説明

磁気記録媒体及びそれを備えた磁気ディスク装置

【課題】磁気記録層が溝(非記録領域)により分離されているような場合であっても、スライダの浮上量及び浮上姿勢を一定に保つことが可能な磁気記録媒体及びそれを備えた磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】記録領域310であるデータトラック308とその間に設けられた非記録領域(溝)312を備えたディスクリートトラックメディア(磁気記録媒体)300において、データトラック308の位置を特定するディスクリートサーボ領域306の半径方向における幅Wを、磁気ディスク装置のスライダに設けられたセンターパッド端の幅SL未満とする。また、その磁気記録媒体を備えた磁気ディスク装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録層が溝(非記録領域)により分離された磁気記録媒体及びこれを備えた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の一例を図1に示す。情報記憶装置として用いられる磁気ディスク装置は、記録素子と再生素子とから成る磁気ヘッドを備えている。この記録素子は、トラックが形成された円板状の磁気記録媒体(磁気ディスク)106にデータを記録するか、磁気記録媒体106に記録されたデータを削除する。再生素子は、記録素子で記録されたデータを再生する。磁気ヘッドは、サスペンション・アームに搭載されたスライダ118に埋め込まれている。スライダ118は、このサスペンション・アームにより磁気記録媒体106へ押し付けられるが、磁気記録媒体の回転により浮上する。
【0003】
磁気ディスク装置において、記録密度を向上させるためには、目標とするトラックに磁気ヘッドを正確に移動させることが非常に重要である。磁気ディスク装置では、通常、記録素子と再生素子をそれぞれ設けた分離型磁気ヘッドが用いられている。
【0004】
記録素子と再生素子をそれぞれ設けた分離型磁気ヘッドを製造する場合において、記録素子と再生素子を磁気ヘッドの同じ位置に設けることは困難である。それ故に、記録素子と再生素子を目標とするトラックに正確に移動させるには、記録素子及び再生素子の位置ずれの量を測定し、この測定された位置ずれの量に基づいて、記録時の記録素子及び再生時の再生素子の位置を調整する。
【0005】
近年、従来のディスクの表面全体に磁気層が形成された磁気記録媒体とは異なる磁気記録媒体として、ディスクリートトラックメディアが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。図2(a)(b)(c)(d)は、このディスクリートトラックメディアを示す平面図である。図2(a)(c)(d)に示されたように、このディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200には、磁気記録媒体の半径方向から見て交互に、磁気記録層からなる記録領域210と、非記録領域(磁気記録層に形成された溝)212が設けられている。記録領域210や非記録領域(溝)212、サーボ領域の円周方向の長さは半径が大きいほど長くなる。なお、符号202は磁気ディスクの一部拡大領域、符号204はデータ領域、符号206はサーボ領域、符号208はデータトラックを示す。
【0006】
このように、記録領域210間に非記録領域(溝)212を設けることにより、各々の記録領域210間の距離が短くても、目標とする記録領域210以外のその他の記録領域210に記録することがない。このため、ディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200の記録密度の向上を可能としている。特に、磁気ヘッドの縁で記録を行う場合においても、目標とする記録領域以外のその他の記録領域210へ記録するのを避けて、記録を行うことができる。このディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200では、記録領域210と非記録領域(溝)212を交互に並べ、前もって記録領域210を形成するため、後でこれらの位置を変更できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−228927号公報
【特許文献2】特開2009−245534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、図1に示す磁気ディスク装置に図2に示すようなディスクリートトラックメディア200を搭載して浮上性について検討した。先ず、磁気ディスクの構造及び動作について説明する。
【0009】
図1に示す磁気ディスク装置102は、ベース104内に、データを記憶する少なくとも1枚の磁気ディスク106と、この磁気ディスク106を固定し、回転させるスピンドルモータ108と、くし形状の複数個のアクチュエータアーム112を有し、ベース104にピボット・アセンブリ114で固定されたアクチュエータ110とを備える。
【0010】
スライダ118の内部には、少なくとも、磁気ディスク106にデータを記録する磁気記録素子と、磁気ディスク106に記録されたデータを読み込む磁気再生素子とを有する磁気ヘッド部がある。このスライダ118は、フレクシャに固定される。このフレクシャは、サスペンション116の先端部に曲がりやすく接着される。このサスペンション116には、バネ特性があり、スライダ118の動きに連動する。このため、このサスペンション116は、スライダ118を磁気ディスク106がある方向に押す働きをする。その結果、スライダ118は、磁気ディスク106からある一定の距離を保って浮上する。
【0011】
ボイスコイルモータ120は、アクチュエータ110を回転させる。この動作により、サスペンション116の先端に取り付けられたスライダ118は、磁気ディスクの記録領域内側の境界126から外側の境界128まで、図1の曲線124に沿って動作する。
【0012】
磁気ディスク106の表面のカーボン保護層には、磨耗や腐食から磁気ディスク106を保護するためディッピング法によりパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜122が塗布されている。PFPE膜としては、例えばPFPE Z、PFPE Z-dol、PFPEZ−tetraolや多座構造の潤滑油であるZTMD(Z−Tetraol multidentate)が適切なものとして挙げられる。
【0013】
磁気ディスク106の回転により、その表面に空気が巻き込まれる。この空気が流れる経路は、スライダ118の磁気ディスク106と対向する面と磁気ディスク106の表面との間の空間で狭くなるため、この空気はそこで圧縮される。その結果、スライダ118の下面のスライダ118を磁気ディスク106から遠ざかる方向への力が上昇する。この力とサスペンション116がスライダ118に与える磁気ディスク106に近づく方向への力が相対的に働くことになる。この結果、スライダ118は、磁気ディスク106面上にかなり近接した状態で浮上する。
【0014】
この磁気ディスク装置102に図2に示すようなディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200を搭載して浮上性について検討していたところ、スライダ118の浮上高さが安定しないことを見出した。浮上性の結果を図7に示す。
【0015】
図7は、スライダ118が浮上して、ディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200を移動する場合に、横軸を時間[ms]、縦軸を浮上高さ[nm]とし、時間の経過に伴う浮上高さを測定したグラフである。点線で囲んだ領域700は、スライダ118がデータ領域204からサーボ領域206を通過する時点を示している。特に、大きく落ち込んでいる期間が、サーボ領域(円周方向における長さ)に対応している。
【0016】
図7のグラフから分かるように、点線で囲んだ領域700は、スライダ118がサーボ領域206内にある場合であって、スライダ118とディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200で形成される磁界空間が変化するため、スライダ118の浮上高さの変化量が多い。その結果、スライダ118がディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200にサーボ信号を精度よく書き込むことができない恐れがある。
【0017】
また、点線で囲んだ領域700では、サーボ信号を正しく読取れないため、磁気ディスク装置が正常に動作し難くなることが予想される。
【0018】
さらに、点線で囲んだ領域700では、スライダ118が激しく振動する。このため、この領域700では、磁界空間が激しく変化する。その結果、スライダ118は、信号の読み込み及び書き込みも精度よく行うことができない恐れがある。
【0019】
磁気ディスク装置の信頼性を低下せずに、記録密度を向上させるためには、スライダ118の浮上高さを低く一定に保つとともに、スライダ118の浮上時の浮上姿勢を一定に保つ必要がある。さらに、スライダ118が、データ領域204、サーボ領域206を浮上している間においても、スライダ118を低く浮上させることが必要と考えられる。
【0020】
本発明の目的は、磁気記録層が溝(非記録領域)により分離されているような場合であっても、スライダの浮上量及び浮上姿勢を一定に保つことが可能な磁気記録媒体及びそれを備えた磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための一実施形態として、複数のデータトラックと前記データトラックのそれぞれの位置を特定するディスクリートサーボ領域とを備え、磁気ディスク装置で用いる磁気記録媒体において、前記ディスクリートサーボ領域の前記磁気記録媒体の回転半径方向における幅Wが、前記磁気ディスク装置に搭載されるスライダのセンターパッド端の幅SL未満、前記データトラックの間隔以上であることを特徴とする磁気記録媒体とする。
【0022】
また、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体を回転するためのモータと、スライダと、前記スライダに設けられ、磁気ヘッドが配置されたセンターパッドとを備えた磁気ディスク装置において、前記磁気記録媒体は、複数のデータトラックと前記データトラックのそれぞれの位置を特定するディスクリートサーボ領域とを備え、前記ディスクリートサーボ領域の前記磁気記録媒体の回転半径方向における幅Wが、前記センターパッド端の幅SL未満で、前記データトラックの間隔以上であることを特徴とする磁気ディスク装置とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ディスクリートサーボ領域の前記磁気記録媒体の回転半径方向における幅Wを前記磁気ディスク装置に搭載されるスライダのセンターパッド端の幅SL未満とすることにより、スライダの浮上量及び浮上姿勢を一定に保つことが可能な磁気記録媒体及びそれを備えた磁気ディスク装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】磁気ディスク装置の概略図である。
【図2】従来の磁気記録媒体を示す平面図であり、(a)は全体及び部分拡大図、(b)はサーボ領域、(c)はデータ領域、(d)はサーボ領域及びデータ領域を示す。
【図3】実施例1に係る磁気記録媒体の概略全体平面図及び部分拡大平面図である。
【図4】実施例2に係る磁気記録媒体の概略全体平面図及び部分拡大平面図である。
【図5】図3に示した磁気記録媒体の部分拡大平面図である。
【図6】ディスクリートトラックメディアのサーボ・パターンの一例を示す図である。
【図7】スライダがデータ領域からサーボ領域へ移動する場合の時間に対する浮上高さの変化を示す図である。
【図8】スライダがデータ領域から種々の幅を有するサーボ領域へ移動する場合の時間に対する浮上高さの変化を示す図である。
【図9】規格化された浮上高さとサーボ領域の半径方向の幅の関係を示す図である。
【図10】スライダの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
スライダの浮上高さは、データ領域204からサーボ領域206へ移動する際に不安定となることから、データ領域及びサーボ領域の構造について検討した。
【0026】
ディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200において、各々のトラックに設けられたサーボ・セクタは、他のトラックのサーボ・セクタとともに、円周方向に位置合わせされている。その結果、サーボ・セクタは、半径方向に向かって伸びている。
【0027】
サーボ・セクタを含むサーボ領域は、例えば、図6に示すように、サーボ・パターン600は6つのパターンからなる。この6つのパターンは、プリアンブル(an automatic gain control:AGC)とサーボマーク(servo-timing-mark:STM)604、シリンダ情報(a track number Gray code field)606、セクタ情報(an index field)608、バースト情報(a position-error-signal:PES)610、パディング612である。プリアンブル604は、後に続く情報(サーボマーク604、シリンダ情報606、セクタ情報608、バースト情報610、パディング612)のタイミングとパラメータゲインを測定する。サーボマーク604は、セクタ情報608とバースト情報610におけるサーボ情報を読み込むためのタイミング基準として機能する。セクタ情報608は、データトラック番号を含む。なお、回転方向において、サーボ・パターン600の前後にはデータ領域602が配置されている。
【0028】
バースト情報610は、PES burst A−Dを含む。このPES burst A−Dは、ヘッドの半径方向への微調整を行うためのデータである。PES burst A−Dの各々は、磁気転移領域に、一定の間隔で連続して設けられている。
【0029】
ディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200において、サーボ領域206とデータ領域204とはそれぞれこの磁気ディスクの回転中心を中心として半径方向に扇状に配置されている。このサーボ領域206及びデータ領域204に設けられた溝は十分に埋められておらず、溝はディスクリートメディア(磁気ディスク)200のディスク面に残っている。基本的に、サーボ・パターン600の溝と記録領域の位置と形状は、データトラックの溝と記録領域の位置と形状とは異なる。スライダ118がディスクリートトラックメディア上でデータ領域からサーボ領域に移動する間に、スライダは、サーボ・パターンの溝、乱雑な部分を通過する。
【0030】
スライダ118がサーボ・パターンの溝、乱雑な部分を通過することにより、スライダ118とディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)200との間の空気流が変化する。その結果、ABS面(air bearing surface)での圧力が変化するとともに、スライダ118の浮上姿勢が変化するということが分かった。なお、スライダ118は例えば、図10に示すようにセンターパッド端部160に磁気ヘッド150を備えており、磁気ヘッドの長手方向(磁気ディスクの半径方向)に対してトラックは直角方向(円周方向)に移動する。
【0031】
そこで、先ずデータ領域204及びサーボ領域206の溝を十分に埋めて平坦化を試みた。しかしながら、その表面には0.5nm〜2.0nm程度の凹凸が残り、スライダの浮上高さの不安定性を取り除くまでには至らなかった。
【0032】
更に種々検討した結果、図2(b)に示されるサーボ領域206を半径方向に複数に分割し、サーボ領域の半径方向の幅をセンターパッド端の幅SL未満とすることにより、スライダの浮上高さの不安定性が改善されるとの知見が得られた。
【0033】
以下、実施例により説明する。
【実施例1】
【0034】
実施例1について図3、図8〜図10を用いて説明する。なお、発明が解決しようとする課題や発明を実施するための形態の各欄に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。
【0035】
図3は、実施例1のディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)300を示す図である。図3の点線で囲まれた領域302を拡大したものを右に示す。図3のこのディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)300は、その表面に設けられたデータ記録領域310であるデータトラック308とデータを記録することができない非記録領域(溝)312とからなるデータ領域304と、ディスクリートサーボ領域306からなる。なお、ディスクリートトラックメディアでは、データ記録領域310とデータトラック308とは同じ磁気記録層を示す。
【0036】
本実施例のディスクリートサーボ領域306は、図6に示したものと同様の構成とした。本ディスクリートサーボ領域306は、図2に示された扇状のサーボ領域を半径方向において、磁気ディスクの回転中心を中心とする円周に沿って分割して形成したものである。このため、図3のディスクリートサーボ領域306の大きさは、図2のサーボ領域206の大きさよりも小さい。なお、ディスクリートサーボ領域306の大きさは図面上では同じ大きさに記載されているが、実際には回転半径が小さな領域に配置されているサーボ領域ほど円周方向の長さは小さく、また円周方向の辺は半径に相当する円弧を描いている。
【0037】
このディスクリートサーボ領域306は、ディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)300の表面に、半径方向から見て近接して設けられている。このディスクリートサーボ領域306の各々は、このディスクリートサーボ領域の機能を保証するために、半径方向全体において接触しないように設けられている。
【0038】
また、半径方向において、ディスクリートサーボ領域306の各々の幅Wは、同じ大きさとしている。このため、簡単なデザインで、信頼性の高いディスクリートトラックメディアを製造することができる。
【0039】
また、ディスクリートサーボ領域306は、磁気ディスク300の回転半径方向に沿うようにその中心線が配置されており、さらに図2において互いに隣接するサーボ領域206までのデータ領域内に分割されたディスクリートサーボ領域306が納まるように配置されている。
【0040】
図5は、図3の点線で囲んだ領域302(図5の符号502に対応)を拡大した図である。ディスクリートサーボ領域506は、円周方向に所定の間隔Lで配置されている。この間隔Lは、磁気ディスク300の半径に基づいて変化する。即ち、磁気ディスクの回転半径が同じ円周上に配置されるディスクリートサーボ領域306は互いに等間隔で配置され、回転半径が小さな円周上に配置される程、同一円周上におけるディスクリートサーボ領域306の間隔は小さくなる。このディスクリートサーボ領域306が磁気ディスク面全体に占める面積は、図2のサーボ領域206が磁気ディスク面全体に占める面積と同じである。符号510は記録領域、符号512は非記録領域(溝)、符号504はデータ領域を示す。
【0041】
図8は、図3に示した磁気ディスクを図1に示した磁気ディスク装置に搭載し、スライダが浮上して、データ領域からディスクリートサーボ領域を移動する場合において、時間の経過に対するスライダの浮上高さを測定した結果を示す。ここでは、ディスクリートサーボ領域の半径方向の幅を、120μm、36.8μm、18.4μm、9.2μm、4.8μm、2.3μmとした。また、用いたスライダのセンターパッド端の幅SLは120μmとした。
【0042】
この図から、ディスクリートサーボ領域の半径方向の幅をセンターパッド端の幅SL未満とすることによりスライダの浮上高さの変化が小さくなること、また幅を小さくすればするほどその変化が小さくなることがわかる。
【0043】
図9は、図8のデータに基づき横軸をサーボ領域の半径方向の幅Wとし、縦軸を従来の浮上高さの変化量で規格化した変化量として示した図である。規格化された変化量(%)をNM、サーボ領域の半径方向の幅が従来の場合のスライダの浮上高さの変化量(スライダが図2のサーボ領域を浮上する場合におけるスライダの最大の浮上高さから最小の浮上高さを引いた値)をh0、サーボ領域の半径方向の幅Wを従来未満とした場合のスライダの浮上高さの変化量(スライダが図3のディスクリートサーボ領域を浮上する場合におけるスライダの最大の浮上高さから最小の浮上高さを引いた値)をhとすると、NMは、式(1)で示される。
【0044】
NM=(1−(h0−h)/h0)×100=h/h0×100(%)…(1)
図9に示すように、浮上高量の変化は、半径方向におけるサーボ領域の半径方向の幅Wが短くなるとともに減少し、浮上高さ変化量yは、式(2)で示される。なお、図中に記載のXは式(2)のWに、Rはyに対応する。また図中のRは相関関数係数であり、この式が約97%の精度を有することを示す。
【0045】
R=0.016W0.6671 …(2)
図9や式(2)から分かるように、サーボ領域の半径方向の幅Wをセンターパッド端の幅SL未満(W<SL)とすることにより、スライダの浮上高さ変化量を低減できる。なお、磁気ディスクの記録領域の回転半径方向における外側半径をROD、内側半径をRID、サーボ領域の分割数をN(整数)とした場合、サーボ領域の半径方向の幅Wは、W=(ROD−RID)/Nと表すことができる。さらにその幅Wを10μm以下とすることが望ましい。このようにすることにより、従来の浮上量の変動に対して、スライダの浮上量の変動を7%以下に抑えることができる。
【0046】
また、サーボ領域の半径方向の幅Wの下限値は、半径方向における記録領域(データトラック)の幅としたほうがよい。理由としては、スライダでサーボ領域を読み込む時に、正確にサーボ領域を読み込むことができず、読み込み精度が落ちてしまうためである。
【0047】
さらに、サーボ領域の半径方向の幅Wに関し、磁気ディスクの外側は内側に対して周回速度が速く、溝に起因する凹凸の影響を受けやすいことを考慮して、磁気ディスクの外側におけるサーボ領域の半径方向の幅を内側よりも小さくしてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施例によればサーボ領域の半径方向の幅をセンターパッド端の幅未満とすることにより、磁気記録層が溝(非記録領域)により分離されているような場合であっても、スライダの浮上量及び浮上姿勢を一定に保つことが可能な磁気記録媒体及びそれを備えた磁気ディスク装置を提供することができる。特に、サーボ領域の半径方向の幅が10μm以下の場合に有効である。
【実施例2】
【0049】
実施例2について図4を用いて説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。
【0050】
図4は、本実施例に係るディスクリートトラックメディア(磁気記録媒体)の概略全体平面図及び部分拡大平面図である。本実施例のディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)400は、磁気ディスクの一部領域402の拡大平面図に示すように、その表面に磁気層が形成された記録領域410であるデータトラック408と記録できない非記録領域(溝)412とを含むデータ領域404と、ディスクリートサーボ領域406を備える。なお、非記録領域(溝)412は、平坦化は十分ではないが非磁性材料により充填されている。
【0051】
本実施例で用いたディスクリートサーボ領域406の構成は、図6に示したものと同様である。このディスクリートサーボ領域406は、実施例1と同様に、図2のサーボ領域206を半径方向において、磁気ディスクの回転中心を中心とする円周に沿って分割したものである。従って、このディスクリートサーボ領域406の大きさは、図2のサーボ領域206の大きさよりも小さい。実施例1との違いは、実施例1ではディスクリートサーボ領域306が、回転半径方向に規則的に配列されているのに対し、本実施例ではディスクリートサーボ領域406が不規則に配列されていることである。これにより、ディスクリートサーボ領域406の配置に対する設計裕度を向上させることができる。
【0052】
このディスクリートサーボ領域406は、半径方向において、磁気ディスク400の表面上に互いに近接せずに設けられる。このディスクリートサーボ領域406の円周方向の境界は、互いに接触しないように設けられる。但し、このディスクリートサーボ領域406が磁気ディスク面全体に占める面積は、実施例1と同様に図2のサーボ領域206が磁気ディスク面全体に占める面積と同じである。
【0053】
このディスクリートサーボ領域406の各々は、磁気ディスクの回転半径が同じ円周方向において同じ間隔で設けられている。この間隔の距離は、磁気ディスク400の半径によって変化し、回転半径が大きいほど大きくなる。
【0054】
本実施例においてもサーボ領域の半径方向の幅Wを10μm以下とすることが望ましい。このようにすることにより、従来の浮上量の変動に対して、スライダの浮上量の変動を7%以下に抑えることができる。
【0055】
以上実施例では、磁気ディスクのサイズが2.5又は3.5インチの場合について説明したが、磁気ディスクのサイズが、どのようなサイズのものであってもよい。さらに、この磁気ディスクがアルミニウム又はガラスで形成されていてもよい。
【0056】
また、スライダは、いわゆるピコ・サイズ(約1250×1000×300μm)あるいはフェムトサイズ(約850×700×230μm)のスライダに適用される。スライダは、セラミックスまたは中間金属化合物で形成することができる。なお、センターパッド端の幅はスライダのサイズによらず、60〜120μm程度とすることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施例によればサーボ領域の半径方向の幅をセンターパッド端の幅未満とすることにより、磁気記録層が溝(非記録領域)により分離されているような場合であっても、スライダの浮上量及び浮上姿勢を一定に保つことが可能な磁気記録媒体及びそれを備えた磁気ディスク装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
102:磁気ディスク装置、104:ベース、106:磁気ディスク、108:スピンドルモータ、110:アクチュエータ、112:アクチュエータアーム、114:ピボット・アセンブリ、116:サスペンション、118:スライダ、120:ボイスコイルモータ、122:パーフルオロポリエーテル(PFPE)膜、124:スライダの移動曲線、126:磁気ディスクの記録領域内側の境界、128:磁気ディスクの記録領域外側の境界、150:磁気ヘッド、160:センターパッド、200,300,400:ディスクリートトラックメディア(磁気ディスク)、202,302,402,502:磁気ディスクの一部拡大領域、204,304,404,504:データ領域、206:サーボ領域、306,406,506:ディスクリートサーボ領域、208,308,408:データトラック、210,310,410,510:記録領域(データトラック)、212,312,412,512:非記録領域(磁性記録層に設けられた溝)、600:サーボ・パターン、602:データ領域、604:プリアンブル(automatic gain control:AGC)とサーボマーク(servo−timing−mark:STM)、606:シリンダ情報、608:セクタ情報(index field)、610:バースト情報(position−error−signal:PES)、612:パディング、700:点線で囲んだ領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータトラックと前記データトラックのそれぞれの位置を特定するディスクリートサーボ領域とを備えた、磁気ディスク装置で用いる磁気記録媒体において、
前記ディスクリートサーボ領域の前記磁気記録媒体の回転半径方向における幅Wが、前記磁気ディスク装置に搭載されるスライダのセンターパッド端の幅SL未満、前記データトラックの間隔以上であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径の大きなところに配置されているほど円周方向の長さが長いことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径が同じところに配置される場合には円周方向において互いに等間隔に配置されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径が大きなところに配置されるほど、円周方向における互いの距離が大きくなることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項5】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径方向に沿うように前記ディスクリートサーボ領域の中心線が配置されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記幅Wは、10μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項7】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の円周方向に、プリアンブルとサーボマーク、シリンダ情報、セクタ情報、バースト情報及びパディング情報を備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項8】
請求項1記載の磁気記録媒体において、
ODを前記データトラックが設けられた前記磁気記録媒体の記録領域の回転半径方向における外側半径、RIDを内側半径、Nを整数とした場合に、
前記幅Wは、
W=(ROD−RID)/N
で表されることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体を回転するためのモータと、スライダと、前記スライダに設けられ、磁気ヘッドが配置されたセンターパッドとを備えた磁気ディスク装置において、
前記磁気記録媒体は、
複数のデータトラックと前記データトラックのそれぞれの位置を特定するディスクリートサーボ領域とを備え、
前記ディスクリートサーボ領域の前記磁気記録媒体の回転半径方向における幅Wが、前記センターパッド端の幅SL未満で、前記データトラックの間隔以上であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項10】
請求項9記載の磁気ディスク装置において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径の大きなところに配置されているほど円周方向の長さが長いことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項11】
請求項9記載の磁気ディスク装置において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径が同じところに配置される場合には円周方向において互いに等間隔に配置されていることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項12】
請求項9記載の磁気ディスク装置において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径が大きなところに配置されるほど、円周方向における互いの距離が大きくなることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項13】
請求項9記載の磁気ディスク装置において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の回転半径方向に沿うように前記ディスクリートサーボ領域の中心線が配置されていることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項14】
請求項9記載の磁気ディスクにおいて、
前記幅Wは、10μm以下であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項15】
請求項9記載の磁気ディスク装置において、
前記ディスクリートサーボ領域は、前記磁気記録媒体の円周方向に、プリアンブルとサーボマーク、シリンダ情報、セクタ情報、バースト情報及びパディング情報を備えることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項16】
請求項9記載の磁気ディスク装置において、
前記幅Wは、
W=(ROD−RID)/N
但し、RODは前記データトラックが設けられた前記磁気記録媒体の記録領域の回転半径方向における外側半径、RIDは内側半径、Nは整数、
で表されることを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−14758(P2012−14758A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147893(P2010−147893)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(グリーンITプロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】