説明

磁気結合インダクタを含む装置において実行される誘導加熱方法

本発明は、少なくとも略同一の発振周波数を有する発振回路(OC1、OC2、...、OCp)を形成するようにキャパシタ(C1、C2、...、Cp)に接続された専用のインバータ(O1、O2、...、Op)によって各々が駆動される磁気結合インダクタ(Ind1、Ind2、...、Indp)を備えており、各インバータは、対応するインダクタを通過する電流の振幅および位相を変化させるように、制御部(M1、M2、...、Mp)によって制御されており、上記電流の決定手段と、上記金属部分の実際の温度プロファイル(θ1 mes、θ2 mes、...、θn mes)の決定手段とを更に備えている、金属部分の加熱装置において実行される誘導加熱方法に関する。当該方法は、a)上記実際の温度プロファイルと基準温度プロファイル(θ1 ref、θ2 ref、...、θn ref)とを比較し、上記加熱装置が上記部分に注入しなければならない基準電力密度プロファイル(Dpref1、Dpref2、...、Dprefn)を計算するステップと、b)上記電流が、上記基準電力密度プロファイルの上記部分への注入に適した上記目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)に到達するために、上記インバータが生成しなければならない目標電流を計算するステップと、c)上記インダクタを通過する上記電流と上記目標値とを比較するために、かつ、補正される電流偏差(δI1 corr、δI2 corr、...、δIp corr)を決定するために、上記インダクタを通過する上記電流を決定し、上記電流偏差に従って補正指示を上記制御部(M1、M2、...、Mp)に送信するステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状または棒状の金属部分を加熱する装置であって磁気結合インダクタを含む装置において実行される誘導加熱方法に関するものである。「磁気結合」とは、インダクタが互いの間で相互誘導を生成するという意味である。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱技術の多くが、加熱する部分が同一の種類および同一の大きさである場合に満足する構成を用いている。しかしながら、工業界では、柔軟性および生産性をますます必要としている。連続的な動作の間に、加熱される部分の位置または形式における変化に適合させるために、および、この変化に応じて所望の温度プロファイルに適合させるために、生産ラインが必要である。
【0003】
既知の技術は、注入電力領域毎に加熱を制御することが可能であるが、加熱領域における温度プロファイルの制御は、コイルの幾何学的デザイン、および、主にコイルに注入される電流の振幅変化によるコイルの電力供給方法に関連したままである。これらの電流の決定、および、これからもたらされる規制は、相互誘導によってコイル間に存在する磁気結合に多大に貢献し、駆動されるコイルの各々が他の全てに影響を及ぼす。磁気結合によって、周波数発生器への有害な影響、例えば、コンポーネントの破壊が存在し得ることを考慮すること無く、加熱部分の温度プロファイルを制御することは、極端に困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第00/28787号パンフレットには、インバータ型の電源に接続されたディマー型のスイッチ回路の媒介により駆動される誘導コイルによって、チューブ状の金属部分を加熱するシステムが記述されている。制御回路は、所望の温度プロファイルを鑑みて金属部分の異なる領域を個別に加熱するために、電源によって各コイルに注入された電力の持続時間を変化させることができる。それ故に、コイルへの電力の注入は、「全か無か」の方法によって実行される。すなわち、コイルへの電力の注入は、インバータの信号の数期間に対応する周期に亘り回避され得る。しかしながら、このシステムには欠点がある。特に、このシステムは、コイルによって生成された温度プロファイルを加熱部分において正確に制御できることなく、各コイルによって生成された平均電力のみ制御できる。また、この公報には、コイルとインバータとの接続は、負荷および実現される温度プロファイルに従って、ある程度規定されなければならないということが記載されている。更に、この公報には、回路間の磁気結合、または、回路間の磁気結合により影響を受けない方法、もしくは、回路間の磁気結合を考慮する方法が記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、これらの欠点を克服し、インダクタによって生成される温度プロファイルを良い精度を伴って制御可能であるために、一方では異なるインダクタ間における多数の結合を、そして他方ではインダクタと加熱部分との間における多数の結合を考慮した加熱方法を提供することにある。本発明の具体的な目的は、インダクタを駆動するインバータの制御に作用させることによって、インダクタの構成に適合させる必要なく、加熱を異なる所望の温度プロファイルにリアルタイムに調整可能であることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、少なくとも略同一の発振周波数を有する発振回路を形成するようにキャパシタに接続された専用のインバータによって各々が駆動される磁気結合インダクタを備えており、各インバータは、対応するインダクタを通過する電流の振幅および位相を変化させるように、制御部によって制御されており、上記電流の決定手段と、上記金属部分の実際の温度プロファイルの決定手段と、を更に備えている、金属部分の加熱装置において実行される誘導加熱方法であって、a)上記実際の温度プロファイルと基準温度プロファイルとを比較し、上記基準温度プロファイルを実現するために、上記加熱装置が上記部分に注入しなければならない基準電力密度プロファイルを計算するステップと、b)上記インダクタを相互に結び付ける電磁的関係および上記インダクタと上記部分とを結び付ける電磁的関係の情報と、上記インダクタによって生成された電流密度と上記インダクタを通過する上記電流との関係を表すベクトル像関数の情報とによって決定されるインピーダンス行列から、上記インダクタの上記電流が、上記基準電力密度プロファイルの上記部分への注入に適した上記目標値に到達するために、上記インバータが生成しなければならない目標電流を計算するステップと、c)上記インダクタを通過する上記電流と上記目標値とを比較するために、かつ、補正される電流偏差を決定するために、上記インダクタを通過する上記電流を決定し、上記インダクタを通過する上記電流を補正するようにインバータを制御するために、上記電流偏差に従って補正指示を上記制御部に送信するステップと、を含んでいる誘導加熱方法に関する。
【0007】
これらの構成によれば、加熱部分に与えられた温度プロファイルを正確に制御することができる。これは、同一の装置を用いて、異なるサイズおよび構造の幾つかの部分を加熱することにとって理想的である。
【0008】
本発明に係る加熱方法の好適な実施形態では、具体的には、以下の構成の一または他が実行される。
・上記キャパシタの容量が決定され、上記インピーダンス行列は、上記容量のベクトルに関連している。
・上記インピーダンス行列の初期値が、上記インダクタおよび上記部分の所定の初期平均温度に対して決定され、上記平均温度の少なくとも1つの増加した値に対して補正されたインピーダンス行列が、可変な間隔または周期的な間隔にて決定され、上記補正されたインピーダンス行列は、上記目標値を再計算するために用いられる。
・ステップ(a)およびステップ(b)を連続的に実行した後に、ステップ(c)が、補正される電流偏差を低減させるために、少なくとも1度実行され、続いて、上記実際の温度プロファイルを上記部分の異なる加熱領域における温度測定値に更新する際に、ステップ(a)、(b)および(c)が、少なくとも1度繰り返される。
・ステップ(b)における上記目標値を計算して決定するために、上記ベクトル像関数の情報により、電力密度の像関数が、上記電力密度が注入される上記部分の上記領域の空間特性に従って計算され、決定される上記目標電流の最適化ベクトルが、上記電力密度の像関数の各々と、上記基準電力密度プロファイルに対応する基準電力密度関数との差分を最小化することによって計算される。
・他のインバータと比較して、電流インバータの場合には最大電流を有し、電圧インバータの場合には最大電圧を有するインバータが、基準インバータとして選択され、シフト角度が、上記基準インバータの制御角度に関連して、上記他のインバータの制御に導入される。
・上記基準インバータは、上記基準インバータによって生成された、その近隣への高調波妨害を低減するために、2/3に等しいデューティサイクルに調整される。
・上記基準インバータにおける電流のRMS値が、上記インバータを駆動する直流電源への作用によって調整される。
【0009】
本発明の他の主題は、少なくとも略同一の発振周波数を有する発振回路を形成するために、各々がキャパシタに接続されている磁気結合インダクタと、各々が専用のインダクタを駆動するインバータであって、対応するインダクタを通過する電流の振幅および位相を変化させるように、制御部によって制御されているインバータと、を備えている誘導加熱装置であって、上記インダクタを通過する電流の決定手段、および、当該装置によって加熱される金属部分の実際の温度プロファイルの決定手段と、上記実際の温度プロファイルと基準温度プロファイルとの比較手段と、上記基準温度プロファイルを実現するために、上記加熱装置が上記部分に注入しなければならない基準電力密度プロファイルの計算手段と、上記基準電力密度プロファイルを上記部分に注入するために適した目標値にインダクタ電流を到達させるために上記インバータが供給しなければならない目標電流の、インピーダンス行列の情報に基づいた計算手段と、補正される電流偏差を決定することができる、上記インダクタを通過する電流と上記目標値との比較手段、および、上記インダクタを通過する電流を補正するようにインバータを制御する上記制御部に送信される補正指示を生成することができる、上記電流偏差の処理手段と、を更に備えている誘導加熱装置である。
【0010】
本発明に係る加熱方法の好適な実施形態では、具体的には、以下の構成の一または他が用いられる。
・上記インバータは、同一の電流源または電圧源によって駆動されており、上記インダクタを通過する上記決定された電流の上記比較手段は、コンパレータ部を備えており、各コンパレータ部は、インダクタを通過する電流の決定されたパラメータ、および、対応する目標値のパラメータを受信し、各コンパレータ部は、上記電流偏差の処理部に接続されており、上記コンパレータ部の1つは、上記電源が供給するものを表すパラメータを更に受け、それに接続された処理部は、上記電源が供給する電流または電圧を補正するために上記電源に送信される規制指示を生成するように適合されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
他の特徴および利点は、以下に示す図面を参照することによって、以下の非限定的な実施形態の記載より明白となるであろう。
【図1】固定型金属製ディスクの加熱に適用された、本発明に係る加熱方法が実行され得る誘導加熱装置の第1の実施例の概略図である。
【図2】電源側から見た、図1に示されているインダクタを3つ結合したインダクタを有するシステムのモデリングの概略図である。
【図3】可動型シートの加熱に適用された、図1に示されている誘導加熱装置の概略図である。
【図4】可動型金属棒の加熱に適用された、誘導加熱装置の第2の実施例の概略図である。
【図5】可動型シートの加熱に適用された、誘導加熱装置の第3の実施例の概略図である。
【図6】可動型シートの加熱に適用された、誘導加熱装置の第4の実施例の概略図である。
【図7】上記関数と基準となる電力密度関数との差分を最小化できる電流の最良ベクトルから計算された電力密度の像関数の概略図である。
【図8】インバータの電源が電流源である、本発明に係る誘導加熱装置の第1の実施形態の概略図である。
【図9】インバータの電源が電圧源である、本発明に係る誘導加熱装置の第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1では、例として挙げられている加熱装置は、3対の2重コイルを用いる、横方向の磁束によって加熱される非磁性金属製ディスクの構成に関するものであり、課題の軸対称性を有するという利点を有している。システム全体の対称性を確実にするために、ディスクの一方の側に配置されている各コイルは、他方の側の2重コイルに直列に接続され、1つのインダクタを形成している。このように、当該システムは回転不変である。更に、当該システムの強磁性体が、線形性という前提にて作動するために、一定かつ単一の透磁率を有する場合を考える。各インダクタは、直列型(電圧インバータ)または並列型(電流インバータ)である専用のインバータによって駆動される。
【0013】
図2では、結合インダクタの形状でのシステムのモデリングによって、異なる既存の相互作用を表現できるようになる。また、このモデリングによって、インダクタの電源の設計、および、注入され得る電流の値の計算が可能になる。
【0014】
所定の形状に対して、システムの磁気的および電気的な状態を反映するために、想定された加熱構成の各々に対して、システムのインピーダンス行列を決定する必要がある。行列の次元Nは、インダクタの数によって与えられる。この場合、N=3である。
【0015】
インピーダンス行列は、全ての結合効果を考慮するために完全でなければならない。この行列を決定することが複雑であり得るので、幾つかの分析手段またはデジタル手段、もしくは、特定信号の印加による連続的なオンラインでの測定が用いられ得る。
【0016】
このようにモデル化された、システムの一般方程式は、
【0017】
【数1】

【0018】
と表記され得る。ここで、
は、インダクタの端子間の正弦波電圧である。
は、インダクタの巻線電流である。
・Zは、システムのインピーダンス行列である。
【0019】
ここで考慮されるケースでは、行列Zは、以下の形状にて表記され得る。
【0020】
【数2】

【0021】
または、
【0022】
【数3】

【0023】
ここで、
・Lmmは、各インダクタの自己インダクタンスを表す。
・Lmn=Lnmは、インダクタ間の相互インダクタンスを表す。
・Rmmは、各インダクタの自己抵抗を表す。
・Rmn=Rnmは、誘導電流に起因した等価抵抗を表す。
【0024】
コイルと加熱部分との間における電磁的関係の情報によって、所望の過熱を得るために、各コイルに注入されるべき電流の計算を行うことができる。
【0025】
なお、コイル間の相互作用に関連した問題を克服するために、様々な従来の構成または計算方法では、非対角結合項を最小化する試みが為されている。また、結合が弱い多くの場合、各インダクタの自己抵抗が、誘導電流に起因した等価抵抗に比べて大きいことが多い。このように、従来の方法では、対角項のみを保持する、簡素化された行列、すなわち、不完全な行列が用いられている。これは、特にコイルの下に位置する領域における温度プロファイルの正確な制御および設置の柔軟性にとっては不利であるが、加熱の簡略化された規制を意味している。反対に、本発明は、コイルに注入される電流の決定を改善し、これによる加熱部分における温度プロファイルの制御を改善するために、システムのインピーダンスの完全な行列を考慮している。
【0026】
記載の実施例では、異なる3つの電流源により駆動されている3つのインダクタが存在している。各コイルに注入される電流を決定することは、5つの未知変数を決定することに至り、インダクタInd1における電流の位相は、基準値として用いられており、それ故に未知数ではない。実際、加熱部分を構成する所定のシートに対して、未知数は以下の通りである。
・I1:インダクタInd1の電流のRMS値であり、この電流は位相基準として用いられる。
・I2およびφ2:インダクタInd2の電流のRMS値、および、この電流のI1に対する位相シフトである。
・I3およびφ3:インダクタInd3の電流のRMS値、および、この電流のI1に対する位相シフトである。
【0027】
上記より、本発明において考慮されているインピーダンスの完全な行列を用いることによって、加熱部分の温度プロファイルの制御は、インダクタにおける電流の振幅を制御することによってだけではなく、これらの電流の相互間位相シフトを制御することによっても実行されなければならないことが分かる。これは、各インバータが、対応するインダクタを通過する電流の振幅および位相を変更できるように制御されることを意味している。
【0028】
上記の関係を鑑みて、未知数のベクトルは、以下のように表記され得る。
【0029】
【数4】

【0030】
これらの未知数を通常の解決方法によって容易に決定することはできない。実際、非常に簡単なケースを除いて、幾何学データ、インダクタにおける電流、電磁場の空間分布、および、全ての位置での電力密度に関連した解析的定式化は、変数が余りにも多く、実際に不可能である。対象領域を基本メッシュに区切るというデジタル技術に基づいた従来のフィールド計算ソフトウェアでは、磁場の分布を知ることができ、結果的に導電部分における電力密度を、インダクタに注入される電流の関数として計算できる。本ケースでは、加熱部分において所望の電力密度プロファイルを得ることは、ベクトルxの1つ以上の値が存在するか否かの情報の問題であるので、逆の問題が生じる。
【0031】
熱方程式の適用によって、導電部分に注入される電力密度Dpが、加熱される製品の熱挙動の良いイメージを与えることが知られている。例えば、取り扱っている物質の移動速度が0である静的加熱の場合、加熱物質の瞬間温度Tを知るためには、従来、以下に示す簡略化した熱方程式の時間的な解が必要である。
【0032】
【数5】

【0033】
ここで、
・ρは、密度を表す。
・Cpは、所定の熱容量を表す。
・λは、熱伝導率を表す。
【0034】
この方程式には、実時間積分が含まれているが、解くには余り難しくはない。更に、「フラッシュ」加熱の場合、すなわち、物質内部の熱分散が無視できるほどに加熱時間が短い場合、上式は以下のように更に簡略化される。
【0035】
【数6】

【0036】
このようにして従来の簡略化された式が得られ、注入された電力密度Dpと温度の上昇が関連付けられる。したがって、求められた電力密度プロファイルは、加熱部分に対して所望である熱プロファイルから得られている。
【0037】
図1を参照にした実施例では、システムは、シートから成るディスクの回転軸に対して不変であり、かつ、当該シートの厚さにおいて不変である。したがって、ディスクの1つの次元、すなわちディスクの対象領域の径方向が考慮される。ベクトルxの未知数を決定するために、対象領域の半径に沿った電力密度が以下の式によって計算されることが知られている。
【0038】
【数7】

【0039】
すなわち、
【0040】
【数8】

【0041】
ここで、σは導電率を表しており、は、当該領域における半径r上に規定された電流密度ベクトルを表しており、JR(r,x)およびJI(r,x)は、このベクトルの実部および虚部を、対象領域の半径の関数として表している。
【0042】
例として挙げられているシステムは、完全な線形性を伴っている。すなわち、具体的には、当該システムは、強磁性体またはヒステリシスを伴っていない。したがって、3つのインダクタの電源の各々に、源の重ね合わせの定理を適用することができる。なお、同様の原理が、非線形システムにおいて用いられてもよい。このように、電流密度の像関数は、加熱ディスクの対象となる環状領域の半径rの関数として得られ、各像関数fkは、インダクタによって生成される電流密度Jk(r)と当該インダクタを駆動する電流Ikとの関係を表している。これらの像関数は、ベクトル的であり、以下のように規定される実部および虚部を有している。
【0043】
【数9】

【0044】
【数10】

【0045】
最後に、3つのインダクタを伴う実施例では、ディスクの半径rの環状領域において誘導された全電流密度のベクトル計算が、以下のように表され得る。
【0046】
【数11】

【0047】
ここで、j2=−1であるので、
【0048】
【数12】

【0049】
これより、
【0050】
【数13】

【0051】
また、以下のようにも表され得る。
【0052】
【数14】

【0053】
このようにして、加熱部分の対象領域において誘導された電流密度ベクトルと、インダクタにおける電流のベクトルとの関係が得られる。一方では、インダクタと一方では加熱部分における電流密度の像関数との間の電気的な値に関連したインピーダンス行列を用いることによって、決定された電力密度プロファイルから未知数xのベクトルを計算するために必要な全情報が、利用可能となる。なお、発振回路の容量は、一般に、製作公差により厳密には等しくなく、更にある程度ドリフトし得るので、キャパシタのベクトル、すなわち、発振回路の容量のベクトルを、この計算において利用することも可能である。有限要素、有限差分、有限体積、境界積分、部分要素等価回路、または、同一タイプの任意の他の技術のような数多くの可能なデジタル技術を伴った、偏微分方程式を解くためのソフトウェアを、計算のために用いることができる。
【0054】
本方法は、比較的簡単な磁気結合システムの所定の実施例について記述されているが、より複雑な非対称なシステムの何れにも置き換え可能である。コイルの数は限定されておらず、図3から6に見られる実施例のように、コイルまたは加熱部分の様々な形状および構成が想定され得る。
【0055】
電流密度の像関数が決定されると、電力密度の像関数Dp(r,x)が、上式(3)および(4)によって与えられる関係によって決定される。更に、それは計算による未知数のベクトルxを最適化するために有利である。最適化の問題としては、金属製ディスクに注入されようとする基準電力密度プロファイルに対応する基準電力密度関数Dpref(r)と、電力密度像関数との差分を最小化できる最適化ベクトルxの計算が挙げられる。例えば、ディスク全体の温度が均一である場合、この基準電力密度関数は一定値であると想定できる。しかしながら、特定の加熱プロファイルを得るために、一定値ではない関数を有することも可能である。出願人が、図1に示されている装置を用いて、ディスクの径方向における、例えば正弦波プロファイルまたは三角波プロファイルに対応する異なる基準電力密度関数を伴うテストを実行したところ、結果は非常に満足のいくものであった。
【0056】
したがって、最適化とは、所望の未知数に対して最大値XiHおよび最小値XiBを固定する一方で、式g(r,x)=|Dp(r,x)−Dpref(r)|を最小化することである。これにより、とりわけ、異常な解または物理的実体のない解を除去することが可能になる。したがって、最適化問題の定式化は、
【0057】
【数15】

【0058】
および、
【0059】
【数16】

【0060】
を用いたg(r,x)の最小化に至る。
【0061】
問題を解決した後、所定のディスクに対して、インダクタにおける電流のベクトルの全振幅およびそれらの各位相を含んでいる最適化ベクトルxが得られる。10MW/m3に等しい基準電力密度|Dpref|を伴う直径650mmのディスクの実施例に対する結果の1つでは、電力密度像関数における相対的なズレは、図7のDp(r,x)に示されているように最大で3%である。
【0062】
この解決方法は、3つの発振回路が非常に近接した周波数にて発振するように、各コイルの端子において必要な無効電力補償の等価性を考慮する一方で、ディスクの幾つかの大きさ(例えば、半径に加えて、角度位置および対象領域の厚さが考慮される場合は3つ)を考慮するために、簡単に拡大され得る。したがって、5つの未知数を伴うベクトルは、物理的なシステムの変更無しに18の未知数を伴うベクトルとなる。
【0063】
上記にて説明された、最適化ベクトルxを決定するための方法は、本発明に係る誘導加熱方法において有利に用いられており、この方法は、特に図8および9に示されている一方の加熱装置または他方の加熱装置において実行されることが可能である。
【0064】
図8は、本発明に係る誘導加熱装置の第1の実施形態の概略図であり、インバータの電源1は直流電流源である。
【0065】
加熱装置は、磁気結合インダクタInd1、Ind2、...、Indpを備えている。各インダクタは、発振回路OC1、OC2、...、OCpを形成するためにキャパシタC1、C2、...、Cpに接続されている専用の電流インバータO1、O2、...、Opによって駆動されている。電流インバータは、電源1と直列に接続されている。一般に、各インバータは、双方向電子スイッチを備えており、モジュレータM1、M2、...、Mpとも呼称される制御部によって制御されている。各モジュレータは、パルス形状であるスイッチ用制御コマンドを生成し、これらのコマンドの時間シフトによって、対応するインダクタを通過する電流I1、I2、...、Ipの振幅A1、A2、...、Apおよび位相φ1、φ2、...、φpの変化が可能になる。各インバータの出力での基本電流の振幅の変化は、インバータを制御するモジュレータによって生成された信号にシフト角度を導入することによって実行される。以下の説明のように基準インバータを選択することによって、他のインバータのシフト角度が、基準インバータの制御角度に関連して導入され得る。基準インバータの制御は、例えば、2/3に等しいデューティサイクル、すなわち30度の制御角度を伴って実行され得る。
【0066】
発振回路は、少なくとも略同一の発振周波数を有しており、インダクタは、この発振周波数において実質的に作動するので、この発振周波数によって、誘導効率を最大化することができる。また、この発振周波数によって、インバータにおける損失を低減することができる。したがって、モジュレータによって生成された、インバータの周期的制御信号は、略同一の周波数を有する。インダクタを通過する電流I1、I2、...、Ipの位相φ1、φ2、...、φpを変化させるために、対応するインバータの制御信号の時間をシフトさせれば、すなわち、インバータのスイッチの制御コマンドの全体に同一の時間シフトを適合させれば十分である。この時間シフトは、基準と見なされる他のインダクタのインバータの制御信号に対する遅れおよび進みの何れにおいても十分に実行され得る。
【0067】
所望の温度プロファイルを実現するために加熱部分に注入される電力密度をリアルタイムに制御するために、インバータの制御を補正するためにインダクタを通過する電流の振幅および位相パラメータの決定手段を設けることが必要である。インダクタの電流I1、I2、...、Ipの振幅および位相パラメータの決定手段(図示されていない)が、これらのパラメータをコンパレータ部ε1、ε2、...、εpに提供するために設けられる。これらの決定手段は、例えば、各々がインダクタと直列に配置されている電流変換器によって構成されていてもよいが、他の手段が想定されていてもよい。インダクタンスおよび容量パラメータによって、例えば、インバータによって発振回路に供給されるアクティブ電流を測定することが可能になり、インダクタにおける電流を計算することが可能になる。
【0068】
また、加熱金属部分10の実際の温度プロファイルの決定手段(図示されていない)が、例えば、n個の加熱領域に熱電対を配置することによって、および、測定温度θ1 mes、θ2 mes、...、θn mesを記録することによって設けられている。また、サーマルカメラ用いてこれらのパラメータを決定することも可能である。また、例えば、加熱領域が直接的な測定には余りにも限られている場合、誘導電流に基づいた計算によって行うことも可能である。
【0069】
例えば、実際の温度プロファイルは、加熱時に連続的に決定され、基準温度プロファイルθ1 ref、θ2 ref、...、θn refと定期的に比較される。当該基準温度プロファイルθ1 ref、θ2 ref、...、θn refは、メモリに予め格納されている、加熱部分に対して所望な最終加熱プロファイルに対応している。この比較は、上記メモリに集積され得るコンパレータ2によって実行される。この結果は、熱方程式から導出され、恐らくは上式(2)のように簡略化された数式から、基準電力密度プロファイルDpref1、Dpref2、...、Dprefnを計算する計算機によって処理される。当該基準電力密度プロファイルDpref1、Dpref2、...、Dprefnは、基準温度プロファイルを実現するために、加熱装置が加熱部分に注入しなければならない。当該計算器は、1つ以上の加熱部分の構成および1つ以上の基準電力密度プロファイルに対する異なる実際の温度プロファイルに対応している、計算済の基準電力密度プロファイルの表が格納されているメモリによって構成されていてもよい。
【0070】
インダクタにおける電流が、基準電力密度プロファイルを加熱部分に注入するための適正な目標値I1 ref、I2 ref、...、Ip refに到達するために、インバータが供給しなければならない目標電流を、計算機は設定している。この計算では、ベクトル像関数fkおよび好ましくは発振回路の規定された容量のベクトルを伴うインピーダンス行列Zを用いている。コンパレータ部ε1、ε2、...、εpは、測定または計算されたインダクタの電流I1 mes、I2 mes、・・・、Ip mesのパラメータと、目標値I1 ref、I2 ref、...、Ip refとを比較して、補正電流とも呼称される補正される電流偏差δI1 corr、δI2 corr、...、δIp corrを決定する。これらの補正電流の振幅および位相パラメータの処理部CORR1、CORR2、...、CORRpが、インダクタを通過する電流の振幅および位相シフトを補正するようにインバータを制御するモジュレータに送信される補正指示を生成する。
【0071】
インダクタにおける電流の位相シフトを制御することによって、0または一定の位相シフトを得ようとしている訳ではないことが理解されよう。一方、位相シフトは、加熱部分に注入される電力密度をリアルタイムに調整するための調整パラメータとして用いられている。これは、上述のようにインピーダンスの完全な行列を考慮することによって可能となる。換言すれば、位相シフトは、温度プロファイル制御パラメータとして用いられている。例えば、モジュレータによって生成されたインバータ制御信号の1/4周期毎に、インダクタにおける電流の位相シフトをリアルタイムに制御するという条件が設定され得る。当該インバータ制御信号は、例えば、平坦なプロファイル、または、線形的に増加または減少するプロファイル(一次多項式)、もしくは、非線形的に増加または減少するプロファイル(一次より高次の多項式)のような異なるプロファイルに従って温度を適正に制御する。
【0072】
有利なことに、インダクタおよび加熱部分の所定の初期平均温度θiniに対するインピーダンス行列Zの初期値Ziniを決定することができる。続いて、平均温度θの少なくとも1つの増加値θmodに対して補正されたインピーダンス行列Zmod(θ)を、可変な間隔または周期的な間隔にて決定することができる。補正されたインピーダンス行列は、目標電流を再計算するために用いられる。可変なサンプリング間隔の場合では、目標電流の計算は、測定平均温度θが一連の所定の値の中から実質的に新しい増加値θmodに到達する毎に実行され得る。
【0073】
有利なことに、インダクタに最小インピーダンス(例えば、図1の実施例におけるコイルInd1)を供給する電流インバータは、他のインダクタにおける電流よりも高いこのインダクタにおける電流が好適に基準位相と見なされるので、基準インバータとして選択される。インバータの電源1が図9に示されているような電圧源である場合における、最大電流を有する電流インバータまたは最大電圧を有する電圧インバータは、基準インバータとして見なされ得る。更に、基準インバータは、2/3のデューティ比を有するように有利に調整され得る。すなわち、それは、半周期毎に120度がONであり60度がOFFである矩形波を生成するように制御される。この目的は、このインバータによって生成された、その近隣への高調波妨害を低減するために、三次高調波とその多重波とを相殺することである。基準インバータのデューティサイクルが2/3の値に調整される必要がある訳ではないことが分かる。例えば、所定のケースでは、全波の制御が好まれ得る。
【0074】
基準インバータにおける電流のRMS値が、直流電流源または電圧源1への作用によって調整され得る。これには、特に、インダクタInd1における電流の位相が除去された、すなわち、上述の実施例のような最適化ベクトルxの取得を簡略化する未知数のベクトル(上式1を参照)を有するという利点がある。位相シフト角を基準インバータの制御に導入することによって、基準インバータにおける電流のRMS値を調整することも可能であることが分かる。図8では、位相基準と見なされている電流I1を用いることによって、対応するコンパレータ部ε1が直流電源1によって送られる電流Ic mesのパラメータを受信することに有利である。このようにして、関連した処理部CORR1が、インバータO1によって発振回路OC1に送られた電流を補正するために、制御モジュレータM’1を介して電源1に送られる規制指示を生成するように適合される。これにより、この電流の振幅を制御し、それ故に、インダクタInd1における電流I1の振幅を補正することが可能になる。
【0075】
上述された加熱装置を用いて金属部分を加熱するために、以下のステップを含む方法が用いられる。
a)加熱部分の実際の温度プロファイルと所定の基準温度プロファイルとを比較し、基準温度プロファイルを実現するために、加熱装置が加熱部分に注入しなければならない基準電力密度のプロファイルを計算するステップ。
b)好ましくは発振回路の容量のベクトルに関連した、システムのインピーダンス行列Zから、および、ベクトル像関数fkの情報によって、基準電力密度プロファイルを加熱部分に注入することに適した目標値にインダクタの電流を到達させるために、インバータが生成しなければならない目標電流を計算するステップ。
c)インダクタを通過する電流とこれらの電流の目標値とを比較するために、かつ、補正される電流偏差を決定するために、インダクタを通過する電流を、測定によって、または、計算によって決定し、電流を補正するようにインバータを制御するために、モジュレータに補正指示を送信するステップ。
【0076】
インダクタの目標電流、および、測定または計算された電流が電流ベクトルであるのは当然であり、結果的に振幅だけでなく位相もまた考慮されている。
【0077】
有利なことに、ステップ(a)およびステップ(b)を連続的に実行した後に、ステップ(c)が、補正される電流偏差を低減させるために、少なくとも1度実行される。続いて、実際の温度プロファイルを加熱部分の異なる加熱領域における温度測定値に更新する際に、ステップ(a)、(b)および(c)が、少なくとも1度繰り返される。
【0078】
図9は、本発明に係る誘導加熱装置の第2の実施形態の概略図であり、インバータの電源1は直流電圧源である。
【0079】
当該加熱装置は、図8に示されている第1の実施形態の加熱装置と同様であるが、電流インバータは、電圧源と並列に接続されている。この実施形態は、所定の効果、具体的にはインバータにおける伝導損失を低減させるという効果を有している。一方、電源1がインバータO1に送る電流を表す電流パラメータIc calcは、インピーダンス行列Z’を用いて電源電圧から計算されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも略同一の発振周波数を有する発振回路(OC1、OC2、...、OCp)を形成するようにキャパシタ(C1、C2、...、Cp)に接続された専用のインバータ(O1、O2、...、Op)によって各々が駆動される磁気結合インダクタ(Ind1、Ind2、...、Indp)を備えており、
各インバータは、対応するインダクタを通過する電流(I1、I2、...、Ip)の振幅(A1、A2、...、Ap)および位相(φ1、φ2、...、φp)を変化させるように、制御部(M1、M2、...、Mp)によって制御されており、
上記電流(I1、I2、...、Ip)の決定手段と、
上記金属部分の実際の温度プロファイル(θ1 mes、θ2 mes、...、θn mes)の決定手段と、
を更に備えている、金属部分の加熱装置において実行される誘導加熱方法であって、
a)上記実際の温度プロファイル(θ1 mes、θ2 mes、...、θn mes)と基準温度プロファイル(θ1 ref、θ2 ref、...、θn ref)とを比較し、上記基準温度プロファイルを実現するために、上記加熱装置が上記部分に注入しなければならない基準電力密度プロファイル(Dpref1、Dpref2、...、Dprefn)を計算するステップと、
b)上記インダクタを相互に結び付ける電磁的関係および上記インダクタと上記部分とを結び付ける電磁的関係の情報と、上記インダクタによって生成された電流密度と上記インダクタを通過する上記電流(I1、I2、...、Ip)との関係を表すベクトル像関数(fk)の情報とによって決定されるインピーダンス行列(Z)から、上記インダクタの上記電流が、上記基準電力密度プロファイル(Dpref1、Dpref2、...、Dprefn)の上記部分への注入に適した上記目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)に到達するために、上記インバータが生成しなければならない目標電流を計算するステップと、
c)上記インダクタを通過する上記電流(I1 mes、I2 mes、...、Ip mes)と上記目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)とを比較するために、かつ、補正される電流偏差(δI1 corr、δI2 corr、...、δIp corr)を決定するために、上記インダクタを通過する上記電流(I1 mes、I2 mes、...、Ip mes)を決定し、上記インダクタを通過する上記電流を補正するようにインバータを制御するために、上記電流偏差に従って補正指示を上記制御部(M1、M2、...、Mp)に送信するステップと、を含んでいる、
ことを特徴とする誘導加熱方法。
【請求項2】
上記キャパシタ(C1、C2、...、Cp)の容量が決定され、上記インピーダンス行列(Z)は、上記容量のベクトル(C)に関連している、
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱方法。
【請求項3】
上記インピーダンス行列(Z)の初期値(Zint)が、上記インダクタおよび上記部分の所定の初期平均温度(θint)に対して決定され、
上記平均温度の少なくとも1つの増加した値(θmod)に対して補正されたインピーダンス行列(Zmod(θ))が、可変な間隔または周期的な間隔にて決定され、
上記補正されたインピーダンス行列は、上記目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)を再計算するために用いられる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱方法。
【請求項4】
ステップ(a)およびステップ(b)を連続的に実行した後に、ステップ(c)が、補正される電流偏差(δI1 corr、δI2 corr、...、δIp corr)を低減させるために、少なくとも1度実行され、続いて、上記実際の温度プロファイル(θ1 mes、θ2 mes、...、θn mes)を上記部分の異なる加熱領域における温度測定値に更新する際に、ステップ(a)、(b)および(c)が、少なくとも1度繰り返される、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の誘導加熱方法。
【請求項5】
ステップ(b)における上記目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)を計算して決定するために、上記ベクトル像関数(fk)の情報により、電力密度の像関数(Dp(r,x))が、上記電力密度が注入される上記部分の上記領域の空間特性(r)に従って計算され、決定される上記目標電流の最適化ベクトル(x)が、上記電力密度の像関数(Dp(r,x))の各々と、上記基準電力密度プロファイル(Dpref1、Dpref2、...、Dprefn)に対応する基準電力密度関数(Dpref(r))との差分を最小化することによって計算される、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の誘導加熱方法。
【請求項6】
他のインバータ(O2、...、Op)と比較して、電流インバータの場合には最大電流を有し、電圧インバータの場合には最大電圧を有するインバータ(O1)が、基準インバータとして選択され、
シフト角度が、上記基準インバータの制御角度に関連して、上記他のインバータの制御に導入される、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の誘導加熱方法。
【請求項7】
上記基準インバータ(O1)は、上記基準インバータによって生成された、その近隣(O2、...、Op)への高調波妨害を低減するために、2/3に等しいデューティサイクルに調整される、
ことを特徴とする請求項6に記載の誘導加熱方法。
【請求項8】
上記基準インバータ(O1)における電流のRMS値が、上記インバータ(O1、O2、...、Op)を駆動する直流電源(1)への作用によって調整される、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の誘導加熱方法。
【請求項9】
少なくとも略同一の発振周波数を有する発振回路(OC1、OC2、...、OCp)を形成するために、各々がキャパシタ(C1、C2、...、Cp)に接続されている磁気結合インダクタ(Ind1、Ind2、...、Indp)と、
各々が専用のインダクタ(Ind1、Ind2、...、Indp)を駆動するインバータ(O1、O2、...、Op)であって、対応するインダクタを通過する電流(I1、I2、...、Ip)の振幅(A1、A2、...、Ap)および位相(φ1、φ2、...、φp)を変化させるように、制御部(M1、M2、...、Mp)によって制御されているインバータ(O1、O2、...、Op)と、
を備えている誘導加熱装置であって、
上記インダクタを通過する電流(I1、I2、...、Ip)の決定手段、および、当該装置によって加熱される金属部分の実際の温度プロファイル(θ1 mes、θ2 mes、...、θn mes)の決定手段と、
上記実際の温度プロファイル(θ1 mes、θ2 mes、...、θn mes)と基準温度プロファイル(θ1 ref、θ2 ref、...、θn ref)との比較手段と、
上記基準温度プロファイルを実現するために、上記加熱装置が上記部分に注入しなければならない基準電力密度プロファイル(Dpref1、Dpref2、...、Dprefn)の計算手段と、
上記基準電力密度プロファイル(Dpref1、Dpref2、...、Dprefn)を上記部分に注入するために適した目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)にインダクタ電流を到達させるために上記インバータが供給しなければならない目標電流の、インピーダンス行列(Z)の情報に基づいた計算手段と、
補正される電流偏差(δI1 corr、δI2 corr、...、δIp corr)を決定することができる、上記インダクタを通過する電流(I1 mes、I2 mes、...、Ip mes)と上記目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)との比較手段(ε1、ε2、...、εp)、および、上記インダクタを通過する電流を補正するようにインバータを制御する上記制御部(M1、M2、...、Mp)に送信される補正指示を生成することができる、上記電流偏差の処理手段(CORR1、CORR2、...、CORRp)と、
を更に備えている、
ことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項10】
上記インバータ(O1、O2、...、Op)は、同一の電流源または電圧源(1)によって駆動されており、
上記インダクタを通過する上記決定された電流(I1 mes、I2 mes、...、Ip mes)の上記比較手段は、コンパレータ部(ε1、ε2、...、εp)を備えており、
各コンパレータ部は、インダクタを通過する電流(I1 mes、I2 mes、...、Ip mes)の決定されたパラメータ(A1、φ1;A2、φ2;...;Ap、φp)、および、対応する目標値(I1 ref、I2 ref、...、Ip ref)のパラメータを受信し、
各コンパレータ部は、上記電流偏差の処理部(CORR1、CORR2、...、CORRp)に接続されており、
上記コンパレータ部の1つ(ε1)は、上記電源(1)が供給するものを表すパラメータ(Ic mes、Ic calc)を更に受け、
それに関連した処理部(CORR1)は、上記電源(1)が供給する電流または電圧を補正するために上記電源(1)に送信される規制指示を生成するように適合されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−508908(P2013−508908A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534742(P2012−534742)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052216
【国際公開番号】WO2011/048316
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(504462489)エレクトリシテ・ドゥ・フランス (25)
【出願人】(506066777)サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティ フィック セーエヌエールエス (22)
【出願人】(512102324)アンスティテュ ナシオナル ポリテクニック ドゥ トゥールーズ (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL POLYTECHNIQUE DE TOULOUSE
【住所又は居所原語表記】6 Allee Emile Monso,F−31400 Toulouse,France
【Fターム(参考)】