説明

示差的調節された肝細胞癌遺伝子およびその利用

本発明は、肝細胞癌(HCC)診断のため、HCCの進行または抑制あるいはHCC治療
法の有効性および/または有害性を評価する、および/またはHCC治療のための候補化合物
を同定するために用いられる肝細胞癌(HCC)用分子マーカーを提供する。さらに肝細胞癌
において示差的に発現している2以上の核酸分子のアドレス可能な集合を含む組成物であり、該核酸分子は、実質的に表1〜4のうちの1以上に示される核酸分子、またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログからなることを特徴とする組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の診断および治療の分野に属する。具体的には本発明は、肝細胞癌の診断および治療の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌(HCC)は、肝臓の最も一般的な原発性悪性腫瘍であり、世界的にみると、肝臓
癌の70%を超える割合を占めている(Parkinら, 1999)。B型肝炎 (HBV)およびC型肝炎(HCV)のウィルスの感染、肝硬変、男性であること、毒物への被爆などを含む多数の危険因子が、HCCの進展と関わっている。死は、一般には肝不全に起因して起こるが、肝不全は、肝
硬変および/または多重結節(multiple nodules)の急速な成長と関係している。毎年、
およそ25万〜100万の新規HCC症例が診断されており、特に癌は、東南アジア、中国およびサハラ以南のアフリカで優勢である。外科的切除が主な根治治療であると見なされているが、画像に示された時点では、わずか10〜15%の症例が手術に適するのみである。この疾
患が、進行した段階において撮像されて検出されるためか、あるいは根底にある低下した肝機能の余力が、そうした外科的な処置の適用を事前に妨げるためである。
【0003】
HCCの診断には、肝臓の塊の存在の検出ならびに放射線学検査および上昇した血清αフ
ェトプロテイン(AFP)レベルの検出 (YuおよびKeeffe, 2003)が含まれる。しかしながらAFPの上昇はHCCに選択的ではなく、肝臓の肝硬変といった良性の肝臓疾患および他の癌、例えば生殖細胞癌(BoslおよびHead, 1994)にも見られる。HCC治療には、インターフェロン
治療および抗ウイルス薬が挙げられるが、その結果は予測できないことが判っており、ならびに有効性も限られている(Lee, 1997; YuおよびKeeffe, 2003)。
【0004】
マイクロアレイがHCCの遺伝子発現の変化を扱うために使用されてきた(Chenら 2002, Okabeら 2001; Hondaら2001 ; Shirotaら2001; Tackels-Horneら 2001; Xuら 2001a; Xuら
2001b)。しかしながら、これらの報告は、それぞれの研究のために選択された組織サン
プルに限定されており、その結果は幅広い変化を示している。このため、潜在的な意義およびデータの有用性については限られている。
[発明の開示]
本発明の概要
本発明は、高い予測精度をもって、肝細胞癌(HCC)診断のため、HCCの進行または抑制あるいはHCC 治療法の有効性および/または有害性を評価する、および/またはHCC治療の
ための候補化合物を同定するために用いられる肝細胞癌(HCC)用の分子マーカーを提供す
る。
【0005】
1つの態様として、本発明は、2またはそれ以上の核酸分子のアドレス可能な集合(addressable collection)、またはこれらの核酸分子によりコードされ、肝細胞癌で示差的に発現されるポリペプチドを含む組成物を提供する。該核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。その組成物には、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子またはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログ、それらによりコードされるポリペプチド、あるいはこれらの核酸分子またはポリペプチドのサブセットをすべて含んでもよい。該本発明の核酸分子またはポリペプチドは、肝細胞癌の組織および非腫瘍組織において示差的に発現される。該核酸分子またはポリペプチドは、固体支持体に結合させてもよい。該組成物は、肝細胞癌の診断用または治療用の医薬品製造において用いられる。
【0006】
本発明の他の態様では、患者からサンプルを得て、該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現またはそれらの発現産物のレベルを検出することにより、該患者の肝細胞癌を診断する方法が提供される。それらの核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。
【0007】
別の態様として本発明は、患者からサンプルを得て、該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物レベルを検出することにより、該患者の肝細胞癌の進行をモニターする方法を提供する。それらの核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。そのサンプルは、2またはそれ以上の時点で採取してもよい。該方法は、2またはそれ以上の時点における核酸分子の発現レベルまたは発現産物レベルの比較を含んでもよい。
【0008】
本発明の異なる態様は、肝細胞癌の一治療法を患者に適用し、患者からサンプルを得て、該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物レベルを検出することにより、その治療法の有効性をモニターする方法を提供する。それらの核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。その治療法は、2またはそれ以上の適用時点で適用してもよい。またサンプルは、2またはそれ以上のサンプリング時点で採取してもよい。該方法は、2またはそれ以上の治療法の適用時点で、および/または2またはそれ以上のサンプリング時点で、核酸分子の発現レベルまたは発現産物レベルの比較を含んでもよい。
【0009】
本発明のもう一つの態様では、サンプルと試験化合物とを接触させ、次に該サンプルにおいて2またはそれ以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物のレベルを検出することにより、肝細胞癌を治療するための化合物をスクリーニング方法が提供される。それらの核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。
【0010】
上記の多様な態様の代替態様では、前記サンプルは、肝臓または血清でもよく、あるいは癌であると疑われるもの、または癌性でないものであってもよい。その方法は、癌でないサンプルおよび癌性ではないかと疑われているサンプルにおいて、2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物レベルを検出することをさらに含むことができる。核酸分子の示差的発現またはそれらの発現産物は、肝細胞癌、肝細胞癌の進行または肝細胞癌治療法の有効性を示す指標である。その患者は、肝細胞癌ではないかと疑われる場合でもよく、患者はヒトである。
【0011】
上記の多様な態様の代替態様において、前記方法は、2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物レベルと標準とを比較することを含んでもよく、あるいは遺伝子発現プロフィアルを作成することを含んでもよい。その方法は、高いスループットの方法である。
【0012】
異なる態様において本発明は、肝細胞癌において示差的に発現される2またはそれ以上の核酸分子またはこれらの核酸分子にコードされるポリペプチドを含む固体支持体を提供する。この場合、それらの核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。それらの核酸は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子のすべてから実質的になるもので、ならびに/あるいは肝細胞癌の組織および非腫瘍組織において、示差的に発現される。前記ポリペプチドは、表1〜4のうちのいずれか1つ以
上に表される核酸分子のすべてによりコードされるポリペプチドから実質的になってもよく、ならびに/あるいは肝細胞癌の組織および非腫瘍組織において、示差的に発現される。それらの核酸分子またはポリペプチドは、固体支持体に共有結合的に、または非共有結合的に結合している(例えばマイクロアレイ)。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は肝臓組織(例えば癌組織または 非癌性の組織)にお
ける2またはそれ以上の核酸分子の発現あるいはそれらの発現産物レベルを同定するための情報を収容しているデータベースを提供する。この場合、それらの核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1つ以上に表される核酸分子、あるいはそれらの相補体、フラグメント、変異体またはアナログから実質的になるものである。
【0014】
本明細書で使用される「組成物」には、本明細書に記載される複数の核酸分子(それらの相補体、アナログ、変異体、またはフラグメント)が含まれる。本明細書で用いる該組成物は、本明細書で記載される核酸分子および相補体、アナログ、変異体およびフラグメントによってコードされる複数のポリペプチドを含んでもよい。あるいは、上記ポリペプチドまたは核酸分子に特異的に結合することができる複数のポリペプチド(例えば、抗体)もまた本明細書で用いる該組成物に含まれてもよい。本組成物には、本明細書で記載される核酸分子(それらの相補体、アナログ、変異体、およびフラグメントも含め)、またはそうした核酸分子によりコードされるポリペプチドが任意の配合で含まれてもよい。したがって、該組成物は、本明細書に記載された、例えば本明細書の表または図のうち、いずれか1つまたはそれ以上において記載される核酸分子またはポリペプチドの2、3、4、5、6、7、8、9、10個など、全部までも含んでもよい。
【0015】
ある態様では、前記組成物は、本明細書、例えば本明細書の表または図のうち、いず
れか1つまたはそれ以上において記載された核酸分子またはポリペプチドのサブセットを含んでもよい。例えばタンパク質の機能または特徴によるサブセットグループ、具体的にはユビキチン化(ubiquitination)経路に関与するタンパク質、または特定の細胞内コンパートメントに局在しているタンパク質のグループである。これらの核酸分子またはポリペプチドは、HCCの診断、またはHCC進行の追跡を含む様々な応用面において、例えば基質(固体の基質または液体の基質)とともに使用されてもよい。
【0016】
「アドレス可能な集合体(addressable collection)」とは、例えばハイブリダイゼーション技術または抗体結合技術あるいは当業者に知られている他の任意の検出手段を使用することにより、検知され得る核酸分子またはポリペプチドの組み合わせをいう。
【0017】
「核酸」または「核酸分子」なる用語は、RNA(プラス鎖およびマイナス鎖)およびDNAをともに含み、cDNA、ゲノムDNA、合成の(例えば化学的に合成された)DNA
を包含する。核酸は、二本鎖でも一本鎖であってもよい。一本鎖の場合、その核酸はセンス鎖であるか、またはアンチセンス鎖である。核酸分子は、共有結合により結合した2個またはそれ以上のヌクレオチド、すなわち自然界にあるヌクレオチドまたは自然界にないヌクレオチドまたはヌクレオチド・アナログまたは誘導体が共有結合により結合したすべての鎖である。「RNA」とは、2個またはそれ以上の自然界にあるリボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチドが共有結合した配列を意味する。この用語に含まれる修飾RNAの例としてphosphorothioateRNAが挙げられる。
【0018】
「DNA」は、自然界にあるかまたは修飾されたデオキシリボヌクレオチドが2個またはそれ以上共有結合した配列である。「cDNA」は、RNA鋳型からRNA依存性-DNA
ポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用により作成される相補的またはコピーのDNAを意味する。したがって「cDNAクローン」は、クローニングベクターによって運ばれ、関心を向けるRNA分子に相補的な二重鎖DNA配列を意味する。本明細書で使用する「オリゴヌク
レオチド」は、ハイブリダイゼーション技術または増幅技術において用いられる単一鎖分子である。
【0019】
一般にオリゴヌクレオチドは、長さとして約15〜約100のいずれかの整数のヌクレオチ
ドであるが、それより長くてもよい。「プローブ」または「プライマー」は、相補的配列(標的)を含む第二のDNAまたはRNA分子に塩基対を形成できる、配列が明確な単一鎖DNAまたはRNA分子である。結果として生じるハイブリッド分子の安定性は、生じる塩基対形成の規模に依存し、ならびにプローブと標的分子との間の相補性程度、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度といったパラメーターに影響される。ハイブリダイゼーション・ストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度および有機分子(例えばホルムアミド)の濃度といったパラメーターに影響され、当業者に知られた方法によって決定できる。本明細書に記載された核酸配列またはそれらの一部に特異的なプローブまたはプライマーは、鎖長について少なくとも8ヌクレオチドから500超のヌクレオチドまでの何れかの整数で変化してもよい。プローブまたはプライマーが使用される目的および条件に応じて、上記範囲の間における任意の数値を含む。例えばプローブまたはプライマーは、鎖長が8,10, 15, 20,または25 ヌクレオチドであってもよく、あるいは長さが少なくとも30,40, 50,または60 ヌクレオチド、または長さが100,200,500,または1000ヌク
レオチドを超えるものでもよい。本明細書で記載された核酸分子に特異的なプローブまたはプライマーは、本明細書に記載された核酸配列に対して、20〜30%間での整数いずれか
よりも大きい配列同一性を有してもよい。あるいは少なくとも55〜75%間での整数いずれ
かの配列同一性、または少なくとも75〜85%間での整数いずれかの配列同一性、または少
なくとも85〜99% 間での整数いずれかの配列同一性、または100%の配列同一性を有していてもよい。
【0020】
プローブまたはプライマーは、当業者に知られた方法によって、放射活性的にまたは非放射活性で検出できるように標識することができる。プローブまたはプライマーは、核酸のハイブリダイゼーションを含む方法に使用することができる。例えば核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応による核酸増幅、Single stranded conformational polymorphism(SSCP)解析、制限フラグメント多型(RFLP)解析、サザン・ハイブリダイゼーション、ノーザン・ハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフト
アッセイ(EMSA), マイクロアレイおよび当業者に知られている他の方法である。プローブまたはプライマーは、ゲノムDNAまたはcDNA、例えば増幅によるかまたはクローン
されたDNAセグメントに由来するものであってもよく、あるいは化学的に合成されてもよい。
【0021】
核酸分子の「発現産物」とは、その核酸分子によりコードされる任意のポリペプチドである。一般にはそのポリペプチドは発現され得るものである。
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、2個またはそれ以上のアミノ酸からなる任意の鎖であり、そのアミノ酸は自然界にあるアミノ酸であるかまたは自然界にないアミノ酸でもよく、あるいはアミノ酸アナログでもよく、翻訳後の修飾(例えば
グリコシル化またはリン酸化)を問わない。本発明の「アミノ酸配列」、「ポリペプチド
」、「ペプチド」または「タンパク質」には、異常な結合、架橋および末端のキャップ、ペプチド結合でない結合、または選択の対象となる修飾基を有するペプチドまたはタンパク質が含まれてもよい。そのような修飾されたペプチドもまた本発明の範囲内にある。「修飾基」という用語には、ペプチド構造に直接結合する(例えば共有結合による)構造のみならず、ペプチド構造に間接的に結合する(例えば安定的な非共有的結びつき、あるいは核となるペプチド構造に隣接してもよい、付加的なアミノ酸残基、またはその擬似体、そのアナログまたは誘導体に共有結合的に結び付く)構造も含むことを意図している。例えば、修飾基は、ペプチド構造のアミノ末端またはカルボキシ末端に、あるいは中核ドメインに隣接するペプチドまたはペプチド様の領域に結合できるものである。
【0022】
あるいはそうした修飾基は、ペプチド構造の少なくとも1個のアミノ酸残基側鎖に、あ
るいは中核ドメインに隣接するペプチドまたはペプチド様の領域に(例えばリジン残基の
イプシロンアミノ基により、アスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基のカルボキシル基により、チロシン残基、セリン残基またはスレオニン残基のヒドロキシ基により、あるいはアミノ酸側鎖上の他の適当な反応性の基により)結合させることができる。
【0023】
ペプチド構造に共有結合で結合する修飾基は、化学的な構造を結合させるための当業界に公知である手段および方法を用いて付けることができる。これには、例えばアミド、アルキルアミノ、カーバメートまたは尿素の結合が挙げられる。本発明におけるペプチドには、表1〜4の核酸分子またはその相補体もしくはアナログによりコードされるペプチドが含まれる。
【0024】
「示差的な発現」または「示差的に発現される」とは、サンプルにおいて、転写されたメッセンジャーRNA量または翻訳されたタンパク質量における非存在、存在、変化(上昇もしくは下降)によって検出されるように、増加、上方調節または存在する、あるいは減少、下方調節または存在しない遺伝子発現であることを意味する。
【0025】
その変動は、例えばHCCサンプルと非腫瘍サンプルとの間における遺伝子発現レベルの
変化を比較することにより検出できる。遺伝子発現の変化の絶対量は、その変化量が再現性のあるものであり、かつ、測定できるものである限り、必ずしも重要ではない。ある態様では、転写されたメッセンジャーRNAまたは翻訳されたタンパク質の量における変化(上昇もしくは下降)が、少なくとも1倍または少なくとも1.5倍または2.0倍, 2.5倍, 3.0倍, 3.5倍, 4.0倍, 4.5倍, または 5.0倍を超えるものであってもよい。別の態様では、転写されたメッセンジャーRNAまたは翻訳されたタンパク質の量における変化が、40%,
50%, 60%, 70%, 80%, 90%, または100%であってもよい。
【0026】
「検出する」ということにより、本発明の核酸分子またはポリペプチドが存在するかまたは存在しないことを決定すること、あるいはその量を定量することを含むことを意図している。したがってその用語は、定性的または定量的な決定について本発明の材料、組成物および方法の使用を言及するものである。例えば、遺伝子発現レベルの上昇を検出することには、本発明の核酸分子またはポリペプチドのいずれかについて、コントロールと比較して10%と90%との間における任意の値の変化、または30%と60%との間における任意の値の変化、または100%を超える変化を定量することが含まれる。他の態様における遺伝子発現レベルにおける上昇の検出には、本発明の核酸分子またはポリペプチドのいずれかについて、コントロールと比較して、1倍と5倍またはそれより大きい倍数との間における任意の値の変化を定量することが含まれる。
【0027】
「肝細胞癌」は、肝臓細胞の癌、肝臓における主要な種類の細胞に生じる癌である。それは、腺癌の形態であり、肝臓腫瘍の最も一般的な種類である。「非腫瘍」の組織とは、癌性ではない組織または細胞群を述べている。ある態様において非腫瘍組織には、肝不全、例えばHBVまたはHCV感染、肝硬変、アフラトキシンなどへの被爆などを有する患者からの組織または細胞群が含まれてもよい。本明細書で記載される表現、「癌性ではないかと疑われる」とは、HCC細胞を含むと当業者によって信じられているHCC組織サンプルを意味する。
【0028】
「癌ではない」または「腫瘍ではない」とは、標準的な診断方法または他の技術(例え
ば組織染色法、顕微鏡検査、免疫学的測定など)によって、HCC細胞を含まない、あるいはHCCの証拠がないと示された組織サンプルを意味する。
【0029】
「サンプル」は、患者から分離された、いかなる器官、組織、細胞または細胞抽出物であり得る。そのようなサンプルは、肝細胞癌である哺乳類から分離されるか、あるいは肝細胞癌または腫瘍を有しない哺乳類から分離されるサンプルである。サンプルとしては限定されないが、例えば患者(ヒトまたは動物)、被検患者または実験動物から得られた組織、具体的には肝臓組織(例えば生検または剖検から)、細胞、末梢血液、全血、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮物、血液細胞タンパク質、血漿、血小板リッチの血漿、血漿濃縮物、任意の血漿分画からの沈降物、任意の血漿分画からの上清、血漿タンパク質画分、精製または部分精製された血液タンパク質または他の成分、血清、精液、哺乳類の初乳、乳汁、尿、便、唾液、胎盤抽出物、羊水、低温型沈降物、低温型上清、細胞溶解物、哺乳類細胞培養物または培養培地、発酵産物、腹水、血液細胞に存在するタンパク質、肝細胞癌を有する哺乳類から分離された固形癌または他の任意の検体、それからの抽出物などが挙げられる。
【0030】
さらにサンプルには、限定されるものではないが、正常、非腫瘍または形質転換された細胞(例えば組換えDNA工学による)により、細胞培養によって得られた産物が挙げられる。さらに「サンプル」には、患者から直接に分離されたものではなく、実験的条件下で創出された細胞または細胞系列が含まれてもよい。またサンプルは、人為的に導き出されたかまたは合成された無細胞のものであってもよい。ある態様においてサンプルとは、肝臓組織または細胞をいう。別の態様では、肝臓組織は、肝細胞癌患者;肝炎ウィルスに感
染した患者; 肝不全、例えば肝硬変の患者、あるいは正常な肝臓を有する患者(肝不全と診断されていないか、それを疑われていない)
本明細書で言及される患者は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ネズミ、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなどであろう。そうした患者は、臨床の患者、臨床試験の志願者、実験動物であってもよい。患者は、HCCを疑われているか、HCCであると診断された患者、あるいはHCCを有しないと確認されたコントロール患者であってもよい。HCCの診断的方法およびHCC診断における臨床的記述は、当業者に知られており、生検、例え
ば放射線走査手段による放射線科的な生検、腹腔鏡検査法または切開手術のバイオプシーが含まれる。
[発明の詳細な説明]
癌における表現型的変化は、ヌクレオチドレベルでの細胞変化によるものであるかもしれない。したがって腫瘍細胞では、非腫瘍細胞と対比して、何らかの遺伝子が発現しているか、過剰発現しているか、あるいは発現低下しているかも知れない。しかしながら、HCC患者を含む癌患者の間では、遺伝子発現のパターンには広範なバリエーションが存在す
る。このため異なるHCC腫瘍間で、調節または発現が変動している単一遺伝子または標的
遺伝子、または多数の遺伝子または標的遺伝子群の調節または発現を調べるだけでは、HCCの正確な診断または治療のため、あるいはHCC治療のスクリーニングのためには充分でない。示差的に発現しているHCC遺伝子、核酸分子および/またはポリペプチドのセットを選別することは、正確で予測可能な診断および治療、ならびに有効な治療法の設計を支援するであろう。
【0031】
本発明は、ある面では非HCC組織、具体的には肝臓または血清と比較したときのHCC細胞で示差的に発現している核酸分子およびポリペプチドを提示する。かくして本発明は、HCC組織および非HCC組織との間で、遺伝子発現についての包括的な変化(「遺伝子発現プロ
ファイル」)の解析により導出されるHCCの分子マーカーを提供する。さらに具体的には、HCCと診断された患者のHCC腫瘍組織および非腫瘍組織の対応ペアにおける細胞の包括的な変化を調べるために、cDNAマイクロアレイが利用された。加えて原発性HCC腫瘍および肝
臓癌細胞系列の間における遺伝子発現パターンが、あり得る生物的変化について調べられた。
【0032】
本発明により提供される核酸分子またはポリペプチドあるいはそれらのサブセットは、
例えばHCC診断のため;HCC 進行または抑制を評価するため;HCC治療法の有効性および/
または危害を評価するために;および/またはHCC治療のための候補化合物を高い予測精度
をもって同定するために用いられる分子マーカーとして機能する。
【0033】
その同定された遺伝子リストは、例えば特定遺伝子の発現を決定するための核酸マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションまたはタンパク質発現テクノロジーによって、あるいは他の手段、例えばディファレンシャルディスプレイ法、ゲル電気泳動法、ゲノムミスマッチスキャニング、表示判別解析(representational discriminate analysis)、クラスタリング・トランスクリプト・イメージングなどを単独でまたは組み合わせる手段により、迅速かつシンプルそして再現可能に多様なHCCサンプルをスクリーニングすることを可
能とする。
【0034】
よって本発明の選別された核酸分子またはポリペプチドは、標準的かつ再現的な示差的発現パターンを定義する。それは生検、剖検によって得られた多種多様な組織または細胞、例えばHCCの組織または細胞または血清、あるいは培養細胞系列および/またはインビトロの処置またはアッセイにおける発現パターンと対比される。本発明の選別された核酸分子またはポリペプチドおよびそれらのサブセットは、擬陽性または偽陰性を低減させるかまたは排除することで、HCC細胞または組織の信頼できる検出を可能とする。ある態様に
おいて本発明は、一般的なまたは包括的なHCC腫瘍マーカーとして使用される識別遺伝子
(discriminator genes)の群の混成セットを提供する。
【0035】
別の態様で、本発明の核酸分子またはポリペプチドは、HCCモデルとして使用されるHCC細胞系列の妥当性を評価するために使用されてもよい。これは遺伝子発現のプロファイルが、原発性のHCC腫瘍およびHCC細胞系列の間で変動するかもしれないからである。
【0036】
本発明についての様々な代替的な態様ならびに実施例が本明細書に記載されている。これらの態様および実施例は本発明の説明のためのものであり、その範囲を限定するものとして解されるべきではない。
核酸分子、ポリペプチドおよび試験化合物
本発明による化合物は限定されるものではないが、表1から表4の核酸分子(例えばBMI-1, ARMET, CRHBP, CSTB, DPT, ERBB3, EZH2, GPC3, HDGF, MDK, D123, FLJ10326, ICAP-1A, LASP1, PODXL)と実質的に同一の分子およびその相補体、アナログ、フラグメントお
よび変異体が含まれ、ならびに例えば表1〜4の核酸分子によりコードされるポリペプチド、その相同体(homologs)およびフラグメントも含まれる。
【0037】
本発明のある態様において、本発明の化合物には、表1〜4の核酸分子によりコードさ
れるポリペプチドに特異的に結合する抗体が含まれる。抗体はそれが認識する抗原と「特異的に結合」し、抗原、例えば本明細書に記載される核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチドと結合するが、サンプル中にある他の基準(reference)分子、例えば
本明細書に記載される核酸分子のいずれかと実質的に同一ではない核酸分子によりコードされるポリペプチドを実質的に認識せず、したがって結合しない。そのような抗体は、例えばサンプル中の別の基準分子に対する該抗体の親和力よりも少なくとも10倍、100倍、1000倍または10000倍も大きい親和力をその抗原について有する。
【0038】
「実質的に同一の」配列とは、本明細書で論じるように基準配列と1個以上の保存的置
換のみにより異なっているアミノ酸またはヌクレオチドの配列である。代わりにアミノ酸または核酸分子の生物的機能を損なわない、あるいはアミノ酸または核酸分子の検出性(例えばハイブリダイゼーションまたは特異的な結合による)を妨げない配列上の位置での1個またはそれ以上の非保存的置換、欠失もしくは挿入である。
【0039】
そうした配列は、例えば、「アライン・プログラム」(MyersおよびMiller, CABIOS, 1989,4 :11-17) またはFASTAを使用し、比較用の配列に対して、アミノ酸またはヌクレオチドレベルで最適になるように並べたときに10%〜99%のうちのいずれかの整数、またはより一般的には、少なくとも10%, 20%, 30%, 40%, 50%, 55%または60%、または少なくとも 65%, 75%, 80%, 85%, 90%,または95%, または96%, 97%, 98%, または99%もの同一性がある

【0040】
ポリペプチドについて、比較配列の長さは、少なくとも2, 5,10, または15個のアミノ
酸であり、あるいは少なくとも20, 25, または 30個のアミノ酸である。別の態様では、
比較配列の長さは、少なくとも35, 40, または50個のアミノ酸であるか、または60個を超え、80個を超え、 または100個を超えるアミノ酸であってもよい。核酸分子では、比較配列の長さは、少なくとも 5,10, 15,20, または25個のヌクレオチド、または少なくとも30, 40, または50個のヌクレオチドである。別の態様では、比較配列の長さは、少なくとも
60,70, 80, または90個のヌクレオチド、または100個を超え、200個を超え、または 500個を超えるヌクレオチドである。
【0041】
配列同一性は、公に入手できる配列解析ソフトウェア(例えばGenetics Computer groupの配列解析ソフトウェアパッケージ, ウィンスコンシン大学バイオテクノロジーセンター, 1710ユニバーシティアベニュー, マジソン, Wis. 53705, またはNational Library of Medicineから入手できるBLAST ソフトウェア、または本明細書に記載されるものを用いて容易に測定できる。有用なソフトウェアの例として、Pile-upおよびPrettyBoxプログラムが含まれる。そのようなソフトウェアは、種々の置換、欠失、置換および他の修飾に対し、相同性の程度を評価することにより類似配列を組み合わせる。
【0042】
あるいは、またはつけ加えるが、2つの核酸配列は、もしこれらが高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするのであれば「実質的に同一」である。ある態様における高ストリンジェンシー条件とは、例えば少なくとも長さが500個のヌクレオチドDNAプロ
ーブを用いて、0.5 M NaHP04, pH 7.2, 7% SDS, 1 mM EDTA, および1 % BSA (フラクションV)を含有する緩衝液中、65°Cの温度のもとで、あるいは48% ホルムアミド, 4.8× SSC, 0.2 M Tris-HCl, pH 7.6, l×Denhardt溶液, 10%デキストランサルフェートおよび0.1 % SDSを含む緩衝液中で42°Cの温度のもとで起こるハイブリダイゼーションに匹敵するハイブリダイゼーションを許容する条件である(これらは高ストリンジェンシーのノーザン
またはサザン・ハイブリダイゼーションの典型的な条件である)。ハイブリダイゼーショ
ンは、約20〜30分間にわたり、または約2 〜6 時間、または約10 〜15 時間または24 時
間以上の時間にわたって実施されてもよい。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、分子生物学者によって日常的に行なわれる多数の技術が成功裏に終わるかにもかかっていることである。例えば高ストリンジェンシーのPCR、DNA配列決定、一本鎖コ
ンホメーション多型解析(SSCP)および in situ ハイブリダイゼーションなどである。ノ
ーザン・およびサザン・ハイブリダイゼーションと対照的に、これらの技術は通常、比較的短いプローブ(例えば、PCRまたは配列決定では、通常、約16ヌクレオチドまたはそれより長いもの、in situ ハイブリダイゼーションについては、約40 ヌクレオチド)を用いて実施される。これらの技術において使用される高ストリンジェンシー条件は、分子生物学分野の当業者にはよく知られており、それらの例も見出すことができる。例えばAusubel ら,「分子生物学の現代プロトコル」, John Wiley & Sons, ニューヨーク, N. Y., 1998
年(参照により本明細書に取り込まれる)。
「変異体(variant)」は、核酸分子の認知されたバリエーションの核酸分子であるか、
またはそれらの発現産物である。スプライス変異体(Splice variant)は、コンピュータプログラム、例えばBLASTを用いることにより決定できる。アレル変異体(Allelic variant)は、一般には、関心を向ける核酸分子に対し高いパーセンテージの同一性がある。「一塩基多型(SNP)」は、置換、挿入または欠失の結果としての1個の塩基における変化をい
う。その変化は、保存的(プリン対プリン)または非保存的(プリン対ピリミジン)であり、コードされるアミノ酸に変化がもたらされることもあり、そうでないこともある。
【0043】
「アナログ」とは、化学的修飾を受けた核酸分子またはポリペプチドである。核酸アナログには、従来的でない塩基、例えばクウェオシン(queosine)の置換体、またはヒポキサンチンのアナログあるいは当業界で知られた他の置換体を含めることができる。一般にアナログは、自然界にある分子の生物的活性を保持し、より長い寿命または増強された活性といった優越性が付与されるかも知れない。「相補的」または「相補体」とは、2つの核酸、例えばDNA、RNAが、両核酸の間でワトソン-クリック塩基対を形成し、二本
鎖の領域を生成するようにすることができるのに充分なヌクレオチド数を有していることをいう。したがって、DNAまたはRNAの一方鎖のアデニンは、対向する相補的なDNA鎖のチミン、あるいは対向する相補的なRNA鎖のウラシルとペアを形成する。核酸分子中の各ヌクレオチドが、二本鎖を形成するために対向する相補的鎖にあるヌクレオチドとマッチするワトソン-クリック塩基対を形成する必要はないことは理解されるだろう。
核酸分子が、第二の核酸分子と高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするなら、別の核酸分子に対して「相補的」であるか、あるいは当該他の核酸分子の「相補体」である。表1〜4の核酸分子の「相補体」には、ある態様では表1〜4のある核酸分子配列の全長にわたり相補的である核酸分子を含んでもよい。「フラグメント」は、本明細書に記載され、示差的に発現され得るか、本発明によるアッセイまたはスクリーニングの方法で検出され得る核酸分子またはポリペプチドの何れかの部分であってよい。
【0044】
本発明に係る種々の遺伝子および核酸の配列は、組換え体配列であってもよい。用語「組換え体」は、あるものが組換えられていることを意味するが、それが核酸構築物に関してなされると、その用語は一緒に結びつけられるか、分子生物学的技術によって産生された核酸配列からなる分子を言っている。「組換え体」がタンパク質またはポリペプチドに関してなされると、分子生物学的技術によって創出された組換え核酸構築物を用いて発現されるタンパク質またはポリペプチド 分子を言っている。用語「組換え体」が、遺伝子
の組成に関してなされると、親のゲノムには見られない新しいアレルの組み合わせを有する配偶子または子孫をいう。組換え核酸構築物は、自然界でライゲーションされていないか、あるいは自然界では別の部位でライゲーションされている核酸配列に対してライゲーションされるか、そのようになるように操作される核酸配列を含んでもよい。それゆえ核酸構築物を「組換え体」と言及することは、その核酸分子が、遺伝子工学を用いて、すなわち、ヒトの介入により操作されていることを示す。
【0045】
組換え核酸構築物は、例えば宿主細胞中に形質転換(transformation)により導入されてもよい。そのような組換え核酸構築物は、同一の宿主細胞種または異なる宿主細胞種に由来する配列を含むかもしれない。その配列は単離され、宿主種の細胞内に再導入されたものである。組換え核酸構築物の配列は、宿主細胞側のもともとの形質転換の結果であるか、またはその後の組換えおよび/または修復事象の結果として、宿主細胞ゲノム内に合
体することになるかも知れない。
【0046】
核酸またはタンパク質に関して、本明細書で使用する「非相同(heterologous)」とは、ヒトによる介入によって操作され、本来見出される場所とは異なる場所に位置するようになった分子である。例えば、ある種からの核酸配列が別の種のゲノム内に導入されてもよく、あるいは1つのゲノムの遺伝子座からの核酸配列が、同一種でも別ゲノムの遺伝子座または染色体外の遺伝子座に移動させてもよい。非相同タンパク質には例えば、非相同のコード配列により発現されるタンパク質か、あるいは自然界では該タンパク質を発現しない細胞において、組換え遺伝子により発現されるタンパク質が含まれる。
【0047】
ある化合物は、本来、それが随伴する諸成分から分離されたときに「実質的に純粋」で
ある。典型的には、化合物がサンプル中における全物質重量のうち、少なくとも 10%, 20%, 30%, 40%, 50%, または60%, さらに一般的には70%, 75%, 80%, または 85%, または90%超, 95%, または 99% であるならば、それは実質的に純粋である。かくして、例えば化
学的に合成され、組換え技術により産生され、あるいは公知の精製技術によって単離されたポリペプチドは、通常もともと一緒に存在していた諸成分を実質的に含まないであろう。実質的に純粋な化合物は、例えば天然の原料からの抽出、ポリペプチド化合物をコードする組換え核酸分子の発現;または化学合成により得ることができる。
【0048】
純度は、任意の適当な方法を用いて測定することができる。例示すると、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、HPLCなどである。核酸分子は、生物体の元々からあるゲノム(これより本発明のDNAが得られる)においてそれが通常隣接しているコード配列ともはや接触していない(すなわち共有結合で結び付いていない)場合には、実質的に純粋であるかまたは「単離されている」。それゆえ、「単離された」遺伝子または核酸分子とは、(ゲノム配列におけるように)それらの遺伝子または核酸分子と通常(本来的に)隣接する核酸分子に隣接していない、および/または他の転写された配列(cDNAまたはRNAライブラリーにおけるように)から完全にまたは部分的に精製されている遺伝子または核酸
分子を意味することを意図している。
【0049】
例えば、本発明の単離された核酸は、自然界でそれが生じる複雑な細胞の環境に関して実質的に単離されてもよい。ある場合には、単離された物質は、組成物(例えば他の物質
を含有する粗抽出物)、緩衝液系または試薬混合物の一部を形成するであろう。他の状況
では該物質は、例えばPAGEまたはカラムクロマトグラフィー(HPLCなど)によって決定されるように、本質的に均一になるまで精製してもよい。したがってその用語は、自律的に複製するプラスミドまたはウィルスのようなベクターの中に、あるいは原核生物または真核生物のゲノムDNAの中に組み込まれた組換え核酸、あるいは他の配列とは関係のない、独立した分子(例、cDNA またはPCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生さ
れるゲノムDNAフラグメント)として存在する組換え核酸を含むものである。
【0050】
付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換え核酸もまた含まれる。好ましくは単離された核酸は、存在する全高分子の種のうち、少なくとも約40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, または99% (モルで)を含む。よって単離された
遺伝子または核酸分子には、化学的に合成されたかまたは組換え手段による遺伝子または核酸分子も含まれ得る。ベクターに含まれる組換えDNAは、本明細書で使用される「単離された」の定義に含まれる。また単離された核酸分子には、溶液中での部分的または実質的に精製されたDNA分子のみならず、異種の宿主細胞中にある組換えDNA分子も含まれる。本発明のDNA分子のインビボおよびインビトロRNA転写物もまた、「単離された核酸分子」に包含される。そのような単離された核酸分子は、コードされたポリペプチドを製造する際に、相同配列を単離するための(例えば哺乳類の他の種から) プローブ
、遺伝子マッピング(例えば染色体を用いるin situ ハイブリダイゼーションによる)のためのプローブ、あるいはノーザンブロット解析などにより組織(例えば末梢血液といった
ヒトの組織)における遺伝子発現を検出するためのプローブとして有用である。
【0051】
ポリペプチド化合物は、ペプチドまたはペプチドアナログ、例えば本明細書に記載されるペプチドの任意の位置で、他の保存性アミノ酸残基、すなわち物理的、生物的または化学的性質が類似している残基を用いて、アミノ酸残基を例えば置換し、欠失させ、または挿入することによって調製することができる。
生物学的に等価なポリペプチドを獲得するために、ポリペプチドの構造に何らかの修飾および変更を、実質的にそのペプチドの生物的機能を変更することなくなし得ることは当業界では周知である。本発明の一つの面では、本発明のポリペプチドを、保存的なアミノ酸置換によって本発明のポリペプチド配列と一部が相違する、生物学的に等価なペプチドに
拡張できる。
【0052】
本明細書で、用語「保存的なアミノ酸置換」とは、ペプチドの所定の位置で一つのアミノ酸を他のアミノ酸に置き換えることを言う。この場合、関係する機能を実質的に損なうことなくそうした置換がなし得る。そのような変更を行なう際、類似のアミノ酸残基の置換は、例えば、それらのサイズ、荷電、疎水的性質、親水的性質など、側鎖置換基の相対的な類似性に依拠してなし得る。またそのような置換は、ルーチンの検査によってペプチド機能への効果についてアッセイすることもできる。保存的な変化には、例えばアミノ酸の官能性側鎖基の反応により、誘導体化されていない残基について化学的に誘導体化する置換もまた含め得る。
【0053】
ペプチドまたはペプチドアナログは、標準的な化学手法により合成することができ、例えば溶液または固相合成の方法論技術を用いる自動機械化された合成による。自動化ペプチドシンセサイザーが商業的に利用でき、これは当業界で周知の技術を利用している。ペプチドおよびペプチドアナログは、次に示すような標準的な方法を利用する組換えDNA技術を用いて調製することができる。例えば, Sambrookら, (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989) またはAusubelら (Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 1994)。コンピュータプログラム、例えばLASERGENE ソフトウェア (DNASTAR, Madison Wis.), MACVECTOR ソフトウェア (Genetic Computer Group, Madison Wis.) および RasMol ソフトウェア (www. umass. edu/microbio/rasmol) を、タンパク質の特定部分においていずれのアミノ酸残基が、および何個のア
ミノ酸残基が、生物的または免疫学的な活性を失うことなく、置換、挿入または欠失され得るかについて決定するために使用してもよい。
【0054】
遺伝子発現における変化を追跡することもまた、HCC治療方法の候補をスクリーニング
するときに有益である。往々にして候補化合物が、細胞に対して、または治療を受ける患者に対して及ぼすかも知れない他の影響、例えば有毒性について何ら考慮されることなく、主要な標的と相互作用をする能力についてスクリーニングされ、または予備的なスクリーニングがされる。有毒性はそうした可能性のある化合物の開発と利用を妨げる。したがって本発明の方法は、HCC治療に好適な候補化合物を同定するために使用されてもよい。
【0055】
一般に候補化合物または試験化合物は、当業界で知られた方法により天然産物または合成(または半合成)抽出物の大ライブラリーまたは化学ライブラリーから同定される。薬物の発見および開発の分野での当業者は、試験の抽出物または化合物の的確な供給源が本発明の方法にとり重要でないことは理解されるであろう。したがって、本明細書に記載された典型的な方法を用いると、実質的にいかなる数の化学抽出物または化合物をスクリーニングすることができる。
そのような抽出物または化合物の例として、次に限定されるものではないが、植物、真菌類、原核生物または動物をベースとした抽出物、発酵培地(broths)および合成化合物だけでなく、現存する化合物の改変物などが挙げられる。いかなる数の化学的化合物のランダムなまたは指向的な合成 (例えば半合成または全合成)を生み出すために、多数の方法
もまた利用できる。そうした化合物は、限定されないが、例えば糖類に、脂質に、ペプチドにおよび核酸にベースを置いた化合物である。 合成化合物のライブラリーは、市販さ
れている。代わりに細菌、真菌類、植物および動物の抽出物の形態にある、天然化合物ライブラリーが多数の供給源から商業的に利用することができる。例えばBiotics 社(Sussex, 英国), Xenova (Slough, 英国), Harbor Branch Oceanographic Institute (Ft. Pierce, FL, 米国), および PharmaMar, MA,米国などである。さらに所望によりいずれのライブラリーまたは化合物は、標準的な化学的、物理学的または生化学的方法を駆使して容易に修飾できる。
【0056】
HCC治療に有用な候補化合物は、HCCの細胞または組織を、HCC治療用の候補医薬剤と接
触させる前および接触の後で、1つ以上のHCC マーカー(表1〜4から)の発現における変動を評価することにより同定することができる。
前記細胞は、培養(例えばHCC細胞系列)して増殖させてもよく、または患者から得てもよ
い(例えばHCC治療用の候補医薬剤についての臨床試験において)。HCCを治療するための候補医薬製剤と接触させる前および接触後に試験したHCCの細胞または組織において1以上のHCC核酸マーカー(薬物標的)の発現の変動は、HCCの進行、抑制または静止を示し、これによって候補医薬製剤の有効性を示し、 同時にHCCにおいて治療的使用のための候補化合物の同定をも示している。候補化合物は、毒性、特異性などについてもスクリーニングしてもよい。
【0057】
ある粗抽出物が、本発明の核酸分子またはポリペプチドのいずれかの発現レベルを調整することが判明したときには、観察された作用の原因となる化学構成成分を単離するために、その有望な先導抽出物のさらなる分画が必要である。よって、抽出、分画および精製過程のゴールは、調節活性を有する粗抽出物内にある化学実体について注意深く特徴を明らかにし、その同定である。化合物の混合物にある活性検出のための、本明細書に記載される同じアッセイが、活性成分を精製し、ならびにその誘導体を試験するために用いることができる。そのような混成抽出物の分画および精製の方法が当業界で知られている。もし有用な治療用薬物であると認められた化合物は、所望により当業界で知られている方法によって化学的に修飾される。治療に、予防に、診断に、または他の価値があると認められた化合物は、引続きHCC細胞系列またはHCCの動物モデルを用いて検討が進められるであろう。
アレイ、マイクロアレイ、ライブラリー、データベースおよびキット
本発明の一つの態様は、核酸またはポリペプチド用のアレイおよびその生物的アッセイを提供する。アレイは、少なくとも2個の核酸分子またはポリペプチドが、硬性もしくは準硬性の何らかの支持体である基体上に整然と配置されているものを言う。少なくとも2個の核酸分子またはポリペプチドは、その支持体に付けられている。ある態様では、基体は液体の媒体であってもよい。基体には、膜、フィルター、チップ、スライド、ウエハー、ファイバー、ビーズ、ゲル、毛細管、プレート、ポリマーおよび微粒子などが挙げられる。核酸分子またはポリペプチドは、その基体上の指定された場所に位置しているために、ハイブリダイゼーションまたは結合パターンおよび強度は、特異的な発現プロファイルを創出し、これは特定の遺伝子の発現レベルとして解釈することができ、これによりHCC
の進行、抑制、治癒などと結び付けることができる。高密度の核酸またはポリペプチドアレイが「マイクロアレイ」とも称され、例えば大多数の遺伝子またはポリペプチドにおける発現レベルの存在を追跡するため、あるいは配列の変化、変異、および多型性を検出するために用いることができる。
【0058】
アレイおよびマイクロアレイは、一般に固体支持体 (例えばナイロン、ガラス、セラミックス、プラスチック、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、金属酸化物(例;アルミナ、酸化ニッケル)、様々なクレー、ニトロセルロースなど)を必要とし、この支持体に核酸分子またはポリペプチドが、特別の2次元配置で結合されている。これによりハイブリダイゼーションまたはプローブへの結合のパターンが容易に決定できることになる。ある態様では核酸分子またはポリペプチドの少なくとも1つが、コントロール、標準または参照の分子である。例えばこれはハウスキーピング遺伝子またはその一部(例えばPBGD, GAPDH)であり、発現レベルの正規化に役立ち、あるいは核酸の品質および結合の特徴
;試薬の品質および有効性;ハイブリダイゼーションの成功度;分析上の閾値および成功
度などを決める際に有益である。
【0059】
核酸分子またはポリペプチドプローブは、本明細書に記載される化合物、例えば表1〜
4の化合物から由来するものであってもよい。
本発明の構成物は、遺伝子発現のプロファイルを解析するためのマイクロアレイにおける要素として用いてもよい。そのようなアレイの目的のため、「核酸」には、任意のヌクレオシドまたはヌクレオチドのポリマーまたはオリゴマー(ポリヌクレオチドまたはオリゴ
ヌクレオチド)が含まれ、これらはピリミジンおよびプリン塩基、好ましくはシトシン、
チミンおよびウラシル、ならびにアデニンおよびグアニンをそれぞれ含むものである。マイクロアレイを作製し、使用するための様々な方法が、次に示すように知られている。例えばCheung, V. G., ら 1999; Lipshutz, R.. J.,ら 1999; Bowtell, D. D. L., 1999;
および, Schweitzer, B., 2002 ; G. MacBeath および S. L. Schreiber, 2000.;これら
のすべては、参照により本明細書に取り込まれる。ある態様ではマイクロアレイの基体は、基体上での核酸分子合成を増強するためのある化合物で被覆されていてもよい。これは例えば U. S. Pat. No. 4,458,066に開示されている。別の態様ではプローブが基体上で
整然とした所定の配置において直接合成されてもよい。
【0060】
マイクロアレイのデータを保管し、検索しおよび解析するための方法が次の文献に開示されている。その各々は、参照により本明細書に取り込まれる。例えば、米国特許No. 6,
484, 183; 米国特許 No. 6, 188, 783; および Holloway, A. J. , 2002である。;
代わりとなる別の面から本発明は、本発明である多数の異なる選別された核酸またはポリペプチドのアレイ配列を含む、核酸またはポリペプチドのマイクロアレイを提供する。例えば識別配列(distinct sequence)の数は、2と1×105間の任意の整数であってよく
、例えば少なくとも 102, 103, 104, または 105である。その弁別配列のサイズは、意図する用法に応じて変化するかも知れないが、当業者は決定することができる。例えば核酸配列は、15〜5000 塩基の間、または5000超であってもよく、あるいはこの範囲の任意の整数であってもよい。
【0061】
またマイクロアレイは、組織または細胞、例えば肝臓細胞またはHCC細胞にある、あら
ゆる遺伝子の発現を調べることにも使用できる。したがって表1〜4の核酸分子を固体支
持体に結合させ、検出可能に標識を付した一本鎖cDNA (相補的な配向に対応する)とハイ
ブリダイズさせ、ならびに適当な方法を用いて定量化してもよい。その結果、ハイブリダイゼーションが起こった各々の位置で、シグナルが検出されるようになる。そのシグナルの強度は、遺伝子発現の量を反映するものであろう。同様にタンパク質・マイクロアレイは、当業界で知られた方法によって使用することができる。様々な細胞または組織、具体的には肝細胞癌の細胞または組織、肝炎ウィルスに感染した細胞または組織、非腫瘍性の細胞または組織、正常細胞または組織、肝硬変の細胞または組織、あるいはそれらの任意の組み合わせからの結果の比較は、異なる出所からの特定遺伝子の発現レベルの違いを解明することになるであろう。
【0062】
本発明の一態様において、誘導できるプロモーターの調節下で、表1〜4の何れか1個
またはそれ以上の異なる核酸分子を発現するプラスミドを保持する各々の細菌株のライブラリーを構築することができる。ORFは、PCRを用いて増幅することができ、N-末端にヒスチジンタグの付いたポリペプチドとして発現させることができるベクターの中にクローンすることもできる。これらのアンプリコン(amplicon)もまた、ハイブリダイゼーション・マイクロアレイを構築するために利用することができ、標的化された遺伝子を開裂して費用を減らすことになる。適当な発現の宿主(例えば大腸菌)が選択され、特定の生化学的活性をコードする遺伝子は、ヒスチジンタグが付されたタンパク質のアレイ化されたプール(arrayed pools)を スクリーニングすることにより同定することができる(Martzen, M.R. ら, 1999)。
【0063】
本発明は、様々な癌性および非癌性の肝臓および肝臓細胞系列のサンプルにおける遺伝子発現の情報とともに本明細書に記載される核酸およびポリペプチドの配列を含むデータ
ベースを提供する。そのようなデータベースは、診断、予後診断または他のHCCに関連す
る本発明方法において支援となりそうな情報にアクセスするために使用することができる。本明細書で用いられるデータベースは、本発明の化合物(例えば核酸およびポリペプチ
ド配列)の何らかの電子形態を含み、ならびにこれらの化合物に関する情報ならびにコン
ピュータが読み取ることができるメディアおよび情報を保存するための何らかの適当な形態を含むものである。
【0064】
また本発明は、例えば1以上の本発明の核酸分子またはポリペプチド(またはそれらの
相補体、アナログ、変異体、またはフラグメント)、適切な緩衝液、適切な検出用試薬お
よび適切なコントロールを含むキットを提供する。例えばキットは、ハイブリダイゼーションまたは増幅に適するプローブまたはプライマー(検出可能に標識されていても、また
はされていなくてもよい)または特異的結合に好適な抗体またはリガンドを含んでもよい
。さらに、キットは、書面によるか、または電子的な指示書を含んでもよい。
診断および他の利用
多種多様な検出用標識および複合化の技術が当業者に知られており、HCCを診断するた
めに種々の核酸分子およびポリペプチドのアッセイにおいて利用されるであろう。本発明による核酸分子、タンパク質、抗体および他の化合物は、それらを検出可能な標識と共有結合でまたは非共有結合で結び付けることにより、アッセイ目的のために標識してもよい。「検出可能な標識」とは、ある分子、例えばオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー、遺伝子またはそのフラグメント、cDNA 分子またはポリペプチドの存在をマークし
て同定するためのいずれかの手段を意味する。分子を検出可能に標識する方法は、公知であり、限定の意味ではなく、放射性標識(例として32Pまたは35Sなどの同位体をもつも
の)および非放射性標識、例えば酵素的標識 (一例として西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ
またはアルカリホスファターゼ)、化学発光標識、蛍光標識(例えば、フルオレセインの使用)、生物発光標識、またはプローブに付したリガンドの抗体検出などが挙げられる。
【0065】
さらにこの定義には、間接的手段により検出可能に標識される分子も含まれる。例えば、最初の被結合部(ビオチンなど)に結合される分子であり、その結合される被結合部は、次には観測されるかアッセイされる第二の被結合部(フルオレセイン標識ストレプトアビジンなど)に結合する。標識は、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、ルシフェラーゼおよ
びエクオリン(aequorin)を含んでもよい。標識された分子の合成は、32P-dCTP、Cy3-dCTPまたはCy5-dCTPまたは 35S-メチオニンといった標識を用いておこなうことができる。
【0066】
本発明の化合物は、BIODIPYまたはFITC (Molecular Probes, Eugene, OR, 米国)といった試薬を利用して、分子内のアミン、チオールおよび他の基への化学的な結びつきによって直接的に標識を付してもよい。本発明の化合物、組成物、および試薬は、示差的な遺伝子発現を検出し、定量するために使用することができる。;核酸分子(例、mRNA)またはポ
リペプチドの発現が存在しない、存在する、または過剰発現;あるいはHCC患者における治療的介入(intervention)の間において、核酸分子レベル(例、mRNA)またはポリペプチドレベルをモニターするために使用することができる。本発明による化合物、組成物および試薬は、数日から数ヶ月、数年の範囲となる期間にわたって、HCC治療有効性のマーカー
としても利用することができる。
診断アッセイは、患者からの生物学的サンプルにおける遺伝子発現を、参照サンプルまたは標準に対して比較し、あるいは患者からの癌のサンプルおよび癌でないサンプルに対して比較することにより変更された遺伝子発現を検出するために、ハイブリダイゼーション、増幅、リガンド結合または抗体のテクノロジーを、利用することができる。この比較のための定性的または定量的な方法が当業界で知られており、適当ないずれの方法を使用することができる。
【0067】
HCC診断の基盤を提供するために、非腫瘍または標準の遺伝子発現プロファイルを確立
してもよい。このことは健常者または腫瘍でない患者から採取された、あるいはHCC患者
からの癌ではない組織からの生物学的サンプルを、ハイブリダイゼーションまたは増幅の条件下で、プローブと結合させることにより達成できる。標準的なハイブリダイゼーションは、腫瘍でない患者または癌ではない組織を用いて得られた数値を、実質的に純粋にされた標的配列の既知量が使用された実験から得られた数値とを比較することにより定量化できる。このようにして得られた標準的数値を、HCCについて症状を示している患者から
のサンプルから得られた数値と比較してもよい。標準的数値からHCCに関係する数値へ向
かう逸脱は、HCCを診断するために用いることができる。このようなアッセイは、動物研
究において、臨床試験において、特定のHCC治療法の有効性を追跡するために、あるいは
個々の患者または患者グループの治療を追跡するために使用してもよい。患者にいったんHCCの存在が確定されると、治療プロトコルが開始され、本発明によるアッセイが患者に
おける発現レベルが、腫瘍でない患者に見られるレベルに近づき始めているかどうかを決定するために規則的な方式で反復され、該患者におけるHCC進行がモニターされる。
継続的なアッセイから得られた結果は、数日間から数ヶ月間の期間にわたる治療の有効性を示すために利用されてもよい。
【0068】
本発明の化合物、組成物、および試薬(例えばマイクロアレイ)は、HCCの進行または抑
制をモニターするために使用してもよい。健常および罹病した組織もしくは細胞の間における遺伝子発現の差異を評価し、目録を作ることができる。遺伝子発現のパターンにおける変化を分析することにより、HCCは、患者が症状を示す前のより早い段階で診断するこ
とができる。同様に遺伝子発現プロファイルおよびその中の変化を分析することにより、予後が定式化され、治療方法が設定される。HCC進行または抑制は、一患者より数日から
数ヶ月の経過にわたって多数の異なる時点 (例えば少なくとも2, 3, 4, または5またはそれより多い時点)で採取された、2つ以上の異なるHCCサンプルを比較することにより決定することができる。進行または抑制は、例えばHCCの治療前、治療中、治療後に患者から
得たHCC組織サンプルにおいて、表1〜4の核酸分子のうち、2個のセットまたはそれより多いセット、または全部のセットでの発現を査定することにより評価してもよい。
【0069】
本発明の化合物、組成物、および試薬(例えばマイクロアレイ)は、治療の有効性をモニターするために使用してもよい。知られている副作用を伴う治療のため、本発明の化合物、組成物、および試薬(例えばマイクロアレイ)は、治療上の養生管理を改善するために用いてもよい。例えば遺伝子プロファイルにおいて効能のある処置を示す変化を惹起する用量を決定してもよく、さらに望ましくない副作用の発生に関係するプロファイルが避けられるかも知れない。このアプローチは、治療の進行を変更する前に、患者が不充分な改善を示すか、副作用が現れるのを待つよりもはるかに鋭敏であり、迅速である。
【0070】
本発明の別の態様では、HCC細胞または組織において、HCC核酸分子の2個またはそれ以上のセットにおける発現について、治療前および治療後の諸変化を治療パラメーターを評価するために用いてもよい。これには限定されないが投与量、投与方法、投与タイミングおよびHCCについて知られた他の治療法との組み合わせを含むものである。ある場合には
、本明細書で提供されるいずれか1つまたはそれより多い化合物が、治療への応用に使用される。例えば、本明細書で記載される選別された化合物は、HCC治療に使用されてもよ
い薬剤で、発現レベルおよび/または活性を調整する薬剤の同定のため、治療標的として
用いてもよい。
[実施例]
実験手順
・RNA単離、RNA増幅およびcDNAマイクロアレイ・ハイブリダイゼーション
腫瘍組織および対応する非腫瘍組織のペアとなるサンプルを37名の患者からの切除した肝臓の検体より得た。これらの患者は、肝炎Bウィルス(HBV)-併発HCCと診断され、治療的な肝臓切除を受けていた。29名の患者の独立集団(cohort)からの58個の肝臓生検サンプ
ルからなる実証用組織セットが使用された。これらの患者は、HBV-併発HCCを有して肝臓
切除を受けていた。患者からの説明後の同意および研究機関倫理委員会の承認が得られていた。組織は、即座に液体窒素中で凍結し、-150°Cで保存した。各検体から小切片が採
取されて、組織から全RNAがTRIZOL試薬(登録商標、Life Technologies, Bethesda, MD, 米国)を用いて製造会社の指示書に従い、単離された。RNAサンプルが完全な状態で
あるかをゲル電気泳動法により検証した。
【0071】
本研究においてヒト肝臓癌の培養細胞系列が使用された: PLC/PRF/5, HA22T, Huhl, Huh4, Tong, Hep3B, SNU182, SNU449, SNU475, HepG2, Huh6, Huh7, SKHepl, およびMahlavu。すべての上記細胞系はAmerican Type Culture Collection (VA, 米国)の推奨条件下で培養した。全RNAがTRIZOL試薬(Life Technologies, Bethesda, MD,米国)を用いて製造会社の指示書に従い、抽出された。
【0072】
RNAは、Eberwineおよび共同研究者(Eberwine ら 1992)の方法を修飾して用いることにより直線的に増幅した。簡潔に述べると、T7ポリメラーゼ結合部位を含む63-ヌクレオ
チド合成プライマー(下記)を用いて、全RNAを逆転写した。
【0073】
5'- GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGG(T)24-3'
完全長二重鎖cDNAの合成が、大腸菌DNAポリメラーゼ I、DNAリガーゼおよび RNase Hの存在で実施された。このcDNA は、T4 DNAポリメラーゼを用いて平滑末端化がなされ、フェノール、クロロホルムおよびイソアミルアルコールの混合物による抽出、ならびに酢酸アンモニウムおよびエタノールの存在下で沈殿させて精製した。精製された二重鎖cDNAは、次にT7ポリメラーゼ (T7 Megascript キット(登録商標), Ambion)を用いて
、転写し、直線的に増幅させたアンチセンスRNAを得た。このものは、さらにRNeasy
ミニカラム(Qiagen)を用いて精製された。ヒト 普遍的基準RNA (Stratagene, La Jolla, CA)が、10個の異なるヒト細胞系列からの全RNAも含めて、増幅され、cDNA マイク
ロアレイ解析のレファレンスとして使用された。
【0074】
およそ9000個のヒトcDNA機能体(features) (Incyte Genomics, Palo Alto, CA, 米国)を、ポリ-L-リジンをコートしたスライドにOmniGride arrayer (GeneMachines)を用いてスポットした。プローブは増幅RNA物質から作成し、既報のようにしてチップにハイブリダイズさせた(Sotiriou ら 2002)。要点は、4μgの増幅RNAが ランダム・ヘキサマ
ー(random hexamers)を用いて逆転写され、Cy3-結合dUTP (レファレンスRNA) また
は Cy5-結合dUTP (サンプルRNA)を用いて標識された。ハイブリダイゼーションが25% ホルムアミドの存在で、5×SSC、42°C、16時間かけて行なわれた。スライドを洗浄し乾
燥してから、Axon 4000b レーザースキャナー(Axon Instruments) でスキャンした。標識によるバイアス効果を最少にするために、相互色素交換標識実験が各サンプルについて実施された。
・データ解析
37個のペアであるHCC腫瘍のおよび非腫瘍の肝臓サンプルならびに肝臓癌細胞系列が、
2つの別々のプリントであるマイクロアレイ上で処理され、実証用組織セットが、第3のプリント上で処理された。生データは、GenePix 解析ソフトウェア、バージョン 3.0 (Axon Instruments, Burlingame, CA, 米国)で解析され、リレーショナルデータベース(国
立衛生研究所(NIH)での Center for Information Technologyにより維持されている(MADB))にアプロードされた。マイクロアレイのために使用されるcDNAクローンは、それら
の「UniGene identifiers」によって表されている。各アレイ上の1つのスポットについ
ての対数的な発現の比は、同一アレイ上の中央値の対数的比(median logarithmic ratio)を差し引くことにより、それぞれのアレイについて正規化した。データは、25 μm未満のサイズのスポット、質が悪いか、欠けているスポットはすべて除外するためにフィルターに通した。
【0075】
相互標識から全体のデータ相関性は良好であるため、相互標識実験から得た数値は平均化された。さらに50%を超える患者サンプルにおいて、アレイのいずれかのセットでデー
タがないと見出された遺伝子機能体は、すべて除外された。またアレイプリントセットからのデータで共通している遺伝子機能体(features)は保持された。このようなフィルターの適用によって、その後の解析では、全部で9127機能体のうち、8716個が含められることとなった。HCC腫瘍および非腫瘍の間で、遺伝子の統計的比較は、Wilcoxon 順位-和(rank-sum) ノンパラメトリック検定によって行なわれた。
【0076】
遺伝子発現パターンを評価するために、“one minus Pearson's correlation metric and mean linkage”を用いる階層クラスタリング (Eisen ら 1998) および多次元的スケーリングが、正規化されたデータになされた(平均はゼロに等しく、標準偏差は1に等しい)。遺伝子の機能特徴づけは、Gene Ontology (The Gene Ontology Consortium, 2000)および当業者に知られている他の刊行物に基づいた。
【0077】
マーカーとして用いる可能性がある、選別された遺伝子機能体セットの質については、過誤分類された組織サンプル数による、その見かけのパーフォーマンスが、単独で偶然生じ得る確率を評価することによって測定した。
【0078】
これは、選択された遺伝子の発現データについて、一連のモンテカルロ・シミュレーションを実行することによりなされた (Davison および Hinldey, 1997)。各シミュレーシ
ョンで、組織の標識は、ランダムに並べ換えられ、過誤分類の数が記録された。全部で100万回のモンテカルロ・シミュレーションが行なわれた。報告されたP値(Paとして示す)は、元々標識することよりも少ないか、または同じぐらいの僅かな数の過誤分類を生じる並べ換え回数の比率(fraction)である。腫瘍ディスクリミネータ(tumor discriminator
)として良好なパーフォーマンスを有することが観察されている遺伝子セットが、単に偶然により現れているものかどうかを決定するために、様々なモンテカルロ・シミュレーションが実施された。各シミュレーションにおいて、指定された機能体大集団から等しい数の遺伝子機能体がランダムに拾い出され、そのランダム遺伝子セットのパーフォーマンスが、過誤分類された組織サンプルの数によって評価された。各評価において、全部で1万
回のモンテカルロ・シミュレーションが行なわれた。P値(Pb)は、選別された遺伝子セッ
トと同じ位か、またはそれよりも良好なパーフォーマンスで実行されるランダム遺伝子セットの回数の比率である。
【0079】
本明細書に記載のように導出された重要遺伝子のリストを、以前報告された遺伝子リストと交差させた後に、観察された重複遺伝子数の意義が、そのような重複が偶然だけで起こり得る確率を算出することによって概算された。2群比較のP値を見積もるために、別
シリーズのモンテカルロ・シミュレーションが用いられた。各シミュレーションにおいて、その2つの群に対応する遺伝子リストが2個、作成された。各リストは、それぞれのマイクロアレイ遺伝子セットの遺伝子全体集合から、その対応する群における遺伝子と同じぐらい多く遺伝子をランダムに選択することにより構築された。次いで、この2つのランダム遺伝子リストを交差させた。
【0080】
比較P値(Pc)は、2個のランダムなリストを10,000万回作成し、交差させることにより
得られ、ランダムな重複が、観測されたものと同数かまたはそれより多い回数の比率として報告された。HCC腫瘍の肝臓と非腫瘍の肝臓とを区別するための様々な発現カセットの
有用性を実証するために、各ディスクミネータ・カセットについての予測正確度が、29名の患者からの58個肝臓の臨床生検を含む独立の組織セットについて、発現プロファイル間の類似性を測定するためのPearson相関を用いる最近隣法(k-Nearest Neighbor;kNN)分類
アルゴリズム(k=3)を使用して評価された。そのアルゴリズムは、新しい組織セットに対
して試験する前に、37名の患者からの74個の組織サンプルを含むデータセットに対して訓練された。
・リアルタイム半定量的RT-PCR
個々の組織サンプルからの全RNAが、選別された遺伝子の発現レベルについて、リアルタイム半定量的RT-PCRにより、 LightCycler RNA増幅キットSYBR Green I on the Light Cycler (Roche, Basel, スイス)を用いて、製造者の指示書に従って分析された。簡単に述べると、ワンステップRT-PCR反応は、55°C、10分間の最初のインキュベーション
、続いて95°Cで30秒間の変性ステップ、ならびに95°Cで1秒、57°Cで10秒 および72°Cで13秒の40サイクルの増幅からなる。各反応について10 ngのRNAが分析された。設計された遺伝子特異的プライマーは、例えば次のとおりである:
IGFBP3 5'- ATAATCATCATCAAGAAAGGGCAT-3'および
5'-GAAGGGCGACACTGCTT-3';
EGFR 5'-GCGTCTCTTGCCGGAATG-3'および
5'-GGCTCACCCTCCAGAAGCTT- 3' ;
ERBB2 5'-GGATGTGCGGCTCGTACAC-3'および
5'-TAATTTTGACATGGTTGGGACTCTT-3' ;
ERBB3 5'-CGGTTATGTCATGCCAGATACAC-3'および
5'-ACAGAACTGAGACCCACTGAAGAA -3';
PBGD 5'- GAGTGATTCGCGTGGGTACC-3'および
5'-GGCTCCGATGGTGAAGCC-3'.
個々の組織サンプルにおいて、扱う各遺伝子の相対的な発現レベルは、「ハウスキーピング」遺伝子、PBGDの発現レベルに対して正規化された。データは、各HCC腫瘍 における遺伝子発現を、それに対応する非腫瘍肝臓の検体に対するレベルとして表される。
・HCC腫瘍および非腫瘍の肝臓検体間での全体的遺伝子発現の差異評価
37名の患者からの原発性HCC腫瘍および対応する非腫瘍の肝臓組織における遺伝子発現
パターンを、cDNA マイクロアレイによって調べられた。各実験サンプルから調製された
増幅RNAがCy5で標識され、次いでプールされたヒト用「共通の対照」である、Cy3標識された増幅RNAを有するアレイ上でハイブリダイズされた。技術的なノイズを最小とするために、「相互色素交換複製体ハイブリダイゼーション」が実施された。相互標識の全体的相関性が良好であるために、相互標識の実験から得られた数値は平均化され、その後の解析に利用された。最初にHCC腫瘍および非腫瘍の肝臓組織における遺伝子発現につい
て、全体的な本来の正常パターンが、非指示階層クラスタリングに基づいて評価された。
【0081】
あらゆる組織にわたって各遺伝子についての発現レベルの分散解析は、500遺伝子機能
体 (493個のunique Uni遺伝子を含む)が、HCC腫瘍および非腫瘍の肝臓組織の双方にわた
って、最も大きい可変性を示すことが示された(図 1)。このリストには、AFP(しばしばHCCの予後的なマーカーとして用いられる)、HGF、MYCといったHCCに関係した他の遺伝子
およびrasファミリー一員のRANが含められている。階層クラスタリング解析は、これら高度に変動しやすい遺伝子 (HCC腫瘍および非腫瘍の肝臓サンプル37ペアに由来し、ならび
に500個の最も可変的な遺伝子機能体を用いる)にもとづいて、組織を2つの主要クラスターに分割した。1つはHCC 腫瘍を表し、他方は、非腫瘍と過誤分類された37 HCC腫瘍のうち6個だけを有する非腫瘍肝臓組織である。かくしてHCCの分子上の配列は、データ操作
を最小限にして非腫瘍の肝臓のそれと容易に区別することができる。
【0082】
次にHCC腫瘍および非腫瘍の肝臓の間で、示差的な遺伝子発現のパターンを調べるため
に、Wilcoxon 順位-和検定が行なわれた。最小の(最善の)P値スコア (P<l×10-6)ならび
に少なくとも遺伝子発現に1.5倍の変化を示した、トップ2.5%の候補遺伝子が同定された
。これらは218遺伝子 (表1)のリストとなっている。これらの218個の遺伝子について、「誤り」発見率解析によれば、0.4%未満の擬陽性エラーを示した。これらの囲い外(outlier)遺伝子に基づく多次元的スケーリング(scaling) 解析は、HCC腫瘍が非腫瘍の肝臓組
織よりもさらに不均一な分布であることが示された(図 2)。
【0083】
原発性腫瘍に由来する癌細胞系列は、インビボの腫瘍環境における遺伝子機能を研究するためのインビトロモデル系として伝統的に使用されてきた。臨床サンプルで同定された218個の示差的に発現する囲い外遺伝子を用いて、14個の確立されたヒト肝臓癌細胞系列
において、同一遺伝子群の発現パターンが分析された。これらの細胞系列は、臨床のHCC
腫瘍組織とは異なる遺伝子発現プロフィルを示し(図2)、このことは該細胞系列が、培養
において付加的な遺伝的な変更またはエピジェネティックな変更を集積しているかも知れず、従って原発性腫瘍の生物学を全く反映するものではない。
・HCC腫瘍で示差的に発現している遺伝子クラスターの同定
HCC腫瘍を非腫瘍の肝組織検体から区別させる、統計的に有意の218個遺伝子の間において、非腫瘍組織の検体と比較して悪性腫瘍組織の検体では、多くの遺伝子が発現低下よりも過剰発現をしていることが観察された。これら218個の独特の囲い外 遺伝子についての染色体位置の地図作成から、不釣合いに多い数の遺伝子が染色体1上に位置していること
が示された(図 3A)。とりわけI q 領域においてであり、これらの遺伝子の多くは腫瘍組
織で過剰に発現していた。これらの囲い外遺伝子の特徴解明から、相当割合の遺伝子が、輸送(例えばPEA15)、RNA プロセッシング(例えばRDBP)および代謝過程(例えばNME1)に関係しており、ならびにHCC腫瘍の検体では亢進した発現を示して、おそらく代謝速度の
加速を表している(図 3B, 表1)。いくつかの囲い外遺伝子(例えばSMT3H1)は、ユビキチン-プロテアソーム経路の一員であり、このことはHCCにおけるこの経路の統制解除を示唆している。
【0084】
リンパ球浸入に関係して、IGKCおよびIGJといった遺伝子発現を含む遺伝子クラスター
が観察され、ならびに転写因子(例えばESR1)および成長および分化の制御に関与している遺伝子(例えばGRN)、およびシグナル伝達(例えばCSTB)が、他の優勢な遺伝子グループを
形成していた。HCC腫瘍の検体において、周知のポリコーム群(polycomb group)タンパ
ク質 BMI1は、一貫して著しく高いレベルで発現していた(図 4)。
【0085】
【表1】

【0086】
【表1−1】

【0087】
【表1−2】

【0088】
【表1−3】

【0089】
【表1−4】

【0090】
【表1−5】

【0091】
【表1−6】

【0092】
【表1−7】

【0093】
【表1−8】

【0094】
リアルタイムRT-PCR解析が、37個のマッチさせたHCC腫瘍および非腫瘍の肝臓サンプル
において、一群の遺伝子(IGFBP3およびERBB3を含む)について行なわれた。既知の「ハ
ウスキーピング」遺伝子、ポルフォルビリノーゲンデアミナーゼ(porphobilinogen deaminase;PBGD) (Fink ら1998)が、正規化用コントロールとして使用された。IGFBP3およびERBB3のリアルタイムRT-PCR解析の結果は、IGFBP3の発現が、対応する非腫瘍の肝臓組織(図5A)と比較して、37個のHCC腫瘍のうち35個で消失しており、他方、ERBB3の発現は、37
個の腫瘍サンプルのうち34個で亢進していた(Figures 5B)。
【0095】
ERBB3は、チロシンキナーゼ活性を欠いており、また他のレセプター、おそらくERBBフ
ァミリーの他の一員と2量体化することが必要とすることから(RieseおよびStern, 1998)、ERBB3を高レベルで発現しているHCC腫瘍は、ERRB2またはEGFRの高い発現にも関係して
いるという仮説が検証された。ERBB2の発現は、37個の腫瘍のうち12個で亢進しており(図
5C)、他方、高いEGFRの発現が、37個の腫瘍のうち15個で観察された(図 5D)。
【0096】
ERBB2の発現において有意の同時上昇(t検定、P値〜0. 0026)があるが、EGFRの高い発現とは関係がないこと(t-検定、P値〜0. 31)が、ERBB3の高い発現をしているHCC腫瘍の上位50パーセンタイルにおいて見出された。このことは、ERBB3を高レベルで発現しているこ
れらの腫瘍においてERRB3の同属パートナーが存在していることを示すようである。リア
ルタイムおよび半定量的なRT-PCR解析が、HCCで示差的に発現していると同定された一団
の遺伝子(図6〜21)についてなされた。
・HCC腫瘍ディスクリミネータ発現カセットの実証
HCCの遺伝子発現の変化が、マイクロアレイ技術を用いて報告されている(Chenら 2002,
Okabeら 2001; Hondaら 2001; Shirotaら 2001; Tackels-Horneら 2001 ; Xuら 2001a ;
Xuら 2001b)。本明細書に記載のように導出された重要遺伝子のリストと以前報告された遺伝子リストとの交差が調べられた。その結果は、HCC腫瘍が非腫瘍の肝組織から区別さ
れることが可能となる、付加的な遺伝子のリスト、または「発現カセット」の同定(表2〜4)となった。
【0097】
最初の遺伝子リストにおいて、全部で265機能体は、本発明で用いたマイクロアレイか
ら245個のunique Uni遺伝子を含み、重複していることが観察された(表2)。これらの265
個の「重複」機能体の発現レベルに基づく階層クラスタリング解析は、組織のセットを腫瘍および非腫瘍の2つの明確なグループに分割し、5個の組織サンプルが誤って分類された。そのようなクラスタリングは、サンプル標識のランダム並べ替え検定(random permutation testing)に基づいて有意であった(Pa<l×10-6)。265機能体よりランダムに選択
したセットで、5個以下のサンプルが誤誤分類される可能性は低かった(Pb=1.5×10-3)
。かくしてこれら265個の重複機能体は、妥当な正確さでHCC腫瘍を非腫瘍の肝臓から区別することができ、ならびにこれらの機能体が偶然に出現することはありえなかった。これらの遺伝子の間には、潜在的に異なる経路に関与する、著しい遺伝子発現の表出によって特徴づけられる、より小さいサブグループがある。
【0098】
HCC腫瘍においては、コレステロールの生合成経路が、酵素SQLE、ACLYおよびFDPSの遺
伝子のより高い発現によって特徴づけられる。成長および分化に関係するサブグループは、HCC腫瘍組織において ESRI、IGFBP3および PDGFRαのより低い発現、ならびにPPTB1の
高い発現によって特徴づけられる。bZIP転写因子、ATF3、FOS、JUNおよびMYBL2のサブグ
ループは、HCC腫瘍組織においては下方調節であることで特徴づけられる。
【0099】
【表2】

【0100】
【表2−1】

【0101】
【表2−2】

【0102】
【表2−3】

【0103】
【表2−4】

【0104】
【表2−5】

【0105】
【表2−6】

【0106】
【表2−7】

【0107】
【表2−8】

【0108】
【表2−9】

【0109】
【表2−10】

【0110】
【表3】

【0111】
【表3−1】

【0112】
【表3−2】

【0113】
【表3−3】

【0114】
【表3−4】

【0115】
【表3−5】

【0116】
【表3−6】

【0117】
2番目の遺伝子リストにおいて、全部で230機能体は、本発明で同定された218個の重要遺伝子(213個のunique Uni遺伝子を含む)のリスト (表1)からの166個の特異Uni遺伝子を
含み、重複していることが観察された(表3)。これらの230個の「重複」機能体の発現レ
ベルに基づく階層クラスタリング解析は、組織のセットを、腫瘍および非腫瘍の2つの明確なグループに分割し、4個の組織サンプルが誤って分類された。そのようなクラスタリングは、サンプル標識のランダム並べ替え検定に基づいて有意であった(Pa<l×10-8)。230機能体のランダムに選択したセットが、誤って分類される4個以下のサンプルを生じる
ことはありえなかった(Pb<1×l0-4)。これら230個の重複機能体は、それゆえHCC腫瘍を
非腫瘍の肝臓から区別することができる。
【0118】
3番目の遺伝子リストにおいて、本発明で同定された218個の重要遺伝子(表1)のリスト(213個のunique Uni遺伝子を含む)からの、全部で68個のunique Uni遺伝子が重複していることが観察された(表4)。そうした重複は、これら2つの遺伝子リストが全体的に独立したものであるならば、偶然に生じるという可能性は極めて小さい(Pc<1×10-8)。
【0119】
【表4】

【0120】
【表4−1】

【0121】
【表4−2】

【0122】
ディスクリミネータカセットが、29名の患者から採取された58個の臨床肝臓生検という独立した組織のセットについて評価された。kNN予測アルゴリズムを用いて、あらゆる分
類子・プローブカセット(classifier probe cassette)は、容易にHCC腫瘍を非腫瘍肝臓から区別できること(表5)、ならびに限定された組織セットについての交差解析によって
導き出される、HCCにおける腫瘍 対 非腫瘍の遺伝子ディスクリミネータが、独立した方
式で実証され得ることが判った。
【0123】
【表5】

【0124】
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他の態様
本発明の様々な態様が本明細書に開示されているが、当業者の一般的知識に一致して、多数の改作および変更が本発明の範囲内でなし得る。そのような変更には、本発明のいず
れの態様についても実質的に同一の方法で同じ結果を得るために公知の等価物による置換も含まれる。本明細書で使用したアクセッション番号は、複数のデータベースからのアクセッション番号を言及している。これには、以下が含まれる。
【0125】
ヌクレオチド配列について、GenBank, European Molecular Biology Laboratory (EMBL), DNA Database of Japan (DDBJ), または Genome Sequence DataBase (GSDB)。
ポリペプチド 配列について、Protein Information Resource (PIR), SWISSPROT, Proein Research Foundation (PRF), および Protein Data Bank (PDB) (解明された構造からの配列), さらにGenBank, EMBL, DDBJ, または RefSeqにおけるヌクレオチド配列からの
注釈付けられたコード領域の翻訳も同様である。
【0126】
本明細書で使用したアクセッション番号は、またUniGene, OMIM, LocusLinkまたはHomoloGeneといったデータベースのアクセッション番号を言及する。数値範囲は、範囲を規定する数値を含むものである。また本明細書において、「含む(comprising)」とは、オープンエンドの用語(open-ended term)として使用しており、「含むが限定されない」と
いう句と実質的に等価であり、「含む(comprises)」は、その対応する意味を有する。
【0127】
本明細書における文献の引用は、そのような文献が本発明に対する先行技術であることを認めることと解するべきではない。すべての刊行物は、それぞれの刊行物が特別にまた個別に本明細書に取り込まれることが指示されているかのように、さらに本明細書で充分に述べられているように参照により本明細書に取り込まれる。本発明には前記した、すべての態様およびバリエーションを含み、実施例および図面に関しても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、HCC腫瘍および非腫瘍の肝臓組織検体の間における遺伝子発現差異についての自然なパターンを示すプロット(unsupervised clusteringに基づく)である。そのプロットはHCC腫瘍および非腫瘍の肝臓組織検体のすべてにわたり、遺伝子機能体各々について発現の値の分散を表す。点線は、500の最も変動する遺伝子機能体を表している。
【図2】図2は、多次元スケーリングプロットを示す。HCC腫瘍および非腫瘍の肝臓組織の間における、重要遺伝子の示差的発現ならびに肝臓癌細胞系列との比較である(P<l×10−6、およそ1.5変化)。本プロットは、HCC腫瘍検体(黒円)を非腫瘍肝臓組織の検体(濃い灰色の円)から分離する、218個のアウトライアー(囲い外)遺伝子の能力を説明する。本プロットは、また肝臓癌細胞系列(薄い灰色の円)が、いかに臨床組織サンプルと異なっているかも示す。
【図3−A】図3-Aは、HCC腫瘍の検体において示差的に発現した遺伝子を特徴づける(P<l×10−6、およそ1.5倍変化)。図3-Aは、非腫瘍の肝臓と対比して、218アウトライアー(囲い外)遺伝子の染色体上の分布を表している棒グラフである。黒く塗りつぶした棒および薄く影をつけた棒は、HCC腫瘍で非腫瘍の肝臓組織に対して、それぞれ少なくとも1.5倍の上方調節または下方調節である遺伝子を示す。
【図3−B】図3-Bは、HCC腫瘍の検体において示差的に発現した遺伝子を特徴づける(P<l×10−6、およそ1.5倍変化)。図3-Bは、Gene Ontologyおよび刊行された研究に基づく、アウトライアー遺伝子の機能特徴づけを示す棒グラフである。
【図4】図4は、cDNAマイクロアレイ解析によって決定された、HCC腫瘍におけるBMI-1発現を示す棒グラフである。各HCC腫瘍検体において、データは対応する非腫瘍肝臓サンプルに対する発現レベル(底が2の対数)として表されている。
【図5−A】図5A〜5Dは、HCC腫瘍サンプルならびに対応する非腫瘍肝臓組織の検体について、IGFBP3, ERBB3, ERBB2 およびEGFRのリアルタイムRT-PCR解析を示す。37個のHCC腫瘍サンプル全部において、すべてのデータは、「ハウスキーピング遺伝子」であるPBGD量に対して正規化され、HCC腫瘍検体において、対応する非腫瘍肝臓組織に対しての相対倍数の発現変化(底が2の対数)として表されている。非腫瘍検体に対して、正の値はより高い腫瘍の発現レベルを表し、他方負の値はより低い腫瘍の発現レベルを表している。
【0129】
図5-Aでは、(A)IGFBP3についての遺伝子発現パターンが調べられた。
【図5−B】図5-Bでは、(B)ERBB3についての遺伝子発現パターンが調べられた。
【図5−C】図5-Cでは、(C)ERBB2についての遺伝子発現パターンが調べられた。
【図5−D】図5-Dでは、 (D)EGFRについての遺伝子発現パターンが調べられた。
【図6】図6はリアルタイムおよび半定量的RT-PCR解析を用いて解析された遺伝子の一団を掲げる。ここではその解析が非腫瘍ヒト組織、臨床組織サンプルまたはHCC細胞系列のいずれかで、あるいはいずれでもおこなわれたことも示されている。
【図7−A】図7-Aは、ARMETの遺伝子発現解析を示す。(A)非腫瘍組織およびHCC細胞系列についての半定量的RT-PCR解析が実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織の解析(A)におけるコントロールとして用いられた。
【図7−B】図7-Bは、ARMETの遺伝子発現解析を示す。非腫瘍組織(B)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。 (B)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図7−C】図7-Cは、ARMETの遺伝子発現解析を示す。患者サンプル(C)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。
【図8−A】図8-Aは、BMI-1の遺伝子発現解析を示す。(A)非腫瘍組織およびHCC細胞系列についての半定量的RT-PCR 解析が実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織(A)の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図8−B】図8-Bは、BMI-1の遺伝子発現解析を示す。非腫瘍組織(B)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。(B)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図8−C】図8-Cは、BMI-1の遺伝子発現解析を示す。患者サンプル(C)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。
【図9−A】図9-Aは、CRHBPの遺伝子発現解析を示す。(A)非腫瘍組織およびHCC細胞系列についての半定量的RT-PCR 解析が実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織(A)の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図9−B】図9-Bは、CRHBPの遺伝子発現解析を示す。患者サンプル(C)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。 (B)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図9−C】図9-Cは、CRHBPの遺伝子発現解析を示す。患者サンプル(C)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。
【図10−A】図10-Aは、CSTBの遺伝子発現解析を示す。(A)非腫瘍組織およびHCC細胞系列についての半定量的RT-PCR 解析が実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織(A)の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図10−B】図10-Bは、CSTBの遺伝子発現解析を示す。非腫瘍組織(B)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。(B)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図10−C】図10-Cは、CSTBの遺伝子発現解析を示す。患者サンプル(C)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。
【図11−A】図11-Aは、DPTの遺伝子発現解析を示す。(A)非腫瘍組織およびHCC細胞系列についての半定量的RT-PCR 解析が実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織(A)の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図11−B】図11-Bは、DPTの遺伝子発現解析を示す。非腫瘍組織(B)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。(B)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図11−C】図11-Cは、DPTの遺伝子発現解析を示す。患者サンプル(C)のリアルタイムRT-PCR解析が実施された。
【図12−A】図12-Aは、ERBB3の遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、非腫瘍組織(A)について実施された。(A)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図12−B】図12-Bは、ERBB3の遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、患者サンプル(B) について実施された。
【図13−A】図13-Aは、EZH2の遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、非腫瘍組織(A)について実施された。(A)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図13−B】図13-Bは、EZH2の遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、患者サンプル(B)について実施された。
【図14−A】図14-Aは、GPC3の遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、非腫瘍組織(A)について実施された。(A)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図14−B】図14-Bは、GPC3の遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、患者サンプル(B) について実施された。
【図15−A】図15-Aは、HDGFの遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、非腫瘍組織(A)について実施された。(A)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図15−B】図15-Bは、HDGFの遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、患者サンプル(B) について実施された。
【図16−A】図16-Aは、MDKの遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、非腫瘍組織(A)について実施された。(A)の点線は、4つの非腫瘍肝臓組織、すなわち胎児/F, 胎児/M, 成人/F, 成人/Mの平均の発現値を示す。
【図16−B】図16-Bは、MDKの遺伝子発現解析を示す。リアルタイム RT-PCR 解析が、患者サンプル(B) について実施された。
【図17】図17は、D123の遺伝子発現解析を示す。半定量的 RT-PCR 解析が、非腫瘍組織およびHCC 細胞系列について実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図18】図18は、FLJ10326の遺伝子発現解析を示す。半定量的 RT-PCR 解析が、非腫瘍組織およびHCC 細胞系列について実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図19】図19は、ICA-1Aの遺伝子発現解析を示す。半定量的 RT-PCR 解析が、非腫瘍組織およびHCC 細胞系列について実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図20】図20は、LASP1の遺伝子発現解析を示す。半定量的 RT-PCR 解析が、非腫瘍組織およびHCC 細胞系列について実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織の解析におけるコントロールとして用いられた。
【図21】図21は、PODXLの遺伝子発現解析を示す。半定量的 RT-PCR 解析が、非腫瘍組織およびHCC 細胞系列について実施された。GAPDH発現レベルが、HCC細胞系列 対 非腫瘍ヒト組織の解析におけるコントロールとして用いられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌において示差的に発現している2以上の核酸分子のアドレス可能な集合体を含む組成物であり、該核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子、またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記核酸分子が、実質的に表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子全部を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記核酸分子が、示差的に肝細胞癌組織および非腫瘍組織の間で発現されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
肝細胞癌において示差的に発現されている2以上のポリペプチドのアドレス可能な集合体を含む組成物であり、該ポリペプチドは、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログによりコードされるポリペプチドから実質的になることを特徴とする組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子全部によってコードされるポリペプチドから実質的になる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、示差的に肝細胞癌組織および非腫瘍組織の間で発現されている、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記の核酸分子またはポリペプチドが、固体支持体に付けられている請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
肝細胞癌の診断用または治療用の医薬品を製造する際の請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項9】
患者からサンプルを採取し; および
該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物のレベルを検出すること
を含む、患者の肝細胞癌を診断する方法であり、その核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記サンプルが肝臓である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが血清である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルが癌性ではないかと疑われている、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルが非癌性であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
核酸分子の発現またはその発現産物のレベルを、非癌性のサンプルおよび癌性ではないかと疑われているサンプルにおいて比較することをさらに含む、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、肝細胞癌を持つのではないかと疑われている、請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子全部またはそれらの相補体、フラグメントもしくはアナログから実質的になる、請求項9〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記核酸分子の示差的発現またはそれの発現産物が肝細胞癌を示すものである、請求項9〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
患者からサンプルを採取し; および
該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物のレベルを検出すること
を含む、患者における肝細胞癌の進行をモニターする方法であり、その核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記サンプルが、2以上の時点で採取される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子の全部またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルが肝臓である、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルが血清である、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
核酸分子の発現レベルまたはその発現産物のレベルを非癌性のサンプルおよび癌性ではないかと疑われているサンプルにおいて比較することをさらに含む、請求項18〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記核酸分子の示差的発現またはそれの発現産物が肝細胞癌の進行を示すものである、請求項18〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記核酸分子の発現レベルまたは発現産物のレベルを、2以上の時点で比較することをさらに含む、請求項19〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
患者に肝細胞癌の治療法を適用する;
その患者からサンプルを採取し;および
該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物のレベルを検出すること
を含む、患者におけるその治療法の有効性をモニターする方法であり、その核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする方法。
【請求項27】
前記治療法が、2以上の適用時点で与えられる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプルが、2以上のサンプリング時点で採取される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子の全部またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になる、請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルが癌性ではないかと疑われている、請求項26〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記サンプルが非癌性であることを特徴とする、請求項26〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
核酸分子の発現レベルまたはその発現産物のレベルを非癌性のサンプルおよび癌性ではないかと疑われているサンプルにおいて比較することをさらに含む、請求項26〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記核酸分子の示差的発現またはそれの発現産物が、肝細胞癌の治療法の有効性を示すものである、請求項26〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記核酸分子の発現レベルまたは発現産物のレベルを、2以上の適用時点で比較することをさらに含む、請求項27〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記核酸分子の発現レベルまたは発現産物のレベルを、2以上のサンプリング時点で比較することをさらに含む、請求項28〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記患者がヒトである、請求項9〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
サンプルを試験化合物と接触させること; および
該サンプルにおいて2以上の核酸分子の発現レベルまたはそれらの発現産物のレベルを検出すること
を含む肝細胞癌を治療するための化合物のスクリーニング方法であり、その核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする方法。
【請求項38】
前記核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子の全部またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記サンプルが、癌性のサンプルおよび非癌性のサンプルからなる群より選択されることを特徴とする請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記サンプルが、肝臓サンプルおよび血清サンプルからなる群より選択されることを特徴とする請求項37〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記核酸分子の発現レベルまたは発現産物のレベルを、標準と比較することをさらに含む、請求項37〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、ハイスループットの方法である、請求項9〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
遺伝子発現のプロファイルを作成することをさらに含む、請求項9〜42のいずれかに記
載の方法。
【請求項44】
肝細胞癌において示差的に発現している2以上の核酸分子を含む固体支持体であり、該核酸分子は、表1〜4に示される核酸分子、またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする固体支持体。
【請求項45】
前記核酸分子が、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子の全部から実質的になる、請求項44に記載の固体支持体。
【請求項46】
前記核酸分子が、示差的に肝細胞癌組織および非腫瘍組織の間で発現されている、請求項44または45に記載の固体支持体。
【請求項47】
肝細胞癌において示差的に発現されている2以上のポリペプチドを含む固体支持体であり、該ポリペプチドは、表1〜4に示される核酸分子またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログによりコードされるポリペプチドから実質的になることを特徴とする固体支持体。
【請求項48】
前記ポリペプチドが、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子全部によってコードされるポリペプチドから実質的になる、請求項47に記載の固体支持体。
【請求項49】
前記ポリペプチドが、示差的に肝細胞癌組織および非腫瘍組織の間で発現されている、請求項47または48に記載の固体支持体。
【請求項50】
前記核酸分子またはポリペプチドが、固体支持体に共有結合で付けられている請求項47〜49のいずれかに記載の固体支持体。
【請求項51】
前記核酸分子またはポリペプチドが、固体支持体に非共有結合で付けられている請求項47〜49のいずれかに記載の固体支持体。
【請求項52】
前記固体支持体がマイクロアレイを含む請求項47〜51のいずれかに記載の固体支持体。
【請求項53】
肝臓組織において2以上の核酸分子の発現レベルまたはその発現産物を同定する情報を含むデータベースであり、該核酸分子は、表1〜4のうちのいずれか1以上に示される核酸分子、またはその相補体、フラグメント、変異体もしくはアナログから実質的になることを特徴とする含むことを特徴とするデータベース。
【請求項54】
前記肝臓組織が癌性組織および非癌性組織からなる群より選ばれる、請求項53に記載のデータベース。

【図1】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図4】
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【図5−A】
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【図5−B】
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【図5−C】
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【図5−D】
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【図6】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【図7−C】
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【図8−A】
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【図8−B】
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【図8−C】
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【図9−A】
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【図9−B】
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【図9−C】
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【図10−A】
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【図10−B】
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【図10−C】
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【図11−A】
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【図11−B】
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【図11−C】
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【図12−A】
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【図12−B】
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【図13−A】
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【図13−B】
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【図14−A】
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【図14−B】
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【図15−A】
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【図15−B】
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【図16−A】
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【図16−B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2006−526405(P2006−526405A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508583(P2006−508583)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000166
【国際公開番号】WO2004/108964
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】