説明

磁気部品および磁気部品の製造方法

【課題】磁気部品の小型化、薄型化を従来よりも性能を向上して実現できるだけでなく、電源ICなどを実装して電源モジュールを形成し、電源モジュールの薄型、小型化、高性能化を実現できる磁気部品を提供する。
【解決手段】コイル導体が形成された絶縁基板と、絶縁被覆された金属磁性粒子で形成される磁性層とからなる磁気部品において、上記絶縁基板は、その内周と外周に貫通孔を具備し、上記磁性層は、上記絶縁基板の第1主面および第2主面の両面に形成され、かつそれらの磁性層が上記絶縁基板に形成された貫通孔で接続され、閉磁路構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源用トランス、リアクトル等の磁気部品およびその製造方法に係り、特に半導体基板上に形成した半導体集積回路(以下ICと記す)と、コイルやコンデンサ、抵抗などの受動部品で形成されるDC−DCコンバータなどの超小型電力変換装置等に用いることのできる磁気部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子情報機器、特に携帯型の各種電子情報機器の普及が著しい。それらの電子情報機器は、電池を電源とするものが多く、DC−DCコンバータなどの電力変換装置を内蔵している。通常その電力変換装置は、スイッチング素子、整流素子、制御用ICなどの能動素子と、磁気部品、コンデンサ、抵抗などの受動素子との各個別部品をセラミック基板やプラスチックなどのプリント基板などの上に実装することでハイブリッド型電源モジュールとして構成されている。
【0003】
上述した携帯用を含めた各種電子情報機器の小型、薄型、軽量化の要望に伴い、内蔵される電力変換装置の小型、薄型、軽量化の要求も強い。ハイブリッド型電源モジュールの小型化は、MCM(マルチチップモジュール)技術や、積層セラミック部品などの技術により進歩してきている。
【0004】
しかしながら、個別の部品を同一基板上に、並べて実装するため、電源モジュールの実装面積の縮小化が制限されている。特にインダクタやトランスなどの磁気部品は、集積回路と比較すると体積が非常に大きいために電子機器の小型、薄型化を図る上で最大の制約となっている。
【0005】
近年、Agペーストなどで形成されるコイル導体とフェライト磁性体を積層して形成されるインダクタなどの磁気部品は、小型、薄型化が進んでいる。これらの部品は、単体では非常に薄く、薄型化の要求に答えているが、電源ICと磁気部品を個別に実装するために、やはり実装面積は大きくなる。特に、近年は携帯機器がさらに高機能化してきており、その結果、さらに実装面積削減が求められている。
【0006】
薄型化、小型化の要求に対応するために、半導体技術の適用により、半導体基板上に薄型のマイクロ磁気素子(コイル、トランス)を搭載した例も報告されている。
【0007】
特に、平面型磁気部品として、スイッチング素子や制御回路などの半導体部品を作り込んだ半導体基板の表面上に、薄膜コイルを磁性基板とフェライト基板とで挟んだ形状の平面型磁気部品(薄型インダクタ)を薄膜技術により形成したものが考案されている。(特許文献1参照)。
【0008】
この構造によれば、磁気素子の薄型化とその実装面積の削減が可能となる。しかし、真空プロセスで磁性膜を成膜することから、磁性膜を厚くできないため、磁気部品としての特性が悪く、特に電流の大きい所で使用する場合などは、磁性膜と絶縁膜との多数の積層化が必要であり、コストが非常に高くなるという問題があった。
【0009】
また、小型化、薄型化を実現する方法として、磁性絶縁基板を使用し、この磁性絶縁基板を貫通する貫通孔に形成された接続導体、磁性基板の両面に導体を形成し、ソレノイド状のコイル導体と実装電極を具備した薄型磁気素子も提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
この構造は、磁性絶縁基板に貫通孔を形成し、コイル導体を形成する際、同時に半導体素子や、実装基板などと接続するための実装端子を形成し、コイルとなる磁性絶縁基板にICを実装するだけで、新たな実装基板を不要とし、超小型・薄型の電力変換装置を構成するものである。
【0011】
また、薄型の磁気部品としては、樹脂基板上に形成したスパイラルコイルをフェライト板で挟み込む構造も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−196542号公報
【特許文献2】特開2004−27400号公報
【特許文献3】特開2005−210010号公報
【特許文献4】特開2004−342943号公報
【特許文献5】特開2006−310716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した通り、磁気部品単体としては、小型化、薄型化が進んでいるが、個別実装では、実装面積の縮小という要求には十分対応できていない。また、サイズが小さくなっているため、磁気素子としての特性、特に電流が大きい領域では、磁気飽和のために特性が悪化してしまう。これは、磁性体として使用しているフェライトの飽和磁化が0.3T程度と小さいことによるところも大きい。
【0014】
特許文献3に開示されているコイル素子は、スパイラルコイルをフェライトで挟み込む構造であって、上下のフェライトをT型、コの字型に加工し、それらで樹脂基板上に形成されたスパイラルコイルを挟み込む構造であり、上下のフェライトは接触していない(または一部接触している)磁気ギャップを有する開磁路構造となっている。従ってフェライトを使用しているものの、磁気ギャップの効果で磁気飽和を防ぐことができるため、電流の大きい領域でも磁気飽和しづらい特性を有する。しかしながら、磁気ギャップを有することで、フェライトの実質の透磁率は低下してしまい、インダクタンス値の減少を招く。そこで、インダクタンス値を大きくするために、コイルのターン数を増加することが必要となるが、これがRdc(コイル導体の抵抗値)の増加を招くため、結果的にRdc損失のために大電流領域で使用できないということになる。
【0015】
上述した磁気部品単体での薄型化と小型化、大電流対応を両立するために、筆者を含むメンバーは、酸化物絶縁材料をコーティングした導体で形成されるコイルを、フェライトにより絶縁被覆した磁性金属粒子からなる磁性粉末中に埋め込み、圧縮成形した構造の磁気部品を提案した(特許文献4参照)。
【0016】
本構造は、コイル導体を磁性体で埋め込むことにより、閉磁路構造としているため、インダクタンス値を大きくすることができ、特許文献3に示されている構造よりもコイルターン数を少なくすることができる。また、飽和磁化の大きな金属磁性体を使用していることから、閉磁路構造であっても磁気飽和しづらく、大電流領域でも使用することができるという特徴がある。
【0017】
ただし、この構造では磁性体は金属磁性粒子にフェライトを被覆した複合粒子を使用しているため、磁性体の絶縁性が十分ではなく、その結果、コイル導体に絶縁被覆をしなければならないという問題がある。
【0018】
また、特許文献5には、両面に導体パターンを有する絶縁基板の両面を磁性体を含む樹脂層で覆い、絶縁基板中央の開口部を介して両面の樹脂層が一体化された平面コイルが開示されているが、中央の開口部以外では両面の樹脂層がギャップを有する開磁路構造となっているため、特許文献3に開示されているコイル素子と同じ課題を有している。
【0019】
本願発明は、上述の引用文献に係る問題点を解決し、磁気部品の小型化、薄型化を従来よりも性能を向上して実現できるだけでなく、電源ICなどを実装して電源モジュールを形成し、電源モジュールの薄型、小型化、高性能化を実現できる磁気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を達成するために、絶縁基板上にコイル導体を形成し、そのコイルの内周部および外周部に貫通孔を形成し、その絶縁基板の第1主面および第2主面上に磁性膜を形成し、内周部および外周部の貫通孔にも磁性層を埋め込むことで、閉磁路構造とする構成とし、磁性層には金属磁性粒子に絶縁被膜を形成した複合粒子を成型した磁性材料を使用する構成とする。
【0021】
また、絶縁基板の第1主面上に電源IC等の外部素子との実装電極を有し、第2主面には機器側のプリント基板等との接続用電極を有する構成とする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、内周部および外周部に貫通孔を設けて閉磁路構造を実現することにより、磁気部品の小型化、薄型化を従来よりも性能を向上して実現できるだけでなく、電源ICなどを実装して電源モジュールを形成し、電源モジュールの薄型、小型化、高性能化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、第1の実施例の磁気部品の要部構成図である。図1(a)は、薄型磁気部品の絶縁基板およびコイル導体を第1主面側から透視した平面図、図1(b)は、図1(a)のX−X’線で切断したときの断面図である。
【0025】
本構成は、絶縁基板101の第1主面および第2主面にスパイラル状のコイル導体102a、102bを形成してあり、このコイル導体102a、102bは内周に形成された貫通孔105中のコイル接続導体105cを介して接続部電極105a、105bで電気的に接続されている。接続・一体化された両面のコイル導体の始端103と終端104は、外周側に形成される。
【0026】
コイル導体の内周部には貫通孔106が形成されており、かつ、外周部にも貫通孔107が形成されている。本実施例は絶縁基板を第1主面側の磁性層108と第2主面側の磁性層109で挟み込む構造であり、これらを形成する工程で、貫通孔106、107にも磁性層を埋め込むことで、閉磁路構造を形成している。
【0027】
なお、本実施例では、コイル導体を2層構造としたが、1層でも構わない。ただし、スパイラル状のコイルの場合、コイル始端を外周とすると、コイル終端は内周側となる。このため、コイルの始端、終端を外周に持ってこようとすると、必然的にコイルは2層、4層と偶数層となる。
【0028】
磁性体としては、磁性金属粒子に電気抵抗率の高い非磁性絶縁酸化物の被膜を形成した複合粒子を成型して形成したものを使用した。本材料は絶縁被覆されているため、コイル上に絶縁層を形成する必要はない。ただし、粒子の絶縁層が薄い場合は、抵抗率が下がるため、ある程度厚くする必要がある。この磁性層を所定の厚さにシート化したものを上下から挟み込み、それをプレス成型して貫通孔106、107にも磁性層を埋め込む。
【0029】
磁性金属粒子の表面に形成される絶縁酸化被膜を形成する材料としてはSiO2を挙げることができ、SiO2被膜の形成には水ガラスを用いることができる。また、この被膜はSiO2被膜に限定されるものではなく、SiN膜やアルミナ膜など、絶縁被膜を形成できればどの材質でも適用できる。また、形成方法もウェット法に限らず、ドライ法でも適用でき、被膜の形成方法は特に限定されるものではない。
【0030】
水ガラスは組成がNa20・xSiO2・nH20(x=2〜4)で、これを水に溶かした溶液はアルカリ性を示す。この溶液に磁性金属粒子を入れ、酸を溶液に加えると加水分解してゲル状の珪酸(H2SiO3)が析出し、磁性金属粒子表面に付着する。この後、磁性金属粒子を乾燥させれば、表面に珪酸膜が成膜された磁性金属粒子が得られる。珪酸膜の膜厚は、水ガラス水溶液の濃度で制御可能であり、20nm以下(1〜20nm)という薄い膜を再現性よく成膜できる。
【0031】
コイル導体の始端および終端となる部分については、後で電気的な接続をとることは容易であり、図2(a)に示すようにそれぞれの面から磁性体にレーザー加工などで貫通孔201を形成し、その後、Agペーストやはんだペーストなどで電極202を形成しても良い。または、コイルの層数が偶数の場合に限るが、後述のダイシングを行った後に、図2(b)に示すようにダイシングした側面から電気的接続点221をとり、同様にAgペーストやはんだペーストで電極222を形成しても良い。
【0032】
図3は、本実施例の具体的な製造工程を示す概略図である。図3に沿って、製造方法を説明する。
【0033】
まず、2層構造になった金属基板301a、301b上へコイル導体102a、102bを形成する(工程300)。コイル導体は、レジストのパターニング後、電解Cuめっきを施し、最後にレジストを剥離することで形成した。Cuめっきの膜厚は50μmである。
【0034】
次に2層構造となっている金属基板を剥離し、それぞれを絶縁基板(樹脂基板)101に接着する(工程310)。本実施例では樹脂基板として、厚さ20μmのポリイミドフィルムを使用した。この樹脂基板の材質は、後工程の熱、応力、厚さなどを考慮して決定すれば良く、ポリアミド、エポキシ、アクリルなどの材質もしくはそれらをベースにした基板を使用することができる。
【0035】
接着後に金属基板を剥離することにより、樹脂基板101上にコイル導体が転写され、2層構造のコイル基板が形成される(工程320)。
【0036】
次に、コイル導体102a、102bを電気的に接続するための貫通孔105をドリルで形成する(工程330)。貫通孔径は200μmである。貫通孔形成にはドリルだけでなく、レーザー加工や超音波加工など様々な手法を使用することができる。ただし、コイル導体と樹脂基板を同時に加工できる手法であることが必要である。
【0037】
次に、貫通孔105にもめっきを施すことにより、コイル導体102aと102bを電気的に接続する。ここでは、コイル導体102aと102bの接続部電極105aと105bが、めっきにより形成されるコイル接続導体105cを介して接続される構造となる(工程340)。
【0038】
本実施例では、コイル基板形成法に転写法を使用し、コイル導体形成後に貫通孔を形成し、再度めっきする手法を使用したが、これに限定されるものではなく、一般的なプリント基板の製造方法を適用しても良い。一般的には、貫通孔を形成してからめっきをする手法でも製作は可能である。また、プリプレグ法などの手法を使用することも可能である。今回は、樹脂基板が20μmと薄く、この上にレジストパターニングやめっきを施すことが難しいため、転写法を使用した。
【0039】
次に、後で磁性体を埋め込み、閉磁路構造を形成するための貫通孔をルーター加工で形成する(工程350)。内周側の貫通孔106は0.4mm×0.8mm、外周側の貫通孔107は0.2mm×1.6mmで形成した。
【0040】
次に、磁性層(第1主面)108と磁性層(第2主面)109とでコイル導体の上下から挟み込み、プレス成型をして、磁性体を埋め込む(工程360)。
【0041】
磁性体は、Ni78FeMo5(Niが78重量%、Moが5重量%、その他がFeという組成)の8μm粒子を50nmのSiOで被覆した粒子に、ポリビニルブチラールをバインダーとして混合したものでグリーンシートを形成し、それを所定の厚さまで積層した磁性シートを使用した。磁性シートの厚さは0.2mmである。
【0042】
この磁性シートでコイル基板を挟み込み、プレス成型することにより、貫通孔内部にも磁性体が埋め込まれる。今回、プレス圧は1177MPa(12トン重/cm2)で実施した。この基板を450℃の真空アニール炉で焼成して、コイル基板が完成する(工程370)。
【0043】
最後にダイシングで個片化し、図2(b)に示したように、Agペーストで側面から電極を取り出して完成する。
【0044】
図4は、本実施例で製作したインダクタの一層あたりのターン数とインダクタンス値の関係を示したものである。比較例として、実施例と形状・寸法が同じで、フェライトコアで挟み込んだ構造の特性も示した。フェライトコアの厚さは0.2mmであり、内周および外周の貫通孔で、上下のフェライトコアを接着剤で接着した。接着剤の厚さは10μmである。
【0045】
このグラフより、従来のフェライトコアで挟み込む構造と比較して、インダクタンス値が大きく取れることが分かる。このインダクタの実施例、比較例ともに総厚は520μmであった。
【実施例2】
【0046】
実施例1ではコイル導体102a、102b上に直接磁性体を埋め込んだが、さらに信頼性を高めたい場合は、コイル導体を絶縁層で被覆する。図5は、コイル導体を被覆した場合の構造を示している。製造工程としては、図3で示した実施例1の製造工程のうち、図3(e)に示す工程330の後に絶縁層501a、501bを形成した。今回は厚さ50μmのポリイミドフィルムを使用し、真空ラミネート法で全面に被覆した。ラミネート後のポリイミドフィルムの厚さは20μmとなった。
【0047】
インダクタとしては、絶縁層の厚さの分、厚くなり、約560μmとなった。特性は実施例1と同等であった。
【実施例3】
【0048】
実施例1では、インダクタの始端および終端のみを外部に取り出して、単体として使用するものであった。本実施例では、電源制御ICをインダクタ上に実装するための電極を具備している構造を形成した。
【0049】
図6は、本実施例の概略図を示すものであり、図6(a)はコイル部基板のみの平面図、図6(b)は図6(a)のY−Y’部の断面図である。図6(b)には磁性層も示している。
【0050】
本構造は、実施例1と同様に、絶縁基板601の第1主面および第2主面にスパイラル状のコイル導体602a、602bを形成してあり、このコイル導体は内周部に形成された貫通孔605を介して電気的に接続されている。コイル導体上には絶縁層608a、608bが形成されており、コイル導体の始端603と終端604は外周部に形成される。
【0051】
コイル導体の外周部にはコイル始端および終端と同様に実装電極609a、609bが第1主面および第2主面に形成されており、これらは実装電極接続部611,612で電気的に接続されている。
【0052】
コイル導体の内周部には貫通孔606が形成されており、かつ外周部にも貫通孔607が形成されている。絶縁基板を第1主面側の磁性層613と第2主面側の磁性層614で挟み込み、閉磁路構造を形成している。
【0053】
図7は、本実施例の具体的な製造工程を示す概略図である。図7に沿って、製造方法を説明する。
【0054】
まず、図3に示した実施例1の製造工程の図3(a)〜(c)、工程300〜工程320までを実施し、厚さ20μmの絶縁基板601としてのポリイミドフィルム基板上へ2層構造のコイル導体602a、602b、外周部の電極701a、701bを形成し、絶縁層608a、608bで表面を保護した(工程700)。コイル導体および電極の厚さは50μm、絶縁層の厚さは20μmである。
【0055】
次に、別の金属基板702a、702b上に電極609a、609bを形成し、それを工程700の基板の第1主面および第2主面に接着し(工程710)、実装電極を形成する(工程720)。電極の厚さは200μmである。接着層としては、ポリイミドを使用した。
【0056】
次に、電極609a、609b、701a、701bを電気的に接続するための貫通孔704をドリルで形成する(工程730)。貫通孔径は200μmである。
【0057】
次に、貫通孔704にもめっきを施すことで、電極609a、609b、701a、701bを電気的に接続する(工程740)。すなわち、実装電極609a、電極701a、701bおよび実装電極609bを順次接続する接続導体をめっきで形成し、これにより実装電極609a、電極701a、701bとコイル導体を接続する実装電極接続部611,612を形成するのである。
【0058】
次に、後で磁性体を埋め込み、閉磁路構造を形成するための貫通孔606をルーター加工で形成する(工程750)。内周側の貫通孔606は0.4mm×0.8mmである。なお、図示していないが、外周側の貫通孔607は0.2mm×1.6mmで形成した。
【0059】
次に、磁性層(第1主面)613と磁性層(第2主面)614でコイル導体の上下から挟み込み、プレス成型をして、磁性体を埋め込む(工程760)。
【0060】
磁性体は、実施例1と同様の材料(厚さも0.2mm)を使用し、プレス圧1177MPa(12トン重/cm2)でプレス成型した。この基板を450℃の真空アニール炉で焼成して、実装電極付きコイル基板が完成する。本コイル基板を用いれば、電源制御ICをコイル基板の上に直接実装することができ、電源制御ICおよびコイル基板を積層してなる超小型電力変換装置を容易に実現することができる。
【0061】
なお、コイル基板を磁性体で挟み込む際、電極上に磁性体が残ってしまう場合には、平面研磨を実施し、電極面を露出させてれば良い。今回は平面研磨を使用して、磁性体を20μm研磨し、電極を露出させた。埋め込み時の磁性層の厚さの制御が良好であれば、研磨をしなくても良いが、後の実装工程を考慮すると、ウォータージェットやウォーターブラスト、サンドブラストなどの、表面洗浄を実施した方が良い。
【0062】
図8は、本実施例で製作したインダクタの一層当たりのターン数とインダクタンス値の関係を示したものである。比較例として、実施例と同じ寸法・形状で、フェライトコアで挟み込んだ構造の特性も示した。フェライトコアの厚さは0.2mmであり、内周および外周の貫通孔で、上下のフェライトコアを接着剤で接着した。接着剤の厚さは10μmである。
【0063】
このグラフより、従来のフェライトコアで挟み込む構造と比較して、インダクタンス値が大きく取れることが分かる。このインダクタの総厚は、実施例、比較例ともに、560μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気部品の要部構成図であって、図1(a)は、薄型磁気部品の絶縁基板およびコイル導体を第1主面側から透視した平面図であり、図1(b)は、図1(a)のX−X’線で切断したときの断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る磁気部品の電極取り出し方法を示す概略図であり、図2(a)は、それぞれの面から電極を取り出す例を示し、図2(b)は、ダイシングした側面から電極を取り出す例を示す。
【図3】本発明の実施例1に係る磁気部品の製造方法の製作工程の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る磁気部品の一層あたりのコイルターン数とインダクタンスの関係を比較例と共に示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る磁気部品の要部断面図を示す図である。
【図6】本発明の実施例3に係る磁気部品の要部構成図であって、図6(a)はコイル部基板のみの平面図であり、図6(b)は図6(a)のY−Y’部の断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係る磁気部品の製造方法の製作工程の概略を示す図である。
【図8】本発明の実施例3に係る磁気部品の一層あたりのコイルターン数とインダクタンスの関係を比較例と共に示す図である。
【符号の説明】
【0065】
101 絶縁基板
102a,102b コイル導体
103 コイル導体の始端
104 コイル導体の終端
105 貫通孔
105a,105b 接続部電極
105c コイル接続導体
106 貫通孔(内周部)
107 貫通孔(外周部)
108 磁性層(第1主面)
109 磁性層(第2主面)
201 貫通孔
202 電極
221 電気的接続点
222 電極
301a,301b 金属基板
501a,501b 絶縁層
601 絶縁基板
602a,602b コイル導体
603 コイル導体の始端
604 コイル導体の終端
605 貫通孔(コイル接続部)
606 貫通孔(内周部)
607 貫通孔(外周部)
608a、608b 絶縁層
609a、609b 実装電極
611,612 実装電極接続部
613 磁性層(第1主面)
614 磁性層(第2主面)
701a,701b 電極
702a,702b 金属基板
704 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル導体が形成された絶縁基板と、絶縁被覆された金属磁性粒子で形成される磁性層とからなる磁気部品において、
前記絶縁基板は、その内周と外周に貫通孔を具備し、
前記磁性層は、前記絶縁基板の第1主面および第2主面の両面に形成され、かつそれらの磁性層が前記絶縁基板に形成された貫通孔で接続され、閉磁路構造を有することを特徴とする磁気部品。
【請求項2】
前記絶縁基板の第1主面および第2主面上に実装電極をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気部品。
【請求項3】
コイル導体が形成された絶縁基板と、絶縁被覆された金属磁性粒子で形成される磁性層とからなる磁気部品を製造する方法において、
前記絶縁基板上へコイルを形成する工程と、
前記絶縁基板の内周と外周に貫通孔を形成する工程と、
前記絶縁基板の第1主面および第2主面に形成される磁性層を形成する工程と、
前記磁性層が前記絶縁基板に形成された貫通孔で接続され、閉磁路構造とする工程と
からなることを特徴とする磁気部品の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁基板上へコイルを形成する工程と、前記絶縁基板の内周と外周に貫通孔を形成する工程との間に、さらに、
前記絶縁基板上に実装電極を形成する工程と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の磁気部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−205905(P2010−205905A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49445(P2009−49445)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】