説明

神経因性疼痛治療用インダゾール誘導体の使用方法

神経因性疼痛治療における薬剤組成物活性を調製するための式I:
【化1】


(式中、XはCH又はN、及び、XがCHのとき、RがH、OH、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル鎖、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコキシ鎖、又はハロゲン原子、及び、XがNのとき、RがH、又は薬剤的に許容できる有機又は無機酸を有する酸付加塩である。)の化合物の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経因性疼痛治療において薬剤組成物活性の調製用インダゾール誘導体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許出願EP-A-0975623号及びWO93/03725号は、式I:
【化1】


(式中、XがCH又はNであり、XがCHであるとき、RがH、OH、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル鎖、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコキシ鎖、又はハロゲン原子、及び、XがNのとき、RがHである。)の多数の化合物に関する。
【0003】
以下、R及びXが前述の意味を有する式Iの化合物は、単に「化合物(I)」という。
【0004】
前述の文献によれば、化合物(I)は、胃腸の運動(性)、尿失禁、心不整脈、の障害、並びに記憶障害及び不安(症)などの中枢神経系の障害の治療において活性である。
【0005】
驚くべきことに、今回、化合物(I)は特に、神経因性疼痛において特に活性であることが見出された。
【0006】
平均して成人の約10〜20%が、慢性痛に苦しんでいることが知られている。慢性痛は、慢性的及び/又は変性病変によって特徴付けられる慢性状態に一般的に関連する。
【0007】
慢性痛によって特徴付けられる病理学上の状態の典型的な例は、関節リュウマチ、変形性関節症、線維筋痛、神経障害などである([Ashburn M A, Staats P S, Management of chronic pain, Lancet 1999; 353; 1865-69])。
【0008】
慢性痛、特に、神経因性疼痛は、しばしば衰弱させる兆候にあり、作業能率の損失、生活の質悪化の原因となる。結果として、それはまた経済的及び社会的損失を生じさせる。
【0009】
鎮痛剤は、非ステロイド抗炎症(NSAIDs)、抗鬱剤、オピオイド鎮痛薬、及び抗けいれん剤を含む神経因性疼痛の治療において使用される。(Woolf C J, Mannion R J. Neuropathic pain: aetiology, symptoms, mechanism, and management, Lancet 1999; 353: 1959-1964).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、慢性痛、特に、神経因性疼痛は、現在市販されている薬を用いて治療することが困難であることが悪名高く知られている。その結果、常に新規鎮痛薬の開発が薬剤産業の主要なターゲットの1つである。さらに、多くに研究にもかかわらず、努力が適当な鎮痛剤化合物を同定するために意図されており、症状に苦しむ多くの患者が存在し、なお、満足のいく治療が存在しない。(Scholz J, Woolf C J. Can we conquer pain? Nat Neusci, 2002; 5: 1062-76)
【課題を解決するための手段】
【0011】
それゆえ、本発明は、式(I):
【化2】


(式中、XはCH又はN、及び、XがCHのとき、RがH、OH、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル鎖、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコキシ鎖、又はハロゲン原子、及び、XがNのとき、RがH、又は薬剤的に許容できる有機又は無機酸を有する酸付加塩である。)の化合物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
薬剤的に許容可能な有機及び無機酸の典型的な例は、シュウ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、琥珀酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化水素酸、リン酸、硫酸である。
【0013】
神経因性疼痛によって特徴付けられる病的状態の典型的な例は、糖尿病、癌、免疫不全、精神的外傷、虚血、多発性硬化(症)、坐骨神経痛、三叉神経痛、及び肝炎後症候群である。
【0014】
好ましくは、本発明の薬剤組成物は、薬剤的に許容できる有機又は無機酸、及び少なくとも1つの薬剤的に許容可能な不活性成分を用いた少なくとも1つの化合物(I)又はその酸付加塩での有効的な投与量を含む適当な投与形態で調整される。
【0015】
適当な投与形態の例は、口径投与用のタブレット、カプセル、被膜タブレット、顆粒、溶液、及びシロップ、経皮的投与用の薬用硬膏、溶液、ペースト、クリーム、及び軟膏、直腸投与用座薬、及び注射又はエアロゾル経由による投与用滅菌溶液である。
【0016】
他の適当な投与形態は、持続した放出投与形態、口径又は注射投与用リポソームに基づく投与形態である。
【0017】
また、投与形態は、他の従来の成分、例えば、防腐剤、安定化剤、界面活性剤、緩衝液、浸透圧を制御するための塩、乳化剤、甘味料、着色料、風味料などを含むことができる。
【0018】
特定の治療によって要求されるなら、本発明の薬剤組成物は、付随的投与が有益である他の薬剤活性成分からなることができる。
【0019】
本発明の薬剤組成物における薬剤的に許容できる酸とともに、化合物(I)又はその酸添加塩の量は、既知の因子、たとえば、治療されるべき神経因性疼痛が関連する経路のタイプ、疾患の重篤度、患者の体重、投与形態、選択される投与経路、一日当たりの投与数、選択された式(I)の化合物の有効率などに依存して広範な範囲に渡り変えることができる。しかしながら、適当な量は、当業者によって簡単に通常方法によって決定することができる。
【0020】
典型的に、本発明の薬剤組成物における 薬剤的に許容できる酸とともに、化合物(I)又はその酸添加塩の量は、塩基として化合物(I)の0.001から100mg/kg/日の投与レベルを確実にするためのものであろう。好ましくは、投与レベルは、0.05〜50mg/kg/日のものであり、なお好ましくは、0.1〜10mg/kg/日である。
【0021】
本発明の薬剤組成物の投与形態は、混合、顆粒、圧縮、溶解、殺菌などを含む薬剤師によく知られた技術によって調整することができる。
【0022】
化合物(I)の鎮痛活性は、ラットにおける2つの実験的モデル、すなわち、坐骨神経結紮によって誘導された異痛(症)と、ストレプトゾトシンによって誘導された糖尿病性神経障害における機械的痛覚過敏症とによって証明された。
【0023】
当業者に知られているように、前述の実験モデルは、人の活性予測と考えることができる。
【0024】
ラットにおける坐骨神経結紮の実験モデルは、神経因性疼痛と関連する多くの衝撃的な病的状態における人に観察されるものと類似する一連の応答を再生産する神経障害である。坐骨神経結紮は、事実、痛みの認識の制御に責任を有する特異的回路の活性化に関係し、異痛(症)、痛覚過敏及び自発痛の兆候によって特徴付けられる症候群を含むことが可能である。周知のように、このモデルは、人における神経因性疼痛の治療、特に、異痛(症)及び痛覚過敏などの病態の制御における用途用の薬の研究に対して有効な手段である。
【0025】
その展開において、ラットにおけるストレプトゾトシンによって誘導された糖尿病性神経障害は、運動の伝導速度、知覚神経、痛みの認識における一連の異常の出現における合併減少によって特徴付けられるインシュリン依存症候群である。周知のように、このモデルは、人における神経因性疼痛の治療に使用するための薬の研究用に有益な手段である。特に、このモデルは、神経系の一次病巣、機能障害のために、例えば、痛覚過敏、異痛(症)などの現象によって特徴付けられる神経痛タイプの多くの群での妥当な例である。
【0026】
上で引用した2つの実験モデルにおいて述べた機能障害によって特徴付けられ、神経因性疼痛の存在によって特徴付けられる人病理学の典型的な例は、糖尿病、癌、免疫不全、トラウマ、虚血、多発性硬化(症)、坐骨神経痛、三叉神経痛、肝炎後症候群である。
【0027】
試験
1.ラットにおける坐骨神経結紮によって誘導された異痛(症)
新生児で200〜250gの体重の雄CD率を使用した。異痛を左後足の坐骨神経の麻酔下縛ることによって誘導した(Seltzer Z, Dubner R, Shir Y, A novel behavioral model of neuropathic pain disorders of pain sensation like those seen in man. Pain 1998; 33: 87-107)。坐骨神経の結紮後少なくとも2週間後、手術前に記録された反応閾値における少なくとも50%の減少を示した羅とを選択した。痛みの閾値は、左後足の裏領域における圧力における緩やかな増加を適用することによって、動物がその足を引き下げる時期に対応して、グラムで表現された、傷害反応を記録することを可能とするVon Frey instrumentの平均値によって測定された。
【0028】
治療後、30分間、1、2及び4時間で、対照例動物において測定された痛み基準を、試験下R=4-OHで、X=CHである化合物(I)の塩酸塩で処理した動物において測定したものと比較した。
【0029】
対照例動物は、試験下製品の投与用に使用されたように同一の担体(水)で処理した。結果を図1に示す。
【0030】
類似の結果が、実施例2(I、X=CH、R=H)、及びEP-A-0 975 623の10(I,X=N,R=H)によって調整された化合物(I)の塩酸塩で得られた。
【0031】
2.ストレプトゾトシンによって誘導された糖尿病のラットにおける機械的痛覚過敏
新生児で240-300gの体重の雄CD率を使用した。
【0032】
糖尿病症候群を無菌生理食塩水に溶解したストレプトゾトシンの80mg/kgの単一腹腔内注射によって誘導した。(Courteix C, Eschalier A, Lavarenne J. Streptozotocin-induced diabetic rats: behavioural evidence for a model of chronic pain. Pain, 1993; 53: 81-88; Bannon A W, Decker M W, Kim Di, Campbell J E, Arneric S P. ABT-594, a novel cholinergic channel modulator, is efficacious in nerve ligation and diavetic neuropathy models of neuropathic pain. Vrain Res. 1998; 801: 158-63)
【0033】

【0034】
処理後、30分間、1、2及び4時間で、対照例動物において測定された痛み基準を、試験下R=4-OHでX=CHの化合物(I)の塩酸塩で処理した動物において測定されたものと比較した。
【0035】
対照例動物は、試験下化合物(I)の塩酸塩の投与用に使用されたように同一の担体(水)で処理した。
【0036】
結果を図2に示す。
【0037】
類似の結果が、実施例2(I、X=CH、R=H)、及びEP-A-0 975 623の10(I,X=N,R=H)によって調整された化合物(I)の塩酸塩で得られた。
【0038】
実施例
実施例1
N((1-(2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)-4-ピペリジニル)メチル)-1-イソプロピル-1H-インダゾール-3-カルボキシアミド塩酸塩(化合物I、R=OH、X=CH)
【0039】
方法A)
a)N-ヘキサヒドロ-4-ピペリジニル-N-フェニルメチリデンアミン
ベンズアルデヒド(38.2g、0.36モル)を、トルエン(180ml)中の4-アミノメチル-ピペリジン(41.1g、0.36モル)の溶液へ滴下して加えた。こうして得られた溶液を3時間攪拌しながら室温に放置した。その後溶液を減圧下蒸発により除去して、残余をトルエンで採取して更なる精製なしに使用される所望の生成物を与えた。
b)1-2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)-4-ピペリジニルメタンアミン
【0040】
工程1aで得られた生成物(63.2g、0.31モル)を無水エタノール(50ml)に溶解し、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル臭化物(62.8g、0.31モル)(Acta Chem. Scand. 21(1) 53-62, 1967で記載されているように調製された)及び150mLの無水エタノール中の無水炭酸カリウム(64.7g、0.47モル)の懸濁液へ加えた。このように得られた懸濁液を16時間還流下沸騰させた。その後、反応混合物を周辺温度へ冷却し、濾過した。濾過液を減圧下、蒸発させた。このように得られた残余を3NHCl(280ml)、3時間攪拌して周辺温度で放置した。その後、溶液を分液ロートに移動させて、酸性水相を酢酸エチル(4×200ml)で洗浄した。水相をその後、6NNaOHを添加することによって、pH=12へアルカリ性とした。形成された固体を濾過によって分離し、無水エタノールから結晶化し所望の生成物(35g)を与えた。融点=166〜168℃
【0041】

【0042】
c)N((1-(2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)-4-ピペリジニル)メチル)-1-イソプロピル-1H-インダゾール-3-カルボキシアミド塩酸塩
DMF(100ml)中の工程1bで得られた生成物(10.0g、0.043モル)、及びトリエチル-アミン(30ml、0.21モル)の溶液を、EP-A-0 975 623に記載されたように調製された、DMF(50ml)中の1-(1-メチルエチル)-1H-インダゾール-3-カルボン酸塩化物(9.5g、0.043モル)の溶液へ滴下して加えた。18時間室温で連続的に攪拌した後、反応混合物を分液ロートに移して、水を加え、酢酸エチルで抽出した(3×150ml)。有機相を分離して、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発によって除去された。こうして得られた残余を無水エタノールで取り上げ、エタノール性塩化水素の添加によって相当する塩酸塩へ移した。溶液を減圧下蒸発させて、残余をエタノールから結晶化し所望の生成物を与えた(20g)。
【0043】
方法B)
無水エタノール(100ml)中の2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル臭化物(Acta Chem. Scand. 21(1)53-62, 1967に記載されたように調製した)(3.4g、0.017モル)、及び無水炭酸カリウム(4.6g、0.033モル)を、EP-A-0 975 623に記載されたように調製した無水エタノール(80ml)中のN-(4-ピペリジニルメチル)-1-イソプロピル-1H-3-インダゾールカルボキシアミド(4.2g、0.014モル)の溶液へ加えた。このようにして得られた懸濁液を16時間還流下連続的に攪拌した。このようにして得られた残余を、その後、酢酸エチル中の溶解、エタノール性塩化水素の添加によって対応する塩酸塩へ変換し、無水エタノールから再結晶化し、所望の生成物を与えた(2.2g)。融点=218〜220℃
【0044】

【0045】

【0046】
実施例2
有効成分として、本発明の化合物(I)からなるタブレットは、以下の組成を有する。
活性成分 50mg
ラクトース一水和物 161mg
二塩基リン酸カルシウム二水和物 161mg
ミクロクリスタリンセルロース 95mg
とうもろこし澱粉 30mg
カルボキシメチルセルロース澱粉 24mg
ポビドン 11mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
【0047】
実施例3
有効成分として、本発明の化合物(I)からなるアンプルは、以下の組成を有する。
活性成分 25mg
ソルビトール 等浸透圧溶液に対して適量(q.s.)
水 100mlに対して適量(q.s.)
【0048】
実施例4
有効成分として、本発明の化合物(I)からなる顆粒の薬剤組成物は、以下の組成を有する。
活性成分 50mg
マルチトール 1300mg
マンニトール 2700mg
サッカロース 1000mg
クエン酸 20mg
アスパルテーム 20mg
香味成分 200mg

酸性水相を酢酸エチル(4×200ml)で洗浄した。水相をその後、6NNaOHを添加することによって、pH=12へアルカリ性とした。形成された固体を濾過によって分離し、無水エタノールから結晶化し所望の生成物(35g)を与えた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、坐骨神経結紮への影響を示す図である。
【図2】図2は、糖尿病性神経障害への影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経因性疼痛治療における薬剤組成物活性を調製するための式I:
【化1】


(式中、XはCH又はN、及び、XがCHのとき、RがH、OH、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル鎖、1〜3つの炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコキシ鎖、又はハロゲン原子、及び、XがNのとき、RがH、又は薬剤的に許容できる有機又は無機酸を有する酸付加塩である。)の化合物の使用方法。
【請求項2】
XがCHであるとき、RがHである請求項1記載の式Iの化合物の使用方法。
【請求項3】
XがNのとき、RがHである請求項1記載の式Iの化合物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513544(P2009−513544A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519845(P2006−519845)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007635
【国際公開番号】WO2005/013989
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(592160973)アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (36)
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】