説明

磁着性を有する電子機器プリンター用印刷用紙の製造方法および磁着性を有する電子機器プリンター用印刷用紙

【課題】 電子機器プリンターで印刷する際に、印刷用紙のカールに起因して、印刷用紙がプリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルの発生が実質的にないような磁石層を有する印刷用紙の製造方法を提供すること。
【解決の手段】 厚さ0.05〜0.15mmの長尺の可撓性磁石シートからなる磁着層と厚さ0.05〜0.15mmの長尺の合成紙からなる印刷層を接着剤により積層してなる印刷用紙原反から採取される定形印刷用紙の製造方法において、印刷用紙原反は印刷層が外側になるようにロール状に巻き取った後、定形印刷用紙の長辺方向が印刷用紙原反の幅方向となるように裁断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器プリンターにスムーズに給紙することができる磁着性を有する定形印刷用紙の製造方法および定形印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴムや熱可塑性エラストマーにバリウムフェライトやストロンチウムフェライトの磁性粉を混入しこれをシート状に成形し、その表面に多極着磁した可撓性のあるゴム磁石シートは、印刷物と貼り合わせることにより、自動車、家具、ホワイトボード等のスチール製物品の表面に磁着して情報を掲示するのに利用されている。
【0003】
一方、掲示する情報をパソコン等で作成し、インクジェットプリンター等の電子機器プリンターで印刷することが近年盛んに行われており、このような電子機器プリンターで印刷できる用紙として、裏面に磁石層を有する印刷用紙が提案され(例えば、特許文献1及び2参照。)、実用化されている。
【0004】
【特許文献1】特許第2848582号公報
【特許文献2】特許第2819017号公報
【0005】
上記のような磁石層を有する印刷用紙の印刷層としては、セルロース繊維からなる紙を使用することが多いが、紙は吸湿性が大きく、また、磁石層との熱膨張率の差が大きいため、温湿度の変化により複合印刷用紙がカールを起こし、また、カールする程度や方向も異なる。そのため、印刷用紙のカールに起因して、印刷用紙がプリンターのヘッドに引っ掛かり、スムーズに印刷できないトラブルを起こすことが多かった。
また、天然素材の紙に代えて合成紙も一部使用されているが、印刷用紙の製造条件を制御してもカールの発生を完全に防止することは困難であり、印刷時にトラブルが発生していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、電子機器プリンターで印刷する際に、印刷用紙のカールに起因して、印刷用紙がプリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルの発生が実質的にないような磁石層を有する印刷用紙の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、プリンターへの給紙方向と直交する方向に印刷層が内側に凹状カールしていると、印刷用紙がプリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルが発生するが、外側に凸状カールしていると、このようなトラブルが発生せず、スムーズにプリントできることを見出し、このような凸状カールを常にさせるために、印刷層の材質、磁着層との積層方法、印刷用紙の原反からの採取方法等について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、厚さ0.05〜0.15mmの可撓性磁石シートからなる磁着層と厚さ0.05〜0.15mmの合成紙からなる印刷層を積層してなる印刷用紙原反から採取される定形印刷用紙の製造方法において、印刷用紙原反は印刷層が外側になるようにロール状に巻き取った後、定形印刷用紙の長辺方向が印刷用紙原反の幅方向となるように裁断することを特徴とする磁着性を有する電子機器プリンター用定形印刷用紙の製造方法にある。
また、本発明の要旨は、厚さ0.05〜0.15mmの可撓性磁石シートからなる磁着層と厚さ0.05〜0.15mmの合成紙からなる印刷層を積層してなる印刷用紙原反から採取される定形印刷用紙であって、定形印刷用紙の短辺方向が印刷層を外側にしてカールしていることを特徴とする磁着性を有する電子機器プリンター用定形印刷用紙にある。
【0008】
前記定形印刷用紙のサイズは、日本工業規格JIS P 0138に規定されるB4(257mm×364mm)、A4(210mm×297mm)、およびB5(182mm×257mm)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る磁石層を有する定形印刷用紙は、定形印刷用紙の短辺方向に印刷層が外側になるようにカールしているので、印刷用紙のカールに起因して、印刷用紙がプリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルの発生を実質的になくすことが可能になる。また、本発明に係る磁石層を有する定形印刷用紙の製造方法は、印刷用紙原反の製造工程において熱処理を施すとともに、印刷用紙原反を特定の方向に裁断することにより、上記のような常に一定方向にカールした電子機器プリンター用の磁石層を有する定形印刷用紙が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る定形印刷用紙において、スチール製物品等に磁着する層を構成する磁石シートは、合成ゴムや熱可塑性エラストマーにバリウムフェライトやストロンチウムフェライトの磁性粉を高充填したゴム組成物をシート状に成形し、その表面にN極とS極を交互にストライプ状に多極着磁することによって得られ、その厚さは0.05〜0.15mm程度が適当である。厚さが0.05mm未満では十分な磁着力が得られず、0.15mmを超えると重量増やコスト高になるばかりでなく、電子機器プリンターにスムーズに給紙するのが困難になり好ましくない。
【0011】
また、表面に印刷する層を構成する合成紙は、合成樹脂に白土を混合したり延伸加工により内部に多数の微細孔を形成したりして印刷性を向上させた合成樹脂製薄膜からなるものであり、その厚さは0.05〜0.15mmが適当である。厚さが0.05mm未満では磁石シートの黒っぽい色を十分に隠蔽するのが困難であるので美観上好ましくなく、また、鮮明な印刷を得ることが難しくなる。0.15mmを超えると電子機器プリンターへのスムーズな給紙が困難になる。
【0012】
磁石シートと合成紙の積層は、通常、ロールラミネーター装置を用い、2液硬化型接着剤でドライラミネーション法により貼り合わせる方法による。磁石シートと合成紙が積層された印刷用紙原反は、印刷層を構成する合成紙が外側になるようにロール状に巻き取る。ロール状に巻き取った印刷用紙原反は、その状態で一定時間保温する方法で硬化処理を施す。
保温温度は、40〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、保温時間は印刷用紙原反の巻き太さに依存するが、1〜12時間である。
【0013】
このように熱処理を施したロール状の印刷用紙原反を巻き戻すと、印刷層を構成する合成紙が外側になるように若干カールした状態になっている。この印刷用紙原反を裁断して定形印刷用紙を採取するにあたり、印刷用紙の長辺方向が印刷用紙原反のカール方向と直交する方向、すなわち、印刷用紙原反の幅方向となるように裁断する。
【0014】
このようにして採取した定形印刷用紙は、短辺方向に印刷層が外側にカールした状態を常に保っている。この定形印刷用紙を水平面に置いたとき、短辺方向の最大高さは5〜15mmの範囲である。
【実施例】
【0015】
図1は本発明の一実施態様を示す磁石シートと合成紙が積層された定形印刷用紙の斜視図である。
1は磁着性を有する定形印刷用紙を、2は磁着層を構成する磁石シートを、3は印刷層を構成する合成紙をそれぞれ示す。
【0016】
実施例
先ず、熱可塑性エラストマー(昭和電工社製、301A)にストロンチウムフェライト粉末(フージアマグネティクス社製、HM403、等方性)を配合し、これを圧延法により厚さ0.1mm、幅910mmのシート状に成形し、その表面にN極とS極を交互にストライプ状に着磁することによって長尺の磁石シート2を得た。次いで、磁石シート2と厚さ0.12mm、幅920mmの合成紙(ユポコーポレーション社製)3をロールラミネーターで接着剤(主剤、三井武田ケミカル社製、タケラックA−980、硬化剤、三井武田ケミカル社製、タケネートA−19)を用いて貼り合わせて定形印刷用紙1の原反を形成し、直径90mmの紙管に合成紙3が外側にくるようにしてロール状に20m巻き取った。巻き取った印刷用紙原反を80℃で5時間保温により硬化処理を施した。
このロール状の印刷用紙原反を幅297mmにスリットして3本巻き取った後、長さ210mmにカットしてA4サイズの定形印刷用紙を採取した。
【0017】
このようにして採取した合成紙3が外側に若干凸状カールした定形印刷用紙1を用い、パソコン用のインクジェットプリンターにカール方向(短辺方向)が給紙方向に直交する状態で給紙して連続10枚印刷を行ったところ、プリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルは皆無であり、いずれの印刷も美麗な仕上がりであった。
【0018】
比較例1
磁石シート2と合成紙3を貼り合わせた印刷用紙原反を巻き取る際、実施例とは逆に磁石シート2が外側にくるようにしてロール状に巻き取り、以下実施例と同様にして採取した。磁石シート2が外側に若干凸状カールした定形印刷用紙となり、実施例と同様にプリンター印刷を試みたが、プリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルが発生し、印刷不能であった。
【0019】
比較例2
実施例と同様な方法で製造したロール状の印刷用紙原反を幅210mmにスリットして4本巻き取った後、長さ297mmにカットして長辺方向が印刷層を外側にしてカールしたA4サイズの定形印刷用紙を採取し、実施例と同様にプリンター印刷を試みたが、プリンターへ給紙した後に印刷用紙が反転してしまい、プリンターのヘッドに引っ掛かるトラブルが発生し、印刷不能であった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施態様を示す定形印刷用紙の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 定形印刷用紙
2 磁石シート
3 合成紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.05〜0.15mmの長尺の可撓性磁石シートからなる磁着層と厚さ0.05〜0.15mmの長尺の合成紙からなる印刷層を接着剤により積層してなる印刷用紙原反から採取される定形印刷用紙の製造方法において、印刷用紙原反は印刷層が外側になるようにロール状に巻き取った後、定形印刷用紙の長辺方向が印刷用紙原反の幅方向となるように裁断することを特徴とする磁着性を有する電子機器プリンター用定形印刷用紙の製造方法。
【請求項2】
厚さ0.05〜0.15mmの可撓性磁石シートからなる磁着層と厚さ0.05〜0.15mmの合成紙からなる印刷層を積層してなる印刷用紙原反から採取される定形印刷用紙であって、定形印刷用紙の短辺方向が印刷層を外側にしてカールしていることを特徴とする磁着性を有する電子機器プリンター用定形印刷用紙。
【請求項3】
前記定形印刷用紙を水平面に置いたとき、カールした短辺方向の最大高さが5〜15mmである請求項2に記載の電子機器プリンター用定形印刷用紙。

【図1】
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【公開番号】特開2006−272639(P2006−272639A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92389(P2005−92389)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】