説明

礫用管埋設装置

【課題】オーガヘッドの背面への礫の噛み込みを防止して掘削効率を高めることができる礫用管埋設装置を提供する。
【解決手段】オーガヘッド21が後退したときにオーガヘッド21の背面に当接する回転支持部材14は、その先端がオーガヘッドの背面の外周縁部にのみ当接するように構成され、その環状の当接部14aの半径方向寸法を数ミリメートル程度に設定できる。これにより、オーガヘッド21の背面と回転支持部材14の当接部14aとの間に噛み込まれ得る土砂や礫の量はわずかであり、大径の礫を噛み込んでオーガヘッド21が後退不能となることを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、礫が存在する地盤を掘削しつつ管を埋設する装置に関し、より詳しくは、オーガヘッドの背面への礫の噛み込みを防止して掘削効率を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、礫が存在する地盤をオーガヘッドによって掘削しつつ後方から管を推進して地中に埋設する礫用管埋設装置が提案されているが、粘性土が混じった礫層を掘削しているときにオーガヘッドが圧密状態となり、掘削効率が極端に低下するという問題があった。
そこで、本願の出願人は、刃口部に対してオーガヘッドを前後動自在とすることによりこの問題を解消する礫用管埋設装置を開発して先に出願している(特許文献1)。
【0003】
この先願に係る礫用管埋設装置の構造について、図6および図7を参照して概説すると、地中に埋設する図示されない埋設管の先端に先導管1が接続されるとともに、この先導管1の先端には刃口部2が方向修正シリンダ3によって首振り可能に接続されて、その進路を修正できるようになっている。
また、埋設管、先導管1および刃口部2の内部にはオーガスクリュ4が挿通されるとともに、その先端に取り付けられたオーガヘッド5には、硬質地盤を破砕するためのディスクカッタ6a,6bがそれぞれ回転自在に支持されている。
さらに、刃口部2の内部には、オーガヘッド5を構成している円盤状のベースブロック7の背面7aに当接して一体に回転する回転支持ブロック8が、前後一対の軸受9,9によって回転自在に支持されている。
加えて、発進立坑に設けられている推進装置には、オーガスクリュ4、したがってオーガヘッド5を刃口部2に対して前後動させるための油圧シリンダが設けられている。
【0004】
これにより、粘性土と比較的小径な礫とが圧密混在している地盤の場合は、オーガヘッド5を刃口部2からわずかに前方に突出させて地盤の掘削を行う(図6)。
そして、掘削抵抗が高まったときには、オーガヘッド5を前後動させる動作を繰り返すことにより、地盤に衝撃を与えて粘性土と礫とによる圧密状態を解消させる。
さらに、硬い地盤に遭遇したときには、オーガヘッド5を一杯に後退させ、ベースブロック7の背面7aを回転支持ブロック8の前面8aに当接させた状態で掘削する。
これにより、オーガヘッド5に加わる荷重をオーガスクリュ4と刃口部2および先導管1とによって分担して受け持つことができるから、地盤に対してオーガヘッド5を強力に押し付け、ディスクカッタ6a,6aの作用で硬質地盤を容易に破砕しつつ掘削することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−17992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した先願に係る礫用管埋設装置においては、図7に示したように、回転支持ブロック8の前面8aが、ベースブロック7の背面7aのうち外周部分から内周部分にわたる大きな領域に密着するようになっている。
これにより、図6に示したように、ベースブロック7の背面7aと回転支持ブロック8の前面8aとの間の隙間内に大径の礫Sを噛み込むと、オーガヘッド5を後退させることができなくなってしまう。
また、オーガヘッド5の正確な回転が阻害されるため、掘削性能が低下するばかりでなく、方向修正シリンダ3によって進路を修正する機能も低下してしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、オーガヘッドの背面への礫の噛み込みを防止して掘削効率を高めることができる礫用管埋設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
礫が存在する地盤を掘削しつつ管を推進して埋設する装置であって、
前記管の先端に接続される先導管および刃口部と、
前記管、前記先導管および前記刃口部の内部に挿通されたオーガスクリュと、
前記オーガスクリュの先端に取り付けられて一体に回転しつつ推進方向に一体に前後動自在なオーガヘッドと、
前記オーガヘッドが後退したときにその背面の外周縁部に当接して一体に回転する、前記刃口部に同軸にかつ相対回転自在に支持された環状の回転支持部材と、
前記回転支持部材を半径方向内側から覆う、前記刃口部に同軸に固定された環状のカバー部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載した礫用管埋設装置においては、刃口部の内部においてオーガヘッドを後退させると、その背面に回転支持部材の当接部が当接し、両者は一体となって回転する。これにより、オーガヘッドに加わる荷重をオーガスクリュと刃口部とによって分担して受け持つことができるから、地盤に対してオーガヘッドを強力に押し付け、地盤を容易に破砕して掘削することができる。
このとき回転支持部材は、その先端がオーガヘッドの背面の外周縁部にのみ当接するように構成され、その環状の当接部の半径方向の寸法を数ミリメートル程度に設定することができる。
これにより、オーガヘッドの背面と回転支持部材の当接部との間に噛み込まれ得る土砂や礫の量はわずかであり、大径の礫を噛み込んでオーガヘッドが後退不能となることを確実に防止することができる。
また、オーガヘッドの背面のうち回転支持部材が当接する部分はその外周縁部のみであるから、掘削した土砂が通過するオーガヘッドの開口部分を大きく取ることができ、粘性地盤を掘削する際に粘性土による閉塞の発生を確実に防止することができる。
【0010】
加えて、回転支持部材は、カバー部材によって半径方向内側から覆われているので、オーガヘッドの後退に伴って後方に押動された大径の礫はカバー部材の案内斜面に当接し、回転支持部材に大きな外力を負荷することがない。
これにより、回転支持部材の回転が阻害されることはないから、オーガヘッドを正確に回転させることが可能となり、掘削性能の低下や方向修正シリンダによる進路修正機能の低下を招くことがない。
【0011】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載した礫用管埋設装置において、
前記カバー部材が、前記オーガヘッドの背面に位置する土砂や礫を前記オーガスクリュに向けて半径方向内側に案内する環状の第1の案内斜面を有しており、
前記回転支持部材が、前記オーガヘッドの外周縁部に当接する環状の当接部から前記カバー部材の案内斜面に向かって延びる環状の第2の案内斜面を有している、ことを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項2に記載した礫用管埋設装置においては、掘削に伴って発生した土砂や礫が、カバー部材の第1の案内斜面および回転支持部材の第2の案内斜面によって案内され、半径方向内側に移動してオーガスクリュに向かうから、オーガヘッドの背面から発進立坑に向けて速やかに排出することができる。
さらに、オーガヘッドの背面に存在している大径の礫は、オーガヘッドの後退に伴って後方に押動されると、第1および第2の案内斜面に沿って半径方向内側に変位する。
これにより、オーガヘッドの背面と回転支持部材の当接部との間に大径の礫が噛み込まれてオーガヘッドが後退不能となることを確実に防止することができる。
【0013】
また、請求項3に記載した手段は、請求項1または2記載した礫用管埋設装置において、推進方向後方に向かって階段状に大径となる外周面を有した段付き円柱状のクラッシャーが、前記第1の案内斜面に沿うように前記オーガヘッドの背面側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項3に記載した礫用管埋設装置においては、カバー部材の円錐状の第1の案内斜面とクラッシャーの階段状の外周面との間に大径の礫を押し込んで容易に破砕することができる。
これにより、オーガヘッドに取り付けたディスクカッタによって礫を大割りした後、クラッシャーによって礫を二次破砕することができるから、掘削効率を高めることができるばかりでなく、ディスクカッタの負荷を減少させて摩耗防止を図ることができる。
【0015】
また、請求項4に記載した手段は、請求項1または2記載した礫用管埋設装置において、前記オーガヘッドと前記オーガスクリュとの間にテーパスクリュが設けられていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項4に記載した礫用管埋設装置においては、地盤に含まれている礫が少なく粘性の高い土質を掘削する場合に、オーガヘッドとオーガスクリュとの間に設けたテーパスクリュによって粘性土を効率よく排土しつつ、効率よく地盤を掘削することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オーガヘッドの背面への礫の噛み込みを防止できるから、オーガヘッドの前後動が妨げられることはなく、地盤の掘削効率を高めて効率よく管を埋設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1〜図5を参照し、本発明に係る礫用管埋設装置の一実施形態およびその変形例について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、地盤中に管を推進する方向を前方と、発進立坑に向かう方向を後方と言う。
【0019】
本実施形態の礫用管埋設装置100は、図6および図7に示した従来の礫用管埋設装置と同様に、地中に埋設する図示されない埋設管の先端に先導管1が接続されるとともに、この先導管1の先端には刃口部10が方向修正シリンダ3によって首振り可能に接続されて、その進路を修正できるようになっている。
【0020】
刃口部10は、先導管1の先端に接続される基端側部材11と、この基端側部材11の外周側に螺着されて前方に延びつつ刃口部10の外周部分を形成する環状の外周部材12を有している。
また、基端側部材11の内周側には、次述する回転支持部材14を半径方向内側から覆う、円錐環状のカバー部材13が螺着されている。
そして、カバー部材13の内周面は、掘削した土砂や礫をオーガスクリュ20に向けて半径方向内側に案内する第1の案内斜面13aとなっている。
なお、この第1の案内斜面13aは、次述するベースブロック22の背面22aの外周縁部に向かって延びるようにその傾斜方向が定められている。
【0021】
また、外周部材12の内周面とカバー部材13の外周面との間の隙間には、環状の回転支持部材14が、外周部材12に取り付けられた軸受15によって刃口部10と同軸にかつ相対回転自在に支持されている。
この回転支持部材14は、次述するオーガヘッド21が後退したときにそのベースブロック22の背面22aの外周縁部に当接する環状の当接部14aと、この当接部14aからカバー部材13の案内斜面13aに向かって延びる第2の案内斜面14bとを有している。
図3に示したように、環状の当接部14aの半径方向寸法Hの値は数ミリメートルであり、第2の案内斜面14aがベースブロック22の背面22aに対してなす角度は30度〜60度である。
【0022】
オーガスクリュ20の先端に設けられたオーガヘッド21は、掘削した土砂や礫が後方に通過する開口部を具備した円盤状のベースブロック22を有している。
そして、このベースブロック22の前面側には、硬質地盤を破砕するためのディスクカッタ23,24と、掘削した土砂や礫を半径方向内側に変位させるためのスクレーパ25とが設けられている。
さらに、ベースブロック22の背面側には、後方に向かって段階的に大径となる外周面を有した円柱状のクラッシャー26が、カバー部材13の第1の案内斜面13aに沿うように、オーガスクリュ20と同軸に設けられている。
【0023】
次に、本実施形態の礫用管埋設装置100の作用効果について説明する。
【0024】
この礫用管埋設装置100においては、図示されない発進立坑内の推進機により、図2に示したように、刃口部10の内部においてオーガヘッド21を後退させると、ベースブロック22の背面22aに回転支持部材14の当接部14aが当接し、両者は一体となって回転する。
これにより、オーガヘッド21に加わる荷重をオーガスクリュ20と刃口部10および先導管1とによって分担して受け持つことができるから、地盤に対してオーガヘッド21を強力に押し付け、地盤を容易に破砕して掘削することができる。
【0025】
このとき回転支持部材14の先端部分は、ベースブロック22の背面22aのうち外周縁部にのみ当接するように構成され、その環状の当接部14aの半径方向の寸法は数ミリメートル程度に設定されている。
これにより、ベースブロック22の背面22aと回転支持部材14の当接部14aとの間に噛み込まれ得る土砂や礫の量はわずかであり、大径の礫を噛み込んでオーガヘッド21を後退させることができなくなることを確実に防止することができる。
【0026】
また、ベースブロック22の背面22aのうち回転支持部材14が当接する部分はその外周縁部のみであるから、掘削した土砂や礫が通過する開口部分22bを大きく取ることができ、粘性地盤を掘削する際に粘性土による閉塞の発生を確実に防止することができる。
【0027】
加えて、回転支持部材14は、カバー部材13によって半径方向内側から覆われているので、オーガヘッド21の後退に伴って後方に押動された大径の礫はカバー部材13の第1の案内斜面13aに当接し、回転支持部材14に大きな外力を負荷することがない。
これにより、回転支持部材14の回転が阻害されることはないから、オーガヘッド21を正確に回転させることが可能となり、掘削性能の低下や方向修正シリンダによる進路修正機能の低下を招くことがない。
【0028】
さらに、掘削に伴って発生した土砂や礫は、カバー部材13の第1の案内斜面13aおよび回転支持部材14の第2の案内斜面14aによって案内され、半径方向内側に移動してオーガスクリュ20に向かうから、オーガヘッド21の背面から発進立坑に向けて速やかに排出することができる。
さらに、オーガヘッド21の背面に存在している大径の礫は、オーガヘッド2の後退や排土される土砂および礫の圧力によって後方に押動されると、第1の案内斜面13aおよび第2の案内斜面14bに沿って半径方向内側に変位する。
これにより、大径の礫がオーガヘッドの背面と回転支持部材の当接部との間に噛み込まれることを確実に防止することができる。
【0029】
加えて、掘削に伴って発生した大径の礫は、カバー部材13の円錐状の第1の案内斜面13aとクラッシャー26の階段状の外周面との間に押し込まれて順次破砕される。
これにより、オーガヘッド21に取り付けたディスクカッタ23,24によって礫を大割りした後、このクラッシャー26によって礫を二次破砕することができるから、掘削効率を高めることができるばかりでなく、ディスクカッタ23,24の負荷を減少させて摩耗防止を図ることができる。
【0030】
以上、本発明に係る礫用管埋設装置の一実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、オーガヘッド21の背面側にクラッシャー26を設けたが、図4および図5に示したように、クラッシャー26に代えてテーパスクリュ27を設けることもできる。
すなわち、地盤に含まれている礫が多い場合には、図1および図2に示した礫用管埋設装置100を用いることにより、礫を破砕しつつ効率的に地盤を掘削することができる。
これに対して、地盤に含まれている礫が少なく粘性の高い土質を掘削する場合には、図4および図5に示した変形例の礫用管埋設装置200を用いることにより、粘性土を効率よく排土しながら効率よく地盤を掘削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】礫用管埋設装置の一実施形態をオーガヘッド前進状態で示す断面図。
【図2】礫用管埋設装置の一実施形態をオーガヘッド後退状態で示す断面図。
【図3】図1中の要部を拡大して示す断面図。
【図4】変形例の礫用管埋設装置をオーガヘッド前進状態で示す側面断面図。
【図5】変形例の礫用管埋設装置をオーガヘッド後退状態で示す側面断面図。
【図6】従来の礫用管埋設装置をオーガヘッド前進状態で示す断面図。
【図7】従来の礫用管埋設装置をオーガヘッド後退状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 先導管管
2 刃口部
3 方向修正シリンダ
4 オーガスクリュ
5 オーガヘッド
6 ディスクカッタ
7 ベースブロック
8 回転支持ブロック
9 軸受
10 刃口部
11 基端側部材
12 外周部材
13 カバー部材
13a 第1の案内斜面
14 回転支持部材
14a 当接部
14b 第2の案内斜面
15 軸受
20 オーガスクリュ
21 オーガヘッド
22 ベースブロック
23,24 ディスクカッタ
25 スクレーパ
26 クラッシャー
27 テーパスクリュ
100 一実施形態の礫用管埋設装置
200 変形例の礫用管埋設装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
礫が存在する地盤を掘削しつつ管を推進して埋設する装置であって、
前記管の先端に接続される先導管および刃口部と、
前記管、前記先導管および前記刃口部の内部に挿通されたオーガスクリュと、
前記オーガスクリュの先端に取り付けられて一体に回転しつつ推進方向に一体に前後動自在なオーガヘッドと、
前記オーガヘッドが後退したときにその背面の外周縁部に当接して一体に回転する、前記刃口部に同軸にかつ相対回転自在に支持された環状の回転支持部材と、
前記回転支持部材を半径方向内側から覆う、前記刃口部に同軸に固定された環状のカバー部材と、
を備えることを特徴とする礫用管埋設装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記オーガヘッドの背面に位置する土砂や礫を前記オーガスクリュに向けて半径方向内側に案内する環状の第1の案内斜面を有しており、
前記回転支持部材は、前記オーガヘッドの外周縁部に当接する環状の当接部から前記カバー部材の案内斜面に向かって延びる環状の第2の案内斜面を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載した礫用管埋設装置。
【請求項3】
推進方向後方に向かって階段状に大径となる外周面を有した段付き円柱状のクラッシャーが、前記第1の案内斜面に沿うように前記オーガヘッドの背面側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載した礫用管埋設装置。
【請求項4】
前記オーガヘッドと前記オーガスクリュとの間にテーパスクリュが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載した礫用管埋設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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