説明

磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体、磁気記録再生装置及び成膜装置

【課題】キャリア搬送装置の部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁気記録媒体を製造することができる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上部および下部にガス排気手段103、104を備え、下部側に基板搬送装置105が備えられた反応容器101の内部に磁性層を形成した基板200を搬入して、反応容器101の一対のプラズマ発生電極ユニットU1、U2の間に基板200を配置した後、ハロゲンを含むガスを供給して発生させたハロゲンイオンを含む反応性プラズマもしくは反応性プラズマ中に生成した反応性イオンに、磁性層の表面を部分的にさらして磁性層を改質することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する改質工程において磁性層を部分的に改質した後に生ずる排ガスを上部のガス排気手段103から排気させる磁気記録媒体の製造方法を用いることにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体、磁気記録再生装置及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。
特に、HDD(ハードディスクドライブ)では、MRヘッド、およびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TuMRヘッドなども導入され1年に約100%ものペースで増加を続けている。
【0003】
一方、HDDの磁気記録方式として、いわゆる垂直磁気記録方式が従来の面内磁気記録方式(磁化方向が基板面に平行な記録方式)に代わる技術として近年急速に利用が広まっている。
垂直磁気記録方式では、情報を記録する記録層の結晶粒子が基板に対して垂直方向に磁化容易軸をもっている。この磁化容易軸とは、磁化の向きやすい方向を意味し、一般的に用いられているCo合金の場合、Coのhcp構造の(0001)面の法線に平行な軸(c軸)である。垂直磁気記録方式は、このように磁性結晶粒子の磁化容易軸が垂直方向であることにより、高記録密度が進んだ際にも、記録ビット間の反磁界の影響が小さく、静磁気的にも安定という特徴がある。
垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に下地層、中間層(配向制御層)、磁気記録層、保護層の順に成膜されるのが一般的である。また、保護層まで成膜した上で、表面に潤滑層を塗布する場合が多い。また、多くの場合、軟磁性裏打ち層とよばれる磁性膜が下地層の下に設けられる。下地層や中間層は磁気記録層の特性をより高める目的で形成される。具体的には、磁気記録層の結晶配向を整えると同時に磁性結晶の形状を制御する働きがある。
【0004】
垂直磁気記録媒体の高記録密度化には、熱安定性を保ちながら低ノイズ化を実現する必要がある。ノイズを低減するための方法としては、一般的に2つの方法が用いられる。
1つ目は記録層の磁性結晶粒子を磁気的に分離、孤立化させることで、磁性結晶粒子間の磁気的相互作用を低減する方法、2つ目は磁性結晶粒子の大きさを小さくする方法である。
具体的には、例えば、記録層にSiO等を添加し、磁性結晶粒子がSiO等を多く含む粒界領域に取り囲まれた、いわゆるグラニュラ構造を有する垂直磁気記録層を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
そして、グラニュラ構造を有する垂直磁気記録層を形成する方法として、非特許文献1には、CoCrPt合金とSiOを含有する複合型ターゲットを用い、アルゴン酸素混合ガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタによりグラニュラ構造を有する記録層を形成する方法が開示されている。この文献では、酸素含有雰囲気中で反応性スパッタを行うことにより、保磁力が増加するとともに記録再生特性が向上することが報告されている。
また、SiOの濃度により最適な酸素分圧が決まり、SiO濃度が低いほど最適酸素分圧が高くなること、酸素濃度が最適値を超えて過剰な状態になると磁気特性や記録再生特性が大幅に劣化することが報告されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、スパッタガスと反応性ガスを真空室内に導入して反応性スパッタリングによる成膜を行うとき、ターゲットの表面に沿って流れる反応性ガスの濃度を均一にして、反応性ガスとターゲットの反応の均一化を高め、膜厚、膜質、膜特性を均一化できるスパッタリング装置が開示されている。
この装置は、少なくとも1つのターゲットを備えたカソードを基板に対向させ、反応性スパッタリングに基づいてターゲットをスパッタして基板に膜を堆積させるスパッタリング装置において、反応性ガス供給装置から供給される反応性ガスをカソードユニットの中央部からターゲットの表面に沿って外方へ流す中央ガス導入機構を設けるように構成されている。
【0007】
ところで、酸素含有雰囲気中で反応性スパッタリングを行う場合、スパッタチャンバ内の酸素ラジカル濃度分布の不均一性に起因して、磁性膜中に取り込まれる酸素濃度がディスク上の位置により変化する現象が見られ、このことが、ディスク全面に亘って、一様な磁気特性、記録再生特性を得ることを非常に難しくしている。
このような観点から、本発明者が、特許文献1および特許文献2に記載された方法について、詳細に検討した結果、特許文献1に記載された方法では、ターゲット表面付近に形成されるプラズマ空間は安定するものの、このプラズマ空間内に存在する酸素ラジカルの濃度が不安定となり、成膜されるグラニュラ磁性層が不均一となることが明らかとなった。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法では、反応性ガスをカソードユニットの中央部からターゲットの表面に沿って外方へ流す方法を提案しているが、この方法により、反応性ガスそのものは基板表面に均一に供給されるものの、ガスの流れにより基板の表面付近に形成されるプラズマ空間が下流側に流されて不安定となる。
また、この方法では、基板とプラズマとの間にガスが流れ込み、その箇所に非プラズマ空間を形成してしまう。
本発明者らの研究により、この非プラズマ空間は、プラズマ空間から基板表面に飛来する酸素ラジカルを死滅させ、反応性スパッタによる成膜速度を低下させると共に、基板表面に析出する磁性膜の不均一性、不均一な膜厚分布を生じさせてしまうことを解明した。
【0009】
ところで、この種の成膜装置において、反応容器のプラズマ生成空間に対する基板の出し入れ作業は必須の作業となるが、プラズマ生成空間に対して基板を出し入れするためのキャリアなどの複雑なキャリア搬送装置が減圧時の円滑な減圧作業の障害となる問題を有していた。
例えば、小型の基板に成膜するため、反応容器を薄型にしてプラズマ生成空間も薄型にした場合、主力となる減圧装置を薄型の反応容器の一側に接続し、プラズマ生成空間近くにキャリア搬送装置を配置すると、真空などに減圧する場合にキャリア搬送装置を設けたプラズマ容器の側の空間が減圧時の抵抗となり、排気速度が低下し、真空とするための時間がかかるという問題を有していた。
【0010】
反応容器の上下に真空ポンプを配して、反応容器の上部および下部にそれぞれ前記真空ポンプを接続したガス排気手段を備えることにより、前記反応容器の内部に複雑な基板搬送装置を配置しても、排気速度を上げることができ、前記反応容器の内部を真空とするための時間を短くすることができた。
しかし、ハロゲンのような反応性の高い反応ガスを用いて、磁性層の磁気特性の改質を行った場合には、基板付近に備えられた前記反応ガスの供給口から放出される反応ガスが、基板を出し入れするキャリア搬送装置のベアリングなど部品の表面を腐食させる場合があった。このような場合に前記キャリア搬送装置を駆動させると、その腐食された表面が擦れて発塵する場合があった。さらに、これにより、不純物ガスが発生し、磁性層の磁気特性を悪化させる場合があった。
【特許文献1】特開2002−342908号公報
【特許文献2】特開2004−346406号公報
【非特許文献1】IEEE Transactions on Magnetics,Vol.40,No.4,July 2004,pp.2498−2500
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、キャリア搬送装置のベアリングなどの金属部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁気層を改質して磁気記録媒体を製造することができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体、磁気記録再生装置及び成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本願発明者は鋭意努力研究した結果、本願発明に到達した。すなわち本発明は以下に関する。
(1) 上部および下部にそれぞれガス排気手段を備え、下部側に基板搬送装置が備えられた反応容器の内部に、前記基板搬送装置により磁性層を形成した基板を搬入して、前記反応容器の内部に配置された一対のプラズマ発生電極ユニットの間に前記基板を配置した後、ハロゲンを含むガスを供給して、発生させたハロゲンイオンを含む反応性プラズマもしくは前記反応性プラズマ中に生成した反応性イオンに、前記磁性層の表面を部分的にさらして該箇所の磁性層を改質することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する改質工程を有する磁気記録媒体の製造方法であって、前記改質工程において、前記磁性層を部分的に改質した後に生ずる排ガスを、前記上部のガス排気手段から排気させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(2) 内周壁に沿って複数のガス放出口が設けられた環状のガス流入管を、前記基板と前記電極面との間に配置して、前記複数のガス放出口から前記ハロゲンを含むガスを放出させることにより、前記基板の外周部から中央部に向けて流れるように供給することを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3) 前記ハロゲンイオンが、CF、SF、CHF、CCl、KBrからなる群から選ばれた何れか1種以上のハロゲン化ガスを反応性プラズマ中に導入して形成したハロゲンイオンであることを特徴とする(1)または(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4) 前記ハロゲンイオンが、Fイオンであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5) 前記磁性層で前記ハロゲンイオンにさらした箇所が、前記磁性層を構成する物質のハロゲン化物を実質的に含まないことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の磁気録媒体の製造方法。
【0013】
(6) 前記磁性層の表面にレジストパターンを形成した後、前記レジストパターンで覆われていない箇所を前記反応性プラズマにさらすことにより該箇所の磁気特性を改質して、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7) 前記反応性プラズマにさらして改質した磁性層の磁化量を、当初の75%以下とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(8) 前記反応性プラズマにさらして改質した磁性層の磁化量を、当初の50%以下とすることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(9) 前記反応性プラズマが、酸素ガスを導入して生成した酸素イオンを含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(10) 前記改質工程が、酸素を含有させた前記反応性プラズマに前記磁性層をさらした後、ハロゲンを含有させた前記反応性プラズマに前記磁性層をさらす工程を有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(11) 前記磁性層の表面に部分的にイオン注入を行うことを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(12) 前記イオン注入で注入するイオンがアルゴンまたは窒素であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(13) 前記磁性層の上に保護層を形成した後に前記保護層の上にレジストパターンを形成することを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(14) 前記磁気記録パターンが垂直磁気記録パターンであることを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(15) 前記ガス排気手段のいずれかが、ターボ分子ポンプを備えることを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(16) 前記ガス排気手段のいずれかが、クライオポンプを備えることを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0014】
(17) (1)〜(16)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法により製造されたことを特徴とする磁気記録媒体。
(18) (17)に記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせて具備してなることを特徴とする磁気記録再生装置。
(19) 反応容器と、前記反応容器の上部および下部にそれぞれ備えられたガス排気手段と、前記反応容器の下部側に備えられ、基板を内部に出し入れ自在とする基板搬送装置と、前記反応容器の内部に電極面が対向するように配置された一対のプラズマ発生電極ユニットと、前記電極面の間に前記基板がその両面を前記電極面と対向するように配置された場合に、前記基板と前記電極面との間に、内周壁に円周に沿って設けられた複数のガス放出口が前記基板の周囲側から中心側に向かってハロゲンを含むガスを供給自在とするように配置された一対の環状のガス流入管と、を有し、反応性プラズマによる改質反応中または改質反応後の排ガスを上部のガス排気手段を主体として排出自在としてなることを特徴とする成膜装置。
(20) 前記ガス流入管により、前記基板と前記電極面との間に、ハロゲンを含むガスが供給自在とされ、前記基板と前記電極面との間に、酸素ラジカル、酸素イオン、または、酸素原子のいずれかを含む反応性プラズマが生成されることを特徴とする(19)に記載の成膜装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、基板搬送装置のベアリングやアームなどの金属部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁気層を改質して磁気記録媒体を製造することができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体、磁気記録再生装置及び成膜装置を提供することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、改質工程において、磁性層を部分的に改質した後に生ずる排ガスを、上部のガス排気手段から排気させる構成なので、磁性層を改質させた後に生ずる排ガスの流れを、上部のガス排気手段の一方方向とすることができ、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、下部側に配置されたキャリア搬送装置のベアリングなどの金属部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁気記録媒体を製造することができる。また、腐食による基板搬送装置の故障が生じることがない。
【0016】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、内周壁に沿って複数のガス放出口が設けられた環状のガス流入管を、基板と電極面との間に配置して、複数のガス放出口から前記ハロゲンを含むガスを放出させることにより、基板の外周部から中央部に向けて流れるように供給する構成なので、生成するプラズマをガスの流れによって、規定の位置からずらせたり、プラズマの形をくずしたりすることがないので、形の整った安定したプラズマを用いて、磁性層の改質を速やかに行うことができる。
【0017】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、磁性層の表面にレジストパターンを形成した後、レジストパターンで覆われていない箇所を反応性プラズマにさらすことにより該箇所の磁気特性を改質して、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する構成なので、高精細な磁気記録パターンを形成することができる。
本発明の磁気記録媒体は、よりクリーンな環境において磁気記録媒体を製造する方法により製造される構成なので、不純物ガスや製造ゴミなどによる不良の影響を排した磁気記録媒体とすることができる。
【0018】
本発明の磁気記録再生装置は、先に記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段であるヘッド駆動部と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせた記録再生信号系とを具備してなる構成なので、記録密度の高い磁気記録再生装置を構成することが可能となる。また、十分な再生出力と高いSNRを得ることができる。
【0019】
本発明の成膜装置は、反応容器と、反応容器の上部および下部にそれぞれ備えられたガス排気手段と、反応容器の下部側に備えられ、基板を内部に出し入れ自在とする基板搬送装置と、反応容器の内部に電極面が対向するように配置された一対のプラズマ発生電極ユニットと、電極面の間に基板がその両面を電極面と対向するように配置された場合に、基板と電極面との間に、内周壁に沿って設けられた複数のガス放出口が基板の周囲側から中心側に向かってハロゲンを含むガスを供給自在とするように配置された一対の環状のガス流入管と、を有し、反応性プラズマによる改質反応中または改質反応後の排ガスを上部のガス排気手段を主体として排出自在としてなる構成なので、磁性層を改質させた後に生ずる排ガスの流れを、上部のガス排気手段の方向の一方方向とすることができ、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、下部側に配置されたキャリア搬送装置のベアリングなどの部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁性層の改質を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(磁気記録媒体)
本発明を、ディスクリート型磁気記録媒体を例にして詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態であるディスクリート型磁気記録媒体の断面構造を例示する。
本発明の実施形態である磁気記録媒体30は、非磁性基板1の表面に軟磁性層および中間層2、磁性層3および非磁性化層4からなる磁気的パターンが形成された磁気記録層7、および保護膜5が形成されており、さらに最表面に図示省略の潤滑膜が形成された構造を有している。
【0021】
記録密度を高めるため、磁気的パターンを有する磁性層3の幅Wは200nm以下、非磁性化層4の幅Lは100nm以下とすることが好ましい。従ってトラックピッチP(=W+L)は300nm以下の範囲で、記録密度を高めるためにはできるだけ狭くする。
なお、磁気記録層7の磁気記録パターンとは、磁気記録パターンが1ビットごとに一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアや、磁気記録パターンが、トラック状に配置されたメディアや、その他、サーボ信号パターン等を含んでいる。
また、ディスクリート型磁気記録媒体は、ディスクリートトラック型磁気記録媒体などとも言われ、磁性層にナノメートルオーダーの微細な溝を形成して、記録トラックを物理的に分離することにより、隣接トラックどうしの磁気的干渉を低減した磁気記録媒体であって、磁気的に分離した磁気記録パターンが、磁気記録トラック及びサーボ信号パターンである磁気記録媒体である。
【0022】
<非磁性基板>
本発明で使用する非磁性基板1としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。中でもAl合金基板や結晶化ガラス等のガラス製基板またはシリコン基板を用いることが好ましい。
また、これら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましく、中でも0.1nm以下であることが好ましい。
<磁気記録層>
上記のような非磁性基板1の表面に形成される磁気記録層7は、面内磁気記録層でも垂直磁気記録層でもかまわないがより高い記録密度を実現するためには垂直磁気記録層が好ましい。これら磁気記録層は主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。
【0023】
<面内磁気記録層>
例えば、面内磁気記録媒体用の磁気記録層7としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層からなる積層構造が利用できる。
【0024】
<垂直磁気記録層>
垂直磁気記録媒体用の磁気記録層7としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要によりRu等の中間膜、及び60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金からなる磁性層を積層したものを利用することがきる。
磁気記録層7の厚さは、3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とする。磁気記録層7は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。
磁気記録層7の膜厚は再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の磁性層膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
なお、通常、磁気記録層7はスパッタ法により薄膜として形成する。
【0025】
本願発明では、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部を磁気的に分離する領域を、すでに成膜された磁性層3を反応性プラズマにさらして該箇所の磁性層3を非晶質化して、該箇所の磁気特性を改質することにより非磁性化層4として磁気記録層7を形成する。
磁性層3の磁気特性の改質とは、具体的には、磁性層3の保磁力、残留磁化等を変化させることを指し、その変化とは、保磁力を下げ、残留磁化を下げることを指す。
【0026】
<磁気特性の改質>
本願発明では特に、磁気特性の改質として、反応性プラズマにさらした箇所の磁性層3の磁化量、または、保磁力を、磁化量を当初の75%以下、より好ましくは50%以下、当初の保磁力の50%以下、より好ましくは20%以下とする方法を採用するのが好ましい。
このような方法を用いてディスクリート型磁気記録媒体を製造することにより、本媒体に磁気記録を行う際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【0027】
<磁性層の非晶質化>
本願発明で、磁性層3を非晶質化するとは、磁性層3の原子配列を、長距離秩序を持たない不規則な原子配列の形態とすることを指し、より具体的には、2nm未満の微結晶粒がランダムに配列した状態とすることを指す。
そして、この原子配列状態を分析手法により確認する場合は、X線回折または電子線回折により、結晶面を表すピークが認められず、また、ハロー(ブロードなシグナル)が認められるのみの状態とする。
<反応性プラズマ>
本願発明の反応性プラズマとしては、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)や反応性イオンプラズマ(RIE;Reactive Ion Plasma)が例示できる。
<誘導結合プラズマ>
誘導結合プラズマとは、気体に高電圧をかけることによってプラズマ化し、さらに高周波数の変動磁場によってそのプラズマ内部に渦電流によるジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマである。誘導結合プラズマは電子密度が高く、従来のイオンビームを用いてディスクリートトラックメディアを製造する場合に比べ、広い面積の磁性膜において、高い効率で磁気特性の改質を実現することができる。
<反応性イオンプラズマ>
反応性イオンプラズマとは、プラズマ中にO、SF、CHF、CF、CCl等の反応性ガスを加えた反応性の高いプラズマである。このようなプラズマを本願発明の反応性プラズマとして用いることにより、磁性膜の磁気特性の改質をより高い効率で実現することが可能となる。
【0028】
<磁性金属と反応性プラズマ中の原子またはイオンとの反応>
本願発明では、成膜された磁性層3を反応性プラズマにさらすことにより磁性層3を改質するが、この改質は、磁性層3を構成する磁性金属と反応性プラズマ中の原子またはイオンとの反応により実現するのが好ましい。
反応とは、磁性金属に反応性プラズマ中の原子等が侵入し、磁性金属の結晶構造が変化すること、磁性金属の組成が変化すること、磁性金属が酸化すること、磁性金属か窒化すること、磁性金属が珪化すること等が例示できる。
<酸素原子を含有させた反応性プラズマ>
本願発明では特に、反応性プラズマとして酸素原子を含有させ、磁性層3を構成する磁性金属と反応性プラズマ中の酸素原子とを反応させることにより、磁性層3を酸化させるのが好ましい。
磁性層3を部分的に酸化させることにより、酸化部分の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となるため、短時間の反応性プラズマ処理により、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体を製造することが可能となるからである。また、反応性プラズマ中に酸素原子を含有させることにより磁性層3の非晶質化を促進することが可能となる。
<ハロゲン原子を含有させた反応性プラズマ>
本願発明では、反応性プラズマに、ハロゲン原子を含有させるのが好ましい。またハロゲン原子としてはF原子を用いるのが特に好ましい。ハロゲン原子は、酸素原子と一緒に反応性プラズマ中に添加して用いても良いし、また酸素原子を用いずに反応性プラズマ中に添加しても良い。
前述のように、反応性プラズマに酸素原子等を加えることにより、磁性層3を構成する磁性金属と酸素原子等が反応して磁性層3の磁気特性を改質させることが可能となる。この際、反応性プラズマにハロゲン原子を含有させることにより、この反応性をさらに高めることが可能となる。
【0029】
また、反応性プラズマ中に酸素原子を添加していない場合においても、ハロゲン原子が磁性合金と反応して、磁性層3の磁気特性を改質させることが可能となる。
この理由の詳細は明らかではないが、反応性プラズマ中のハロゲン原子が、磁性層3の表面に形成している異物をエッチングし、これにより磁性層3の表面が清浄化し、磁性層3の反応性が高まることが考えられる。
また、清浄化した磁性層表面とハロゲン原子とが高い効率で反応することが考えられる。このような効果を有するハロゲン原子としてF原子を用いるのが特に好ましい。
【0030】
<保護膜>
保護膜5としては、炭素(C)、水素化炭素(HC)、窒素化炭素(CN)、アモルファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO、Zr、TiNなど、通常用いられる保護膜材料を用いることができる。また、保護膜5が2層以上の層から構成されていてもよい。
保護膜5の膜厚は10nm未満とする必要がある。保護膜5の膜厚が10nmを超える場合には、磁気ヘッドと磁性層3との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなるからである。
保護膜5の上には潤滑層を形成することが好ましい。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、通常1〜4nmの厚さで潤滑層を形成する。
【0031】
(磁気記録再生装置)
次に、本発明の実施形態である磁気記録再生装置の構成の一例を図2に示す。
本発明の実施形態である磁気記録再生装置300は、上述の本発明の実施形態である磁気記録媒体30と、これを記録方向に駆動する駆動部11と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド27と、磁気ヘッド27を磁気記録媒体30に対して相対運動させる手段であるヘッド駆動部28と、磁気ヘッド27への信号入力と磁気ヘッド27からの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせた記録再生信号系29とを具備したものである。
【0032】
これらを組み合わせることにより、記録密度の高い磁気記録再生装置300を構成することが可能となる。磁気記録媒体30の記録トラックを磁気的に不連続に加工したことによって、従来はトラックエッジ部の磁化遷移領域の影響を排除するために再生ヘッド幅を記録ヘッド幅よりも狭くして対応していたものを、両者をほぼ同じ幅にして動作させることができる。これにより十分な再生出力と高いSNRを得ることができるようになる。
【0033】
さらに、磁気ヘッド27の再生部をGMRヘッドあるいはTMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記録再生装置300を実現することができる。
また、この磁気ヘッド27の浮上量を0.005μm〜0.020μmと従来より低い高さで浮上させると、出力が向上して高い装置SNRが得られ、大容量で高信頼性の磁気記録再生装置300を提供することができる。
【0034】
(成膜装置)
次に、本発明の実施形態である成膜装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態である成膜装置の一例を示す縦断面図であり、図4は図3に示す成膜装置を図3中右側から見た側面図であり、図5は図3に示す成膜装置に備えられているガス流入管の一例を示す上面図である。
【0035】
本発明の実施形態である成膜装置100は、縦型かつ薄型の反応容器(反応チャンバ)101と、反応容器101内に、不活性ガス(スパッタガスまたはプラズマ生成ガス)と反応性ガスの混合ガスを供給するガス供給手段102(図5参照)と、反応容器101内のガスを排気するガス排気手段(上部の排気手段)103およびガス排気手段(下部の排気手段)104と、外部から搬入された2枚の被処理基板200を所定の位置に搬送する基板搬送装置105とを有している。被処理基板200は、非磁性基板1の表面に軟磁性層および中間層2および磁性層3を積層したものである。
反応容器101の内部に、互いに対向する電極面113a、115aを垂直に配置した一対のプラズマ発生電極ユニット(電極ユニット)U1、U2の間に、被処理基板200の両面が電極面113a、115aと対向するように配置されている。
【0036】
<反応容器>
反応容器101は、外部と反応空間101aとを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。
なお、以下の説明では、この反応容器101において、図3中、右側の側壁を「第1の側壁106」、左側の側壁を「第2の側壁107」、図3の奥行き側の側壁を第「第3の側壁108」、手前側の側壁を「第4の側壁109(図4参照)」と呼称する。
<側壁>
第1の側壁106と第2の側壁107は、図4に示す如く正面視正方形に近い若干縦長の長方形状であって、それらの間に図3に示す如く扁平の縦長の空間を構成するように相互の間隔を狭めて垂直に配置され、第1の側壁106と第2の側壁107の左右両側に幅狭の第3の側壁108と第3の側壁109とが接続されて側壁106〜109に囲まれて縦長の扁平の空間が反応容器内部空間として区画されている。
【0037】
<窓部>
この反応容器101の第1の側壁106の上部側には、後述する第1のカソード113および第2のカソードが取り付けられる第1の窓部109が設けられ、第2の側壁107には、後述する第3のカソード115および第4のカソードが左右に隣接して取り付けられる第2の窓部110が第1の窓部109と対向するように設けられている。
第1の窓部109と第2の窓部110は図4を参照する如く側面視横長のレーストラック形状とされ、互いの形成位置は互いに対向するように同一高さ位置とされている。
また、第1の側壁106には、第1の窓部109の下方に、後述する基板搬入室136を取り付けるための小型の第3の窓部116が設けられている。
【0038】
<カソード(電極)>
なお、第1のカソード113〜第4のカソードはいずれも同等の構成とされ、第1の窓部109側に左右に並んで2基、第2の窓部110側に左右に並んで2基取り付けられているが、図3、図4においては一部を略して記載している。
前記反応容器101の第1の側壁106には、図示略の電源によって電力が供給される第1のカソード113および第2のカソードが取り付けられ、第2の側壁107には、図示略の電源によって電力が供給される第3のカソード115および第4のカソードが取り付けられている。
具体的には、図4に示すように、第1のカソード113および第2のカソードは、横方向に並んだ状態で、第1の側壁106に設けられた横長の第1の窓部109に、フレームを介して気密的に接合される。
また、第3のカソード115および第4のカソードは、横方向に並んだ状態で、第2の側壁107に設けられた第2の窓部110に、フレームを介して気密的に接合される。
そして、第1のカソード113〜第4のカソードは、それぞれ、その電極面が水平面に対して略直交するような縦置き状態となっており、第1のカソード113と第3のカソード115とは、その反応空間101a側の表面(電極面)113a、115a同士が対向し、第2のカソードと第4のカソードとは、その反応空間101a側の表面(電極面)同士が対向した位置関係になっている。
【0039】
<電極ユニット>
本実施形態では、第1のカソード113によって構成される第1の電極ユニットU1と、第3のカソード115とによって構成される第3の電極ユニットU2とが対をなし、第2のカソードによって構成される第2の電極ユニットと、第4のカソードによって構成される第4の電極ユニットとが対をなしている。
【0040】
<ガス流入管>
反応容器101の内部には、図5に示す形状の第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124がそれぞれ配設されている。
図5に示すように、第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124は、それぞれ、一方向に延在された直管部125と、直管部125の一端に連結された円環状の環状部126とを有し、環状部126の内周壁126cに、複数のガス放出口126aが円周に沿って略等間隔に設けられてなる。
ガス流入管124に設けるガス放出口126aの孔径は、ガス流入管124に接続する直管部125の位置に応じて、各孔からの放出ガス量が一定となるよう、その位置に応じて変えることが好ましい。即ち、各管を流れるガスの上流側においては孔径を小さくし、下流においては孔径を大きくすることが好ましい。
【0041】
第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124は、各直管部125の他端が延出されて、それぞれ反応容器101の外部に設けられているガス供給手段102に接続されている。
また、各ガス流入管121〜124の環状部126のガス放出口126aが、被処理基板200に向けて配設されている。即ち、ガス流入管の各環状部126が各電極ユニットと各被処理基板との間のプラズマ生成空間の外周を囲むように配置されている。
【0042】
ガス供給手段102とガス流入管との間には各配管の途中に設けられたバルブを有している。これらのバルブは、それぞれ、図示しない制御機構によって開閉が制御されるように構成されている。
ガス供給装置によって送出される混合ガスは、上述の各バルブによって流量が制御されつつ、第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124に、それぞれ、導入される。各ガス流入管に導入された混合ガスは、直管部125を通過して環状部126に流入し、矢印に示されるように、円環状に配置されている複数のガス放出口126aから被処理基板200の外周部200bから中央部200aへ向けて放出されるようになっている。
【0043】
<排気手段>
また、図3に示すように、反応容器101の天井部および底部の第1の排気口111および第2の排気口112には、それぞれ、ガス排気手段(上部の排気手段)103およびガス排気手段(下部の排気手段)104が接続されている。
ガス排気手段103、104は、その真空ポンプの動作により、反応容器101内を減圧状態にしたり、磁性層3の改質を行う際および磁性層3の改質後、反応容器101内のガスを所定に流量で排気する。ガス排気手段103、104は、それぞれ、真空ポンプ127、128、129と、各真空ポンプに接続され、図示しない制御手段によって開閉が制御されるゲートバルブ130、131、132と、ゲートバルブ130、131と第1の排気口111を接続する第1の排気管134と、ゲートバルブ132と第2の排気口112を接続する第2の排気管135とを有する。
【0044】
本実施形態の排気手段は、反応容器101内を高速で排気可能とする構造を有する。反応容器101を高速で排気するためには、反応容器101の容積を小さくし、一方で、真空ポンプの排気能力を高める必要がある。
しかしながら、真空ポンプの排気能力を高めると、真空ポンプは大型となり真空ポンプを反応容器101に取り付けるためのフランジ部の径が大きくなる。そのため、反応容器101にも大きなフランジ部が必要となり、結果として反応容器101を大きくする必要が生ずる。
【0045】
本実施形態では、ガス排気手段103、104の取り付けフランジを電極ユニットの電極面と平行に配置し、また、ガス排気手段103を構成する2つのポンプの取り付けフランジを平行に対向させ、排気能力の高い大きな真空ポンプを多数取り付けているにもかかわらず、反応容器101の容積を小さくすることを可能としている。
なお、ガス排気手段104をガス排気手段103と同様の構成とし、ガス排気手段104の真空ポンプを2台とし、反応容器101の排気能力をさらに高めることも可能である。
【0046】
ガス排気手段103、104に用いる真空ポンプ127、128、129としては、ターボ分子ポンプやクライオポンプを用いるのが望ましく、ターボ分子ポンプを用いることがより望ましい。
ターボ分子ポンプは、油を使用しないため清浄度(クリーン度)が高く、また、排気速度が大きいので高い真空度が得られる。さらにまた、反応性の高いガスを排気することができる。このため、ターボ分子ポンプを用いることにより、反応容器101内のガスを効率よく排気することができる。
クライオポンプは、排気速度やクリーン度がターボ分子ポンプより優れているが、溜め込み式ポンプであるので、可燃ガスやハロゲンガスなどの反応性の高いガスに用いることはできない。また、溜め込み式であるので、定期的にポンプの再生処理を行う必要がある。
また、各ガス排気手段103、104が備える真空ポンプ127、128、129の数は、1台であってよく、複数台であっても構わない。複数台の真空ポンプを用いることにより、反応容器101内のガスを、より効率よく排気することができる。
ただし、真空ポンプ101の数が余り多くなると、装置の大型化、消費電力の増大を招くおそれがあるため、各排気手段が備える真空ポンプの数は2台を上限とするのが望ましい。
また、ガス排気手段103、104において、真空ポンプの数は同じであってもよく、異なっていても構わない。
【0047】
本実施形態では、ガス排気手段103は、2台のターボ分子ポンプ127、128を有し、ガス排気手段104は、1台のクライオポンプ129によって構成されている。
このため、装置の大型化および消費電力の増大を抑えながら、反応容器101内のガスを効率よく排気することができる。この種のクライオポンプは溜め込み式のポンプであるため、ポンプからの不純物の発生が少なく、反応容器内をクリーンな排気環境に保つことが可能である。
【0048】
なお、反応空間101aとガス排気手段103との間の部分に特別な機器類が配置されてはいないが、反応空間101aとガス排気手段104との間には第1のキャリア138と第2のキャリアとを含む複雑な形状の移動操作機構141が設けられているので、この移動操作機構141まわりの空間を効率良く減圧するためにガス排気手段104が有効に作用する。
即ち、移動操作機構141とその周囲の空間の直近位置にガス排気手段104が設けられているので、移動操作機構141とそのまわりの空間を効率良く減圧できる。
勿論、ガス排気手段103、104が共同して排気することにより、反応容器101の内部空間全体を従来よりも素早く排気することができる。
【0049】
なお、ガス排気手段104を設けない場合、反応容器101の最上部側にガス排気手段があり、反応室の最底部側に複雑な構造のキャリアが存在すると、キャリア部分が減圧時の抵抗となり易く、反応室全体を目的の状態まで減圧する際に必要以上に時間がかかるなどの問題を生じるが、ガス排気手段103に加えてガス排気手段104をキャリア部分近くに設けることでこの問題を回避できる。
【0050】
<基板搬送装置>
基板搬送装置105は、外部から搬入された被処理基板200を、一対のプラズマ発生電極ユニットU1、U2の間に、被処理基板200の両面が電極面113a、115aと対向するように、かつ、縦置き状態となるように搬送する。
この基板搬送装置105は、基板搬入室136と、キャリア搬送装置137と、キャリア搬送装置137に保持された第1のキャリア138および第2のキャリアとを有する。
なお、第2のキャリアおよび後述する第2のキャリア保持部は、第1のキャリア138および後述する第1のキャリア保持部と同様の構成とされており、図示および説明は省略する。
【0051】
<基板搬入室>
基板搬入室136は、その一端が、反応容器101の第3の窓部116の周囲に固定され、その内部が、反応容器101内の空間と連通している。また、図3および図4に示すように、この基板搬入室136には、外部から基板を搬入するための開口139と、この開口139を開閉する図示しない扉が設けられている。
<キャリア搬送装置>
キャリア搬送装置137は、基板搬入室136の内部と反応容器101の内部とに亘って配設されている。このキャリア搬送装置137は、第1のキャリア138を保持する第1のキャリア保持部140と、キャリア保持部140を独立に移動操作する移動操作機構141とを有している。
<キャリア>
第1のキャリア138は、被処理基板200の外周縁の一部を着脱可能に保持するものであり、移動操作機構141の動作によって、基板搬入室136の開口139付近から、それぞれ反応空間101aの下方に移動操作される。
【0052】
キャリア搬送装置137の下部には複数のN磁石とS磁石が交互に取り付けられており(図示略)、複数のN磁石とS磁石が螺旋状に取り付けられた円筒形状の磁石150を回転させることによってキャリア保持部140を非接触状態で円筒形状の磁石150の軸方向に移動させることができる構成とされている。
基板搬入時には、第1のキャリア138が基板搬入室136の開口付近に位置している。そして、基板搬入室136の開口139から被処理基板200が搬入され、第1のキャリア138にそれぞれ装着されると、キャリア138は、移動操作機構141の動作によって、反応空間101aの下方に移動操作される。これにより、キャリア138に装着された被処理基板200は、それぞれ、一対のプラズマ発生電極ユニットU1、U2の間に、被処理基板200の両面が電極面113a、115aと対向するように、かつ、縦置き状態となるように搬送される。
すなわち、一方の被処理基板200は、その両主面が、第1のカソード113および第3のカソードの各電極面と対向し、且つ、各電極面との距離が略等しい状態になる。また、説明を省略したが、他方の被処理基板200も同様に、その両主面が、第2のカソードおよび第4のカソードの各電極面と対向し、且つ、各電極面との距離が略等しい状態になる。
この状態で、第1のカソード113〜第4のカソードにそれぞれ電力が供給されると、これら反応空間に供給された混合ガスが、プラズマ化する。
【0053】
(磁気記録媒体の製造方法)
次に、本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法について、図1に示す磁気記録媒体30を図3に示す成膜装置100を用いて製造する場合を例にして説明する。図1および図3で用いた部材と同様の部材については同じ符号を付して示している。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、上部および下部にそれぞれガス排気手段を備え、下部側に基板搬送装置が備えられた反応容器の内部に、前記基板搬送装置により磁性層を形成した基板を搬入して、前記反応容器の内部に配置された一対のプラズマ発生電極ユニットの間に前記基板を配置した後、ハロゲンを含むガスを供給して、発生させたハロゲンイオンを含む反応性プラズマもしくは前記反応性プラズマ中に生成した反応性イオンに、前記磁性層の表面を部分的にさらして該箇所の磁性層を改質することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する改質工程を有する磁気記録媒体の製造方法であって、前記改質工程において、前記磁性層を部分的に改質した後に生ずる排ガスを、前記上部のガス排気手段から排気させる。
【0054】
<レジストパターンの形成>
改質工程では、磁性層3の表面に、磁気記録パターンに合致させたレジストパターンを形成後、その表面の反応性プラズマにより処理し、レジストパターンで覆われていない箇所を反応性プラズマにさらすことにより該箇所の磁気特性を改質して、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成することにより、高精細な磁気記録パターンを形成することができる。その後、レジストを除去して保護層5を再形成後、潤滑材を塗布して磁気記録媒体を製造する。
まず、軟磁性層および中間層2、磁性層3をこの順序で形成した被処理基板200の磁性層3の表面に、磁気記録パターンに合致させたレジストパターンを形成する。
レジストパターン形成方法としては、通常のフォトリソグラフィー技術を適用してパターン形成することができる。レジストとしては、熱硬化型樹脂、UV硬化型樹脂、SOG等を用いることができる。なお、レジストを塗布し、その上から直接スタンパーを密着させ、高圧でプレスすることにより、レジストパターンを形成してもよい。
【0055】
前記のフォトリソグラフィープロセスで用いられるスタンパーは、例えば、金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものが使用でき、材料としてはプロセスに耐えうる硬度、耐久性が要求される。たとえば、Niなどが使用できるが、前述の目的に合致するものであれば材料は問わない。
なお、スタンパーには、通常のデータを記録するトラックの他にバーストパターン、グレイコードパターン、プリアンブルパターンといったサーボ信号のパターンも形成できる。
【0056】
<改質工程>
図3に示すように、基板搬送装置105を用いて、レジストパターンを形成した被処理基板200を成膜装置100の反応容器101内部に搬送して、所定の位置に配置する。
成膜装置100の第1のキャリア138および第2のキャリアに被処理基板200が装着されると、基板搬送装置105は、移動操作機構141の動作によって、各キャリア138を反応空間101aの下方に移動操作する。これにより、被処理基板200を成膜装置100の内部に搬送して配置する。
【0057】
次に、反応容器101内部を減圧する。第1のゲートバルブ130〜第3のゲートバルブ132を開き、ガス排気手段103、104が備える各真空ポンプの動作により、反応容器101内および基板搬入室136内を減圧状態とする。
次に、各ガス流入管121、122、123、124の各ガス放出口126aからハロゲンを含むガスを放出させる。ハロゲンを含むガスは、被処理基板200の表面付近で、被処理基板200の外周部から中央に向かって流れるため、その流れが、それぞれ、対向するガス放出口126aから放出される混合ガスの流れによって打ち消される。
次に、第1のゲートバルブ130と第2のゲートバルブ131を制御し、第1の排気口111から排出されるガスの流量を所定の流量に調整する。これにより、反応後のガスは、上部のガス排気手段103によって、反応容器101の上方から円滑に排気されるため、排気されるガスの流れにより、反応性プラズマ空間101aが特定方向に流されることが少ない。これにより、各被処理基板200と反応性プラズマとの間にガスが流れ込み、その箇所に非プラズマ空間が形成されることが抑えられる。
【0058】
この状態で、第1のカソード113〜第4のカソードに高周波やマイクロ波を印加する。これにより、各カソードに対応する反応空間101aにおいて、ハロゲンを含むガスがハロゲンイオンを含む反応性プラズマを発生させるとともに、この反応性プラズマ中に不活性ガスのイオンを生成する。
このとき、上記のハロゲンを含むガスの流れによって、各電極ユニットU1、U2と被処理基板200との間の反応空間101aに形成される反応性プラズマがかく乱されることが抑えられ、各電極ユニットU1、U2と被処理基板200との間の反応空間101aに形成される反応性プラズマ(空間)が安定する。
【0059】
このハロゲンイオンを含む反応性プラズマに、レジストパターンにより露出された磁性層3をさらすことにより、露出部分のみを改質して非磁性化層4として磁気記録層7を形成する。
このように、本願発明は磁気記録パターンを構成する周囲の磁性層3を反応性プラズマもしくは反応性プラズマ中のイオン化した成分にさらし、該箇所の磁性層3を非晶質化して製造する。
磁性層3を反応性イオン等にさらした場合、該箇所には磁性合金のイオン化物が形成する。例えば、特許文献7に記載されたように、Co系磁性合金をフッ素イオンプラズマにさらした場合、Co系磁性合金はフッ化コバルトとなり非磁性となる。すなわち、反応性プラズマに含まれるイオンは反応性が高いため、容易に磁性合金等と反応するからである。
なお、本願発明の磁気記録媒体の製造方法では、反応性イオン等にさらした磁性層3を、磁性合金とイオンとを反応させ、その反応物により磁性合金を非磁性化するのではなく、磁性合金を非晶質化して非磁性化する。そのため、磁性層3を非磁性化するために用いたイオンが、磁気記録パターンを構成する周囲の磁性合金に徐々に拡散し、該箇所の磁気特性を経時的に低下させることを防ぐことができる。
【0060】
磁性合金と反応性プラズマとを反応させ、該箇所の磁性合金を非晶質化する方法としては、磁性合金に反応性プラズマ中のイオンを衝突させて、該箇所の構造を物理的に壊す方法を用いることができる。また、磁性合金と反応性プラズマ中のイオンとを反応させ、磁性合金のイオン化物を生成させ、その後、磁性合金のイオン化による化合物のみを脱離させる方法が考えられる。
例えば、Co系磁性合金を反応性フッ素イオンにさらして非磁性のフッ化コバルトを形成した後、このフッ化コバルトを加熱してフッ素のみを脱離させ、結晶構造が壊れた非晶質状態のCo系合金を形成させる方法がある。このような非晶質状態の磁性合金の製造条件は、磁性合金の組成、反応性プラズマに含まれるイオンの種類、反応圧力、反応時間、温度等を適宜設定することにより定めることができる。
【0061】
なお、本願発明者の研究によると、磁性層3を、ハロゲンイオンを含む反応性プラズマにより改質するに際し、磁性合金のハロゲン化またはアモルファス化を制御する下記の構成要件があり、所望の改質を行うためにこれらを用いた。
1)基板にバイアス電圧を印加すると非晶質化が進行しやすくなる。これは、磁性層3において、ハロゲンイオンによるハロゲン化反応に比べ、イオンの衝撃による結晶構造の破壊が進行しやすくなるためと考えられる。
2)反応性プラズマ中のハロゲンがラジカル状態の場合は磁性粒のハロゲン化が進行しやすく、イオン状態の場合は磁性粒の非晶質化が進行しやすい。これはハロゲンが有する反応性に差が生ずるためと考えられる。
3)ハロゲンを含むガスにCFを用いると磁性粒のハロゲン化が進行しやすく、SFを用いると非晶質化が進行しやすい。これはハロゲン化ガスの特質によるものと考えられる。
4)反応性プラズマに酸素を加えると磁性粒の非晶質化が進行しやすい。磁性粒子のハロゲン化より酸化の方が進行し易いためと考えられる。
5)磁性層3が、粒界に酸化物を有するグラニュラ構造の場合は、ハロゲンイオンによる反応が酸化物から進行するため、磁性粒子のハロゲン化が進行しにくくなる。
【0062】
各被処理基板200の両面において、所定の非磁性化層4からなる磁気的パターンを形成し、磁気記録層7を形成したところで改質終了とする。
このようにして形成された磁気記録層7は、非磁性化層4が均一に形成されていることにより、面方向において一様な磁気的パターンを形成し、安定な記録再生特性を得ることができる。
【0063】
上記の改質工程においては、磁性層3を改質させた後に生ずる排ガスを、上部のガス排気手段103からを主体として排気することが好ましく、上部のガス排気手段103からのみ排気することがより好ましい。すなわち、下部のガス排気手段104は上部のガス排気手段103からの排気量に比べて低い割合で排気することが好ましく、下部のガス排気手段104を用いないことがより好ましい。
これにより、磁性層3を改質させた後に生ずる排ガスの流れは、上部のガス排気手段103の方向へ排気される一方方向を主体とする排気となり、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、下部側に配置されたキャリア搬送装置137のベアリングなどの部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁気記録媒体を製造することができる。
また、これにより、改質速度を高めるとともに、各被処理基板200の磁性層3の改質の均一性を高めることができる。すなわち、改質の均一性の高い磁気記録層7を、高速で形成することができる。
【0064】
なお、磁性層3の表面を部分的に反応性プラズマにさらして該箇所の磁性層3の磁気特性を改質する改質工程が、酸素を含有する反応性プラズマに磁性層3をさらした後、ハロゲンを含有する反応性プラズマに磁性層3をさらす工程を有することがより好ましい。
ハロゲンを含有する反応性プラズマに磁性層3をさらす工程の前に、酸素を含有する反応性プラズマに磁性層3をさらす工程を採用することにより、磁性層3の磁気特性の改質速度を高め、また、磁性層3の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となる。
すなわち、酸素含有プラズマに磁性層3をさらすことにより、磁性粒子の粒界部分が優先的に酸化し、その酸化領域が粒界に沿って膜厚方向に進行させることができ、その後、ハロゲン含有プラズマに磁性層3をさらすと、その磁性粒子の粒界における酸化領域が優先的にハロゲンと反応して該箇所の結晶構造を破壊し、その反応領域が粒界から磁性粒子に向けて進行するためである。
これにより、単に磁性層3を酸素プラズマやハロゲンプラズマにさらした場合に比べ、磁性層3の磁気特性の改質が高速となり、また、磁性粒子とハロゲンとの反応も効率良く進行するため、磁性層3の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となるのである。
【0065】
なお、被処理基板200の少なくとも一方の表面に、磁気的に分離した磁気記録パターンを有するように、磁気記録パターン部を磁気的に分離する領域を、すでに成膜した磁性層3を反応性プラズマもしくは反応性プラズマ中のイオン化した成分にさらし、該箇所の磁性層3を非晶質化してもよい。
このように、本願発明の磁気記録媒体の製造方法は、イオンミリングなどによる磁気記録層を物理的に削り込むことにより、磁気記録パターン部を磁気的に分離する従来の製造方法のように、ダスト発生がないので、イオンを注入する等のダメージを磁気記録層7に与えない。
【0066】
<レジスト除去>
改質工程の完了後、被処理基板200を取り出し、レジストを除去する。
反応性プラズマ処理を行った後のレジストの除去は、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、湿式エッチング等の手法を用いることができる。
レジストを除去した後、保護膜を形成する。保護膜5の形成は、一般に、Diamond Like Carbonからなる薄膜をP−CVD法などを用いて成膜する方法が用いられるが、特に限定されるものではない。保護膜5の上には潤滑層を形成する。このようにして、磁気記録媒体30を製造する。
【0067】
<保護層上へのレジストパターン形成>
なお、磁性層3の上にレジストパターンを形成する例を説明したが、磁性層3の上に保護層5を形成し、その表面に、磁気記録パターンに合致させたレジストパターンを形成し、その後、反応性プラズマによる磁性層3の改質処理を行う工程を採用することもできる。
なお、この際、磁性層3もしくは磁性層3に続いて製膜される保護膜5にレジストを塗布し、その上から直接スタンパーを密着させ、高圧でプレスすることにより、レジストパターンを形成してもよい。
この工程を採用することにより、反応性プラズマ処理の後に保護膜5を形成する必要がなくなり、製造工程が簡便になり、生産性の向上および磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果が得られる。
本願発明者らは、磁性層3の表面に保護膜5を形成した後においても、磁性層3と反応性プラズマとの反応を生じさせることが可能であることを実験により確認している。
保護膜5で覆われているはずの磁性層3において反応性プラズマとの反応が生じている理由は、本願発明者らの考えによると、保護膜5に空隙等が存在し、その空隙からプラズマ中の反応性イオンが侵入し、反応性イオンが磁性金属と反応することがある。また、保護膜中を反応性イオンが拡散し、反応性イオンが磁性層3まで到達することも考えられる。
【0068】
<イオン注入する工程>
さらにまた、磁性層3の表面を部分的に反応性プラズマにさらす改質工程の前に、磁性層3の表面に、部分的にイオン注入する工程を設けることが好ましい。
この工程を設けることにより、磁性層3の磁気特性の改質をさらに高速に行うことが可能となる。その理由は、本願発明者らの研究によると、磁性層3の表面に部分的にイオン注入することにより、磁性層3の表面が活性となり、その後に行う反応性プラズマに磁性層3をさらす工程において、磁性層3とプラズマとの反応性がより高まるためである。
磁性層3に注入するイオンとして、アルゴンまたは窒素等の不活性のイオンを用いることが好ましい。このような不活性なイオンは、改質工程での磁性層3と反応性プラズマとの反応に悪影響することが少ないからである。
【0069】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、改質工程において、磁性層3を部分的に改質した後に生ずる排ガスを、上部のガス排気手段103から排気させる構成なので、磁性層3を改質させた後に生ずる排ガスの流れを、上部のガス排気手段103の一方方向とすることができ、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、下部側に配置されたキャリア搬送装置137のベアリングなどの部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁気記録媒体30を製造することができる。
【0070】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、内周壁126cに沿って複数のガス放出口126aが設けられた環状のガス流入管126を、基板200と電極面113a、115aとの間に配置して、複数のガス放出口126aから前記ハロゲンを含むガスを放出させることにより、基板200の外周部200bから中央部200aに向けて流れるように供給する構成なので、磁性層3の改質を速やかに行うことができる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、ハロゲンイオンが、CF、SF、CHF、CCl、KBrからなる群から選ばれた何れか1種以上のハロゲン化ガスを反応性プラズマ中に導入して形成したハロゲンイオンである構成なので、磁性層3の磁気特性の改質をより高い効率で実現することが可能となる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、ハロゲンイオンが、Fイオンである構成なので、清浄化した磁性層3表面とハロゲン原子とを高い効率で反応させることができ、磁性層3の磁気特性の改質をより高い効率で実現することが可能となる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、磁性層3でハロゲンイオンにさらした箇所が、磁性層3を構成する物質のハロゲン化物を実質的に含まない構成なので、本媒体に磁気記録を行う際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体30を提供することが可能となる。
【0071】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、磁性層3の表面にレジストパターンを形成した後、レジストパターンで覆われていない箇所を反応性プラズマにさらすことにより該箇所の磁気特性を改質して、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する構成なので、高精細な磁気記録パターンを形成することができる。
【0072】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、反応性プラズマにさらして改質した磁性層3の磁化量を、当初の75%以下とする構成なので、本媒体に磁気記録を行う際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体30を提供することが可能となる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、反応性プラズマにさらして改質した磁性層3の磁化量を、当初の50%以下とする構成なので、本媒体に磁気記録を行う際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体30を提供することが可能となる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、反応性プラズマが、酸素ガスを導入して生成した酸素イオンを含有する構成なので、酸化部分の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となるため、短時間の反応性プラズマ処理により、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体30を製造することが可能となる。また、反応性プラズマ中に酸素原子を含有させることにより磁性層3の非晶質化を促進することが可能となる。
【0073】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、改質工程が、酸素を含有させた反応性プラズマに磁性層3をさらした後、ハロゲンを含有させた反応性プラズマに磁性層3をさらす工程を有する構成なので、磁性層3の磁気特性の改質速度を高め、また、磁性層3の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となる。
【0074】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、磁性層3の表面に部分的にイオン注入を行う構成なので、磁性層3の表面が活性となり、その後に行う反応性プラズマに磁性層3をさらす工程において、磁性層3とプラズマとの反応性がより高めて、磁性層3の磁気特性の改質をさらに高速に行うことが可能となる。
【0075】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、イオン注入で注入するイオンがアルゴンまたは窒素である構成なので、磁性層3の磁気特性の改質をさらに高速に行うことが可能となる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、磁性層3の上に保護層5を形成した後に保護層5の上にレジストパターンを形成する構成なので、反応性プラズマ処理の後に保護膜5を形成する必要がなくなり、製造工程が簡便になり、生産性の向上および磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果が得られる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、磁気記録パターンが垂直磁気記録パターンである構成なので、より高い記録密度を実現することができる。
【0076】
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、ガス排気手段103、104のいずれかが、油を使用しないターボ分子ポンプを備える構成なので、反応容器101内のガスを効率よく排気して、清浄度が高く、高い真空度が得ることができる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体の製造方法は、ガス排気手段103、104のいずれかが、クライオポンプを備える構成なので、反応容器101内のガスを効率よく排気して、高い真空度が得ることができる。
本発明の実施形態である磁気記録媒体30は、よりクリーンな環境において磁気記録媒体30を製造する方法により製造される構成なので、不純物ガスや製造ゴミなどによる不良の影響を排した磁気記録媒体30とすることができる。
本発明の実施形態である磁気記録再生装置300は、先に記載の磁気記録媒体30と、該磁気記録媒体30を記録方向に駆動する駆動部11と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド27と、磁気ヘッド27を磁気記録媒体30に対して相対運動させる手段であるヘッド駆動部28と、磁気ヘッド27への信号入力と磁気ヘッド27からの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせた記録再生信号系29とを具備してなる構成なので、記録密度の高い磁気記録再生装置300を構成することが可能となる。また、十分な再生出力と高いSNRを得ることができる。
【0077】
本発明の実施形態である成膜装置100は、反応容器101と、反応容器101の上部および下部にそれぞれ備えられたガス排気手段103、104と、反応容器101の下部側に備えられ、基板200を内部に出し入れ自在とする基板搬送装置105と、反応容器101の内部に電極面113a、115aが対向するように配置された一対のプラズマ発生電極ユニットU1、U2と、電極面113a、115aの間に基板200がその両面を電極面113a、115aと対向するように配置された場合に、基板200と電極面113a、115aとの間に、内周壁126cに沿って設けられた複数のガス放出口126aが基板200の周囲側から中心側に向かってハロゲンを含むガスを供給自在とするように配置された一対の環状のガス流入管126と、を有し、反応性プラズマによる改質反応中または改質反応後の排ガスを上部のガス排気手段103を主体として排出自在としてなる構成なので、磁性層3を改質させた後に生ずる排ガスの流れを、上部のガス排気手段103の方向の一方方向とすることができ、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたプロセスを行った場合でも、下部側に配置されたキャリア搬送装置137のベアリングなどの部品の表面を腐食させることなく、クリーンな状態で磁性層3の改質を速やかに行うことができる。
【0078】
本発明の実施形態である成膜装置100は、ガス流入管121〜124により、基板200と電極面113a、115aとの間に、ハロゲンを含むガスが供給自在とされ、基板200と電極面113a、115aとの間に、酸素ラジカル、酸素イオン、または、酸素原子のいずれかを含む反応性プラズマが生成される構成なので、磁性層3の改質を速やかに行うことができる。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10−5Pa以下に真空排気した。ここで使用したガラス基板はLiSi、Al−KO、Al−KO、MgO−P、Sb−ZnOを構成成分とする結晶化ガラスを材質とし、外径65mm、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)は2オングストローム(単位:Å、0.2nm)である。
【0080】
該ガラス基板にDCスパッタリング法を用いて、軟磁性層としてFeCoB、中間層としてRu、磁性層として70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金、P−CVD法を用いてC(カーボン)保護膜、フッ素系潤滑膜の順に薄膜を積層した。それぞれの層の膜厚は、FeCoB軟磁性層は600Å、Ru中間層は100Å、磁性層は150Å、C(カーボン)保護膜は平均4nmとした。
この表面にUV硬化性樹脂を200nmの厚さで塗布し、この上に、あらかじめ用意していたNi製スタンパーを用いてインプリントを施した。スタンパーはトラックピッチが100nm、溝の深さは20nmとした。このスタンパーを使用して保護膜上のUV硬化性樹脂に対してインプリントを実施した。
【0081】
この表面を反応性プラズマにさらして、UV硬化性樹脂で覆われていない箇所の磁性層の改質を行った。磁性層の反応性プラズマ処理は、アルバック社の誘導結合プラズマ装置NE550を用いた。プラズマの発生に用いるガスおよび条件としては、たとえばCFを10cc/分、Oを90cc/分を用い、プラズマ発生のための投入電力は200W、装置内の圧力は0.5Paとし、基板バイアス200Wにて磁気記録媒体の表面を60秒間処理した。
このとき、磁性層を改質させた後に生ずる排ガスを、上部のガス排気手段からのみ排気し、下部のガス排気手段は用いなかった。これにより、磁性層3を改質させた後に生ずる排ガスの流れは、上部のガス排気手段の方向へ排気される一方方向のみの排気とすることができ、ハロゲンのような反応性の高いガスを用いたが、下部側に配置されたキャリア搬送装置のベアリングなどの部品の表面を腐食させることはなかった。
また、反応性プラズマ処理を行った箇所の磁性膜をX線回折法により調べたところ、Coに起因するシグナルは消失し、一方でフッ化コバルトに起因するシグナルは観察されず、該箇所は非晶質構造となったことが確認された。
本実施例の製造方法を示す模式図を図6、製造条件を表1に示す。
【0082】
その後、磁気記録媒体表面のレジストをドライエッチングにより除去し、その表面にカーボン保護膜を成膜し、最後にフッ素系潤滑膜を塗布し、磁気記録媒体の製造を完了した。
(実施例2〜22)
実施例1と同様に磁気記録媒体を製造した。この際、反応性プラズマに用いるガス種、投入電力、反応圧力、反応時間を表1に示すように変化させた。実施例2〜22において、反応性プラズマ処理を行った箇所の磁性膜をX線回折法により調べたところ、Coに起因するシグナルは消失し、一方でフッ化コバルトに起因するシグナルは観察されず、実施例2〜22の全ての実施例において、該箇所は非晶質構造となったことが確認された。また、いずれの場合も、下部側に配置されたキャリア搬送装置のベアリングなどの部品の表面を腐食させることはなかった。
【0083】
(比較例1)
実施例1と同様の条件で磁気記録媒体を製造したが、磁性層の反応性プラズマ処理に際して、基板にバイアス電圧を印加せず、また、プラズマガスに酸素を添加しなかった。また、表面処理の際、磁性層を改質させた後に生ずる排ガスを、上部および下部のガス排気手段から排気した。これにより、下部側に配置されたキャリア搬送装置のベアリングなどの部品の表面の一部が腐食した。
製造した磁気記録媒体について、反応性プラズマ処理を行った箇所の磁性膜をX線回折法により調べたところ、Coに起因するシグナルは消失し、一方でフッ化コバルトに起因するシグナルが観察された。またCoの非晶質化に起因するブロードなシグナルは観察されなかった。
【0084】
以上の方法で製造した実施例1〜22の磁気記録媒体の磁化減少量、保磁力減少量、電磁変換特性(SNRおよび3T−squash)、表面粗さ(Ra)、ヘッド浮上高さ(グライドアバランチ)を測定した。
電磁変換特性の評価はスピンスタンドを用いて実施した。このとき評価用のヘッドには、記録には垂直記録ヘッド、読み込みにはTuMRヘッドを用いて、750kFCIの信号を記録したときのSNR値および3T−squashを測定した。図7に実施例1に示した磁気記録媒体の反応性プラズマによる処理前後の磁化量の変化を示す。また、表1に実施例1〜22の評価結果を示す。
【0085】
製造された磁気記録媒体は、SNRや3T−squashといったRW特性に優れ、また、ヘッド浮上特性も安定していた。すなわち、磁気記録媒体表面の平滑性が高く、磁性層のトラック間の非磁性部による分離特性が優れていた。
【0086】
(磁気記録媒体の電磁変換特性の経時変化評価)
実施例1および比較例で製造した磁気記録媒体を80℃、湿度80%の環境下のオーブンに720時間保持した前後の、SNRと保磁力の変化を調べた。
SNRの評価は、GUZIK社製リードライトアナライザRWA1632、およびスピンスタンドS1701MPを用い、書き込み部にシールディッドタイプヘッド、再生部にGMR素子を用いた磁気ヘッドを使用し、Sp−pを160kFCIの、Nを960kFCIでのrms値(root mean square−inches)である。その結果、実施例1および比較例1の磁気記録媒体は、経時変化評価前では、SNR、保磁力共に遜色がなかったが、経時変化評価後において、実施例1の磁気記録媒体のSNRは0.1%、保磁力は1%低下するにとどまったが、比較例1で製造した磁気記録媒体はSNRが0.4%、保磁力が8%低下した。
【0087】
【表1】

【0088】
(試験例1)
磁性合金と反応性プラズマ中のイオンとを反応させ、磁性合金のイオン化物を生成させた後、前記磁性合金のイオン化物からイオンを脱離させ、磁性合金を非晶質化する方法の検討を行った。
磁性合金としては、70Co−5Cr−15Pt−10SiOからなるCo系磁性合金を用い、反応性プラズマ中のイオンとしては、CFからなる反応性フッ素イオンを用いた。これにより、非晶質状態のCo系合金を形成した。
【0089】
図8は、70Co−5Cr−15Pt−10SiO磁性合金と、CFを用いて発生させた反応性プラズマとの反応生成物のX線回折結果である。図8でX線回折スペクトル(a)は、反応性プラズマとの反応前の磁性膜の回折結果である。図8中、回折角42度付近にある大きなシグナルは磁性膜の下にあるRu中間層の回折ピーク、43度付近にあるシグナルは磁性合金中のCoの回折ピークである。
【0090】
X線回折スペクトル(b)は、この磁性膜をフッ素イオンを含む反応性プラズマに60秒間さらした結果である。処理条件は、CFを10cc/分、Oを90cc/分を用い、プラズマ発生のための投入電力は200W、装置内の圧力は0.5Paとし、基板バイアスを200Wとした。なお、処理時の基板温度は約150℃である。この反応により43度付近のピークは消失したが、フッ化コバルトに起因するピークは現れていない。また、42度付近のRu中間層のピークはそのままである。この結果は、Co系磁性合金が結晶性を失い非晶質化したことを示した。
【0091】
さらに、X線回折スペクトル(c)はX線回折スペクトル(a)の磁性膜をフッ素イオンを含む反応性プラズマにさらした場合であるが、X線回折スペクトル(b)での条件に対し、基板バイアスを印加せず、また、処理ガスに酸素を添加せずにCFのみを用いて処理した場合である。この場合、43度付近のピークは消失し、42度付近のRu中間層のピークはそのままであるが、35度、41度、44度付近にフッ化コバルトに起因するピークが現れた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の磁気記録再生装置の構成を説明する図である。
【図3】本発明の磁性層の形成方法で用いられる成膜装置の一例を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す成膜装置の右側面略図である。
【図5】図3に示す成膜装置が備えるガス流入管の一例を示す側面図である。
【図6】本発明の磁気記録媒体の製造方法を示す模式図である。
【図7】実施例1に示した磁気記録媒体の反応性プラズマによる処理前後の磁化量の変化を示す。
【図8】磁性層を反応性プラズマで処理した前後のX線回折結果を示す図である。回折スペクトル線aは反応性プラズマで処理する前のシグナル、回折スペクトル線bおよび回折スペクトル線cは反応性プラズマで処理した後のシグナルである。回折スペクトル線bでは処理時に基板にバイアス電圧を印加し、また、プラズマに酸素を添加した。
【符号の説明】
【0093】
1…非磁性基板、2…軟磁性層および中間層、3…磁性層、4…非磁性化層、5…保護層、7…磁気記録層、11…媒体駆動部、27…磁気ヘッド、28…ヘッド駆動部、29…記録再生信号系、30…磁気記録媒体、100…成膜装置、101…反応容器、101a…反応空間、102…ガス供給手段、103…第1の排気手段(上部の排気手段)、104…第2の排気手段(下部の排気手段)、105…基板搬送装置、106〜109…側壁、111…第1の排気口、112…第2の排気口、113…第1のカソード、113a…電極面、115…第3のカソード、115a…電極面、116…窓部、121〜124…第1〜第4のガス流入管、125…直管部、126…環状部、126a…ガス放出口、126c…内周壁、127、128、129…真空ポンプ、134…第1の排気管、135…第2の排気管、136…基板搬入室、137…キャリア搬送装置、138…第1のキャリア、140…キャリア保持部、141…移動操作機構、150…磁石、200…被処理基板(基板)、200a…中央部、200b…外周部、300…磁気記録再生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部および下部にそれぞれガス排気手段を備え、下部側に基板搬送装置が備えられた反応容器の内部に、前記基板搬送装置により磁性層を形成した基板を搬入して、前記反応容器の内部に配置された一対のプラズマ発生電極ユニットの間に前記基板を配置した後、
ハロゲンを含むガスを供給して、発生させたハロゲンイオンを含む反応性プラズマもしくは前記反応性プラズマ中に生成した反応性イオンに、前記磁性層の表面を部分的にさらして該箇所の磁性層を改質することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する改質工程を有する磁気記録媒体の製造方法であって、
前記改質工程において、前記磁性層を部分的に改質した後に生ずる排ガスを、前記上部のガス排気手段から排気させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
内周壁に沿って複数のガス放出口が設けられた環状のガス流入管を、前記基板と前記電極面との間に配置して、前記複数のガス放出口から前記ハロゲンを含むガスを放出させることにより、前記基板の外周部から中央部に向けて流れるように供給することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲンイオンが、CF、SF、CHF、CCl、KBrからなる群から選ばれた何れか1種以上のハロゲン化ガスを反応性プラズマ中に導入して形成したハロゲンイオンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲンイオンが、Fイオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記磁性層で前記ハロゲンイオンにさらした箇所が、前記磁性層を構成する物質のハロゲン化物を実質的に含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記磁性層の表面にレジストパターンを形成した後、前記レジストパターンで覆われていない箇所を前記反応性プラズマにさらすことにより該箇所の磁気特性を改質して、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記反応性プラズマにさらして改質した磁性層の磁化量を、当初の75%以下とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記反応性プラズマにさらして改質した磁性層の磁化量を、当初の50%以下とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記反応性プラズマが、酸素ガスを導入して生成した酸素イオンを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記改質工程が、酸素を含有させた前記反応性プラズマに前記磁性層をさらした後、ハロゲンを含有させた前記反応性プラズマに前記磁性層をさらす工程を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
前記磁性層の表面に部分的にイオン注入を行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
前記イオン注入で注入するイオンがアルゴンまたは窒素であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項13】
前記磁性層の上に保護層を形成した後に前記保護層の上にレジストパターンを形成することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
前記磁気記録パターンが垂直磁気記録パターンであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
前記ガス排気手段のいずれかが、ターボ分子ポンプを備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項16】
前記ガス排気手段のいずれかが、クライオポンプを備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法により製造されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項18】
請求項17に記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせて具備してなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項19】
反応容器と、前記反応容器の上部および下部にそれぞれ備えられたガス排気手段と、
前記反応容器の下部側に備えられ、基板を内部に出し入れ自在とする基板搬送装置と、
前記反応容器の内部に電極面が対向するように配置された一対のプラズマ発生電極ユニットと、
前記電極面の間に前記基板がその両面を前記電極面と対向するように配置された場合に、前記基板と前記電極面との間に、内周壁に円周に沿って設けられた複数のガス放出口が前記基板の周囲側から中心側に向かってハロゲンを含むガスを供給自在とするように配置された一対の環状のガス流入管と、を有し、反応性プラズマによる改質反応中または改質反応後の排ガスを上部のガス排気手段を主体として排出自在としてなることを特徴とする成膜装置。
【請求項20】
前記ガス流入管により、前記基板と前記電極面との間に、ハロゲンを含むガスが供給自在とされ、前記基板と前記電極面との間に、酸素ラジカル、酸素イオン、または、酸素原子のいずれかを含む反応性プラズマが生成されることを特徴とする請求項19に記載の成膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−295260(P2009−295260A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151031(P2008−151031)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】