説明

磁気記録再生装置

【課題】微小光スポットを用いた場合でもクロスライトやクロストークを抑えられ、フェリ磁性体に限らず強磁性体等でも使用可能とする。
【解決手段】近接場光発生素子104に遮光膜111を形成し、その遮光膜には少なくとも1つの屈曲部を有し、周囲が閉じられた微小開口部112を形成する。そして、光学素子108により情報記録時と情報再生時とで近接場光発生素子104に入射する光を左円偏光と右円偏光に切り換える。そうすることで、記録時には近接場光スポットを記録トラック上に照射し、再生時には近接場光スポットを再生トラックの隣接トラック上に照射する。近接場光発生素子104の微小開口部112はS字状とするのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を加熱昇温して磁気的に情報の記録及び再生を行う熱アシスト磁気記録を用いた磁気記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気記録装置は大容量、高速、安価な情報記憶手段として発展を続けている。特に、近年のハードディスクドライブ(HDD)の進展は著しく、製品レベルでの記録密度は100Gb/in2を超えている。HDDの高密度化は、信号処理、メカ・サーボ、ヘッド、媒体、HDI等複数の要素技術の集大成として進展してきている。ところが、近年、記録密度の向上の為に記録媒体の結晶粒を微細化させた結果、微小磁区が常温で安定して存在できない、いわゆる超常磁性問題が顕著になっている。
【0003】
この問題の解決の為に磁気異方性定数Kuが大きな記録材料を用いて、微小磁区を安定させることが提案されている。しかしながら磁気異方性定数Kuが大きな記録材料を用いると、微小磁区が常温で安定して存在できる代わりに、その保磁力が磁気ヘッド発生磁界を超えるために室温で記録することが不可能となってしまう。
【0004】
そこで、記録時に加熱昇温して保磁力を下げることで磁気記録を行う、熱アシスト磁気記録(Heat Assisted Magnetic Recording)が提案されている。熱アシスト磁気記録では、一般にトラック幅方向の記録密度は、加熱昇温領域の大きさ又は記録磁界印加領域のトラック幅に依存するため、記録密度を高めるには加熱手段である光スポットの大きさ又は記録磁界印加手段である磁気ヘッドの磁極幅を狭める必要がある。
【0005】
磁気ヘッドの磁極幅は、微細加工技術によってその限界が決定されるため、熱アシスト磁気記録においては光スポットのサイズを微小化して、記録密度を高める事が望まれている。
【0006】
光スポットのサイズを小さく絞り込む方法としては、赤外レーザからより波長の短い赤色レーザや青紫色レーザを利用する方法がある。また、開口数の大きな光学系や固侵レンズ(Solid Immersion Lens)、固侵ミラー(Solid Immersion Mirror)等の光学系を用いる方法がある。
【0007】
しかしこれらの方法では光の回折限界によって光スポットのサイズは光源波長程度に制限されるため、現在のHDDの記録密度を考慮すると、同様の手段で熱アシスト磁気記録の記録密度を向上させることは難しい。そこで、この熱アシスト磁気記録の熱源として近接場光を用いることが検討されている。
【0008】
例えば、光源波長以下の大きさの微小開口に光を照射した場合には、その開口部近傍に開口と同程度の大きさの近接場光が形成される。この近接場光を用いれば光源の波長に依存せずに光スポットの微小化を図ることができ、熱アシスト磁気記録においてトラック方向の記録密度を増加させる事が可能となる。
【0009】
このような熱アシスト磁気記録に関する技術は、例えば、特開2000−195002号公報に記載されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−195002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように光スポットを微小化して、熱アシスト磁気記録のトラック方向の記録密度を増加させる場合には、以下のような問題が生じる。
【0011】
図8は近接場光スポットの大きさと磁気ヘッドの磁界印加領域及び再生ヘッドの大きさの関係を示すものである。図中201は近接場光スポット、202は記録磁界領域、203は再生素子、204は記録トラックを示す。
【0012】
図8に示すように近接場光を用いて記録密度を向上させる場合には、媒体のトラック間隔が狭くなるため、隣接トラックを誤って記録するクロスライトや、隣接トラックからの漏洩磁界を同時に再生してしまうクロストークが問題となる。そのいずれもSNRの低下、ひいては誤り率の増加という問題を生じる。
【0013】
これまで提案されているクロストークの抑制方法としては、記録媒体の記録層に補償温度を持つフェリ磁性体を用いる方法がある。
【0014】
図9は記録媒体の記録層であるフェリ磁性体の保磁力Hcと磁化Msの温度T依存性を示す。記録媒体に対して記録時には、キュリー温度Tc近傍近くまで昇温加熱する一方で、再生時には、隣接トラックが補償温度近傍であり、且つ、記録トラックの情報が破壊されない温度になるまで記録トラックを昇温加熱する。
【0015】
このように隣接トラックを補償温度近傍にすることで、隣接トラックの磁化を小さくしてクロストークを抑えることが可能となる。しかしながら、この方法では記録層材料がフェリ磁性体に限定されてしまい、従来用いられている強磁性体等は利用できないという問題があった。
【0016】
本発明の目的は、トラック密度が狭くなった場合でもクロスライトやクロストークを抑えることが可能な磁気記録再生装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、加熱昇温により保磁力が変化する記録媒体に光源からの光を照射することによって前記記録媒体を加熱昇温すると共に、記録磁界を印加することによって前記記録媒体に情報の記録を行い、前記記録媒体の磁化を検出することによって記録情報の再生を行う磁気記録再生装置において、前記光源からの光を円偏光に変換する光学素子と、前記光学素子からの光を入射して前記記録媒体に近接場光スポットを照射する近接場光発生素子とを含み、前記近接場光発生素子には遮光膜が形成され、その遮光膜には少なくとも1つの屈曲部を有し、周囲が閉じられた微小開口部が形成されており、前記光学素子により情報記録時と情報再生時とで前記近接場光発生素子に入射する光を左円偏光と右円偏光に切り換えることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、近接場光発生素子に遮光膜を形成し、その遮光膜には少なくとも1つの屈曲部を有し、周囲が閉じられた微小開口部が形成する。そして、光学素子により情報記録時と情報再生時とで近接場光発生素子に入射する光を左円偏光と右円偏光に切り換えることにより、記録時には近接場光スポットを記録トラック上に照射し、再生時には近接場光スポットを再生トラックの隣接トラック上に照射する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、記録時には記録トラックに光スポットを照射し、再生時には再生トラックの隣接トラックに光スポットを照射する。そのため、特に、再生時に隣接トラックからの漏洩磁界を低減できるため、近接場光発生素子を用いてトラック密度の狭い媒体を用いた場合にも、クロストークを低減して高SNRの再生信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る磁気記録再生装置の一実施形態を示す構成図である。図中101は加熱昇温により保磁力が変化する記録媒体である。102はGMR再生素子(再生用GMRヘッド)、103は記録用の単磁極ヘッドである。
【0021】
104は近接場光発生素子であり、半導体レーザ等の光源105からの光を集光光学系106で集光した光ビーム107が入射する。
【0022】
光源105と集光光学系106との間には、光源105からの光を円偏光に変換し、情報記録時には右円偏光に、情報再生時には左円偏光に切り換えるための光学素子108が設けられている。この構成により、情報記録時には近接場光発生素子104に右円偏光の光を入射して記録トラックを加熱昇温し、情報再生時には左円偏光の光を入射して再生トラックの隣接トラックを加熱するものである。
【0023】
110は光源105の波長に対して略透明である透明基体であり、透明基体110の光ビーム出射側に近接場光発生素子104が配置されている。近接場光発生素子104には遮光膜111が形成され、その遮光膜111には微小開口部112が形成されている。微小開口部112としては、後述するようにS字状等の形状をしている。
【0024】
加熱昇温により保磁力が変化する記録媒体101の記録層としては、強磁性体、フェリ磁性体、反強磁性体、ヘリカル磁性体が用いられる。具体的には、CoCrやFePt等の合金や各磁性粒子を分断したグラニュラー媒体、Ru層を挿入して多層構成としたAFC(Anti−Ferro−Magnetically Coupled)媒体等が挙げられる。
【0025】
記録媒体101には、微小磁区形成を補助する為のシード層や媒体表面の保護層、潤滑層等を付加することが望ましい。
【0026】
光源105としては、単色性の高いコヒーレント光が望ましく、化合物半導体から成る各種半導体レーザ、YAGレーザ、He−Neレーザ、Arレーザ、KrFレーザ等を用いることができる。
【0027】
また、円偏光に変換する光学素子108としては、波長板や偏光板或いは液晶素子等を用いることができる。本実施形態では、光学素子108として、例えば、1/2波長板108−1と1/4波長板108−2を用いている。2つの波長板のうち、1/2波長板108−1を光路に対して進退可能に構成し、1/4波長板108−2は光路中に固定しておく。1/2波長板108−1は、例えば、ステッピングモータ等の駆動手段を用いて駆動することで、光路に対して進退可能な構造とする。
【0028】
情報記録時には1/2波長板108−1を光路から退避させ、1/4波長板108−2のみを光路に配置し、情報再生時には1/2波長板108−1を光路に挿入し、1/2波長板108−1と1/4波長板108−2を光路に配置する。
【0029】
近接場発生素子104の透明基体110に用いる材料には、光源105の波長が可視光領域であれば、SiO、SiN、SiON、SiAlON、AlN、ZnS、MgF、TaO、ポリカーボネート、アクリル等を利用できる。更に、透明基体110での反射を軽減するために光源波長に対応した単層又は多層の誘電体の反射防止膜を付加してもよい。
【0030】
また、近接場発生素子104に用いる遮光膜111の材料には、波長が可視光領域で透過率の低い材料であって、且つ、誘電率εの実部の絶対値|Re(ε)|が大きな材料が望ましい。また、遮光膜111の作製の容易さや材料の入手しやすさから、Al,Ag,Au,Cr,Pt,Rh等またはそれらを含む合金を用いるのが好ましい。遮光膜111の材料としては、これら金属に限ることなく半導体を用いても良い。遮光膜111は加工容易性やコストを考慮して多層構成としても良い。
【0031】
更に、近接場発生素子104の遮光膜111には微小開口部が形成されているが、この微小開口部は少なくとも1つの屈曲部を有しており、且つ、その周囲は遮光膜によって閉じた形状をしている。このような屈曲部を有する周囲が閉じた微小開口部112の形状としては、図2(a)に示す「C」字型、図2(b)に示す「L」字型の様に矩形、円形、楕円形、多角形等を異なる方向で配置した組合せや、これらの外周に一定の曲率を持たせた形状等が挙げられる。
【0032】
このように微小開口部が少なくとも1つの屈曲部を有し、周囲が遮光膜によって閉じた形状とすることによって、後述するように左円偏光と右円偏光に対して近接場光発生素子104は異なる応答を示すものである。
【0033】
また、近接場発生素子104のその他の微小開口部の形状としては、図2(c)や図2(d)に示すように近接場発生素子104の微小開口部を複数組み合わせた形状や、或いは複数の屈曲部を有するものでも良い。複数の屈曲部を持つ開口の例としては図2(c)の「S」字型、図2(d)の「卍」型等の矩形、円形、楕円形、多角形等を異なる方向で配置した組合せや、それらに一定の曲率を持たせた形状が挙げられる。
【0034】
次に、S字型の微小開口部を持つ近接場光発生素子104に対して光源105の光を変換した円偏光を入射した場合の微小開口部の光強度分布を、電磁界解析手法である有限差分時間領域法(FDTD法)を用いて解析した結果を説明する。解析の前提条件としては、透明基体110として石英基板を用い、基板110と隣接してAlの遮光膜111を形成したものとする。また、遮光膜111には、図3に示すように略S字型の微小開口部を形成したものとする。入射光波長は真空中で408nmとする。
【0035】
図4は解析結果を示す。図4(a)、図4(b)、図4(c)はそれぞれ直線偏光、左円偏光、右円偏光入射時の光強度分布を示す。ここでの左円偏光は近接場光発生素子104から光源105に向かって見たときに電場が左回りに回転しているものとする。
【0036】
図4に示す様に左右円偏光に対して近接場光発生素子104は異なる応答を示していることが分かる。即ち、図4(b)に示すように左円偏光では略S字型開口部の中心に光スポットが形成されているのに対して、図4(c)に示すように右円偏光ではS字型の両端部に2つの光スポットが形成されていることが分かる。従って、S字型開口部等の微小開口部を用い、また、記録時には左円偏光を、再生時には右円偏光を入射することでクロストークを抑制した信号再生が可能となる。
【0037】
図5は記録時と再生時の記録媒体上の光スポットの配置を示す。図5(a)は記録時、図5(b)は再生時の配置を示す。図中115は記録媒体101の記録トラック、104は近接場光発生素子、116は近接場光発生素子104からの近接場光スポットである。また、102は再生素子、117は記録磁界印加領域である。
【0038】
また、図6は記録媒体の記録層の保磁力Hcと磁化Msの温度T依存性を示す。
【0039】
図5(a)に示すように情報記録時には略S字型開口部の中心に光スポットが形成されるように左円偏光を入射する。この場合には、1/4波長板108−2のみを光路に配置する。この時の記録媒体加熱温度は、図6に示すTwのように記録層の該当記録トラックの保磁力が磁気ヘッドの記録磁界よりも小さくなるキュリー点Tc近傍の温度領域とする。
【0040】
一方、情報再生時には図5(b)に示すように略S字型開口部の両端に光スポットが形成されるように右円偏光を入射する。この場合には、1/2波長板108−1と1/4波長板108−2を光路に配置する。
【0041】
この時の記録媒体加熱温度は再生トラックの隣接トラックの磁化Msが室温よりも小さくなる再生温度Trとする。隣接トラックのMsを小さくすることで、隣接トラックからの漏洩磁界はMsのべき乗に比例して減少するため、再生素子でのクロストークは大幅に抑制することが可能となる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の実施例について説明する。また、実施例との比較のため比較例についても説明する。
【0043】
(実施例)
本実施例では、記録媒体に室温で保磁力が大きく、キュリー点に向かうに従って保磁力が低下する、希土類−遷移金属の非晶質フェリ磁性合金を記録層として用いた。また、記録磁界発生手段としては、矩形の主磁極をもつ単磁極ヘッドを用い、加熱昇温手段として略S字型の微小開口を持つ近接場光発生素子を用いた。
【0044】
記録媒体の構成としては、図7に示すようにガラスから成る基板801上に下地層802の誘電体SiNを30nmとTbFeCo合金の記録層803を20nm、更に保護層804としてSiNを5nm形成して最後に潤滑層805を塗布したものを用いた。記録層のTbFeCo合金は室温以下の補償温度を有する垂直記録媒体であり、室温以上では、保磁力Hc、磁化|Ms|共に温度に対して単調に減少する。また記録層のキュリー点は200℃であった。
【0045】
情報の記録に際しては、図1に示すようにHDDの記録再生装置(スピンスタンド上)に記録用単磁極ヘッド103、幅180nmの再生用GMRヘッド102を装着し、更に再生用ヘッドに隣接して近接場光発生素子104を配置した。近接場光発生素子104は正確に配置する必要があるためにピエゾ素子によって駆動を行った。即ち、図1において、近接場光発生素子104は光軸方向に移動可能な構造としており、図示しないピエド素子を用いて近接場光発生素子104の位置調整を行った。
【0046】
近接場発生素子104には、NA0.6の集光光学系によって光源である波長650nmの半導体レーザ光を入射した。この半導体レーザと集光光学系の間には、偏光方向を調整する為の1/4波長板と1/2波長板を挿入した。近接場発生素子104の微小開口形状は図3に示すように略S字型とした。
【0047】
以上の様な磁気記録装置でデータを記録する場合には、スピンドルを用いて記録媒体101を一定の線速度(6.0m/sec)で回転させて、単磁極ヘッド103から磁界を変調して記録を行った。また、記録時には光源である半導体レーザと集光光学系の間に1/4波長板を配置して、左円偏光を20mWの一定の出力で入射した。記録トラック幅は200nmとして、マーク長50nm、100nm、200nmの3種類の一定マークを、1トラック毎に書き込み、全部で90トラック分の記録を行った。
【0048】
次に、データの再生時には、半導体レーザと集光光学系の間に1/2波長板と1/4波長板を配置して右円偏光を13mWの一定出力で入射した。再生時の線速度は6.0m/secとした。マーク長100nmのトラック上の再生時にスペクトルアナライザーで信号強度を測定したところ、マーク長100nmに対応する周波数のピークにおけるCNRは40dBであり、50nmと200nmのマーク長に対応する周波数におけるピークは見られず、隣接トラックからのクロストークはなかった。
【0049】
(比較例)
実施例と同様に記録媒体の構成は図7に示すようにガラスから成る基板801上に下地層802の誘電体SiNを30nmとTbFeCo合金の記録層803を20nm、更に保護層804としてSiNを5nm形成して最後に潤滑層805を塗布したものを用いた。記録層のTbFeCo合金は室温以下の補償温度を有する垂直記録媒体であり、室温以上では、保磁力Hc、磁化|Ms|共に温度に対して単調に減少する。記録層のキュリー点は200℃であった。
【0050】
情報の記録に際しては、図1に示すようにHDDの記録再生装置(スピンスタンド上)に記録用単磁極ヘッド103、幅180nmの再生用GMRヘッド102を装着し、更に再生用ヘッドに隣接して、近接場光発生素子104を配置した。
【0051】
また、近接場光発生素子104は正確に配置する必要があるためにピエゾ素子によって駆動を行った。近接場発生素子104にはNA0.6の集光光学系によって光源である波長650nmの半導体レーザ光を入射した。半導体レーザと集光光学系の間には、偏光方向を調整する為の1/4波長板と1/2波長板を挿入した。近接場発生素子104の微小開口形状は図3に示すように略S字型である。
【0052】
以上の様な磁気記録装置でデータを記録する場合には、スピンドルを用いて記録媒体101を一定の線速度(6.0m/sec)で回転させて、単磁極ヘッド103から磁界を変調させて記録を行った。記録時には半導体レーザと集光光学系の間に1/4波長板を配置して、左円偏光を20mWの一定の出力で入射した。記録トラック幅は200nmとして、マーク長50nm、100nm、200nmの3種類の一定マークを、1トラック毎に書き込み、全部で90トラック分の記録を行った。
【0053】
次に、情報再生時には、光源である半導体レーザは照射せずに線速度は6.0m/secで再生を行った。その際、マーク長100nmのトラック上の再生時にスペクトルアナライザーで信号強度を測定したところ、マーク長100nmに対応する周波数のピークにおけるCNRは40dBであった。更に、本比較例では50nmと200nmのマーク長に対応する周波数のピークが見られ、CNRは20dBであったことから隣接トラックからのクロストーク成分を有することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る磁気記録再生装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る微小開口部の例を示す図である。
【図3】円偏光入射時の微小開口部における光強度分布解析に用いたS字状開口部を示す図である。
【図4】円偏光入射時の微小開口部の光強度分布解析結果を示す図である。
【図5】本発明の情報記録時と情報再生時の記録媒体上の近接場光スポット及び記録磁界印可領域、再生ヘッドの配置を示す図である。
【図6】本発明に用いる記録媒体の記録層の保磁力と磁化の温度依存性を示す図である。
【図7】本発明の実施例の記録媒体の層構成を示す図である。
【図8】従来の記録媒体上の近接場光スポット及び記録時の記録磁界印加領域、再生ヘッドの配置を示す図である。
【図9】フェリ磁性体の保磁力と磁化の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
101 記録媒体
102 GMR再生素子
103 単磁極ヘッド
104 近接場光発生素子
105 光源
106 集光光学系
107 光ビーム
108 光学素子
108−1 1/2波長板
108−2 1/4波長板
110 透明基体
111 遮光膜
112 微小開口部
115 記録トラック
116 近接場光スポット
117 記録磁界印加領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱昇温により保磁力が変化する記録媒体に光源からの光を照射することによって前記記録媒体を加熱昇温すると共に、記録磁界を印加することによって前記記録媒体に情報の記録を行い、前記記録媒体の磁化を検出することによって記録情報の再生を行う磁気記録再生装置において、
前記光源からの光を円偏光に変換する光学素子と、前記光学素子からの光を入射して前記記録媒体に近接場光スポットを照射する近接場光発生素子とを含み、
前記近接場光発生素子には遮光膜が形成され、その遮光膜には少なくとも1つの屈曲部を有し、周囲が閉じられた微小開口部が形成されており、前記光学素子により情報記録時と情報再生時とで前記近接場光発生素子に入射する光を左円偏光と右円偏光に切り換えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記近接場光発生素子の微小開口部は略S字状であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
情報記録時には左円偏光を前記近接場光発生素子に入射し、情報再生時には右円偏光を前記近接場光発生素子に入射することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−115375(P2007−115375A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308489(P2005−308489)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】