説明

磁界センサおよびこれを用いた磁界測定方法

【課題】正負方向の判定が可能で、信頼性の高い磁界検出を可能にする。
【解決手段】本発明の磁界センサは、強磁性薄膜3と、前記強磁性薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部5A,5Bと、前記素子電流の方向に直交する方向における前記強磁性薄膜(端部間)の電圧を検出する検出部5C,5Dとを具備し、前記強磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して対称となるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサおよびこれを用いた磁界測定方法にかかり、特にオフセットがなく、高精度の磁界測定を実現するための磁界センサの電圧取り出しに関する。
【背景技術】
【0002】
磁界センサは、外部磁界の変化を電気信号に変換する素子であり、強磁性薄膜や半導体薄膜等の磁界検出膜をパターニングし、その磁界検出膜のパターンに電流を流し電圧変化として外部磁界の変化を電気信号に変換するものである。
【0003】
例えば、強磁性磁気抵抗効果センサは、強磁性体金属の電気抵抗が外部磁界により変化する現象(磁気抵抗効果)を利用して磁界強度を測定する。
例えば特許文献1では、高感度化を企図して、環状パターンの一部を開口して通電部を形成した磁界センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−274598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、図16に示すように、強磁性特性を有する磁性薄膜100にその直径方向に沿って配置された導体200に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とし、電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθ、強磁性薄膜100の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、
点A−B間の電圧VAB
AB=I(R+ΔRcos2θ) (1)
となる。ここでIは電流密度ベクトル、BM0は磁束密度ベクトル、Iは素子電流である。
【0006】
しかしながら、上記構成では、交流磁界を印加した際の正負方向の判別ができないという問題がある。これは、上記式(1)中でcos2θが正負で同じ値をとるためである。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、正負方向の判定が可能で、信頼性の高い磁界検出を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明の磁界センサは、磁性薄膜と、前記磁性薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、前記素子電流の方向に直交する方向における前記磁性薄膜端部間の電圧を検出する検出部とを具備し、前記磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して対称となるように形成されたことを特徴とする。
上記構成によれば、磁性薄膜の出力取り出し方向を素子電流方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して対称となるように形成することで、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
【0008】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、外形が円形であるものを含む。
この構成によれば、対称形であり、素子電流方向に対して対称となるように形成しやすく、信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
【0009】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、環状体であるものを含む。
この構成によれば、磁性薄膜の幅が小さくなるため、電気抵抗が増大し、素子の外形を大きくすることなく抵抗値を大きくすることができ、出力を大きくすることが可能となる。
【0010】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、正方形の環状体で構成され、前記正方形の対角線方向に電流が流れるように給電部が設けられたものを含む。
この構成によれば、高感度化をはかることができる。センサの出力Vmrは次式で表すことができる。
ただし、電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθ1、θ2
ABとACとおよびABとADのなす角をφ、
外部磁界がない時のAC間の電圧をVAC0、AD間の電圧をVAD0
磁気抵抗効果による電圧変化の最大値をΔVrとする。
【0011】
【数1】

【0012】
丸形環状においても略同式にて表現できるが、円環状の場合、電流密度ベクトルの方向がAからC、AからDの間で変化し、出力最大となるφ=45度以外の成分も存在するためひし形に比べて出力が小さくなる。
【0013】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、環状体であり、線幅が一定である。
この構成によれば、磁界を印加しないときの電圧が等しくなり、電圧出力がゼロとなるため、後段の回路において増幅をした時にオフセットによる飽和を抑制することができ、回路構成が簡単となり、かつ高精度の磁界検出が可能となる。
【0014】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、前記環状体の内部に、磁性膜からなる内部磁性薄膜が設けられたものを含む。
この構成により、磁性体の間に空間が形成されるため、外部磁界に対する感度が低下する。そこで電気抵抗を高めたままで、磁気的な感度のみを向上すべく、電気的に独立して内部磁性体膜を設けたことで、より高感度化を図ることができる。
【0015】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記内部磁性薄膜は、前記磁性薄膜と同一材料からなる磁性薄膜で構成されたものを含む。
この構成によれば、製造が容易でパターンの変更のみで高感度で信頼性の高い磁界センサを提供することができる。
【0016】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記内部磁性薄膜は、前記磁性薄膜と異なる磁性薄膜で構成されたものを含む。
この構成によれば、感度を調整することができ、また、多数の磁界センサを並べて配列する場合、感度をそろえるために、内部磁性薄膜の材料を調整することによっても感度の調整を図ることが可能となる。
【0017】
また本発明の磁界測定方法は、磁性薄膜のパターンが、素子電流の方向に対して対称となるように、素子電流を供給し、前記素子電流の供給方向に直交する方向で、前記磁性薄膜端部間の電圧を検出することで磁界強度を測定する。
この構成によれば、磁性薄膜の出力取り出し方向を素子電流方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して対称となるように形成することで、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明してきたように、本発明によれば、極めて簡単な構成で、電圧を素子電流方向と直交する点から取り出すようにしているため、磁界の方向を検出でき、オフセットもなく、信頼性の高い磁界検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の磁界センサの原理説明図
【図2】本発明の実施の形態1の磁界センサの原理説明図
【図3】本発明の実施の形態1の磁界センサの上面図
【図4】本発明の実施の形態1の磁界センサの断面図
【図5】本発明の実施の形態1の磁界センサの素子特性を測定するための測定装置を示す回路説明図
【図6】本発明の実施の形態1の磁界センサの素子特性の測定結果を示す図
【図7】本発明の実施の形態1の磁界センサの素子特性の測定結果を示す図
【図8】本発明の実施の形態1の磁界センサの電流値と出力電圧との関係を示す図
【図9】本発明の実施の形態2の磁界センサの原理説明図
【図10】本発明の実施の形態2の磁界センサの上面図
【図11】本発明の実施の形態2の磁界センサの断面図
【図12】本発明の実施の形態2の変形例の磁界センサの断面図
【図13】本発明の実施の形態2の変形例の磁界センサの上面図
【図14】本発明の実施の形態3の磁界センサの原理説明図
【図15】本発明の実施の形態3の磁界センサの上面図
【図16】従来例の磁界センサの説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態の説明に先立ち、本発明の測定原理について説明する。
本発明では、磁性薄膜として用いる強磁性薄膜に対し、素子電流方向に対し直交する方向に出力取り出しを行うようにするとともに、出力取り出し方向に対してほぼ対称となるようにしている。
【0021】
つまり図1に原理説明図を示すように、円形の強磁性薄膜3のパターンの中心に対して対称な位置にあり、この強磁性薄膜パターンの周縁上にある点A,Bを通電部とし、この線分ABに直交するとともに、円の中心を通る線分C,Dを出力取り出し方向としている。
【0022】
このとき、図1に示すように、強磁性薄膜3にその直径方向に沿って配置された導体200に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθと、強磁性薄膜3の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、点C−D間の電圧VCDは、電圧VACと電圧VADとの差で表すことができる。
これを数式化すると、
CD=I(ΔRsin2θ) (5)
で表すことができる。ここでIは電流密度ベクトル、BM0は磁束密度ベクトル、Iは素子電流である。
つまり交流磁界を印加した時、正負を判定することができる。
【0023】
また、式(1)で表した従来例の場合に比べて、磁界を印加しないときのオフセットがなく、ゼロとなるため回路構成を簡単にすることができる。
この構成によれば、強磁性薄膜3にその直径方向に沿って配置された導体200に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθと、強磁性薄膜3の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、点C−D間の電圧VCDは、電圧VACと電圧VADとの差で表すことができる。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態1の磁界センサについて説明する。図2にこの磁界センサの原理説明図、図3に、上面図、図4に断面図を示す。この磁界センサは図3及び4に示すように、シリコンからなる基板1表面に絶縁膜2として酸化シリコン膜を形成し、この絶縁膜2上に強磁性特性を有する強磁性薄膜3からなる環状パターンを形成し、この環状パターンの直径方向に沿って給電部5A,5Bを構成する導体パターン、および、この給電部5A,5Bから供給される素子電流の方向に直交する方向に形成された検出部5C,5Dとしての導体パターンとを具備したものである。
【0025】
つまり図2に原理説明図を示すように、円形の強磁性薄膜3のパターンの中心に対して対称な位置にあり、この強磁性薄膜パターンの周縁上にある点A,Bを通電部とし、この線分ABに直交するとともに、円の中心を通る線分C,Dを出力取り出し方向としている。
【0026】
このとき、図2に示すように、強磁性薄膜3にその直径方向に沿って配置された導体200に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθと、磁性薄膜3の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、点C−D間の電圧VCDは、電圧VACと電圧VADとの差で表すことができる。
従って前記式(5)が成り立ち、交流磁界を印加した時、正負を判定することができる。
また、磁界を印加しないときのオフセットがなく、ゼロとなるため回路構成を簡単にすることができる。
【0027】
ここで強磁性薄膜としては、単層構造の強磁性薄膜のほか、(強磁性体/非磁性導電体)構造のアンチフェロ(結合)型薄膜、(高保磁力強磁性体/非磁性導電体/低保磁力強磁性体)構造の誘導フェリ(非結合)型薄膜、(半強磁性体/強磁性体/非磁性導電体/強磁性体)構造のスピンバルブ型薄膜、Co/Ag系統の非固溶系グラニュラー型薄膜などから選択して形成される。
また導体パターンとしては金、銅、アルミニウムなどが用いられる。
【0028】
次に、この磁界センサの製造工程について説明する。
基板1としてのシリコン基板表面に、絶縁膜2としての酸化シリコン膜を形成し、この上層に、スパッタリング法により、強磁性薄膜3を形成する。このとき、磁界を印加しつつスパッタリングを行い、自発磁化方向が揃うように形成する。
そして、フォトリソグラフィによりこの強磁性薄膜3をパターニングし、円環状のパターンとする。
こののち、スパッタリング法により、金などの導電体薄膜を形成し、フォトリソグラフィによりパターニングし、図3及び図4に示すような給電部5A、5Bおよび検出部5C、5Dを形成する。
そして必要に応じて保護膜を形成し、磁界センサが完成する。
【0029】
本実施の磁界センサによれば、磁性薄膜の幅が小さくなるため、電気抵抗が増大し、出力を大きくすることができる。
【0030】
この磁界センサの出力特性を確認するため、図5に示すような測定装置を用いて実験を行った。図2乃至4に示した磁界センサ501の給電部ABに、交流電源507から変圧器506及び抵抗505を介して交流を供給するとともに、磁界センサ501の検出部CDにアンプ502を介して表示部としてのオシロスコープ504を接続したものである。503は安定化電源である。なおこの測定装置は鉄製のケーシング500内に収納されている。ここでは、この素子を搭載した素子基板を鉛直に配置し、素子と、測定すべき電流線との離間距離を約3mmとして測定を行った。
この測定結果を、図6および図7に示す。図6は素子電流I1を8.842Aとしたときの瞬時出力であり、図7は素子電流I1を0Aとしたときの瞬時出力である。
【0031】
このようにして得られた電流値と、素子出力電圧との関係を図8に示す。ここでは、アンプによるオフセットが5.888Vとなっているが、それ以外はオフセットもなく、信頼性の高いものとなる。
【0032】
なお、前記実施の形態では、鉛直方向に配置した素子基板を用いた測定について説明したが、測定すべき電線を素子基板上に載せることによって測定を行うようにしてもよい。
【0033】
また前記実施の形態において、線幅は一定とするのが望ましい。一定ではない場合は、抵抗値が対称となるように、膜厚を調整したり、補助パターンを付加するのも有効である。
【0034】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態では、図9乃至図11に示すように、前記実施の形態1の磁界センサの環状パターンを構成する強磁性薄膜3の環の内周に沿って相似形である円状の強磁性薄膜の補助パターン4を形成したことを特徴とするものである。構成としてはこの補助パターン4が付加されただけで、他の構成については前記実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。同一部位には同一符号を付した。ここで図9はこの磁界センサの原理説明図、図10に上面図、図11に断面図を示す。この磁界センサは基本的には前記実施の形態1と同様であるが、この補助パターン4の存在により、電気抵抗は高めたままで磁気的な感度を高めるようにしたものである。外側の環状パターン(3)と内部の補助パターン4とは電気的に接触していないため、電気抵抗は前記実施の形態1の磁界センサと同様であるが、磁気的には空間部が磁性薄膜で埋められるため、より多くの磁束を導くことができ、高感度化を図ることができる。
【0035】
なお、素子構造としては、図12に変形例を示すように、磁性体薄膜パターンを形成後基板表面全体をポリイミド樹脂からなる保護絶縁膜16で被覆し、スルーホールを介して給電部5A,5Bおよび検出部5C,5Dを形成してもよい。この構成によれば、磁性体薄膜の劣化を防止し、信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
【0036】
さらにまた、環状パターンの内部に形成される補助パターンとしては、同一材料で構成してもよいし、図13に示すように別の材料からなる磁性体薄膜で補助パターン24を形成してもよい。
【0037】
なお、保護膜としては、酸化シリコン膜や酸化アルミニウムなどの無機膜の他、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜を用いることも可能である。
【0038】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態では、図14および15に示すように、強磁性薄膜は、正方形の環状パターン33で構成され、前記正方形の対角線方向に電流が流れるように給電部5A,5Bが設けられ、これらに直交する方向に検出部5C,5Dが形成されたことを特徴とする。
本実施の形態でも、前記実施の形態1の磁界センサの環状パターン3に代えて正方形の環状パターン33を形成しただけで、他の構成については前記実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。同一部位には同一符号を付した。ここで図14はこの磁界センサの原理説明図、図15は、上面図である。
【0039】
ここで磁束密度ベクトルは素子が持つ自発磁化ベクトルMと外部磁界ベクトルHの合成であり、外部磁界がない場合には磁束密度ベクトルは自発磁化ベクトル方向となる。
外部磁界が交流磁界の場合は、自発磁化ベクトルを中心に図の上下方向に振動する。
【0040】
この構成によれば、センサの出力Vmrは次式で表すことができる。
ただし、電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθ1、θ2
ABとACおよびABとADのなす角をφ、
外部磁界がない時のAC間の電圧をVAC0、AD間の電圧をVAD0
磁気抵抗効果による電圧変化の最大値をΔVrとする。
前述したように、
【0041】
【数2】

【0042】
丸形環状すなわち円環状においても略同式にて表現できるが、円環状の場合、電流密度ベクトルの方向がAからC、AからDの間で変化し、出力最大となるφ=45度以外の成分も存在するため正方形に比べて出力が小さくなる。
【0043】
なお、前記実施の形態では、磁性体薄膜をスパッタリング法で形成したが、スパッタリング法に限定されることなく、真空蒸着法あるいは、塗布法、浸漬法などによっても形成可能である。
【0044】
また基板についても、シリコンなどの半導体基板のほか、サファイア、ガラス、セラミック等の無機系基板あるいは、樹脂等の有機系基板などいずれを用いてもよい。これらのなかでは特に、いわゆる可撓性に優れ、薄くて軽いものを用いることが好ましく、例えば、印刷配線板等として広く使用されているプラスチックフィルムと同様の基板を使用することができる。より具体的には、プラスチックフィルム材質として公知の各種の材料、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリポロピレン(PP)、テフロン(登録商標)等が利用可能である。可撓性の基板を用いることにより、測定すべき電線を囲むように配置するなど、より高感度となるように配置することが可能となる。また、ハンダによる接合を考慮して、耐熱性の高いポリイミドフィルムを用いるようにしてもよい。なお基板の厚さは、特に限定されるものではないが、1〜300μm程度の厚さのものが好ましい。
【0045】
さらにまた、ガラス基板などの基板上に直接磁性体薄膜パターンを形成して磁界センサを形成してもよいが、一旦チップを形成し、これをガラス基板やプリント配線板などにワイヤボンディング法や、フリップチップ法で実装するようにしてもよい。またチップ内に、処理回路も含めて集積化することでより高精度で信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
【0046】
なお前記実施の形態に限定されるものではなく、磁性薄膜の出力取り出し方向を素子電流方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成するものであれば適用可能であり、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
また前記実施の形態では強磁性薄膜を用いた磁界センサを用いたが、これに限定されることなく他の磁界センサを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明してきたように、本発明の磁界センサによれば、高精度の磁界強度を検出できることから、電流センサや電力センサなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
2 絶縁膜
3、33 強磁性薄膜((環状)パターン)
4、24 補助パターン
5A,5B 給電部
5C,5D 検出部
100 強磁性薄膜
200 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性薄膜と、
前記磁性薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、
前記素子電流の方向に直交する方向における前記磁性薄膜端部間の電圧を検出する検出部とを具備し、
前記磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して対称となるように形成された磁界センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁界センサであって、
前記磁性薄膜は、外形が円形である磁界センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の磁界センサであって、
前記磁性薄膜は、環状体である磁界センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の磁界センサであって、
前記磁性薄膜は、正方形の環状体で構成され、前記正方形の対角線方向に電流が流れるように給電部が設けられた磁界センサ。
【請求項5】
請求項3に記載の磁界センサであって、
前記磁性薄膜は、線幅が一定である磁界センサ。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載の磁界センサであって、
前記磁性薄膜は、前記環状体の内部に、磁性膜からなる内部磁性薄膜が設けられた磁界センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の磁界センサであって、
前記内部磁性薄膜は、前記磁性薄膜と同一材料からなる磁性薄膜で構成された磁界センサ。
【請求項8】
請求項6に記載の磁界センサであって、
前記内部磁性薄膜は、前記磁性薄膜と異なる磁性薄膜で構成された磁界センサ。
【請求項9】
磁性薄膜のパターンが、
素子電流の方向に対して対称となるように、素子電流を供給し、
前記素子電流の供給方向に直交する方向で、前記磁性薄膜端部間の電圧を検出することで磁界強度を測定する磁界測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−47730(P2011−47730A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195103(P2009−195103)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】