディスク媒体1の両面のそれぞれに設けられている。即ち、ヘッド3は、ディスク媒体1の上下面のそれぞれに、ダウンヘッド及びアップヘッドとして設けられている。
【0034】
HDA100では、ディスク媒体1は、スピンドルモータ2に取り付けられて回転される。アクチュエータ4は、ヘッド3の移動機構であり、ヘッド3を保持するサスペンション・アーム41と、当該アーム41を回転自在に支持するピボット軸42と、ボイスコイルモータ(VCM)43とを有する。VCM43は、当該アーム41にピボット軸42を回転中心とする回転トルクを発生させて、ヘッド3をディスク媒体1の半径方向に移動させる。
【0035】
ヘッドアンプIC5は、ヘッド3の入出力信号を増幅するためのドライバであり、フレキシブルケーブル(FPC)を介してPCB200と電気的に接続されている。尚、ヘッドアンプIC5は、ヘッド3の入出力信号のSN比の低減化のために、アーム41上に実装される構成が好ましいが、ドライブ本体に固定された構成でも良い。
【0036】
ディスク媒体1は、前述したように表裏があり、ヘッド移動軌跡と、サーボ領域300のサーボパターンの円弧形状が略一致する方向に組み込まれる。ディスク媒体1の仕様は、基本的には通常の例えば垂直磁気記録用ディスク媒体と同様である。但し、サーボ領域300は、ディスク回転中心からピボッド中心までの距離を半径位置として持つ円周上に円弧中心を持ち、円弧半径がピボッド軸42からヘッド3までの距離として形成された円弧形状である。
【0037】
PCB200は、主として4つのシステムLSIを搭載している。即ち、リード/ライト(R/W)チャネルIC6、マイクロプロセッサ(CPU)7、ディスクコントローラ(HDC)8、及びモータドライバIC9である。
【0038】
CPU7は、ディスクドライブのメイン制御装置であり、本実施形態に関するヘッド位置決め制御システムを実現する。なお、CPU7は、動作用ソフトウェア(制御プログラムなど)を保存しているROM、ワークメモリとして使用されるRAM、及びロジック回路を含むものとする。ロジック回路は、ハードウェア回路で構成された演算処理部であり、高速演算処理に用いられる。
【0039】
HDC8は、ディスクドライブとホストシステム(例えばパーソナルコンピュータ)とのインターフェースや、リード/ライトチャネルIC6とのデータ転送制御、及びCPU7、モータドライバIC9との情報交換等を行なう。
【0040】
リード/ライトチャネルIC6は、リード/ライト動作に関連するリード/ライト信号処理部であり、ヘッドアンプIC5のチャネル切替えや、サーボデータ及びユーザデータの記録再生処理を行なう貯めの各種回路を含む。
【0041】
モータドライバIC9は、SPM2及びVCM43を駆動制御するドライバICであり、SPM2の回転駆動制御、及びCPU7からの操作制御量を電流値としてVCM43に与えて、アクチュエータ4を駆動する。
【0042】
(リード/ライトチャネルIC)
リード/ライトチャネルIC6は、図5に示すように、イコライザ(等化器)61と、A/Dコンバータ62と、ディジタルフィルタ(FIR)63と、ビタビデコーダ64と、サーボデコーダ65とを有するリードチャネル(再生処理系)を有する。
【0043】
イコライザ61は、ヘッドアンプIC5から出力されるリード信号RSを入力して、アナログフィルタ処理(長手磁気記録での等化処理)を実行する。リード信号RSは、リードヘッド30により、例えばサーボ領域300から読出された信号波形である。
【0044】
A/Dコンバータ62は、イコライザ61により等化処理されたリード信号をデジタル値としてサンプリングし、FIR63に出力する。
【0045】
ここで、本実施形態のディスク媒体1からの漏れ磁界は、垂直磁化で、かつ、磁性領域311と非磁性領域310とが混在するパターンである。リード/ライトチャネルIC6では、リード信号波形は、ヘッドアンプIC5が有するハイパス特性と、イコライザ61による等化処理とにより、DCオフセット成分が完全に除去されて、ほぼ疑似正弦波となる。ここで、通常の垂直磁気記録用ディスク媒体と比較して、本実施形態のディスク媒体1では、リード信号振幅の大きさが半減している。
【0046】
尚、本ディスク媒体1のようなパターンドメディアに限るものではないが、サーボ領域300の漏れ磁束方向をどちらに取るかで、“1”,“0”を誤認して、チャネルIC6でのコード検出が失敗することが有る。このため、ヘッド極性は、パターン漏れ磁束に合わせて適正に設定される必要がある。
【0047】
チャネルIC6では、その再生信号フェーズに応じて、その処理を切替える。再生信号クロックをディスク媒体1のパターン周期に同期させる同期引込み処理、セクタシリンダコード情報を読み取るアドレス判読処理、オフトラック量を検出するサーボバーストパターン306の処理等が実行される。
【0048】
A/Dコンバータ62では、デジタル値をサンプリングするタイミングを、正弦波形状のリード信号と同期させて、かつ、デジタルサンプル値の信号振幅をあるレベルに揃えるAGC処理とが実行される。A/Dコンバータ62は、パターンの“1”,“0”周期を4点でサンプリングする。
【0049】
サーボ領域300のアドレス情報304の再生処理では、チャネルIC6は、デジタルサンプル値をFIR63でノイズを低下させ、ビダビデコーダ64での最尤推定に基づくビタビ復号処理を実行する。サーボデコーダは、ビダビデコーダ64からの検出結果に基づいて、グレイコード逆変換処理を実行し、セクタ及びトラック(シリンダ)情報に変換する。これにより、CPU7は、ヘッド3の位置決め制御に必要なサーボトラック情報(トラック位置情報)が取得できる。
【0050】
さらに、チャネルIC6は、サーボバーストパターン306でのオフトラック量の検出処理に移行する。チャネルIC6は、サーボバースト信号パターンA,B,C,Dの順に、各信号振幅をサンプルホールド積分処理する。そして、チャネルIC6は、平均振幅相当の電圧値をCPU7に出力し、CPU7へのサーボ処理割込みを発行する。CPU7は、当該サーボ割込みを受けると、内部のA/Dコンバータにより各バースト信号を時系列に読み込み、ロジック回路に含まれるデジタル信号プロセッサ(DSP)でオフトラック量に変換する処理を行なう。CPU7は、当該オフトラック量と、サーボトラック情報とにより、ヘッドのサーボトラック位置を精密に検出する。
【0051】
(位置決め制御時の位置補正動作)
図6は、本実施形態に関する連続磁性領域301に記録される位置決め補正情報308,309を使用する位置補正動作を説明するための図である。
【0052】
通常のサーボトラックライタによりサーボデータをディスク媒体上に記録するときに、振動的に書き込まれてしまうため、うねった軌跡となり、真円状の理想トラック400に対して、実トラック401は誤差のある形状となる。
【0053】
本実施形態は、前述したように、サーボトラックライタではなく、サーボデータを転写成形するパターンドメディアを使用するが、パターン成形時に誤差が生じ、実トラック401は誤差のある形状となる。従って、このような実トラック401に対して、ヘッド3を追従させると、ディスク媒体1の回転に同期した位置決め誤差402が生じてしまう。
【0054】
そこで、ディスクドライブでは、この位置決め精度の劣化を改善するために、ヘッド位置決め制御時に位置補正を実行する。本実施形態では、ディスク媒体1上の連続磁性領域301に、位置決め補正情報308,309を記録する。そして、目標トラックのヘッド位置決め時に、目標トラックで再生された当該位置決め補正情報308,309に基づいて、ヘッド3の位置補正を実行する。この位置補正は、トラックへの位置決め誤差を相殺するため、位置決め目標を逆オフセットさせるための補正量をデータ(位置決め補正情報308,309)として記録する。
【0055】
図7は、当該位置補正を実行するための制御システムの要部を示すブロック図である。
【0056】
制御システムは、位置決め補正部507と、補正情報記録部508と、補正情報計算部509とを有し、具体的にはCPU7及び制御ソフトウェアから構成される。なお、制御システムのフィードバック制御コントローラ505及び制御対象であるプラント(VCM43)506については後述する。
【0057】
補正情報計算部509は、位置補正を実行しないときの位置誤差を補正するために、連続磁性領域301に記録するための記録データを設定する。この記録データとは、リード用位置決め補正情報308とライト用位置決め補正情報309である。
【0058】
この位置決め補正情報308,309は、位置補正を実行しないときの位置決め誤差402に対して補正制御を行うためのデータであり、トラックへの位置決め誤差402を相殺するために位置決め目標をオフセットさせるための補正量である記録データ(補正情報309,309)を、位置誤差情報510と再生信号情報511から計算する。
【0059】
この補正情報の計算は、一例としてテスト信号をデータトラックに記録して、再生信号のエラー率が最も小さくなるヘッド位置から決定する方法がある。ただし、この形態に限定するものでなく、適切な補正情報を求めることが可能な方法であればよい。
【0060】
補正情報記録部508は、補正情報計算部509により設定された位置決め補正情報308,309を、ディスク媒体1の連続磁性領域301に記録する。このとき、補正情報記録部508は、サーボ領域300やデータ領域302に影響することなく、連続磁性領域3301にのみ記録を行う。補正情報として、Nセクタを補正する情報を、(N−1)セクタに記録する。
【0061】
位置決め補正部507は、ヘッド3を目標トラック(RP500)に位置決めする位置決め制御中に、連続磁性領域301に記録された補正情報308または309を再生し、この情報308または309に基づいて位置補正を行う。
【0062】
具体的には、位置決め補正部507は、フィードバック制御された位置誤差(E1)501を入力し、補正情報308または309を使用して位置補正処理を実行する。位置決め補正部507は、位置補正処理により算出した位置誤差(E2)502をコントローラ505に出力する。コントローラ505は、当該位置誤差(E2)502を解消するように、プラント(VCM43)506を駆動制御して、リードヘッド30またはライトヘッド31の位置調整を実行する。
【0063】
ここで、位置決め補正部507は、Nセクタの位置決め制御を行う時には、(N−1)セクタに記録された補正情報を読み込み、この補正情報に基づき位置決め制御を補正する。なお、図7では、フォードバック制御系により位置決め制御を実行する例を示したが、フィードフォワード制御を兼用したシステムに関しても同様である。
【0064】
次に、図8を参照して、リード動作時でのリードヘッド30の位置決め制御と、ライト動作時でのライトヘッド31の位置決め制御について説明する。なお、図8において、符号600は、トラックの中心線を意味する。また、符号601は、トラック間のガード帯310の中心線を意味する。
【0065】
前述したように、ヘッド3は、ディスク媒体1へのデータの書き込みに用いるライトヘッド31と、ディスク媒体1からのデータの読み出しに用いるリードヘッド30とを同一スライダに実装された複合ヘッド構造である。
【0066】
ロータリ型のアクチュエータ4では、複合ヘッド3は、アクチュエータ4の先端に支持されて、ディスク媒体1上のトラックを横切る径方向に移動して位置決めされる。ヘッド3では、ライトヘッド31とリードヘッド30とが分離配置されているため、一般にデータ書込み時のライトヘッド31のライト中心位置(点線)と、データ読出し時のリードヘッド30のリード中心位置(点線)は、ずれて不一致である。
【0067】
このため、リード動作時とライト動作時のそれぞれにおいて、リードヘッド30とライトヘッド31での位置決め補正が必要となる。そこで、リード動作時に使用するリード用位置決め補正情報308と、ライト動作時に使用するライト用位置決め補正情報309とを、それぞれ区別して連続磁性領域301に記録する。そして、位置決め補正部507は、リード動作時とライト動作時の実行状態に従って、それぞれに応じたリードヘッド30とライトヘッド31の位置決め補正を実行する。
【0068】
(ヘッド位置決め制御システム)
ディスクドライブは、図9に示すようなヘッド位置決め制御システムを組み込んでいる。ヘッド位置決め制御システムは、CPU7、ソフトウェア及びリード/ライトチャネルIC6により実現される。以下、図5も合わせて参照して、ヘッド位置決め制御システムを簡単に説明する。
【0069】
図9において、C,F,P,Sはそれぞれシステム構成要素の伝達関数を意味する。制御対象プラント(P)506は、狭義にはVCM43であり、広義にはVCM43を含むアクチュエータ4に相当する。信号処理部Sは、具体的にはリード/ライトチャネルIC6と、CPU7(オフトラック量検出処理の一部を実行する)により実現される要素である。フィードバックコントローラ(以下第1コントローラ)505及び同期抑圧補償部(第2コントローラ)512は、具体的にはCPU7及びソフトウェアにより実現される。
【0070】
信号処理部Sは、プラント506の駆動に応じたヘッド3の位置(HP)直下のサーボ領域300からのアドレス情報等を含むサーボ再生信号に基づいて、ディスク媒体1上のトラック現在位置(TP)情報を生成する。
【0071】
第1コントローラ505は、ディスク媒体1上の目標トラック位置(RP)とヘッドの現在位置(TP)との位置誤差(E)とに基づいて、位置誤差(E)を解消するようにFB操作値U1を算出する。
【0072】
第2コントローラ512は、ディスク媒体1上のトラック形状やディスク回転に同期した振動等を補正するためのフィードフォワード(FF)補償部であり、事前に較正した回転同期補償値をメモリテーブルに保存している。第2コントローラ512は、通常では位置誤差(E)を使用せず、信号処理部Sから与えられる図示しないサーボセクタ情報に基づいて当該メモリテーブル参照して、FF操作値U2として算出する。
【0073】
制御処理部は、第1及び第2のコントローラ505,512からの出力U1及びU2を加算し、制御操作値Uとしてプラント506に供給する。具体的には、HDC8は、CPU7からの制御操作値Uを、モータドライバIC9を介してVCM43に供給し、ヘッド3を駆動制御する。
【0074】
尚、同期補償値テーブルは、初期動作時に較正処理されるが、位置誤差(E)が設定値以上に大きくなると再較正処理を開始し、同期補償値を更新する処理がなされる。
【0075】
次に、リードヘッド30からの再生信号を使用して、どのように位置偏差を検出するかを、図5を参照して簡単に説明する。
【0076】
ディスク媒体1は、SPM2により一定回転速度で回転している。ヘッド3は、サスペンション・アーム41に設けられたジンバルを介して弾性支持されている。このとき、ヘッド3は、ディスク回転に伴なう空気圧とのバランスで、ディスク媒体1との微小隙間を保持する様な浮上姿勢をとるように設計されている。これにより、リードヘッド30は一定の磁気空隙をもって、ディスク媒体1の磁性層からの漏れ磁束を検出する事ができる。
【0077】
ディスク媒体1上のサーボ領域300の記録信号は、ディスク媒体1の回転により、一定周期でヘッド3直下を通過することになる。ヘッド位置決め制御システムは、リードヘッド30から出力されるサーボ領域300の再生信号から、トラック位置情報を検出することで一定周期のサーボ処理(位置決め制御)を実行できる。
【0078】
HDC8は、一旦、サーボマークと呼ぶサーボ領域300の識別フラグを認識すると、一定周期のため、ヘッド3直下にサーボ領域300が来るタイミングを予測可能となる。そこで、HDC8はヘッド3直下にプリアンブル部が来るタイミングで、チャネルIC6にサーボ処理開始を促す。
【0079】
以上のように本実施形態によれば、ディスク媒体1上のサーボ領域300とデータ領域302との間に、連続磁性領域301を配置して、データ領域302に記録するには適さないデータ(情報)を記録することができる。本実施形態では、連続磁性領域301には、サーボ領域300に記録されているサーボデータに関連し、位置決め補正情報308,309が記録される。この位置決め補正情報308,309は、ディスクドライブの組み立て工程時に記録することができる。
【0080】
このような本実施形態の構成であれば、特に、DTR構造のディスク媒体1を組み込むディスクドライブにおいて、データ領域302に記録するデータとしては適さない位置決め補正情報308,309を、サーボ領域300に隣接する領域に記録することができる。
【0081】
従って、ヘッド位置決め制御時に、当該位置決め補正情報308,309を使用する位置補正を実行することにより、データ領域302のDTRトラックの中心に対して、リードヘッド30又はライトヘッド31を高精度に位置決めすることが可能となる。
【0082】
換言すれば、本実施形態の構成は、ライト動作時又はリード動作時での位置補正値を補正情報308,309として、サーボ領域300のフォーマットを拡張した拡張フォーマットで記録することができる。この位置補正値は、理想トラック位置からの偏差を補正するために使用される情報であり、サーボ領域300のアドレスコード等と同様にして再生することができる。これにより、ヘッド位置決め制御時に、ライト動作及びリード動作のそれぞれに応じた位置補正を行うことで、結果として位置決め精度を改善することが可能となる。
【0083】
以上要するに、パターンドメディアであるディスク媒体1を使用するディスクドライブにおいて、DTR構造の効果を十分に発揮できると共に、位置決め補正情報を使用してヘッド位置決め制御時の位置決め精度を改善することができるため、結果として記録再生エラー率を改善したディスクドライブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に関するディスク媒体の構造及びフォーマットを説明するための図。
【図2】本実施形態に関するディスク媒体の構造を説明するための図。
【図3】本実施形態に関するディスク媒体のフォーマットを説明するための図。
【図4】本実施形態に関するディスクドライブの構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に関するリード/ライトチャネルの要部を示すブロック図。
【図6】本実施形態に関する位置補正を説明するための図。
【図7】本実施形態に関する位置補正を実行する制御システムの要部を示すブロック図。
【図8】本実施形態に関するヘッド位置決め動作を説明するための図。
【図9】本実施形態に関するヘッド位置決め制御システムを説明するためのブロック図。
【符号の説明】
【0085】
1…ディスク媒体、2…スピンドルモータ(SPM)、3…ヘッド、
4…アクチュエータ、5…ヘッドアンプIC、6…リード/ライトチャネルIC、
7…マイクロプロセッサ(CPU)、8…ディスクコントローラ(HDC)、
9…モータドライバIC、30…リードヘッド、31…ライトヘッド、
41…サスペンション・アーム、42…ピボット軸、
43…ボイスコイルモータ(VCM)、100…ヘッドディスクアセンブリ(HDA)、
200…プリント回路基板(PCB)、300…サーボ領域、301…連続磁性領域、
302…データ領域、310…非磁性領域、311…磁性領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向にサーボデータが記録されたサーボ領域と、ユーザデータが記録されるデータ領域とが隣接して配置されたトラックが設けられた磁気ディスク媒体であって、
前記サーボ領域は、磁気記録部として有効な第1の部分と非有効な第2の部分とから構成されたサーボパターンとして前記サーボデータが記録されており、
前記サーボ領域と前記データ領域との境界部には、磁気記録部として有効な連続磁性領域が設けられた構成であることを特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項2】
前記サーボ領域は、
前記第1の部分が磁性膜を有する部分であり、前記第2の部分が非磁性部分であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク媒体。
【請求項3】
前記サーボ領域は、
前記第1の部分が1ビット分の磁気記録部であり、前記第2の部分が1ビット分の非磁気記録部から構成されるサーボパターンが記録された領域であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の磁気ディスク媒体。
【請求項4】
前記データ領域は、
データの磁気記録部として有効なデータ記録部と、隣接するトラック間を分離するための領域でデータの磁気記録部として非有効な分離部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク媒体。
【請求項5】
前記連続磁性領域は、
前記サーボ領域から再生した前記サーボデータに従ってヘッド位置決め制御を実行するときに、位置補正処理に使用する位置補正情報が記録される領域であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク媒体。
【請求項6】
前記連続磁性領域は、
前記サーボ領域から再生した前記サーボデータに従ってヘッド位置決め制御を実行するときに、リード動作時の位置補正処理に使用するリード用位置補正情報及びライト動作時の位置補正処理に使用するライト用位置補正情報が記録される領域であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク媒体。
【請求項7】
周方向にサーボデータが記録されたサーボ領域と、ユーザデータが記録されるデータ領域とが隣接して配置されたトラックが設けられた磁気ディスク媒体であって、前記サーボ領域は、磁気記録部として有効な第1の部分と非有効な第2の部分とから構成されたサーボパターンとして前記サーボデータが記録されており、前記サーボ領域と前記データ領域との境界部には、磁気記録部として有効な連続磁性領域が設けられた構成の磁気ディスク媒体と、
前記磁気ディスク媒体からデータを読出すリードヘッドと、前記磁気ディスク媒体にデータを書き込むライトヘッドとを含むヘッドと、
前記リードヘッドにより前記サーボ領域から再生した前記サーボデータに従って、前記ヘッドの位置決め制御を実行する第1の制御手段と、
前記ヘッドにより前記連続磁性領域にデータを書き込む、またはデータを読出す処理を制御する第2の制御手段と
を具備したことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記第2の制御手段は、
前記ヘッドの位置決め制御を実行するときに、位置補正処理に使用する位置補正情報を、前記ライトヘッドを使用して前記連続磁性領域に記録する処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記第2の制御手段は、
前記ヘッドの位置決め制御を実行するときに、リード動作時の位置補正処理に使用するリード用位置補正情報及びライト動作時の位置補正処理に使用するライト用位置補正情報を、前記ライトヘッドを使用して前記連続磁性領域に記録する処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記サーボ領域は、
前記第1の部分が磁性膜を有する部分であり、前記第2の部分が非磁性部分であることを特徴とする請求項7に記載の磁気ディスク装置。
【請求項11】
前記データ領域は、
データの磁気記録部として有効なデータ記録部と、隣接するトラック間を分離するための領域でデータの磁気記録部として非有効な分離部とを含むことを特徴とする請求項7に記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−31846(P2006−31846A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210453(P2004−210453)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】