説明

磁気分離装置及び廃水処理装置

【課題】本発明は、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみの簡便な装置によって磁性フロックを効率よく回収し清澄な処理水を効率よく得ることができる磁気分離装置及び廃水処理装置を提供する。
【解決手段】分離器30を、磁石群34をドラム回転体32の内周面近傍に配置させた磁気ドラム構造とし、ドラム回転体32と磁石群34とを一体化して廃水38の流れ方向と同一方向に回転させ、ドラム回転体32の表面とスクレーパ46とが接する位置に掻き取りブラシ52を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気分離装置及び廃水処理装置に関し、特に浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水から浮遊固形物、油、重金属を分離して処理水を得る磁気分離装置及び廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水から浮遊固形物、油、重金属を分離する装置として、磁気分離装置を使用した廃水処理装置が従来から知られている。この廃水処理装置によれば、廃水に含まれる浮遊固形物、油、重金属を凝集処理する際に磁性粉を廃水に添加し、磁性粉を含む凝集フロック(以下、磁性フロックと称する)を磁気分離装置の磁力によって分離することにより、処理水を得るものである。
【0003】
図6は、特許文献1に開示された廃水処理装置100の構成を示すブロック図である。
【0004】
この廃水処理装置100によれば、廃水は急速撹拌槽102内で磁性粉(例えば四三酸化鉄)、無機凝集剤(例えば塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム)と混合された後、緩速撹拌槽104で高分子凝集剤と混合される。急速撹拌槽102、緩速撹拌槽104内で生成された磁性フロックには廃水中の浮遊固形物、油、重金属などが取り込まれ、これにより廃水は浄化される。磁性フロックは、緩速撹拌槽104の後段に設置されたフロック分離装置106によって分離される。フロック分離装置106は磁気分離装置108、及びフィルタ110によって構成される。磁性フロックが分離された廃水は処理水となる。磁気分離装置108によって分離されなかった磁性フロックは、後段のフィルタ110で分離除去され、再び磁気分離装置108に返送されて分離される。
【0005】
しかしながら、特許文献1の廃水処理装置100は、磁気分離装置108とフィルタ110とを並設することで、清澄な処理水を得ることはできるが、フィルタ110の目詰まりを防止するために、フィルタ110は大きなろ過面積を必要とする、連続的な逆洗浄が必要になるという問題があった。すなわち、特許文献1の廃水処理装置100は、沈殿池の代わりに磁気分離装置108を用いることによって設置面積を飛躍的に小さくできるという利点があるにも関らず、大きなフィルタ110を必要とするので、磁気分離装置108の利点を損なっていた。
【0006】
一方、特許文献2に開示されたディスク型の磁気分離装置120の構造を図7、図8に示す。なお、図7は磁気分離装置120の平面図、図8は磁気分離装置120の正面図であり、断面半円弧形状の分離槽122を透視した説明図である。
【0007】
この磁気分離装置120の分離槽122内には、磁力を有するディスク124、126が所定の間隔で配置されている。このディスク124、126は、その中央部に軸128が固定され、この軸128が不図示のモータに連結されている。このモータによってディスク124、126が軸128を介して図8の反時計回り方向に回転される。また、ディスク124、126は、分離槽122内に廃水が流入した際に、その下半分が廃水に水没されるようにその高さ位置が設定されている。
【0008】
分離槽122の底部中央部には、廃水の供給部130が設けられている。よって、凝集後の廃水は供給部130から上向流として分離槽122内に流入し、供給部130を中心として2方向に分岐する。そして、廃水が分離槽122の上部両側に設けられた処理水排出口132、134に向って流れる間に、廃水中の磁性フロックがディスク124、126に付着する。また、ディスク124、126に付着した磁性フロックは、ディスク124とディスク126との間に設けられたスクレーパ136によって、ディスク124、126の回転時に掻き取られる。そして、掻き取られた磁性フロックは、スクレーパ136に沿って設けられた汚泥掻き取り器138によって掻き取られて磁気分離装置120の外部に排出される。
【0009】
この磁気分離装置120によれば、分離槽122内における水流方向とディスク124、126の回転方向が反対になる領域(図8の軸128から見て左側の部分)が存在する。この領域においては、廃水の水流によって、ディスク124、126に付着した磁性フロックを剥離させる力が、磁性フロックに大きく作用するため、処理水の水質が若干悪化する可能性がある。このため、特許文献2の磁気分離装置120では、処理水排出口134の後段にフィルタが必要となっていた。
【0010】
また、特許文献3に開示された磁気分離装置は、凝集手段により生成させた磁性フロックを一旦回転ろ過体でろ過し、回転ろ過体表面の磁性フロックをドラム状の分離器(磁気ドラム)で吸引し、スクレーパ(へら)によって掻き取る構造を有している。
【0011】
分離器は、磁石群により構成される磁石回転体と磁気ドラム表面を構成するドラム回転体とからなり、前記磁石回転体とドラム回転体とは一体でも別々に回転可能でもよいとしている。また、磁石回転体の外径がドラム回転体の内径と略同一の場合には、磁性フロックを掻き取るスクレーパとドラム回転体が接している場所の近傍に、スラッジ又は移出翼を設けて磁性フロックの排出を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−112978号公報
【特許文献2】特開2009−101339号公報
【特許文献3】特開2005−131479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1、2の如く、従来の磁力を用いた廃水処理装置では、清澄な処理水を得るために、磁気分離装置の後段に大きなフィルタが必要であり、設置面積を小さくできる磁気分離装置の利点を損なうという欠点があった。
【0014】
また、特許文献3の発明では、処理水質性能を決定する大きな回転ろ過体を設置する必要があり、廃水の水質によっては閉塞等の不具合を抱えていた。そこで、特許文献3の構造から回転ろ過体を取り除いて分離器だけの構成で磁性フロックを吸引分離する装置が考えられる。
【0015】
しかしながら、単に分離器だけの構成とすると、分離器の回転による周速度と廃水の流速との間の速度差に起因するせん断力が発生する。このため、特に高濃度原水を処理する場合に、磁性フロックの排出量を高めようと分離器の回転数を上げた場合は、分離器と磁性フロックとの間に大きなせん断力が発生する。分離器に吸着された磁性フロックは非常にもろいため、せん断力が発生すると細かなフロックに分断されてしまい、磁気分離性能が劣化するという欠点がある。また、磁気力と流体力との差に起因するせん断力によっても磁気分離性能が劣化するという欠点がある。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみの簡便な装置によって磁性フロックを効率よく回収し清澄な処理水を効率よく得ることができる磁気分離装置及び廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記目的を達成するために、凝集した磁性フロックを含有する廃水が供給される分離槽と、前記分離槽内に配設されて回転されながら前記磁性フロックを磁力によって吸着するドラム状の分離器と、前記分離器の表面に当接されて分離器の表面に吸着された前記磁性フロックを掻き取るスクレーパと、前記スクレーパに連設されるとともにスクレーパによって掻き取った前記磁性フロックを排出するスクレーパガイドと、前記スクレーパによって掻き取られた前記磁性フロックをスクレーパから掻き取って前記スクレーパガイドに案内する掻き取りブラシと、を備え、前記分離器は、前記分離槽内の前記廃水に下方部が水没されるとともに、該分離槽の廃水中での回転方向が、該分離槽内で流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定され、前記掻き取りブラシの回転方向が、前記分離器の回転方向に対して逆方向に設定されていることを特徴とする磁気分離装置を提供する。
【0018】
従来の磁気分離装置の欠点発生原因は、分離槽内において廃水の水流方向と分離器の回転方向が反対になる部分が存在することにある。
【0019】
本発明は、この欠点を解消するために、分離槽内における廃水の流れ方向と、回転するドラム状の分離器の回転方向を同一とした。これにより、分離器に付着した磁気フロックを剥離させる力が大幅に減少するため、分離器による磁気フロックの回収効率が大幅に向上する。この効果によって、従来必要としたフィルタが不要になるので、磁気分離装置の設置スペースを省スペース化することができる。
【0020】
また、本発明によれば、分離器の表面の周速を廃水の流速と略同速度としているので、速度差に起因するせん断力を最低限に抑えることができる。分離器の表面に磁気力により吸着された磁性フロックは、分離器の回転に伴って廃水を通過し、空中に上げられる。この際、磁性フロックとともに随伴する水は重力によって落下することにより、回収される磁性フロックの含水率は低下し、回収磁性フロックの濃度が高まる。また、分離器の回転とともに分離器の磁石群も回転するため、空中に上げられた磁性フロックは、常に十分な磁気力を得た状態となる。よって、磁性フロックが分離器の表面から滑り落ちることは無い。
【0021】
このように、分離器の回転に伴い空中に上げられて移動させられてきた磁性フロックは、スクレーパによって分離器の表面から掻き取られる。しかしながら、分離器の表面近傍に磁石群が設置されている分離器であると、スクレーパによって掻き取られた磁性フロックは、磁石群の強力な磁気力によって、スクレーパで掻き取られた場所、すなわち、スクレーパが分離器の表面に接触している位置で滞留してしまい、スクレーパガイドを介して排出し難くなる。そこで、本発明は、分離器の表面とスクレーパとが接する位置に、回転する掻き取りブラシを設置する。掻き取りブラシが分離器の回転方向と逆方向に回転することによって、スクレーパで掻き取った磁性フロックを、スクレーパからスクレーパガイドに強制的に運搬することができ、スクレーパガイドに沿って滑り落ちる重力により排出することができる。
【0022】
以上の如く、本発明の磁気分離装置によれば、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみの簡便な装置によって磁性フロックを効率よく回収し清澄な処理水を効率よく得ることができる。
【0023】
また、本発明の磁気分離装置は、前記分離槽は断面半円弧状であり、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部に前記廃水の供給部が設けられ、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部に処理水の排出部が設けられていることが好ましい。
【0024】
本発明は、磁気分離装置の一形態を示すものである。すなわち、分離槽を断面半円弧状に構成し、この上部両端のうち分離器の回転方向上流側に位置する一端部から廃水を分離器に供給し、上部両端のうち分離器の回転方向下流側に位置する他端部から処理水を排出する。これにより、分離槽内における廃水の流れ方向と回転する分離器の回転方向とを、簡単な構造で同一とすることができる。
【0025】
また、本発明の磁気分離装置は、前記分離器の最大周速が、前記分離槽内の廃水の流速と略同速度に設定されていることが好ましい。
【0026】
分離器に吸着された磁性フロックは、分離器の回転によって廃水の水面から上昇して離水した際に、重力の影響を大きく受けるため、分離器から離れようとする。そこで、分離器の最大周速を、分離槽内の廃水の流速と略同速度に設定すると、磁性フロックが離水しようとした際に、廃水の流勢によって磁性フロックを分離器とともに上方に押し上げる力が磁性フロックに加わる。これにより、分離器からの磁性フロックの剥離を抑えることができるので、磁性フロックの回収効率が更に向上する。
【0027】
また、本発明の磁気分離装置によれば、複数台の分離器が廃水の水流方向に対して直列に配置され、上流側の分離器の回転方向が廃水の流れ方向と同一に設定され、下流側の分離器の回転方向が廃水の流れ方向と逆方向に設定されていることが好ましい。
【0028】
また、本発明の磁気分離装置によれば、前記下流側の分離器は、前記上流側の分離器と比較して小型であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の磁気分離装置によれば、前記上流側の分離器と前記下流側の分離器とを結ぶ流路の堰の高さが、廃水の水位よりも低く設定されていることが好ましい。
【0030】
本発明は、前記目的を達成するために、廃水が貯留された原水タンクと、前記原水タンクから廃水が供給されて該廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合する急速攪拌槽と、前記急速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水と高分子凝集剤とを混合することにより廃水中に磁性フロックを生成する緩速攪拌槽と、前記緩速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水中の前記磁性フロックを廃水から分離する本発明の磁気分離装置と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【0031】
なお、分離器はドラム状に限定されるものではなく、回転された際にその外周の軌跡が円となるものであればよい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように磁気分離装置及び廃水処理装置によれば、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみによって磁性フロックを効率よく回収し清澄な処理水を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態の磁気分離装置が適用された廃水処理装置の構造を示したブロック図
【図2】第1の実施の形態の磁気分離装置の側断面図
【図3】第2の実施の形態の磁気分離装置の側断面図
【図4】第3の実施の形態の磁気分離装置の側断面図
【図5】第4の実施の形態の磁気分離装置の側断面図
【図6】従来の廃水処理装置の構成を示すブロック図
【図7】従来の磁気分離装置の平面図
【図8】図7に示した磁気分離装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明に係る磁気分離装置及び廃水処理装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0035】
図1は、実施の形態の磁気分離装置10が適用された廃水処理装置12の構造を示したブロック図である。
【0036】
この廃水処理装置12は、廃水の処理系統の上流側から下流側に向けて原水タンク14、急速攪拌槽16、緩速攪拌槽18、及び磁気分離装置10が配置されて構成される。
【0037】
処理水である廃水(浮遊固形物、油、重金属を含有する廃水)は、まず、原水タンク14から、原水ポンプ20により急速攪拌槽16に送水される。次に、急速攪拌槽16では、無機の凝集剤、例えばPAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム等が、無機凝集剤注入ポンプ(図示せず)によって無機凝集剤槽22から加えて、急速に攪拌が行われる。ここで、急速の攪拌によって浮遊物質や油粒子の衝突頻度が高まる中で凝集剤の効果によってマイクロフロックと呼ばれる多数の小さな塊が形成される。次いで、急速攪拌槽16の内部、又は急速攪拌槽16を出たところで、磁性粉注入ポンプ(図示せず)により磁性粉槽24から、マグネタイト等の磁性粉が廃水に添加される。そして、磁性粉と前記マイクロフロックを含む廃水は、急速攪拌槽16を出た後、緩速攪拌槽18に流入する。ここで、高分子ポリマー(高分子凝集剤)を、ポンプ(図示せず)により高分子ポリマータンク26から緩速攪拌槽18に注入し、緩速攪拌槽18内で低速で攪拌して磁性フロックを成長させる。この場合の高分子ポリマーはアニオン系が望ましく、例えばポリアクリルアミドが適している。ポリアクリルアミドの場合は粉末で保管しておき、フィーダで定量高分子ポリマータンク26に注入して攪拌する構造が考えられる。また、上記例は、無機凝集剤とアニオン系高分子ポリマーを使用する例を示したが、無機凝集剤を使用せずにカチオン系の高分子ポリマーのみを使用する場合でも以下の効果は同様となる。上記のように形成された磁性フロックは、緩速攪拌槽18から磁気分離装置10に送水され、ここで磁性フロックと処理水とが分離される。以上が廃水処理装置12による廃水処理の流れである。
【0038】
図2には、第1の実施の形態に係る磁気分離装置10の側断面図が示されている。
【0039】
この磁気分離装置10は、ドラム型の分離器30を備えている。
【0040】
分離器30は、ドラム回転体32、及びドラム回転体32の内周面に沿って配置された多数の磁石からなる磁石群34を有しており、ドラム回転体32と磁石群34とが一体となって、その中心Pを中心に回転可能な構造となっている。また、分離器30は、断面半円弧形状の分離槽36に下半分が廃水38に水没するように配置されている。ドラム回転体32は、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。つまり、ドラム回転体32の材質は、磁石群34の磁気力を磁性フロックに与えられるものであればよい。
【0041】
磁石群34は、例えばネオジウム磁石を多数貼り付けた構造となっており、隣り合う磁石の極性方向を異なる配置とすることにより、磁石群34の近傍の磁気勾配を高めて磁石群34の近傍で磁性体に働く磁気力が高められている。廃水38は、分離槽36に設けられた水流路入口40から分離槽36内に流入し、分離器30の下方の流路42において、分離器30の矢印で示す反時計回り回転方向と同方向に流れて水流路出口44から分離槽36の外部に流出される。廃水38中の磁性フロックは、流路42を通過する間に、磁石群34の磁気力によってドラム回転体32の表面に吸引される。これによって、廃水38中の被除去物が除去される。水流路入口40は、分離器30の回転方向の上流側に配置され、水流路出口44は、分離器30の回転方向の下流側に配置されている。
【0042】
ドラム回転体32の表面の周速は、流路42を流れる廃水の流速と略同速度に設定されている。これにより、速度差に起因するせん断力(ドラム回転体32の表面と、この表面に付着した磁性フロックとの間にはたらくせん断力)を最低限に抑えることができる。また、ドラム回転体32と一体で回転する磁石群34も同速度で移動するため、磁石群34の磁気力と流体力の差に起因するせん断力も最低限に抑えることができる。このようなせん断力低減の効果により、ドラム回転体32の表面に吸着された磁性フロックが、ドラム回転体32から剥離するのを抑えることができる。なお、ドラム回転体32の表面の周速、及び流路42を流れる廃水38の流速は、0.05〜0.2m/s程度が望ましい。
【0043】
実施の形態の分離器30は、ドラム回転体32と磁石群34とが同一の駆動源により一体となって回転する構造であるが、これに限定されるものではない。すなわち、ドラム回転体32の駆動軸、磁石群34の駆動軸を別々とし、別々の駆動源によって略同速度となるように双方を回転させる構造でも同様の効果を得ることができる。
【0044】
ところで、ドラム回転体32の表面に、磁気力で吸引された磁性フロックは、ドラム回転体32の回転に伴って廃水の液面から空中に上げられる。この際、磁性フロックとともに随伴する水は重力によって落下する。これにより、回収される磁性フロックの含水率が低下し、回収した磁性フロックの濃度が高められる。また、ドラム回転体32の回転とともに磁石群34が回転するため、空中に上げられた磁性フロックは、常に十分な磁気力を得た状態となるため、ドラム回転体32の表面から滑落することは無い。
【0045】
このようにドラム回転体32及び磁石群34の回転に伴い空中に上げられて移動されてきた磁性フロックは、ドラム回転体32の表面に接触しているスクレーパ46によってドラム回転体32の表面から掻き取られる。
【0046】
一方で、実施の形態の分離器30は、磁石群34がドラム回転体32の内周面に沿って、かつドラム回転体32の近傍に設置されている。このため、磁性フロックは、磁石群34の強力な磁気力によりスクレーパ46で掻き取られた場所(スクレーパ接触部Aと称す)で滞留してしまい、スクレーパ46に連設したスクレーパガイド48を介してフロック回収槽50に落下し難くなる。
【0047】
そこで、実施の形態の分離器30では、スクレーパ接触部Aに、回転する掻き取りブラシ52が設置されている。掻き取りブラシ52が、分離器30の回転方向に対して逆方向に回転されることによって、スクレーパ接触部Aに溜まる磁性フロックを、スクレーパ46からスクレーパガイド48に強制的に運搬することができる。これにより、磁性フロックは、スクレーパガイド48に沿って滑落し、フロック回収槽50に円滑に回収される。
【0048】
なお、ドラム回転体32、スクレーパ46、及び掻き取りブラシ52のうち、少なくとも一つの部材を樹脂製とすれば、その部材は容易に変形するため、双方が接する構造を取り易くなる。特に、スクレーパ46の先端部分と掻き取りブラシ52を樹脂製にすれば、磁性フロックの掻き取り効率が向上する。
【0049】
また、掻き取りブラシ52の周速度とドラム回転体32の周速度とを略同一に設定することにより、ドラム回転体32で運ばれてきた磁性フロックを掻き取りブラシ52が邪魔することなくスクレーパガイド48まで効率よく案内することができる。
【0050】
更に、本構造では、水流路入口40とフロック回収槽50とが分離器30の中心Pに対して同じ側に配置されるため、スクレーパガイド48の傾斜角度(水平からの角度)を大きくとることが困難である。スクレーパガイド48の傾斜角度を大きく設定しなければ、スクレーパガイド48に案内されてきた磁性フロックが重力によってフロック回収槽50に滑落しないことになる。
【0051】
そこで、実施の形態の磁気分離装置10では、スクレーパ46とスクレーパガイド48との傾斜角度を異ならせ、スクレーパ46の水平距離を伸ばすことでスクレーパガイド48の傾斜角度θを大きくしている。この角度θは、例えば45度以上であることが望ましい。この際、スクレーパ46上に乗る磁性フロックを効率的に移送させることができるように、掻き取りブラシ52の大きさはスクレーパ46を十分掃ける程度とすることが重要である。
【0052】
したがって、実施の形態の磁気分離装置10によれば、フィルタを使用することなく、磁気分離装置のみの簡便な装置によって磁性フロックを効率よく回収し清澄な処理水を効率よく得ることができる。
【0053】
図3は、磁気分離装置10Aの第2の実施の形態を示した側断面図である。
【0054】
図4は、磁気分離装置10Bの第3の実施の形態を示した側断面図である。
【0055】
図5は、磁気分離装置10Cの第4の実施の形態を示した側断面図である。
【0056】
図3〜図5に示した実施の形態の磁気分離装置10A、10B、10Cを説明するに当たり、図2に示した磁気分離装置10と同一又は類似の部材については同一の符号を付して説明する。また、磁気分離装置10と同一又は類似の機能を有する部材については、符号の末尾に「a」「b」「c」を記してその説明は省略する。
【0057】
図3〜図5に示した磁気分離装置10A、10B、10Cにおいて、共通する構成は、2台の分離器30、30A、分離器30、30B、分離器30、30Cが、廃水38の水流方向に対して直列に配置された点にある。また、上流側の分離器30の回転方向が廃水38の流れ方向と同一に設定され、下流側の分離器30A、30B、30Cの回転方向が廃水38の流れ方向と逆方向に設定された点にある。
【0058】
このように2台の分離器30、30A、分離器30、30B、分離器30、30Cを並設することにより、1台の分離器で同一の付加機能を有する分離器と比較して、分離器の体積を低減することができる。また、分離器1台当たりの磁石の必要保有フロック量も低減することができる。更に、分離器1台当たりのスクレーパ46、46A、46B、46Cによる掻き取りフロック量を低減することができる。
【0059】
更に、高濃度の上流側の分離槽36において、廃水38の流れ方向と分離器30の回転方向が同一のため、相対速度の差による磁気フロックの分離器30からの剥離を抑えることができる。そして、低濃度の下流側の分離槽36A、36B、36Cでは、廃水38に含有する磁性フロックの量が減少するため、分離器30Aの周速と廃水38の流速の相対速度が大きい場合でも、下流側において磁性フロックを問題無く回収できる。また、分離器30と分離器30A30B、30Cの回転方向を逆方向とすることにより、磁気分離装置10Aの全体構成をコンパクトにできる。フロック回収槽50、50A、50B、50Cを、2台の分離器の両側に配置できるからである。
【0060】
そして更に、磁性フロックの剥離が最も発生し易い場所、つまり、分離器30の上昇位置を中間部に配置することにより、剥離した磁性フロックが再吸着し易くなる。
【0061】
また、上流側の分離器30の周速を、下流側の分離器30Aの周速よりも速く設定することもできる。上流側の分離器30の周速は廃水38の流速と略同一速度である。下流側の分離器30Aは、廃水38に含有する磁性フロックの濃度が、上流側と比較して低濃度のため、廃水38の流速よりも低速回転に設定できる。これにより、廃水38の流速と分離器30Aの周速との相対速度は小さくなり、磁性フロックの剥離を抑えることができる。
【0062】
また、図4、図5に示すように、上流側の流路42の隙間と比較して下流側の流路42A、42B、42Cの隙間を狭く設定することができる。下流側は、磁性フロック量が少なく、磁性フロックが堆積して流路42を塞ぐことは少ないからである。また、下流側では、磁性フロックの剥離の危惧も少ないため、高速での処理を実施できる。更に、下流側の分離器30B、30Cは磁気フロックを吸着するための負荷が小さいので、上流側の分離器30と比較して小型にできる。これにより、分離器30B、30Cを小型化でき、磁気分離装置10B、10C全体の小型化が図れる。
【0063】
2台の分離器30、30A、分離器30、30B、分離器30、30Cを結ぶ流路の堰54の高さを水位(水流路出口44の壁高さ)よりも低くする。これにより、分離器30と分離器30A、30B、30Cとの間の廃水38の流速が、水流路出口44に流れる廃水38の流速よりも低速になるため、分離器30の上昇位置において、廃水38の流速による磁性フロックの剥離を抑えることができる。
【0064】
2台の分離器30、30A、分離器30、30B、分離器30、30Cを結ぶ流路の水質データを利用して添加剤の量を制御することもできる。水質を確保した状態で添加剤量の不足情報を得ることができる。
【0065】
上流側の分離器30で回収した、濃度の高い磁気フロックを薬剤として再利用することができる。すなわち、磁性粉の濃度の高い磁気フロックを廃水に添加することにより薬剤添加量を低減することができる。
【0066】
なお、図3〜図5では2台の分離器を並設した実施の形態について述べたが、分離器の並設台数は3台以上であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10、10A、10B、10C…磁気分離装置、12…廃水処理装置、14…原水タンク、16…急速攪拌槽、18…緩速攪拌槽、20…原水ポンプ、22…無機凝集剤槽、24…磁性粉槽、26…高分子ポリマータンク、30…分離器、32…ドラム回転体、34…磁石群、36…分離槽、38…廃水、40…水流路入口、42…流路、44…水流路出口、46…スクレーパ、48…スクレーパガイド、50…フロック回収槽、52…掻き取りブラシ、54…堰、A…スクレーパ接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集した磁性フロックを含有する廃水が供給される分離槽と、
前記分離槽内に配設されて回転されながら前記磁性フロックを磁力によって吸着するドラム状の分離器と、
前記分離器の表面に当接されて分離器の表面に吸着された前記磁性フロックを掻き取るスクレーパと、
前記スクレーパに連設されるとともにスクレーパによって掻き取った前記磁性フロックを排出するスクレーパガイドと、
前記スクレーパによって掻き取られた前記磁性フロックをスクレーパから掻き取って前記スクレーパガイドに案内する掻き取りブラシと、を備え、
前記分離器は、前記分離槽内の前記廃水に下方部が水没されるとともに、該分離槽の廃水中での回転方向が、該分離槽内で流れる前記廃水の水流方向と同一方向に設定され、
前記掻き取りブラシの回転方向が、前記分離器の回転方向に対して逆方向に設定されていることを特徴とする磁気分離装置。
【請求項2】
前記分離槽は断面半円弧状であり、該分離槽の上部両端のうち前記分離器の回転方向上流側に位置する一端部に前記廃水の供給部が設けられ、前記上部両端のうち前記分離器の回転方向下流側に位置する他端部に処理水の排出部が設けられている請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記分離器の最大周速が、前記分離槽内の廃水の流速と略同速度に設定されている請求項1又は2に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
複数台の分離器が廃水の水流方向に対して直列に配置され、上流側の分離器の回転方向が廃水の流れ方向と同一に設定され、下流側の分離器の回転方向が廃水の流れ方向と逆方向に設定されている請求項1、2、又は3に記載の磁気分離装置。
【請求項5】
前記下流側の分離器は、前記上流側の分離器と比較して小型である請求項4に記載の磁気分離装置。
【請求項6】
前記上流側の分離器と前記下流側の分離器とを結ぶ流路の堰の高さが、廃水の水位よりも低く設定されている請求項4又は5に記載の磁気分離装置。
【請求項7】
廃水が貯留された原水タンクと、
前記原水タンクから廃水が供給されて該廃水、磁性粉、及び無機凝集剤を混合する急速攪拌槽と、
前記急速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水と高分子凝集剤とを混合することにより廃水中に磁性フロックを生成する緩速攪拌槽と、
前記緩速攪拌槽によって混合された廃水が供給されて該廃水中の前記磁性フロックを廃水から分離する、請求項1〜6のいずれかに記載の磁気分離装置と、
を備えたことを特徴とする廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−183271(P2011−183271A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49216(P2010−49216)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】