説明

磁気抵抗素子を用いた位置検出装置及びこれを用いたレンズ鏡筒

【課題】組立時や落下時に衝撃が加わっても壊れることが無く、簡素な構成で性能を維持できる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】固定部材1と、加圧部材19、配線部材17、及び磁気抵抗素子からなり、固定部材に取り付けられる位置検出装置と、位置検出装置に重畳して設けられ、加圧部材よりも大きい保護部材7と、固定部材に対して回転する回転部材3と、回転部材に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体9とを有し、磁気抵抗素子が磁気記録媒体の移動量を検出することで、固定部材に対する回転部材の位置を検出するレンズ鏡筒1であって、磁気抵抗素子の感受面は磁気記録媒体に対向して設けられ、保護部材は加圧部材の輪郭を覆うように配置される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する位置検出装置に関し、特に、磁気抵抗(Magneto Resistive、MR)素子を用いた位置検出装置、およびこの位置検出装置を用いたスチルカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子は、インジウム・アンチモン(InSb)等の半導体薄膜に磁界を加えた時に、その磁気抵抗値が変化する現象を活用した素子である。この種の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置は、フェライトやプラスチックマグネットのような磁気記録媒体と組み合わせて、その磁気記録媒体の位置検出に広く用いられている。
【0003】
この磁気抵抗素子は、磁気記録媒体が移動することによる磁界の変化を検出して、サインカーブ状の再生出力を得ることができる。この出力波形を処理することにより、磁気記録媒体の相対的あるいは絶対的位置を高精度に求めるようになっている。
【0004】
磁気抵抗素子は、磁気記録媒体の移動を検出する際に、磁気記録媒体との間隔を適切に調整する必要がある。これは基準ギャップ量と呼ばれ、磁気記録媒体の仕様によって決定される。基準ギャップ量よりも間隔が広がると、位置検出装置の出力が急激に小さくなり、逆に間隔が狭くなると出力が歪んでサインカーブ状の再生出力が得られない。民生用・産業用機器に広く用いられている磁気抵抗素子は、この要求を満たすために主に2つに大別できる調整手段を備えている。
【0005】
接触型の磁気抵抗素子は、非磁性体の樹脂等にインサート成形されており、その感受面には予め基準ギャップ量に相当する厚みの樹脂がスペーサーとして上乗せされている。そのため、磁気記録媒体に接触型の磁気抵抗素子を密着させ、磁気記録媒体が表面を摺動することで、常に基準ギャップ量を保つことができる。
【0006】
この種の位置検出装置としては、例えば特許文献1に開示されており、回転する部材に貼り付けられた磁気記録媒体に、固定部材から板バネによって保持された磁気抵抗素子が密着された構造となっている。このような位置検出装置は、基準ギャップ量の調整が不要であるという利点を有する。
【0007】
一方、非接触型の磁気抵抗素子は、磁気記録媒体と接触せずに位置検出が行うことができる構造のため、磁気記録媒体との摺動に伴う騒音や摩耗を無くすことができる利点を有する。しかしながら、基準ギャップ量の調整を個体ごとに実施する必要があるため、製造コストを引き上げる欠点がある。また、非接触型の磁気抵抗素子は接触型の磁気抵抗素子と同様に非磁性体の樹脂等にインサート成形されているが、取付けとギャップ量の調整のための機構が一体成形されている。
【0008】
この種の位置検出装置としては、例えば特許文献2に開示されており、取付けとギャップ量の調整が行えるような構造となっている。
【0009】
ところで、スチルカメラ、ビデオカメラ等に用いられるレンズ鏡筒では、ズーム動作又はフォーカス動作時に、レンズの移動や位置を検出し、撮影者に焦点距離情報や撮影距離情報を伝えたり、カメラに搭載された様々な機能に応用して精密な動作を実現させたりするものが知られている。この時、レンズの移動に用いるモータ自体が位置情報をもたない時や、レンズの移動が手動で行われたとき、位置検出手段が必要となる。また、動作時に騒音を発しにくい構造のため、静粛な動作が実現できる特性から、先述した接触式の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置をレンズ位置の検出に用いる方法が知られている。
【0010】
ここで、このような接触型の磁気抵抗素子を位置検出装置に用いたレンズ鏡筒について述べる。図7は、接触型の磁気抵抗素子が適用された従来のレンズ鏡筒の断面図であり、固定部材であるところの固定筒1に位置検出装置であるところのセンサユニット5が押さえ部材であるところの押さえ板と締結部材であるところの固定ビスによって締結されている。
【0011】
センサユニット5は、配線部材であるところのフレキシブルプリントケーブル(FPC)17の表面に磁気抵抗素子であるところのMRセンサ21が既知の電子部品実装手段によって実装されており、MRセンサ21の裏面に配された粘着面で加圧部材であるところの加圧バネ19に貼り付けられている。
【0012】
加圧バネ19は、一端が固定筒1の端部に固定されているため、貼り付けられたMRセンサ21を固定筒1から迫り出した状態で保持している。この時、MRセンサ21は回転部材であるところのスケールリング3に貼り付けられた磁気記録媒体であるところの磁気テープ9に接触しており、加圧バネ19によって圧接、摺動する状態で保持されている。なお、加圧バネは極めて薄く柔軟なバネ材で出来ており、MRセンサ21が磁気テープ9と摺動しても互いに傷つけることもなく、磁気テープ9の移動に常に追従する構造となっている。
【0013】
一方、スケールリング3は、不図示のレンズがズーム動作またはフォーカス動作に伴って光軸方向に移動するのに伴ってカム等の連動機構によって光軸周りに回転する回転筒と連結されている。そのため、スケールリング3の回転量を検出することで、検出したいレンズの位置情報を算出することができる構成となっている。
【0014】
また、センサユニット5の外径方向には外観部材であるところのカバーリング15が取り付けられており、内部機構を塵芥や水滴などの異物や、衝撃から内部を保護している。カバーリング15は、近年の撮像システムの軽量化やコストダウンの一環で、ポリカーボネイト等の樹脂が用いられることが多い。このような樹脂製の部材は弾性変形しやすい性質を持ち、衝撃が加わった際にも柔軟に変形することで破損しにくいという特徴を持つ。
【0015】
なお、このようなレンズ鏡筒は、近年の撮像装置の小型化に伴うレンズ鏡筒の小径化と、内部の高密度化が進んでいる。よって、各部材間の隙間も減少の一途を辿っており、組立の難易度は飛躍的に上昇し、衝撃に伴う変形に対する余裕が無くなっているという事実がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−250638号公報
【特許文献2】特開平1−203922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、先述のような構成の位置検出装置では、わずかな力で変形して性能が悪化する加圧バネ19がカバーリング15の直下で露出しているため、脆弱な構造であるという課題があった。
【0018】
特に、位置検出装置が取り付けられたレンズ鏡筒100にカバーリング15を取り付ける際に、カバーリング15の端部で加圧バネ19を引っかけ、加圧バネ19を損傷し、正常な動作が行われなくなる畏れがある。そのため、製造工程で特別な配慮が必要であるために作業時間が増える他、加圧バネ19を損傷することで不良品となるため歩留まり率が低下する可能性がある。
【0019】
また、落下等によりカバーリング15に強い衝撃が加わった時に、樹脂製のカバーリング15が弾性変形し、その拍子にカバーリング15の内壁が加圧バネ19に接触して損傷させ、位置検出装置が動作不良を引き起こす畏れがある。
【0020】
すなわち本発明は、組立時や落下時に衝撃が加わっても壊れることが無く、簡素な構成で性能を維持できる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで本発明は、以下のような手段により、上記の目的を達成する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施例を示す図面に対応する符号を付して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
請求項1に示す発明は、固定部材(固定筒1)と、加圧部材(加圧バネ19)、配線部材(FPC17)、及び磁気抵抗素子(MRセンサ21)からなり、前記固定部材(固定筒1)に取り付けられる位置検出装置(センサユニット5)と、前記位置検出装置(センサユニット5)に重畳して設けられ、前記加圧部材(加圧バネ19)よりも大きい保護部材(保護板7)と、前記固定部材(固定筒1)に対して回転する回転部材(スケールリング3)と、前記回転部材(スケールリング3)に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体(磁気テープ9)とを有し、前記磁気抵抗素子(MRセンサ21)が前記磁気記録媒体(磁気テープ9)の移動量を検出することで前記固定部材(固定筒1)に対する前記回転部材(スケールリング3)の位置を検出するレンズ鏡筒(レンズ鏡筒100)であって、前記磁気抵抗素子(MRセンサ21)の感受面は前記磁気記録媒体(磁気テープ9)に対向して設けられ、前記保護部材(保護板7)は前記加圧部材(加圧バネ19)の輪郭を覆うように配置されたことを特徴とするレンズ鏡筒(レンズ鏡筒100)である。
【0023】
このような構造により、磁気抵抗素子(MRセンサ21)を用いた高精度な位置検出装置(センサユニット5)をレンズ鏡筒(レンズ鏡筒100)に組み込みながら、保護部材(保護板7)が加圧部材(加圧バネ19)を保護し、組立時や衝撃時に加圧部材(加圧バネ19)が変形する事を防ぐことができる。
【0024】
また請求項2に示す発明は、前記配線部材(FPC17)及び前記磁気抵抗素子(MRセンサ21)は前記加圧部材(加圧バネ19)に取り付けられ、前記配線部材(FPC17)は前記磁気抵抗素子(MRセンサ21)と反対側に延出しており、延出した前記配線部材(FPC17)は締結部材(押さえビス11)によって前記固定部材(固定筒1)に締結されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒(レンズ鏡筒100)である。
【0025】
このような構造により、加圧部材(加圧バネ19)と磁気抵抗素子(MRセンサ21)とにつながる配線部材(FPC17)が引っ張られることによる加圧部材(加圧バネ19)の変形や、磁気記録媒体(磁気テープ9)から磁気抵抗素子(MRセンサ21)が離れ、基準ギャップ量が保たれなくなることを防ぐことができる。
【0026】
また請求項3に示す発明は、前記保護部材(保護板7)は板状の部材であり、その略中間部で前記レンズ鏡筒(レンズ鏡筒100)の光軸と反対側に折り曲げられ、再度光軸方向に折り曲げられた形状を有し、前記保護部材(保護板7)の先端部と前記加圧部材(加圧バネ19)の加圧部とは間隔を開けて取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレンズ鏡筒である。
【0027】
このような構造により、加圧部材(加圧バネ19)が湾曲しながら磁気抵抗素子(MRセンサ21)を磁気記録媒体(磁気テープ9)に圧接する動作を、保護部材(保護板7)
が妨げることを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、組立時や落下時に衝撃が加わっても壊れることが無く、簡素な構成で性能を維持できる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズ鏡筒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒100を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒100を示す展開図である。
【図3】本発明の実施例におけるセンサユニット5を示す平面図である。
【図4】本発明の実施例における保護板7を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒を正面から見た断面図である。
【図6】本発明の実施例におけるレンズ鏡筒を側面から見た断面図である。
【図7】従来のレンズ鏡筒を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の位置検出装置およびこれを用いたレンズ鏡筒の実施例について、図1〜図6に基づいて説明する。図1は本発明の位置検出装置を用いたレンズ鏡筒100を示す斜視図、図2は本発明の位置検出装置を用いたレンズ鏡筒100を示す展開図、図3は本発明の位置検出装置に用いられるセンサユニット5を示す平面図、図4は本発明の位置検出装置に用いられる保護板7を示す分解斜視図、図5は本発明の位置検出装置を用いたレンズ鏡筒を正面から見た断面図、図6は本発明の位置検出装置を用いたレンズ鏡筒を側面から見た断面図である。
【実施例】
【0031】
まず、本発明の位置検出装置の構造について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の位置検出装置が適用されたレンズ鏡筒100の斜視図であり、固定筒1に取り付けられたセンサユニット5の端部がスケールリング3に取付けられた磁気テープ9に対向し、その移動を検出する構造を示している。
【0032】
図2は、本発明の位置検出装置が適用されたレンズ鏡筒100の展開図であり、固定筒1にセンサユニット5が保護部材であるところの保護板7と共に固定ビス13によって締結されている。また、センサユニット5は固定筒1に対して締結部材であるところの押さえビス11によっても締結されている。
【0033】
固定筒1は、撮影時に回転しない固定部材であり、レンズを保持するレンズ枠を内部に保持する他、フォーカス駆動に用いるモータ(不図示)や各種センサを保持している。固定筒1は、切削加工されたアルミ合金を酸化表面処理して製作されるが、ポリカーボネイト等のエンジニアリングプラスチックによって成型されてもよい。固定筒1の側面には、センサユニット5が取り付けられる取付け台1zが一体的に形成されているが、別の部材を取り付ける構成でも良い。取付け台1zの平面の頂部には、センサユニット5及び保護板7を固定ビス13で取り付けるための孔部1a及び1bが設けられている。また、取付け台1zの近傍にはセンサユニット5を押さえビス11で取り付けるための孔部1cが設けられている。
【0034】
スケールリング3は、撮影時に回転する回転部材であり、フォーカス駆動に用いるモータ(不図示)に接続されており、固定筒1の表面で回転摺動しながら連結されたフォーカスレンズ枠(不図示)を光軸方向に移動させる。すなわち、スケールリング3の回転量を検出することで、検出したいレンズの位置情報を算出することができる構成となっている。スケールリング3は、切削加工されたアルミ合金を酸化表面処理して製作されるが、ポリカーボネイト等のエンジニアリングプラスチックによって成型されてもよい。また、スケールリング3の後端には帯状の貼り付け面1eが形成されており、粘着テープや接着剤により磁気テープ9が貼り付けられる。
【0035】
位置検出装置であるところのセンサユニット5は、図3に示すように、配線部材であるところのフレキシブルプリントケーブル(FPC)17と磁気抵抗素子であるところのMRセンサ21と加圧部材であるところの加圧バネ19から構成される。まず、既知の電子部品実装手段によってFPC17の先端部17hの裏面にMRセンサ21が実装され、さらに、MRセンサ21の裏面とFPC17の中央部17gの裏面で加圧バネ19に貼り付けられる。すなわち、加圧バネ19の先端部19fがMRセンサ21を磁気テープ9に圧接するために湾曲しても、FPC17が加圧バネ19から剥離することがない構成になっている。
【0036】
保護部材であるところの保護板7は、図4に示すように、センサユニット5と共に固定筒1に取り付けられる。保護板7の輪郭は加圧バネ19とほぼ同一かやや大きい程度であり、側面から加圧バネ19に触れることが出来ないように、また加圧バネ19が不必要に浮き上がらないように、加圧バネ19全体を覆い隠す形状となっている。図6は本発明が適用されたレンズ鏡筒の断面図であり、保護板7は中央部7iで一旦折り曲げられ、再度固定筒1の表面に平行に延出する形状となっている。中央部7iは、加圧バネ19の先端部19fが湾曲する基点付近である。保護板7は径方向に折り曲げられて加圧バネ19からわずかに離れていることで、加圧バネ19が湾曲しても保護板7と接触することは無い。しかしながら、加圧バネ19から保護板7が離れている量はわずかであるから、加圧バネ19の先端部19fの方向から触れようとしても保護板7は十分に加圧バネ19を保護することができる。なお、保護板7はアルミ合金やステンレスの薄板をプレス加工で成形したもので、十分な強度を持っている。
【0037】
磁気記録媒体であるところの磁気テープ9は、粉末状の磁性体をテープ状のフイルムに、バインダー(接着剤)で塗布または蒸着した記録媒体であり、黒色の光沢面に数百μmのピッチでS極とN極とが交互に着磁されている。表面は平滑であり、MRセンサ21が表面を抵抗なく摺動できる。裏面には粘着面が形成されており、スケールリング3の後端に形成された帯状の貼り付け面1eに貼り付けられる(図2)。
【0038】
締結部材であるところの押さえビス11及び固定ビス13は、部品の締結用途に供される一般的なねじであり、締結する部位の材質、厚み、要求される締結強度等によって最適な条数、ねじ溝の形状、径及びピッチが種々用いられる。また、締結する部位によってはタッピングねじ、逆ねじなどのねじを用いても良い。図では、便宜的にねじ山を記載していないが、一般的なねじを示しており、本発明の実施にあたってはこれに限定されるものではない。
【0039】
外観部材であるところのカバーリング15は、図6に示すとおり、センサユニット5の外径方向に取り付けられており、内部機構を塵芥や水滴などの異物や、衝撃から内部を保護している。一方、近年の撮像装置の小型化に伴ったレンズ鏡筒の小径化により、カバーリング15と保護板7とのクリアランスは極めて小さく、組立時にカバーリング15の内部が保護板7と接触しやすい構造である。しかしながら、先述の通り回転部材であるところのスケールリング3カバーリング15は、軽合金の切削加工またはプレス加工によって成形されるが、ポリカーボネイト等のエンジニアリングプラスチックによって成型されてもよい。すなわち、製品の外観を構成する部材であるため、強度の高い構成となっている。しかしながら、落下等によりカバーリング15に強い衝撃が加わった時に、カバーリング15が変形して内部に突出することが考えられる。このような場合でも、保護板7が加圧バネ19を覆っているため、変形したカバーリング15が加圧バネ19に触れることはなく、本来の性能を維持することができる。
【0040】
配線部材であるところのフレキシブルプリントケーブル(FPC)17は、図3に示すとおり、先端部17hにMRセンサ21を実装している。さらに、先端部17hと中央部17gとで加圧バネ19に接着されている。このような構成により、加圧バネ19が湾曲しても、FPC17は剥離したり断線したりすることなく、加圧バネ19と一体的に動くことができる。また、FPC17はその中間部に設けた孔部17cで固定筒1に押さえビス11で締結される。これにより、ズーム駆動やフォーカス駆動に伴ってレンズ鏡筒100が光軸方向に動き、端子部17dの方向にFPC17を引っ張る力が働いたとしても、FPC17が引っ張られて加圧バネ19が反り返り、MRセンサ21を磁気テープ9から引き離して接触が断たれることはない。また、加圧バネ19が反り返り、保護板7と接触するのを防ぐ効果もある。また、FPC17の端子部17dはレンズ鏡筒100のメイン基板(不図示)に設けられたコネクタに挿入されて電気的に接続される。なお、FPC17は厚み数十μmの導体箔(主に銅)を同程度の厚みのフイルム状の絶縁体(主にポリイミド膜)で挟んだ構造であり、柔軟性に富み、屈曲を繰り返しても導通が失われない強度を持つ。
【0041】
加圧部材であるところの加圧バネ19は、孔部19a及び19bが固定筒1の取付け台1zに設けられた孔部1a及び1bに保護板7と共に固定ビス13によって取り付けられる。これにより、先端部19fに貼り付けられたMRセンサ21を固定筒1から迫り出した状態で保持している。なお、加圧バネは極めて薄く柔軟なバネ材で出来ており、MRセンサ21が磁気テープ9と摺動しても互いに傷つけることもなく、磁気テープ9の移動に常に追従させる程度の弾性を備えた構造となっている。
【0042】
磁気抵抗素子であるところのMRセンサ21は、一面でFPC17に実装された後、反対の面で加圧バネ19のセンサユニット先端部19fに接着される。MRセンサ21は、スケールリング3に貼り付けられた磁気テープ9の磁力によって抵抗値が変化する。即ち、磁気テープ9の着磁ピッチに対応したパルスを出力するため、スケールリング3の回転角に換算できる。磁気テープ9の着磁ピッチによって精度を決定できるため、高精度な位置検出を実現できる。
【0043】
即ち、本発明は、組立時や落下時に衝撃が加わっても壊れることが無く、簡素な構成で性能を維持できる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズ鏡筒を提供するという目的を、特に、固定部材と、加圧部材、配線部材、及び磁気抵抗素子からなり、前記固定部材に取り付けられる位置検出装置と、前記位置検出装置に重畳して設けられ、前記加圧部材よりも大きい保護部材と、前記固定部材に対して回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体とを有し、前記磁気抵抗素子が前記磁気記録媒体の移動量を検出することで前記固定部材に対する前記回転部材の位置を検出するレンズ鏡筒であって、前記磁気抵抗素子の感受面は前記磁気記録媒体に対向して設けられ、前記保護部材は前記加圧部材の輪郭を覆うように配置されたことを特徴とするレンズ鏡筒の構成により実現した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
なお、本発明にかかるレンズ鏡筒及びその構成要素、特に保護部材であるところの保護板は、本発明が適用される撮像装置及び取り付けられるレンズ装置に応じて適宜変形、及び拡大縮小される。また、必要に応じて、装置の外寸法の変更による外観の変化、部材間の結合位置など、種々の変形や変更が可能であるが、いずれも本発明の均等の範囲内である。
【符号の説明】
【0045】
1 固定筒
3 スケールリング
5 センサユニット
7 保護板
9 磁気テープ
11 押さえビス
13 固定ビス
15 カバーリング
17 フレキシブルプリントケーブル
19 加圧バネ
21 MRセンサ
70 押さえ板
100 レンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
加圧部材、配線部材、及び磁気抵抗素子からなり、前記固定部材に取り付けられる位置検出装置と、
前記位置検出装置に重畳して設けられ、前記加圧部材よりも大きい保護部材と、
前記固定部材に対して回転する回転部材と、
前記回転部材に取り付けられ、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体とを有し、
前記磁気抵抗素子が前記磁気記録媒体の移動量を検出することで前記固定部材に対する前記回転部材の位置を検出するレンズ鏡筒であって、
前記磁気抵抗素子の感受面は前記磁気記録媒体に対向して設けられ、
前記保護部材は前記加圧部材の輪郭を覆うように配置されたことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記配線部材及び前記磁気抵抗素子は前記加圧部材に取り付けられ、
前記配線部材は前記磁気抵抗素子と反対側に延出しており、
延出した前記配線部材は締結部材によって前記固定部材に締結されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記保護部材は板状の部材であり、その略中間部で前記レンズ鏡筒の光軸と反対側に折り曲げられ、再度光軸方向に折り曲げられた形状を有し、前記保護部材の先端部と前記加圧部材の加圧部とは間隔を開けて取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3311(P2013−3311A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133441(P2011−133441)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】