説明

磁気記録装置

【課題】高トラックピッチで作製した基板加工型のパターンド媒体を備え、サーボ信号のSNの劣化を抑え、トラッキング動作を良好に行える磁気記録装置を提供する。
【解決手段】サーボ部に相当する凹凸パターンおよびデータ部に相当する凹凸パターンが形成された基板および前記基板上に堆積された磁性薄膜を有する磁気記録媒体と、一対の磁気シールドおよびこれらの間に挟まれたGMR素子を含む記録再生ヘッドとを具備し、磁気記録媒体のデータ部のトラックピッチが20nm以上300nm以下であり、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との相対線速度が11m/s以下であり、記録再生ヘッドの磁気シールドから磁気記録媒体の凸部に堆積されている磁性薄膜までの距離をm、磁気記録媒体のサーボ部において凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離をdとしたときd/mが0.2以上3以下である磁気記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板加工型のパターンド媒体を備えた磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体をサーボ信号やトラックまたは各データビットの形状に加工するパターンド媒体は、高密度磁気記録媒体として研究されている。なかでも、基板に上記の形状加工を施し、その上に従来と同様のプロセスで磁性膜を含む多層膜を堆積する方法で製造されるパターンド媒体(以下、基板加工型と記す)は、基板加工のコスト分が増加するだけであるので、コストを低減できる可能性がある。一方、平坦な基板上に磁性膜を含む多層膜を堆積した後にエッチング等で加工する方法で製造されるパターンド媒体(磁性膜加工型)も提案されている。このプロセスでは、エッチング工程前までは従来プロセスをそのまま適用できる利点があるが、磁性膜の微細な加工を行う際の磁気特性の劣化やダストの発生が懸念される。
【0003】
基板加工型のパターンド媒体は古くから検討されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1には、凹凸によりデータゾーンとサーボゾーンとを形成した磁気ディスクにおいて、ヘッドスライダのサーボゾーン通過時の浮上量を、データゾーン通過時の浮上量以下でグライドハイト以上とすることにより、サーボ信号の強度不足を補う技術が開示されている。特許文献1では、基板の凹凸の深さが200nm、浮上量が50nm、線速度が7m/sと記載されている。また、サーボ信号の最短波長が1.6μmという記載があることから、トラックピッチは1μm〜数μmであると思われる。
【0005】
特許文献2には、凹凸によりデータゾーンとサーボゾーンとを形成した磁気ディスクにおいて、サーボゾーンの凹部の溝幅をL、溝深さをWとして、L/W<0.8とすることにより、磁気ヘッドの浮上量の変動を抑える技術が開示されている。
【0006】
本発明者らは、高密度の磁気記録装置を開発するために、これらの従来技術を参考にして、トラックピッチが300nmと従来と比較して一桁以上小さなパターンド媒体を用いた磁気記録装置を試作した。その結果、サーボ信号の信号/ノイズ比(SN)が異常に低下し、トラッキング動作がうまく行えない場合があることがわかった。
【特許文献1】特開平9−282648号公報
【特許文献2】特開2000−293843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高トラックピッチで作製した基板加工型のパターンド媒体を備え、サーボ信号のSNの劣化を抑え、トラッキング動作を良好に行える磁気記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る磁気記録装置は、サーボ部に相当する凹凸パターンおよびデータ部に相当する凹凸パターンが形成された基板および前記基板上に堆積された磁性薄膜を有する磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記磁気記録媒体上に浮上した状態で位置決めされるスライダーに組み込まれ、一対の磁気シールドおよびこれらの磁気シールド間に挟まれた巨大磁気抵抗効果素子を含む記録再生ヘッドとを具備し、前記磁気記録媒体のデータ部のトラックピッチが20nm以上300nm以下であり、前記記録再生ヘッドと前記磁気記録媒体との相対線速度が11m/s以下であり、前記記録再生ヘッドの磁気シールドから前記磁気記録媒体の凸部に堆積されている磁性薄膜までの距離をm、前記磁気記録媒体のサーボ部において凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離をdとしたとき、d/mが0.2以上3以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高トラックピッチで作製した基板加工型のパターンド媒体を備え、サーボ信号のSNの劣化を抑え、トラッキング動作を良好に行える磁気記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、上述したように高トラックピッチで作製した基板加工型のパターンド媒体でSNが著しく低下する理由を詳細に調べた。その結果、媒体の凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離に依存して、サーボ信号にノイズが発生していることがわかった。この原因は、サーボ信号が生成される際に、ヘッドの磁気シールド内部に不安定な磁化構造が形成されるためではないかと想定される。
【0011】
一方、上述した従来技術の場合には、ヘッドについての記載はないが、おそらくシールドを用いていない誘導型のリングヘッドであるため、そのようなノイズ発生が起こらなかったものと思われる。あるいは、トラックピッチが大きく、加工端部における信号強度の変化の影響が小さかったため、このような問題が起こらなかったものと思われる。
【0012】
本発明の実施形態に係る磁気記録装置は、磁気記録媒体のデータ部のトラックピッチ、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との相対線速度、および記録再生ヘッドの磁気シールドから磁気記録媒体の凸部に堆積されている磁性薄膜までの距離mと、サーボ部における凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離dとの比率d/mを適切に設定することにより、サーボ信号のSNの劣化を抑え、良好なトラッキング動作を実現している。
【0013】
図1は、パターンド媒体を模式的に示す斜視図である。磁気記録媒体(パターンド媒体)11の表面には、バースト信号、アドレス、プリアンブルなどを含むトラッキングやデータアクセス制御のためのサーボ部13と、ユーザデータを書き込むデータ部12とが存在する。図1には、ディスク面におけるこれらの部分の配置を模式的に線で示している。
【0014】
図2は、図1のパターンド媒体におけるデータ部とサーボ部の一例を拡大して示す平面図である。図2のサーボ部13では、凹凸加工を施した基板の凸部上の磁性薄膜のパターンが、現行の磁気記録媒体のサーボパターンに対応している。サーボ部13には、たとえばトラッキング制御を行うためのバースト信号14が含まれている。図2のデータ部12では、周方向に連続したトラックを形成する磁性薄膜が凹部によって分離された状態で形成されている。このタイプのパターンド媒体は、ディスクリートトラック媒体とも呼ばれる。
【0015】
図3は、図1のパターンド媒体におけるデータ部とサーボ部の他の例を拡大して示す平面図である。図3のデータ部12では、データビットを形成する磁性薄膜が凹部によって分離された状態で形成されている。このタイプは、狭義のパターンド媒体である。
【0016】
図2に示したディスクリートトラック媒体では、線記録密度は現行の媒体と同様にヘッドによってトラック上に形成される磁化転移幅によって決まる。図3に示した狭義のパターンド媒体ではデータビットの加工形状によって線記録密度が決まる。図3は、図2と比較して一般に記録密度を高くすることができるが、作製が困難であり、ヘッドのアクセス制御も複雑になる。本発明は図2および図3のいずれのタイプにも適用できる。
【0017】
また、図2ではABCDバースト信号を例にとって図示しているが、後述するように、本発明は基板の段差によってサーボ信号を生成する際のノイズ除去に効果を奏するので、ABCDバーストに限らず位相差サーボやそれ以外のサーボ方式に対しても適用できる。すなわち、本発明は基板の加工形状によってサーボ信号を得る媒体に対して適用できる。
【0018】
図4にパターンド媒体の断面図を示す。基板21には、サーボ部およびデータ部に相当する凹凸パターンの加工が施されている。この基板21上に、下地層22、磁性薄膜からなる磁気記録層23、保護層24が形成されている。なお、磁気記録媒体の表面が平坦となるように埋め込みを施していても構わない。
【0019】
基板の凹凸形状の形成には、半導体プロセスと同様に、所望の形状マスクを介してエッチングを行い、マスクパターンを凹凸形状に転写してもよい。また、フラットな基板上に比較的やわらかいマスク材料を塗布し、そこにパターン形状を持つ原盤を押し付けて直接加工マスクを形成する、いわゆるインプリント法を用いてもよい。インプリントに用いるマスク材料としては、光硬化樹脂、SOG(スピンオングラス)、アルミナ微粒子などがある。また、基板にレジストを塗布し、そこに電子線などの高エネルギー線で直接パターンを描画してマスクとしてもよい。
【0020】
図5は、記録再生ヘッドの再生ヘッドを示す断面図である。再生ヘッドは、一対の磁気シールド31と、これらの磁気シールド31間に挟まれた再生素子としての巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)33を含む。磁気シールド31の媒体対向面(ABS)には保護膜32が形成されている。記録再生ヘッドはスライダーに組み込まれ、磁気記録媒体上に浮上した状態で位置決めされる。図5の矢印で示したx方向はヘッドの進行方向(トラック方向)である。
【0021】
磁気シールド31の材料には、磁気記録装置で通常用いられるものを用いることができる。磁気シールド31は、媒体の軟磁性下地層(SUL)と同様な軟磁性薄膜からなる。磁気シールド31に用いられる軟磁性薄膜は、SULよりもさらに透磁率が高く、保磁力が小さく、飽和磁束密度が大きいことが好ましい。ただし、効率の良い再生を行うためには、磁気記録媒体からの微弱な漏れ磁界を効率よくかつ高速に検出するために、高周波領域における透磁率も大きなことが好ましい。保護膜32の材料には、媒体の保護膜24と同様なものを用いることができる。
【0022】
再生素子(センサー)には、通常の磁気記録装置で用いられているものを用いることができる。現行の製品では、一般に巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)と呼ばれる磁性体/金属中間層/磁性体の多層構造の薄膜からなるものが用いられている。また、将来のセンサー材料として開発が進められているトンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)や、改良型(垂直通電型、ナノオキサイド層(NOL)挿入タイプ、電流狭窄型など)のGMR素子を用いることもできる。本発明においては、素子自体の構成は特に限定されない。図5では、GMR素子33に保護層を設けていないが、GMR素子33の媒体対向面に保護層を設けてもよい。また、GMR素子33をヘッドの媒体対向面から退避(リセス)させてもよい。
【0023】
図5では説明の便宜のために、再生素子(センサー)への電気信号の入出力、再生素子を安定に動作させるための部材、記録ヘッドなどを省略しているが、通常の磁気記録装置で用いられているこれらの構成を用いることができる。
【0024】
図6に本発明の実施形態に係る磁気記録装置の斜視図を示す。この磁気記録装置は、筐体50の内部に、磁気記録媒体11と、磁気記録媒体11を回転させるスピンドルモータ51と、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)を用いた再生ヘッドを含むヘッドスライダー55と、ヘッドスライダー55を支持するヘッドサスペンションアッセンブリ(サスペンション54とアクチュエータアーム53)と、ボイスコイルモータ(VCM)56と、回路基板とを備える。
【0025】
磁気記録媒体11はスピンドルモータ51に取り付けられて回転され、垂直または長手磁気記録方式により各種のデジタルデータが記録される。ヘッドスライダー55に組み込まれている磁気ヘッドはいわゆる複合型ヘッドである。記録ヘッドとしては、垂直磁気記録の場合には単磁極ヘッドが、長手磁気記録の場合にはリングヘッドが搭載される。これ以外の方式の記録ヘッド構造を用いてもよい。再生ヘッドとしては、上述したGMR素子を用いてもよいし、TMR素子やそれ以外の方式のものを用いてもよい。再生ヘッドは、再生素子を挟む一対の磁気シールドを有する。
【0026】
アクチュエータアーム53の一端にサスペンション54が保持され、サスペンション54によってヘッドスライダー55を磁気記録媒体11の記録面に対向するように支持する。アクチュエータアーム53はピボット52に取り付けられる。アクチュエータアーム53の他端にはアクチュエータとしてボイスコイルモータ(VCM)56が設けられている。ボイスコイルモータ(VCM)56によってヘッドサスペンションアッセンブリを駆動して、磁気ヘッドを磁気記録媒体11の任意の半径位置に位置決めする。回路基板はヘッドICを備え、ボイスコイルモータ(VCM)の駆動信号、および磁気ヘッドによる読み書きを制御するための制御信号などを生成する。
【0027】
本発明の実施形態に係る磁気記録装置では、磁気記録媒体のデータ部のトラックピッチが20nm以上300nm以下であり、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との相対線速度が11m/s以下であり、記録再生ヘッドの磁気シールドから磁気記録媒体の凸部に堆積されている磁性薄膜までの距離をm、磁気記録媒体のサーボ部において凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離をdとしたとき、d/mが0.2以上3以下であることを特徴とする。
【0028】
図7は、本発明の実施形態に係る磁気記録装置における磁気記録媒体と記録再生ヘッドとの関係を模式的に示す断面図である。この図は、磁気記録媒体のサーボ部の凸部上に再生ヘッドの磁気シールド31が位置している状態を示している。ヘッドの進行方向は紙面に対して垂直な方向である。図7の矢印で示したy方向はディスク半径方向、すなわちクロストラック方向である。mは再生ヘッドの磁気シールド31の下端部から磁気記録媒体の凸部上の磁性薄膜23までの距離である。磁気シールド31の保護膜32の厚みと磁気記録媒体の保護層24の厚みは無視している。この距離mは磁気スペーシングとも呼ばれる。dはサーボ部において凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離である。距離dは概ね加工された基板の凹凸深さに等しいが、下地層や中間層の堆積の具合によっては必ずしもdと基板の凹凸深さとは一致しない。
【0029】
上述したように基板加工型の磁気記録媒体については従来から研究が行われている。しかし、本発明者らは、トラックピッチが500nmよりも小さい、基板加工型のディスクリートトラックメディアおよびパターンドメディアで実現する実験を行った結果、従来技術では解決できない問題があることを見出した。この問題は、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との相対線速度が11m/s以下で、かつ、磁気記録媒体のデータ部のトラックピッチが300nm以下の場合に、サーボ信号に非線形なノイズが発生し、適切なサーボ動作ができなくなるというものである。このノイズは、外乱として外部磁界を印加した場合および温度を上げた場合などの耐環境試験を行う際により顕著になることもわかり、実際の製品では品質保証の点で問題となる。
【0030】
詳細な実験および検討の結果、このノイズは以下のような原因に基づくものであると推定された。図8は、磁気記録媒体と記録再生ヘッドとの関係を模式的に示す断面図である。図8の矢印で示したx方向はヘッドの進行方向(トラック方向)である。図9は、磁気記録媒体の凸部上に存在する磁性薄膜と片側の磁気シールド31との位置関係を模式的に示す平面図である。
【0031】
図8に示すように、サーボ部の上方を再生ヘッドの磁気シールド31が通過する際にGMR素子が感じる磁界は、磁気シールド31とその下方の磁性薄膜23との距離の変化、すなわちmとdとの組み合わせの変化によって作り出される。高密度記録ではトラック幅が小さくなるため、磁気シールド31が磁気記録媒体の漏洩磁界を検出するウィンドウ面積(図9に示す31の部分の面積)は小さくなってしまう。磁気シールド31の端部にはそもそも、欠陥等により磁気特性が劣化している部分があり、磁化の向き(磁壁)がそこにピンニングされやすく媒体磁界の応答も悪いことが知られている。また、磁気シールド31の体積が小さくなることで熱ゆらぎの影響も受けやすくなる。このような状況下でd/mが大きいと、大きな漏洩磁界(磁束)の変化がシールド内に及び、シールド内では局所的な磁気特性の違いによって不安定な磁化の動きが発生し、それがノイズになるのではないかと推定した。そこで、d/mの値を変えた媒体を作製し、その影響を調べた。その結果、d/mが0.2以上3以下の場合には、ノイズが小さくなることがわかった。この範囲を0.25以上2以下とすることで、より大きなノイズ低減の効果が得られた。なお、d/mの値は装置の仕様によって決まり、本発明が限定するところではない。
【0032】
また、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との相対線速度が11m/sよりも速い場合には、調べた範囲において大きなノイズの発生は起こらなかった。これは、線速度が大きい場合には、磁束の変化があまりに速いので、磁気シールドの内部では全体的に磁化の応答遅れが発生し、それほど不安定な局所磁化構造が形成されないためではないかと思われるが、明確な理由は不明である。さらに、トラックピッチの異なる媒体についても同様のノイズを調べたところ、トラックピッチが300nm以上の場合にはノイズは発生しなかった。
【0033】
線速度とトラックピッチの許容範囲を調べた結果、上述したようにd/mを0.2以上3以下にすることでノイズ発生を抑える効果が得られるのは、線速度が11m/s以下であり、磁気記録媒体のトラックピッチが50nm以上300nm以下の範囲であった。d/mが0.2以下では充分な信号強度が得られなかった。トラックピッチについては50nm以下の実験を行なっていないので、効果があることは期待されるが確認はしていない。
【0034】
本発明の効果は、磁化容易軸が媒体面内を向いている長手磁気記録媒体であっても、磁化容易軸が媒体垂直方向を向いている垂直磁気記録媒体であっても得られる。これは、長手記録であっても垂直記録であっても、サーボ信号は、段差によって作られるシールド内の漏洩磁界の変化を信号に変換するという点で同じであるためであると思われる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
図1、図2に示す平面構造および図4に示す断面構造を有するディスクリートトラック媒体を作製した。
【0036】
まず、ディスクリートトラック媒体のパターンの元になる原盤を作製した。Si基板上に感光性樹脂を塗布し、この感光性樹脂層に電子線を露光して潜像を形成した。この際、所定のタイミングで電子線を基板上の感光性樹脂に照射するための信号源とその信号源に同期して高精度に基板を移動させるステージを具備する露光装置を用いて露光した。このとき、同じ原盤上に50nm、120nm、200nm、300nm、400nmの5種類のトラックピッチ(Tp)となるパターンを作製した。この潜像を現像することにより凹凸パターンを形成した。
【0037】
作製されたレジスト原盤の上に通常のスパッタリング法によってNi導電膜を形成した。次に、導電膜の上に電鋳法により厚さ約300μmのニッケル電鋳膜を形成した。電鋳には昭和化学(株)製の高濃度スルファミン酸ニッケルメッキ液(NS−160)を使用した。電鋳条件は次の通りである。
スルファミン酸ニッケル:600g/L
ホウ酸:40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム):0.15g/L
液の温度:55℃
pH:3.8〜4.0
電流密度:20A/dm2
【0038】
この後、レジスト原盤から電鋳膜を剥離することにより、導電膜、電鋳膜及びレジスト残渣を備えたスタンパが得られる。次にレジスト残渣を酸素プラズマアッシング法で除去する。酸素プラズマアッシングは、酸素ガスを100ml/minで導入し4Paの真空に調整されたチャンバー内において100Wで10分間プラズマを点灯することで行った。
【0039】
こうして得られたスタンパがファザースタンパである。ファザースタンパ自体をこの後のインプリントプロセスに用いるスタンパとして使用できるが、多数の媒体を作製するために、このファザースタンパに上記の電鋳処理を繰り返し、スタンパを複製した。まずファザースタンパの表面にレジスト残渣を除去する工程と同様の酸素プラズマアッシングを行い、酸化膜を形成した。酸素ガスを100ml/minで導入し4Paの真空に調整されたチャンバー内において200Wで3分間処理した。この後、電鋳法により前述したものと同じ手法でニッケル電鋳膜を形成した。この後、ファザースタンパから電鋳膜を剥離してファザースタンパの反転型であるマザースタンパを得た。ファザースタンパからマザースタンパを得る工程を繰り返すことにより10枚以上の同じ形状のマザースタンパを得た。
【0040】
この後、ファザースタンパからマザースタンパを得る手順と同様にして、マザースタンパ表面に酸化膜を作製し、電鋳膜を形成して剥離することにより、ファザースタンパと凹凸形状が同じサンスタンパを得た。
【0041】
サンスタンパをアセトンで5分間超音波洗浄をした後、フッ素系剥離剤として塩素系フッ素樹脂含有シランカップリング剤であるフルオロアルキルシラン[CF3(CF27CH2CH2Si(OMe)3](GE東芝シリコーン株式会社製の商品名TSL8233)をエタノールで2%に希釈した溶液で30分以上浸し、ブロアで溶液をとばした後に、窒素雰囲気中120℃で1時間アニールした。
【0042】
ガラス製の1.8インチディスク基板上にレジスト(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製の商品名S1818をプロピレングリコール・モノメチル・エーテル・アセテート(PGMEA)で5倍に希釈したもの)をスピンコータで塗布した。厚さは約100nmであった。このレジスト膜に対し、上記のサンスタンパを450barで60秒間プレスすることによって、レジストにそのパターンを転写した。その後、真空ピンセットを用いてスタンパを剥離した。レジスト膜にパターン転写し、5分間UV照射して表面凹凸形状を硬化させた後、160℃で30分加熱してレジスト膜全体を架橋した。
【0043】
ディスク基板上の凹部のレジスト残渣を除去するため、酸素ガスによるRIEを行った。続けて、CF4ガスによるRIEを行い、ガラス基板をエッチングした。このエッチング時にRIE時間を制御することにより、凹凸の深さを変えた3種類の基板を作製した。この後、残渣レジストを酸素ガスによるRIEで除去し、図1および図2に対応する平面構造を持つ1.8インチガラスディスク基板を作製した。
【0044】
このディスク基板上に長手磁気記録媒体を作製した。スパッタリング法により、NiAl(20nm)/CrMo(10nm)/CoCrPtTaB(15nm)/C(3nm)の構造の薄膜を堆積した。CはCVD法により堆積した。この際、基板を150℃に加熱した。スパッタチャンバーから媒体を取り出した後、パーフルオロポリエーテルを潤滑剤としてディップ法で塗布した。
【0045】
この媒体の保磁力をVSM(振動試料型磁気力計)で調べたところ、3800Oeであった。
【0046】
この媒体を用いて磁気記録装置を作製した。上述したように同一媒体には50nm、120nm、200nm、300nm、400nmの5種類のトラックピッチ(Tp)となるパターンが形成されている。媒体には、それぞれdが5、10、20nmである3種類のものがある。dの大きさは作製した媒体の断面TEMにより評価した。サーボ信号のクロックは線記録密度1Mbpiの仕様に相当するものである。また、設計の異なるスライダーを4種類用意し、磁気記録装置を気圧の増減ができるチャンバーに入れて、スライダーの種類と気圧を調整することで、線速度2、6、10、11、12m/sに対し、浮上量が5、10、15nmとなる条件をあらかじめ求めておいた。また、接触動作が可能なスライダーを用意し、浮上量0nmの記録再生試験ができる装置も作製した。
【0047】
再生素子にはTMRセンサーのタイプのものを用いた。シールドのクロストラック方向の幅は75nmであった。シールド上の保護膜はCで厚さは3nm、媒体の保護膜の厚さも3nmであった。したがって、mの大きさは6、11、16、21nmとなる。この装置におけるd/mの値は表1のようになる。
【0048】
媒体に、ヘッドから一方向の磁界を発生させる消去動作を行い、DC消磁を行った。その後、ABCDバースト信号に基づいて、任意に選んだ100個所の位置でトラッキング動作を行い、トラッキング精度を調べた。トラッキング精度は、サーボ信号から得られるトラッキングエラー信号をトラック一周分収集し、その3σの値とした。
【0049】
実験の結果、線速度が12m/sではトラッキング精度は全てTpの20%以内であったが、11m/sではd/mの値に応じてトラッキング精度が異なることがわかった。このトラッキング精度は、線速度よりもd/mにより強く依存し、表2のようになった。この表において、◎は全ての線速度でトラッキング精度がTpの10%未満であったもの、○は全ての線速度でトラッキング精度がTpの10%以上20%未満であったもの、×は全ての線速度でトラッキング精度がTpの20%以上であったものである。
【0050】
トラッキング精度の良し悪しに関しては、たとえば磁気記録装置として高精度のものを得る場合には、トラッキング精度はTpの10%未満となることが好ましい。一方、汎用の、中程度の記録密度を安価に供給することを目的とする装置であれば、トラッキング精度はTpの20%未満であればよい。従って、線速度が11m/s以下の場合には、d/mが0.2以上3以下であることが好ましく、またd/mが0.25以上2以下であることがより好ましい。
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
トラッキング精度が悪い試料についてサーボ信号を詳しく調べたところ、サーボ信号にノイズが重畳し、直線的な三角波状になるのが好ましいトラッキングエラー信号が直線性の悪いものになっていることがわかった。このノイズ発生は観測している間においても変動し、時間的にも不安定なものであった。ノイズが発生する原因は、上述したように、シールドの内部での不安定な磁区の形成のためではないかと思われるが、詳細は不明である。また、d/mが0.2よりも小さい場合においても、このノイズは小さいと思われるが、実験を行っていないのでよくわからない。なお、Tpが400nmのものについては、調べた線速度において、トラッキング精度の悪化は見られなかった。
【0053】
次に、シールド幅が180nmのヘッドを用いて、d/mが0.24、0.31、1.25、1.82、3.33の場合のみトラッキング精度を調べてみた。その結果、11m/s以下の全ての線速度において表2と同じ判定となり、トラッキング精度の劣化はシールド幅にはあまり依存しないことがわかった。
【0054】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、図3に示す平面構造を有する、いわゆるパターンド媒体を作製した。基板には直径0.85インチのガラスディスクを用い、その上にSOGをスピンコートし、実施例1と同じスタンパでインプリントした後、250℃でベークして直接パターンを形成する方法をとった。SOGにSF6ガスでRIEを施し、その時間を制御することにより、凹凸の深さを変えた3種類の基板を作製した。
【0055】
この基板に対し、スパッタ法により垂直磁気記録媒体を作製した。層構成は、基板/FeCoTa軟磁性下地層(60nm)/Ta(5nm)/Ru(10nm)/CoCrPt(15nm)/C(3nm)とした。基板加熱はしていない。CはCVD法で作製した。スパッタチャンバーから媒体を取り出した後、パーフルオロポリエーテルを潤滑剤としてディップ法で塗布した。
【0056】
この媒体の保磁力をVSM(振動試料型磁気力計)で調べたところ、4500Oeであった。
【0057】
この媒体を用いて上述の磁気記録装置を作製した。実施例1と同じように、同一媒体に50nm、120nm、200nm、300nm、400nmの5種類のトラックピッチ(Tp)となるパターンが形成されている。媒体には、それぞれdが5、10、20nmである3種類のものがある。dの大きさは作製した媒体の断面TEMにより評価した。設計の異なるスライダーを4種類用意し、磁気記録装置を気圧の増減ができるチャンバーに入れて、スライダーの種類と気圧を調整することで、線速度2、6、10、11、12m/sに対し、浮上量が5、10、15nmとなる条件をあらかじめ求めておいた。また、接触動作が可能なスライダーを用意し、浮上量0nmの記録再生試験ができる装置も作製した。
【0058】
再生素子にはスペーサ層にNOLを設けた垂直通電のGMRセンサーを用いた。シールドのクロストラック方向の幅は75nmであった。シールド上の保護膜はCで厚さは3nm、媒体の保護膜の厚さも3nmであった。したがって、m(41)の大きさは、6、11、16、21nmとなる。この装置におけるd/mの値は実施例1と同じく表1のようになる。
【0059】
媒体に、ヘッドから一方向の磁界を発生させる消去動作を行い、DC消磁を行った。その後、実施例1と同様のトラッキング精度検査を行った。
【0060】
実験の結果、線速度が12m/sではトラッキング精度は全てTpの20%以内であったが、11m/sではd/mの値に応じてトラッキング精度が異なることがわかった。このトラッキング精度は、線速度よりもd/mにより強く依存し、実施例1と同じく表2のようになった。この表において、◎はトラッキング精度が全ての線速度でTpの8%未満であったもの、○はトラッキング精度が全ての線速度でTpの10%以上20%未満であったもの、×はトラッキング精度が全ての線速度でTpの20%以上であったものである。実施例1の場合と同じく、線速度が11m/s以下の場合には、d/mが0.2以上3以下であることが好ましく、d/mが0.25以上2以下であることがより好ましいことがわかった。このことは、ノイズの発生が、長手/垂直の記録方式の差よりも、上述した磁気シールドの磁化構造の不安定さにより強く依存性しているためであると思われる。なお、Tpが400nmのものについては、調べた線速度において、トラッキング精度の悪化は見られなかった。
【0061】
以下、本発明に実施形態に係る磁気記録媒体の各層に用いられる材料や、各層の積層構造について説明する。
【0062】
<基板>
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、Si単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板には、アモルファスガラスまたは結晶化ガラスを用いることができる。アモルファスガラスとしては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどがある。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスなどがある。セラミック基板としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの焼結体を繊維強化したものなどを用いることができる。Si単結晶基板、いわゆるシリコンウエハーは表面に酸化膜を有していても構わない。また、上記金属基板、非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
【0063】
<下地層>
下地層は磁気記録層の結晶の制御、粒径の制御、密着性の向上等の理由で用いられる。通常の磁気記録媒体で知られている下地層を用いることができる。下地層は上記の目的を効率よく達成するために、複数の層から構成されても良い。下地層は金属であっても、誘電体であっても、またそれらの混合であっても構わない。下地層を構成する層の表面がイオン照射、ガス暴露等によって改質されているものでも良い。
【0064】
また、下地層は磁性層であっても良い。特に磁気記録層が垂直磁化膜である場合には、高透磁率を有する軟磁性下地層(SUL)を設けることにより、軟磁性下地層上に垂直磁気記録層を有するいわゆる垂直二層媒体を構成することができる。垂直二層媒体の軟磁性下地層は、記録磁極からの記録磁界を通過させ、記録磁極の近傍に配置されたリターンヨークへ記録磁界を還流させるために設けられている。すなわち、軟磁性下地層は記録ヘッドの機能の一部を担っており、記録層に急峻な垂直磁界を印加して、記録効率を向上させる役目を果たす。
【0065】
軟磁性下地層には、Fe、NiおよびCoのうち少なくとも1種を含む高透磁率材料が用いられる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系およびFeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどが挙げられる。
【0066】
軟磁性下地層に、Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造、または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。
【0067】
軟磁性下地層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Coは、好ましくは80at%以上含まれる。このようなCo合金をスパッタリングにより成膜した場合にはアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示す。また、アモルファス軟磁性材料を用いることにより、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNb、及びCoZrTa系合金などを挙げることができる。
【0068】
軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上あるいは基板との密着性の向上のためにさらに下地層を設けてもよい。下地層材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、もしくはこれらを含む合金、またはこれらの酸化物、窒化物を用いることができる。
【0069】
軟磁性下地層と垂直磁気記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層の役割は、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断すること、および記録層の結晶性を制御することである。中間層材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、もしくはこれらを含む合金、またはこれらの酸化物、窒化物を用いることができる。
【0070】
スパイクノイズ防止のために軟磁性下地層を複数の層に分け、厚さ0.5〜1.5nmのRuを挟んで反強磁性結合させてもよい。また、軟磁性層と、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持った硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピニング層とを交換結合させてもよい。この場合、交換結合力を制御するために、Ru層の上下に、磁性層たとえばCo、または非磁性層たとえばPtを積層してもよい。
【0071】
<磁気記録層>
磁気記録層は、磁化容易軸が主に媒体垂直方向に向いている垂直磁化膜、あるいは磁化容易軸が主に媒体面内方向に向いている面内磁化膜のいずれでも用いることができる。磁気記録層は、Coを主成分とする合金、たとえばCoPt合金からなると大きな異方性を得ることができて好ましい。磁気記録層はさらに、酸化物を含んだ材料からなっても良い。この酸化物としては、酸化Co、酸化シリコン,酸化チタン、あるいは磁気記録層を構成する金属の酸化物が好適である。
【0072】
磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散している、いわゆるグラニュラー媒体であっても良い。特にディスクリートトラック媒体の場合には、線記録密度が従来媒体と同様のメカニズムで決定されると思われるので、従来媒体において線記録密度を高くできることが知られているグラニュラー媒体が好ましい。図3のパターンド媒体の場合には、線記録密度は加工精度で決まるので、グラニュラーでない微細構造の磁性薄膜を用いても良い。
【0073】
磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含む事により、磁性粒子の微細化を促進、あるいは結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。また、COとPtやPdの貴金属を多数積層した、いわゆる磁性人工格子を磁気記録層としても良い。また、FeやCOとPtやPdによって形成される規則層合金を用いることもできる。
【0074】
また、磁気記録層は多層構造であっても構わない。異なる磁気特性を持つ二層以上の磁性層の積層膜を磁気記録層とすることでより高密度の記録が行えるようになる。また、複数の磁気記録層と複数の非磁性層との積層膜全体を磁気記録層とする構成であっても構わない。たとえば、長手媒体の場合、複数の磁性層の間にRu層を挿入することにより、反強磁性結合を誘起させ、線記録密度を向上させることができることが知られており、この技術を用いても良い。
【0075】
磁気記録層の厚さは、好ましくは2ないし60nm、より好ましくは5ないし30nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置として動作し得る。磁気記録層の厚さが2nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向があり、磁気記録層の厚さが60nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。
【0076】
磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。
【0077】
<保護層>
保護層は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ作用を有する。保護層の材料としては、たとえばC、Si−N、Zr−O、Si−Nを含む材料が挙げられる。保護層の厚さは、0.5〜10nmとすることが好ましい。保護層の厚さを上記の範囲にすると、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。
【0078】
<潤滑層>
潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の磁気記録装置を構成する磁気記録媒体を示す斜視図。
【図2】本発明の磁気記録装置を構成する磁気記録媒体の一例を示す平面図。
【図3】本発明の磁気記録装置を構成する磁気記録媒体の他の例を示す平面図。
【図4】本発明の磁気記録装置を構成する磁気記録媒体の断面図。
【図5】本発明の磁気記録装置を構成する記録再生ヘッドの再生素子(センサー)の断面図。
【図6】本発明の磁気記録装置を示す斜視図。
【図7】本発明の磁気記録装置における磁気記録媒体と記録再生ヘッドとの関係を模式的に示す断面図。
【図8】本発明の磁気記録装置における磁気記録媒体と記録再生ヘッドとの関係を模式的に示す断面図。
【図9】本発明の磁気記録装置を構成する磁気記録媒体の凸部上に存在する磁性薄膜と片側の磁気シールドとの位置関係を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
【0080】
11…磁気記録媒体、12…データ部、13…サーボ部、14…バースト信号、21…基板、22…下地層、23…磁気記録層、24…保護層、31…シールド、32…保護膜、33…再生素子、50…筐体、51…スピンドルモータ、52…ピボット、53…アクチュエータアーム、54…サスペンション、55…ヘッドスライダー、56…ボイスコイルモータ(VCM)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボ部に相当する凹凸パターンおよびデータ部に相当する凹凸パターンが形成された基板および前記基板上に堆積された磁性薄膜を有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体を回転させるスピンドルモータと、
前記磁気記録媒体上に浮上した状態で位置決めされるスライダーに組み込まれ、一対の磁気シールドおよびこれらの磁気シールド間に挟まれた巨大磁気抵抗効果素子を含む記録再生ヘッドとを具備し、
前記磁気記録媒体のデータ部のトラックピッチが20nm以上300nm以下であり、前記記録再生ヘッドと前記磁気記録媒体との相対線速度が11m/s以下であり、前記記録再生ヘッドの磁気シールドから前記磁気記録媒体の凸部に堆積されている磁性薄膜までの距離をm、前記磁気記録媒体のサーボ部において凸部に堆積されている磁性薄膜と凹部に堆積されている磁性薄膜との距離をdとしたとき、d/mが0.2以上3以下であることを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
前記d/mが0.25以上2以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
前記磁気記録媒体が長手磁気記録媒体であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録装置。
【請求項4】
前記磁気記録媒体が垂直磁気記録媒体であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−12116(P2007−12116A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188385(P2005−188385)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】