説明

磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリ

【課題】 磁気ヘッドにおけるライトコアとリードコアの浮上量を個別に調節することを可能とし、より高精度の情報の記録・再生を可能にする磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリ、並びにこれらを用いた磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】 ライトコア10とリードコア12とが設けられた磁気ヘッド50がサスペンション22に搭載されたヘッドアセンブリ60において、前記ライトコア10とリードコア12とが、スライダーの両側縁側に各々偏位し、互いに離間して形成されるとともに、前記ライトコア10とリードコア12の配置位置を結ぶ方向が、前記サスペンション22の長手方向に対して交差する配置に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリに関し、より詳細には、媒体から磁気ヘッドが浮上した状態における、磁気ヘッドのライトコアおよびリードコアと媒体との各々の離間間隔を調節可能とした磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリ並びにこれらを用いた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、磁気ディスク装置30はエンクロージャ32内に磁気ディスク34と、アーム36を揺動駆動するアクチュエータ38とを配置し、アーム36にサスペンション22を介して磁気ヘッド20を装着したものである。
図5は、磁気ヘッド20とサスペンション22とから形成されるヘッドアセンブリ40を示す。サスペンション本体22aの先端には磁気ヘッド20を搭載するジンバル部22bが設けられ、サスペンション本体22aの表面には磁気ヘッド20と制御回路とを電気的に接続するための配線パターン22cが設けられている。
【0003】
磁気ヘッド20には、磁気ディスク34との間で情報を読み書きするリードコアとライトコアが形成されており、磁気ディスク34が回転することによって生じる空気流により磁気ヘッド20が磁気ディスク34の表面から浮上して磁気ディスク34との間で情報を読み書きするように設けられている。
図6は、磁気ディスク34が回転して磁気ディスクの表面から磁気ヘッド20が浮上した状態を示す。同図では、スライダ20aの端部にライトコア10とリードコア12とが形成されている様子を説明的に示す。
【特許文献1】特開2000−207860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は媒体の大容量化とともに媒体の記録密度が一層増大してきている。このように媒体の記録密度が向上してくると、媒体との間で精度よく情報を読み書きするために、磁気ヘッド20の媒体表面からの浮上量を従来よりも低く抑える必要が生じる。しかしながら、磁気ヘッドの浮上量を低く抑えた場合には、磁気ヘッドの浮上量のばらつきをできるだけ小さくするようにしなければならない。磁気ヘッドの浮上量を低くした場合は浮上量が大きい場合にくらべて、浮上量のばらつきが情報の読み書き時のミスの発生により大きく影響するからである。
【0005】
また、従来の磁気ヘッドでは、ライトコア10とリードコア12はきわめて接近した位置に設けられているから、磁気ヘッドが媒体の表面から浮上した際の浮上量はライトコア10に対してもリードコア12に対してもほとんど等しくなる。したがって、従来の磁気ヘッドの場合には、ライトコア10とリードコア12の媒体表面からの浮上量を個別に設定するといったことができない。
【0006】
本発明は、このような磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドにおけるライトコアとリードコアによる情報の記録・再生に最適な浮上量に調節可能とし、浮上量のばらつきを防止して、高精度の情報の記録・再生を可能にする磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリ、並びにこれらを用いた磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、ライトコアとリードコアとが設けられた磁気ヘッドにおいて、前記ライトコアとリードコアとが、スライダーの両側縁側に各々偏位し、互いに離間して形成されていることを特徴とする。
また、前記ライトコアとリードコアとが、平面形状が矩形に形成されたスライダーの前端面に形成されていることを特徴とする。このようにスライダーの端面に離間してライトコアとリードコアとが配置されていることにより、磁気ヘッドを搭載したサスペンションをロール調整してライトコアをリードコアとの媒体表面からの浮上距離を個別に調節することが可能になる。
【0008】
また、ライトコアとリードコアとが設けられた磁気ヘッドがサスペンションに搭載されたヘッドアセンブリにおいて、前記ライトコアとリードコアとが、スライダーの両側縁側に各々偏位し、互いに離間して形成されるとともに、前記ライトコアとリードコアの配置位置を結ぶ方向が、前記サスペンションの長手方向に対して交差する配置に設けられていることを特徴とする。
また、前記サスペンションに、前記ライトコアおよびリードコアの媒体表面からの浮上距離を調節するロール調整が施されていることを特徴とする。
また、前記ロール調整が、前記サスペンションの幅方向の中心線に対して、サスペンションの傾き角を調節する操作によるものであることを特徴とする。
ロール調整によって、ヘッドアセンブリに搭載された磁気ヘッドのライトコアとリードコアの浮上量を最適値に調節することが可能となる。
【0009】
また、上記ヘッドアセンブリを用いて組み立てられた磁気ディスク装置は、高精度でかつ信頼性の高い装置として提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリによれば、磁気ヘッドに設けられたライトコアとリードコアの媒体表面からの浮上距離を個別に調節することが可能となり、ライトコアとリードコアに最適の浮上距離に設定することによって、情報の記録・再生を高精度で行うことが可能となる。これによって、記録密度がきわめて高密度となる媒体を使用する磁気ディスク装置に使用して、装置の信頼性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面とともに詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る磁気ヘッド50とヘッドアセンブリ60の一実施形態の概略構成を示し、図1(b)は、従来の磁気ヘッド20とヘッドアセンブリ40の概略構成を示す。ヘッドアセンブリ60はサスペンション22のジンバル部(不図示)に磁気ヘッド50を搭載してなるものである。図1は、ヘッドアセンブリについて、磁気ディスクに対向する面側の構成を示す。
【0012】
図1(a)に示す本実施形態の磁気ヘッド50では、スライダーの前端部に、スライダーの両側縁側に偏位した配置で、互いに離間してライトコア10とリードコア12とが設けられていることを示す。
一方、図1(b)に示す従来の磁気ヘッド20では、スライダーの前端部にライトコア10とリードコア12とが、きわめて近接した配置に設けられていることを示す。
【0013】
磁気ヘッド50を構成するスライダーの浮上面(ABS面)には、媒体が回転した際に生じる空気流と相互作用して、スライダーを媒体の表面から離間させる向きに浮上させようとする力を作用させるパターンと、空気流と相互作用して、スライダーを媒体の表面に引き寄せようとする力(負圧)を作用させるパターンとが形成されている。磁気ヘッド50の浮上量(基準となる浮上量)はこの浮上力と負圧とのバランスによって決まる。
【0014】
本実施形態の磁気ヘッド50は、このスライダーの浮上面に設けたパターン等によって決まる基準とする浮上量に対して、サスペンション22を幅方向の中心線の回りでロール調整することによってライトコア10とリードコア12の浮上量を個別に調節できるようにしたことを特徴とする。
このような調節が可能となるのは、平面形状が矩形に形成されたスライダーの両側縁の近傍に、各々ライトコア10とリードコア12とが個別に形成されて離間した配置に設けられていること、ライトコア10とリードコア12との配置方向をサスペンション22の幅方向の中心線に対して直交する(交差する)方向としたことによる。なお、ライトコア10とリードコア12との配置方向とは、ライトコア10とリードコア12の配置位置を結ぶ方向の意である。
【0015】
図2は、サスペンション22を中心線の回りでロール調整することによってライトコア10とリードコア12の浮上量が個別に調節可能となることを示すために、磁気ヘッド50が磁気ディスク34の面から浮上した状態を、磁気ヘッド50の前端面側から見た状態を示す。
図2(a)は、磁気ディスク34の面に対してサスペンション22の面が平行になっている場合、図2(b)は、サスペンション22を中心線に対して回転させてロール調整した状態を示す。
図2(a)に示すように、磁気ディスク34の面にサスペンション22の面が平行になっている場合は、磁気ヘッド50に設けられているライトコア10とリードコア12の浮上量H0は等しくなる。
【0016】
一方、サスペンション22を中心線に対して回転させるロール調整を行った場合は、ライトコア10の浮上量H1と、リードコア12の浮上量H2が相違する。図示例は、ライトコア10の媒体表面からの浮上距離が、リードコア12の媒体表面からの浮上距離よりも大きくなる(H1>H2)ように調節した場合を示す。
ライトコア10とリードコア12の媒体表面からの浮上距離はサスペンション22をロール調整する際の回転方向および回転角度、ライトコア10とリードコア12との離間間隔によって決められる。したがって、スライダーに形成されるライトコア10とリードコア12の配置位置等を考慮して、サスペンション22の回転量を調節することにより、適宜ライトコア10とリードコア12の媒体表面からの浮上距離を調節することが可能になる。
【0017】
実際の設計に際しては、スライダーの設計に基づく磁気ヘッド50の基準となる浮上量、サスペンション22の弾性、スライダーの大きさ等の種々の要件に基づいてライトコア10とリードコア12の媒体表面からの浮上量を調節すればよい。
磁気ディスク34等の媒体の記録密度がきわめて高密度になってきたりした場合には、ライトコア10とリードコア12を用いて情報を記録・再生する際の浮上距離の最適値がライトコア10とリードコア12とで異なることがあり得る。このようにライトコア10とリードコア12との浮上距離の最適値が異なるような場合には、本実施形態の磁気ヘッド50およびヘッドアセンブリ60による構成が有効に利用できる。
【0018】
サスペンション22をロール調整する方法としては、たとえばサスペンション22にレーザ光を照射し、サスペンション22の基材を構成する金属を熱的に塑性変形させる方法が利用できる。
図3は、サスペンション22にレーザ光をスポット照射し、サスペンション22を熱変形させてロール調整する方法を示す。同図でS1、S2がレーザ光の照射位置を示す。サスペンション22のロール調整は、サスペンション22の表裏面を含めてレーザ光を照射する位置、レーザ光のスポット調節等によって適宜調節することが可能である。
【0019】
また、本実施形態の磁気ヘッド50を搭載したヘッドアセンブリ60は、サスペンション22に磁気ヘッド50を搭載したアセンブリ工程で、磁気ヘッド50が傾いて装着されたような場合や、サスペンション22の製造工程におけるばらつきによって磁気ヘッド50が正規位置から位置ずれしてアセンブリされたような場合に、サスペンション22をロール調整して磁気ヘッド50の位置ずれを補正するといったように用いることもできる。媒体の記録密度が向上し、ヘッドアセンブリ60の取り付け精度にさらに高精度が求められるようになってきた場合には、製品の製造工程におけるばらつき(公差)を補正して調整するといったことが必要になってくる。このような調整の目的としても本発明に係る磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリは好適に使用することができる。
【0020】
このような補正による調整が可能であることから、本発明に係る磁気ヘッドおよびヘッドアセンブリは製品の不良率を効果的に引き下げることが可能であり、高精度が求められるヘッドアセンブリとしての歩留まりを向上させることが可能になる。
そして、本発明に係る磁気ヘッドおよびこの磁気ヘッドを搭載したヘッドアセンブリを組み立て部品として使用することによって高精度で信頼性の高い磁気ディスク装置として提供することが可能になる。
【0021】
なお、本発明に係る磁気ヘッド50においては、ライトコア10とリードコア12とを所定距離離間させた配置に形成する必要があるが、スライダーにライトコア10とリードコア12とを離間させて配置して磁気ヘッド50を形成する方法としては、従来のライトコア10とリードコア12をスライダーに作り込む磁気ヘッドの製造工程をそのまま利用することができる。
【0022】
従来の磁気ヘッドの製造工程では、ライトコア10を形成する工程とリードコア12を形成する工程とは別工程となっており、ライトコア10を形成した後にリードコア12を形成する。したがって、ライトコア10を形成した後、ライトコア10とは別個の位置(スライダー上で所定距離離間した位置)にリードコア12を形成すればよい。ライトコア10あるいはリードコア12は成膜工程およびエッチング工程等によって形成するものであり、成膜工程およびエッチング工程によって基材の特定の位置に素子を形成するといったことは容易に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る磁気ヘッドと従来の磁気ヘッドを用いたヘッドアセンブリの概略構成を示す説明図である。
【図2】サスペンションをロール調整することによってライトコアとリードコアの浮上量を調節する方法を示す説明図である。
【図3】サスペンションをロール調整する方法を示す説明図である。
【図4】磁気ディスク装置の一般的な構成を示す平面図である。
【図5】ヘッドアセンブリの斜視図である。
【図6】磁気ヘッドが媒体の表面から浮上した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ライトコア
12 リードコア
20、50 磁気ヘッド
20a スライダ
22 サスペンション
22a サスペンション本体
22b ジンバル部
22c 配線パターン
30 磁気ディスク装置
34 磁気ディスク
40、60 ヘッドアセンブリ
50 磁気ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトコアとリードコアとが設けられた磁気ヘッドにおいて、
前記ライトコアとリードコアとが、スライダーの両側縁側に各々偏位し、互いに離間して形成されていることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
前記ライトコアとリードコアとが、平面形状が矩形に形成されたスライダーの前端面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
ライトコアとリードコアとが設けられた磁気ヘッドがサスペンションに搭載されたヘッドアセンブリにおいて、
前記ライトコアとリードコアとが、スライダーの両側縁側に各々偏位し、互いに離間して形成されるとともに、
前記ライトコアとリードコアの配置位置を結ぶ方向が、前記サスペンションの長手方向に対して交差する配置に設けられていることを特徴とするヘッドアセンブリ。
【請求項4】
前記サスペンションに、前記ライトコアおよびリードコアの媒体表面からの浮上距離を調節するロール調整が施されていることを特徴とする請求項3記載のヘッドアセンブリ。
【請求項5】
前記ロール調整が、前記サスペンションの幅方向の中心線に対して、サスペンションの傾き角を調節する操作によるものであることを特徴とする請求項4記載のヘッドアセンブリ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項記載のヘッドアセンブリを用いて組み立てられていることを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−179046(P2006−179046A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368587(P2004−368587)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】