説明

磁気記録装置および磁気記録装置の製造方法

【課題】トラックの幅が正規の幅からずれている場合でも、正しくリードオントラックでき、また、リードデータの転送レートが悪化すること防止できる磁気記録装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ライトヘッド201とリードヘッド202との磁気ディスク半径方向への位置ずれ量を、磁気ディスクの外周部から内周部の複数点間で測定し、前記測定位置ずれ量の情報に基づいて、磁気ディスクの外周部から内周部に対応して補間して位置ずれ量情報を取得し、前記位置ずれ量ではない位置へデータが書き込まれてしまったトラックとこのトラックの実際の書き込み位置とを検出し、前記実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差を誤差補正情報として格納し、前記位置ずれ量情報と前記誤差補正情報とに基づいて磁気ヘッドを移動させる。これにより、リードエラーによる転送レートの劣化を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録装置およびその製造方法に関し、詳しくは、磁気記録装置の磁気ヘッドの位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気記録装置は、図5に示すように、筐体101の底部にスピンドルモータ102が配置され、スピンドルモータ102によって角速度一定で回転駆動される磁気データ記録媒体である磁気ディスク103が収納されている。
【0003】
磁気ディスク103に対して、データを書き込み、読み込みする磁気ヘッド104は、多くの場合、図6に示す通り、ライトヘッド201とリードヘッド202により構成され、これらのリードヘッド202とライトヘッド201は、リードライトギャップ領域203により分離されている。筐体101には、磁気ヘッド104を一端に支持した支持軸105を中心として磁気ディスク103上を回動するロータリーアクチュエータ106が回動自在に取り付けられている。リードヘッド202とライトヘッド201は、磁気ヘッド104において、ロータリーアクチュエータ106の長手方向に沿ってリードライトギャップ領域203を介して並べられるように配設されている(図7(b)に示すように、ロータリーアクチュエータ106におけるリードヘッド202よりも先端側にライトヘッド201が位置するように配設されている)。
【0004】
図7(a)に示すように、磁気ヘッド104はロータリーアクチュエータ106に応じて磁気ディスク103上を円弧状に移動するが、図7(b)に示すように、一般的にロータリーアクチュエータ106は磁気ヘッド104が磁気ディスク103の回動方向中央(MD)付近にてトラック方向と平行に記録されるよう設置され、磁気ディスク103の外周側(OD)と内周側(ID)においてトラック方向(ディスク回転方向)に対して傾いた状態となりスキュー角が発生する。すなわち、磁気ディスク103上のトラックに対して磁気ヘッド104がスキュー角を持つトラックでは、リードヘッド202とライトヘッド201の間に磁気ディスク103の半径方向に対するずれ量301が発生することとなる。
【0005】
データの書き込み、読み込みの例を図8に従い説明する。一般的に、データを目的トラックTrkへ書き込む際は、リードヘッド202を用いてリードヘッド202が目的トラックTrkにオントラックした状態でライトヘッド201を用いてデータを書き込む。すなわち、書き込まれたデータは目的トラックTrk上ではなく、リードヘッド202とライトヘッド201の分離している距離分(前記ずれ量301分)だけずれた位置上に存在することになる。データを目的トラックTrkから読み込む際は、予め計算されたリードヘッド202とライトヘッド201の位置のずれ量301分だけ目的トラックTrkからずれた位置へリードヘッド202をオントラックさせてデータを読み込む。
【0006】
磁気ディスク103には同心円の数万個のトラックが、製造工程においてサーボトラックライターと呼ばれる専用装置によって書き込まれる。サーボトラックライターでは、ロータリーアクチュエータ106が外部の位置決め装置によって制御され、サーボ信号を書き込む。
【0007】
図9を用いてサーボ信号の書き込み方法を説明する。サーボ信号にはいろいろなパターンがあるが、ここでは、トリミド3パスパターンを例に説明する。
一般的に、トラック幅とは磁気記録装置の実使用時にデータが書き込まれる幅を指し(データトラックとも呼ぶ)、サーボトラックライターにより書き込まれたサーボトラックの1.5倍の幅を持つ。サーボトラックの中心が図9の910,911(ステップ907の箇所を参照のこと)にあたり、データトラックの中心が910,912にあたる。1つのデータトラックのサーボ信号を書くために、磁気ディスク103の回転を3周かけてサーボトラックの信号を書く必要があるため、3パスと呼ぶ。サーボトラックライターの位置決め装置によって、磁気記録装置のロータリーアクチュエータ106の位置決めを行い、サーボ信号を書き込んでいく。
【0008】
まず、ステップ901において、位置決め装置によって磁気ディスク103上のある位置へ磁気ヘッド104を固定し、デジタル信号とAバースト信号を書き込む。次に、ステップ902において、書き込むサーボトラック幅の50%ずれた位置へ磁気ヘッド104を移動させ、Bバースト信号を書き込む。次に、ステップ903において、さらに同方向に50%ずれた位置へ磁気ヘッド104を移動させ、デジタル信号を書き込み、Aバースト信号の現在書き込みを行っている円周上にかかっている部分を消去し、Cバースト信号を書き込む。次に、ステップ904において、さらに同方向に50%ずれた位置へ磁気ヘッドを移動させ、Bバースト信号の現在書き込みを行っている円周上にかかっている部分を消去し、Dバースト信号を書き込む。次に、ステップ905において、さらに同方向に50%ずれた位置へ磁気ヘッド104を移動させ、デジタル信号を書き込み、Aバースト信号を書き込み、Cバースト信号の現在書き込みを行っている円周上にかかっている部分を消去する。次に、ステップ906において、さらに同方向に50%ずれた位置へ磁気ヘッドを移動させ、Bバースト信号を書き込みDバースト信号の現在書き込みを行っている円周上にかかっている部分を消去する。デジタル信号を書き込む時は、1サーボトラック前のデジタル信号と重なりあっている部分は上書きされる。ステップ903からステップ906の作業を全サーボトラックにわたるまで続けサーボ信号を書き上げる(ステップ907)。
【0009】
次に、ライトヘッド201、およびリードヘッド202のディスク半径方向のずれ量の測定方法について説明する。ライトヘッド201、およびリードヘッド202のずれ量の測り方に関しては、たとえば特許文献1に記載されているように、データ領域に特定の複数個のバーストパターンを書き込み、そのバーストパターンの出力の割合を元にオフセット位置を測定する方法がある。また、その他の方法としては、ライトオントラックした状態で、データ領域にひとつのバーストパターンを書き込み、リードヘッド202を少しずつずらして行き、Variable Gain Amplifier(VGA)信号またはAuto Gain Control(AGC)信号を測定し、これらの値がピークに達した位置を書き込まれたバーストパターンの中心位置とし、オフセット位置を測定する方法がある。
【0010】
いずれの方法においても、すべてのトラックに対して、ずれ量を測定するには、非常に長い時間を要し、製造工程における磁気記録装置のテスト工程のタクトを圧迫するため、ずれ量を任意の2点以上のトラックにおいて測定し、任意の測定点間にあるトラックにおけるオフセット量は近似計算によって補間し、オフトラックプロファイルを作成し、すべてのトラックに対してオフセット量を与えている。
【特許文献1】特開平8−129732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の磁気記録装置の構成では、以下の課題が発生する。
サーボトラックライターでは、ロータリーアクチュエータ106は外部の位置決め装置によって制御され、サーボ信号を書き込む。サーボ信号の書き込み中に外部位置決め装置による磁気ヘッド104の送り幅が外乱により大小してしまった場合、実際に書き込まれたトラック幅も理想のトラック幅に対して大小の寸法幅に変動してしまう。従来の磁気記録装置では、トラック幅は十分大きく、外乱に対してそれほどトラック幅の大きさのばらつきには影響しなかった。しかし、近年トラック幅の微細化に伴い、外乱が、トラック幅の大きさのばらつきに大きく影響するようになった。
【0012】
磁気記録装置の磁気ヘッドの位置決め制御は、サーボ信号を基準として行われる。当然、書き込まれたサーボ信号が上記のようにばらついた場合には、本来、磁気ヘッド104が移動するべき磁気ディスク103上の物理的位置に正確に移動することができない。
【0013】
従来の方式では読み込みの際のオントラック方法はあらかじめ近似計算によって算出されたずれ量をライトオントラック位置からその値だけずらして位置決めするという方法である。このとき、このずれ量は絶対値ではなくトラック幅を基準に測定される。たとえば5.2トラックのずれとか10.7トラックのずれである。したがって、実際5.2トラックずれている場合、リードヘッド202は5.2トラック分移動しようとする。しかしその5トラックのうちの1つでも正確なトラック幅でない場合、リードヘッド202は間違った場所にリードオントラックとして位置決めされることになる。たとえばこの5トラックのうちの1つのトラック幅が80%のトラックであったとすると5トラックのつもりが4.8トラックということとなり、最終的には5.2トラック移動したつもりが5.0トラックしか移動していないことになる。リードヘッド202とライトヘッド201のずれが5.2トラックの場合、そのトラック幅が異常なトラックをリードヘッド202とライトヘッド201がはさむ5つのトラックはすべて同じようにリードオントラック位置決めを20%間違えることとなる。
【0014】
磁気記録装置に磁気ヘッド104が複数個装備されていたならば、サーボ信号は全ての磁気ヘッド104が同時に同じパターンを書き込むため、それは全てのディスク面のサーボ信号に影響する問題であり、使用不可能として欠落処理されるかまたは、使用可能であってもエラーリカバリーの影響により転送レートが悪化し、この転送レートが悪化するトラック数はヘッドのずれのトラック数、掛ける磁気ヘッドの数倍の数となる。
【0015】
データを目的トラックへ書き込む際は、リードヘッド202を用いてリードヘッド202が目的トラックにオントラックした状態でライトヘッド201を用いてデータを書き込む。すなわち、書き込まれたデータは目的トラック上ではなくリードヘッド202とライトヘッド201の分離している距離分ずれた位置上に存在することになる。データを目的トラックから読み込む際は、予め近似計算によって算出されたリードヘッド202とライトヘッド201の位置のずれ量分だけ目的トラックからずれた位置へリードヘッド202をオントラックさせてデータを読み込む。
【0016】
現行の磁気ヘッド104のライトヘッド201とリードヘッド202の磁気ディスク103の半径方向のずれはTPI(Track Per Inch)の増加に伴い数トラックから数十トラックに及ぶ。従来の方式では、トラックの幅がトラックに対して十分に狭いまたは広いトラックが1つ存在した場合、近似計算によって算出されたずれ量(すなわち理想的なずれ量)を用いてサーボ信号を基準にしてリードオントラックを行うため、そのトラックをライトヘッド201とリードヘッド202がはさむようなライトオントラックはすべて、データ読み込み時にデータの書き込まれた位置へ正確にリードヘッド202を移動することができず、使用できないことになる。または、トラック幅の大きさの大小が軽度であっても、データ読み込みの際、オフトラックリードのエラーリカバリー処理を常に行わなくてはならなくなり、該当トラック上でのリードデータの転送レートは悪化する。
【0017】
また、リードヘッド202とライトヘッド201のずれ量を測定する場所にトラックの幅がトラックに対して十分に狭いまたは広いトラックが1つ存在した場合はそのデータが間違ったものとなり、近似計算によって算出されるオフトラックプロファイル自体が誤ったものとなるため、その周辺トラックすべてが正しくリードオントラックできなくなることは言うまでもない。
【0018】
本発明は上記課題を解決するもので、サーボ信号のトラック幅が正規の幅からずれている場合でも、正しくリードオントラックでき、また、リードデータの転送レートが悪化することを防止できる磁気記録装置および磁気記録装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の磁気記録装置は、磁気ディスクに対して情報を書き込むライトヘッドと情報を読み込むリードヘッドとが互いに分離されて設けられた磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持する回動自在のロータリーアクチュエータとを備え、磁気ディスクに、磁気ヘッドの位置制御を行うためのサーボ信号が同心状に記録されている磁気記録装置であって、磁気ディスクの外周部から内周部の複数点間で測定した、ライトヘッドとリードヘッドの磁気ディスク半径方向への複数点の測定位置ずれ量の情報に基づいて、磁気ディスクの外周部から内周部に対応して位置ずれ量を補間して得られた位置ずれ量情報を格納した位置ずれ量情報格納手段と、前記位置ずれ量ではない位置へサーボ信号のデータが書き込まれてしまったトラックの実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差またはこれに相当する値を誤差補正情報として格納した誤差補正情報格納手段と、前記位置ずれ量情報と前記誤差補正情報とに基づいて磁気ヘッドを移動させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の磁気記録装置の製造方法は、ライトヘッドとリードヘッドが互いに分離されて設けられた磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持する回動自在のロータリーアクチュエータとを備え、磁気ディスクに、磁気ヘッドの位置制御を行うためのサーボ信号が同心状に記録されている磁気記録装置の製造方法であって、ライトヘッドとリードヘッドとの磁気ディスク半径方向への位置ずれ量を、磁気ディスクの外周部から内周部の複数点間で測定し、前記測定位置ずれ量の情報に基づいて、磁気ディスクの外周部から内周部に対応して補間して位置ずれ量情報として格納する工程と、前記位置ずれ量ではない位置へサーボ信号のデータが書き込まれてしまったトラックとこのトラックの実際の書き込み位置とを検出し、前記実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差またはこれに相当する値を誤差補正情報として格納する工程(トラック精査工程)とを有することを特徴とする。
【0021】
なお、誤差補正情報を書き込む場所としては、リードオントラックするトラック上のサーボ信号の終端に書き込むと好適である。
より具体的には、本発明の磁気記録装置の製造方法は、予め互いに分離されたライトヘッドとリードヘッドとの磁気ディスク半径方向への位置ずれ量を磁気ディスクの外周部から内周部の数点間で測定して補間し、これを位置ずれ量情報として不揮発性メモリ内もしくは磁気ディスク上に格納しておき、ある1つのトラック上にリードヘッドをオントラックさせ、リードヘッドにより磁気ディスク半径方向へ位置ずれ量をもつライトヘッドを用いて記録されたデータが、サーボライト時にトラック幅が均一に書き込まれなかったことが原因による、前記予め格納された位置ずれ量ではない位置へデータが書き込まれてしまったトラックを、製造工程における磁気ディスクの精査工程にて検出し、予め格納された位置ずれ量情報と実際のデータの位置との誤差を補正するべく、誤差補正情報と位置ずれ量情報とを用いて、リードオントラックするトラック上のサーボ信号の終端へ少なくともトラック一周内に一箇所以上書き込むことを特徴とする。
【0022】
上記構成の磁気記録装置、並びに磁気記録装置の製造方法によれば、ライトヘッドとリードヘッドとの磁気ディスク半径方向への複数点の位置ずれ量の情報に基づき、磁気ディスクの外周部から内周部に対応して補間してなる位置ずれ量情報を得ながら、この位置ずれ量情報ではない位置へサーボ信号のデータが書き込まれてしまった場合でも、トラックの実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差またはこれに相当する値である誤差補正情報に基づいて実際のトラックの位置に磁気ヘッドを移動させることができ、また、リードデータの転送レートが悪化することを防止できる。
【0023】
つまり、データ位置が正規の位置になくてエラーが発生トラックにおいて、読み込み指示があってリードコマンドを実行した時に、予め格納された位置ずれ量情報を用いてリードオントラックした直後、上記の方法で書き込まれた誤差補正情報をもとに、実際にデータの書かれている位置へ再度速やかにオントラックしデータを読み込むことができ、これにより、エラー処理による読み込み時間の遅延を低減することができて、転送レートの悪化を防ぐことができる。また、位置ずれ情報をより多くのサーボ信号の終端に書き込むことによって、より迅速かつ高感度に誤差補正値を認識でき、すばやく位置誤差を補正することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ライトヘッドとリードヘッドとの磁気ディスク半径方向への位置ずれ量を複数点間で測定して補間し、位置ずれ量情報として格納するだけでなく、前記位置ずれ量ではない位置へデータが書き込まれてしまったトラックとこのトラックの実際の書き込み位置とを検出し、前記実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差またはこれに相当する値を誤差補正情報として格納し、前記位置ずれ量情報と前記誤差補正情報とに基づいて磁気ヘッドを移動させるので、リードエラーによる転送レートの劣化を低減し、また、磁気記録装置の製造工程においての欠陥トラック数を減らして製造工程の歩留まりを向上でき、さらに磁気記録装置のデータ転送速度の劣化を低減することができる。
【0025】
すなわち、サーボライト工程において書き込まれたサーボ信号のトラック幅の大小によるリードヘッドのオントラック位置のずれをデータを読み込む前に補正することができるので、リードエラーによる転送レートの劣化を低減できる。また、従来の方法では、サーボライト工程において書き込まれたサーボ信号のトラック幅の大小によるリードヘッドのオントラック位置のずれによるオントラック制御エラーのため、該当トラックを使用不可としていたが、上記誤差補正情報に基づく補正により、トラック幅が大小に変動している場合でもこのトラックを使用可能とでき、磁気記録装置の製造工程においての欠陥トラック数を減らして製造工程の歩留まりを向上でき、さらには磁気記録装置のデータ転送速度の劣化を低減することも可能となる。また。問題のあるトラックのみに対して、データ信号の書き込まれる位置のずれ補正を行うことにより、製造工法やサーボ信号の書き込み方法の大幅な変更を行うことなく、常に安定したデータ転送を行うことのできる磁気記録装置を提供することが可能となる。
【0026】
今後、磁気記録装置の小型化、高密度化に伴い、磁気ディスク上のトラック幅は益々狭くなり、それにより、リードヘッドとライトヘッドによって異常なトラックを1つ以上はさむように位置して、使用できないまたは転送レートが悪化するトラック数が多くなるおぞれがある。さらに、高密度化に伴い、近似計算されたオフセットプロファイルの精度が厳しくなり、わずかな誤りであっても、オフトラックリードの可能性が高くなるおそれがある。このような問題に対しても、上記構成並びに方法により、柔軟にリードオントラック位置を補正することができる。
【0027】
また、近年、磁気記録装置はパーソナルコンピュータ用途以外に、映像や音声などのマルチメディアデータの記録再生用途に使われるようになってきており、データの転送レート劣化は重要な課題となっている。このような課題に対して、本発明は、任意のトラックにおけるオフトラックリードエラーに対して磁気ヘッドを速やかに正しくデータの書かれている位置へ制御しうるものであり、データの転送レート劣化を防止できるため、今後ますます有用になってくる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気記録装置の簡略的なブロック図、図2は本発明の実施の形態に係る磁気記録装置の磁気ヘッドの移動状態を概念的に示す図である。なお、従来の磁気記録装置と比較した場合、トラック幅は微細化されているが、基本的な磁気ディスクを回転させる構造や、磁気ヘッドを駆動させる構造、リードヘッドとライトヘッドとの配置構造、サーボ信号の書き込み方法は、図5から図9で説明したものと同様であり、同様な構成要素には同符号を付す。
【0029】
図1、図2において、103は磁気記録装置の記録媒体である磁気ディスクで、ロータリーアクチュエータ106の一端に設けた磁気ヘッド104により磁気データを読み込み、また書き込みを行う。604は磁気ディスク1を回転させるためのスピンドルモータ、605はロータリーアクチュエータ106に駆動力を与えるためのボイスコイルモータであり、このボイスコイルモータ605の駆動力により、ロータリーアクチュエータ106は、支持軸を中心に回動自在に支持されている。また、上記したように、磁気ヘッド104には、図6、図7において説明した場合と同様に、ライトヘッド201とリードヘッド202を備え、これらのライトヘッド201とリードヘッド202は、リードライトギャップ領域203により分離されて配設されている。
【0030】
また、図1において、606はスピンドルモータ604またはボイスコイルモータ605に電流を送る駆動回路(パワードライバー)である。スピンドルモータ604、ボイスコイルモータ605およびパワードライバー606によって磁気ディスク103上のすべてのデータゾーンへ磁気ヘッド104を移動可能に構成されている。また、この磁気記録装置を備えた電気機器に設けられている図外のホストコンピュータからの要求により、制御手段としてのハードディスクコントローラ607がパワードライバ606や読出・書込回路(リードライトチャネル)608を制御して、目的の場所にデータを書き込んだり、目的の場所からデータを読み込んだりする。ハードディスクコントローラ607はエラー訂正回路、インターフェース制御回路、サーボ回路などから構成されている。
【0031】
本実施の形態の磁気記録装置は、以下に述べるトラック精査工程に先立ち、上記図8に基づいて上述したように、ライトヘッド201とリードヘッド202の磁気ディスク半径方向への位置ずれ量301を、磁気ディスク103の外周部から内周部の複数点間で測定し、前記測定位置ずれ量の情報に基づいて、磁気ディスク103の外周部から内周部に対応して補間して位置ずれ量情報として、磁気記録装置に設けられた不揮発メモリ(図示せず)または、磁気ディスク103の一部に格納しておく工程(位置ずれ量情報の検出格納工程)を実行している。
【0032】
本実施の形態の磁気記録装置は、製造工程において、前記位置ずれ量情報の検出格納工程が行われた後に、以下に述べるトラック精査工程が実施される。ここで、図3はトラック精査工程の流れを示すフローチャートである。
【0033】
図3におけるステップ701で、磁気記録装置の製造工程中にトラックの精査工程が開始されたなら、トラック0から最終トラックにかけて磁気ディスク103上のトラックを精査していく(ステップ702)。
【0034】
ステップ703のトラック精査工程では、ボイスコイルモータ605を駆動してロータリーアクチュエータ106の一端に設けた磁気ヘッド104を目的トラック(目的トラックナンバーをTrkと定義する)へシークさせ、現在オントラックしてあるトラック上で精査用データを書き込み、次にオフセットテーブルを用いて該当トラックのオフセット量分、磁気ヘッド104をずらしてリードオントラックさせて精査用データを再生させる。
【0035】
このトラック精査工程におけるステップ704において、リードエラーが生じたかどうかを確認する。通常ならばリードエラーは発生せず、ステップ705で目的トラックナンバーをインクリメントさせて次のトラックを精査するが、リードエラーが起こった場合は、オフトラックライトエラーであるかどうかの確認ステップに入る。確認ステップへ分岐されたなら、まず、隣接トラック(Trk+1,Trk−1)の信号を消去し(ステップ706)、該当トラック上でトラック幅の−15%から+15%まで1%きざみでオフトラックリードを行い、リードライトチャネル608によって生成されるVGA信号をそれぞれのオフトラックステップで測定する。そして、その間で測定したVGA信号の最小値(VGAminと定義する)および最小値が測定されたオフトラック量(nminと定義する)を、磁気記録装置に設けるなどした不揮発メモリ(図示せず)に格納しておく(ステップ707〜ステップ713)。なお、不揮発メモリの代わりに、磁気ディスク103における所定箇所に記録して格納してもよい。
【0036】
すべてのオフトラックリードステップが完了した後、nminが0である場合(ステップ714)、オフトラックライトエラーではないので、これ以降のステップには進まず、Trkをインクリメントして次のトラックの精査に入る(ステップ705)。
【0037】
nminが0でない場合、先ほど消去された隣接トラック(Trk+1,Trk−1)へ信号を書き込み(ステップ715)、該当トラック上で、測定されたVGA信号の中でもっとも低い値が出たオフトラック量nmin%だけオフトラックさせて再びトラックの精査を行う(ステップ716)。ステップ716でリードエラーが発生しなかった場合、該当トラックは予め格納された位置ずれ情報よりnmin%ずれた位置へオントラックすることによって、データエラーリカバリーを伴わない使用可能なトラックとして認証される。逆にリードエラーが発生する場合は、隣接トラックへの影響を考慮して、該当トラックを使用不可として登録した後(ステップ717)、Trkをインクリメントし次のトラックの精査に入る(ステップ705)。
【0038】
トラックが使用可能であると認証されると、オフトラック量nmin%の情報を予め格納された位置ずれ位置(すなわち、磁気記録装置がリードコマンドを受け取った後、磁気ヘッドが先ず向かうリードオントラック位置)へ補正値を書き込むために、ライトオントラック位置より−nmin%オフセットさせ(ステップ718)、補正情報を少なくともトラック1周内に1箇所以上のバースト信号の直後へ書き込む(ステップ719)。
【0039】
この位置へ補正情報を書き込むことにより、磁気記録装置の実使用時、補正情報の書き込まれたトラックに対してのリードコマンド実行時、予め格納された位置ずれ情報を用いてリードオントラックする際、バースト信号の直後に補正値を認識する。認識した場合、直ちに補正値をもとにデータの書き込まれている位置へ再度オントラックを行い、磁気ディスク103の周回待ちなしでリードコマンド処理が行われる。
【0040】
その後、Trkをインクリメントし次のトラックの精査に入る(ステップ705)。この一連の動作をTrkが最終トラックになるまで繰り返し処理を行う。これにより、全てのトラックに対して、オフトラックライトエラーであるかどうかの精査が完了し、また問題のあるトラックに対しては補正値(誤差補正情報)が書き込まれることになる。
【0041】
このようにして、トラック精査工程において、サーボライト時にトラック幅が均一に書き込まれなかったことが原因による、前記予め格納された位置ずれ量ではない位置へサーボ信号のデータが書き込まれてしまったトラック(異常トラックと称す)を、検出し、この異常トラックとこの異常トラックの実際の書き込み位置とを検出し、前記実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差を誤差補正情報として、リードオントラックするトラック上のサーボ信号の終端に書き込む。
【0042】
そして、この磁気記録装置が、パーソナルコンピュータ或いは、映像や音声などのマルチメディアデータの記録再生用途の電気機器に組込まれて駆動される際に、以下のようにして制御されながら駆動される。以下に、前記電気機器に設けられたホストコンピュータより磁気記録装置へリードコマンドが発行された時(読み出し指示があった時)の処理を図4および図2を参照しながら説明する。
【0043】
ホストコンピュータより、磁気記録装置へリードコマンドが発行されたなら、まず、ボイスコイルモータ605により、ロータリーアクチュエータ106を駆動し、通常のリードシークと同様に磁気ディスク103上のライトオントラックより予め格納された該当トラックに対するリードヘッド202とライトヘッド201のずれ量ずれた位置へシークさせる(ステップ801)。そして、ステップ802で、このリードオントラック上のバースト信号の直後に誤差補正値が書き込まれているかどうかを判定し、このステップ802でリードヘッド202がこのリードオントラック上のバースト信号の直後に補正値を認識したなら、ステップ803で、直ちに現在のリードオントラック位置より補正値の量だけ磁気ヘッド104を微細に移動させる。その後、通常の磁気記録装置のリードコマンド処理がなされる(ステップ804)。一方、磁気ヘッド104がこのリードオントラック上のバースト信号の直後に補正値を認識しないならば、直ちに通常の磁気記録装置のリードコマンド処理がなされる(ステップ804)。
【0044】
この処理により、エラー処理による読み込み時間の遅延を低減することができ、転送レートの悪化を防ぐことができる。また、位置ずれ情報をより多くのサーボ信号の終端に書き込むことによって、より高感度に補正値(誤差補正情報)を認識でき、すばやく位置誤差を補正することができる。
【0045】
このように、リードヘッド202とライトヘッド201のオフセットを磁気ディスク103の外周から内周の間で2点以上測定し、その間のトラックのオフセットは近似計算によって補間することにより、全トラックにおけるオフトラックプロファイルを確保し、再生時のエラーレートを向上させる。ここで、この種の技術は既に存在するが、任意の位置で発生するトラック幅の不規則な変化に対応することができない。
【0046】
これに対して、本発明の位置ずれ補正方法は、位置ずれ量情報を、2トラック以上で測定した測定点間に存在するトラックの位置ずれ量を、近似計算により算出するだけでなく、これに加えて、トラック幅の大小による補間値の誤りによるトラックの位置ずれ補正を行うため、トラック幅の不規則な変化に対しても、完全に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る磁気記録装置およびその製造方法は、サーボトラックライターによりサーボライトされた磁気ディスクを備えた磁気記録装置に限定されるものではなく、サーボ信号の書き込み方法として、磁気転写方法が用いられている磁気ディスクおよび磁気記録装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気記録装置の簡略的なブロック図
【図2】本発明の実施の形態に係る磁気記録装置の磁気ヘッドの移動状態を概念的に示す図
【図3】本発明の実施の形態に係る磁気記録装置の製造方法における補正値書き込み動作を示すフローチャート
【図4】同本発明の実施の形態に係る磁気記録装置の製造方法における位置補正動作を示すフローチャート
【図5】磁気記録装置の構成を概略的に示す平面図
【図6】(a)および(b)は、磁気ヘッドの構成を示す正面図および側面図
【図7】(a)および(b)は、それぞれ、ロータリーアクチュエータのスキュー角による磁気ヘッドのリード部とライト部の円周方向へのずれ量を説明するための図で、(a)は磁気記録装置の簡略的な要部平面図、(b)はロータリーアクチュエータのスキュー角による磁気ヘッドのリード部とライト部の円周方向へのずれ量を表した拡大図
【図8】トラックへのライト処理とリード処理を簡略的に表した図
【図9】サーボ信号の書き込み方法を表した図
【符号の説明】
【0049】
102 スピンドルモータ
103 磁気ディスク
104 磁気ヘッド
105 支持軸
106 ロータリーアクチュエータ
201 ライトヘッド
202 リードヘッド
203 リードライトギャップ領域
301 ずれ量
605 ボイスコイルモータ
607 ハードディスクコントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクに対して情報を書き込むライトヘッドと情報を読み込むリードヘッドとが互いに分離されて設けられた磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持する回動自在のロータリーアクチュエータとを備え、磁気ディスクに、磁気ヘッドの位置制御を行うためのサーボ信号が同心状に記録されている磁気記録装置であって、
磁気ディスクの外周部から内周部の複数点間で測定した、ライトヘッドとリードヘッドの磁気ディスク半径方向への複数点の測定位置ずれ量の情報に基づいて、磁気ディスクの外周部から内周部に対応して位置ずれ量を補間して得られた位置ずれ量情報を格納した位置ずれ量情報格納手段と、
前記位置ずれ量ではない位置へサーボ信号のデータが書き込まれてしまったトラックの実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差またはこれに相当する値を誤差補正情報として格納した誤差補正情報格納手段と、
前記位置ずれ量情報と前記誤差補正情報とに基づいて磁気ヘッドを移動させる制御手段とを有する
ことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
誤差補正情報が、磁気ディスクにおける、リードオントラックするトラック上のサーボ信号の終端に、少なくとも当該トラック内に1箇所以上書き込まれていることを特徴とする請求項1記載の磁気記録装置。
【請求項3】
ライトヘッドとリードヘッドとが互いに分離されて設けられた磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持する回動自在のロータリーアクチュエータとを備え、磁気ディスクに、磁気ヘッドの位置制御を行うためのサーボ信号が同心状に記録されている磁気記録装置の製造方法であって、
ライトヘッドとリードヘッドの磁気ディスク半径方向への位置ずれ量を、磁気ディスクの外周部から内周部の複数点間で測定し、前記測定位置ずれ量の情報に基づいて、磁気ディスクの外周部から内周部に対応して補間して位置ずれ量情報として格納する工程と、
前記位置ずれ量ではない位置へサーボ信号のデータが書き込まれてしまったトラックとこのトラックの実際の書き込み位置とを検出し、前記実際の書き込み位置と前記位置ずれ量との差またはこれに相当する値を誤差補正情報として格納する工程と
を有することを特徴とする磁気記録装置の製造方法。
【請求項4】
誤差補正情報を、リードオントラックするトラック上のサーボ信号の終端に、少なくとも当該トラック内に1箇所以上書き込むことを特徴とする請求項3記載の磁気記録装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−210483(P2008−210483A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48221(P2007−48221)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】