説明

磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法、オフセット補正方法及びその方法を適用した磁気ディスク装置

【課題】高TPI磁気ディスク媒体やDTM/BPMの磁気ディスク媒体において、オフセット補正値測定方法を提供する。
【解決手段】各位置情報エリアについて、オントラック制御しながら、ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、リードコアによってトラックから読み出した仮のオフセット測定用データの出力レベルが最大値となる半径方向の位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながらRRO補正情報を学習する段階と、前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記測定対象のトラックからオフセットさせて、前記学習したRRO補正情報によってRRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態でRRO位置誤差値がゼロになるオフセット補正値を算出する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状記録媒体、特にDTM(ディスクリート・トラック・メディア)やBPM(ビット・パターンド・メディア)のような予め磁気媒体上に位置情報が形成されている磁気媒体を搭載した磁気ディスク装置、及び高トラック密度(高TPI)の磁気ディスク媒体を搭載した磁気ディスク装置に適した、オフセット補正値測定方法、オフセット補正方法及びその方法を適用した磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なディスク状記録媒体を使用した記憶装置、例えばHDD(ハード・ディスク・ドライブ)のようなディスク駆動装置における磁気記録メディアには、一様な位置情報が記録されており、それを基準として位置制御を行っている。更に、現在一般的な記録再生用磁気ヘッドは、スライダにおけるリードコア(リードヘッド/読み出しヘッド)とライトコア(ライトヘッド/書き込みヘッド)の形成位置が異なっている。従って、回転型ポジショナーで位置付けを行う場合、回転半径の何れかの位置に位置付けすると、リードコアとライトコアのディスク状記録媒体に対する相対的な半径位置が異なってくる。位置付け情報はリードコアでのみしか読み出せないため、対象トラック位置にリードコアを位置付けする場合とライトコアを位置付ける場合とでは、リードコアで読む位置情報が異なることになる。その場合でも、特にライトコアに対して正確な位置制御ができるようにしなければならない。ここで正確な位置制御とは、リードコアが通る軌跡とライトコアが通る軌跡が、ある条件、例えば、書き込まれたデータが正確に読み出せて、かつ両側のトラックにデータを書き込んでも中央のトラックのデータが消されないこと、が成立する状況で殆ど同一の軌道を通るように制御されていることを示す。前記の条件が成立する範囲では、リードコアが通る軌道とライトコアが通る軌道が完全に重ならなくてもよい。当然、ディスク状記録媒体上に存在する利用可能な全てのトラックで成立する必要があることはいうまでもない。なお、オフセット補正とは、ここで説明した、リードコアとライトコアのディスク状記録媒体に対する相対的な半径位置を補正し、双方のヘッドコアが同じトラック軌道を通るように補正することをいうものとする。
【0003】
従来、正確なリードコアとライトコアのオフセット補正方法として、トラック単位で一つのオフセット補正値を持つ場合や、複数トラックで一つのオフセット補正値のみを持つ方法しか知られていない。この従来の方法は、トラック上の最小単位であるサーボセクタ単位の位置情報の補正に関しては別の方法で行う必要があるので、通常、偏心補正、又はRRO(リピータブル・ラン・アウト)補正、主に次数の低い偏心で且つ連続トラックで同じ偏心特性になるような場合が補正対象や、ZAP(ゼロ・アクセラレート・パス)制御、主に次数の高い偏心で、トラック毎に発生次数や偏心の位相及び振幅が異なるような場合が補正対象等の場合に使用されている(特許文献2乃至4)。しかし、従来の補正方法は、同心円上に形成されている位置情報が真円に近い相似形であるという前提の上で成り立っていた。ディスク状記録媒体において今後の更なるトラックの高密度化(高トラック密度(TPI/トラック・パー・インチ)化)や、DTM/BPM等のように予め磁気媒体上に位置情報を形成することが実施されれば、補正対象となるトラックの真円に近い相似形が局所的に又は全体的に崩れる状況が想定されるため、従来の補正方法では補正可能な許容範囲を超える事態が想定される。即ち、段落<0002>で説明した前記条件の許容範囲を超えてしまい、リードコアとライトコアの軌道が重ならなくなり、正確にトラックのデータが読み出せない事態が発生する可能性がある。
【0004】
一方、ハードディスク駆動装置等のディスク状記録媒体を利用したディスク駆動装置では、その記録密度向上を目的としたディスク状記録媒体のトラックの高密度化が求められている。このトラックの高密度化に従って位置制御の高精度化が要求されるが、ディスク状記録媒体を利用したディスク駆動装置では、その装置の物理的な制約から、ある決まった量の誤差や変動が必ず偏心の形で発生し、その要求精度が高くなるに従って、相対的に大きくなる偏心等の問題が深刻化する。この偏心は、ディスク駆動装置出荷前に行われるSTW(サーボ・トラック・ライト)時又はDTM/BPM等の製造過程で形成される埋め込みサーボ信号の形成時、及びディスク駆動装置へのディスク状記録媒体を実装する際のディスク状記録媒体中心軸ずれ等の理想軌道(真円)から逸脱した状態の軌道を意味し、偏心の量即ち大きさは、ディスク状記録媒体を利用したディスク駆動装置の製造方法や、ディスク状記録媒体を利用したディスク駆動装置の物理的な寸法から、自動的にある程度決定される場合が殆どである。このように、偏心(RRO)の大きさは、物理的な制約で大きさが決まってくるため、高トラック密度になったとしてもそれに比例する形式では低減されない。即ち、高トラック密度でも偏心(RRO)の絶対値は殆ど変化しない。
【0005】
この偏心を見かけ上小さくするため、ディスク駆動装置出荷前の試験工程の初期において、例えば以下の処理が行われている。先ず、ディスク状記録媒体の予め決められた特定のトラック(データエリア)上でサーボ復調により得られた位置情報に対してディスク駆動装置のDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)にてDFT(離散フーリエ変換)等を施すことで必要な偏心補正量を求める。そしてこの偏心補正量はDSPのメモリー上で偏心補正テーブルとして格納され、この偏心補正テーブルは更にフラッシュROM等に格納される。そして、ディスク駆動装置を次回起動する際にこのフラッシュROM等からこの偏心補正テーブルを読み出し、DSPのメモリーに転送し、DSPでこの偏心補正テーブルを基に偏心補正制御を行う。その結果、各記録再生用磁気ヘッドにつき、全シリンダを通して安定なオントラック動作を可能にしていた。なお、この偏心補正制御のことをRRO追従制御といい、ここでいう追従の意味は常にRROを学習して、最新のRROに追従するということを示す。また、RRO補正情報の学習を行わず、常に固定のRRO補正情報で動作する偏心補正制御のことをRRO制御といい、RRO追従制御とは別に定義する。
【0006】
このようなディスク状記録媒体のトラックの偏心は、様々な要因から多くの次数成分(周波数成分)を含んでいる。このうち一次成分、二次成分などの低次偏心は、現在オントラックしているトラックの隣のトラックにヘッドを移動させてもその振幅成分や位相成分に殆ど変化は表れない。しかしながら次数が高くなるに従って偏心は、オントラック対象トラックを隣のトラックに移動したのみでその振幅成分や位相成分が大きく変化する場合がある。このように偏心の振幅成分や位相成分が変化した場合、この変化に追従することが学習により可能であったとしても、追従には数十回転の学習が必要なため、制御動作上適切なタイミングで偏心補正が出来なくなる虞がある。このような場合、学習が終了するまでは記録再生用磁気ヘッドの位置制御を行うために適切な電流をVCM(ボイス・コイル・モータ)に流すことができず、その結果、RRO追従制御を行っても正常にトラックの追従が実施出来なくなり、特定トラック上に記録再生用磁気ヘッドを素早く正確に位置付けることが困難となる。よって、記録再生用磁気ヘッドを正確に位置付けるまでに常に長い時間が必要となり、HDDが提供する高速アクセスという機能が失われることになる。更に、オントラック軌道で異なる偏心の振幅成分や位相成分に追従した場合、リードコアとライトコアを同じトラックに位置付けるときのリードコアの軌道は異なるため、それぞれの異なった偏心にRRO追従制御させてしまうと、リードコアの軌道とライトコアの軌道が重ならず、正確に書き込んだデータの読み出しができないことが想定される。
【0007】
前記問題点を解決するために、ディスク状記録媒体が従来の連続膜の場合は、ディスク状記録媒体の各トラック、記録再生用磁気ヘッドに対応した偏心キャンセル値テーブル、例えばZAP制御で使用する偏心キャセル値をディスク状記録媒体上のユーザ領域や位置情報の特定エリアに、位置情報とは異なる補正情報として記録するようにし、MPU(マイクロ・プロセッシング・ユニット)やDSPによる高次のRRO補正を行わないようにして、このZAP制御を行って順次書き込み(シーケンシャルライト)や順次読み出し(シーケンシャルリード)機能動作時に、及びランダム読出しや書き込み機能動作時おける安定的ヘッド位置制御、或いは前記機能動作時におけるオフトラック発生時に早期リトライ復旧を実現する方法が提案されている(特許文献1乃至4)。これらの方法は、リードコアとライトコアの軌道を、データの読み出しと書き込みで問題とならないように、殆ど同一の真円に近い相似形にすることが目的で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-92980号公報
【特許文献2】特表2002-544639号公報
【特許文献3】特表2003-505818号公報
【特許文献4】特表2003-531451号公報
【特許文献5】特開2005-166115号公報
【特許文献6】特開2005-166116号公報
【特許文献7】特開2008-16065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、前記特許文献1乃至4に記載された方法は、トラック幅、トラック間隔が、全てのトラックが真円に近い相似形であることが前提となっている。しかし、今後ますます高トラック密度化やDTM/BPMの導入が実施されると、真円に近い相似形のトラック形状の軌道が保証できない事態が発生する。その場合は、真円に近い相似形の軌道から逸脱した部分だけを補正する従来の補正方法(RRO追従制御法やZAP制御法)では、全てのトラックでのリード動作/ライト動作が保証できなくなる。更に、ZAP制御法は、ディスク状記録媒体が従来の連続膜で且つ真円に近いトラック形状の軌道の場合に限るため、今後実用化されると予想されるDTMやBPM等では使用できない。
【0010】
HDDは、大容量化を目指し高トラック密度化を追求しているが、高トラック密度を実現するためには、データを記録するトラック情報を正確に把握するために、位置情報を磁気ディスク媒体に正確に形成する必要がある。この位置情報の形成には、装置自体が書き込むセルフSTW方式、位置情報を記録する専用設備(STW機)を使用する方式、予め位置情報が記録されたスタンパーを使用して磁気転写を利用する方式、磁気ディスク媒体の製造過程で位置情報を形成する方式等が知られている。この位置情報は、従来までのトラック密度(TPI)の磁気ディスク媒体では前記の背景技術で説明した偏心補正を行うことで、回転中心からの偏心成分を補正して実際の位置制御に使用していたが、今後更なる高トラック密度化が実施されると、従来の補正方法(RRO追従制御法やZAP制御法)では、正確な位置制御、つまりリード動作/ライト動作を実施する対象トラックのセンターにリードコア/ライトコアをそれぞれ正確に位置付けることができなくなる。
【0011】
正確な位置制御ができなくなる原因は、従来の補正の前提条件である、全てのトラックが形状はどうであれ必ず真円に近い相似形になっていることが真として各種補正が実施されているためである。そのため、高トラック密度化などで起こる可能性のある真円度の崩れや相似形の崩れが発生した場合、従来の補正技術では正確な位置制御ができなくなることは自明である。ZAP制御法は制御対象のトラック軌道が真円に近いことが前提として、RRO追従制御法は制御対象トラック群のトラック軌道が相似形であることが前提として、それぞれの補正が実施されているからである。
【0012】
この問題が顕著に表れる媒体としては、予めデータを書き込むトラックが形成されているDTMやBPMが知られている。DTMやBPMは、トラック形成時に位置情報も同時に形成されるため、ディスクリートトラックと位置情報の関係は一義的に決まる関係が形成されるが、各トラックを可及的に真円に近い相似形に形成しようとしても、DTMやBPM用のひな型を製造する過程は超微細加工が必要なため、一面の情報を作成するのに必要な時間は数日から数週間とされていて、多種多様な外乱(温度変化や振動等)が加わる状況にあるために、真円に近い相似形のトラックを形成することが事実上不可能となっている。この作成時間は、高トラック密度になれば更に長くなる。即ち、ディスクリートトラック用のひな型は、超微細加工が必要なため、位置情報の形成時は超低速回転で作成する必要がある。そのため、書き始めと書き終わり、更に書き込み途中などで環境が大きく変化する可能性があること、超低速回転で位置情報を書き込むために回転方向の慣性力が期待できず、形成された位置情報は左右(半径方向)に迷走しながら書き込まれることになりうねり等が刷り込まれ、真円度などが場所(円周方向や半径方向)によって大きく悪化する問題が発生する。
【0013】
その結果、形成されたトラックは、真円に近いトラック軌道が保証できず、うねりが場所によって異なる状態になるため、トラック間の相似形も保証できなくなり、従来のRRO追従制御法では、対象となるトラックの偏心補正を正確に行おうとすると、目標トラックが変わる度に、偏心の学習をその都度行う必要が発生するため、HDDで必要な高速アクセスができないことになる。即ち、トラック毎に異なるRRO追従制御を行う必要があるため、従来のRRO追従制御法では高速アクセスが不可能な状況となる。更にそれが原因でリードコアとライトコアのオフセット補正についても、リードコアとライトコアを同じ目標トラックに位置付けるとき、それぞれでリードコアが存在する位置が異なるが、この異なる位置が原因で発生する偏心が違ってくるため、従来のトラック単位で一つのオフセット補正値を持つ方法や、複数トラックで一つのオフセット補正値のみを持つ方法では異なる偏心成分の差に対応できない状況になっていた。なお、この場合、リードコアとライトコアを同じ目標のトラックに位置付けるとき、それぞれでヘッドのヨー角が異なるが、このヨー角の相違に相当する分で発生する偏心量の変化分については計算で求めることが可能であるため、この明細書では予め補正されているものとして説明する。それらの具体的な実施方法は、特許文献7に記載されている。
【0014】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたものであって、高トラック密度の磁気ディスク媒体やDTM/BPMのように真円に近い相似形のトラックの形成が困難な磁気ディスク媒体においても、正確にトラックのセンターに位置付けて、リード動作やライト動作が正確に実施できるオフセット補正値測定方法、オフセット補正方法及びその方法を適用した磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決する本発明は、同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながらRRO補正情報を学習する段階と、前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記測定対象のトラックからオフセットさせて、前記学習したRRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、前記RRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態でRRO位置誤差値がゼロになるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことに特徴を有する。
【0016】
本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法にあっては、前記オフセット補正値を、トラッキングサーボ制御しながらRRO位置誤差値を測定し、前記RRO位置誤差値を時間領域から離散フーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域のRRO位置誤差値をトラッキングサーボ制御に入力される位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含むことが実際的である。
【0017】
本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法の別の態様は、同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながら第1RRO補正情報を学習する段階と、前記リードコアを前記第1RRO補正情報を学習したトラックから前記仮のオフセット補正値だけオフセットさせてRRO追従制御しながら第2RRO補正情報を学習する段階と、前記リードコアを前記第1RRO補正情報を学習したトラックから前記仮のオフセット補正値だけオフセットさせてRRO追従制御しながら第2RRO補正情報を学習する段階と、前記学習した各トラック及びオフセットさせたトラックの2つの第1、第2RRO補正情報から前記ライトコアをそれぞれのトラックに位置付けたときのトラック軌道を計算により算出して、この算出したトラック軌道と測定した前記トラック及びオフセットさせたトラックの平均位置からの第1、第2変位量をそれぞれ算出する段階と、前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記目標のトラックからオフセットさせて、前記学習した第1RRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、前記RRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態で前記軌道偏差から前記軌道偏差の逆特性の軌道偏差を発生させるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことに特徴を有する。
【0018】
本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法にあっては、前記リードコアを目標トラックに位置付けてRRO補正情報を学習する段階は、前記仮のオフセット補正値を書き込む段階において、前記仮のオフセット補正値を書き込みながら実行することができる。さらに、前記第1、第2変移量を、前記第1、第2RRO補正情報を、時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御対象のプラントの周波数領域の応答特性でプラントから出力される値に変換して、その結果を元の時間領域に変換して得る段階を含むことが実際的である。
【0019】
また、本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法にあってはさらに、前記オフセット補正値を、前記軌道偏差を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域の前記軌道偏差をトラッキングサーボ制御に入力される時点の位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含むことができる。
【0020】
更に、別の観点からなる本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法は、同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を測定する段階と、測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながらRRO補正情報を学習する段階と、前記リードコアを、前記仮のオフセット補正値測定において前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置へ移動させて、前記学習したRRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、前記RRO制御を行いながら、前記リードコアを仮のオフセット補正値で補正した状態でRRO位置誤差値がゼロになるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことに特徴を有する。
【0021】
この場合、前記オフセット補正値を、トラッキングサーボ制御しながらRRO位置誤差値を測定し、前記RRO位置誤差値を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域のRRO位置誤差値をトラッキングサーボ制御に入力される位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含むことが実際的である。
【0022】
ライトコアのトラック位置が先に決定されることを前提にした別の態様からなる本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法は、全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながら第1RRO補正情報を学習する段階と、前記リードコアを、前記第1RRO補正情報を学習したトラックから前記仮のオフセット補正値測定で前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置へ移動させて、RRO追従制御しながら第2RRO補正情報を学習する段階と前記学習した各トラック及びオフセットさせたトラックの2つの第1、第2RRO補正情報から前記ライトコアをそれぞれのトラックに位置付けたときのトラック軌道を計算により算出して、この算出したトラック軌道と測定した前記トラック及びオフセットさせたトラックの平均位置からの第1、第2変位量をそれぞれ算出する段階と、前記ライトコアを目標のトラックに位置付けるときに、前記第1、第2変位量の差分から目標のトラック及びオフセットさせたトラックの絶対空間での軌道偏差を算出することでRRO位置誤差値を算出する段階と、前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記目標のトラックからオフセットさせて、前記学習した第1RRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、前記RRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態で前記軌道偏差から前記軌道偏差の逆特性の軌道偏差を発生させるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことに特徴を有する。
【0023】
前記リードコアを目標トラックに位置付けてRRO補正情報を学習する段階は、前記仮のオフセット補正値を書き込む段階において、前記仮のオフセット補正値を書き込みながら実行することができる。
【0024】
本発明は、前記第1、第2変移量を、前記第1、第2RRO補正情報を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御対象のプラントの周波数領域の応答特性でプラントから出力される値に変換して、その結果を元の時間領域に変換して得る段階を含むことができる。
【0025】
本発明の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法にあってはさらに、前記オフセット補正値を、前記軌道偏差を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域の前記軌道偏差をトラッキングサーボ制御に入力される時点の位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含むことができる。
【0026】
本発明において前記オフセット補正値は、セクタ単位又はトラック単位、及びセクタ単位とトラック単位の組合せで、単独又は連続した間引きを行った状態で測定した、前記位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値であることが実際的である。
【0027】
前記学習が終了したRRO制御用の補正情報は、学習対象のトラックに前記リードコアをオントラックさせるとき、及び前記ライトコアをオントラックさせるときに、それぞれで同じ値がRRO制御用の補正情報として使用される。
【0028】
前記全ての、又は前記必要な全ての位置情報エリアに対応するセクタのオフセット補正値及び前記RRO制御用に学習された全ての、又は必要な全ての補正情報を予め、磁気ディスク装置の記憶手段に格納する段階を含むことができる。
【0029】
前記全ての、又は前記必要な全ての位置情報エリアに対応するセクタのオフセット補正値を予め、磁気ディスク装置の記憶手段に格納する段階、又は前記間引かれたオフセット補正値から内挿又はコピーにより必要なオフセット補正値を予め算出し、磁気ディスク装置の記憶手段に格納する段階を含むことができる。
【0030】
前記記憶手段は半導体メモリー、又は前記磁気ディスクの特定エリアであって、予め該特定エリアに書き込む段階を含むことが実際的である。
【0031】
前記オフセット補正値が書き込まれた記憶手段を備えた磁気ディスク装置のオフセット補正方法にかかる発明は、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、前記磁気ディスクに対して前記ライトコアにより書き込みするときは、書き込みする目標セクタ毎に対応するオフセット補正値を、予め前記記憶手段から読み出す段階、又は予め前記リードコアによって前記磁気ディスクの前記特定エリアから読み出す段階の何れかを含むことに特徴を有する。
【0032】
更に装置のカテゴリーからなる本発明は、前記オフセット補正値及び補正情報が格納された記憶手段を備えた磁気ディスク装置であって前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体に対してデータを書き込むときは、対象のセクタに対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してオフセット補正制御とRRO制御を行い、前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体からデータを読み出すときは、対象のセクタに対応する前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してRRO制御を行う制御手段を備えたことに特徴を有する。
【0033】
磁気ディスク装置のオフセット補正方法に関する発明は、前記オフセット補正値及び補正情報が格納された記憶手段を備えた磁気ディスク装置のオフセット補正方法であって、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、前記磁気ディスクに対して前記リードコアにより読み出すときは、読み出す目標セクタ毎に対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を、予め前記記憶手段から読み出す段階、又は予め前記リードコアによって前記磁気ディスクの前記特定エリアから読み出す段階の何れかを含むことに特徴を有する。
【0034】
前記オフセット補正方法を適用した磁気ディスク装置に関する発明は、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体からデータを読み出すときは、対象のセクタに対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してオフセット補正制御とRRO制御を行い、前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体に対してデータを書き込むときは、対象のセクタに対応する前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してRRO制御を行う制御手段を備えたことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0035】
このように本発明のオフセット補正方法及び同方法を実施する磁気ディスク装置によれば、高トラック密度の磁気ディスク媒体やDTM/BPMのような真円に近くない且つ相似形でない位置情報を持つ磁気ディスク媒体において、磁気ディスク媒体上に形成された位置情報の一つ一つに対応するリードコアとライトコアのオフセット補正値を、独立に、全ての又は必要な全てのトラックについて、短時間で測定することが可能になる。しかも本発明によれば、オフセット値を測定する際に、正式なオフセット測定用データを書き込むこと無く、リードコアとライトコアのオフセット値を測定できるので、DTMやBPMの媒体でも比較的短時間に全面のトラックについてオフセット補正値を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した磁気ディスクドライブ装置(HDD)を蓋を外して示した平面図である。
【図2】同HDDの主要部材及び回路構成をブロックで示した図である。
【図3】HDDにおいて、リードコア(リードヘッド)とライトコア(ライトヘッド)が分離している複合型MRヘッドのヨー角を説明する図であって、(A)はアウター付近、(B)はセンター付近、(C)はインナー付近の様子を示した図である。
【図4】HDDにおいて、磁気ディスクのアウター付近において磁気ヘッドにヨー角が付いている様子を説明する図であって、(A)は書き込み時、(B)は読み出し時の様子を示した図である。
【図5】HDDにおけるRRO追従制御とZAP制御を説明する図である。
【図6】HDDにおいて、RRO追従制御を実施したときの実際の磁気ヘッドの軌道を表した図である。
【図7】HDDにおいて、ZAP制御を実施したときの実際の磁気ヘッドの軌道を表した図である。
【図8】(A)は10,000TPIの磁気ヘッドの、(B)は100,000TPIの磁気ヘッドのリードコアとライトコアの構成を簡略化して示した図である。
【図9】(A)は10,000TPIの磁気ヘッドが、(B)は100,000TPIの磁気ヘッドがデータを書き込むトラック上にオントラックしている状態を示した図である。
【図10】リードコアとライトコアのオフセット補正値を測定するときに使用するデータを連続膜の磁気ディスクに書き込んだ状態を示した図である。
【図11】リードコアとライトコアのオフセット補正値を測定するためにリードコアをオフセットシークさせて、丁度測定データのセンター付近に差し掛かったときの状態を示した図である。
【図12】(A)は、リードコア23Rを所定ステップでオフセットシークさせながらオフセット測定用書き込みデータを読み出す様子を示した図、(B)は同読み出したリードデータの出力をプロットしたグラフを示した図である。
【図13】磁気ディスク上に形成される、データを書き込み、読み出すための理想トラック軌道を示した図である。
【図14】磁気ディスク上に、相似形でないRROが折り込まれた実際のトラック軌道を実線で、理想トラック軌道を点線で示した図である。
【図15】磁気ディスク上に、相似形のRROが折り込まれたトラック軌道を実線で、理想トラック軌道を点線で示した図である。
【図16】DTM/BPMの実際の高次RRO成分を除去して楕円にフィッテングしたときのトラック軌道を実線で、理想トラック軌道を点線で示した図である。
【図17】DTM/BPMの実際の高次RRO成分を含んだトラック軌道を点線で、DTM/BPMの実際の高次のRRO成分を除去して楕円にフィッテングしたときのトラック軌道を実線で示した図である。
【図18】理想的なSTWが実施されている磁気ディスク媒体を、基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図19】DTM/BPMと同時に形成された位置情報例1を、基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図20】DTM/BPMと同時に形成された位置情報例2を、基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図21】DTM/BPMと同時に形成された位置情報例3を、基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図22】DTM/BPMにおいて、位置情報が形成されているサーボエリアとデータが書き込まれるトラックとの関係を示した図である。
【図23】望ましいオフセット補正を施した結果を示した図である。
【図24】オフセット測定の実施例1及び実施例2において、全面イレーズを実施後に測定対象トラックのトラックNo.4にリードコアをオントラックした状態でリードコアとライトコアのオフセット補正値を測定するための一時的なデータ(仮の測定データ)を書き込む様子を示した図である。
【図25】本発明のオフセット補正値測定方法において、正式なオフセット値を測定するトラックのRRO補正情報の学習が終了した時点を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図26】本発明のオフセット測定の実施例において、図24で測定した平均的なリードコアとライトコアの相対オフセット分を補正した状態を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図27】本発明のオフセット補正値測定方法の実施例において、図24で測定した、1周分の平均オフセット値によってライトコアを補正した状態を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図28】本発明のオフセット補正値測定方法の実施例において、位置誤差がゼロになるオフセット補正値を使用したオントラック制御を行ったときの状態を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図29】本発明のRRO追従制御を利用したオフセット補正値の第二の測定方法において、第1RRO補正情報の学習段階が終了した時点を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図30】本発明のRRO追従制御を利用したオフセット補正値の第二の測定方法において、第2RRO補正情報の学習が終了した時点を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図31】本発明のRRO追従制御を利用したオフセット補正値の第二の測定方法において、ライトコアを目標のトラックNo.4に正確に位置付けるために、トラックNo.4にリードコアを位置付けたときに学習し記憶しておいたRRO補正情報Anを使用したRRO制御を行いながら、トラックNo.2を復調した位置情報に補正値Dnを加えた結果に対してトラッキングサーボ制御を行なっている状態を示す、磁気ディスク表面を基準のサーボエリアを起点として直線的に展開して示した図である。
【図32】本発明のオフセット補正値測定方法の実施例1の流れをフローチャートで示した図である。
【図33】本発明のオフセット補正値測定方法の実施例2の流れをフローチャートで示した図である。
【図34】本発明を適用した、(A)はNULLサーボパターンを、(B)はオフセット測定データリード出力の例1をグラフで示した図である。
【図35】本発明を適用した、(A)は位相サーボパターンを、(B)はオフセット測定データリード出力の例2をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明について添付の図面に示した実施形態を参照して説明する。図1は、本発明を適用するHDDを蓋を外して示した平面図、図2は同HDDの主要部材及び回路構成をブロックで示した図である。この実施例では、磁気ディスク媒体としてDTMを使用している。
【0038】
HDD10は、ディスクエンクロージャ(DE)11及び回路基板(PCA)12を備えている。ディスクエンクロージャ11内には、磁気ディスク(磁気ディスク媒体)21、スピンドルモータ(SPM)22、磁気ヘッド(Head)23、キャリッジアーム24、ボイスコイルモータ(VCM)25、及びプリアンプ26が収納されている。磁気ディスク21は、スピンドルモータ22のスピンドル軸に固定されており、スピンドルモータ22によって矢印の磁気ディスク回転方向θに回転駆動される。
【0039】
磁気ヘッド23は、リードコア23R及びライトコア23Wを独立して備え、これらのリードコア23R、ライトコア23Wが磁気ディスク21に対向して配置され、磁気ディスク21に磁気的に作用し、情報の記録又は再生を行う。その磁気ヘッド23は、揺動自在に軸支されたキャリッジアーム24の先端に装着されている。キャリッジアーム24は、他端にボイスコイルモータ(VCM)25のボイスコイルが搭載されており、VCM25により矢印φ方向に回動可能とされている。キャリッジアーム24が矢印φ方向に回動することにより、磁気ヘッド23が磁気ディスク21の半径方向、すなわち、矢印φ方向に移動する。
【0040】
磁気ヘッド23は、プリアンプ26に接続されている。プリアンプ26は、磁気ヘッド23により磁気ディスク21に記録すべき信号を増幅し、磁気ヘッド23に供給するとともに、磁気ヘッド23により磁気ディスク21から再生された再生信号を増幅して、回路基板12に供給する。
【0041】
回路基板12には、リードチャネル(RDC:Read Channel)31、MPU(Micrio Processing Unit)32、フラッシュROM33、サーボコントローラ(SVC:Servo Controller)34、ハードディスクコントローラ(HDC:Hard Disk Controller)35、RAM(Random Accees Memory)36、及びインターフェースコネクタ37が搭載されている。なお、前記MPU32は、DSP(Digital Signal Processor)の機能を内包する。更に、前記MPU32は、全部をDSPに置き換えて、MPUの機能を内包してもよい。
【0042】
リードチャネル31は、プリアンプ26と接続されており、プリアンプ26に記録信号を供給するとともに、プリアンプ26で増幅された再生信号を再生データに復調する。リードチャネル31で復調された再生データは、ハードディスクコントローラ35に供給される。ハードディスクコントローラ35は、再生データをRAM36に一時記憶した後、インターフェースコネクタ37を介して、図示しないホストコンピュータに供給する。このとき、MPU32にも、磁気ヘッド23(リードコア23R)により読み出されてリードチャネル31で復調された再生データが供給される。
【0043】
また、ハードディスクコントローラ35は、ホストコンピュータからインターフェースコネクタ37を介して供給された記録データをRAM36に一時記憶し、記録時にRAM36から読み出して、リードチャネル31に供給する。リードチャネル31は、ハードディスクコントローラ35からの記録データを変調して記録信号を生成する。リードチャネル31で変調された記録信号は、プリアンプ26に供給される。プリアンプ26は、リードチャネル31からの記録信号を増幅して、磁気ヘッド23に供給する。磁気ヘッド23(ライトコア23W)は、プリアンプ26からの記録信号に応じた磁界を発生し、磁気ディスク21を磁化させ、記録信号を磁気ディスク21に記録(書き込み)する。このとき、MPU32には、磁気ヘッド23(リードコア23R)により読み出され、リードチャネル31で復調された再生データが供給される。
【0044】
MPU32は、再生データから磁気ディスク21上の位置情報、すなわち、サーボエリアから位置情報(トラック(Tr)No.、セクタNo.及びバーストサーボ信号)を読み出して、オントラック制御を行う。MPU32は、読み出された位置情報が目標とするデータが記憶された位置又は目標とするデータを記憶するための位置の位置情報との差分に応じた制御信号、すなわち、位置エラー信号を生成し、サーボコントローラ34に供給し、サーボコントローラ34によりVCM25を駆動して、キャリッジアーム24先端部の磁気ヘッド23をオントラック制御する。
【0045】
フラッシュROM33にはMPU32をコントロールするプログラムデータの他に、前記読み出した位置情報を補正するための補正値(リードコアとライトコアのオフセット補正値、位置情報の読み替えテーブル等)と、サーボコントローラ34に供給する位置エラー信号を補正するための補正値(RRO補正情報やZAP制御値等)とが、位置補正情報格納エリア38に格納されている。これらの補正値は、磁気ディスク21上へ記録データを書き込む場合は、記録データを読み出すときに通るリードコア23Rの軌道にライトコア23Wの通る軌道を一致させるために必要となる補正値であり、記録データを読み出す場合は、リードコア23Rを磁気ディスク21上のデータが記録されたトラックに正確に追従させるための補正値である。よって、ライトコア23Wとリードコア23Rとに対応した補正値が、書き込み、読み出しに応じて位置補正情報格納エリア38から読み出され、オントラック制御の補正に使用される。
【0046】
サーボコントローラ34は、MPU32からの制御信号(位置エラー信号)に基づいてVCM25を制御し、磁気ヘッド23による磁気ディスク21からの信号の読み出し位置を制御する。
【0047】
以上により磁気ディスク21上の目標位置を磁気ヘッド23が走査して、情報の取得や情報の記録ができる。
【0048】
図3は、リードコア23R(リードヘッド)とライトコア23W(ライトヘッド)が分離している複合型MRヘッドのヨー角を説明する図である。HDDの揺動タイプのキャリッジアーム24に取り付けられた磁気ヘッド23は、キャリッジアーム24の回転によって磁気ヘッド23が位置付けられる位置によりリードコア23Rとライトコア23Wの位置関係が、前記の図(A)アウター付近、(B)センター、(C)インナー付近のように3種類の状態に区別できる。現在実用化されている磁気ヘッドとして、リードコア23Rのヘッド幅が約65nm、ライトコア23Wのヘッド幅が約90nm、ヘッド間ギャップ長HGが約4μm程度のものが知られている。
【0049】
前記のような磁気ヘッド23の場合、磁気ディスク21のセンター付近(半径方向中間)に位置付けられているときは、リードコア23Rとライトコア23Wの位置関係が太矢印で示した磁気ディスク回転方向θに対して直線的になっているので、リード時もライト時も同じ位置に位置付ければよい。それに対して、磁気ヘッド23が磁気ディスク21のインナー付近とアウター付近に位置付けられている場合は、リードコア23Rとライトコア23Wの位置が回転方向θに対して違う位置関係になっているため、リード時とライト時とでは、磁気ヘッド23の位置をずらして、リード時のリードコア23Rとライト時のライトコア23Wが磁気ディスク21上の同じ位置に位置付けられるように補正(ヨー角補正、オフセット補正)する必要がある。このヨー角は、磁気ヘッド23が搭載されているキャリッジアーム24の回転位置により一義的に決まる。
【0050】
図4は、アウター付近のヨー角が付いている様子を示している。書き込み動作時(ライト動作時)は、ライトコア23Wを、目的のデータ書き込みトラック上にオントラックさせて、データを書き込む(図4(A))。読み出し動作時(リード動作時)は、リードコア23Rを目的のデータが書き込まれているトラック上にオントラックさせてデータを読み出す(図4(B))。図において、斜線部が、書き込みデータWD、読み出しデータRDである。このリードコア23Rとライトコア23Wの位置の補正を行うのがヨー角補正又はオフセット補正であり、図4(A)ではヨー角補正量Δφ分の補正が必要である。
【0051】
なお、図4は、リードコア23Rの幅及びライトコア23Wの幅がヘッド間ギャップの約1/2の場合を示しているが、先の図3で説明した磁気ヘッド23の一例のような場合は、図4のようなヨー角が付いている状態では、リードコア23Rとライトコア23Wの間にデータトラックが数十本存在することになる。
【0052】
「RRO追従制御とZAP制御」
図5は、RRO追従制御とZAP制御を説明する図であって、磁気ディスク表面21a上に、理想の完全な円形トラック200、201、及び実際のトラック202、203を示した平面図である。磁気ディスク表面21aは、放射方向に延びた複数本のスポーク状のサーボエリア(SA)300、301、・・・を備えている。実際には数百本以上備えることもあるが、図では省略してある。各サーボエリア(SA)300、301、・・・は、周方向にほぼ等間隔で形成され、各トラック202、203を複数のセクタ(データエリア(DA))に分割している。サーボエリア(SA)300、301、・・・の間の領域がデータを書き込み、又読み出すデータエリアDAである。各サーボエリア300、301には、各トラック202、203の分割エリアに対応する位置情報が記録されていて、位置情報には、磁気ディスク表面21aに沿って実際のトラック202、203の位置(半径方向位置)であるトラック情報又はシリンダ情報、トラック内の位置を示すサーボ情報を含む。この実施例では予めサーボエリア300、301に、いわゆる4バーストサーボパターン(バーストA乃至D)のサーボ情報が書き込まれている。なお、各サーボエリア300、301は、放射方向には連続して(連続膜として)形成されている。
【0053】
円形トラック200、201から離れた位置変動は全て位置の誤差と考えられる。円形トラック200、201に追従しないトラック202、203の部分は、サーボ・トラック・ライト(STW)時に書き込まれた再現可能なRRO(リピータブル・ラン・アウト)誤差を発生する。磁気ヘッド23が磁気ディスク表面21a上の特定の位置を通過するたびに同じ誤差が発生する場合の位置誤差は、RRO位置誤差と考えられる。何故なら、磁気ヘッド23が、トラック202、203の半径方向位置を定義するサーボエリア300、301に追従するたびに、それが理想の円形トラック200、201に対して相対的な同じ位置誤差を発生するからである。
【0054】
この磁気ヘッド23の位置決め誤差の主要な原因は、スピンドルモータ22によって生じる再現可能な外乱及び、サーボ・トラック・ライト(STW)による書き込み時、又はDTM/BPM等の製造過程で形成される埋め込みサーボ信号の形成時、及びディスク駆動装置へのディスク状記録媒体を実装する際のディスク状記録媒体中心軸ずれ等の理想軌道(真円)から逸脱した状態の軌道が原因で発生したRRO位置誤差である。この再現可能な外乱に対処するためにいくつかの方法が提案されてきた。これらの方法は、2つのグループに分類することができる。
【0055】
1つ目のグループは、DFT(離散フーリエ変換)を使用した繰り返し制御や適応型フィードフォワード補正のRRO補正と呼ばれるもので、スピンドルモータ起因の外乱やSTWで書き込まれたトラック202、203を正確にトレーシングしようとするものである。そのため、スピンドルモータ起因のような外乱に対しては、どのトラックでも同じ対応が可能となるため、正確な追従が可能となる。更に、STW起因のRRO誤差に関しても、トラック202、203のようなSTWプロセス後に発生するユニークな形状をした軌道の追従も可能である。ここで説明した1つ目のグループがRRO追従制御と呼ばれるものである。
【0056】
2つ目のグループは、ゼロ加速経路(ZAP(ゼロ・アクセラレーション・パス))の概念(「再現可能なラン・アウト補正」と呼ばれる)に依るものである。それはフィードバック・コントローラの前でRROを補正するための非適応型フィードフォワード技法である。
【0057】
ZAP制御の概念を、図5を参照して説明する。図5において、トラック202、203はSTWプロセス後のトラックのセンターを表す。STWプロセスの間に発生した各種の外乱のために、トラックのセンターは理想的なスムースではない軌道を示すため、アクチュエータによって追従するのが困難である。この結果、再現可能な位置誤差信号が発生する。しかし、適切な補正量が各サーボエリアにおいて位置測定信号から差し引かれる場合、元のジグザグの経路がスムースになる。すなわち、トラックのセンターがトラック200、201のような理想的な円形になる。再現不可能な位置情報に対する外乱が無視できる場合は、ZAP(ゼロ・アクセラレーション・パス)技法によってこの理想的な円形トラック200、201のセンターに追従することができる。ここで説明した2つ目のグループがZAP制御と呼ばれるものである。
【0058】
「RRO追従制御の前提条件」
図6は、RRO追従制御を実施したときの磁気ヘッド23の軌道を表す図である。RRO追従制御は、複数の補正対象トラック、例えばトラック202、203で同じ補正値を使用する。ここでの補正値は、補正次数(単独、又は複数)とそれらの次数のゲインと位相である。そのため、トラック202、203の両方に存在する偏心次数と、それらが同じようなゲインで且つ同じような位相であるかを割り出し、その次数のみに追従する制御を行う。トラック202、203に共通する次数等が、1次、2次、3次、及び5次のみの場合は、この4種の偏心次数のみに追従するように制御を行う。その他の次数は、トラック、セクタ毎に異なるため、制御対象から取り除く。RRO追従制御を実施したときに磁気ヘッド23がトレースする軌道を、RRO追従トラック206、207として示した。また、RRO追従制御は、適応型フィードフォワード補正というように常にRRO状態を学習して、RRO補正情報を更新しながら使用するのが一般的である。
【0059】
このように、制御対象次数を選ぶ理由は、トラック/セクタ毎に違った軌道を通らないようにするためである。もし、違った軌道を通るようにしてしまうと、リードコア23Rのオントラックとライトコア23Wのオントラックとで、それぞれのオントラック位置(リードコア基準の場合)で異なる軌道を通ることになり、リードコア23Rとライトコア23Wが同じ軌道を通らないことになる。その結果、記録データが正確に読み出せない事態が想定される。これを避けるために、RRO追従制御対象の次数をRRO追従制御対象のトラックに共通する次数のみに制限している。
【0060】
「ZAP制御の前提条件」
図7は、ZAP制御を実施したときの実際の軌道を示している。ZAP制御の結果、磁気ヘッド23は、ZAP制御トラック208、209のように理想的な真円に近い軌道を通ることになる。ZAP制御を行う対象の全てのトラックが真円に近い軌道となるため、隣接したトラックの干渉を考慮する必要がない。これは、ZAP制御対象の次数が、何らかの不都合がなければ、全ての次数(ナイキスト周波数まで)を対象にできることを示している。ここでいう不都合とは、常に振幅や位相が変動している状態のことを指す。即ち、ZAP制御では、制御を実行すると制御対象の全てのトラックが真円に近いトラック軌道となるため、リードコア23Rのオントラックとライトコア23Wのオントラックとで、それぞれのオントラック位置(リードコア基準の場合)で殆ど同じ形の軌道を通ることになる。そのため、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット値のみを補正することで、簡単に目標トラックにリードコア23Rとライトコア23Wを位置付けることができる。
【0061】
「磁気ヘッドとトラック密度(TPI)の関係」
図8は、10,000TPI対応の磁気ヘッド230と100,000TPI対応の磁気ヘッド231のリードコア23Rとライトコア23Wの簡単な構成を示している。図8(A)が磁気ヘッド230、図8(B)が磁気ヘッド231を示している。これらの図から判ることは、トラック密度が高くなりトラックピッチ(ヘッドコアの幅HWに相当)が狭くなったとしてもリードコア23Rとライトコア23Wの関係(ヘッド間ギャップ長HG)が殆ど変わらないことを示している。実際は、それぞれの磁気ヘッドの特性により、ヘッド間ギャップ長HGは±1μm程度の誤差は発生するが、大きく変化することはない。それに対して、トラック密度に関しては磁気ディスク装置が高密度化/大容量化を目指す限り、より大きな値になる。即ち、今後、磁気ヘッドのヘッド間ギャップ長HGが固定されたまま、磁気ディスク媒体はトラックピッチが狭くなり、トラック密度がより高くなることを示している。なお、10,000TPIはトラックピッチ約2.5μm、100,000TPIはトラックピッチ約0.25μm(約250nm)である。
【0062】
「磁気ヘッドとトラックの関係」
図9(A)、(B)は、磁気ヘッド230、231が、データを書き込むトラック上にオントラックしているときの状態を示している。図9において、斜線部分がトラックのデータエリアを表している。2種の磁気ヘッド230、231は同じヨー角であるが、磁気ヘッド230は、リードコア23Rとライトコア23Wの位置関係が0.5トラック程度のズレで済んでいるのに対して、磁気ヘッド231では、このズレが5トラックに拡大している。即ち、トラック密度が高くなればそれに比例して、リードコア23Rとライトコア23Wの間に存在するトラックの数が増加することを意味する。現時点で、実際に実用化されているHDDは、250,000TPI程度までトラック密度が高くなっており、そのトラックピッチは約100nmまで狭くなっている。この場合、図示したような磁気ヘッド23では、リードコア23Rとライトコア23Wの間に約13本のトラックが存在していることになる。従って、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセットを補正するためのオフセット補正値は、十数乃至数十トラック分の補正が必要な値になる。
【0063】
なお、前記の例はヨー角がゼロのときに、リードコア23Rとライトコア23Wが直線的に並ぶ場合を想定しているが、磁気ヘッドの製造状況によっては、ヨー角ゼロのときにオフセットを持つものもある。このようなオフセットを持つ磁気ヘッドの場合は、或るヨー角が付いたときにオフセットが0になるので、オフセットが0の位置を基準にしてオフセット補正値を設定する。更に、実際の磁気ヘッドのなかには、インナーゾーンからアウターゾーンまでのどの位置でも直線的に重ならないような磁気ヘッドも存在する。その場合は、ゾーンの外側に仮のオフセット補正値が0の位置を設け、それを基準にしてオフセット補正値を設定する。
【0064】
オフセット補正値の測定方法について、図10乃至図12を参照して説明する。
【0065】
「オフセット測定データ書き込み」
図10は、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値を測定するときに使用するデータ(オフセット測定データ)を、連続膜の磁気ディスクに書き込んだ状態を示した図である。図において、縦方向の破線はトラックセンターTrCを表していて、リードコア23Rをトラック(Tr)No.0のセンターに位置付けて、その状態でライトコア23Wによりオフセット測定用データを書き込む様子を示している。この実施例では、ライトコア23WがトラックNo.1のアウター側半分のエリアに位置している。なお、図において、6本の太線で示した各グループはサーボエリアに書き込まれたサーボパターンのバーストA乃至Dを示していて、データはデータエリアに書き込まれ又データエリアから読み出される。又、図10において、バーストA乃至Bが書き込まれた領域がサーボエリアSAであり、サーボエリアSAに続く領域がデータが書き込み、読み出しされるデータエリアDAである。トラックセンターTrCと平行な実線は各トラック境界TrBを表していて、トラック境界TrBとトラック境界TrBの間がディスクリートトラック(磁性領域)を表していて、ライトコア23Wの軌道上の破線領域はオフセット測定用書き込みデータが書き込まれた状態を表している。以下の図でも同様である。
【0066】
「オフセット測定データ読み出し」
図11は、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値を測定するためにリードコア23Rをオフセットシークさせて、リードコア23Rが丁度、オフセット測定用書き込みデータのセンター付近に差し掛かったときの状態を示している。
【0067】
図12(A)は、リードコア23Rを所定ステップでオフセットシークさせながらオフセット測定用書き込みデータを読み出す様子を示し、図12(B)は、読み出したデータ(リードデータ)の出力レベルをプロットしたグラフを示している。同グラフにおいて、縦軸がリードデータの出力レベルを示し、横軸がオフセットシークを行ってリードコア23Rを位置付けているトラック位置を示している。
【0068】
このグラフは、リードデータの出力が最大になるときのトラック位置がリードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値になることを示している。即ち、リードコア23RがトラックNo.0のセンターをトレースしている状態でライトコア23Wによりオフセット測定用書き込みデータを書き込んだが、そのオフセット測定用書き込みデータをリードコア23Rにより読み出したときに得られる最大出力が0.75トラックの位置であるから、0.75 − 0 = 0.75の計算が成り立つ。従ってこの磁気ヘッド23のリードコア23Rとライトコア23Wのオフセットは0.75トラック相当となる。
【0069】
なお、従来の実際のHDDでは、前記のような測定を、各セクタで行う。例えば、トラック一周分が200セクタに分割されているとすると、200セクタそれぞれで測定し、測定結果を平均して測定対象トラックのオフセット補正値を算出していた。
【0070】
ここまでの説明は連続膜の磁気ディスクを使用した場合におけるオフセット補正値の測定方法であるが、DTMやBMPでも同じ方式でオフセット補正値の測定を行うことができる。但し、DTMやBPMの場合は、非磁性部が磁気ディスク上に存在するため、その非磁性部を考慮して測定を行う必要があるが、非磁性部を考慮した測定方法は、例えば特許文献5及び特許文献6に記載されている。
【0071】
「磁気ディスクのデータを記録する理想トラック軌道」
図13は、磁気ディスク表面21aに形成される、データを書き込み、読み出すための理想トラック軌道を示している。なお、図では簡略化して、理想トラック軌道として6本の理想トラック軌道210乃至215を示し、トラック一周分のセクタ数及びサーボエリア(スポーク)数を16個として16個のサーボエリア300乃至315を示してある。
【0072】
「磁気ディスクのデータを記録する実際のトラック軌道(ZAP制御)」
図14は、磁気ディスクから読み出された位置情報をそのまま使用してオントラック制御を行ったときのトラック軌道(実線)210乃至215とZAP制御を適用した結果のトラック軌道(点線)210乃至215を表している。ZAP制御を行うと、トラック軌道のRRO成分が、位置情報を検出しサーボコントローラ34へ入力される時点でキャンセルされるため、サーボコントローラ34は、点線のような理想トラック軌道の入力があったと見なして動作する。そのため、実際のオントラック制御の結果でも理想トラック軌道(点線)210乃至215を描くことになり、点線の理想トラック軌道210乃至215は、全ての軌道で理想トラック軌道の真円に近づくことになる。その結果、リードコア23Rとライトコア23Wが独立形成されている磁気ヘッド23においても、リードコア23Rの軌道とライトコア23Wの軌道は半径位置が異なるだけの相似形の円を描くことになる。そして、リードコア23Rとライトコア23Wが同じ軌道を通るように補正をかける場合は、それぞれのヨー角位置に対応する一義的に決まるオフセット補正値があればよいことになる。
【0073】
「磁気ディスクのデータを記録する実際のトラック軌道(RRO追従制御)」
図15は、相似形RROが折り込まれた理想トラック軌道(点線)210乃至215を示している。RRO追従制御は、このようにどのトラックでも同じ軌道を通ることができるRRO成分のみ補正することになる。RRO追従制御は、入力された位置情報をそのままオントラック制御に使用し、RRO成分がトラックに重畳されているために理想トラック軌道(点線)210乃至215から逸脱する部分を強制的に追いかけるようにするための指示値をサーボコントローラ34へ出力するオントラック制御値に加えて出力することで行う。この結果、全てのトラック軌道が同じ相似形の軌跡(実線)を描くことになる。そのため、実線のトラック軌道は、全てのトラック軌道で相似形の軌道に近づくことになる。その結果、リードコア23Rとライトコア23Wが独立形成されている磁気ヘッド23においても、リードコア23Rの軌道とライトコア23Wの軌道は半径位置が異なるだけの相似形の軌道を描くことになる。したがって、リードコア23Rとライトコア23Wが同じ軌道を通るように補正をかける場合は、それぞれのヨー角位置に対応する一義的に決まるオフセット補正値があればよいことになる。
【0074】
「DTM/BPMの高次のRRO成分を除いたトラック軌道」
図16は、DTM/BPMの実際の高次のRRO成分を除去して楕円にフィッテングしたときのトラック軌道を示している。点線で表したトラック軌道210乃至215が理想的な真円の軌道を示しているが(図では楕円)、DTM/BPMでは、実線で表したトラック軌道210乃至215のようにトラック毎に異なった形状の軌道を描く。この図16は、楕円軌道を描いているが、この楕円軌道の潰れる位置がトラック毎に異なることを示している。これは、DTM/BPMでトラック軌道を形成するときの回転数が極低速であるため、慣性的な力の作用が全く期待できないことに起因する。通常のトラック軌道を形成するSTW時は、磁気ディスクを毎分数千回転から一万五千回転という高速で回転させながら書き込む。そのため、短時間にトラック軌道の形成が可能であり、慣性力も期待できるため、どのトラック軌道も真円に近い軌道が形成される。
【0075】
また、ここではDTM/BPMについて説明しているが、トラック密度が更に高密度になれば、例え高速回転でSTWを行ったとしても、トラック毎に軌道が異なる事態が陥ると容易に推測される。よって、連続膜磁気ディスクでも、より高トラック密度になれば、同じ問題が発生する場合がある。
【0076】
それに対して、既述の通り、DTM/BPMでは、磁気ディスク媒体の製造過程で必要なマスター媒体やDTM/BPMのパターンマスクン等(本発明の開示書では説明せず)の形成に必要な時間が長大で、通常、数日から数週間必要とされており、トラック軌道の形成過程で、トラック軌道が真円から逸脱した形状になる。この図では楕円として説明しているが、実際は、三角形であったり、卵形であったり、長方形の角を丸めたような形であったり、さまざまな形状のトラック軌道となる。更に、問題なのは、トラック軌道が例えば楕円であったら、どの半径位置でも同じ方向を向いた楕円になっていればRRO追従制御で対応可能となるが、DTM/BPMでは、図16に誇張した例を示したが、形成されたトラック軌道毎に楕円の潰れている方向が異なる場合があることである。そのため、従来のインナーからアウターまで同じ次数のRRO追従制御を行う方式では、あるトラックから別のトラックへ移動するとその都度時間をかけて学習する必要が生じる。更なる問題は、リードコア23Rの位置とライトコア23Wの位置がオフセットしている場合には、それぞれのコア23R、23Wを位置付ける場合、トラック追従するための半径位置が異なるため、それぞれの位置でRRO追従制御を行ってトラック軌道に完全に追従させると、実際のリードコア23Rとライトコア23Wの通るトラック軌道が異なってしまうことである。そのため、従来の適応型フィードフォワード補正方式のRRO追従制御は使用できない。
【0077】
ここでの学習とは、適応型フィードフォワード補正方式の一般的なRRO追従制御で実際に実行されている動作で、その時点で発生しているRROを学習することを意味する。これまでのRRO成分の説明では、どのトラックでも同じであるからRRO追従制御が可能としてきたが、実際の一般的なHDDのRRO成分は、厳密な意味ではどのトラックでも同じになることはなく、許容範囲ではあるが微小な変化がトラックが異なると発生している。この違いは近くのトラック間は小さく、離れたトラック間は大きいことが知られており、この違いを吸収するために一般的なRRO追従制御では常に学習が行われている。但し、学習内容に関しては、本発明の特徴ではないので詳細な説明は省略する。
【0078】
「DTM/BPMの高次RRO成分まで含んだトラック軌道」
図17は、DTM/BPMの実際の高次RRO成分を含んだトラック軌道を示している。実際のトラック軌道は、低次のRRO成分は楕円軌道や三角形軌道、卵形軌道を形成し、高次のRRO成分は、トラック軌道毎にユニークな形状を形成している。
【0079】
また、DTM/BPMの場合は、磁気ディスク媒体上に形成されたトラック軌道を完全にトレースする必要がある。連続膜磁気ディスクの場合は、実際にデータを書き込むときに最も書き込みし易いトラック軌道になるように工場でHDDを組み立てた後、最初のライトデータ書き込み時点で決めることができたが、DTM/BPMでは、予めデータを記録できるトラック軌道が決められているため、HDDを組み立てた後、自由に決めることができない。そのため、磁気ディスク上に形成されているトラック軌道を正確にトレーシングできるオントラック制御が求められる。これには、RRO追従制御が有効であるが、従来知られている適応型フィードフォワード補正方式のRRO追従制御のみでは十分に要求を満たすことができない。
【0080】
更に、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正に関しても、従来のような対象トラックに補正値が一つという補正方式では、正確な補正ができないことが、図16と図17から判る。即ち、一回転のトラック軌道の形状が、トラック軌道ごとに大きく異なっている場合で、且つリードコア23Rとライトコア23Wのオフセットが一トラック以上離れている場合等は、リードコア23Rの位置とライトコア23Wの位置で大きく違っているのが判るが、従来のオフセット補正方式は、一回転のトラック軌道で補正値を一つしか持たないため、オントラック制御対象の位置情報に発生している歪みを吸収できない状況になっている。
【0081】
「理想的な位置情報」
図18は、理想的なSTWが実施されている磁気ディスク媒体表面の様子を基準のサーボエリア300を起点として直線的に展開したものである。サーボエリア300乃至308は、位置情報を示すエリアであって、図において等間隔の縦縞は、トラックとトラックの距離を示す目盛りを表している。目盛りが等間隔ということは、歪みのない正確な位置が測定できる環境であることを示している。この図では、位置情報を長さを測定する物差しと見立てているため、等間隔の場合は物差しの測定結果も正確であることを示している。この目盛りの縦縞の間隔が伸びたり縮んだりする場合は、測定するための物差しが歪んでいることを表すことになる。即ち、間隔が広がれば実際の長さより測定した長さが短くなり、間隔が狭くなれば実際の長さより測定した長さが長くなることを示す。
【0082】
実際のHDDで使用しているSTWは、微視的に見た場合、サーボエリア300乃至308の縦縞に相当する間隔が伸びたり縮んだりしているが、変化が小さいため、これまでは無視できていた。ところが、DTMやBPMの場合は、超低速回転でSTWを行うような状態で位置情報が形成されるため、図18に示したような理想的なSTWができない状況となっている。そのため、測定した位置情報に歪みが重畳されていて、正確な位置制御ができない問題が発生するため、この歪みを取り除く必要がある。なお、図18において二重縦線は、データを読み出し又は書き込みを行うトラックのセンターTrCを示している。また、実際のサーボエリア300乃至308は非常に狭いが、図18では説明をし易くするために、実際より回転方向(周方向)の幅を広く示している。
【0083】
オフセット補正方法にかかる発明の実施例について、図19乃至図32を参照して説明する。
【0084】
「DTM/BPMと同時に形成された位置情報の例1、2、3」
図19、図20及び図21は、DTMやBPMと同時に形成される位置情報の例1、2及び3を示している。図19は偏心の次数は同じだがトラック毎に位相がシフトしている場合を想定したものを、図20は偏心の次数は同じだがトラック毎に振幅が変化しているものを、図21はトラック毎に偏心の次数や位相が違っているものをそれぞれ表している。これらの位相シフト、振幅変化、偏心次数の相違は、トラック毎の位置情報の形成に長い時間がかかることに起因する。実際のDTMやBPMでは、これらが複雑に絡み合ってトラックの位置情報が形成されているため、更に複雑なトラック軌道を形成している。そのため、前記原因(トラック毎の位置情報の形成に長い時間がかかること)により、トラック毎に偏心成分が異なってしまい、従来行っていた方式のRRO追従制御が適用できない。即ち、従来方式のRRO追従制御はどのトラックでも同じような偏心が発生していることを前提としているため、トラックが異なると偏心成分も異なるような環境では、対処できない。仮に対処できたとしても、トラック毎のRRO追従制御を行った結果の軌道が異なるため、リードコア23Rとライトコア23Wが異なるトラックに位置している場合(ヨー角が付いている場合)は、それぞれのオントラック軌道が違ってしまい、従来のような一元的なオフセット補正を行っても正確な位置にデータを書き込んだり、読み出したりできない。
【0085】
「DTMやBPMのトラック位置と位置情報の関係」
図22は、DTM/BPMの位置情報が形成されている領域(サーボエリア)と、データが書き込まれるディスクリートトラック(磁性領域、データエリア)の関係を示したものである。データを書き込む各ディスクリートトラックは、隣接するディスクリートトラックと非磁性エリアで磁気的に分離されている。また、この図のようにDTM/BPMでは、ディスクリートトラックのセンターTrCと位置情報(バーストA、B)のセンターが同じになるような構成となっており、リードコア23Rのセンターは、位置情報のセンターに一致すると、自動的にディスクリートトラックのセンターTrCにも一致する構成になっている。そのため、データを読み込むときはリードコア23Rセンターを位置情報(バーストA、B)のセンターに合わせれば正確に読み出すことができるが、データを書き込むときは、図22のようにリードコア23Rセンターのままであると、ライトコア23WがディスクリートトラックのセンターTrCに位置付けられていないので、正確なデータの書き込みができない。よって、DTMやBPMでデータを書き込む場合は、ライトコア23Wの位置が正確にディスクリートトラックのセンターTrCに位置付けられるようにオフセット補正を行う。なお、図22において、トラックの境界TrBに重ねて記載された破線列領域は非磁性領域を表している。以下の図においても同様である。
【0086】
「本発明のオフセット補正実施結果」
図23には、本発明の実施例によるオフセット補正の結果を示した。図23のトラックNo.4は、DTMやBPMの実際のトラックセンターTrCをライトコア23Wが正確にトレースした状態を示している。そのために本実施例は、従来のトラック一周分を平均した、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値を使用するのではなく、トラック一周上に存在するサーボエリア一つ一つを独立事象として扱い、それぞれのサーボエリアでリードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値を測定し、それをサーボエリア毎の補正値として使用して、図23に示したような正確なライトコア23Wの位置付けを可能にした。その結果、ディスクリートトラックのセンターTrCに正確に書き込みデータが書き込める。
【0087】
なお、図23において、破線で埋められた領域が非磁性領域(トラック分離帯)を表していて、非磁性領域(トラック分離帯)で挟まれた領域がディスクリートトラックを表していている。そうして、ディスクリートトラックの略中央を通る直線が理想のトラックセンターTrCaを、二重線が実際のトラックセンターTrCbを表している。太線分で横縞状に表した領域は書き込みデータを表している。又、符号300乃至308は放射方向に形成されたサーボエリアを表していて、サーボエリア300乃至308がディスクリートトラックと交差する領域が位置信号が出力されるエリア(サーボエリアSA)である。以下の図においても同様である。
【0088】
『RRO追従制御を使用したオフセット補正値測定の実施例』
本発明のRRO追従制御を利用したオフセット補正値の測定方法について、更に図24乃至図28及び図32を参照して説明する。図32は、オフセット補正値測定方法の流れを、フローチャートで示した図である。以下のオフセット補正値の測定方法等は、電源投入後、MPU32の制御下で実施され、測定値等は、PCA12の半導体メモリー(フラッシュROM33若しくはRAM36)、又はHDD10のデータ格納エリアの何れかに書き込まれ、読み出して使用される。また、インターフェースコネクタ37を介して接続された図示しないホストコンピュータの制御下でも実施することが可能である。この場合は、測定値等は、ホストコンピュータ内の記憶媒体に書き込むことも可能で、書き込んだ測定値等は読み出して使用される。
【0089】
(1)仮のオフセット測定データ書き込み段階
図24には、磁気ディスク表面21aに対して全面イレーズを実施した後に、測定対象トラックであるトラックNo.4にリードコア23Rをオントラックさせた状態で、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値を測定するための一時的なデータ(仮のオフセット測定データ)をライトコア23Wにより書き込む様子を示した。この図では、仮のオフセット測定データの書き込みを、RRO補正を行わずに平均的なトラックセンターTrCに書き込む様子を示している。このステップ(1)では平均的なリードコア23Rとライトコア23Wの大まかなオフセット補正値が判ればよいため、測定も従来と同じように測定対象トラック一周分の平均値の測定でよい。
【0090】
(2)仮のオフセット測定データの読み出し段階
仮のオフセット測定データ書き込み後、書き込んだデータを読み出してその出力レベルが最大になるリードコア23Rのオントラック位置を探す。この実施例では、リードコア23Rに対してライトコア23Wが約2トラックインナー方向にオフセットしている状態のヨー角位置で磁気ヘッド23を使用しているため、書き込みデータはトラックNo.6付近に書き込まれている。そこで、リードコア23R(磁気ヘッド23)を書き込み位置(トラックNo.4付近)からインナー方向へステップシークさせてリードコア23Rにより書き込みデータを読み出して、最大値(ピーク値)が得られる半径方向位置を検出する。この実施例では、トラックNo.6のセンターTrC付近において読み出し出力レベルが最大(最大出力)になる。そのシーク結果から、 (最大出力位置)−(データの書き込み位置)=2 となり、リードコア23Rに対してライトコア23Wが約2トラックインナー方向へオフセットしていることが判る。この実施例では、このインナー方向への2トラック分を補正する平均オフセット補正値が、ライトコア23Wの仮のオフセット補正値になる。
【0091】
なお、図24にはリードコア23Rとライトコア23Wが複数書き込まれているが、これらは、磁気ヘッド23をインナー方向へシークさせたときにサーボエリア300乃至308を横切ったときのリードコア23Rとライトコア23Wの位置をそれぞれのタイミングでサーボエリア300乃至308毎に便宜的に示したものである。この方式は、他の図についても同様である。
【0092】
また、この実施例では、仮のオフセット測定は測定対象のトラック全てで行うように説明しているが、先にも述べた通り、測定精度が許す限り、特定のトラックのみ例えば、最アウター、センター、及び最インナーの3ヶ所の測定を行い、その結果を内挿して、又は多項式に当てはめてそれぞれのトラックの仮のオフセット補正値としてもよい。
【0093】
続いて、RRO追従制御を使用したオフセット補正値の測定に関するステップ(3)以降の処理を実行する。以下、その詳細について説明する。
【0094】
(3)RRO補正情報の学習段階
図25は、正式なオフセット補正値を測定するトラックのRRO補正情報の学習段階が終了した時点を示している。この図では、トラックNo.4のオフセット補正値を測定するために、トラックNo.4にリードコア23RをオントラックさせてRRO補正情報の学習を行い、終了した時点を示している。
【0095】
RRO補正情報の学習は、リードコア23Rをオフセット測定対象トラックのセンターTrCに位置付けて、RRO追従制御しながら行う。図25におけるオフセット測定対象トラックは、トラックNo.4である。前記の条件下で、各々のトラックのセンターTrCにリードコア23Rを位置付けて、発生RRO(ポジション品質、位置誤差量)を確認しながら補正が必要なRRO次数全ての学習を行う。この発生RROが、予め決められた値以下に低減した時点でRRO補正情報の学習を終了させるように、予め終了条件を決めておく。なお、補正が必要なRRO次数は、測定対象のトラック全体を事前に確認(読み出し)して、予め決められた値以上のRRO発生が見られるかどうかを確認することで決定する。一部でも基準を超えるトラックがあれば全トラックを補正対象とする。また、ここでのRRO追従制御が適用できない次数の条件は、RROの振幅や位相が時々刻々と変化する次数、温度の変化で振幅や位相が変化する次数、及び振幅のダイナミックレンジが制御対象範囲をオーバーする次数の何れか一つ又はそれ以上が当てはまる場合である。
【0096】
このときの学習終了の具体的な条件は、例えば、リードコア23Rのポジションの揺れがトラックセンターTrCからある決まった範囲に入っていることなどの条件が、予め決められた確率(例えば、10回測定して10回全部条件を満たす場合)で成り立つ場合、などと決めておく。或いは、単純に学習回数を10回又は20回など、所定回数に設定してこの回数の学習が終了したら、そのまま学習を終了させるような条件でもよい。この場合は、ポジションの揺れではなく、測定回数が終了条件となる。以上のように、予め決められた何らかの条件が成立するまでトラック単位で学習を行い、対象トラック全ての学習が終了すると、全てのトラックに固有のRRO補正情報が得られる。なお、学習が終了した各トラックのRRO補正情報は、半導体メモリー等に記憶しておき、必要な時点で直ぐに使用できるようにしておく。
【0097】
ここで、磁気ヘッド23をオントラックさせるトラッキングサーボ制御をVCM制御により行う装置の場合は、VCM25をMPU32、SVC34により制御するが、RRO補正情報は、SVC34から実際のVCM25に駆動制御電流や駆動制御電圧を出力させるための指示値に、MPU32内部で同じ制御形式に変換した後加えられる。なお、ここでのRRO補正情報の学習方式としては、DFT(離散フーリエ変換)を使用した繰り返し制御や適応型フィードフォワード補正のRRO補正と呼ばれるものが使用される。
【0098】
この状態から、DTM/BPMに適した、本発明のオフセット補正方法で使用するオフセット補正値の測定方法を以下に説明する。
【0099】
従来のオフセット測定では、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセットは磁気ヘッド23のヨー角と磁気ヘッド23自体の仕様で決まるものとして扱われて来た。即ち、回転型アクチュエータで変化するオントラック位置(半径位置)に応じて同時にヨー角も一義的に変化するため、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセットは、磁気ヘッド固有のオフセット(第一のオフセットの発生原因)とヨー角位置による変化分(第二のオフセットの発生原因)を足し合わせた値に、トラック単位で唯一決まるものとして扱われてきた。ところが、高トラック密度環境やDTM/BPMのような位置情報の歪みの大きい環境では、第三の要素であるサーボ情報の歪み(第三のオフセットの発生原因)をオフセット補正値に取り込まないと正確な値が測定できない状況になっている。
【0100】
第三のリードコア23Rとライトコア23Wのオフセットの発生原因であるサーボ情報の歪みは、サーボエリア毎の、更にサーボエリアの半径位置による位置情報を決定するための基準となる物差しに相当する部分の歪みである。これが、オフセット補正値を測定するときに考慮する必要のある第三の歪みである。既に図19、図20、図21、図23、及び図24に関連してサーボエリアの説明で具体的に説明したように、超低速回転で作成されるDTMやBPMの位置情報、つまりトラックとトラックの間隔は同一ではない。そのためこの実施例では、オフセット補正値を測定する場合は、トラック一周分の平均ではなく、サーボエリア一つ一つ独立して、その位置に存在する物差しに合わせた状態でオフセット補正値を測定する。
【0101】
第一のリードコア23Rとライトコア23Wのオフセットの発生原因は、磁気ヘッド23固有のオフセットであり、リードコア23Rとライトコア23Wの形成位置が初めから異なっていることに起因している。第二のリードコア23Rとライトコア23Wのオフセットの発生原因は、回転型アクチュエータのオントラック位置(半径位置)で決まる磁気ヘッド23のヨー角に起因するリードコア23Rとライトコア23Wの見かけの位置の違いによるものである。なお、これら第一のオフセットと第二のオフセットは、仮のオフセット補正値で補正される。即ち、第一のオフセットと第二のオフセットを足し合わせた結果が、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセットに相当するため、例えばトラックNo.4の位置で仮のオフセット測定を行いトラック一周分の平均オフセット補正値を測定すれば、その値がリードコア23Rとライトコア23のオフセット補正値となる。更に、リードコア23Rとライトコア23Wを偏心の大きい同じ目標トラックへ位置付けるとき、磁気ヘッド23がトラック軌道をトレースすることで回転位置により磁気ヘッド23のヨー角が変化するため、回転位置に応じて見かけのオフセット値が変化することになるが、これを補正するためには特許文献7で示すような補正が必要となる。
【0102】
そこで、次のステップ(4)において、リードコア23Rを前記仮のオフセット補正値だけオフセットさせて、オフセット前の前記RRO補正情報によって、RRO補正情報の学習を行わないRRO制御を実行する。
【0103】
(4)オフセット補正値算出の準備段階
図26は、図24で実測した平均的なリードコア23Rとライトコア23Wの仮のオフセット補正値である2トラック分だけトラックNo.4からアウター方向へオフセットさせてトラックNo.2のトラック軌道にリードコア23Rを位置付けた状態を示している。このときのRRO補正情報は、トラックNo.4にリードコア23Rをオントラックさせた状態で事前に学習して記憶しておいたトラックNo.4のRRO補正情報をそのまま使用して、RRO補正情報の更新を行わない状態にしたRRO制御を行う。即ち、図26は、リードコア23Rを、トラックNo.4のRRO補正情報でRRO補正情報の更新を伴わないRRO制御を実行しながら、仮のオフセット補正値に相当する、2トラックの距離だけアウター方向へ移動させたときの理想状態を示している。
【0104】
ところが、磁気ヘッド23をアウター方向へ2トラック移動させると、磁気ヘッド23(リードコア23R)が最初にオントラックしていたトラックNo.4付近からトラックNo.2付近に移動するため、検出できる位置信号の歪みの状態が異なる。その歪みの変化のため、リードコア23Rが検出した位置信号に対してステップ(3)で学習したRRO補正情報によるRRO制御を実行すると、図26の状態を保つことができなくなり、図27に示したような形状にライトコア23Wのオントラック軌道が変化する。その結果、ライトコア23Wで正確にトラックNo.4のトレースができなくなり、正確な位置にライトコア23Wを位置付けられなくなる。
【0105】
そこでさらに、次のステップ(5)においてライトコア23Wを目標トラックに正確に位置付けるために、リードコア23Rを仮のオフセット補正値で補正した状態で、ステップ(3)においてリードコア23Rを位置付けて学習したRRO補正情報によるRRO制御をステップ(4)で行いながら、ステップ(5)において位置誤差がゼロになるオフセット値を用いて位置制御を行う。この位置誤差がゼロになるオフセット値が、求めるオフセット補正値である。
【0106】
(5)ライトコア23Wを目標トラックに正確に位置付ける段階
図28は、ライトコア23Wを目標のトラックNo.4に正確に位置付けるために、ステップ(3)においてトラックNo.4にリードコア23Rを位置付けて学習したRRO補正情報によるRRO制御を行いながら、リードコア23Rを仮のオフセット補正値で補正した状態(トラックNo.4にリードコア23Rを位置付けた状態からアウター方向へ2トラックオフセットさせた位置)で位置誤差がゼロになるオフセット値を用いて位置制御を行ったときの様子を示している。位置誤差がゼロになるオフセット補正値を用いて位置制御を行った結果、リードコア23Rのトラック軌道がトラックNo.4に位置付けたときの軌道に近づいて、VCM25に加えられるVCM駆動電流又はVCM駆動電圧がリードコア23RをトラックNo.4にオントラックさせたときと同じタイミングで同じ波形のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧がVCM25に加えられる状態になる。
【0107】
ここでの位置誤差がゼロになるオフセット値を用いて行う位置制御とは、RRO補正情報の学習更新を行わない状態で事前に測定されたRRO補正情報を元にしたRRO制御を行いながら、サーボ情報の復調を行い、その位置情報を、位置制御に使用したときに発生するRRO(定在波的な位置誤差)がゼロになるように補正を行う制御のことである。つまり、同じ目標トラックにリードコア23Rとライトコア23Wをトラック一周分正確に位置付けるときに、リードコア23Rとライトコア23Wそれぞれを位置付けるときに発生する異なるヨー角に起因する偏差を除いた部分に関しては、リードコア23Rとライトコア23Wを制御するためのVCM駆動電流又はVCM駆動電圧が同じにならなければならないということに着目した位置制御である。言い替えると、RRO補正情報を測定した元のトラック軌道とは異なる軌道のトラックに同じRRO補正情報を使用すると、当然元のトラックでは位置誤差が発生しないが、異なるトラック軌道のRRO補正情報を使用したトラック(ライトコア23WをトラックNo.4に位置付ける状態)では、本来必要なRRO補正情報が異なることにより位置誤差起因のRROが発生する。そこで、このライトコア23WをトラックNo.4に位置付ける状態でのRROをゼロにするための補正を位置情報に加えることで、トレースするリードコア23Rとライトコア23Wのトラック軌道を実質的に同じにすることを可能にした。
【0108】
即ち、トラック軌道をトレースするためにVCM25に加えられるVCM駆動電流又はVCM駆動電圧は、本来ならこのVCM駆動電流又はVCM駆動電圧のみで目標トラック軌道をトレースできなければならない。しかしながら、トラック密度が高くなりトラックピッチが狭くなっている現在のHDDでは、このVCM駆動電流又はVCM駆動電圧のみでは正確にトラック軌道のトレースができず、RROの形で位置誤差が発生するので、通常このRROに対してはRRO追従制御によるトレースで対処する。よって、正確に目標トラックの軌道をトレースする場合は、RRO追従制御で確定する電流又は電圧とサーボ信号の位置誤差情報から確定する電流又は電圧を足し合わせたものをVCM駆動電流又はVCM駆動電圧としてVCM25に加えることで正確なトレースが可能となる。
【0109】
ここで、リードコア23RをトラックNo.4に位置付けてトラックNo.4の軌道をトレースしているときに正確に学習したRRO補正情報から決まるトラックNo.4のRRO補正情報をAnと定義し、RRO補正情報以外の学習しきれなかった位置誤差情報から決まるトラックNo.4のRRO位置誤差値をBnと定義する。このときのRRO位置誤差値Bnは、トラックNo.4のRRO補正が正確に学習終了した直後のものであるため、RRO位置誤差が殆どゼロの状態と考えられ、実質はBn=0と定義できる。なお、ここで使用する変数An、Bn、及び今後使用する変数Cn、Dn、4Rn、4Wn、RHn、WHn、Znは、磁気ディスク上に存在するサーボセクタ一つ一つに対応するため、nにはサーボセクタNo.を識別する値が代入される。例えば、サーボセクタが200個存在する場合は、nにはサーボセクタNo.を識別する1〜200の番号が代入される。
【0110】
次に、トラックNo.4にライトコア23Wを位置付ける場合、実際の位置制御に使用される位置情報は、仮のオフセット測定の結果トラックNo.2付近となっているから、リードコア23RはトラックNo.2付近の軌道をトレースすることになる。このときの位置制御は、リードコア23RをトラックNo.4に位置付けたときに正確に学習したRRO補正情報Anを使用するRRO制御を行いながら行う。そのため、ここでのRRO制御値はトラックNo.4のRRO制御値と同じになる。更に、トラックNo.2付近の軌道をトレースしたときの位置誤差情報から決まるRRO位置誤差値Cnは、トラックNo.4とトラックNo.2付近の真のRROが同じであった場合、RRO補正情報が同じAnになり、RRO追従制御で加えられるRRO制御値も同じになるため、位置誤差も殆どゼロの状態となり、実質、Cn=0となるはずである。ところが、DTMやBPMでは、既に説明した製造上の問題で、本来正確な位置情報を提供するための基準となる位置信号が歪んでおり、位置付けるトラックが異なると発生するRROも異なる形状になる。
【0111】
具体的には、トラックNo.2付近にリードコア23Rを位置付けて、リードコア23RをトラックNo.4に位置付けたときに正確に学習したRRO補正情報Anを使用したRRO制御を行うと、このRRO制御のためのRRO制御値を元にしたVCM駆動電流又はVCM駆動電圧がVCM25に加えられることになる。次に、仮のオフセット補正値が−2トラックであることで、リードコア23RをトラックNo.2付近に位置付けて、トラックNo.2の軌道をトレースするように位置制御を実行する。しかし、本来ならトラックNo.2で学習したRRO補正情報を使用したRRO制御を行うところを、ここではトラックNo.4のRRO補正情報AnでRRO制御を実施している。そのため、トラックNo.2のRROが補正されず残ることが原因のトラックNo.2のRROと、トラックNo.4のRRO補正情報Anを使用したRRO制御で強制的にVCM25が駆動されることが原因のRROとの、前記2つのRROが足し合わされ合成されたRROが起因となる位置誤差のRRO位置誤差値Cnを発生させるようなVCM駆動電流又はVCM駆動電圧がVCM25に加えられることになる。即ち、リードコア23RをトラックNo.2に位置付けてトラック軌道をトレースすると、VCM25にはRRO補正情報Anを元にした、VCM駆動電流又はVCM駆動電圧とRRO位置誤差値Cnを発生させるようなVCM駆動電流又はVCM駆動電圧とが、足し合わされて同時に加えられることになる。
【0112】
リードコア23Rとライトコア23Wが同じトラック軌道をトレースする条件は、VCM25に加えられるべきVCM駆動電流又はVCM駆動電圧が、トラックNo.4にリードコア23Rを位置付けたときとトラックNo.4にライトコア23Wを位置付けたときとで同じトラックNo.4のRRO補正情報Anを元にしたRRO制御値から算出されるものにする必要があるため、RRO位置誤差値Cnをゼロに近づけることである。実際のRRO位置誤差値Cnは、前記トラックNo.2の第三の歪みを含んでいる位置情報に対して、RRO補正情報AnでRRO制御を行いながらトラッキングサーボ制御行った結果発生したRRO位置誤差値である。そのため、RRO位置誤差値Cnがゼロになるように位置情報の補正値Dnを導入し、サーボトラッキング制御へ入力する位置情報の補正を行う必要がある。この位置情報の補正値Dnは、トラックNo.2のトレースをRRO補正情報AnでRRO制御を行いながら実行した結果のRRO位置誤差値Cnがゼロに近づくように選ぶ必要がある。なお、補正値Dnは、仮のオフセット補正値(目標トラック1周の平均値)と各サーボセクタの真のオフセット補正値との差分に相当するものである。
【0113】
RRO位置誤差値Cnをゼロに近づけるためには、トラックNo.2のオフセット補正後の絶対空間での軌道がトラックNo.4と同じ形(相似形)になればよいことになる。それは、それぞれのトラックに位置付けてそのトラックをトレースするためにVCM25に加えられるVCM駆動電流又はVCM駆動電圧が、限りなくRRO補正情報Anを元にしたRRO制御値から算出されるものと同じになることを意味する。即ち、トラックNo.2にリードコア23Rを位置付けて、トラックNo.4にリードコア23Rを位置付けたときに学習したRRO補正情報Anを使用したRRO制御を実行しながら、トラックNo.2を復調した位置情報に補正値Dnを加えた結果に対してトラッキングサーボ制御を行うと、ライトコア23WのトラックNo.4に対するRRO位置誤差値Cnが殆どゼロになる。言い換えると、トラックNo.2にリードコア23Rを位置付けたときの位置情報に前記各サーボセクタの補正値Dnを加えた結果に対して位置制御を行うことと、トラックNo.2のRRO補正にトラックNo.4のRRO補正情報Anを使用したRRO制御を行うこととで、VCM25に加えられるVCM駆動電流又はVCM駆動電圧は限りなくトラックNo.4にリードコア23Rを位置付けたときにRRO補正情報AnでRRO制御を行なっているときにVCM25に加えられるVCM駆動電流又はVCM駆動電圧と同じになる。その結果、ライトコア23Wは、トラックNo.4の軌道を正確にトレースできる。
【0114】
「補正値Dn:オフセット補正値」
補正値Dnの具体的な算出方法は次の通りである。RRO位置誤差値Cnを時間領域からDFT(Discrete Fourier transform:離散フーリエ変換)で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域のRRO位置誤差値Cnをトラッキングサーボ制御に入力される位置情報に変換し、その結果を元の時間領域に変換することで得られる。即ち、ここで得られる補正値Dnが、トラックNo.2にリードコア23Rを位置付けてRRO補正情報AnでRRO制御を行なったとき、RRO位置誤差値Cnがゼロになるような補正値で、リードコア23Rとライトコア23Wの間に存在するサーボセクタ単位の第三のオフセット値に相当する。
【0115】
更に、オフセット補正値は、第三のオフセット値である補正値Dnと第一と第二のオフセット値に相当する仮のオフセット値とを足し合わせることで算出できる。ここで求められたサーボサンプル(サーボエリアSAを読み出して位置情報復調)毎のオフセット補正値を読み出された位置情報にサーボサンプル毎に加え、且つ、目標トラックのRRO補正情報を使用したRRO制御を行うことで、目標トラックにライトコア23Wを位置付けることになる。因みに、オフセット補正値を読み出された位置情報に加えずに、目標トラックのRRO補正情報を使用したRRO制御を行うことで、目標トラックにリードコア23Rを位置付けることができる。
【0116】
図24乃至図28を参照して説明した以上ステップ(1)乃至(5)の一連の処理を全てのトラックに対して行うことで、正式なオフセット測定データを書き込むこと無く、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値の測定が可能となる。要するに、最初の一ヶ所(1本のトラックに1回)だけ仮のオフセット測定データを書き込み、そのトラックのオフセット補正値の平均を求め、その平均値を隣のトラックに拡張しながら、且つズレた場合はその都度補正を行うことで、DTM/BPMなどの磁気ディスク媒体でも比較的短時間に全面のトラックのオフセット補正値が検出できる。その都度補正を行うとは、ステップ(1)、(2)において仮のオフセット測定データで測定したオフセット補正値の平均値を、新たなトラックに移る毎に補正するということである。例えば、トラック1本又は数本置きに(例えば100トラック単位置きに)事前に測定しておき、それを内挿して補正する。
【0117】
なお、以上の実施例ではトラックNo.4のRRO補正情報を仮のオフセット補正値測定後に改めて学習しているが、仮のオフセット補正値を書き込んでいる最中に同時に学習し、その結果を記憶しておいてもよい。
【0118】
以上の実施例の説明で示したトラックNo.4をオントラック制御する際のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧とトラックNo.2をオントラック制御する際のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧を殆ど同じにする方法、手段は一例であって、本発明の目的であるトラックNo.4のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧とトラックNo.2のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧を殆ど同じにできるのであれば、どの様な方法、手段でもよい。ここで、トラックNo.4のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧とトラックNo.2のVCM駆動電流又はVCM駆動電圧が殆ど同じとは、リードコア23Rとライトコア23Wのトラック軌道が、データを書き込んだり読み出したりするときに支障のない範囲で異なってもよいこと、又は、同時に両側のトラックにデータを書き込んだときに中央のトラックのデータが消されないことという条件が磁気ディスク全面で成立する範囲であれば、同じでなくてもよいことを意味する。
【0119】
(6)オフセット補正値及びRRO補正情報の記憶
最後に、ここで使用するライトコア23Wを目標トラックのセンターに位置付けるための測定された位置誤差がゼロになるオフセット補正値及びRRO補正情報は、半導体メモリーなどの独立した記憶エリア(フラッシュROM33の位置補正情報格納エリア38)に記憶しておくか、磁気ディスク媒体の所定領域に書き込んでおく。そうして書き込み動作を行う前に、目標トラックの位置誤差がゼロになるようなオフセット補正値とRRO補正情報をトラック一周分事前に読み出して用意しておく。なお、サーボエリアの測定間引きとトラックの測定間引きが行われている場合は、オフセット補正値を記憶する段階で、内挿やコピー等により必要なオフセット補正値やRRO補正情報を事前に算出して記憶する。
【0120】
そうして、磁気ディスク媒体の目標トラックにデータ書き込み処理を行う前に、目標トラックのオフセット補正値とRRO補正情報を、トラック一周分、書き込みする目標セクタの制御に必要なセクタ分だけ、又は書き込みする目標セクタに到達するための途中のセクタ及び目標セクタの制御に必要な補正情報を1セクタ前に次の1セクタ分だけを連続してその都度、の何れかにより事前に読み出しておく。
【0121】
『RRO追従制御を使用したオフセット補正値測定の実施例2』
RRO追従制御を使用したオフセット補正値測定の実施例2においても、仮のオフセット測定データの書き込み及び読み出しに相当する処理として、図24を参照して説明したステップ(1)及び(2)と同様の書き込み、読み出しを実行する。そこで、ステップ(1)、(2)終了後の正式なオフセット測定データ書き込み処理から、本発明のRRO追従制御を利用したオフセット補正値の第二の測定方法について、更に図29乃至図31及び図33を参照して説明する。
【0122】
(3−2)RRO補正情報の学習段階2
図29は、正式なオフセット補正値を測定するトラックのRRO補正情報(第1RRO補正情報)の学習段階が終了した時点を示している。この図では、トラックNo.4のオフセット補正値を測定するために、トラックNo.4にリードコア23RをオントラックさせてRRO補正情報4Rn(第1RRO補正情報)の学習を行い、終了した時点を示している。
【0123】
図30は、正式なオフセット補正値を測定するトラックNo.4から仮のオフセット補正値分の2トラックだけアウター方向へ磁気ヘッド23を移動させ、更にこの位置、即ちトラックNo.2付近にリードコア23RをオントラックさせてRRO補正情報4Wn(第2RRO補正情報)の学習を行い、終了した時点を示している。
以上の第1RRO補正情報4Rn、第2RRO補正情報4Wnの学習は、実施例1のステップ(3)と同じ方法で行う。なお、この実施例における第1RRO補正情報4Rn、第2RRO補正情報4Wnの符号部分の整数、この実施例では4、は正式なオフセット補正値を測定するトラックNo.を表している。
【0124】
以上の第1RRO補正情報4Rn、第2RRO補正情報4Wnの学習が終了した状態から、本発明のオフセット補正方法で使用するオフセット補正値の測定方法2を以下に説明する。更にここでは、RRO補正情報の学習を行わないRRO制御を行いながら前記第三の歪みに相当するオフセット補正値を測定する方法について説明する。
【0125】
(4−2)オフセット補正値算出の準備段階2
トラックNo.4とトラックNo.2にリードコア23Rをそれぞれ位置付けたときのRRO補正情報の学習が終了している状態で、この学習された2つのRRO補正情報4Rn、4WnからトラックNo.4とトラックNo.2に位置付けたときの実際のリードコア23Rの軌道を計算により推定する。このとき算出されるトラック軌道は、サーボサンプル毎のトラックNo.4とトラックNo.2の平均位置からの変移位置、即ちそれぞれのトラックセンターTrCからのサーボサンプル毎の変移位置を示している。
【0126】
トラッキングサーボ制御では、RRO補正情報をVCM駆動電流又はVCM駆動電圧としてプラントへ操作量として与えると、それに見合った変化がVCM25に発生する。即ち、RRO補正情報をVCM25に与えると、そのRRO補正情報に見合った、変動がVCM25に発生し、その結果、VCM25の先端の磁気ヘッド23も比例して位置の変動が発生する。これは、絶対空間での変移量、言い換えると理想真円軌道からの変移量と見なすことができるため、前記の2つの第1RRO補正情報4Rnと第2RRO補正情報4Wnから、それぞれの変移量RHn(第1変位量)と変位量WHn(第2変位量)も算出することが可能となる。なお、プラントは、本実施例にあっては、MPU32から出力される指示値(デジタルサーボの場合はデジタル値)を受け取る部分から、その結果が出力されMPU32に受け渡されるまでとなる。従って、本実施例においては、SVC34、磁気ヘッド23、キャリッジアーム24及びVCM25がプラントに相当する。
【0127】
磁気ヘッド23の変移量RHnとWHnの具体的な算出方法は次の通りである。第1変移量RHnと第2変位量WHnは、第1RRO補正情報4Rnと第2RRO補正情報4Wnを時間領域からDFTで周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している前記プラントの周波数領域の応答特性で、周波数領域へ変換した第1RRO補正情報4Rnと第2RRO補正情報4Wnを変換することで、前記プラントから出力される時点の第1RRO補正情報4Rnが元になる第1変移量RHnと第2RRO補正情報4Wnが元になる第2変移量WHnの周波数領域の値へ変換し、その結果を元の時間領域へ変換することで得られる。即ち、ここで得られる時間領域の値が、トラックNo.4にリードコア23Rを位置付けたときと、トラックNo.2にリードコア23Rを位置付けたときとの、それぞれの磁気ヘッド23の第1変移量RHnと第2変移量WHnとなる。前記第1変位量RHnと第2変移量WHnの差は、リードコア23Rとライトコア23W(リードコア23RをトラックNo.2に位置付けたときと同等)の間に存在するサーボセクタ単位の第三のオフセット値に相当する。なお、ここで使用するプラントの周波数領域の応答特性、及び先に説明したプラントモデルの周波数応答特性は、実際の制御対象の周波数応答特性を実測し、それを使用するのが望ましい。
【0128】
(5−2)ライトコア23Wを目標トラックに正確に位置付ける段階2
まず、ステップ(4−2)において算出した、トラックNo.4とトラックNo.2にリードコア23Rを位置付けていたときの第1変移量RHnと第2変移量WHnから、その差分RHn-WHnを計算することでトラックNo.4とトラックNo.2の絶対空間での軌道偏差に相当する軌道偏差Znを算出する。ここで算出された軌道偏差Znは、トラックNo.2にリードコア23Rを位置付けて、トラックNo.4へリードコア23Rを位置付けたときに学習し記憶しておいたRRO補正情報AnでRRO制御を行なったときに発生するRRO位置誤差値Cnとほぼ同じ値になる。RRO位置誤差値Cnと異なる部分は、軌道偏差Znの算出で使用する第2変位量WHnの測定時に、トラックNo.2のRRO補正情報4Wnを使用したRRO制御を実施しているため、RRO位置誤差値Cnの測定時と測定軌道が違っている部分である。そのため、本発明の実施例1で説明したRRO位置誤差値Cnと完全に一致はしないが、十分誤差が許容できる範囲であれば、軌道偏差Znを使用可能である。
【0129】
次に、トラックNo.4にライトコア23Wを位置付けるためには、トラックNo.4へリードコア23Rを位置付けたときに学習し記憶しておいた第1RRO補正情報4RnでRRO制御を行いながらリードコア23RをトラックNo.2に位置付け、前記軌道偏差Znから前記軌道偏差Znの逆特性の軌道偏差を発生させる補正値Dnを算出する。これは、軌道偏差ZnをRRO位置誤差値Cnとみなし、発明の実施例1と同じ方法で補正値Dnを算出して、その結果を位置情報の補正値としてトラックNo.2へリードコア23Rを位置付けるときに読み出した位置情報に足し合わせることで実現する。そして図31は、ライトコア23Wを目標のトラックNo.4に正確に位置付けるために、トラックNo.4へリードコア23Rを位置付けたときに学習し記憶しておいた第1RRO補正情報4Rnを使用したRRO制御を行いながら、トラックNo.2を復調した位置情報に補正値Dnを加えた結果に対してトラッキングサーボ制御を行なっている状態を示している。よって、ライトコア23WがトラックNo.4を正確にトレースしている状態になる。即ち、ここで得られる補正値Dnが、位置誤差がゼロになるようなオフセット補正値であり、リードコア23Rとライトコア23Wの間に存在する第三オフセットをサーボセクタ単位で補正するオフセット補正値である。
【0130】
更に、オフセット補正値は、第三のオフセット値である補正値Dnと第一と第二のオフセット値に相当する仮のオフセット値とを足し合わせることで算出できる。ここで求められたサーボサンプル(サーボエリアSAを読み出して位置情報復調)毎のオフセット補正値を読み出された位置情報にサーボサンプル毎に加え、且つ、目標トラックのRRO補正情報を使用したRRO制御を行うことで、目標トラックにライトコア23Wを位置付けることになる。因みに、オフセット補正値を読み出された位置情報に加えずに、目標トラックのRRO補正情報を使用したRRO制御を行うことで、目標トラックにリードコア23Rを位置付けることができる。
【0131】
図29乃至図31を参照して説明した以上ステップ(1)、(2)、(3−2)、(4−2)、(5−2)の一連の処理を行うことで、正式なオフセット測定データを書き込むこと無く、リードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値の測定が可能となる。要するに、最初の一ヶ所(1本のトラックに1回)だけ仮のオフセット測定データを書き込み、そのトラックのオフセット補正値の平均を求め、その平均値を隣のトラックに拡張しながら、且つズレた場合はその都度補正を行うことで、DTM/BPMなどの磁気ディスク媒体でも比較的短時間に全面のトラックのオフセット補正値が検出できる。なお、その都度補正とは、ステップ(1)、(2)において仮のオフセット測定データで測定したオフセット補正値の平均値を、新たなトラックに移る毎に補正するということである。例えば、トラック1本又は数本置きに(例えば100本のトラック単位置きに)事前に測定しておき、それを内挿して補正する。
【0132】
なお、ここまでの説明ではトラックNo.4やトラックNo.2のRRO補正情報は仮のオフセット補正値測定後に改めて学習しているが、仮のオフセット補正値を書き込んでいる最中に同時に学習し、その結果を記憶しておいてもよい。つまり、ステップ(1)を実行中に、ステップ(3−2)の学習を実行してもよい。
【0133】
ここまでの説明で示したトラックNo.4のRROを発生させる原因のトラック軌道とトラックNo.2のRRO発生させる原因のトラック軌道とを検出する方法は一手段でしかなく、本発明は、トラックNo.4とトラックNo.2のトラック軌道を検出する方法はどの様な手段でもよく、検出されたそれらのトラック軌道からリードコア23Rとライトコア23Wのオフセット補正値が、HDDの動作を保証できる範囲の精度で求められればよい。
【0134】
ここでのHDDの動作を保証できる範囲の精度とは、リードコア23Rとライトコア23Wのトラック軌道が、データを書き込んだり読み出したりするときに支障のない範囲で異なってもよく、同時に両側のトラックにデータを書き込んだときに、真ん中のトラックのデータ消されないことの条件が磁気ディスク全面で成立する範囲であれば、同じでなくてもよいことを意味する。
【0135】
(6−2)オフセット補正値及びRRO補正情報の記憶2
最後に、ここで使用するライトコア23Wを目標トラックのセンターに位置付けるための測定された位置誤差がゼロになるようなオフセット補正値及びRRO補正情報は、半導体メモリーなどの独立した記憶エリア(フラッシュROM33の位置補正情報格納エリア38)に記憶しておくか、磁気ディスク媒体の所定領域に書き込んでおく。そうして書き込み動作を行う前に、目標トラックの位置誤差がゼロになるようなオフセット補正値とRRO補正情報をトラック一周分事前に読み出して用意しておく。なお、サーボエリアの測定間引きとトラックの測定間引きが行われている場合は、オフセット補正値を記憶する段階で、内挿やコピー等により必要なオフセット補正値やRRO補正情報を事前に算出して記憶する。
【0136】
そうして、磁気ディスク媒体の目標トラックにデータ書き込み処理を行う前に、目標トラックのオフセット補正値とRRO補正情報をトラック一周分、書き込みする目標セクタの制御に必要なセクタ分だけ、又は書き込みする目標セクタに到達するための途中のセクタ及び目標セクタの制御に必要な補正情報を1セクタ前に次の1セクタ分だけを連続でその都度、の何れかにより事前に読み出しておく。
【0137】
ここまで説明した実施例1、2は、初めに決まるトラック位置がリードコア23Rであった場合を想定して説明しているが、初めに決まるトラック位置がライトコア23Wであった場合でも、補正方向を全て逆にし、リードコア23Rとライトコア23Wの基準を入れ換えることで実現可能である。
【0138】
以上の通り、高トラック密度の記録媒体やDTM/BPMを搭載した装置では、相似形でない位置情報が磁気ディスク媒体上に形成されているため、位置情報の一つ一つに対応するリードコアとライトコアのオフセット情報を独立して全ての、又は必要な全てのトラックセンターTrCに対応できるように持つことで、リードコアセンターの位置にライトコアセンターを位置付けられるようになり、正確な位置にデータを書き込める。この場合の位置情報は、半径方向サーボエリアに形成された位置情報であればよく、それが部分的に不連続であってもよい。また、半径方向サーボエリアの位置情報は、各トラックが相似形でない同心円状やスパイラル状であっても、一回転分のトラックがグルーピングされていれば、本発明を適用できる。
【0139】
本発明を適用した磁気ディスク媒体のサーボエリアに形成されるサーボパターン及びその出力に関する実施例について、図34及び図35を参照して以下説明する。
【0140】
「サーボパターンによるオフセット測定データリード出力に関する例1」
図34は、NULLサーボパターン及びオフセット測定データリード出力の例1を示している。このNULLサーボパターンは、前記4バーストサーボパターンの変形タイプである。4バーストサーボパターンを使用する場合は、バーストAとバーストBをそれぞれ読み出した後、MPU32でバーストA、Bの出力レベル差を演算していたが、この例1のNULLサーボパターンは、検出時点(サーボ信号を復調した時点)で A − B (パターンの白黒は磁石のS極N極を示している)が実行されるので、MPU32内部では差を求める演算を行う必要がないパターンである。このパターンでも正確に位置情報が検出できるため、前記説明した4バーストサーボパターンを全てNULLサーボパターンに置き換えて説明することが可能である。
【0141】
「サーボパターンによるオフセット測定データリード出力に関する例2」
図35は、位相サーボパターン及びオフセット測定データリード出力の例2を示している。この位相サーボパターンは、前記4バーストサーボパターンやNULLサーボパターンと異なるタイプのサーボパターンである。位相サーボパターンは、位相の変化を位置情報に変換して検出するものである。このパターンでも正確に位置情報が検出できるため、前記4バーストサーボパターンを全て位相サーボパターンに置き換えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、磁気ディスク媒体を使用する高トラック密度の磁気ディスク装置や、磁気ディスク媒体としてDTM/BPMを使用する磁気ディスク装置に適用される。
【符号の説明】
【0143】
10 ハードディスクドライブ(HDD)
11 ディスクエンクロージャ(DE)
12 回路基板(PCA)
21 磁気ディスク(DISK)(磁気媒体、磁気メディア、ディスク状記録媒体)
21a 磁気ディスク表面
22 スピンドルモータ(SPM)
23 磁気ヘッド((HEAD(MRヘッド、TMRヘッド))
23R リードコア
23W ライトコア
24 キャリッジアーム
25 ボイスコイルモータ(VCM)
26 プリアンプ
31 リードチャネル(RDC)
32 MPU
33 フラッシュROM(半導体メモリー)
34 サーボコントローラ(SVC)
35 ハードディスクコントローラ(HDC)
36 RAM
37 インターフェースコネクタ
38 位置補正情報格納エリア
200 201 理想の円形トラック
202 203 実際のトラック
206 207 RRO追従トラック
208 209 ZAP制御トラック
210 211 実際のトラック軌道(実線)
210 211 理想のトラック軌道(点線)
300 301 サーボエリア
TrB トラックの境界
TrC トラックセンター
TrCa 理想のトラックセンター
TrCb 実際のトラックセンター
SA サーボエリア(位置情報エリア)
DA データエリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、
全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、
前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、
測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながらRRO補正情報を学習する段階と、
前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記測定対象のトラックからオフセットさせて、前記学習したRRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、
前記RRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態でRRO位置誤差値がゼロになるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことを特徴とする磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法はさらに、前記オフセット補正値を、トラッキングサーボ制御しながらRRO位置誤差値を測定し、前記RRO位置誤差値を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域のRRO位置誤差値をトラッキングサーボ制御に入力される位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項3】
同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、
全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、
前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、
測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながら第1RRO補正情報を学習する段階と、
前記リードコアを前記第1RRO補正情報を学習したトラックから前記仮のオフセット補正値だけオフセットさせてRRO追従制御しながら第2RRO補正情報を学習する段階と、
前記学習した各トラック及びオフセットさせたトラックの2つの第1、第2RRO補正情報から前記ライトコアをそれぞれのトラックに位置付けたときのトラック軌道を計算により算出して、この算出したトラック軌道と測定した前記トラック及びオフセットさせたトラックの平均位置からの第1、第2変位量をそれぞれ算出する段階と、
前記ライトコアを目標のトラックに位置付けるときに、前記第1、第2変位量の差分から目標のトラック及びオフセットさせたトラックの絶対空間での軌道偏差を算出する段階と、
前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記目標のトラックからオフセットさせて、前記学習した第1RRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、
前記RRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態で前記軌道偏差から前記軌道偏差の逆特性の軌道偏差を発生させるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことを特徴とする磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記リードコアを目標トラックに位置付けてRRO補正情報を学習する段階は、前記仮のオフセット補正値を書き込む段階において、前記仮のオフセット補正値を書き込みながら実行される磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項5】
請求項3記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記第1、第2変移量を、前記第1、第2RRO補正情報を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御対象のプラントの周波数領域の応答特性でプラントから出力される値に変換して、その結果を元の時間領域に変換して得る段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項6】
請求項3記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法はさらに、前記オフセット補正値を、前記軌道偏差を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域の前記軌道偏差をトラッキングサーボ制御に入力される時点の位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項7】
同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、
全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、
前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を測定する段階と、
測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながらRRO補正情報を学習する段階と、
前記リードコアを、前記仮のオフセット補正値測定において前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置へ移動させて、前記学習したRRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、
前記RRO制御を行いながら、前記リードコアを仮のオフセット補正値で補正した状態でRRO位置誤差値がゼロになるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことを特徴とする磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項8】
請求項6記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法はさらに、前記オフセット補正値を、トラッキングサーボ制御しながらRRO位置誤差値を測定し、前記RRO位置誤差値を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域のRRO位置誤差値をトラッキングサーボ制御に入力される位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項9】
同一の回転中心回りに形成された、複数のトラック、又は非磁性エリアで分離された複数のトラック、及び前記各トラックと交差して半径方向に延びた、前記各トラックを複数のセクタに分割する位置情報エリアを周方向に複数備えた磁気ディスク媒体のトラックに、リードコアとライトコアとが別個に形成された磁気ヘッドによってデータを読み出し又は書き込みするために、前記全ての又は必要な位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値を持たせるオフセット補正値の測定方法であって、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、
全ての、又は必要な位置情報エリアに対応するトラックについて、前記リードコアによって前記位置情報エリアから位置情報を読み出してオントラック制御しながら、前記ライトコアによって仮のオフセット測定用データを書き込む段階と、
前記リードコアによって前記トラックから前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置を検出して仮のオフセット補正値を設定する段階と、
測定対象のトラックについて、前記リードコアをトラックセンターに位置付けてRRO追従制御しながら第1RRO補正情報を学習する段階と、
前記リードコアを、前記第1RRO補正情報を学習したトラックから前記仮のオフセット補正値測定で前記仮のオフセット測定用データを読み出して読み出したデータの出力レベルが最大値となる半径方向位置へ移動させて、RRO追従制御しながら第2RRO補正情報を学習する段階と、
前記学習した各トラック及びオフセットさせたトラックの2つの第1、第2RRO補正情報から前記ライトコアをそれぞれのトラックに位置付けたときのトラック軌道を計算により算出して、この算出したトラック軌道と測定した前記トラック及びオフセットさせたトラックの平均位置からの第1、第2変位量をそれぞれ算出する段階と、
前記ライトコアを目標のトラックに位置付けるときに、前記第1、第2変位量の差分から目標のトラック及びオフセットさせたトラックの絶対空間での軌道偏差を算出することでRRO位置誤差値を算出する段階と、
前記リードコアを前記仮のオフセット補正値だけ前記目標のトラックからオフセットさせて、前記学習した第1RRO補正情報によってRRO制御を実行する段階と、
前記RRO制御を行いながら、前記ライトコアを仮のオフセット補正値で補正した状態で前記軌道偏差から前記軌道偏差の逆特性の軌道偏差を発生させるオフセット補正値を算出する段階と、を含むことを特徴とする磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項10】
請求項7又は9に記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記リードコアを目標トラックに位置付けてRRO補正情報を学習する段階は、前記仮のオフセット補正値を書き込む段階において、前記仮のオフセット補正値を書き込みながら実行される磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項11】
請求項9記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記第1、第2変移量を、前記第1、第2RRO補正情報を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御対象のプラントの周波数領域の応答特性でプラントから出力される値に変換して、その結果を元の時間領域に変換して得る段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項12】
請求項9記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法はさらに、前記オフセット補正値を、前記軌道偏差を時間領域からフーリエ変換で周波数領域に変換し、このときのトラッキングサーボ制御で使用している圧縮特性で周波数領域の前記軌道偏差をトラッキングサーボ制御に入力される時点の位置情報に変換して、その結果を元の時間領域に変換して補正値を算出し、前記仮のオフセット補正値に前記補正値を足し合わせて得る段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記オフセット補正値は、セクタ単位又はトラック単位、及びセクタ単位とトラック単位の組合せで、単独又は連続した間引きを行った状態で測定した、前記位置情報エリアに対応するセクタに対する前記リードコア及びライトコアのオフセット補正値である磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れか一項記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値方法において、前記学習が終了したRRO制御用の補正情報は、学習対象のトラックに前記リードコアをオントラックさせるとき、及び前記ライトコアをオントラックさせるときに、それぞれで同じ値がRRO制御用の補正情報として使用される磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記全ての、又は前記必要な全ての位置情報エリアに対応するセクタのオフセット補正値及び前記RRO制御用に学習された全ての、又は必要な全ての補正情報を予め、磁気ディスク装置の記憶手段に格納する段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項16】
請求項15記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記間引かれたオフセット補正値から内挿又はコピーにより必要なオフセット補正値を予め算出し、磁気ディスク装置の記憶手段に格納する段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項17】
請求項15又は16記載の磁気ディスク装置のオフセット補正方法において、前記記憶手段は半導体メモリーである磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項18】
請求項15又は16記載の磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法において、前記記憶手段は前記磁気ディスクの特定エリアであって、予め該特定エリアに書き込む段階を含む磁気ディスク装置のオフセット補正値測定方法。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れか一項記載のオフセット補正値及び補正情報が格納された記憶手段を備えた磁気ディスク装置のオフセット補正方法であって、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、
前記磁気ディスクに対して前記ライトコアにより書き込みするときは、書き込みする目標セクタ毎に対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を、予め前記記憶手段から読み出す段階、又は予め前記リードコアによって前記磁気ディスクの前記特定エリアから読み出す段階の何れかを含むことに特徴を有する磁気ディスク装置のオフセット補正方法。
【請求項20】
請求項15乃至18の何れか一項記載のオフセット補正値及び補正情報が格納された記憶手段を備えた磁気ディスク装置であって、前記リードコアのトラック位置が先に決定される前提において、
前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体に対してデータを書き込むときは、対象のセクタに対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してオフセット補正制御とRRO制御を行い、
前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体からデータを読み出すときは、対象のセクタに対応する前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してRRO制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項21】
請求項15乃至18の何れか一項記載のオフセット補正値及び補正情報が格納された記憶手段を備えた磁気ディスク装置のオフセット補正方法であって、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、
前記磁気ディスクに対して前記リードコアにより読み出すときは、読み出す目標セクタ毎に対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を、予め前記記憶手段から読み出す段階、又は予め前記リードコアによって前記磁気ディスクの前記特定エリアから読み出す段階の何れかを含むことに特徴を有する磁気ディスク装置のオフセット補正方法。
【請求項22】
請求項15乃至18の何れか一項記載のオフセット補正値及び補正情報が格納された記憶手段を備えた磁気ディスク装置であって、前記ライトコアのトラック位置が先に決定される前提において、
前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体からデータを読み出すときは、対象のセクタに対応するオフセット補正値と前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してオフセット補正制御とRRO制御を行い、
前記磁気ヘッドにより前記磁気ディスク媒体に対してデータを書き込むときは、対象のセクタに対応する前記RRO制御用に学習された補正情報を前記記憶手段から読み出してRRO制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−141925(P2011−141925A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1641(P2010−1641)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(593191350)株式会社アイメス (17)
【Fターム(参考)】