説明

磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置

【課題】マスター情報担体の繰り返し転写できる使用可能回数を向上させることのできる磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】非磁性基板1の上に、少なくとも、軟磁性下地層2と、直上の層の配向性を制御する配向制御層3と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して垂直に配向した垂直磁性層4とを、この順で形成する磁気記録媒体の製造方法であって、CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって、第1配向制御層3aを成膜する第1成膜工程と、第1配向制御層3a上に、スパッタリング法を用いて、RuまたはRu合金からなる第2配向制御層3bを成膜する第2成膜工程とを行うことにより、前記配向制御層3を形成する磁気記録媒体の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置に関し、特に、磁性膜内の磁化容易軸が非磁性基板に対して垂直に配向した垂直磁性層を有する磁気記録媒体の製造方法及びこの製造方法で製造した磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)は、現在その記録密度が年率50%以上増えており、今後も増加傾向が続くと言われている。ハードディスク装置の記録密度の増加に伴って、高記録密度化に適した磁気ヘッド及び磁気記録媒体の開発が進められている。
【0003】
現在市販されている磁気記録再生装置には、磁気記録媒体として、磁性膜内の磁化容易軸が垂直に配向した、いわゆる垂直磁気記録媒体が搭載されているものがある。垂直磁気記録媒体は、高記録密度化した際にも記録ビット間の境界領域における反磁界の影響が小さく、鮮明なビット境界が形成されるため、ノイズの増加が抑えられる。しかも、垂直磁気記録媒体は、高記録密度化に伴う記録ビット体積の減少が少なくて済むため、熱揺らぎ特性に優れている。
【0004】
また、磁気記録媒体の更なる高記録密度化という要望に応えるべく、磁気ヘッドとして、垂直磁性層に対する書き込み能力に優れた単磁極ヘッドを用いることが検討されている。具体的には、記録層である垂直磁性層と非磁性基板との間に、裏打ち層と称される軟磁性材料からなる層を設けることにより、単磁極ヘッドと磁気記録媒体との間における磁束の出入りの効率を向上させた磁気記録媒体が提案されている。
【0005】
また、垂直磁気記録媒体の記録再生特性および熱揺らぎ特性を向上させるために、配向制御層を用い、多層の磁性層を形成して、それぞれの磁性層の結晶粒子を連続した柱状晶とし、これにより磁性層の垂直配向性を高めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、磁気記録媒体の配向制御層(下地層)としてRuを用いること、配向制御層を2層構造とし、初期層部分は低ガス圧で形成し、表面部分は初期層部分よりも高いガス圧で成膜することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、Ruは、柱状晶の頂部にドーム状の凸部が形成されるものであるため、この凸部上に磁性層等の結晶粒子を成長させ、成長した結晶粒子の分離構造を促進し、結晶粒子を孤立化させて、磁性粒子を柱状に成長させる効果を有することが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、2層のRuを用いた配向制御層では、Ruの柱状晶の粒界に空隙(ボイド)が生じていることが報告されている。例えば、特許文献4には、RuあるいはRu合金の結晶からなる結晶粒と、結晶粒同士を互いに離間する空隙部とから構成される下地層が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−310910号公報
【特許文献2】特開2004−22138号公報
【特許文献3】特開2007−272990号公報
【特許文献4】特開2008−204539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
2層のRuを用い、Ruの柱状晶の頂部にドーム状の凸部を形成して結晶粒子の分離性を高めた配向制御層は、垂直配向性に優れたものとなる。しかし、このような配向制御層では、前述のように、柱状晶の粒界にボイドが形成されやすい。配向制御層内に形成されたボイドは、配向制御層の上に形成される磁性層等によって覆われるため、磁気記録媒体の表面に穴(ピット)を生じさせることはない。しかしながら、本願発明者が検討した結果、配向制御層内にボイドが生ずると、配向制御層の密度が低下して、磁気記録媒体の表面の耐衝撃性が低下することが明らかになった。
【0010】
一般に、ハードディスク装置内に内蔵される磁気記録媒体は、情報を記録再生させる際に高速回転される。この高速回転によって磁気記録媒体の表面には薄い空気の流れが生じ、この空気の流れによって磁気ヘッドが磁気記録媒体の表面上を浮上走行する。そのため、磁気記録媒体の高速回転時は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとは非接触状態とされ、両者が接触して磁気記録媒体が破損することは基本的には無い。したがって、磁気記録媒体の表面に耐衝撃性を求める必要性は低いとも考えられる。
【0011】
しかしながら、ハードディスク装置の使用環境によっては、動作時に外部から衝撃が加わる場合があり、高速回転する磁気記録媒体と磁気ヘッドとが偶発的に接触して、磁気記録媒体の表面が破損する場合がある。このような偶発的な接触から磁気記録媒体を保護するため、通常、磁気記録媒体の表面には硬質炭素膜からなる保護層が設けられている。しかし、磁気記録媒体の高記録密度化のために、保護層の薄膜化が求められている。このため、保護層による磁気記録媒体の保護能力の確保には限界があり、保護層を設けたとしても十分な保護能力が得られない場合があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて提案されたものであり、ボイドが少なく垂直配向性に優れた2層構造の配向制御層を形成することができ、優れた耐衝撃性を有し、高記録密度に適した磁気記録媒体の得られる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
また、上記の磁気記録媒体の製造方法により製造された磁気記録媒体を備える信頼性の高い磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために、配向制御層の材料および成膜方法について、以下に示すように、鋭意検討を行った。
すなわち、本発明者は、垂直配向性に優れた配向制御層を形成するために2層構造の配向制御層とし、2層のうちの非磁性基板側の層を、CoCr合金を含むターゲットを使用して、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法により形成することで、Ru層またはRu合金層を形成した場合と同様に、頂部にドーム状の凸部を有する柱状層を形成できることを見出した。
【0014】
さらに、本発明者は、鋭意検討を重ね、上記の方法により得られた2層のうちの非磁性基板側の層には、理由は明らかではないがボイドが発生しにくいことを見出した。さらに、この非磁性基板側の層の上に、もう1層の配向制御層として、スパッタリング法を用いて、頂部にドーム状の凸部を有する柱状晶を含むRu層またはRu合金層を形成した場合、Ru層またはRu合金層にもボイドが生じにくいことが分かった。
このように本発明者は、上記の方法により、ボイドが少なく、頂部にドーム状の凸部を有する柱状晶を含む2層構造の配向制御層を形成できることを見出し、優れた耐衝撃性および垂直配向性を有し、高記録密度に適した磁気記録媒体を製造できる本発明の製造方法を完成させた。
【0015】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1)非磁性基板の上に、少なくとも、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して垂直に配向した垂直磁性層とを、この順で形成する磁気記録媒体の製造方法であって、
CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって、第1配向制御層を成膜する第1成膜工程と、
前記第1配向制御層上に、スパッタリング法を用いて、RuまたはRu合金からなる第2配向制御層を成膜する第2成膜工程とを行うことにより、前記配向制御層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0016】
(2)前記第1成膜工程において、前記スパッタリングガスとして、不活性ガスと、前記不活性ガスの0.1体積%〜20体積%の範囲内の窒素とを含むものを用いることを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3)前記第1成膜工程において、前記スパッタリングガスの圧力を0.1Pa〜10Paの範囲内とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4)前記第2成膜工程において、前記スパッタリングガスの圧力を前記第1成膜工程以上かつ5Pa〜18Paの範囲内とすることを特徴とする(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0017】
(5)前記第1成膜工程において、核となる結晶を成長させてなり、頂部にドーム状の凸部を有する第1柱状晶を含む前記第1配向制御層を形成し、
前記第2成膜工程において、前記第1柱状晶の核となる結晶に厚み方向に連続し、頂部にドーム状の凸部を有する第2柱状晶を含む前記第2配向制御層を形成することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0018】
(6)前記CoCr合金が、Coを55at%〜95at%の範囲内含み、Crを45at%〜5at%の範囲内で含むものであることを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7)前記CoCr合金が、Pt、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を1at%〜10at%の範囲内で含むものであることを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0019】
(8)(1)〜(7)の何れか1項に記載の方法を用いて製造された磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって第1配向制御層を成膜し、第1配向制御層上に、スパッタリング法を用いて、RuまたはRu合金からなる第2配向制御層を成膜することにより配向制御層を形成するので、頂部にドーム状の凸部を有する柱状晶を含む優れた垂直配向性を有する配向制御層を形成でき、配向制御層上に、配向制御層に含まれる柱状晶に厚み方向に連続した柱状晶を含む垂直磁性層を形成でき、高記録密度に適した磁気記録媒体が得られる。
【0021】
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、ボイドの少ない第1配向制御層が形成されるので、第1配向制御層上にボイドの少ない第2配向制御層が形成され、全体としてボイドの含有量が極めて少ない配向制御層が形成される。その結果、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、優れた耐衝撃性を有する磁気記録媒体が得られる。
また、本発明の磁気記録再生装置は、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造された磁気記録媒体を備えるものであるので、信頼性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造された磁気記録媒体の一例を示した断面模式図である。
【図2】図2は、図1に示す磁気記録媒体における配向制御層と垂直磁性層の積層構造を説明するための拡大模式図であり、各層の柱状晶が基板面に対して垂直に成長した状態を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の磁気記録再生装置の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0024】
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、非磁性基板の上に、少なくとも、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して垂直に配向した垂直磁性層とを、この順で形成する。また、本発明の磁気記録媒体の製造方法では、第1配向制御層を成膜する第1成膜工程と、第2配向制御層を成膜する第2成膜工程とを行うことにより、配向制御層を形成する。
【0025】
以下、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例として、図1および図2に示す磁気記録媒体の製造方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造された磁気記録媒体の一例を示した断面模式図である。また、図2は、図1に示す磁気記録媒体における配向制御層と垂直磁性層の積層構造を説明するための拡大模式図であり、各層の柱状晶が基板面に対して垂直に成長した状態を示した断面図である。なお、図2においては、配向制御層3を構成する第1配向制御層3aおよび第2配向制御層3bと垂直磁性層4以外の部材の記載を省略して示している。図1では、第2配向制御層3bと垂直磁性層4との間に非磁性下地層8を設けているが、この非磁性下地層8も基板面に対して垂直に成長した柱状晶によって構成され、この柱状晶は第2配向制御層3b、垂直磁性層4の柱状晶と連続して形成される。
【0026】
図1に示す磁気記録媒体は、非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2と、配向制御層3と、非磁性下地層8と、垂直磁性層4と、非磁性層7と、保護層5と、潤滑層6とが積層された構造を有している。
【0027】
「非磁性基板」
非磁性基板1としては、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよいし、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、非磁性基板1としては、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタ法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いてもよい。
【0028】
ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどを用いることができる。アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラスや、アルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラスなどを用いることができる。
セラミック基板としては、例えば、汎用の酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体、又はこれらの繊維強化物などを用いることができる。
【0029】
非磁性基板1は、平均表面粗さ(Ra)が2nm(20Å)以下、好ましくは1nm以下であることが、配向制御層3の表面のドーム形状が均一となり、またその頂部の高さ分布が低減し、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。
また、非磁性基板1は、表面の微小うねり(Wa)が0.3nm以下(より好ましくは0.25nm以下)であることが、配向制御層3の表面のドーム形状頂部の高さ分布を低減し、磁気ヘッドを低浮上させた高記録密度記録に適している点から好ましい。なお、微少うねり(Wa)は、例えば、表面荒粗さ測定装置P−12(KLM−Tencor社製)を用い、測定範囲80μmでの表面平均粗さとして測定することができる。
また、非磁性基板1は、端面のチャンファー部の面取り部と側面部との少なくとも一方の表面平均粗さ(Ra)が10nm以下(より好ましくは9.5nm以下)のものを用いることが、磁気ヘッドの飛行安定性にとって好ましい。
【0030】
また、非磁性基板1は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層2と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。このため、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設けることが好ましい。密着層を設けることにより、腐食を抑制できる。密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(30Å)以上であることが好ましい。
【0031】
「軟磁性下地層」
図1に示す磁気記録媒体を製造するには、上記の非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2を形成する。軟磁性下地層2の形成方法は特に限られるものではなく、例えば、スパッタリング法などを用いることができる。なお、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設ける場合には、軟磁性下地層2を形成する前に、例えば、スパッタリング法などを用いて密着層を形成する。
【0032】
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするとともに、垂直磁性層4の磁化の方向を非磁性基板1に垂直な方向により強固に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
【0033】
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含む軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど)、FeMg系合金(FeMgOなど)、FeZr系合金(FeZrNなど)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
【0034】
また、軟磁性下地層2としては、Feを60at%(原子%)以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrN等の微結晶構造、又は微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることができる。
その他にも、軟磁性下地層2としては、Coを80at%以上含有し、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo等のうち少なくとも1種を含有し、アモルファス構造を有するCo合金を用いることができる。この具体的な材料としては、例えば、CoZr、CoZrNb、CoZrTa、CoZrCr、CoZrMo系合金などを好適なものとして挙げることができる。
【0035】
軟磁性下地層2の保磁力Hcは、100(Oe)以下(好ましくは20(Oe)以下)とすることが好ましい。なお、1Oeは79A/mである。軟磁性下地層2の保磁力Hcが上記範囲を超えると、軟磁気特性が不十分となり、再生波形がいわゆる矩形波から歪みをもった波形になるため好ましくない。
軟磁性下地層2の飽和磁束密度Bsは、0.6T以上(好ましくは1T以上)とすることが好ましい。軟磁性下地層2のBsが上記範囲未満であると、再生波形がいわゆる矩形波から歪みをもった波形になるため好ましくない。
また、軟磁性下地層2の飽和磁束密度Bs(T)と軟磁性下地層2の層厚t(nm)との積Bs・t(T・nm)は、15(T・nm)以上(好ましくは25(T・nm)以上)であることが好ましい。軟磁性下地層2のBs・tが上記範囲未満であると、再生波形が歪みを持つようになり、OW(OverWrite)特性(記録特性)が悪化するため好ましくない。
【0036】
軟磁性下地層2は、2層の軟磁性膜から構成されていることが好ましく、2層の軟磁性膜の間にはRu膜が設けられていることが好ましい。Ru膜の膜厚を0.4〜1.0nm、又は1.6〜2.6nmの範囲で調整することで、2層の軟磁性膜をAFC(反強磁性交換結合)構造とすることができる。軟磁性下地層2が、このようなAFC構造を採用したものである場合、いわゆるスパイクノイズを抑制できる。
【0037】
軟磁性下地層2の最表面(配向制御層3側の面)は、磁性下地層2を構成する材料が、部分的又は完全に酸化されていることが好ましい。例えば、軟磁性下地層2の表面及びその近傍に、軟磁性下地層2を構成する材料が部分的に酸化されるか、若しくは上記材料の酸化物を形成して配されていることが好ましい。これにより、軟磁性下地層2の表面の磁気的な揺らぎを抑えることができ、磁気的な揺らぎに起因するノイズを低減して、磁気記録媒体の記録再生特性を改善できる。
【0038】
「配向制御層」
次に、図2に示すように、軟磁性下地層2の上に配向制御層3を形成する。配向制御層3は、直上の層である垂直磁性層4の配向性を制御するものであり、垂直磁性層4の結晶粒を微細化し、記録再生特性を改善するものである。配向制御層3は、以下に示すように、第1配向制御層3aを成膜する第1成膜工程と、第1配向制御層3a上に、第2配向制御層3bを成膜する第2成膜工程とを行うことにより形成される。
【0039】
(第1成膜工程)
第1成膜工程は、CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって、第1配向制御層3aを成膜する工程である。第1成膜工程においては、スパッタリングガスに窒素が含まれているので、第1配向制御層3aを成膜する際に、ターゲット表面が窒素と接触し、ターゲットに含まれるCoCr合金が窒素と反応する。また、第1配向制御層3aを成膜する際には、ターゲットがスパッタリングされて飛来するスパッタ粒子が、スパッタリングガス中の窒素と結びつく。それらの結果、第1成膜工程を行うことによって、窒素を含むCoCr合金からなり、図2に示すように、核となる結晶を成長させてなり、頂部にドーム状の凸部を有する微細な第1柱状晶S1を含み、ボイドが少ない第1配向制御層3aが形成される。
【0040】
なお、CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって成膜した膜をSIMS(二次イオン質量分析計)により分析したところ、CoCr合金中に数at%程度の濃度のNが混入された膜であることが確認された。またXPSスペクトルからはCoCr合金中にCrNの形成が確認された。これについて発明者は、本願発明の製造方法により、CoCr合金中にCrNが形成し、これによりCoCr合金が微結晶化し、ボイドの含有量が極めて少ない配向制御層が形成したものと推測している。
【0041】
第1成膜工程においては、スパッタリングガスとして、不活性ガスと、不活性ガスの0.1体積%〜20体積%の範囲内の窒素とを含むものを用いることが好ましく、不活性ガスの1体積%〜10体積%の範囲内で窒素を含むものを用いることがより好ましい。なお、スパッタリングガスに含まれる不活性ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン等を用いることができる。
また、第1成膜工程においては、スパッタリングガスの圧力を0.1Pa〜10Paの範囲内とすることが好ましく、0.5Pa〜5Paの範囲内とすることがより好ましい。
【0042】
スパッタリングガスの窒素の含有量が不活性ガスの0.1体積%未満である、および/またはスパッタリングガスの圧力が0.1Pa未満であると、CoCr合金ターゲットと窒素との反応が不十分となり、第1柱状晶S1の頂部が良好なドーム形状となりにくくなるので、第1配向制御層3aの配向性が低下し、配向制御層3による垂直磁性層4を構成する磁性粒子を微細化する効果が不十分となる恐れがある。
また、スパッタリングガスの窒素の含有量が不活性ガスの20体積%を超える、および/またはスパッタリングガスの圧力が10Paを超えると、第1配向制御層3aの結晶性が低下してS/N比が低下するとともに、第1配向制御層3a中のボイドが多くなり、磁気記録媒体の表面の耐衝撃性が不十分となる恐れがある。
【0043】
第1成膜工程において用いられるターゲットに含まれるCoCr合金は、Coを55at%〜95at%の範囲で含み、Crを45at%〜5at%の範囲で含むことが好ましい。このような組成のCoCr合金を含むターゲットを用いることにより、頂部にドーム状の凸部を有する第1柱状晶S1を容易に形成できる。また、CoCr合金に含まれるCo量を55at%以上とすることにより、十分な磁性を付与された第1配向制御層3aが得られ、磁気ヘッドと軟磁性下地層2との磁気的な結合が高く、オーバーライト特性(OW特性)の良好な磁気記録媒体が得られる。また、CoCr合金に含まれるCr量を5at%以上とすることにより、CoCr合金中にCrNを形成させCoCr合金中のボイドを低減することができる。
【0044】
また、ターゲットに含まれるCoCr合金は、Pt、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を1at%〜10at%の範囲内で含むものであることが好ましい。このことにより、第1配向制御層3aに含まれる柱状晶3aの微細化を促進することができる。その結果、第1配向制御層3aの上に形成される第2配向制御層3bと垂直磁性層4とに含まれる柱状晶S2、S3の密度を高いものとすることができ、より高密度記録に適した磁気記録媒体1が得られる。
【0045】
CoCr合金に含まれる上記元素の含有量が1at%未満であると、柱状晶3a、S2、S3の微細化を促進する効果が十分に得られない恐れがある。また、CoCr合金に含まれる上記元素の含有量が10at%を超えると、相対的にCoとCrの含有量が少なくなり、CoCr合金中にCrNを形成し難くなる。
【0046】
第1配向制御層3aの厚さは、限定されるものではないが、第1柱状晶S1の頂部を良好なドーム形状とするために5nm以上とするのが好ましい。しかし、配向制御層3が厚くなりすぎると、磁気ヘッドと軟磁性下地層2との磁気的な結合が弱くなり、OW特性が悪化する。そのため、第1配向制御層3aの厚さは、10nm〜20nmの範囲内とすることがより好ましい。
【0047】
(第2成膜工程)
第2成膜工程は、第1配向制御層3a上に、スパッタリング法を用いて、RuまたはRu合金からなる第2配向制御層3bを成膜する工程である。本実施形態では、第1成膜工程において、核となる結晶を成長させてなり、頂部にドーム状の凸部を有する微細な第1柱状晶S1を含む第1配向制御層3aを形成したので、第2成膜工程を行うことにより、図2に示すように、第1配向制御層3aの柱状晶S1の凸部上に成長され、第1配向制御層3aを構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した微細な第2柱状晶S2が成長する。したがって、第2成膜工程を行うことにより、図2に示すように、第1配向制御層3aの第1柱状晶S1の核となる結晶に厚み方向に連続し、頂部にドーム状の凸部を有する微細な第2柱状晶S2を含む第2配向制御層3bが形成される。
【0048】
また、上述したように、第1成膜工程において、ボイドの少ない第1配向制御層3aが形成されるため、第2成膜工程において、第1配向制御層3aから第2配向制御層3bに引き継がれて形成されるボイドの数が少なくなる。その結果、本実施形態の製造方法によって形成された配向制御層3は、全体としてボイドの含有量が極めて少ないものとなる。
【0049】
また、第2成膜工程においては、例えば、スパッタリングガスとして、アルゴン、ネオン、キセノン等の不活性ガスを用いる。
また、第2成膜工程においては、スパッタリングガスの圧力を第1成膜工程以上かつ5Pa〜18Paの範囲内とすることが好ましい。第2成膜工程におけるスパッタリングガスの圧力を上記範囲とすることで、より一層容易に、第1柱状晶S1の核となる結晶に厚み方向に連続し、頂部にドーム状の凸部を有する第2柱状晶S2を含む第2配向制御層3bが形成できる。
【0050】
第2成膜工程におけるスパッタリングガスの圧力が上記範囲未満であると、配向制御層3の上に成長される垂直磁性層4の結晶粒子を分離して、垂直磁性層の磁性粒子を微細化する効果が十分に得られなくなり、良好なS/N比および熱揺らぎ特性が得られない恐れがある。また、第2成膜工程におけるスパッタリングガスの圧力が上記範囲を超えると、第2配向制御層3bの硬度が不十分となるし、第1成膜工程におけるスパッタリングガスの圧力が10Paを超えた場合と同様に、第2配向制御層3bの結晶性が低下してS/N比が低下する。
【0051】
第2配向制御層3bを構成するRu合金としては、RuCo、RuFeの他、RuにSiO、Cr、TiO等の酸化物を添加したグラニュラー構造の合金がある。
【0052】
また、第2配向制御層3bの層厚は、限定されるものではないが、7nm以上であることが好ましい。第2配向制御層3bの層厚が上記範囲未満であると、配向制御層3による垂直磁性層4の配向性を高め、垂直磁性層4を構成する磁性粒子を微細化する効果が不十分となり、良好なS/N比が得られない場合がある。
【0053】
また、本実施形態においては、配向制御層3が第1配向制御層3aと第2配向制御層3bの2層からなるものである場合を例に挙げて説明したが、第1配向制御層3aと第2配向制御層3bのいずれか一方または両方が複数層からなる3層以上のものであってもよい。
ここで、本実施形態の製造方法により製造された磁気記録媒体における配向制御層を構成する結晶粒子と垂直磁性層を構成する磁性粒子との関係について図2を用いて説明する。
【0054】
図2に示すように、第1配向制御層3a上には、第1配向制御層3aを構成する柱状晶S1の頂部をドーム状の凸とする凹凸面S1aが形成されている。第1配向制御層3aの凹凸面S1a上には、凹凸面S1aから厚み方向に第2配向制御層3bを構成する結晶粒子が柱状晶S2となって成長している。また、第2配向制御層3b上には、第2配向制御層3bを構成する柱状晶S2の頂部をドーム状の凸とする凹凸面S2aが形成されている。そして、第2配向制御層3bを構成する柱状晶S2の上には、垂直磁性層4の結晶粒子が柱状晶S3となって厚み方向に成長している。本実施形態においては、第2配向制御層3bのドーム状の凸部上に垂直磁性層4の結晶粒子が成長されることにより、成長した垂直磁性層4の結晶粒子の分離が促進され、垂直磁性層4の結晶粒子が孤立化されて柱状に成長されている。
なお、前述のように、第2配向制御層3bと垂直磁性層4との間に非磁性下地層8を設けた場合も、非磁性下地層8が基板面に対して垂直に成長した柱状晶によって構成されるため、この柱状晶は第2配向制御層3bから垂直磁性層4まで連続したものとなる。
【0055】
このように、本実施形態の磁気記録媒体においては、第1配向制御層3aの柱状晶S1上に第2配向制御層3bの柱状晶S2と垂直磁性層4の柱状晶S3とが連続した柱状晶となってエピタキシャル成長されている。なお、本実施形態においては、図1に示すように、垂直磁性層4が多層化されている。多層化された垂直磁性層4の各層を構成する結晶粒子は、配向制御層3から最上層の垂直磁性層に至るまで連続した柱状晶となってエピタキシャル成長を繰り返している。
【0056】
したがって、本実施形態においては、第1配向制御層3aとして、微細化された結晶粒子からなる柱状晶S1を含むものが形成されることで、柱状晶S1の頂部から連続して厚み方向に柱状に成長する第2配向制御層3bの柱状晶S2および多層化された垂直磁性層4の柱状晶S3も微細化されている。
また、本実施形態においては、柱状晶間にボイドの少ない柱状晶S1が形成されることで、第2配向制御層3bの柱状晶S2および多層化された垂直磁性層4の柱状晶S3も、柱状晶間にボイドの少ないものが形成されている。
【0057】
「非磁性下地層」
次に、図1に示すように、配向制御層3の上に非磁性下地層8を形成する。非磁性下地層8の形成方法は特に限られるものではなく、例えば、スパッタリング法などを用いることができる。
非磁性下地層8は、配向制御層3の第1配向制御層3aおよび第2配向制御層3bの柱状晶S1,S2と連続した柱状晶として、配向制御層3の第2配向制御層3b上にエピタキシャル成長されている。
【0058】
非磁性下地層8は、配向制御層3と垂直磁性層4の間に設けられていることが好ましいが、設けられていなくてもよい。配向制御層3の直上の垂直磁性層4の初期部には、ノイズの原因となる結晶成長の乱れが生じやすい。非磁性下地層8を設けることで、ノイズの発生を抑制できる。
非磁性下地層8の厚みは、0.2nm以上3nm以下であることが好ましい。非磁性下地層8の厚さが3nmを超えると、Hc及びHnの低下が生じるために好ましくない。
【0059】
非磁性下地層8は、Crと酸化物とを含んだ材料からなるものであることが好ましい。Crの含有量は、25at%(原子%)以上50at%以下とすることが好ましい。酸化物としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましく、その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。酸化物の含有量としては、磁性粒子を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。
【0060】
また、非磁性下地層8は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。さらに、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr−SiO、CoCr−TiO−Cr、CoCr−Cr−TiO−SiOなどを好適に用いることができる。また、結晶成長の観点からPtを添加してもよい。
【0061】
「垂直磁性層」
次に、図1に示すように、非磁性下地層8の上に垂直磁性層4を形成する。垂直磁性層4の形成方法は特に限られるものではなく、例えば、スパッタリング法などを用いることができる。
垂直磁性層4は、磁化容易軸が非磁性基板1に対して垂直に配向したものである。図1に示す垂直磁性層4は、非磁性基板1側から、下層の磁性層4aと、中層の磁性層4bと、上層の磁性層4cとの3層を含むものである。
【0062】
なお、図1に示す磁気記録媒体では、下層の磁性層4aと中層の磁性層4bとの間に下層の非磁性層7aを含み、中層の磁性層4bと上層の磁性層4cとの間に上層の非磁性層7bを含むことで、これら磁性層4a〜4cと非磁性層7a,7bとが交互に積層された構造を有している。
各磁性層4a〜4c及び各非磁性層7a,7bを構成する結晶粒子は、配向制御層3の第1配向制御層3aおよび第2配向制御層3bの柱状晶と連続した柱状晶として、非磁性下地層8上にエピタキシャル成長されている。
【0063】
垂直磁性層4を構成する磁性層4aは、グラニュラー構造の磁性層であり、Co、Cr、Ptを含む磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)と、酸化物とを含むものであることが好ましい。
磁性層4a中のCrの含有量は、4at%以上19at%以下(さらに好ましくは6at%以上17at%以下)であることが好ましい。磁性層4a中のCrの含有量を上記範囲とした場合、磁性粒子の磁気異方性定数Kuを下げ過ぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られる。
【0064】
一方、磁性層4a中のCrの含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子の磁気異方性定数Kuが小さくなるため、熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性及び配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。また、Crの含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子の磁気異方性定数Kuが高くなるため、垂直保磁力が高くなり過ぎ、データを記録する際に、磁気ヘッドで十分に書き込むことができず、結果として高密度記録に適さない記録特性(OW)となるため好ましくない。
【0065】
磁性層4a中のPtの含有量は、8at%以上20at%以下であることが好ましい。Ptの含有量が8at%未満であると、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るために垂直磁性層4に必要な磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。Ptの含有量が20at%を超えると、磁性粒子の内部に積層欠陥が生じ、その結果、磁気異方性定数Kuが低くなる。また、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。したがって、高密度記録に適した熱揺らぎ特性及び記録再生特性を得るためには、磁性層4a中Ptの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0066】
磁性層4aの磁性粒子には、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素が含まれていてもよい。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
【0067】
また、磁性粒子中に含まれるCo、Cr、Ptの他の上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。上記元素の合計の含有量が8at%を超えると、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
【0068】
磁性層4aに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO){Cr含有量14at%、Pt含有量18at%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiOからなる酸化物組成が10mol%}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr)の他、(CoCrPt)−(Ta)、(CoCrPt)−(Cr)−(TiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)−(TiO)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO)、(CoCrPtB)−(Al)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y)、(CoCrPtRu)−(SiO)などの組成物を挙げることができる。
【0069】
垂直磁性層4を構成する磁性層4bも磁性層4aと同様に、グラニュラー構造の磁性層であり、Co、Cr、Ptを含む磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)と、酸化物とを含むものであることが好ましい。
【0070】
垂直磁性層4を構成する磁性層4cは、Co、Crを含む磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)を含み、酸化物を含まないものであることが好ましい。磁性層4c中の磁性粒子は、磁性層4a中の磁性粒子から柱状にエピタキシャル成長しているものであることが好ましい。この場合、磁性層4a〜4cの磁性粒子が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、磁性層4bの磁性粒子が磁性層4a中の磁性粒子からエピタキシャル成長していることで、磁性層4bの磁性粒子が微細化され、さらに結晶性及び配向性が向上したものとなる。
【0071】
磁性層4c中のCrの含有量は、10at%以上24at%以下であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲とすることで、データの再生時における出力を十分確保でき、更に良好な熱揺らぎ特性を得ることができる。一方、Crの含有量が上記範囲を超える場合、磁性層4cの磁化が小さくなり過ぎるため好ましくない。また、Cr含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子の分離及び微細化が十分に生じず、記録再生時のノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
【0072】
また、磁性層4cを構成する磁性粒子が、Co、Crの他にPtを含んだ材料である場合、磁性層4c中のPtの含有量は、8at%以上20at%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲である場合、高記録密度に適した十分な保磁力を得ることができ、更に記録再生時における高い再生出力を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性が得られる。一方、磁性層4c中のPtの含有量が上記範囲を超えると、磁性層4c中にfcc構造の相が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。また、Ptの含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られない恐れがある。
【0073】
磁性層4cを構成する磁性粒子は、非グラニュラー構造の磁性層であり、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性を得ることができる。
【0074】
また、磁性層4cの磁性粒子中に含まれるCo、Cr、Ptの他の上記元素の合計の含有量は、16at%以下であることが好ましい。上記元素の合計の含有量が16at%を超えると、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4cに適した材料としては、特に、CoCrPt系、CoCrPtB系を挙げることできる。CoCrPtB系としては、CrとBとの合計の含有量が18at%以上28at%以下であるものが好ましい。
【0075】
磁性層4cに適した材料としては、例えば、CoCrPt系では、Co14〜24Cr8〜22Pt{Cr含有量14〜24at%、Pt含有量8〜22at%、残部Co}、CoCrPtB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt0〜16B{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、B含有量0〜16at%、残部Co}が好ましい。その他の系としては、CoCrPtTa系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、Ta含有量1〜5at%、残部Co}、CoCrPtTaB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta1〜10B{Cr含有量10〜24at%、Pt含有量8〜22at%、Ta含有量1〜5at%、B含有量1〜10at%、残部Co}の他にも、CoCrPtBNd系、CoCrPtTaNd系、CoCrPtNb系、CoCrPtBW系、CoCrPtMo系、CoCrPtCuRu系、CoCrPtRe系などの材料を挙げることができる。
【0076】
垂直磁性層4の垂直保磁力(Hc)は、3000[Oe]以上とすることが好ましい。保磁力が3000[Oe]未満である場合には、記録再生特性、特に周波数特性が不良となり、また、熱揺らぎ特性も悪くなるため、高密度記録媒体として好ましくない。
垂直磁性層4の逆磁区核形成磁界(−Hn)は、1500[Oe]以上であることが好ましい。逆磁区核形成磁界(−Hn)が1500[Oe]未満である場合には、熱揺らぎ耐性に劣るため好ましくない。
【0077】
垂直磁性層4を構成する磁性粒子の平均粒径は3〜12nmであることが好ましい。磁性粒子の平均粒径は、例えば垂直磁性層4をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、観察像を画像処理することにより求めることができる。
垂直磁性層4の厚みは、5〜30nmとすることが好ましい。垂直磁性層4の厚みが上記未満であると、十分な再生出力が得られず、熱揺らぎ特性も低下する。また、垂直磁性層4の厚さが上記範囲を超えると、垂直磁性層4中の磁性粒子の肥大化が生じ、記録再生時におけるノイズが増大し、信号/ノイズ比(S/N比)や記録特性(OW)に代表される記録再生特性が悪化するため好ましくない。
【0078】
本発明では、垂直磁性層4を構成する複数の磁性層4a,4b、4cのうち、非磁性基板1側の磁性層4aをグラニュラー構造の磁性層とし、保護層5側の磁性層4cを、酸化物を含まない非グラニュラー構造の磁性層とすることが好ましい。このような構成とすることにより、磁気記録媒体の熱揺らぎ特性、記録特性(OW)、S/N比等の各特性の制御・調整をより容易に行うことが可能となる。
【0079】
また、本発明では、上記垂直磁性層4を4層以上の磁性層で構成することも可能である。例えば、上記磁性層4a,4bに加えて、さらにグラニュラー構造の磁性層を形成し、これら3層のグラニュラー構造の磁性層の上に、酸化物を含まない磁性層4cを設けた構成としてもよいし、酸化物を含まない磁性層4cを2層構造として、磁性層4a,4bの上に設けた構成としてもよい。
【0080】
また、本発明では、図1に示すように、垂直磁性層4を構成する複数の磁性層間に非磁性層7(図1では符号7a,7bで示す)を設けることが好ましい。非磁性層7の形成方法は特に限られるものではなく、例えば、スパッタリング法などを用いることができる。
非磁性層7を適度な厚みで設けることで、個々の膜の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができる。その結果、S/N比をより向上させることが可能である。
非磁性層7の厚みは、垂直磁性層4を構成する各層の静磁結合を完全に切断しない範囲とされ、具体的には0.1nm以上2nm以下(より好ましくは0.1以上0.8nm以下)とすることが好ましい。
【0081】
「保護層」
次に、垂直磁性層4上に、例えば、CVD(化学気相成長)法などを用いて保護層5を形成する。
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが磁気記録媒体に偶発的に接触したときの媒体表面の損傷を防ぐためのものである。保護層5としては、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO、ZrOを含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1〜10nmとすることが、磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
【0082】
「潤滑層」
次に、保護層5上に、例えば、ディッピング法などを用いて潤滑層6を形成する。
潤滑層6としては、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。
以上の工程により、図1に示す磁気記録媒体が得られる。
【0083】
本実施形態の磁気記録媒体の製造方法では、CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって第1配向制御層3aを成膜し、第1配向制御層3a上に、スパッタリング法を用いて、RuまたはRu合金からなる第2配向制御層3bを成膜することにより、配向制御層3を形成するので、頂部にドーム状の凸部を有する柱状晶S1、S2を含む優れた垂直配向性を有する配向制御層3を形成できる。したがって、本実施形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、配向制御層3上に、配向制御層3に含まれる柱状晶S1、S2に厚み方向に連続した柱状晶S3を含む垂直磁性層4を形成でき、高記録密度に適した磁気記録媒体が得られる。さらに、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、ボイドの少ない配向制御層3が形成されるので、優れた耐衝撃性を有する磁気記録媒体が得られる。
【0084】
(磁気記録再生装置)
図3は、本発明の磁気記録再生装置の一例を示した斜視図である。
この磁気記録再生装置は、上述した製造方法を用いて製造された図1に示す磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。
【0085】
記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能なものである。
磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有する高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
【0086】
図3に示す磁気記録再生装置は、図1に示す磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッド52とを備えるものであるので、信頼性が高く、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)、記録特性(OW)、及び熱揺らぎ特性が得られる磁気記録媒体を備えた優れたものとなる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
以下に示す製造方法により、実施例1の磁気記録媒体を作製し、評価した。
【0088】
まず、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気し、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて層厚10nmの密着層を成膜した。
このようにして得られた密着層の上に、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20at%、Zr含有量5at%、Ta含有量5at%、残部Co}のターゲットを用いて100℃以下の基板温度で、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上にRu層を層厚0.7nmで成膜し、さらにCo−20Fe−5Zr−5Taの軟磁性層を層厚25nmで成膜し、これを軟磁性下地層とした。
【0089】
次に、以下に示す第1成膜工程および第2成膜工程を行うことにより、軟磁性下地層の上に配向制御層を形成した。配向制御層としては、軟磁性下地層側に配置された第1配向制御層と、第1配向制御層の垂直磁性層側に配置された第2配向制御層とを形成した。
【0090】
(第1成膜工程)
まず、軟磁性下地層の上に、73Co22Cr5Moからなるターゲット、Ar(流量200sccm)と窒素ガス(流量10sccm)との混合ガスからなるスパッタリングガスを用い、スパッタリングガス圧を0.8Paとしてプラズマ電力1000Wの反応性スパッタリング法により第1配向制御層を15nmの膜厚で成膜した。
(第2成膜工程)
次に、第1配向制御層上に、Ruからなるターゲット、Arガスからなるスパッタリングガスを用い、スパッタリングガス圧(ガス圧)10Paでスパッタリング法により、Ruからなる第2配向制御層を膜厚13nmで形成した。
【0091】
その後、配向制御層上に、垂直磁性層を形成した。
まず、配向制御層上に、91(Co15Cr16Pt)−6(SiO)−3(TiO){Cr含有量15at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を91mol%、SiOからなる酸化物を6mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}の組成の磁性層を、スパッタリングガス圧を2Paとして層厚9nmで成膜した。
【0092】
次に、磁性層の上に、88(Co30Cr)−12(TiO)からなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した。
次に、非磁性層の上に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO)からなる磁性層を、スパッタリングガス圧を2Paとして層厚6nmで成膜した。
次に、磁性層の上に、Ruからなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した。
次に、非磁性層の上に、Co20Cr14Pt3B{Cr含有量20at%、Pt含有量14at%、B含有量3at%、残部Co}からなるターゲットを用いて、スパッタリングガス圧を0.6Paとして磁性層を層厚7nmで成膜した。
【0093】
次に、CVD法により層厚3.0nmの保護層を成膜し、次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を成膜し、実施例1の磁気記録媒体を得た。
【0094】
(電磁変換特性の評価)
このようにして得られた実施例1の磁気記録媒体について、米国GUZIK社製のリードライトアナライザRWA1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、記録再生特性として信号/ノイズ比(S/N)、記録特性(OW)の各評価を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
なお、磁気ヘッドには、書き込み側にシングルポール磁極を用い、読み出し側にTMR素子を用いたヘッドを使用した。
また、信号/ノイズ比(S/N)については、記録密度750kFCIとして測定した。
記録特性(OW)については、先ず、750kFCIの信号を書き込み、次いで100kFCIの信号を上書し、周波数フィルターにより高周波成分を取り出し、その残留割合によりデータの書き込み能力を評価した。
【0097】
(磁気記録媒体の耐衝撃性評価)
実施例1で製造した磁気記録媒体の傷付き耐性の評価を、クボタコンプス社製SAFテスター及びCandela社製光学式表面検査装置(OSA)を用いて以下に示す方法により行なった。
すなわち、室温で、磁気記録媒体(ディスク)の回転数を5000rpm、気圧を100Torrとし、SAFテスターでヘッドをロードさせたまま2000秒保持し、その後、OSAにてスクラッチの本数をカウントする方法により行った。その結果、実施例1で製造した磁気記録媒体のスクラッチのカウント数は180であった。
【0098】
(比較例1〜4、実施例2〜3)
第1配向制御層を、表1に示す組成の金属からなるターゲットおよびスパッタリングガスを使用して、表1に示す圧力および成膜方法で成膜したこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を製造し、実施例1と同様にして、信号/ノイズ比(S/N)および記録特性(OW)の評価、耐衝撃性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0099】
表1に示すように、実施例1〜3では、Ruからなるターゲットを用いた比較例1、窒素を含まないスパッタリングガスを用いた比較例2〜4と比較して、耐衝撃性評価のカウント数が少なく、耐衝撃性に優れていることが確認できた。この結果は、実施例1〜3では、配向制御層のボイドが少ないことによるものと推定される。
また、実施例1〜3では、信号/ノイズ比(S/N)および記録特性(OW)の評価も良好であった。
【符号の説明】
【0100】
1…非磁性基板、2…軟磁性下地層、3…配向制御層、3a…第1配向制御層、3b…第2配向制御層、4…垂直磁性層、4a、4b、4c…磁性層、5…保護層、6…潤滑層、7、7a、7b…非磁性層、8…非磁性下地層、S1、S2、S3…柱状晶、S1a…凹凸面、50…磁気記録媒体、51…媒体駆動部、52…磁気ヘッド、53…ヘッド駆動部、54…記録再生信号処理系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板の上に、少なくとも、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して垂直に配向した垂直磁性層とを、この順で形成する磁気記録媒体の製造方法であって、
CoCr合金を含むターゲットを使用し、窒素を含むスパッタリングガスを用いる反応性スパッタリング法によって、第1配向制御層を成膜する第1成膜工程と、
前記第1配向制御層上に、スパッタリング法を用いて、RuまたはRu合金からなる第2配向制御層を成膜する第2成膜工程とを行うことにより、前記配向制御層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記第1成膜工程において、前記スパッタリングガスとして、不活性ガスと、前記不活性ガスの0.1体積%〜20体積%の範囲内の窒素とを含むものを用いることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記第1成膜工程において、前記スパッタリングガスの圧力を0.1Pa〜10Paの範囲内とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記第2成膜工程において、前記スパッタリングガスの圧力を前記第1成膜工程以上かつ5Pa〜18Paの範囲内とすることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記第1成膜工程において、核となる結晶を成長させてなり、頂部にドーム状の凸部を有する第1柱状晶を含む前記第1配向制御層を形成し、
前記第2成膜工程において、前記第1柱状晶の核となる結晶に厚み方向に連続し、頂部にドーム状の凸部を有する第2柱状晶を含む前記第2配向制御層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記CoCr合金が、Coを55at%〜95at%の範囲内含み、Crを45at%〜5at%の範囲内で含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記CoCr合金が、Pt、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を1at%〜10at%の範囲内で含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の方法を用いて製造された磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−208992(P2012−208992A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73964(P2011−73964)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】