説明

磁気トラックベッドの傾斜装置

【課題】上下に電磁振り子軌道を配置し、遠心力に打ち勝つ磁気的浮上力を得ることができる磁気トラックベッドの傾斜装置を提供する。
【解決手段】ビークルを磁気浮上させてレールトラック上を移動させる小規模の磁気浮上式搬送システムにおける磁気トラックベッドの傾斜装置において、支持装置1A,1Bと、この支持装置1A,1Bに支持され、傾斜可能に配置される軌道チューブ2と、この軌道チューブ2に固定され、下部と上部に配置される一対の電磁振り子軌道3,4と、この一対の電磁振り子軌道3,4の間を走行する高温超電導バルク体6を有するビークル5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ビークルを磁気浮上させてレールトラック上を移動させる小規模の磁気浮上式搬送システムにおける磁気トラックベッドの傾斜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術としては、本願発明者らにより提案された小規模の磁気浮上式搬送システムがある(下記特許文献1参照)。
【0003】
この小規模の磁気浮上式搬送システムは、ビークルを磁気浮上させてレールトラック上を移動させる小規模の磁気浮上式搬送システムにおいて、高温超電導バルク体からなるレールトラックと、磁石を搭載し、前記レールトラック上で磁気浮上するビークルと、前記レールトラックの所定の箇所で前記ビークルを加速する空気加速機とを具備するようにしている。
【特許文献1】特開2007−189820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した小規模の磁気浮上式搬送システムにおいては、曲線部での高速通過を行うには、浮上力≫遠心力でなければならず、かかる曲線部での高速通過を実現するには、技術的に困難であった。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するために、上下に電磁軌道を配置し、遠心力に打ち勝つ磁気的浮上力を得ることができる磁気トラックベッドの傾斜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕ビークルを磁気浮上させてレールトラック上を移動させる小規模の磁気浮上式搬送システムにおける磁気トラックベッドの傾斜装置において、支持装置と、この支持装置に支持され、傾斜可能に配置される軌道チューブと、この軌道チューブに固定され、下部と上部に配置される一対の電磁振り子軌道と、この一対の電磁振り子軌道の間を走行する磁石装置を有するビークルとを具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記電磁振り子軌道の傾斜角はそこを通過する前記ビークルの通過速度に依存させることを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔1〕記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記磁石装置が高温超電導バルク体であることを特徴とする。
【0009】
〔4〕上記〔1〕記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記磁石装置が永久磁石列であることを特徴とする。
【0010】
〔5〕上記〔1〕記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記磁石装置が電磁石列であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小規模の磁気浮上式搬送システムにおいて、軌道の曲線部においても、磁気浮上車両の高速通過を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置は、ビークルを磁気浮上させてレールトラック上を移動させる小規模の磁気浮上式搬送システムにおける磁気トラックベッドの傾斜装置において、支持装置と、この支持装置に支持され、傾斜可能に配置される軌道チューブと、この軌道チューブに固定され、下部と上部に配置される一対の電磁振り子軌道と、この一対の電磁振り子軌道の間を走行する磁石装置を有するビークルとを具備する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部の外観を示す概略斜視図、図2はその磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部への突入部の断面図(図1のAーA線断面図)、図3はその磁気トラックベッドの曲線部での傾斜状態を示す断面図(図1のBーB線断面図)、図4はその磁気トラックベッドの曲線部での傾斜装置の電磁振り子軌道のカント状況を示す模式図である。
【0015】
これらの図において、1A,1Bは支持装置、2は支持装置1A,1Bに支持され、傾斜可能な軌道チューブ、3は軌道チューブ2内の下部に固定される電磁振り子式軌道(下部)、4は電磁振り子式軌道(下部)3と対向するように軌道チューブ2内の上部に固定される電磁振り子軌道(上部)、5は高温超電導バルク体6を有する車体、7〜10は車体5を推進させる推進用ガス噴射口である。
【0016】
まず、図2に示すように、磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部への突入部においては、電磁振り子式軌道(下部)3と電磁振り子式軌道(上部)4は傾斜することなく上下に配置されている。
【0017】
次に、図3に示すような、磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部においては、支持装置1A,1Bに支持される軌道チューブ2を傾斜させることにより、電磁振り子式軌道(下部)3と電磁振り子式軌道(上部)4を傾斜させて配置する。
【0018】
すると、車体5に作用する車体の浮上力を遠心力に比べて大きくすることができるので、軌道の曲線部であっても車体5を高速通過させることができる。
【0019】
なお、電磁振り子式軌道3,4を傾斜させる角度は、そこを通過する磁気浮上車両の通過速度に依存させることができる。
【0020】
また、上記実施例では、車体5には高温超電導バルク体6を備えるように構成したが、これに代えて、永久磁石列あるいは電磁石列を備えるようにしてもよい。
【0021】
また、車体を軌道の曲線部を走行させる場合の電磁振り子軌道のカント状況は以下のようになる。
【0022】
通常、軌道の曲線の形態は様々である。例えば、図1に示すように、少数のチューブ2を連設することでカント表示ライン2Aを調整し、高温超電導バルク体6を有する車体5を若干右方向に曲げるように走行させる場合や、高温超電導バルク体6を有する車体5を大きく曲げるようにすることもできる。図4の場合は、高温超電導体バルク6を有する車体5を180度の方向へ変換する場合を示している。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置は、軌道の曲線部においても、磁気浮上車両の高速通過を行わせることができる小規模の磁気浮上式搬送システムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部の外観を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部への突入部の断面図(図1のA−A線断面図)である。
【図3】本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部での傾斜状態を示す断面図(図1のB−B線断面図)である。
【図4】本発明の磁気トラックベッドの傾斜装置の曲線部での電磁振り子軌道のカント状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1A,1B 支持装置
2 軌道チューブ
3 電磁振り子軌道(下部)
4 電磁振り子軌道(上部)
5 超電導バルク体を有する車体
6 超電導バルク体
7〜10 推進用ガス噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールトラック上をビークルを磁気浮上させて移動させる小規模の磁気浮上式搬送システムにおける磁気トラックベッドの傾斜装置において、
(a)支持装置と、
(b)該支持装置に支持され、傾斜可能に配置される軌道チューブと、
(c)該軌道チューブに固定され、下部と上部に配置される一対の電磁振り子軌道と、
(d)該一対の電磁振り子軌道の間を走行する磁石装置を有するビークルとを具備することを特徴とする磁気トラックベッドの傾斜装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記電磁振り子軌道の傾斜角はそこを通過する前記ビークルの通過速度に依存させることを特徴とする磁気トラックベッドの傾斜装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記磁石装置が高温超電導バルク体であることを特徴とする磁気トラックベッドの傾斜装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記磁石装置が永久磁石列であることを特徴とする磁気トラックベッドの傾斜装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気トラックベッドの傾斜装置において、前記磁石装置が電磁石列であることを特徴とする磁気トラックベッドの傾斜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−171806(P2009−171806A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10212(P2008−10212)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】