説明

磁気ヘッドの位置決め方法および装置

【課題】複数のバーストパターンから読み出されるバースト信号の振幅に基づいて磁気ヘッドの位置決めを行う際に、各バーストパターンの位置ずれの影響を低減することが可能な、磁気ヘッドの位置決め方法および装置を提供する。
【解決手段】本発明の磁気ヘッドの位置決め装置は、磁気ヘッドにより複数のバーストパターンから読み出される各バースト信号の振幅を補正する手段50と、補正後の複数のバースト信号の振幅に基づいて、軌道に対する磁気ヘッドの偏差を算出する手段60と、磁気ヘッドの偏差に基づいて、軌道に磁気ヘッドを位置決めする手段70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドの位置決め方法および装置に関し、特にバースト信号の信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の磁気ディスクには、径方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンが形成され、これらによって、データを記録するための軌道が定められる。磁気ディスク装置は、磁気ヘッドがこれらバーストパターンから読み出すバースト信号に基づいて、当該軌道に対する磁気ヘッドの偏差を算出し、磁気ヘッドを位置決めする。
【特許文献1】特開平8−212733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、複数のバーストパターンは、パターン形成時の磁気ヘッドの位置揺らぎを要因として、個別に位置ずれを有していることがあり、このため、算出される磁気ヘッドの偏差に、こうした位置ずれの影響が含まれてしまうことがある。例えばバーストパターン形成時に、こうした位置ずれの影響を含んだ磁気ヘッドの偏差に基づいて磁気ヘッドが位置決めされ、その状態で新たなバーストパターンが形成されると、バーストパターンの形成が進むにつれて位置ずれが累積してしまう虞がある。
【0004】
しかしながら、こうした位置ずれの影響を含んだ磁気ヘッドの偏差からは、各バーストパターンの位置ずれの影響がどの程度含まれているかを見積もることが困難であり、それぞれを取り除くことが容易でない。
【0005】
特に、近年の磁気ディスク装置では、磁気ヘッドの偏差を算出する際に、非線形性の低減などを目的として様々な関数やルックアップテーブルを用いているので、算出された磁気ヘッドの偏差から各バーストパターンの位置ずれの影響を取り除くことが容易でない。
【0006】
なお、特許文献1には、磁気ヘッドの目標位置を補正しながら新たなトラックを形成することが記載されているが、複数のバーストパターンから読み出されるバースト信号に基づいて磁気ヘッドの位置決めを行う際に、各バーストパターンの位置ずれの影響を低減することについては考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、複数のバーストパターンから読み出されるバースト信号に基づいて磁気ヘッドの位置決めを行う際に、各バーストパターンの位置ずれの影響を低減することが可能な、磁気ヘッドの位置決め方法および装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の磁気ヘッドの位置決め方法は、磁気ヘッドの走査方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンにより定まる軌道に磁気ヘッドを位置決めする、磁気ヘッドの位置決め方法であって、前記磁気ヘッドにより前記複数のバーストパターンから読み出される各バースト信号の振幅を補正し、前記補正後の複数のバースト信号の振幅に基づいて、前記軌道に対する前記磁気ヘッドの偏差を算出し、前記磁気ヘッドの偏差に基づいて、前記軌道に前記磁気ヘッドを位置決めする、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様では、前記各バースト信号の振幅を、予め取得される、前記各バーストパターンの前記走査方向の位置ずれに係る位置ずれ情報に基づいて補正する。
【0010】
この態様では、前記位置ずれ情報は、前記バーストパターンが形成された際の前記磁気ヘッドの偏差としてもよい。
【0011】
この態様では、前記磁気ヘッドを位置決めした状態で、新たなバーストパターンを形成してもよい。
【0012】
この態様では、前記新たなバーストパターンが形成された際の前記磁気ヘッドの偏差を、前記位置ずれ情報として記憶部に記憶してもよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記各バースト信号の振幅を、前記位置ずれ情報に加え、前記バーストパターン内の位置と前記バースト信号の振幅との関係に係る振幅特性情報に基づいて補正する。
【0014】
この態様では、前記バーストパターン内の前記磁気ヘッドにより前記バースト信号が読み出される位置での、前記バースト信号の振幅の変化率を、前記振幅特性情報として取得してもよい。
【0015】
この態様では、前記バーストパターン内の前記磁気ヘッドにより前記バースト信号が読み出される位置を挟む、少なくとも2つの位置からそれぞれ読み出される前記バースト信号の振幅の変化率を、前記振幅特性情報として取得してもよい。
【0016】
この態様では、所定数おきの前記軌道について、前記各バーストパターンの前記振幅特性情報を取得してもよい。
【0017】
本発明の一態様では、前記磁気ヘッドにより前記各バースト信号が読み出される前までに、該各バースト信号の振幅の補正量を求める。
【0018】
本発明の磁気ヘッドの位置決め装置は、磁気ヘッドの走査方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンにより定まる軌道に磁気ヘッドを位置決めする、磁気ヘッドの位置決め装置であって、前記磁気ヘッドにより前記複数のバーストパターンから読み出される各バースト信号の振幅を補正する補正手段と、前記補正後の複数のバースト信号の振幅に基づいて、前記軌道に対する前記磁気ヘッドの偏差を算出する算出手段と、前記磁気ヘッドの偏差に基づいて、前記軌道に前記磁気ヘッドを位置決めする制御手段と、を備える。
【0019】
本発明の磁気ヘッドの位置決め装置は、磁気ヘッドの走査方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンにより定まる軌道に磁気ヘッドを位置決めする、磁気ヘッドの位置決め装置であって、前記磁気ヘッドにより前記複数のバーストパターンから読み出される複数のバースト信号の振幅値と、これらに対応する複数の補正値と、が各々入力され、補正された複数のバースト信号の振幅値を各々求めて、出力する、複数の演算回路を備え、前記補正された複数のバースト信号の振幅値が、前記軌道に対する前記磁気ヘッドの偏差の算出に供される、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様では、前記磁気ヘッドの偏差の算出に供される信号を、補正されていない前記複数のバースト信号の振幅値と、前記補正された複数のバースト信号の振幅値とで切り替える選択回路を更に備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のバーストパターンから読み出される各バースト信号の振幅を、磁気ヘッドの偏差を算出する前に補正することから、各バーストパターンの位置ずれの影響が低減された磁気ヘッドの偏差を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気ヘッドの位置決め装置の構成例を表すブロック図である。本実施形態において、磁気ヘッドの位置決め装置は、磁気ディスク2にサーボパターンを形成する磁気ディスク装置1として構成される。
【0024】
磁気ディスク装置1の筐体9には、磁気ディスク2及びヘッドアッセンブリ6が収納されている。磁気ディスク2は、筐体9の底部に設けられたスピンドルモータ3に取り付けられている。この磁気ディスク2の所定の周位置には、サーボデータ領域21sが設けられている。サーボデータ領域21sには、後述する方法によって、アドレスパターンやバーストパターンを含むサーボパターンが形成される。
【0025】
ヘッドアッセンブリ6は、磁気ディスク2の隣で旋回可能に支承されている。ヘッドアッセンブリ6の先端部には、磁気ヘッド4が支持されている。他方、ヘッドアッセンブリ6の後端部には、ボイスコイルモータ7が設けられている。ボイスコイルモータ7は、磁気ヘッド4を所定の走査方向に移動させるアクチュエータであり、ヘッドアッセンブリ6を旋回駆動することで、磁気ヘッド4を磁気ディスク2の半径方向に相対移動させる。
【0026】
また、磁気ディスク装置1は、筐体9外の基板に、制御回路10、チャネル回路13及びドライバ回路17を有している。この制御回路10は、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、ハードディスクコントローラ(HDC)及びメモリ等の記憶部を含んでいる。
【0027】
制御回路10は、磁気ディスク2にサーボパターンを形成するためのデータを生成し、チャネル回路13を介してアンプ回路14に出力する。アンプ回路14は、このデータを記録信号に変換して、磁気ヘッド4に出力する。磁気ヘッド4は、この記録信号を記録磁界に変換して磁気ディスク2に印加することで、磁気ディスク2にサーボパターンを形成する。
【0028】
他方、磁気ヘッド4は、磁気ディスク2に形成されたサーボパターンから漏れ出る磁界を再生信号に変換し、アンプ回路14に出力する。アンプ回路14は、この再生信号を増幅し、チャネル回路13に出力する。チャネル回路13は、サーボデータ領域21sの配列周期に対応するサンプリング周期で再生信号からデータを抽出し、制御回路10に出力する。
【0029】
制御回路10は、チャネル回路13から入力されるデータに基づいて、磁気ヘッド4の位置決め制御を行う。具体的には、制御回路10は、チャネル回路13から入力されるデータに含まれるバースト信号から、目標となる軌道に対する磁気ヘッド4の偏差を算出するとともに、この偏差を抑制するための制御信号を生成し、ドライバ回路17を介してボイスコイルモータ7に出力する。この磁気ヘッド4の位置決め制御については、後に詳しく述べる。
【0030】
なお、本実施形態では、磁気ディスク2にサーボパターンを形成する際に、筐体9内の磁気ヘッド4及びボイスコイルモータ7を、磁気ディスク装置1が有する制御回路10、チャネル回路13及びドライバ回路17により制御しているが、この形態に限られず、筐体9内の磁気ヘッド4及びボイスコイルモータ7を外部機器により制御するようにしてもよい。
【0031】
図2は、磁気ディスク装置1において実現される、磁気ディスク2にサーボパターンを形成する方法を表すフローチャートである。サーボパターンが形成されていない磁気ディスク2がセットされた磁気ディスク装置1は、まず、スピンドルモータ3を起動して磁気ディスク2の回転を開始する(S11)。次に、磁気ディスク装置1は、磁気ヘッド4を磁気ディスク2上にロードし、ボイスコイルモータ7をクラッシュストップ(不図示)に押し付けて、磁気ヘッド4を磁気ディスク2の最内周付近に保持する(S12)。その状態で、磁気ディスク装置1は、磁気ヘッド4により磁気ディスク2の最内周付近に初期サーボパターンを形成する(S13)。こうして初期サーボパターンが形成されたら、磁気ディスク装置1は、磁気ディスク2の内周から外周に向けて自己伝播動作を行い、磁気ディスク2の全体にサーボパターンを形成する(S14)。そして、磁気ヘッド4が外周まで到達して必要なサーボパターンが形成されたら、磁気ヘッド4を磁気ディスク2上からアンロードする(S15)。磁気ヘッド4の退避を確認したら、スピンドルモータ3を停止してサーボパターン動作を終了する(S16)。
【0032】
図3は、自己伝播動作(S14)時の磁気ディスク2の要部拡大図である。同図では、サーボパターンのうちバーストパターン32a〜32dの形成位置が拡大されて示されており、また、磁気ヘッド4の記録素子41及び再生素子43も示されている。自己伝播動作(S14)において、磁気ディスク装置1は、磁気ヘッド4に含まれる記録素子41により、バーストパターン32a〜32dを1軌道分ずつ形成し、磁気ディスク2の外周側に増殖させていく。
【0033】
磁気ディスク2には、径方向に互いに位置が異なる4種類A〜Dのバーストパターン32a〜32dが形成される。これらバーストパターン32a〜32dは、磁気ディスク2の回転軸を中心とする円周状の軌道を定めている。具体的には、バーストパターン32a,32bがデータを書き込む際の中心となる軌道を定め、バーストパターン32c,32dがその中間の軌道を定める。こうした各バーストパターン32a〜32dは、各軌道に対する磁気ヘッド4の偏差(相対位置)を知らせるためのバースト信号を表す。
【0034】
磁気ヘッド4は、新たなバーストパターン32a〜32dを形成する記録素子41と、この記録素子41に対して磁気ディスク2の内周側にずれ、既に形成されたバーストパターン32a〜32dからバースト信号を読み出す再生素子43と、を有している。図3では、記録素子41と再生素子43との磁気ディスク2の径方向に沿ったオフセット量Δwrが5〜6軌道分である場合の例が示されている。
【0035】
例えば、記録素子41により第N番目軌道にバーストパターン32cを形成する際には、再生素子43は、既に形成されている第N−4番目軌道のバーストパターン32c、第N−5番目軌道のバーストパターン32b、第N−6番目軌道のバーストパターン32d、第N−7番目軌道のバーストパターン32aからそれぞれバースト信号を読み出し、磁気ヘッド4の位置決め制御に供する。
【0036】
なお、各バーストパターン32a〜32dは、通常、理想的な円周軌道とはなっておらず、径方向に位置ずれを起こしていることがある。こうした位置ずれは、各バーストパターン32a〜32dを形成する際の磁気ヘッド4の位置誤差に起因する。例えば、上述の第N−4番目軌道のバーストパターン32c、第N−5番目軌道のバーストパターン32b、第N−6番目軌道のバーストパターン32d、第N−7番目軌道のバーストパターン32aは、図4(a)〜(d)に示されるように磁気ヘッド4の記録素子41によってそれぞれ形成されるが、このときに磁気ヘッド4の位置誤差が生じることによって、それぞれ個別に位置ずれを起こしている。
【0037】
そこで、後述するバースト信号の振幅補正に用いるため、制御回路10は、図5に示されるように、各バーストパターン32a〜32dの形成期間中に、磁気ヘッド4の位置誤差をセクタ毎に1周分に亘って取得し、位置ずれ情報として記憶部に記憶する。
【0038】
図6は、磁気ヘッド4の位置決め制御を行う制御回路10の具体的な構成例を表すブロック図である。制御回路10は、磁気ヘッド4の再生素子43により読み出される4種類のバースト信号の振幅を補正するための振幅補正量を出力する補正量生成部(補正手段)50と、補正された4種類のバースト信号の振幅に基づき、磁気ヘッド4の位置誤差を求める位置算出部(算出手段)60と、磁気ヘッド4の位置誤差に応じてボイスコイルモータ7を制御する位置決めコントローラ(制御手段)70とを有する。
【0039】
上述したように、バーストパターン32a〜32dはそれぞれ位置ずれを起こしており、制御回路10に入力される各バースト信号には、こうした位置ずれの影響が含まれている。制御回路10は、こうした位置ずれの影響を含んだ各バースト信号の振幅を、位置信号を算出する前に補正する。
【0040】
すなわち、位置算出部60は、各バースト信号の振幅を、補正量生成部50から入力される各振幅補正量により補正して、位置信号算出部64に出力する加算部62a〜62dを有する。
【0041】
位置信号算出部64は、こうして入力される補正後のバースト信号に基づいて、磁気ヘッド4の現在位置を表す位置信号を算出し、誤差信号生成部66に出力する。誤差信号生成部66は、磁気ヘッド4の目標位置と現在位置との差分を求めることで、磁気ヘッドの位置誤差を表す位置誤差信号(PES)を生成する。
【0042】
位置決めコントローラ70は、こうして求められる位置誤差信号に応じてボイスコイルモータ7を制御し、磁気ヘッド4を目標位置に位置決めする。そして、制御回路10は、このように磁気ヘッド4を位置決めした状態で、記録素子41により新たなサーボパターンを形成する。また、制御回路10は、このときの磁気ヘッド4の位置誤差を取得して、位置ずれ情報として記憶部に記憶する。
【0043】
なお、上述の位置誤差信号を生成する際に与えられる目標位置を、磁気ディスク2の回転角に応じて変化させることで、磁気ディスク2の回転軸から中心が離れた円周状の軌道や、他の形状の軌道にも、本実施形態の磁気ヘッドの位置決め方法を適用できる。従って、データの読み書きが行われるトラックが磁性層の有無のパターンで構成される、いわゆるディスクリートトラックメディア(DTM)の場合にも、本実施形態の磁気ヘッドの位置決め方法を適用できる。
【0044】
以下、補正量生成部50の具体的な構成について説明する。補正量生成部50は、各バーストパターン32a〜32dの位置ずれ量を表す位置ずれ情報を保持するメモリ52a〜52dと、再生素子43の位置での各バースト信号の振幅勾配を表す振幅特性情報(詳細は後述する)を保持するメモリ54a〜54dと、これらをそれぞれ掛け合わせて、各バースト信号の振幅補正量を得る乗算部56a〜56dとを有する。この補正量生成部50の動作を、図7を用いて説明する。
【0045】
図7(a)は、バーストパターン32a〜32dと、これらから読み出される各バースト信号の振幅プロファイル82a〜82dとの位置関係を表す図である。これら振幅プロファイル82a〜82dは、バーストパターン32a〜32dの中央で振幅が最大となり、中央から離れるに従って振幅が減衰するピーク形状を有している。そして、再生素子43が位置する半径位置Rで、各バースト信号の振幅84a〜84dが得られる。すなわち、半径位置Rを表す直線が各振幅プロファイル82a〜82dと交わる各点が、再生素子43が読み出す各バースト信号の振幅84a〜84dを表す。
【0046】
また、図7(a),(b)には、バーストパターン32bが位置ずれを起こすことなく形成されたと仮定した場合の理想的なバーストパターン302bと、これから得られる理想的な振幅プロファイル802bとを示している。このように、バーストパターン32bが、理想的なバーストパターン302bに対して位置ずれを起こしている場合、半径位置Rでバーストパターン32bから読み出されるバースト信号の振幅(測定振幅)84bは、半径位置Rで理想的なバーストパターン302bから読み出されるバースト信号の振幅(理想振幅)804bと相違してしまう。
【0047】
そこで、これら測定振幅84bと理想振幅804bとの差分を補償する振幅補正量が、バーストパターン32bの位置ずれ量ΔBと、半径位置Rでのバースト信号の振幅勾配とから求められる。
【0048】
すなわち、図6に示される補正量生成部50では、各メモリ52a〜52dに保持された位置ずれ情報が表す、各バーストパターン32a〜32dの位置ずれ量と、各メモリ54a〜54dに保持された振幅特性情報が表す、再生素子43の位置での各バースト信号の振幅勾配と、が乗算部56a〜56dによりそれぞれ掛け合わされることで、各バースト信号の測定振幅と理想振幅との差分を補償する振幅補正量が得られる。
【0049】
ここで、各メモリ52a〜52dに保持される位置ずれ情報は、上述したように、過去に各バーストパターン32a〜32dが形成されたときの磁気ヘッド4の位置誤差が記憶されたものであり、各バーストパターン32a〜32dの位置ずれ量を表す。
【0050】
他方、各メモリ54a〜54dに保持される振幅特性情報は、各バーストパターン32a〜32d内の位置と、これらから得られる各バースト信号の振幅との関係を表す情報であり、本実施形態では、再生素子43が位置する半径位置Rでの各バースト信号の振幅勾配(振幅変化率)を表す。こうした振幅勾配は、図8に示されるように、再生素子43が位置する半径位置Rを挟む2つの半径位置R1,R2でのバースト信号の振幅をそれぞれ測定することで求められる。
【0051】
なお、これに限られず、磁気ヘッド4を走査方向に微少な距離ずつ移動させてボイスコイルモータ7への通電量の較正を行う、いわゆるキャリブレーション時に、各バースト信号の全体的な振幅プロファイル82a〜82dを測定し、記憶しておき、これを基に、再生素子43が位置する半径位置Rでの各バースト信号の振幅勾配を求めるようにしてもよい。
【0052】
また、こうした振幅特性情報は、例えば数百本程度おきの軌道について取得すればよい。すなわち、バーストパターン32a〜32dの中で磁気ヘッド4の再生素子43が位置決めされる位置は、磁気ディスク2の半径位置に応じて変化するが、その変化の度合いが微少であるため、例えば数百ステップ程度おきの軌道について振幅特性情報を取得し、この振幅特性情報をその間の軌道に適用すればよい。
【0053】
以上に説明した本実施形態では、バーストパターン32a〜32dから読み出される各バースト信号の振幅を個別に補正した後に、補正後のバースト信号に基づいて位置信号を算出することから、各バーストパターン32a〜32dの位置ずれの影響が位置信号に及ぶことを適切に抑制できる。これにより、バーストパターン32a〜32dを形成する際に、位置ずれが累積してしまうことを抑制できる。
【0054】
特に、近年では、位置信号を算出する際に、非線形性の低減などを目的として複雑なアルゴリズムを用いているため、算出された位置信号から各バーストパターンの位置ずれの影響を除くことは容易でないが、本実施形態のように補正後のバースト信号から位置信号を算出することで、各バーストパターン32a〜32dの位置ずれの影響が位置信号に及ぶことを適切に抑制できる。また、本実施形態では、位置信号を算出するアルゴリズムに依存せずに、各バーストパターン32a〜32dの位置ずれの影響が位置信号に及ぶことを適切に抑制できる。
【0055】
次に、上記振幅補正量を算出するタイミングの例について説明する。図9に示されるように、振幅補正量を算出する処理は、対象となるセクタのバーストパターン32a〜32dからバースト信号が読み出される前までに実施される。そして、対象となるセクタのバーストパターン32a〜32dからバースト信号が読み出されると、これらバースト信号の振幅を、予め求めておいた振幅補正量により個別に補正する処理が実施される。
【0056】
具体的には、サーボゲートがアサートされて、第M番目のセクタのバーストパターン32a〜32dからバースト信号が読み出されると、予め算出された振幅補正量によりバースト信号が個別に補正された上で、第M番目のセクタにおける位置信号が算出され、これを基にボイスコイルモータ7の制御信号が算出される。そして、次のセクタである第M+1番目のセクタで使用する振幅補正量が求められる。こうした一連の処理が各セクタにおいて実施される。
【0057】
このように、次のセクタで使用する振幅補正量を、当該セクタからバースト信号が読み出される前までに実施しておくことで、当該セクタからバースト信号を読み出した直後に位置信号を算出が可能となり、磁気ヘッド4の位置決め制御の遅延を防止できる。
【0058】
次に、上記制御回路10におけるバースト信号の振幅を補正する処理を行う部分の変形例について説明する。図10は、当該変形例の回路例を表す図である。制御回路10には、バーストパターン32a〜32dから読み出された複数のバースト信号の振幅値をデジタル値としてそれぞれ格納するレジスタ101a〜101dと、これら振幅値に対する補正値をデジタル値としてそれぞれ格納するレジスタ103a〜103dと、振幅値と補正値をそれぞれ加算する加算回路(演算回路)105a〜105dと、が含まれる。ここで、レジスタ103a〜103dに格納される補正値は、上記図6の補正量生成部50により算出される振幅補正量である。
【0059】
また、制御回路10には、加算回路105a〜105dにより加算された値、すなわち補正後のバースト信号の振幅値(補正振幅値)をそれぞれ格納するレジスタ109a〜109dが更に含まれる。ここで、レジスタ109a〜109dに格納された補正振幅値は、上記図6の位置信号算出部64に出力され、磁気ヘッド4の制御に供される。このように構成されることで、位置信号を作成するための補正振幅値を迅速に得ることができ、磁気ヘッド4の位置決め制御の遅延を防止できる。
【0060】
また、制御回路10には、レジスタ109a〜109dに格納される値を、補正されていないバースト信号の振幅値、すなわちレジスタ101a〜101dに格納されている振幅値と、補正されたバースト信号の振幅値、すなわち加算回路105a〜105dにより加算された補正振幅値と、で切り替えるマルチプレクサ(選択回路)107a〜107dが更に含まれる。これにより、磁気ヘッド4の位置決めに用いられる値を、補正されたバースト信号の振幅値と、補正されていないバースト信号の振幅値とで切り替えることができる。例えば、サーボパターン形成時には補正されたバースト信号の振幅値が選択され、製品となった後のデータ読み書き時には、補正されていないバースト信号の振幅値が選択される。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。例えば、上記磁気ヘッド4の位置決め制御は、磁気ディスク2にサーボパターンを形成する際のみに限られず、製品としての磁気ディスク装置においてデータを読み書きする際にも適用できる。また、補正量生成部50における振幅補正量の生成は、上述の態様に限られず、例えば位置ずれ情報が表すバーストパターンの位置ずれ量に所定の値を乗ずる等して、振幅補正値を得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気ヘッドの位置決め装置の構成例を表すブロック図である。
【図2】磁気ディスクにサーボパターンを形成する方法を表すフローチャートである。
【図3】自己伝播動作時の磁気ディスクの要部拡大図である。
【図4】各バーストパターンの形成を説明する図である。
【図5】位置ずれ情報を説明する図である。
【図6】制御回路の具体的な構成例を表すブロック図である。
【図7】バーストパターンと振幅プロファイルとの位置関係を表す図である。
【図8】振幅特性情報を説明する図である。
【図9】振幅補正量の算出タイミングを説明する図である。
【図10】変形例の回路例を表す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 磁気ヘッドの位置決め装置(磁気ディスク装置)、2 磁気ディスク、3 スピンドルモータ、4 磁気ヘッド、6 ヘッドアッセンブリ、7 ボイスコイルモータ、9 筐体、10 制御回路、13 チャネル回路、14 アンプ回路、17 ドライバ回路、21s サーボデータ領域、32a〜32d バーストパターン、41 記録素子、43 再生素子、50 補正量生成部(補正手段)、52a〜52d メモリ、54a〜54d メモリ、56a〜56d 乗算部、60 位置算出部(算出手段)、62a〜62d 加算部、64 位置信号算出部、66 誤差信号生成部、70 位置決めコントローラ(制御手段)、82a〜82d 振幅プロファイル、84a〜84d バースト信号の振幅、101a〜101d レジスタ、103a〜103d レジスタ、105a〜105d 加算回路(演算回路)、107a〜107d マルチプレクサ(選択回路)、109a〜109d レジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドの走査方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンにより定まる軌道に磁気ヘッドを位置決めする、磁気ヘッドの位置決め方法であって、
前記磁気ヘッドにより前記複数のバーストパターンから読み出される各バースト信号の振幅を補正し、
前記補正後の複数のバースト信号の振幅に基づいて、前記軌道に対する前記磁気ヘッドの偏差を算出し、
前記磁気ヘッドの偏差に基づいて、前記軌道に前記磁気ヘッドを位置決めする、
ことを特徴とする磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項2】
前記各バースト信号の振幅を、予め取得される、前記各バーストパターンの前記走査方向の位置ずれに係る位置ずれ情報に基づいて補正する、
請求項1に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項3】
前記位置ずれ情報は、前記バーストパターンが形成された際の前記磁気ヘッドの偏差である、
請求項2に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項4】
前記磁気ヘッドを位置決めした状態で、新たなバーストパターンを形成する、
請求項2に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項5】
前記新たなバーストパターンが形成された際の前記磁気ヘッドの偏差を、前記位置ずれ情報として記憶部に記憶する、
請求項4に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項6】
前記各バースト信号の振幅を、前記位置ずれ情報に加え、前記バーストパターン内の位置と前記バースト信号の振幅との関係に係る振幅特性情報に基づいて補正する、
請求項2に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項7】
前記バーストパターン内の前記磁気ヘッドにより前記バースト信号が読み出される位置での、前記バースト信号の振幅の変化率を、前記振幅特性情報として取得する、
請求項6に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項8】
前記バーストパターン内の前記磁気ヘッドにより前記バースト信号が読み出される位置を挟む、少なくとも2つの位置からそれぞれ読み出される前記バースト信号の振幅の変化率を、前記振幅特性情報として取得する、
請求項6に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項9】
所定数おきの前記軌道について、前記各バーストパターンの前記振幅特性情報を取得する、
請求項6に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項10】
前記磁気ヘッドにより前記各バースト信号が読み出される前までに、該各バースト信号の振幅の補正量を求める、
請求項1に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項11】
磁気ヘッドの走査方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンにより定まる軌道に磁気ヘッドを位置決めする、磁気ヘッドの位置決め装置であって、
前記磁気ヘッドにより前記複数のバーストパターンから読み出される各バースト信号の振幅を補正する補正手段と、
前記補正後の複数のバースト信号の振幅に基づいて、前記軌道に対する前記磁気ヘッドの偏差を算出する算出手段と、
前記磁気ヘッドの偏差に基づいて、前記軌道に前記磁気ヘッドを位置決めする制御手段と、
を備える磁気ヘッドの位置決め装置。
【請求項12】
磁気ヘッドの走査方向に互いに位置が異なる複数のバーストパターンにより定まる軌道に磁気ヘッドを位置決めする、磁気ヘッドの位置決め装置であって、
前記磁気ヘッドにより前記複数のバーストパターンから読み出される複数のバースト信号の振幅値と、これらに対応する複数の補正値と、が各々入力され、補正された複数のバースト信号の振幅値を各々求めて、出力する、複数の演算回路を備え、
前記補正された複数のバースト信号の振幅値が、前記軌道に対する前記磁気ヘッドの偏差の算出に供される、
ことを特徴とする磁気ヘッドの位置決め装置。
【請求項13】
前記磁気ヘッドの偏差の算出に供される信号を、補正されていない前記複数のバースト信号の振幅値と、前記補正された複数のバースト信号の振幅値とで切り替える選択回路を更に備える、
請求項11に記載の磁気ヘッドの位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−49742(P2010−49742A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212885(P2008−212885)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】