説明

磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法

【課題】より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極と併設された第2磁極と、前記第1磁極と前記第2磁極との間に、少なくともその一部が設けられたスピントルク発振子と、前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、前記第2磁極を磁化させ、前記第1コイルと独立して通電可能な第2コイルと、前記第2磁極を磁化させ、前記第1コイル及び前記第2コイルと独立して通電可能な第3コイルと、を備えたことを特徴とする磁気記録ヘッドが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代においては、MR(Magneto-Resistive effect)ヘッドとGMR(Giant Magneto-Resistive effect)ヘッドの実用化が引き金となって、HDD(Hard Disk Drive)の記録密度と記録容量が飛躍的な増加を示した。しかし、2000年代に入ってから磁気記録媒体の熱揺らぎの問題が顕在化してきたために、記録密度増加のスピードが一時的に鈍化した。それでも、面内磁気記録よりも原理的に高密度記録に有利である垂直磁気記録が2005年に実用化されたことが牽引力となって、昨今、HDDの記録密度は年率約40%の伸びを示している。
【0003】
また、最新の記録密度実証実験では400Gbits/inchを超えるレベルが達成されており、このまま堅調に進展すれば、2012年頃には記録密度1Tbits/inchが実現されると予想されている。しかしながら、このような高い記録密度の実現は、垂直磁気記録方式を用いても、再び熱揺らぎの問題が顕在化するために容易ではないと考えられる。
【0004】
この問題を解消し得る記録方式として「高周波磁界アシスト記録方式」が提案されている(例えば特許文献1)。高周波磁界アシスト記録方式では、記録信号周波数よりも十分に高い、磁気記録媒体の共鳴周波数付近の高周波磁界を、媒体に局所的に印加する。この結果、媒体が共鳴し、高周波磁界が印加された部分の媒体の保磁力(Hc)がもとの保磁力の半分以下となる。この効果を利用して、記録磁界に高周波磁界を重畳することにより、より高保磁力(Hc)かつ高磁気異方性エネルギー(Ku)の媒体への磁気記録が可能となる。しかし、この特許文献1に開示された手法では、コイルにより高周波磁界を発生させているので、媒体に高周波磁界を効率的に印加することが困難であった。
【0005】
そこで高周波磁界の発生手段として、スピントルク発振子を利用する手法が提案されている(例えば、特許文献2〜4、及び、非特許文献1)。これらにより開示された技術においては、スピントルク発振子は、スピン注入層と、中間層と、磁性体層と、電極とからなる。電極を通じてスピントルク発振子に直流電流を通電すると、スピン注入層によって生じたスピントルクにより、磁性体層の磁化が強磁性共鳴を生じる。その結果、スピントルク発振子から高周波磁界が発生する。
【0006】
スピントルク発振子のサイズは数十ナノメートル程度であるため、発生する高周波磁界はスピントルク発振子の近傍の数十ナノメートル程度の領域に局在する。さらに高周波磁界の面内成分により、垂直磁化した媒体を効率的に共鳴させることが可能となり、媒体の保磁力を大幅に低下させることが可能となる。この結果、主磁極による記録磁界と、スピントルク発振子による高周波磁界とが重畳した部分のみで高密度磁気記録が行われ、高保磁力(Hc)かつ高磁気異方性エネルギー(Ku)の媒体を利用することが可能となる。このため、高密度記録時の熱揺らぎの問題を回避できる。
【0007】
スピントルク発振子を有する磁気記録ヘッドを実現するためには、磁気記録媒体の磁化を十分に共鳴させるために、非常に強い高周波磁界を得ることが必要である。しかし、非常に強い高周波磁界を生成するためには、スピントルク発振子に印加する電流を大きくする必要があるが、その際に発熱によりスピントルク発振子の特性が劣化してしまう、という問題があった。このため、より低い高周波磁界を用いて、高周波磁界アシスト記録を達成する実現手法が求められている。
【特許文献1】米国特許第6011664号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0023938号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0219771号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0019040A1号明細書
【非特許文献1】IEEE TRANSACTION ON MAGNETICS, VOL. 42, NO. 10, PP. 2670, “Bias-Field-Free Microwave Oscillator Driven by Perpendicularly Polarized Spin Current” by Xiaochun Zhu and Jian-Gang Zhu
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極と併設された第2磁極と、前記第1磁極と前記第2磁極との間に、少なくともその一部が設けられたスピントルク発振子と、前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、前記第2磁極を磁化させ、前記第1コイルと独立して通電可能な第2コイルと、前記第2磁極を磁化させ、前記第1コイル及び前記第2コイルと独立して通電可能な第3コイルと、を備えたことを特徴とする磁気記録ヘッドが提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極と併設されたスピントルク発振子と、前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、前記第1磁極を磁化させ、前記第1コイルと独立して通電可能な第2コイルと、を備えたことを特徴とする磁気記録ヘッドが提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、上記のいずれかの磁気記録ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダと、前記ヘッドスライダを一端に搭載するサスペンションと、前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、を備えたことを特徴とする磁気ヘッドアセンブリが提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、磁気記録媒体と、上記の磁気ヘッドアセンブリと、前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備えたことを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極と併設された第2磁極と、前記第1磁極と前記第2磁極との間に、少なくともその一部が設けられたスピントルク発振子と、前記第1磁極を磁化させる第1磁極コイルと、前記第2磁極を磁化させ、前記第1磁極コイルと独立して通電可能な第2コイルと、を有する磁気記録ヘッドと、前記第1コイルに、前記磁気記録媒体に記録される記録信号を含む記録電流を供給する第1電流回路と、前記第2コイルに変調用電流を供給する第2電流回路と、を有し、前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備え、前記第2電流回路は、前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む前記変調用電流を前記第2コイルに供給することを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極と併設されたスピントルク発振子と、前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、を有する磁気記録ヘッドと、前記第1コイルに、前記磁気記録媒体に記録される記録信号を含む記録電流を供給する第1電流回路を有し、前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備え、前記第1電流回路は、前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む前記記録電流を前記第1コイルに供給することを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【0015】
また、本発明の他の一態様によれば、磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極の近傍に配置されたスピントルク発振子と、を用いて前記磁気記録媒体に情報の記録を行う磁気記録方法であって、前記スピントルク発振子に、前記磁気記録媒体に記録される記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む磁界を印加しつつ、前記記録磁界を前記磁気記録媒体に印加して前記磁気記録媒体に情報の記録を行うことを特徴とする磁気記録方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0018】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドについて、多粒子系の垂直磁気記録媒体に記録する場合を想定して、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドが搭載されるヘッドスライダの構造を例示する模式的斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドに用いられるスピントルク発振子の構造を例示する模式的斜視図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
【0019】
図1に表したように、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド51は、磁気記録媒体80に記録磁界を印加する主磁極61(第1磁極)と、主磁極61と併設された調整用磁極63(第2磁極)と、主磁極61と調整用磁極63との間に設けられたスピントルク発振子10と、主磁極61を磁化させる主磁極コイル61a(第1コイル)と、調整用磁極63を磁化させる調整用磁極コイル63a(第3コイル)と、調整用磁極63を磁化させる調整用磁極変調コイル63b(変調用コイル、すなわち、第2コイル)と、を備える。
【0020】
調整用磁極コイル63aは、主磁極コイル61a及び調整用磁極変調コイル63bと独立して通電可能である。また、調整用磁極変調コイル63bは、主磁極コイル61a及び調整用磁極コイル63aと独立して通電可能である。
【0021】
なお、図1に例示した具体例では、スピントルク発振子10は、主磁極61と調整用磁極63との間に設けられているが、後述するように、調整用磁極63は、主磁極61の媒体対向面61sよりも後退(リセス)して設けられても良く、この場合は、スピントルク発振子10の一部が、主磁極61と調整用磁極63との間に設けられる。このように、スピントルク発振子10は、主磁極61と調整用磁極63との間に、その少なくとも一部が設けられれば良い。
【0022】
上記の主磁極61、スピントルク発振子10、調整用磁極63、主磁極コイル61a、調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bは、書き込みヘッド部60に含まれる。
【0023】
書き込みヘッド部60は、リターンパス(シールド)62をさらに含むことができる。 図1に例示した具体例では、見易いように、リターンパス62は主磁極61のスピントルク発振子10とは反対の方向の位置に設けられているが、リターンパス62の配置は任意である。また、リターンパス62は後述するサイドシールドと一体して形成されることができる。
【0024】
なお、図1に表したように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51には、さらに、再生ヘッド部70を設けることができる。
再生ヘッド部70は、第1磁気シールド層72aと、第2磁気シールド層72bと、第1磁気シールド層72aと第2磁気シールド層72bとの間に設けられた磁気再生素子71と、を含む。
上記の再生ヘッド部70の各要素、及び、上記の書き込みヘッド部60の各要素は、図示しないアルミナ等の絶縁体により分離される。
磁気再生素子71としては、GMR素子やTMR(Tunnel Magneto-Resistive effect)素子などを利用することが可能である。なお、再生分解能をあげるために、磁気再生素子71は、2枚の磁気シールド層、すなわち、第1及び第2磁気シールド層72a、72bの間に設置される。
【0025】
そして、図1に表したように、磁気記録ヘッド51の媒体対向面61sに対向して磁気記録媒体80が設置される。磁気記録ヘッド51の媒体対向面61sは、磁気記録ヘッド51に対して設置される磁気記録媒体80に対向した主磁極61の主面とすることができる。
【0026】
また、例えば、図2に表したように、磁気記録ヘッド51は、ヘッドスライダ3に搭載される。ヘッドスライダ3は、Al/TiCなどからなり、磁気ディスクなどの磁気記録媒体80の上を、浮上または接触しながら相対的に運動できるように設計され、製作される。
【0027】
ヘッドスライダ3は、空気流入側3Aと空気流出側3Bとを有し、磁気記録ヘッド51は、空気流出側3Bの側面などに配置される。これにより、ヘッドスライダ3に搭載された磁気記録ヘッド51は、磁気記録媒体80の上を浮上または接触しながら相対的に運動する。
【0028】
図1に表したように、磁気記録媒体80は、媒体基板82と、その上に設けられた磁気記録層81と、を有する。書き込みヘッド部60から印加される磁界により、磁気記録層81の磁化83が所定の方向に制御され、書き込みがなされる。
一方、再生ヘッド部70は、磁気記録層81の磁化83の方向を読み取る。
【0029】
なお、ここで、図1に表したように、主磁極61が調整用磁極63に対向する面に対して垂直で、調整用磁極63から主磁極61に向けた方向をX軸とし、X軸に対して垂直で、主磁極61の媒体対向面61sに平行な軸をY軸とする。そして、X軸及びY軸に対して垂直な方向をZ軸とする。従ってZ軸は、媒体対向面61sに対して垂直である。
【0030】
図3に表したように、磁気記録ヘッド51に設けられるスピントルク発振子10は、発振層10a(第1磁性体層)と、スピン注入層30(第2磁性体層)と、発振層10aとスピン注入層30との間の設けられた非磁性体からなる中間層22と、を有する。
この時、発振層10aは、主磁極61から印加される磁界よりも小さい保磁力を有し、そして、スピン注入層30は、主磁極61から印加される磁界よりも小さい保磁力を有するように構成されることができる。
【0031】
このように、スピントルク発振子10は、主磁極61から印加される磁界より小さい保磁力を有する発振層10aと、主磁極61から印加される磁界より小さい保磁力を有するスピン注入層30と、発振層10aとスピン注入層30との間に設けられた非磁性体からなる中間層22と、を有する積層構造体25を有する。
【0032】
なお、これらの層の主面は、X軸に対して垂直であり、すなわち、積層方向はX軸に対して平行である。ただし、本発明はこれに限らず、積層構造体25の積層層方向はY軸に対して平行としても良い。
【0033】
さらに、スピントルク発振子10は、積層構造体25に電流を通電可能とした一対の電極(第1電極41及び第2電極42)をさらに有することができる。すなわち、積層構造体25の発振層10aの側に第1電極41が設けられ、積層構造体25のスピン注入層30の側に第2電極42が設けられている。
【0034】
図3に例示した具体例では、第1電極41の側(すなわち、発振層10aの側)が、主磁極61の側に配置され、第2電極42の側(すなわち、スピン注入層30の側)が、調整用磁極63の側に配置されている。これにより、発振層10aと主磁極61とが近づき、スピントルク発振子10から生じる高周波磁界Hacと主磁極61から生じる記録磁界Hwとが磁気記録媒体80で重畳し易くなり、より効果的な高周波磁界アシスト記録が可能になる。ただし、本発明はこれに限らず、各構成要素の設計や用いる材料の選定によっては、第2電極42の側(すなわち、スピン注入層30の側)が、主磁極61の側に配置され、第1電極41の側(すなわち、発振層10aの側)が、調整用磁極63の側に配置されても良い。
【0035】
スピントルク発振子10においては、第1電極41と第2電極42とを通じて駆動電流を流すことにより、発振層10aから高周波磁界を発生させることができる。駆動電流密度は5×10A/cmから1×10A/cmにすることが望ましく、所望の発振状態になるよう適宜調整する。
【0036】
第1電極41及び第2電極42には、Ti、Cuなどの電気抵抗が低く、酸化されにくい材料を用いることができる。
なお、第1電極41及び第2電極42の少なくともいずれかは、例えば、主磁極61及び調整用磁極63の少なくともいずれかと兼用されても良い。さらに、各種の変形例によっては、第1電極41及び第2電極42のいずれかは、リターンパス62によって兼用されても良い。
【0037】
中間層22には、Cu、Au、Agなどのスピン透過率の高い材料を用いることができる。中間層22の膜厚は、1原子層から5nmとすることが望ましい。これにより発振層10aとスピン注入層30との交換結合を最適な値に調節する可能となる。
【0038】
発振層10aには、発振時に磁界を発生する高Bs軟磁性材料(FeCo/NiFe積層膜)を用いることができ、発振層10aの膜厚は、5nmから40nmとすることが望ましい。
【0039】
スピン注入層30には、膜面直方向(X軸方向)に磁化配向したCoPt合金を用いることができ、スピン注入層30の膜厚は、2nmから60nmとすることが望ましい。
【0040】
なお、スピン注入層30及び発振層10aには、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi、FeCoAl、FeCoSi、CoFeB等の、比較的飽和磁束密度が大きく、膜面内方向に磁気異方性を有する軟磁性層や、膜面内方向に磁化が配向したCoCr系やCoIr系の磁性合金膜を用いることができる。
さらに、スピン注入層30及び発振層10aには、膜面直方向(X軸方向)に磁化配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系磁性層、TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金磁性層、Co/Ni、Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd等のCo人工格子磁性層、CoPt系やFePt系、FePd系の合金磁性層、SmCo系合金磁性層など、垂直配向性に優れた材料も適宜用いることができる。
また、スピン注入層30及び発振層10aには、複数の上記材料を積層したものを用いても良い。これにより、スピン注入層30及び発振層10aの、飽和磁束密度(Bs)及び異方性磁界(Hk)を調整することが容易となる。
【0041】
一方、主磁極61、調整用磁極63及びリターンパス62には、FeCo、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の、比較的飽和磁束密度が大きい軟磁性層を用いることができる。
【0042】
なお、主磁極61及び調整用磁極63においては、媒体対向面61sの側の部分とそれ以外の部分の材料を別々の材料としても良い。例えば、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするために、媒体対向面61sの側の部分の材料を、飽和磁束密度の特に大きいFeCo、CoNiFe、FeN等とし、それ以外の部分は、特に透磁率が高いNiFe等にしても良い。また、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、主磁極61及び調整用磁極63の少なくともいずれかの、媒体対向面61sの側の形状を、バックギャップ部より小さくしても良い。これにより磁束が媒体対向面61sの側の部分に集中し、高強度の磁界を発生することが可能となる。
【0043】
主磁極コイル61a、調整用磁極コイル63a、調整用磁極変調コイル63bには、Ti、Cuなどの電気抵抗が低く、酸化されにくい材料を用いることができる。
【0044】
図4に表したように、主磁極コイル61aは、主磁極61を磁化させる。調整用磁極変調コイル63bは、調整用磁極63を磁化させ、主磁極コイル61aと独立して通電可能とされている。また、調整用磁極コイル63aは、調整用磁極63を磁化させ、主磁極コイル61a及び調整用磁極変調コイル63bと独立して通電可能とされている。
【0045】
例えば、同図に表したように、主磁極コイル61aは、記録電流回路210(第1電流回路)に接続される。そして、調整用磁極コイル63aは、調整用磁極電流回路230(第3電流回路)に接続される。そして、調整用磁極変調コイル63bは、調整用磁極変調電流回路231(変調用電流回路、すなわち、第2電流回路)に接続される。
【0046】
これにより、スピントルク発振子10に、主磁極61から磁気記録媒体80に印加する記録磁界の記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する変調信号を含む磁界(外部磁界Hext)を印加することで、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調することができ、その結果、磁気記録媒体80が高周波磁界Hacと共鳴し易くなる。これにより、より低い高周波磁界Hacを用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
【0047】
以下、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子記録ヘッドの動作について詳しく説明する。 図5は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極61によって磁気記録媒体80に情報を記録する際の記録信号Swを例示しており、同図(b)は、主磁極コイル61aに供給される記録電流Iwを例示しており、同図(c)は、調整用磁極コイル63aに供給される調整用電流Icを例示しており、同図(d)は、調整用磁極変調コイル63bに供給される調整用磁極変調用電流Im(変調用電流)を例示している。
【0048】
図5(a)に表したように、記録信号Swは、磁気記録媒体80へ記録する情報に基づいて時間に対して変化する信号である。
【0049】
そして、図5(b)に表したように、記録電流Iwは、記録信号Swに基づいて変化する電流であり、この記録電流Iwによって主磁極61は磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加する。なお、記録電流Iwの極性は、主磁極コイル61aの巻き方等によっては、記録信号Swと逆の極性であっても良く、また、位相のずれ等があっても良い。ここでは、記録電流Iwが記録信号Swと同じ極性であり、位相のずれも無い場合として説明する。
【0050】
一方、図5(c)に表したように、調整用電流Icは、例えば、磁気記録媒体80が磁気ディスクである場合の内周と外周等の記録場所による記録条件の差異や、製造条件等の変動によってスピントルク発振子10の発振周波数が変動した時などにおいて、その差異や変動を補正してスピントルク発振子10に印加される外部磁界が一定になるように調整された電流とされる。なお、本具体例では、調整用電流Icの周波数は、記録信号Swすなわち記録電流Iwの周波数と同じである。なお、後述するように、調整用電流Icは、記録電流Iwや記録信号Swと位相のずれがあっても良いが、ここでは、位相のずれが無い場合として説明する。
【0051】
そして、図5(d)に表したように、調整用磁極変調用電流Imは、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwの周波数よりも高い周波数で変化している。すなわち、調整用磁極変調用電流Imは、記録磁界Hwの記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smを含んでいる。例えば、調整用磁極変調用電流Im、すなわち、変調信号Smの周波数は、1.5GHzよりも高く設定される。
【0052】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドで発生する磁界を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極コイル61aによって主磁極61から発生し磁気記録媒体80に印加される記録磁界Hwを例示しており、同図(b)は、主磁極61から発生する磁界の内でスピントルク発振子10に印加される成分である主磁極印加磁界Hsを例示しており、同図(c)は、調整用磁極コイル63aによって調整用磁極63から発生する調整用磁界成分Hcを例示しており、同図(d)は、調整用磁極変調コイル63bによって調整用磁極63から発生する変調用磁界成分Hmを例示している。そして、同図(e)は、上記の各磁界が合成され、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを例示している。
【0053】
図6(a)に表したように、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwに基づいた磁界が主磁極61から発生し、その磁界が記録磁界Hwとして磁気記録媒体80に印加される。
【0054】
そして、図6(b)に表したように、主磁極61から発生した磁界の一部は、主磁極印加磁界Hsとしてスピントルク発振子10に印加される。このように、主磁極61から発生した磁界の一部が記録磁界Hwであり、他の一部が主磁極印加磁界Hsであるので、主磁極印加磁界Hsは、時間に対して記録磁界Hwと同様に変化する磁界である。すなわち、主磁極印加磁界Hsも、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swを含む磁界である。
【0055】
一方、図6(c)に表したように、調整用電流Icに基づいて調整用磁界成分Hcが調整用磁極63から発生し、これがスピントルク発振子10に印加される。
【0056】
そして、図6(d)に表したように、調整用磁極変調用電流Imに基づいて、変調用磁界成分Hmが調整用磁極63から発生し、スピントルク発振子10に印加される。なお、変調用磁界成分Hmは、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smを含んでおり、例えば、変調用磁界成分Hmの周波数は、1.5GHzよりも高く設定される。
【0057】
その結果、図6(e)に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextは、上記の主磁極印加磁界Hs、調整用磁界成分Hc及び変調用磁界成分Hmが合成された磁界となり、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swの周波数を有する磁界(主磁極印加磁界Hs及び調整用磁界成分Hc)と、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界とが合成された磁界となる。
【0058】
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51においては、スピントルク発振子10に記録磁界Hwの記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界が印加される。この時、外部磁界Hextの磁界の強さ(Hextの瞬時値)に応じてスピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacの周波数fsが変化する。この結果、外部磁界Hextの強さ(Hextの瞬時値)に連動して、スピントルク発振子10から発生する高周波磁界Hacを周波数変調することが可能となる。
【0059】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
すなわち、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを変えて、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacの周波数fsを測定した実験結果を例示している。なお、同図の横軸は外部磁界Hextを表しており、縦軸は周波数fsを表している。
図7に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextが強くなると、スピントルク発振子10は発生する高周波磁界Hacの周波数fsが高くなっている。
【0060】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示する模式的グラフ図である。
すなわち、同図は図7に例示した実験結果を基に、外部磁界Hextの極性を両極性に拡張した模式的グラフ図である。なお、同図の横軸は外部磁界Hextを表しており、縦軸は周波数fsを表している。
外部磁界Hextの絶対値がスピン注入層30の保磁力および発振層10aの保磁力よりも大きい領域では、外部磁界Hextの方向とスピン注入層30の磁化方向は、外部磁界Hextの正負によらず平行となる。このため外部磁界Hextの絶対値が等しい場合、スピントルク発振子10の発振特性は外部磁界Hextの正負によらず同一となる。
【0061】
その結果、図8に表したように、外部磁界Hextが負の極性の場合の特性は、図7に例示した外部磁界Hextが正の極性の時の特性を、正負対称に折り返した特性となる。従って、外部磁界Hextの極性(磁界の方向)に係わらず、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの絶対値が大きくなると、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacの周波数fsが高くなる。そして、外部磁界Hextの絶対値が小さくなると、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacの周波数fsが低くなる。
【0062】
このことから、外部磁界Hextの強さを変えることで、周波数fsが制御でき、これを利用してスピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができる。
【0063】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの動作を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)はスピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを例示しており、同図(b)は上記の外部磁界Hextを時間を拡大して例示しており、同図(c)は、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacを例示している。
【0064】
図9に表したように、外部磁界Hextの波高値が大きい時に高周波磁界Hacの周波数fsは高くなり、外部磁界Hextの波高値が小さい時に高周波磁界Hacの周波数fsが低くなる。なお、高周波磁界Hacの振幅(磁界Hac1と磁界Hac2との差)は一定である。
このようにして、外部磁界Hextの強度を記録磁界Hwとは別に変調することで、スピントルク発振子10によって発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができる。
【0065】
そして、このように、周波数が変調された高周波磁界Hacが磁気記録媒体80に印加された時には、一定の周波数の高周波磁界Hacが印加された時よりも、磁気記録媒体80は高周波磁界Hacに共鳴し易くなる。
すなわち、図9(c)に例示したように、高周波磁界Hacの周波数fsが相対的に高い期間T3から、相対的に低い期間T4に移行する際に、高周波磁界Hacの位相と磁気記録媒体80の磁化83の位相とが一致し易くなる。
【0066】
例えば、高周波磁界Hacの周波数fsが変化する場合には、磁気記録媒体80の磁化83が反転する途中で共鳴周波数が変化している時にも、磁気記録媒体80の磁化83が2から3回転する期間において高周波磁界Hacを吸収できる。これに対し、高周波磁界Hacの周波数fsが一定の場合には、磁気記録媒体80の磁化83が1回転する期間しか高周波磁界Hacを吸収できない。このため、高周波磁界Hacの周波数fsが変化する場合には、磁気記録媒体80は高周波磁界Hacに対して共鳴し易くなる。
【0067】
このため、高周波磁界Hacが周波数変調され、周波数fsが高い状態から低い状態に変化する時に、磁気記録媒体80は高周波磁界Hacに共鳴し易くなり、より効率的に高周波磁界Hacのエネルギーを吸収できる。その結果、低い(小さい)高周波磁界Hacにおいて、安定した高周波磁界アシスト記録が可能となる。すなわち、磁気記録媒体80に効率的に高周波磁界Hacを吸収させることにより、書き込み能力が向上する。そして、例えば磁気記録媒体80の媒体磁性体粒子(磁性体粒子)間の特性ばらつきがあっても書き込めるようになり、結果として磁気記録媒体80の媒体磁性体粒子間の特性ばらつきの許容幅を拡大する。
【0068】
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51によれば、より低い高周波磁界Hacを用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
【0069】
なお、図9に表したように、外部磁界Hextは、記録磁界Hwの記録信号Swに基づく周波数成分、すなわち、時間T1に相当する成分と、記録信号Swの周波数よりも高い周波数成分、すなわち、時間T2に相当する成分(変調信号Smの成分)を有している。この時、時間T1は、磁気記録ヘッド51が磁気記録媒体80の1つの記録ビットに対して書き込みを行う時間、すなわち、磁気記録ヘッド51が1つの記録ビットの上を通過する時間に設定される。
【0070】
一方、例えば、時間T2は、記録ビットを構成する複数の媒体磁性体粒子のそれぞれに対して、少なくとも周波数変調された1つの周期(高周波磁界Hacにおける高周波数の期間T3及び相対的に低周波数の期間T4の合計)の間、高周波磁界Hacが印加されるように設定される。すなわち、時間T2は、磁気記録ヘッド51が1つの媒体磁性体粒子の上を通過する時間と同等かそれよりも短い時間に設定される。
すなわち、例えば、1つの記録ビットがN個の媒体磁性体粒子で構成される場合には、時間T2は、時間T1の1/Nに設定することができる。
【0071】
なお、上記は、時間T1や時間T2に対する設計的な指針を説明したものであり、実際には、各種構成要素のばらつきや製造上のばらつき等を加味して、適切に変形される。
【0072】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は本実施形態に係る磁気記録ヘッド51の書き込みヘッド部60における主磁極61、スピントルク発振子10及び調整用磁極63と、磁気記録媒体80と、の配置を例示している。なお、この図では第1電極41及び第2電極42は省略されている。
同図(b)は、磁気記録ヘッド51の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。すなわち、同図(b)の横軸は、主磁極61からスピントルク発振子10に向けた方向における距離xを表しており、縦軸は、磁気記録媒体80に実効的に印加される実効磁界Heffを表している。
そして、同図(b)には、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51の場合の特性(実線A1)の他に、比較例の特性(破線A2)も一緒に例示されている。
【0073】
図10(a)に表したように、スピントルク発振子10が主磁極61と調整用磁極63との間に配置されている。そして、スピントルク発振子10の発振層10aが主磁極61の側に配置され、スピン注入層30が調整用磁極63の側に配置されている。なお、本具体例では、主磁極61と調整用磁極63との間の間隔は、約60nmである。ただし、本発明において、主磁極61と調整用磁極63との間の間隔は任意である。
【0074】
一方、主磁極61の磁気記録媒体80に対向する媒体対向面61sに対向して磁気記録媒体80は配置されている。磁気記録媒体80は、微小な領域をそれぞれ有する磁性体の粒子である媒体磁性体粒子80g(磁性体粒子)で構成されている。この媒体磁性体粒子80gの1つの径(大きさ)は例えば7nmであり、隣接する媒体磁性体粒子80gどうしの間隔は例えば1nmであり、従って、媒体磁性体粒子80gの配列のピッチは8nmとなる。
【0075】
なお、本具体例では、磁気記録ヘッド移動方向において、媒体磁性体粒子80gの2つ〜3つが、1つの記録ビットとして用いられている例である。ただし、本発明はこれに限らず、上記の媒体磁性体粒子80gの径の大きさや媒体磁性体粒子80gどうしの間隔、1つの記録ビットに対応する媒体磁性体粒子80gの数は任意である。例えば、1つの記録ビットは1つの媒体磁性体粒子80gで構成されても良い。
【0076】
なお、媒体磁性体粒子80gにおいては、磁気記録媒体80の表面を例えば走査型電子顕微鏡等を用いた解析などによって観察することによって粒子どうしの境界が観察される。ただし、これに限らず、媒体磁性体粒子80gは、その粒子どうしの境界が不明確であっても良く、媒体磁性体粒子80gは、例えば磁化83の方向が実質的に制御できる大きさの領域とすることができる。このため、媒体磁性体粒子80gは、例えばグラニュラ媒体に含まれる磁性結晶粒子で構成されても良いし、磁性ディスクリートビットで構成されても良い。
【0077】
なお、本具体例では、磁気記録ヘッド51は、磁気記録媒体80に対して、矢印85a(磁気記録ヘッド移動方向)の方向に相対的に移動して、磁気記録媒体80に対して、スピントルク発振子10から高周波磁界Hacを印加しつつ、主磁極61から記録磁界Hwを印加して磁気記録媒体80に情報を記録する。従って、図10(a)は、磁気記録ヘッド51と磁気記録媒体80とが相対的に移動するある瞬間の配置を例示している。
【0078】
図10(b)に表したように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51の場合(実線A1の場合)、距離xが約10nmの位置で実効磁界Heffは最大となり、その最大値は16.2×10Oeである。そして、この時の磁気記録媒体80の保持力Hc0は13.5×10Oeであり、実効磁界Heffの最大値は保持力Hc0よりも十分に大きい。そして、実効磁界Heffが保持力Hc0よりも大きい距離xの範囲は、−2nm〜15nmの範囲である。この距離xの範囲に存在している磁気記録媒体80の媒体磁性体粒子80gにおいて、媒体磁性体粒子80gの磁化83を記録される記録信号に従って反転させることができる。この具体例の場合には、主磁極61とスピントルク発振子10との間の位置にある図中の媒体磁性体粒子80hの磁化83の向きを反転させることが可能である。
【0079】
一方、比較例の磁気記録ヘッドは、調整用磁極変調コイル63bを有していない。従って、図6(c)に例示した変調用磁界成分Hmがスピントルク発振子10に印加されない。従ってスピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextは、図6(d)に例示した外部磁界Hextから変調用磁界成分Hmを取り除いた波形であり、すなわち、記録磁界Hwと同じ周波数の成分のみを有し、変調信号Smを含まない。この場合には、外部磁界Hextの絶対値は一定であるので、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacの周波数fsは一定であり、周波数変調されない。
【0080】
従って、図10(b)に例示したように、比較例の場合(破線A2の場合)、実効磁界Heffの最大値は12.0×10Oeであり、実効磁界Heffはどの距離xにおいても保持力Hc0よりも小さい。従って、どの距離xの媒体磁性体粒子80gにおいても実効磁界Heffは保持力Hc0よりも小さく、磁化83の向きを反転させることができない。
【0081】
なお、高周波磁界アシスト記録においは、磁気記録媒体80への高周波磁界Hacの印加により磁気記録媒体80が高周波磁界Hacに共鳴することで磁気記録媒体80の保持力Hc0が低下し、この状態において磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加して情報を記録するが、この図では、磁気記録媒体80が高周波磁界Hacに共鳴した時も磁気記録媒体80の保持力Hc0が一定であり、逆に保持力Hc0に対して相対的に実効磁界Heffが変化したとして換算して例示している。なお、磁気記録媒体80が周波数変調した高周波磁界Hacに共鳴すると、書き込みに必要な磁界が例えば35%低下することが知られている。
【0082】
本実施形態に係る磁気記録ヘッド51においては、磁気記録媒体80がスピントルク発振子10から印加される高周波磁界Hacに共鳴し、その結果、保持力Hc0よりも実効磁界Heffが上回り、磁化83の向きを反転させ磁気記録が可能となる。一方、比較例の場合は、磁気記録媒体80が高周波磁界Hacに十分に共鳴せず、その結果、保持力Hc0よりも実効磁界Heffが常に小さく磁化83の向きを反転できず磁気記録ができない。
【0083】
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51によれば、高周波磁界Hacを周波数変調することによって、比較例よりも例えば35%低い高周波磁界Hacによって、安定した高周波磁界アシスト記録が可能となる。
【0084】
ここで、磁気記録媒体80に含まれる媒体磁性体粒子80gのそれぞれに対して、高周波磁界Hacの周波数変調による高周波数の磁界と低周波数の磁界との組み合わせが印加されることが望ましい。すなわち、図9に関して説明したように、記録ビットを構成する複数の媒体磁性体粒子80gのそれぞれに対して、少なくとも周波数変調された1つの周期(高周波数の期間T3及び相対的に低周波数の期間T4の合計)の間、高周波磁界Hacが印加されることが望ましい。
【0085】
従って、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Sm(この場合は変調用磁界成分Hmの信号)の周波数は、磁気記録ヘッド51と磁気記録媒体80との間の相対的な速度を、磁気記録媒体80に含まれる媒体磁性体粒子80gの大きさの平均値で割った値以上であることが望ましい。これにより、媒体磁性体粒子80gのそれぞれに対して、高周波数の磁界と低周波数の磁界との組み合わせを印加することができる。これにより、媒体磁性体粒子80gのそれぞれに対して高周波磁界Hacに共鳴し易くでき、均一な書き込み特性が得られる。そして、磁気記録及び再生の際のジッタの低減が可能となる。
【0086】
例えば、磁気記録媒体80がディスク状であり、磁気記録ヘッド51と磁気記録媒体80との間の相対的な速度である周速度が10m/sであり、磁気記録媒体80の媒体磁性体粒子80gの大きさの平均値が7nmである時、変調信号Smの周波数は、1.5GHz以上とすることができる。
なお、上記において、磁気記録媒体80に含まれる媒体磁性体粒子80gの大きさは、特に、磁気記録ヘッド移動方向に平行な方向における媒体磁性体粒子80gの長さとすることができる。
【0087】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
図11に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド51aでは、調整用磁極63には1つのコイル63cだけが設けられている。これ以外は、磁気記録ヘッド51と同様なので説明を省略する。
【0088】
この場合、調整用磁極63に設けられているコイル63cは、図4に例示した調整用磁極変調コイル63bと見なしても良いし、調整用磁極変調コイル63bと調整用磁極コイル63aとを合わせた機能を有するコイルとしても良い。ここでは、コイル63cが、調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bの両方の機能を有する場合として説明する。
【0089】
この場合も、主磁極コイル61aは、主磁極61を磁化させる。そしてコイル63c(第2コイル)は、調整用磁極63を磁化させ、主磁極コイル61aと独立して通電可能とされている。
すなわち、例えば、同図に表したように、主磁極コイル61aは、記録電流回路210に接続され、そして、コイル63cは、電流回路232(第2電流回路)に接続される。
【0090】
これにより、主磁極61から磁気記録媒体80に印加する記録磁界Hwの記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する外部磁界Hextをスピントルク発振子10に印加することで、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacを周波数変調する。
【0091】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドに通電される電流及び発生する磁界を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極61によって磁気記録媒体80に情報を記録する際の記録信号Sw、すなわち、主磁極61の主磁極コイル61aに供給される記録電流Iwを例示しており、同図(b)は、主磁極61によって発生する記録磁界Hwを例示している。なお、既に説明したように、主磁極61によって発生する磁界の一部が磁気記録媒体80に印加される記録磁界Hwであり、他の一部がスピントルク発振子10に印加される主磁極印加磁界Hsとなるので、同図(b)は、主磁極印加磁界Hsを同時に例示している図でもある。また、同図(c)は、コイル63cに供給される調整用磁極電流Ic1を例示しており、同図(d)は、コイル63cによって発生する調整用磁極磁界Hc1を例示している。そして、同図(e)は、上記の主磁極印加磁界Hsと調整用磁極磁界Hc1とが合成され、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを例示している。
【0092】
図12(a)及び(b)に表したように、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwに基づいた磁界が主磁極61から発生し、これが記録磁界Hwとして磁気記録媒体80に印加される。そして、主磁極61から発生した磁界の別の一部は、主磁極印加磁界Hsとしてスピントルク発振子10に印加される。なお、既に説明したように、主磁極印加磁界Hsは、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swを含む磁界である。
【0093】
一方、図12(c)に表したように、調整用磁極電流Ic1は、図5(c)に例示した、記録信号Swと同じ周期で変化する調整用電流Icに、図5(d)に例示した、記録信号Sw(記録電流Iw)の周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smを有する調整用磁極変調用電流Imが重畳された電流とされている。なお、この時も調整用磁極電流Ic1における変調信号Smの周波数は、例えば1.5GHzよりも高く設定される。
【0094】
これにより、図12(d)に表したように、高周波成分である変調信号Smが重畳されている調整用磁極電流Ic1に基づいて調整用磁極63から発生する調整用磁極磁界Hc1は、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smを含み、これがスピントルク発振子10に印加される。
【0095】
その結果、図12(e)に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextは、上記の主磁極印加磁界Hsと、高周波成分(変調信号Sm)が重畳された調整用磁極磁界Hc1と、が合成された磁界となる。
【0096】
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51aにおいても、スピントルク発振子10に記録磁界Hwの記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界(外部磁界Hext)が印加される。これにより、外部磁界Hextの磁界の強さ(Hextの波高値)に応じてスピントルク発振子10から発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調することが可能となる。その結果、磁気記録媒体80が高周波磁界Hacと共鳴し易くなり、これにより、より低い高周波磁界Hacを用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
【0097】
なお、上記では、コイル63cが、調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bの両方の機能を有する場合、すなわち、電流回路232が、調整用電流Icに変調信号Smを有する調整用磁極変調用電流Imが重畳された電流をコイル63cに通電する場合として説明したが、本発明はこれに限らない。すなわち、コイル63cが、調整用磁極変調コイル63bの機能のみを有していても良い。例えば、コイル63に供給される調整用磁極電流Ic1が、例えば図5(d)に例示した調整用磁極変調用電流Imの波形を有していても良い。このように、電流回路232が変調信号Smのみを有する調整用磁極変調用電流Imをコイル63cに通電しても良く、この場合もスピントルク発振子10から発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調することが可能である。
【0098】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
図13に表したように、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッド51bでは、主磁極61の媒体対向面61sよりも、調整用磁極63の媒体対向面61s側の端面63sが後退(リセス)している。すなわち、磁気記録媒体80からみて、調整用磁極63は、主磁極61よりも後退している。これ以外は、磁気記録ヘッド51と同様とすることができるので説明を省略する。
【0099】
すなわち、本実施形態に係る磁気記録ヘッド51bにおいては、調整用磁極63の端面63sが、主磁極61の媒体対向面61sよりも、上方に配置され、これにより、調整用磁極63の媒体対向面61sの側の端面63sと、磁気記録媒体80と、の距離が、主磁極61の媒体対向面61sと、磁気記録媒体80と、の距離よりも、距離Rだけ長くなる。
【0100】
これにより、調整用磁極63によって発生する磁界が磁気記録媒体80に与える影響を低減することができ、例えば、調整用磁極63によって発生する磁界が磁気記録媒体80に書き込まれた情報を消去する等の悪影響を防止する。
【0101】
すなわち、調整用磁極63がスピントルク発振子10に与える磁界に影響を実質的に与えないで、調整用磁極63が磁気記録媒体80に与える影響が低減する。これにより、調整用磁極63は、適正な磁界をスピントルク発振子10に効率良く印加することができる。これにより、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacをより効率的に周波数変調できる。
【0102】
このように、本具体例の磁気記録ヘッド51bにおいては、磁気記録ヘッド51において、調整用磁極63をリセスさせて、調整用磁極63が磁気記録媒体80に直接的に磁界の影響を与えないように構成される。なお、磁気記録ヘッド51b以外においても、例えば上記の磁気記録ヘッド51aにおいても、主磁極61の媒体対向面61sよりも、調整用磁極63の媒体対向面61s側の端面63sを後退(リセス)させても良い。すなわち、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドにおいて調整用磁極63が設けられる場合において、調整用磁極63は、磁気記録媒体80に直接的に磁界の影響を与えないように構成される。
【0103】
なお、スピントルク発振子10の磁気記録媒体80側の面は、主磁極61の媒体対向面61sと平行な面内に設定できる。すなわち、スピントルク発振子10は、調整用磁極63のようにリセスした配置ではなく、主磁極61と同様に、磁気記録媒体80に対して近接した配置とすることができる。これにより、主磁極61からの記録磁界Hwとスピントルク発振子10からの高周波磁界Hacとを、効率的に磁気記録媒体80に印加し、効率的な磁気記録を行うことができる。
【0104】
なお、図13に表したように、調整用磁極63は、スピントルク発振子10側の部分では、スピントルク発振子10に近接し、すなわち、主磁極61に近接し、スピントルク発振子10よりも上方においては、主磁極61から離れる形状とすることができる。この構造により、スピントルク発振子10の近傍領域のみにおいて、スピントルク発振子10と調整用磁極63とを近づけることができ、調整用磁極63の磁界をスピントルク発振子10に効率的に印加し、駆動条件の許容が拡大し、また、製造し易い磁気記録ヘッドが得られる。
【0105】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、書き込みヘッド部60の、媒体対向面61s側の構造を例示する平面図であり、同図(b)は、同図(a)のA−A’線断面図である。
【0106】
図14に表したように、本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッド51cは、主磁極61及びスピントルク発振子10の側面に、サイドシールド64a及び64bが設けられている。すなわち、磁気記録ヘッド51bは、主磁極61及びスピントルク発振子10の少なくともいずれかの側面、すなわち、主磁極61とスピントルク発振子10とが並ぶ方向と直交し、主磁極61の媒体対向面61sとは異なる面に対向して設けられたサイドシールド64a及び64bをさらに備えている。これ以外については、磁気記録ヘッド51と同様とすることができるので説明を省略する。
【0107】
本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド51cにおいては、主磁極61及びスピントルク発振子10の側面に設けられたサイドシールド64a及び64bにより、磁気記録媒体80の隣接トラックへの主磁極61からの記録磁界Hw、及び、スピントルク発振子10からの高周波磁界Hacの広がりを抑えることが可能となる。
これにより、主磁極61からの記録磁界Hwと、スピントルク発振子10からの高周波磁界Hacとが重なり合い、高周波磁界アシスト記録が可能となる領域は、主磁極61とスピントルク発振子10との間のギャップ部に集中する。すなわち、サイドフリンジ磁界が抑制される。この結果、目的とするトラックのみに集中した記録が可能となり、より効率的な記録が可能となり、より記録密度の高い記録が可能となる。
【0108】
なお、サイドシールド64a及び64bは、リターンパス62と一体化した構造とすることもできる。
【0109】
また、図14(b)に例示したように、サイドシールド64a、64bと主磁極61との距離は、主磁極61の媒体対向面61sの近傍の部分では短く、媒体対向面61sから遠い部分では、長く設定することができる。これにより、媒体対向面61sの近傍で、主磁極61の記録磁界Hwをより効率的に集中できより効果的である。
なお、サイドシールド64a及び64bは、上記の磁気記録ヘッド51a及び51bにおいて設けても良い。
【0110】
さらに、リターンパス62の配置は任意である。すなわち、図1に例示した磁気記録ヘッド51では、調整用磁極63とリターンパス62との間に主磁極61が配置されているが、主磁極61とリターンパス62との間に調整用磁極63が配置されても良い。すなわち、主磁極61、調整用磁極63及びスピントルク発振子10に関する各種の配置のそれぞれにおいて、リターンパス62は任意の位置に配置されることができる。
【0111】
(第2の実施の形態)
図15は、本発明の第2の実施形態に係る磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
図15に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド52は、調整用磁極63が設けられておらず、そして、主磁極61に主磁極変調コイル61b(変調用コイル、すなわち、第2コイル)が設けられている。
【0112】
すなわち、磁気記録ヘッド52は、磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加する主磁極61と、主磁極61と併置されたスピントルク発振子10と、主磁極61を磁化させる主磁極コイル61aと、主磁極61を磁化させ、主磁極コイル61aと独立して通電可能な主磁極変調コイル61bと、を備える。
【0113】
すなわち、例えば、同図に表したように、主磁極コイル61aは、記録電流回路210に接続され、そして、主磁極変調コイル61bは、主磁極変調電流回路211(第2電流回路)に接続される。
【0114】
これにより、主磁極61から磁気記録媒体80に印加する記録磁界Hwの記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する外部磁界Hextをスピントルク発振子10に印加することで、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調する。
【0115】
なお、主磁極変調コイル61bには、主磁極コイル61aや既に説明した調整用磁極変調コイル63bと同様な材料が使用でき、また調整用磁極変調コイル63bと同様に動作させることができる。
【0116】
図16は、本発明の第2の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流及び発生する磁界を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極61によって磁気記録媒体80に情報を記録する際の記録信号Sw、すなわち、主磁極61の主磁極コイル61aに供給される記録電流Iwを例示しており、同図(b)は、主磁極61によって発生する記録磁界成分Hw1を例示している。記録磁界成分Hw1の一部が磁気記録媒体80に印加され、別の一部がスピントルク発振子10に印加される。同図(c)は、主磁極変調コイル61bに供給される主磁極変調用電流Im1(変調用電流)を例示しており、同図(d)は、主磁極変調コイル61bによって主磁極61から発生する主磁極変調用磁界成分Hm1を例示している。そして、同図(e)は、上記の記録磁界成分Hw1の一部と主磁極変調用磁界成分Hm1とが合成され、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを例示している。
【0117】
図16(a)及び(b)に表したように、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwに基づいた記録磁界成分Hw1が主磁極61から発生し、記録磁界成分Hw1の一部がスピントルク発振子10に印加される。
【0118】
一方、図16(c)に表したように、主磁極変調用電流Im1には、図5(d)に例示した変調信号Smを含む電流と同様の電流を用いる。なお、この時、主磁極変調用電流Im1として、図5(c)に例示した調整用電流Icと図5(d)に例示した変調信号Smを含む電流とが重畳された電流を用いても良い。
なお、この場合も、記録信号Sw(記録電流Iw)の周波数よりも高い周波数で変化す変調信号Smの周波数は、例えば1.5GHzよりも高く設定される。
【0119】
これにより、図16(d)に表したように、高周波成分(変調信号Sm)が重畳されている主磁極変調用電流Im1に基づいて主磁極61から発生する主磁極変調用磁界成分Hm1は、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化しており、これがスピントルク発振子10に印加される。
【0120】
その結果、図16(e)に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextは、上記の記録磁界成分Hw1(の一部)と、高周波成分が重畳された主磁極変調用磁界成分Hm1と、が合成された磁界となり、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swの周波数の磁界と、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界とが合成された磁界となる。
【0121】
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド52においても、スピントルク発振子10に記録磁界Hwの記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界が印加される。これにより、外部磁界Hextの磁界の強さ(Hextの波高値)に応じてスピントルク発振子10から発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調することが可能となる。その結果、磁気記録媒体80が高周波磁界Hacと共鳴し易くなり、これにより、より低い高周波磁界Hacを用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
【0122】
なお、主磁極変調コイル61bは、調整用磁極63が設けられる場合(例えば磁気記録ヘッド51、51a〜51c)において設けても良い。また、この場合、調整用磁極63の調整用磁極変調コイル63bやコイル63cの有無に係わらず、主磁極変調コイル61bを設けることができる。調整用磁極63の調整用磁極変調コイル63bやコイル63cと、主磁極変調コイル61bと、を同時に設ける場合には、これらのコイルよる精度の高い変調信号Smを用いて精度の高い変調用磁界を発生し、精度の高い外部磁界Hextをスピントルク発振子10に印加し、高精度の制御が可能となる。
なお、磁気記録ヘッド52において、サイドシールド64a及び64bを設けても良い。
【0123】
(第3の実施の形態)
図17は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
図17に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録ヘッド53は、調整用磁極63が設けられておらず、また、主磁極61の主磁極変調コイル61bも設けられていない。この時、主磁極コイル61aには、磁気記録媒体80に情報を記録する記録磁界Hwの記録信号Swよりも高い周波数で変化する成分を有する電流が通電されている。
【0124】
すなわち、磁気記録ヘッド53は、磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加する主磁極61と、主磁極61と併置されたスピントルク発振子10と、主磁極61を磁化させる主磁極コイル61aと、を備え、主磁極コイル61aには、磁気記録媒体80に情報を記録する記録磁界Hwの記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む電流が通電される。
【0125】
なお、例えば、同図に表したように、主磁極コイル61aは、記録電流回路210に接続される。そして、記録電流回路210から、磁気記録媒体80に情報を記録する記録磁界Hwの記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む電流が、主磁極コイル61aに供給される。
【0126】
これにより、主磁極61から磁気記録媒体80に印加する記録磁界の記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界(外部磁界Hext)をスピントルク発振子10に印加することで、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調する。
【0127】
図18は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流及び発生する磁界を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極61によって磁気記録媒体80に情報を記録する際の記録信号Swを例示している。そして、同図(b)は、主磁極61の主磁極コイル61aに供給される記録電流Iw2を例示しており、同図(c)は、主磁極61によって発生し、磁気記録媒体80に印加される記録磁界Hw2を例示している。同図は、主磁極61によって発生しスピントルク発振子10に印加される主磁極印加磁界Hsも同時に例示している。そして、同図(d)は、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを例示している。
【0128】
図18(a)に表したように、記録信号Swは、磁気記録媒体80へ記録する情報に基づいて時間に対して変化する信号である。
そして、図18(b)に表したように、主磁極コイル61aには、記録信号Swを含み、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Sm成分を含む記録電流Iw2が通電される。
【0129】
そして、図18(c)に表したように、記録電流Iw2に基づいて主磁極61から磁界が発生し、その一部が記録磁界Hw2として磁気記録媒体80に印加される。そして、主磁極61から発生した磁界の別の一部が、主磁極印加磁界Hsとしてスピントルク発振子10に印加される。この記録磁界Hw2及び主磁極印加磁界Hsは、情報の記録のための記録信号Swの成分と、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smの成分と、を有する。
【0130】
この結果、図18(d)に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextは、上記の記録磁界Hw2すなわち主磁極印加磁界Hsと同様の磁界となり、記録磁界Hw2に含まれる記録信号Swの周波数の成分の磁界と、記録磁界Hw2に含まれる記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smによる磁界とが合成された磁界となる。
【0131】
このように、本実施形態に係る磁気記録ヘッド53においても、スピントルク発振子10に記録磁界Hw2の記録信号Swよりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界が印加される。これにより、外部磁界Hextの磁界の強さ(Hextの波高値)に応じてスピントルク発振子10から発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調することが可能となる。その結果、磁気記録媒体80が高周波磁界Hacと共鳴し易くなり、これにより、より低い高周波磁界Hacを用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
なお、磁気記録ヘッド53において、サイドシールド64a及び64bを設けても良い。
【0132】
図19は、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのスピントルク発振子に印加される外部磁界を例示する模式図である。
なお、同図(a)は、磁気記録ヘッドの記録信号Swを例示している。そして、同図(b)〜(f)は、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの各種の変形例を例示している。
【0133】
図19(a)に表したように、主磁極61の主磁極コイル61aに通電される記録電流Iwにおける情報の記録のための信号成分が、記録信号Swである。
【0134】
そして、図19(b)に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hext1は、記録信号Swの周波数成分に、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で正弦波状に変化する磁界(変調信号Smを含む磁界)が重畳されている。なお、この形状の外部磁界Hext1が、既に説明した外部磁界Hextに相当する。
【0135】
図19(c)に表したように、変形例の外部磁界Hext2は、立ち上がりの時間と立ち下がりの時間が実質的に同じ三角波の形状の磁界(変調信号Smを含む磁界)が重畳されている。
図19(d)に表したように、別の変形例の外部磁界Hext3は、立ち上がりは瞬時に変化し、立ち下がりの時間が長い三角波の形状の磁界(変調信号Smを含む磁界)が重畳されている。
図19(e)に表したように、別の変形例の外部磁界Hext4は、立ち上がりの時間が長く、立ち下がりが瞬時に変化する三角波の形状の磁界(変調信号Smを含む磁界)が重畳されている。
図19(f)に表したように、別の変形例の外部磁界Hext5は、立ち上がり及び立ち下がりにある程度の時間を要し、磁界の絶対値の最大が一定時間保持される、すなわち、台形の形状の磁界(変調信号Smを含む磁界)が重畳されている。
【0136】
これらの外部磁界Hext1〜Hext5のいずれも、主磁極61から磁気記録媒体80に印加される情報の記録のための記録磁界Hw(及び記録磁界Hw2)に含まれる記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する変調信号Smを含む磁界である。
【0137】
これにより、外部磁界Hextの磁界の強さ(Hextの波高値)に応じてスピントルク発振子10から発生する高周波磁界Hacを周波数変調し、これにより、より低い高周波磁界Hacを用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録ヘッドが提供できる。
【0138】
なお、図15及び図17にそれぞれ例示した磁気記録ヘッド52及び53においては、スピントルク発振子10は、主磁極61とリターンパス62との間に設けられているが、スピントルク発振子10の配置は任意である。例えば、スピントルク発振子10は、主磁極61のリターンパス62とは反対の側に設けても良い。
【0139】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態に係る磁気記録ヘッド54(図示しない)は、上記の第1〜第3の実施形態に係る磁気記録ヘッド51、51a〜c、52及び53と同様の構造を有することができる。ただし、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの波形が異なる。以下では、一例として、調整用磁極63、調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bを有する磁気記録ヘッド51に適用した例として説明する。
【0140】
図20は、本発明の第4の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極61によって磁気記録媒体80に情報を記録する際の記録信号Swを例示しており、同図(b)は、主磁極61の主磁極コイル61aに供給される記録電流Iwを例示しており、同図(c)は、調整用磁極コイル63aに供給される調整用電流Icを例示しており、同図(d)は、調整用磁極変調コイル63bに供給される調整用磁極変調用電流Imを例示している。
【0141】
図21は、本発明の第4の実施形態に係る磁気記録ヘッドで発生する磁界を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、主磁極コイル61aによって主磁極61から発生し磁気記録媒体80に印加される記録磁界Hwを例示しており、同図(b)は、主磁極コイル61aによって主磁極61から発生しスピントルク発振子10に印加される主磁極印加磁界Hsを例示している。同図(c)は、調整用磁極コイル63aによって調整用磁極63から発生する調整用磁界成分Hcを例示しており、同図(d)は、調整用磁極変調コイル63bによって調整用磁極63から発生する変調用磁界成分Hmを例示している。そして、同図(e)は、上記の各磁界が合成され、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextを例示している。
【0142】
図20(a)、図20(b)及び図21(a)に表したように、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwは、磁気記録媒体80へ記録する情報に基づいて時間に対して変化し、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwに基づいた磁界が主磁極61から発生し、記録磁界Hwとして磁気記録媒体80に印加される。
【0143】
そして、図21(b)に表したように、主磁極61から発生した磁界の一部は、主磁極印加磁界Hsとしてスピントルク発振子10に印加される。主磁極印加磁界Hsは、時間に対して記録磁界Hwと同様に変化する磁界であり、主磁極印加磁界Hsは、記録信号Swを含む磁界である。
【0144】
一方、図20(c)及び図21(c)に表したように、調整用電流Icは、例えば、磁気記録媒体80の記録条件の差異やスピントルク発振子10の発振特性の変動を補正する電流であり、調整用電流Icに基づいて調整用磁界成分Hcが調整用磁極63から発生し、これがスピントルク発振子10に印加される。
【0145】
そして、図20(d)に表したように、調整用磁極変調用電流Imは、記録信号Sw、すなわち、記録電流Iwの周波数と同じ周波数を有しているが、電流値が三角波状に変化する電流である。すなわち、調整用磁極変調用電流Imは、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する変調信号Sm1を含む。
【0146】
これにより、図21(d)に表したように、調整用磁極変調用電流Imに基づいた三角波状に変化する変調用磁界成分Hmが調整用磁極63から発生し、これがスピントルク発振子10に印加される。すなわち、変調用磁界成分Hmは、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する変調信号Sm1を含む。
【0147】
その結果、図21(e)に表したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextは、上記の主磁極印加磁界Hs、調整用磁界成分Hc及び変調用磁界成分Hmが合成された磁界となり、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swの周波数と同じの周波数を有するが、磁界の強さが三角波状に変化する磁界となる。すなわち、外部磁界Hextは、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号(この場合は三角波状の変調信号Sm1)を含む磁界である。
【0148】
この結果、外部磁界Hextの絶対値の波高値が相対的に大きい期間T5において高周波磁界Hacの周波数fsは高くなり、外部磁界Hextの絶対値の波高値が相対的に小さい期間T6において高周波磁界Hacの周波数fsが低くなる。
【0149】
このように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの強度(絶対値の波高値)を、三角波状に制御することで、スピントルク発振子10によって発生する高周波磁界Hacの周波数fsを変調することができる。
【0150】
なお、このような外部磁界Hextを用いる際には、外部磁界Hextの絶対値において、相対的に大きい磁界と相対的に小さい磁界とが、連続して磁気記録媒体80の媒体磁性体粒子のそれぞれに印加されるように構成する。このため、外部磁界Hextの絶対値の波高値が相対的に大きい期間T5と、外部磁界Hextの絶対値の波高値が相対的に小さい期間T6と、の合計の時間が、磁気記録媒体80の1つの媒体磁性体粒子のそれぞれの上を磁気記録ヘッド51が通過する時間に設定される。そして、この場合は、外部磁界Hextの三角波形状成分は、記録磁界Hwの記録信号Swの周波数と同じとされるので、媒体磁性体粒子のそれぞれが磁気記録媒体80の情報の記録のための記録ビットのそれぞれに対応する。
【0151】
なお、この場合も、外部磁界Hextの絶対値が変化すれば良く、例えば、図19(b)〜(f)に例示したように、外部磁界Hextの絶対値は、正弦波状、立ち上がりの時間と立ち下がりの時間が実質的に同じ三角波状、立ち上がりは瞬時に変化し立ち下がりの時間が長い三角波状、立ち上がりの時間が長く立ち下がりが瞬時に変化する三角波状、立ち上がり及び立ち下がりにある程度の時間を要し磁界の絶対値の最大が一定時間保持される台形状等、各種の波形の形状の磁界とすることができる。
【0152】
また、上記においては、調整用磁極63、調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bを有する磁気記録ヘッド51に適用した例として説明したが、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの絶対値が変化すれば良く、既に説明した、磁気記録ヘッド51a〜51c、52及び53のいずれに適用しても良い。
【0153】
また、図1に例示した磁気記録ヘッド51では、再生ヘッド部70とスピントルク発振子10との間に主磁極61が配置されているが、再生ヘッド部70と主磁極61との間にスピントルク発振子10が配置されるようにしても良い。また、同様に、上記の磁気記録ヘッド51a〜51c、52、53及び54においても、再生ヘッド部70、主磁極61及びスピントルク発振子10の相互の位置関係は任意である。
【0154】
(第5の実施の形態)
以下、本発明の第5の実施の形態に係る磁気記録装置及び磁気ヘッドアセンブリについて説明する。
上記で説明した本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録装置に搭載することができる。なお、本実施形態に係る磁気記録装置は、記録機能のみを有することもできるし、記録機能と再生機能の両方を有することもできる。
【0155】
図22は、本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図23は、本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図22に表したように、本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えたものとしても良い。
【0156】
記録用媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ3は、図2に関して前述したような構成を有し、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ3は、例えば、前述したいずれかの実施の形態に係る磁気記録ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0157】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダ3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダ3の媒体対向面は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダ3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」としても良い。
【0158】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。
【0159】
アクチュエータアーム155は、軸受け部157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッドを記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能となる。
【0160】
図23(a)は、本実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
また、図23(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158を例示する斜視図である。
図23(a)に表したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受け部157から延出したアクチュエータアーム155と、アクチュエータアーム155から延出したサスペンション154と、を有している。
【0161】
サスペンション154の先端には、既に説明した本発明の実施形態に係るいずれかの磁気記録ヘッドを具備するヘッドスライダ3が取り付けられている。そして、既に説明したように、ヘッドスライダ3には、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかが搭載される。
【0162】
すなわち、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかと、前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダ3と、前記ヘッドスライダ3を一端に搭載するサスペンション154と、前記サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備える。
【0163】
サスペンション154は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒーター用、スピントルク発振子用、調整磁極コイル用のリード線(図示しない)を有し、このリード線とヘッドスライダ3に組み込まれた磁気記録ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。
【0164】
また、図示しない電極パッドが、ヘッドジンバルアセンブリ158に設けられる。例えば、主磁極コイル61a用の電極パッドが2つ、磁気再生素子71用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、スピントルク発振子10用の電極パッドが2つ設けられる。なお、調整用磁極コイル63aが設けられる場合には、それ用の電極パッドが2つ設けられる。また、調整用磁極変調コイル63bや主磁極変調コイル61bが設けられる場合には、それぞれのためにそれぞれ2つの電極バッドがさらに設けられる。また、電極パッドを減らすために、複数の電極パッドを共用しコモン電極パッドとして用いても良い。
【0165】
そして、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、図22に例示した磁気記録装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
【0166】
このように、本実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、上記の実施形態のいずれかに係る磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体と磁気記録ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で対峙させながら相対的に移動可能とした可動部と、磁気記録ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合せする位置制御部と、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備える。
【0167】
すなわち、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。
上記の可動部は、ヘッドスライダ3を含むことができる。
また、上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ158を含むことができる。
【0168】
すなわち、本実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体(記録用媒体ディスク180)と、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ158)と、前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、を備える。
【0169】
本実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ158)によれば、上記の実施形態のいずれかに係る磁気記録ヘッドを用いることで、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気ヘッドアセンブリが得られる。
そして、本実施形態に係る磁気記録装置150によれば、上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかを用いることで、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が得られる。
【0170】
本実施形態に係る磁気記録装置150においては、既に説明したように、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextが、記録磁界Hwに含まれる記録信号Swよりも高い周波数で変化する信号(変調信号Sm)、及び、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号(変調信号Sm1)、のいずれかの変調信号を含む磁界である。
このような外部磁界Hextを印加するために、磁気記録装置150は、以下に説明するような各種の回路を備えることができる。
【0171】
図24は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図は、磁気記録ヘッドとして、調整用磁極63とこれを磁化させる調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bを有している磁気記録ヘッド51、51b及び51cのいずれかを用いる場合の磁気記録装置の構成を例示している。
【0172】
図24に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録装置150aにおいては、信号処理部190は、主磁極コイル61aに磁気記録媒体80に記録される記録信号Swを含む記録電流Iwを供給する記録電流回路210(第1電流回路)と、調整用磁極コイル63aに調整用電流Icを供給する調整用磁極電流回路230(第3電流回路)と、調整用磁極変調コイル63b(変調用コイル)に調整用磁極変調用電流Imを供給する調整用磁極変調電流回路231(変調用電流回路、すなわち、第2電流回路)と、を有する。なお、調整用電流Icは、記録電流Iwの極性反転に同期して変化する電流である。
【0173】
これにより、例えば、図5に例示した記録電流Iw、調整用電流Ic及び調整用磁極変調用電流Imを供給することで、図6に例示した各磁界を発生し、スピントルク発振子10に例えば図6(e)に例示した外部磁界Hextを印加することができる。
【0174】
これにより、磁気記録装置150aによれば、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができ、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が得られる。
なお、調整用磁極電流回路230(第3電流回路)は必要に応じて設ければ良い。
【0175】
図25は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図は、磁気記録ヘッドとして、調整用磁極63を有しているが、調整用磁極63には1つのコイル63cが設けられる例えば磁気記録ヘッド51aを用いる場合の磁気記録装置の構成を例示している。
【0176】
図25に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録装置150bにおいては、信号処理部190は、主磁極コイル61aに磁気記録媒体80に記録される記録信号Swを含む記録電流Iwを供給する記録電流回路210(第1電流回路)と、コイル63cに変調用電流を供給する電流回路232(第2電流回路)と、を有する。
【0177】
本具体例では、上記の変調用電流が、調整用電流Icと調整用磁極変調用電流Imとが重畳された電流である場合として説明する。この場合、電流回路232の内部には、調整用電流Icを供給する調整用電流回路230aと、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの強さを変調するための調整用磁極変調用電流Imを供給する変調信号電流回路231aを設けることができる。
【0178】
調整用電流回路230aは、記録電流Iwの極性反転に同期して変化する調整用電流Icを供給する。なお、この時、調整用電流Icは記録電流Iwの極性反転に対して一定の位相の遅れまたは進みを含んでも良い。一方、調整用磁極変調用電流Imは、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する信号(変調信号Sm)、及び、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号(変調信号Sm1)、のいずれかの変調信号を含む電流である。
【0179】
これにより、例えば、図12に例示した記録電流Iw及び調整用磁極電流Ic1を供給することで、スピントルク発振子10に例えば図12(e)に例示した外部磁界Hextを印加することができる。
【0180】
これにより、磁気記録装置150bによれば、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができ、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が得られる。
【0181】
そして、調整用磁極変調コイル63bを省略することで、磁気記録ヘッドの構成が簡単になり、また、ヘッドジンバルアセンブリ158の配線も少なくなり、構成が簡単になるメリットがある。そして、電流回路232の内部に、調整用電流回路230aと変調信号電流回路231aとを設けることで、調整用磁極63の調整用の電流成分(調整用電流Ic)と、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの強さを変調するため電流(調整用磁極変調用電流Im)と、を独立して制御でき、任意の外部磁界Hextを発生させることができ、精度の高い動作を可能にできる。
【0182】
なお、上記では、変調用電流が、調整用電流Icと調整用磁極変調用電流Imとが重畳される電流の場合であるが、本発明はこれには限らない。すなわち、例えば、変調用電流は調整用磁極変調用電流Imの成分のみを含んでも良く、この場合、電流回路232には、変調信号電流回路231aのみを設けても良い。
【0183】
図26は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図は、磁気記録ヘッドとして、調整用磁極63とこれを磁化させる調整用磁極コイル63a及び調整用磁極変調コイル63bを有している磁気記録ヘッド51、51b及び51cのいずれかを用いる場合の磁気記録装置の構成を例示している。
【0184】
図26に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録装置150cにおいては、図24に例示した磁気記録装置150aにおいて、信号処理部190が、記録電流回路210、調整用磁極電流回路230及び調整用磁極変調電流回路231に接続された記録信号回路240をさらに有するものである。
【0185】
記録信号回路240は、例えば、図5(a)に例示した記録信号Swを記録電流回路210に供給する。これにより、記録電流回路210は、記録電流Iwを生成し、主磁極コイル61aに供給する。なお、図5(a)においては、記録信号Swと記録電流Iwが同一として例示されているが、記録信号Swは情報の記録のための信号であり、記録電流Iwは、記録信号Swに基づいて主磁極61の主磁極コイル61aに通電される電流であり、主磁極コイル61aの巻き方などによっては記録電流Iwの極性は記録信号Swの極性と逆となる場合もある。
【0186】
また、調整用磁極電流回路230は記録信号Swに基づいて、調整用電流Icを生成する。そして、調整用磁極変調電流回路231は例えば記録信号Swのタイミングに合わせて調整用磁極変調用電流Imを生成する。
【0187】
このように、記録信号回路240を設けることで、信号処理部190は効率良く安定して動作させることができる。
【0188】
なお、記録信号回路240は、記録電流回路210及び調整用磁極電流回路230に接続され、調整用磁極変調電流回路231に接続されず、調整用磁極変調電流回路231は、記録信号Swとは独立して調整用磁極変調用電流Imを生成しても良い。
【0189】
また、記録信号回路240は、調整用磁極63を有し、調整用磁極コイル63aと調整用磁極変調コイル63bではなく、コイル63cを有する例えば磁気記録ヘッド51aを用いた磁気記録装置150bにおいて設けても良い。この場合、記録信号回路240は、記録電流回路210及び電流回路232に接続される。すなわち、電流回路232において設けられる調整用電流回路230a及び変調信号電流回路231aの少なくともいずれかに記録信号回路240が接続され、記録信号回路240の出力に基づいて、それぞれ調整用電流Icと調整用磁極変調用電流Imを生成することができる。
【0190】
図27は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
図27に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録装置150dにおいては、図26に例示した磁気記録装置150cにおいて信号処理部190が、位相調整回路250をさらに有しているものである。
【0191】
位相調整回路250には、記録信号回路240からの電気信号(記録信号Sw)が入力され、位相調整回路250は、電気信号の位相を調整した位相調整電気信号を、記録電流回路210、調整用磁極電流回路230及び調整用磁極変調電流回路231の少なくともいずれかに供給する。
【0192】
図27に例示した具体例の磁気記録装置150dでは、位相調整回路250は、位相調整回路250aを有する。位相調整回路250aは、記録信号回路240からの電気信号(記録信号Sw)が入力され、電気信号の位相を調整した位相調整電気信号を、調整用磁極電流回路230に供給する。
【0193】
すなわち、信号処理部190は、調整用磁極コイル63aに供給される電流(この場合は調整用電流Ic)を記録電流Iwの極性反転よりも所定時間だけ早く、または、遅らせる位相調整回路250aをさらに有する。
【0194】
すなわち、位相調整回路250aは、記録信号回路240と調整用磁極電流回路230との間に配置されている。そして、位相調整回路250aは、例えば、前置位相補償回路、または、遅延回路とすることができる。これにより、調整用電流Icを記録信号Swの極性反転よりも所定時間だけ早く、または、遅らせる。
【0195】
なお、例えば、調整用磁極63に1つだけのコイルとしてコイル63cが設けられる例えば磁気記録ヘッド51aに位相調整回路250を適用しても良く、この場合は、位相調整回路250は、例えば記録信号回路240と電流回路232との間に設けられる。すなわち、記録信号回路240と調整用電流回路230a及び変調信号電流回路231aの少なくともいずれかと、記録信号回路240と、の間に位相調整回路250を設けることができる。なお、この場合も、位相調整回路250は、記録信号回路240と記録電流回路210との間に設けても良い。
【0196】
図28は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置における動作を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、本実施形態に係る磁気記録装置150dにおける、記録信号回路240から出力される電気信号、すなわち、記録信号Swを例示しており、同図(b)は、主磁極コイル61aに通電される電流、すなわち、記録電流Iwを例示しており、同図(c)は、調整用磁極コイル63aに通電される調整用電流Icを例示している。これらの図において、横軸は時間tを表しており、縦軸は、それぞれ、記録信号Sw、記録電流Iw、調整用電流Icを表している。
【0197】
図28に表したように、本実施形態に係る磁気記録装置150dにおいては、記録電流Iwは記録信号Swに同期して同じ位相、同じ極性で変化している。これに対して、調整用電流Icの位相は、記録信号Swに対して所定の位相、すなわち、所定時間Δtだけ進ませる、または、遅らせることができる。
【0198】
例えば、記録電流Iwの極性反転に同期して調整用電流Icを変化させた場合、すなわち、Δtが0の場合に、スピントルク発振子10の発振周波数が一定値に達するまでの時間が、記録電流Iwの極性反転に要する時間よりも長くなる時がある。このような時に、調整用電流Icの位相を、記録電流Iwに対して所定時間Δtだけ遅らせることが有効である。すなわち、記録電流Iwの極性反転からΔtの期間は、調整用磁極63からスピントルク発振子10への印加磁界と、主磁極61からスピントルク発振子10への印加磁界と、が互いに強め合う方向になる。これにより、スピントルク発振子10の発振状態の反転がより早くなる。この結果、安定かつ高品質の高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置を実現することができる。
【0199】
このように、本実施形態に係る別の磁気記録装置150dによれば、スピントルク発振子の発振状態の反転をより早くし、より効率を高め、スピントルク発振子10の発振周波数の安定化及び均一化を実現し、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が提供できる。
【0200】
なお、本具体例において、位相調整回路250として、記録信号回路240と調整用磁極変調電流回路231との間に配置される位相調整回路250b(図示しない)を設けても良い。すなわち、位相調整回路250bは、記録信号回路240からの電気信号(記録信号Sw)が入力され、電気信号の位相を調整した位相調整電気信号を、調整用磁極変調電流回路231に供給する。これにより、調整用磁極変調用電流Imの位相を、記録信号Swに対して所定の位相で進ませて、または遅らせることができる。すなわち、位相調整回路250bは、調整用磁極変調用電流Imを記録信号Swの極性反転よりも所定時間だけ早く、または、遅らせる。
【0201】
また、上記の位相調整回路250aと位相調整回路250bとを同時に設けても良い。この時、位相調整回路250aによる位相のずれと、位相調整回路250bによる位相のずれと、は、それぞれ独立して調整可能である。これにより、より精密に外部磁界Hextを調整できる。
【0202】
図29は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の構成を例示する模式図である。
図29に表したように、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置150eにおいては、記録信号回路240と記録電流回路210との間に位相調整回路250cが設けられている。
【0203】
位相調整回路250cは、記録電流Iwの位相を、記録信号Swの極性反転よりも所定時間だけ早く、または、遅らせる。これにより、記録電流Iwの位相を、調整用電流Icに対して相対的に所定時間だけ進ませる、または、遅らせる。
【0204】
この場合も、スピントルク発振子の発振状態の反転をより早くしより効率を高め、スピントルク発振子の発振周波数の安定化及び均一化を実現し、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が提供できる。
【0205】
なお、この場合も、位相調整回路250として、さらに、記録信号回路240と調整用磁極電流回路230との間に配置される位相調整回路250aや、記録信号回路240と調整用磁極変調電流回路231との間に配置される位相調整回路250b(図示しない)を設けても良い。
【0206】
このように、信号処理部190に設けられる位相調整回路250(例えば、位相調整回路250a〜250c)は、調整用磁極コイル63aや調整用磁極変調コイル63bやコイル63cに供給される電流(例えば調整用電流Ic、調整用磁極電流Ic1、調整用磁極変調用電流Im等)を記録電流Iwの極性反転よりも相対的に所定時間だけ早く、または、遅らせる回路であれば良く、記録信号回路240と、記録電流回路210、調整用磁極電流回路230、電流回路232、調整用電流回路230a、調整用磁極変調電流回路231及び変調信号電流回路231aの少なくともいずれかと、の間に設けることができる。なお、位相調整回路250は、記録信号回路240、記録電流回路210、調整用磁極電流回路230、電流回路232、調整用電流回路230a、調整用磁極変調電流回路231及び変調信号電流回路231aの少なくともいずれかに内蔵されても良い。
【0207】
図30は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図は、磁気記録ヘッドとして、調整用磁極63が設けられておらず、主磁極61に主磁極コイル61aと主磁極変調コイル61bとが設けられる、例えば図15に例示した磁気記録ヘッド52を用いる場合の磁気記録装置の構成を例示している。
【0208】
図30に表したように、本実施形態に係る別の磁気記録装置150fは、磁気記録媒体80と、磁気ヘッドアセンブリ(図示しない)と、前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体80への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、を備える。
【0209】
本具体例においては、磁気記録ヘッドとして、磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加する主磁極61と、主磁極61と併設されたスピントルク発振子10と、主磁極61を磁化させる主磁極コイル61a(第1コイル)と、主磁極61を磁化させ、主磁極コイル61aと独立して通電可能な主磁極変調コイル61b(変調用コイル、すなわち、第2コイル)と、を備える、例えば図15に例示した磁気記録ヘッド52が用いられる。
【0210】
なお、磁気ヘッドアセンブリは、上記の磁気記録ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダと、前記ヘッドスライダを一端に搭載するサスペンションと、前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、を備える。
【0211】
そして、信号処理部190は、主磁極コイル61aに磁気記録媒体80に記録される記録信号Swを含む記録電流Iwを供給する記録電流回路210と、主磁極変調コイル61bに主磁極変調用電流Im1(変調用電流)を供給する主磁極変調電流回路211(変調用電流回路)と、を有する。
【0212】
これにより、例えば、図16に例示した記録電流Iw及び主磁極変調用電流Im1を供給することで、スピントルク発振子10に例えば図16(e)や図21(e)に例示した外部磁界Hextを印加することができる。
【0213】
これにより、磁気記録装置150fによれば、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができ、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が得られる。
【0214】
そして、調整用磁極63及びそれらの磁化のためのコイルを省略することで、磁気記録ヘッドの構成が簡単になり、また、ヘッドジンバルアセンブリ158の配線も少なくなり、構成が簡単になるメリットがある。そして、記録電流回路210と主磁極変調電流回路211とを別に設けることで、記録磁界Hwのための記録電流Iwと、スピントルク発振子10に印加される外部磁界Hextの強さを変調するため主磁極変調用電流Im1とを独立して制御でき、任意の外部磁界Hextを発生させることができ、精度の高い動作を可能にできる。
【0215】
なお、この場合も、信号処理部190に、記録電流回路210に接続された記録信号回路240をさらに設けることができる。これにより、記録電流回路210は、記録信号回路240から供給される記録信号Swに基づいて記録電流Iwを生成し、主磁極コイル61aに供給する。
【0216】
また、記録信号回路240は、主磁極変調電流回路211に接続しても良い。これにより、主磁極変調電流回路211は、記録信号回路240から供給される記録信号Swに基づいて主磁極変調用電流Im1を生成し、主磁極変調コイル61bに供給する。
【0217】
なお、この場合も、記録電流回路210及び主磁極変調電流回路211の少なくともいずれかと記録信号回路240との間に位相調整回路250をさらに設けることができ、これらで生成される電流の位相を調整することができる。
【0218】
図31は、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
図31に表したように、本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置150gは、磁気記録ヘッドとして、調整用磁極63が設けられておらず、また、主磁極61に主磁極コイル61aが設けられるが主磁極変調コイル61bが設けられない、例えば図17に例示した磁気記録ヘッド53を用いる。
【0219】
すなわち、磁気記録装置150gは、磁気記録媒体80と、磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加する主磁極61と、主磁極61と併設されたスピントルク発振子10と、主磁極61を磁化させる主磁極コイル61aと、を有する磁気記録ヘッド53と、主磁極コイル61aに、磁気記録媒体80に記録される記録信号Swを含む記録電流Iw2を供給する記録電流回路210を有し、磁気記録ヘッド53を用いて磁気記録媒体80への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、を備える。
【0220】
そして、記録電流Iw2は、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する信号(変調信号Sm)、及び、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号(変調信号Sm1)、のいずれかの変調信号を含む。
【0221】
すなわち、記録電流回路210は、主磁極コイル61aに、例えば、図18(b)に例示した記録電流Iw2を供給する。また、記録電流回路210は、例えば、図20(b)に例示した記録電流Iwに図20(d)に例示した変調用電流Imを重畳した記録電流Iw2を主磁極コイル61aに供給する。
【0222】
すなわち、本具体例では、記録電流回路210は、記録信号Swを含む記録信号電流Iw1を供給する記録信号電流回路210aと、記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する信号(変調信号Sm)、及び、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号(変調信号Sm1)、のいずれかの変調信号を含む電流(主磁極変調信号電流Im2)を供給する変調信号電流回路211aと、を有する。
【0223】
これにより、記録信号Swを含む記録信号電流Iw1と主磁極変調信号電流Im2とが合成された記録電流Iw2を主磁極コイル61aに供給し、図18(d)や図21(e)に例示した外部磁界Hextをスピントルク発振子10に印加することができる。
【0224】
これにより、磁気記録装置150gによれば、スピントルク発振子10が発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができ、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録装置が得られる。
【0225】
なお、この場合も、記録信号回路240を設けることができ、記録信号回路240の出力に基づいて記録信号電流回路210aは記録信号電流Iw1を生成し、また、記録信号回路240の出力に基づいて変調信号電流回路211aは主磁極変調信号電流Im2を生成する。また、記録信号電流回路210a及び変調信号電流回路211aの少なくともいずれかと記録信号回路240との間に位相調整回路250をさらに設けることができ、これらで生成される電流の位相を調整することができる。
【0226】
なお、本発明の実施形態に係る磁気記録装置150、150a〜150gのいずれかにおいて、スピントルク発振子10は、主磁極61のリーディング側に設けることができる。この場合は、磁気記録媒体80の磁気記録層81は、まず、スピントルク発振子10に対向し、その後で主磁極61に対向する。すなわち、磁気記録装置の磁気記録ヘッドが読み出し部70を有する場合は、スピントルク発振子10は主磁極61の読み出し部70の側に設けることができる。
【0227】
また、本発明の実施形態に係る磁気記録装置150、150a〜150gのいずれかにおいて、スピントルク発振子10は、主磁極61のトレーリング側に設けることができる。この場合は、磁気記録媒体80の磁気記録層81は、まず、主磁極61に対向し、その後でスピントルク発振子10に対向する。すなわち、磁気記録装置の磁気記録ヘッドが読み出し部70を有する場合は、スピントルク発振子10は主磁極61の読み出し部70の逆側に設けることができる。
【0228】
以下、上記の実施形態の磁気記録装置に用いることができる磁気記録媒体について説明する。
図32は、本発明の実施形態に係る磁気記録装置の磁気記録媒体の構成を例示する模式的斜視図である。
図32に表したように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体80は、非磁性体(あるいは空気)87により互いに分離された垂直配向した多粒子系の磁性ディスクリートトラック(記録トラック)86を有する。この磁気記録媒体80がスピンドルモータ4により回転され、媒体走行方向85に向けて移動する際に、上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかが設けられ、これにより、記録磁化84を形成することができる。
このように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置においては、磁気記録媒体80は、隣接し合う記録トラックどうしが非磁性部材を介して形成されたディスクリートトラック媒体とすることができる。
【0229】
スピントルク発振子10の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラック86の幅(TW)以上で、かつ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピントルク発振子10から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力低下を大幅に抑制することができる。このため、本具体例の磁気記録媒体80では、記録したい記録トラック86のみを効果的に高周波磁界アシスト記録することができる。
【0230】
本具体例によれば、いわゆる「べた膜状」の多粒子系垂直媒体を用いるよりも、狭トラックすなわち高トラック密度の高周波アシスト記録装置を実現することが容易になる。また、高周波磁界アシスト記録方式を利用し、さらに従来の磁気記録ヘッドでは書き込み不可能なFePtやSmCo等の高磁気異方性エネルギー(Ku)の媒体磁性材料を用いることによって、媒体磁性体粒子をナノメートルのサイズまでさらに微細化することが可能となり、記録トラック方向(ビット方向)においても、従来よりも遥かに線記録密度の高い磁気記録装置を実現することができる。
本実施形態に係る磁気記録装置によれば、ディスクリート型の磁気記録媒体80において、高い保磁力を有する磁気記録層に対しても確実に記録することができ、高密度かつ高速の磁気記録が可能となる。
【0231】
図33は、本発明の実施形態に係る磁気記録装置の別の磁気記録媒体の構成を例示する模式的斜視図である。
図33に表したように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置に用いることができる別の磁気記録媒体80は、非磁性体87により互いに分離された磁性ディスクリートビット88を有する。この磁気記録媒体80がスピンドルモータ4により回転され、媒体走行方向85に向けて移動する際に、本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドにより、記録磁化84を形成することができる。
このように、本発明の実施形態に係る磁気記録装置においては、磁気記録媒体80は、非磁性部材を介して孤立した記録磁性ドットが規則的に配列形成されたディスクリートビット媒体とすることができる。
【0232】
本実施形態に係る磁気記録装置によれば、ディスクリート型の磁気記録媒体80において、高い保磁力を有する磁気記録層に対しても確実に記録することができ、高密度かつ高速の磁気記録が可能となる。
【0233】
この具体例においても、スピントルク発振子10の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラック86の幅(TW)以上で、かつ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピントルク発振子10から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力低下を大幅に抑制することができるため、記録したい記録トラック86のみを効果的に高周波磁界アシスト記録することができる。本具体例を用いれば、使用環境下での熱揺らぎ耐性を維持できる限りは、磁性ディスクリートビット88の高磁気異方性エネルギー(Ku)化と微細化を進めることで、10Tbits/inch以上の高い記録密度の高周波磁界アシスト記録装置を実現できる可能性がある。
【0234】
(第6の実施の形態)
図34は、本発明の第6の実施形態に係る磁気記録方法を例示するフローチャート図である。
本実施形態に係る磁気記録方法は、磁気記録媒体80に記録磁界Hwを印加する主磁極61と、主磁極61の近傍に配置されたスピントルク発振子10と、を用いて磁気記録媒体80に情報の記録を行う磁気記録方法である。
【0235】
図34に表したように、本実施形態に係る磁気記録方法では、スピントルク発振子10に、磁気記録媒体80に記録される記録信号Swの周波数よりも高い周波数で変化する信号(変調信号Sm)を含む磁界(外部磁界Hext)を印加しつつ、記録磁界Hwを磁気記録媒体80に印加して磁気記録媒体80に情報の記録を行う(ステップS110)。
【0236】
この時、外部磁界Hextとしては、図6(e)、図12(e)、図16(e)、図18(d)及び図19(b)〜(f)に関して説明したような変調信号Smを含む外部磁界Hext及びHext1〜Hext5を用いることができる。
【0237】
または、図34に表したように、スピントルク発振子10に、記録信号Swと同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号(変調信号Sm1)を含む磁界(外部磁界Hext)を印加しつつ、記録磁界Hwを磁気記録媒体80に印加して磁気記録媒体80に情報の記録を行う(ステップS210)。
【0238】
この時、外部磁界Hextとしては、図21(e)に関して説明したような変調信号Sm1を含む外部磁界Hextを用いることができる。
【0239】
本実施形態に係る磁気抵抗効果素子記録方法を用いることで、スピントルク発振子10で発生する高周波磁界Hacを周波数変調することができ、より低い高周波磁界を用いて、安定した高周波磁界アシスト記録を可能とする磁気記録方法が提供できる。
【0240】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0241】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ、磁気記録装置及び磁気記録方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0242】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドが搭載されるヘッドスライダの構造を例示する模式的斜視図である。
【図3】発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドに用いられるスピントルク発振子の構造を例示する模式的斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流を例示する模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドで発生する磁界を例示する模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示する模式的グラフ図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの動作を例示する模式図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る磁気記録ヘッドの特性を例示する模式図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドに通電される電流及び発生する磁界を例示する模式図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流及び発生する磁界を例示する模式図である。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る磁気記録ヘッドの要部の構造を例示する模式的斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流及び発生する磁界を例示する模式図である。
【図19】本発明の実施形態に係る磁気記録ヘッドのスピントルク発振子に印加される外部磁界を例示する模式図である。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る磁気記録ヘッドに通電される電流を例示する模式図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る磁気記録ヘッドで発生する磁界を例示する模式図である。
【図22】本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
【図25】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
【図27】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
【図28】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置における動作を例示する模式図である。
【図29】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の構成を例示する模式図である。
【図30】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
【図31】本発明の第5の実施形態に係る別の磁気記録装置の一部の構成を例示する模式図である。
【図32】本発明の実施形態に係る磁気記録装置の磁気記録媒体の構成を例示する模式的斜視図である。
【図33】本発明の実施形態に係る磁気記録装置の別の磁気記録媒体の構成を例示する模式的斜視図である。
【図34】本発明の第6の実施形態に係る磁気記録方法を例示するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0244】
3 ヘッドスライダ
3A 空気流入側
3B 空気流出側
4 スピンドルモータ
10 スピントルク発振子
10a 発振層(第1磁性体層)
22 中間層
25 積層構造体
30 スピン注入層(第2磁性体層)
41 第1電極
42 第2電極
51、51a〜51c、52、53、54 磁気記録ヘッド
60 書き込みヘッド部
61 主磁極(第1磁極)
61a 主磁極コイル(第1コイル)
61b 主磁極変調コイル(変調用コイル、第2コイル)
61s 媒体対向面
62 シールド(リターンパス)
63 調整用磁極(第2磁極)
63a 調整用磁極コイル(第3コイル)
63b 調整用磁極変調コイル(変調用コイル、第2コイル)
63c コイル(第2コイル)
63s 端面
64a、64b サイドシールド
70 再生ヘッド部(読み出し部)
71 磁気再生素子
72a、72b 磁気シールド層
80 磁気記録媒体
80g、80h 媒体磁性体粒子(磁性体粒子)
81 磁気記録層
82 媒体基板
83 磁化
84 記録磁化
85 媒体走行方向
85a 矢印
86 記録トラック
87 非磁性体
88 磁気ディスクリートビット
150、150a〜150g 磁気記録装置
154 サスペンション
155 アクチュエータアーム
156 ボイスコイルモータ
157 軸受け部
158 ヘッドジンバルアセンブリ(磁気ヘッドアセンブリ)
160 ヘッドスタックアセンブリ
180 記録用媒体ディスク
190 信号処理部
210 記録電流回路(第1電流回路)
210a 記録信号電流回路
211 主磁極変調電流回路(変調用電流回路、第2電流回路)
211a 変調信号電流回路
230 調整用磁極電流回路(第3電流回路)
230a 調整用電流回路
231 調整用磁極変調電流回路(変調用電流回路、第2電流回路)
231a 変調信号電流回路
232 電流回路(第2電流回路)
240 記録信号回路
250、250a、250b、250c 位相調整回路
Hac 高周波磁界
Hc 調整用磁界成分
Hc0 保持力
Hc1 調整用磁極磁界
Hext、Hext1〜Hext5 外部磁界
Hm 変調用磁界成分
Hm1 主磁極変調用磁界成分
Hs 主磁極印加磁界
Hw、Hw2 記録磁界
Hw1 記録磁界成分
Ic 調整用電流
Ic1 調整用磁極電流
Im 調整用磁極変調用電流(変調用電流)
Im1 主磁極変調用電流(変調用電流)
Im2 主磁極変調信号電流
Iw、Iw2 記録電流
Iw1 記録信号電流
Sm、Sm1 変調信号
Sw 記録信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、
前記第1磁極と併設された第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に、少なくともその一部が設けられたスピントルク発振子と、
前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、
前記第2磁極を磁化させ、前記第1コイルと独立して通電可能な第2コイルと、
前記第2磁極を磁化させ、前記第1コイル及び前記第2コイルと独立して通電可能な第3コイルと、
を備えたことを特徴とする磁気記録ヘッド。
【請求項2】
前記磁気記録媒体からみて、前記第2磁極は、前記第1磁極よりも後退していることを特徴とする請求項1記載の磁気記録ヘッド。
【請求項3】
磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、
前記第1磁極と併設されたスピントルク発振子と、
前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、
前記第1磁極を磁化させ、前記第1コイルと独立して通電可能な第2コイルと、
を備えたことを特徴とする磁気記録ヘッド。
【請求項4】
前記第1磁極及び前記スピントルク発振子の少なくともいずれかの側面に対向して設けられたサイドシールドをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記録ヘッド。
【請求項5】
前記スピントルク発振子は、
前記第1磁極から印加される磁界よりも小さい保磁力を有する第1磁性体層と、
前記第1磁極から印加される磁界よりも小さい保磁力を有する第2磁性体層と、
前記第1磁性体層と前記第2磁性体層との間に設けられ、非磁性体からなる中間層と、
を有する積層構造体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気記録ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気記録ヘッドと、
前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備えたことを特徴とする磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項7】
磁気記録媒体と、
請求項6記載の磁気ヘッドアセンブリと、
前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、
を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項8】
前記信号処理部は、
前記第1コイルに、前記磁気記録媒体に記録される記録信号を含む記録電流を供給する第1電流回路と、
前記第2コイルに変調用電流を供給する第2電流回路と、
を含むことを特徴とする請求項7記載の磁気記録装置。
【請求項9】
前記第2電流回路は、前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む前記変調用電流を前記第2コイルに供給することを特徴とする請求項8記載の磁気記録装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、
前記第3コイルに、前記記録電流の極性反転に同期して変化する調整用電流を流す第3電流回路と、
前記磁気記録媒体に記録する記録信号を含む電気信号を、前記第1電流回路に供給する記録信号回路と、
をさらに有し、
前記第3電流回路は、前記電気信号に基づいた前記調整用電流を前記第3コイルに供給することを特徴とする請求項8または9に記載の磁気記録装置。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記調整用電流を前記記録電流の極性反転よりも所定時間だけ早く、または、遅らせる位相調整回路をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の磁気記録装置。
【請求項12】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、
前記第1磁極と併設された第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に、少なくともその一部が設けられたスピントルク発振子と、
前記第1磁極を磁化させる第1磁極コイルと、
前記第2磁極を磁化させ、前記第1磁極コイルと独立して通電可能な第2コイルと、
を有する磁気記録ヘッドと、
前記第1コイルに、前記磁気記録媒体に記録される記録信号を含む記録電流を供給する第1電流回路と、
前記第2コイルに変調用電流を供給する第2電流回路と、
を有し、前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、
を備え、
前記第2電流回路は、前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む前記変調用電流を前記第2コイルに供給することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項13】
前記第2電流回路は、
前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む電流を供給する変調信号電流回路と、
前記記録電流の極性反転に同期して変化する調整用電流を供給する調整用電流回路と、
を含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【請求項14】
前記信号処理部は、前記磁気記録媒体に記録する記録信号を含む電気信号を、前記第1電流回路に供給する記録信号回路をさらに有し、
前記第2電流回路は、前記電気信号に基づいた前記変調用電流を前記第2コイルに供給することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【請求項15】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、
前記第1磁極と併設されたスピントルク発振子と、
前記第1磁極を磁化させる第1コイルと、
を有する磁気記録ヘッドと、
前記第1コイルに、前記磁気記録媒体に記録される記録信号を含む記録電流を供給する第1電流回路を有し、前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、
を備え、
前記第1電流回路は、前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む前記記録電流を前記第1コイルに供給することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項16】
前記第1電流回路は、
前記記録信号を含む記録用電流を供給する記録信号電流回路と、
前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む電流を供給する変調信号電流回路と、
を含むことを特徴とする、請求項8〜15のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【請求項17】
前記記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号の周波数は、前記磁気記録ヘッドと前記磁気記録媒体との間の相対的な速度を前記磁気記録媒体に含まれる磁性体粒子の大きさの平均値で割った値以上であることを特徴とする請求項9〜16のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【請求項18】
前記磁気記録媒体は、隣接し合う記録トラックどうしが非磁性部材を介して形成されたディスクリートトラック媒体であることを特徴とする請求項7〜17のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【請求項19】
前記磁気記録媒体は、非磁性部材を介して孤立した記録磁性ドットが規則的に配列形成されたディスクリートビット媒体であることを特徴とする請求項7〜17のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【請求項20】
磁気記録媒体に記録磁界を印加する第1磁極と、前記第1磁極の近傍に配置されたスピントルク発振子と、を用いて前記磁気記録媒体に情報の記録を行う磁気記録方法であって、
前記スピントルク発振子に、前記磁気記録媒体に記録される記録信号の周波数よりも高い周波数で変化する信号、及び、前記記録信号と同じ周波数を有し1つの周期の中で絶対値が変化する信号、のいずれかの変調信号を含む磁界を印加しつつ、前記記録磁界を前記磁気記録媒体に印加して前記磁気記録媒体に情報の記録を行うことを特徴とする磁気記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−129152(P2010−129152A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305693(P2008−305693)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】