神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物
本発明は、神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物に関するものであって、より詳細には、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有する神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物に関する。このような薬学組成物は、帯状疱疹によって損傷した神経組職を修復して帯状疱疹による急性疼痛を減少させて、帯状疱疹後神経痛への移行を遮断し、帯状疱疹後神経痛でも神経組職の修復を通じる根本的な治療を可能にし、さらに、坐骨神経圧潰損傷などを含む神経損傷、糖尿病性神経病症などを含む神経病症及び神経病症性疼痛、脳卒中などを含む脳疾患を含めた神経組職の損傷によってなされる多様な疾患でも非常に有用に使われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷した神経組職を迅速に修復させることによって、末梢神経損傷または中枢神経損傷のような神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のような神経疾患を効果的に治療することができる薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、多発性神経病症、脊髄損傷、脳血管障害などの多様な神経疾患は、例えば、環境、遺伝などの要因によって脳や末梢の神経細胞が退化、減少、細胞死するか、または傷害を被るか、除外されることで発病する。したがって、このような神経疾患の治療には、神経細胞の傷害によって消失された神経伝達物質を補充するか、神経細胞を再生することが重要である。神経細胞を再生する方法としては、未分化した神経幹細胞やさまざまな細胞に分化することができる胚芽幹細胞などがある。
損傷した神経の神経再生についての多様な研究が行われた。一般的に、末梢神経の外傷性損傷に対する臨床の外科治療は、まず損傷局所部位付近の損傷した組職を除去し、末梢神経の再生を可能にする環境を提供する複雑で連続した段階からなる(Kline,J Neurosurg,1989、70:166−174)。外科的過程の役割は、一般的に損傷した領域の近位部と遠位部とを直接連結するか、融合するものを含む(Kline and Judice,J Neurosurg,1983,58:631−649)。神経の自発的な再生を待つ間に、筋肉−神経連合の退化の抑制を助ける筋肉の収縮を生成するために、電気的興奮を保持するような、より愼重な外来患者の治療だけではなく(Kimet al.,Korean Academy of Rehabilitation Medicine(Korean),1999,23:893−8983;al−Amoodet al.,J Physiol(Lond),1991,441:243−256)、末梢神経移植のようなさらなる外科的方法(Millesi,Clin Orthop,1988,237:36−42)が使われる。そして、このような過程のほとんどは、依然として筋肉弱化と収縮とを阻み、神経の発芽を促進するために、長期的で制御された運動療法を含む幅広い物理治療法を含む(Pyun et al.,KoreanAcademy of Rehabilitation Medicine(Korean),1999,23:1063−1075)。
【0003】
最近、成体の脳海馬などにおいて、新たな神経細胞が生産される神経新生が報告され、これに基づいて患者の脳内に内在する神経幹細胞を薬剤などで刺激して再生を誘導しながら、神経疾患を治療する方法が検討されている。しかし、いずれもタンパク質またはタンパク性因子を脳内に注入する必要があり、一般的な医療に応用することが困難であるために、タンパク質の代わりにする低分子化合物として、サルビアノール酸Bやリチウムまたはその薬理学的に許容される塩などが提案されている。
【0004】
一方、末梢神経の損傷は、生存及び軸索突起の再生を増進する背根神経節(dorsal root ganglion、DRG)に位置した感覚ニューロンの細胞体内の変化を誘発する。例えば、圧挫損傷の以後、好転した病態下でほとんどの神経纎維が成功的に再生される。しかし、多くの臨床的関連状況において、外傷性または疾病−誘発神経損傷は、機能の単に制限された回復及び度々相当な遅延のような不良な結果をもたらす。そのような場合に、神経病症性または慢性疼痛状態が進行しうる。
【0005】
代表的な神経病症性疼痛としては、帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛が挙げられ、このような神経病症性疼痛は、多くの場合において、疼痛の程度が一生の間に感じることができる最も大きな疼痛であるという分娩時の疼痛と比肩されており、深刻な疼痛を誘発する他の疾患、例えば、末期癌性疼痛、通風性発作、三叉神経痛などとは異なって、周期性ではない持続的な疼痛が誘発されるという点でさらに大きな深刻性がある。
【0006】
帯状疱疹において、現在使用中である抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビルの場合、処方ガイドラインに出ているように、帯状疱疹の最初発疹後、72時間内に適用した時にのみ、ある程度の治療効果を期待することができるが、多くの患者の場合、72時間が経過した後、病院に訪問するので、その有用性が半減される。
【0007】
しかも、帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛において、神経痛を減らすための対症療法剤、例えば、アセトアミノフェン、ピロキシカムのような非ステロイド性消炎鎮痛剤、モルフィン、オキシコドン、フェンタニル、コデインのような麻薬性鎮痛剤、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸のような抗てんかん剤、ノルトリプチリン、デシプラミン、アミトリプチリンのような抗うつ剤、プレドニゾロンのような副腎皮質ホルモン剤またはリドカインのような局所痲酔剤が使われているが、効果的ではない場合が多く、疼痛が激しいか、持続期間が長くなる場合において、神経遮断術を積極的に施行する趨勢である。
【0008】
現在、帯状疱疹の治療に使われる抗ウイルス剤と消炎鎮痛剤との主な処方は、帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の病因的要因である神経組職損傷の修復機能に実際の役割を果たせておらず、効果的な疼痛調節が不可能である。
【0009】
また、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛との場合のように、神経組職の損傷が同伴される疾患である急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脳卒中、脳腫瘍、退行性神経疾患、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛または視床痛のような神経病症または神経病症性疼痛や、脳卒中、脳腫瘍、痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、癲癇、中風または虚血性脳疾患のような脳疾患を直接的に予防または治療することができる治療剤の開発も切実な実情である。
【0010】
したがって、神経組職損傷を迅速に修復して神経損傷または神経疾患を効果的に治療することができる薬物の開発が切実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、化学式1または化学式2の化合物が損傷した神経を修復して末梢神経損傷または中枢神経損傷のような神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のような神経疾患を効果的に予防または治療することができるという点に着眼して、神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物を開発しようとするところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を果たすために、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有する神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する:
【化1】
前記化学式1で、Xは、OH、SHまたはO−であり、R1、R2、R3は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R4、−(CH2)nOH、−(CH2)nNR5R6、−(CH2)nN+R7R8R9、−CH2CH(COOH)NH2、−CH2CH(COO−)NH2、−CH2CH(COOH)NH3+、イノシトール、五炭糖、六炭糖、グリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはHであり、nは、1ないし10の整数であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、またはHであり、
【化2】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4、R5は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R6、ホスホコリン、燐酸、五炭糖、六炭糖またはそれら糖の誘導体、アミノ糖類、アルコキシ燐酸またはHであり、R6は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
【0013】
前記神経損傷及び神経疾患は、末梢神経損傷、中枢神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のうちから選択されたいずれかの疾患であり得る。
【0014】
また、本発明の薬学組成物は、さらに植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物を含みうる。
【0015】
また、本発明の薬学組成物は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物0.1ないし99.9重量%及び植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物0.1ないし99.9重量%を含みうる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の薬学組成物の有効成分である化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物は、損傷した神経組職を迅速に修復させることによって、末梢神経損傷または中枢神経損傷のような神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のような神経疾患を効果的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】帯状疱疹ウイルスのバディング(budding)によって損傷した神経部位に本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体が充填されることで損傷神経部位が修復される模式図を示す図である。
【図2】皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数)を示す図である。
【図3】帯状疱疹による疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を示す図である。
【図4】帯状疱疹後神経痛による疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を示す図である。
【図5】それぞれ坐骨神経圧潰損傷モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:1週対照群、c:1週処置群、d:2週対照群、e:2週処置群、f:3週対照群、g:3週処置群)。
【図6】それぞれ坐骨神経圧潰損傷モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:1週対照群、c:1週処置群、d:2週対照群、e:2週処置群、f:3週対照群、g:3週処置群)。
【図7】それぞれ糖尿病性神経病症モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:糖尿誘発後、4週無処置群、c:糖尿誘発後、4週H−Zクリーム処置群、d:糖尿誘発後、5週無処置群、e:糖尿誘発後、4週無処置後、1週H−Zクリーム処置群、f:糖尿誘発後、6週無処置群、g:糖尿誘発後、4週無処置後、2週H−Zクリーム処置群)。
【図8】それぞれ糖尿病性神経病症モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:糖尿誘発後、4週無処置群、c:糖尿誘発後、4週H−Zクリーム処置群、d:糖尿誘発後、5週無処置群、e:糖尿誘発後、4週無処置後、1週H−Zクリーム処置群、f:糖尿誘発後、6週無処置群、g:糖尿誘発後、4週無処置後、2週H−Zクリーム処置群)。
【図9】脳卒中モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による体重変化を示す図である。
【図10】それぞれ脳卒中モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による脳組織に対するTTC染色写真及び脳梗塞面積を示す図である。
【図11】それぞれ脳卒中モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による脳組織に対するTTC染色写真及び脳梗塞面積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有する神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する:
【化3】
前記化学式1で、Xは、OH、SHまたはO−であり、R1、R2、R3は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R4、−(CH2)nOH、−(CH2)nNR5R6、−(CH2)nN+R7R8R9、−CH2CH(COOH)NH2、−CH2CH(COO−)NH2、−CH2CH(COOH)NH3+、イノシトール、五炭糖、六炭糖、グリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはHであり、nは、1ないし10の整数であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、またはHであり、
【化4】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4、R5は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R6、ホスホコリン、燐酸、五炭糖、六炭糖またはそれら糖の誘導体、アミノ糖類、アルコキシ燐酸またはHであり、R6は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
【0019】
前記化合物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、スフィンゴリン脂質、スフィンゴミエリン、プラスマロゲン、スフィンゴプラスマロゲン、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、セレブロシド、セラミド、これらのリソ(lyso−)型物質、及びこれらの可能な塩からなる群から選択されたことが望ましい。
【0020】
前記神経損傷及び神経疾患は、末梢神経損傷、中枢神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のうちから選択された何れかの疾患であり得る。
【0021】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛及び視床痛からなる群から選択されうる。
【0022】
また、前記神経病症または神経病症性疼痛は、望ましくは、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛及び幻肢痛からなる群から選択され、より望ましくは、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、外傷後神経病症及び帯状疱疹後神経痛からなる群から選択され、最も望ましくは、帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛から選択されうる。
【0023】
また、前記脳疾患は、脳卒中、脳腫瘍、痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、癲癇または虚血性脳疾患から選択されうる。
【0024】
また、前記末梢神経損傷または中枢神経損傷は、神経断裂症及び外傷性神経損傷からなる群から選択されうる。
【0025】
また、本発明の薬学組成物は、さらに植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物を含みうる。
【0026】
前記植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂としては、アロエゲルと、昆布抽出物、天草抽出物及びフコイダンからなる群から選択された海藻類抽出物と、これらと類似した機能を行う植物性または合成樹脂と、これらの混合物と、からなる群から選択されうる。
【0027】
本発明の薬学組成物は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物0.1ないし99.9重量%及び植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物0.1ないし99.9重量%を含みうる。
【0028】
本発明の薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使える適切な担体、補助剤またはビヒクルをさらに含みうる。本発明で使用可能な担体、補助剤またはビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、人間血清アルブミンのような血清タンパク質、ホスフェートのような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩のような塩または電解質、コロイダルシリカ、珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体(polyethylene−polyoxypropylene−block polymers)、ポリエチレングリコール及び羊毛脂(wool fat)などを含みうる。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、鼠、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に多様な経路で投与される。投与のあらゆる方式は、予想されうるが、例えば、経口的に、非経口的に、注射によって、無針装置(needle−free device)によって、吸入スプレーによって、局所的に、直腸に、鼻に、頬に(buccally)、膣に(vaginally)、または移植された貯蔵所(implanted reservoir)を通じて投与される。経口投与または注射による投与または無針装置による投与または経皮投与が望ましい。本明細書に使われた“非経口”という用語は、経皮(transdermal)投与及び皮下(subcutaneous)、皮膚内(intracutaneous)、静脈内(intravenous)、筋肉内(intramuscular)、関節内(intra−articular)、滑液膜内(intrasynovial)、胸骨内(intrasternal)、脊髄腔内(intrathecal)、病変内(intralesional)、及び頭蓋腔内(intracranial)注射または注入技術(infusion techniques)を含む。
【0030】
薬学組成物が、注射によってまたは無針装置によって投与される場合、無菌注射することができる製剤の形態または無針装置による伝達に適切な形態であり、これは、水溶性または油性懸濁液であり得る。このような懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤と懸濁剤とを用いて当業界に公知された技術によって製剤化されうる。無菌注射することができる製剤または無針装置による伝達に適切な形態は、また無毒性である非経口的に許容可能な希釈液または溶媒での溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオールでの溶液であり得る。
【0031】
使用可能なビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。そして、無菌の固定油が通常の溶媒または懸濁媒質として採用されうる。このような目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の刺激性の少ない固定油が採用されうる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油、特に、これらのポリオキシエチル化形態(their polyoxyethylated versions)のような天然薬学的に許容可能なオイルである注射剤の製造において有用である。
【0032】
本発明の薬学組成物は、これに制限されるものではないが、カプセル(capsules)、錠剤(tablets)、及び水溶性懸濁液及び溶液を含む任意の経口的に許容可能な剤型で経口投与される。経口投与のための錠剤の場合に、一般的に利用される担体は、ラクトース及びトウモロコシ澱粉を含む。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤が、また典型的に添加されうる。カプセル型の経口投与のために、有用な希釈液は、ラクトース及び乾燥トウモロコシ澱粉を含む。水溶性懸濁液が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁剤と組み合わせられる。所望の場合、甘味剤及び/または着香剤及び/または着色剤が添加されうる。
【0033】
本発明の薬学組成物は、局所的に投与されることがあり、このような局所投与は、所望の治療が局所適用によって容易に接近することができる部位及び器官に関連した場合に、特に有用である。皮膚への局所適用のためには、薬学組成物が担体内に懸濁または溶解された活性成分を含有する適切な軟膏で製剤化されなければならない。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、ミネラルオイル、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を含むが、これに制限されるものではない。
【0034】
また、本発明の薬学組成物は、担体内に懸濁または溶解された活性化合物を含む適切なローションまたはクリームで製造可能であり、適切な担体は、例えば、ミネラルオイル、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含む。本発明の薬学的組成物は、また直腸座薬フォーミュレーションによって、または浣腸フォーミュレーションで下部腸管(lower intestinal tract)に局所的に適用可能である。局所的−経皮性パッチが、また本発明に含まれる。
【0035】
本発明の薬学組成物は、鼻エアゾールまたは吸入によって投与される。このような組成物は、薬学的フォーミュレーションの分野で広く公知された技術によって製造され、ベンジルアルコールまたは他の適した保存剤、生体利用率を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または当業界に公知された他の溶解剤または分散剤を採用して、食塩水内の溶液で製造可能である。
【0036】
本発明で説明された必須的な、または任意的な成分に対して選択されたレベルまたは範囲は、直接使うための組成物または使用前に希釈するための濃縮物を剤型化するかの有無、それだけではなく、選択された特定成分、組成物の究極的な最終用途、及び当業者に公知された他の因子に依存することを当業者は分かる。
【0037】
本発明の薬学組成物において、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物の投与容量は、通常1回100ないし10,000mg/60kg(体重)程度、1日2〜3回投与することが望ましく、このような投与容量は、患者の年齢、性別、体重、疾患の重症度、健康状態などによって増減しうる。
【0038】
また、本発明の薬学組成物を局所塗布する場合、投与量及び頻度数は、治療しようとする患者の年齢、性別、体重、疾患の重症度、疾患部位面積、健康状態、活性成分の濃度などを含む多くの因子に依存して変わりうる。典型的に、薬学組成物は、ほとんどの用途の場合、組職1cm2当たり10ミリグラム(mg/cm2)以上、望ましくは、50mg/cm2以上、より望ましくは、100mg/cm2以上、及び最も望ましくは、200mg/cm2以上の投与量で伝達されうる。このような塗布は、1日以上間に毎日1回または数回(例えば、2〜6回)からなり、典型的に、組成物は、1〜14日間に1ないし2回/日塗布される。
【実施例】
【0039】
本発明の理解を助けるために望ましい実施例を下記に提示する。しかし、このような実施例は、本発明をより容易に理解するために提供され、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>H−Zクリーム製造
ステアリン酸15gを250mLビーカーに入れた後、80〜85℃の水浴上で完全に溶かした溶液に、別途に200mLビーカーに精製水75mLを取った後、水酸化カリウム0.7gとグリセリン10mLとを溶かした後、80〜85℃で加熱した溶液を加えて撹拌した後、常温まで冷やしてバニシングクリームを製造した。
アロエベラジェル229.0gに前記製造されたバニシングクリーム100.7gを入れて十分に撹拌した後、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体であるオロニア大豆レシチン(供給業体:デラコナチュラルソースカンパニーエルティディー)16.03g、α−トコフェロール1.60g及び安息香酸プロピル0.50gを少量ずつ付け加えながら撹拌して、微黄色のクリームを製造した。この際、製造された組成物は、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体として1.7重量%を含有した。
【0041】
<実施例2>H−Zクリーム製造
アロエベラジェル200.0gにトウイーン#80 4.00gを入れて十分に撹拌した後、オロニア大豆レシチン(供給業体:デラコナチュラルソースカンパニーエルティディー)20.00g、α−トコフェロール2.00g、及び安息香酸プロピル0.30gを少量ずつ付け加えながら撹拌して、微黄色のクリームを製造した。この際、製造された組成物は、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体として3.24重量%を含有した。
【0042】
<実施例3>H−Zクリーム製造
アロエベラジェル127.0gにトウイーン#80 14.00gを入れて十分に撹拌した後、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体であるGL−90E(供給業体:ゴーセンバイオテック)70.00g、α−トコフェロール7.00g、及び安息香酸プロピル0.30gを少量ずつ付け加えながら撹拌して、微黄色のクリームを製造した。この際、製造された組成物は、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体として29.1重量%を含有した。
【0043】
<実験例1>帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の臨床実験分析
実施例1ないし実施例3によって製造された組成物(H−Zクリームと通称する)を下記のような方法で帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の臨床実験を実施した。
1.施行病院名:○○病院
2.施行医師:○○課長○○○
3.施行期間:2008.10.28〜2009.03.15
4.対象疾患別患者数
1)帯状疱疹:33人
2)帯状疱疹後神経痛:8人
5.年齢分布(表1)
【0044】
【表1】
【0045】
6.帯状疱疹患者分析
1)来院時点
(i)発疹後72時間以内:11人
(ii)発疹後72時間以後:22人(3日後:14人、4日後:5人、7日後:3人)
【0046】
2)治療方法
(i)ファムシクロビル500mg(一日三回、7日間)+H−Zクリーム塗布(来院日に限って1日1回)
(ii)H−Zクリーム塗布(来院日に限って1日1回)単独−キム・ジョンシュク(46)、イム・ジョンブ(67)
(iii)H−Zクリーム塗布方法:皮膚病変が表われた部位に3.0mm程度の厚さに塗った後、ポリエチレンラップ(wrap)で密封
【0047】
3)時間による皮膚病変進行段階(1〜6段階)
帯状疱疹進行段階は、次のように分類し、その結果は、表2の通りである。
(1)1段階:皮膚病変はないが、疼痛はある。
(2)2段階:発疹に引き続き小水疱(small bumps)生成段階
(3)3段階:小水疱が合わせられて水疱(blisters)に転換される段階
(4)4段階:水疱がリンパ液で満たされて裂ける段階
(5)5段階:瘡蓋が生成されて癒える段階
(6)6段階:皮膚病変はほとんど消えて帯状疱疹後神経痛に進行する段階
【0048】
【表2】
I来院当日を“0日”にして、1日、2日、...に表示
II帯状疱疹の皮膚病変の進行段階を1〜6段階に分類して表示する
III、IV 、V小水疱段階で瘡蓋ができる段階に移行されず、水疱が沈んで消滅される場合に該当
VI来院していない日の表示‘−’にする
VII発疹72時間内治療開始
【0049】
また、皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数)を、図2に表わした。
【0050】
4)時間による急性疼痛の強度変化I(0〜10点)
時間による急性疼痛の強度変化(0〜10点)を、下記の表3に表わした。
【0051】
【表3】
I 疼痛解消時点を疼痛指数“2点以下”である時にし、3点以後来院していない場合、最終来院日3日目(*表示日)疼痛指数を2点と仮定して、下記<疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)>を表示する。
II来院当日を“0日”にして、1日、2日、...に表示
III疼痛点数:疼痛を0〜10点の間で患者が自身の疼痛程度を表示するようにして記録する
IV来院していない日の表示‘−’にする
V発疹72時間内治療開始
【0052】
また、疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を、図3に表わした。
【0053】
5)帯状疱疹治療のメタ分析資料との比較
−比較資料出処:Can Fam Physicion[Vol.54,No.3,March 2008,pp.373−377]
<<Treatment of herpes zoster>>Wim Opstelten,MD PhD,Just Eekhof,MD PhD,Arie Knuistingh Neven,MD PhD and Theo Verheij,MDPhD
【0054】
帯状疱疹で皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数)比較は、表4の通りである。
【0055】
【表4】
【0056】
帯状疱疹において、疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)比較は、表5の通りである。
【0057】
【表5】
【0058】
6)帯状疱疹後神経痛への移行
一般的に、帯状疱疹患者の20%が帯状疱疹後神経痛に移行されるが、実施例で製造したH−Zクリームを共に使った総33人の患者では、帯状疱疹後神経痛への移行患者がいなかった。
【0059】
7.帯状疱疹後神経痛の患者分析
1)対象患者の来院時点(表6)
【0060】
【表6】
【0061】
2)治療方法
(i)H−Zクリーム(実施例2使用)塗布(来院日に限って1日1回)
(ii)H−Zクリーム塗布方法:疼痛がある部位に3.0mm程度の厚さに塗った後、ポリエチレンラップで密封
3)時間による疼痛の強度変化I(0〜10点)(表7)
【0062】
【表7】
I疼痛解消時点を疼痛指数“2点以下”である時とし、3点以後来院していない場合、最終来院日3日目(*表示日)疼痛指数を2点と仮定して、下記<疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)>を表示する。
II来院当日を“0日”にして、1日、2日、...に表示
III疼痛点数:疼痛を0〜10点の間で患者が自身の疼痛程度を表示するようにして記録する
IV 来院していない日の表示‘−’にする
【0063】
疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を、図4に示した。
【0064】
4)帯状疱疹後神経痛治療のメタ分析資料との比較
−比較資料出処:Can Fam Physicion[Vol.54,No.3,March 2008,pp.373−377]
<<Treatment of herpes zoster>>Wim Opstelten,MD PhD,Just Eekhof,MD PhD,Arie Knuistingh Neven,MD PhD and Theo Verheij,MD PhD
【0065】
(i)帯状疱疹後神経痛において、疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)比較(表8)
【0066】
【表8】
【0067】
8.結果及び分析
1)帯状疱疹治療の結果及び分析
(i)全体33人の患者のうち2人の臨床実験でのみH−Zクリームを単独で使い、残りの臨床実験では、ファムシクロビル(1回1錠500mg、1日3回)とH−Zクリーム(来院時1回塗布)とを同時に適用した場合(31人)である。本臨床実験は、ファムシクロビルを適用した患者に対してH−Zクリームの効果をメタ分析資料と間接的に比較したものである。
(ii)帯状疱疹での皮膚病変の改善効果(皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数))を比較した結果、‘プラシーボ’、‘ファムシクロビル単独’と‘ファムシクロビル+H−Zクリーム’とを比較した結果、それぞれ‘7日’、‘5日’と‘2日’とに表われた(表2、表4及び図2)。しかし、メタ分析での対象患者が皮膚病変発現後、72時間以内治療を始めた場合のみを対象とした点を勘案するならば、皮膚病変の改善日数の短縮(3日)に大きな意味を置くことは無理があると考えられる(表4)。
(iii)帯状疱疹での急性疼痛の改善効果(疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数))を比較した結果、‘プラシーボ’、‘ファムシクロビル単独’と‘ファムシクロビル+H−Zクリーム’とを比較した結果、それぞれ‘30日’、‘20日’と‘3.2日’とに表われた(表3、表5及び図3)。この結果は、前述したとおりにメタ分析で統計対象を皮膚病変発現後、72時間以内治療を始めた場合のみで限定したことを勘案しても、その差が大きくて十分に有意性があると見られ、H−Zクリームが帯状疱疹の急性疼痛の改善に効果があることを裏付ける。
(iv)一般的に、50歳を基準にそれ以上の年齢で帯状疱疹発病率と皮膚病変及び疼痛、そして、帯状疱疹後神経痛への移行率が急増し、皮膚病変発現後、72時間以内に抗ウイルス剤の投薬の有無によって帯状疱疹後神経痛の治療期間が大きく左右される。したがって、疼痛解消効果を50歳以上群、皮膚病変発現後、72時間内治療開始群と全体群とに分けて分析した(図3)。
H−Zクリームの効果をメタ分析資料と比較時、疼痛解消程度及び疼痛解消期間を大きく減らしたが、H−Zクリームを適用した場合は、前述した対象群(50歳以上群、72時間以内抗ウイルス治療開始群と全体群)に関係なく急性疼痛軽減程度及び解消期間に差がなかった(図3及び表3)。これは、患者の年齢及び治療開始時点(皮膚病変発現後72時間)に関係なくH−Zクリームが疼痛解消と疼痛解消期間の軽減に使われうるということを意味する。
(v)H−Zクリームの効果に対して皮膚病変の改善効果を50歳以上群、皮膚病変発現後、72時間内治療開始群と全体群とに分けて分析したが、差がなかった。したがって、抗ウイルス剤の投薬の有無と患者の年齢及び治療開始時点(皮膚病変発現後72時間)は、皮膚病変の改善に大きく影響がないと考えられる。
(vi)一般的に、帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛への移行率が20%であるために、33人の帯状疱疹患者を対象とした場合に、算術的には6.6人が帯状疱疹後神経痛患者に移行せねばならないが、H−Zクリーム適用した本臨床では、一人の帯状疱疹患者も、帯状疱疹後神経痛に移行せず、あらゆる患者が治療開始9日内に完治した。これは、帯状疱疹ウイルスによって損傷した神経組職を修復するH−Zクリームの効果を立証すると見られる。現在、抗ウイルス剤を含んで帯状疱疹後神経痛への移行率を低める薬物と方法とが全くないという点でH−Zクリーム開発が重要であると言える。
(vii)報告されたところによれば、抗ウイルス剤は、帯状疱疹の治療において皮膚病変の改善、疼痛軽減の作用、治癒期間の短縮及び帯状疱疹後神経痛への移行率と関連しては、如何なる利点も提供することができない。単に、皮膚病変発現72時間以内に抗ウイルス剤を服用した50歳以上の帯状疱疹患者で帯状疱疹後神経痛の治療期間短縮という長所が発見されるだけである(Famciclovir for the Treatment of Acute Herpes Zoster:Effects on Acute Disease and Postherpetic Neuralgia,A Randomized,Double−Blind,Placebo−Controlled Trial.Stephen Tyring,MD,PhD;Rick A.Barbarash,PharmD;James E.Nahlik,MD;Anthony Cunningham,MBBS,MD;John Marley,MD;Madalene Heng,MD;Terry Jones,MD;Ted Rea,MD;Ron Boon,BSc(Hons),CBio,MIBiol;Robin Saltzman,MD;the Collaborative Famciclovir Herpes Zoster Study Group.Annals of Internal Medicine,1995,123(2),pp.89−104)。すなわち、帯状疱疹患者での実質的な治癒の核心は、抗ウイルス作用よりは急性疼痛の軽減と治癒期間の短縮、帯状疱疹後神経痛への移行遮断、そして、帯状疱疹後神経痛の疼痛軽減とその治癒期間の短縮とにある。このような側面で、損傷した神経組職の修復を通じて帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の疼痛軽減と治癒期間の短縮及び帯状疱疹後神経痛への移行遮断を行う核心的な治癒作用を行うH−Zクリームが有用であると言える。
【0068】
2)帯状疱疹後神経痛の治療結果及び分析
(i)全体8人患者の臨床実験では、いずれもH−Zクリームを単独で使った。
(ii)メタ分析での対象患者が、帯状疱疹発現72時間以内ファムシクロビルを投与した場合において、帯状疱疹後神経痛に移行された場合に限って臨床実験した結果である一方、本臨床実験では、あらゆる場合、帯状疱疹治療が本病院で初めからなされず、その治療内訳が分からなかった。
(iii)帯状疱疹後神経痛での神経痛の改善効果(疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)、図4)を比較した結果、‘プラシーボ(帯状疱疹治療段階でファムシクロビルを投与しない)’、‘ファムシクロビル(帯状疱疹治療段階での投薬)単独’と‘H−Zクリーム’とを比較した結果、それぞれ‘119日’、‘63日’と‘5日’とに表われた(表8)。この結果も、メタ分析での結果と比較条件における差を勘案するとしても、その差が大きくて有意性があると見られ、特に、帯状疱疹後神経痛の治癒期間を減らすために、帯状疱疹段階で現在使われている抗ウイルス剤の投薬(皮膚病変発現72時間以内)の場合と比較をしても、H−Zクリームが帯状疱疹後神経痛の治癒期間を軽減するに当たって、さらに効果があることを示す。
【0069】
3)結果
帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床結果で最も注目しなければならない事項は、帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛への移行がなかったという点である。これは、帯状疱疹段階で生じた神経組職の損傷がH−Zクリームの適用で神経組職が修復されたということを意味するものであって、神経損傷を伴った他の疾患、例えば、急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脳卒中、脳腫瘍、退行性神経疾患、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛及び視床痛の神経病症または神経病症性疼痛でも、本薬学組成物が効果的に適用可能であるということを意味する。
一方、前記H−Zクリームが、帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛で表わした疼痛軽減効果と、帯状疱疹で帯状疱疹後神経痛段階への遮断効果とを表わすことが、帯状疱疹段階で損傷した神経のH−Zクリームによる効果的な修復に起因するものと判断して、H−ZクリームまたはH−Zクリームの主成分が、損傷した神経を修復させる効果を有するか否かを次のように検討した。
【0070】
<実験例2>坐骨神経圧潰損傷モデルでH−Zクリームの神経修復有効性検証
実施例2で製造されたH−Zクリームの末梢神経修復有効性を検証するために、坐骨神経圧潰損傷モデルにH−Zクリームを塗布して治療した後、形態学的評価及び神経伝導度を測定して、末梢神経修復有効性を検証した。
すなわち、7週齢のSprague−Dawley雄白鼠35匹を分譲されて実験室の環境適応のために1週間予備飼育した後、8週齢に実験を始め、予備飼育及び実験全体期間の飼育環境は温度23±2℃、相対湿度60±10%を保持して12時間の明暗周期が保持される室内で飼育し、実験動物用の飼料と飲み水とを自在に供給した。実験動物は3群に分類して、各群ごとに10匹ずつ配置をし、両側坐骨神経に圧潰損傷を誘発して無処置を実施した陰性対照群、H−Zクリーム治療を実施した実験群に区分した。
【0071】
1.坐骨神経の圧潰損傷
ケタミン塩酸塩(15mg/100g、ケタラ(登録商標)、柳韓洋行)を腹腔内注射して全身痲酔を誘発した後、両側大腿部の毛を除去した後、10%ベタジン溶液で手術部位を消毒した後、無菌操作下で通常の方法で手術を施行した。坐骨神経を露出させて脛骨神経と総鼻骨神経との分枝点で1cm上側でチップの直径が1mmである鉗子(forceps)を用いて30秒間圧潰損傷を誘発した後、筋肉と皮膚とを縫合した。
【0072】
2.H−Zクリーム治療
実験群は、圧潰損傷を誘発した部位の皮膚にH−Zクリームを一日1回ずつ1、2及び3週間塗布治療を実施した。
【0073】
3.光学顕微鏡及び透過電子顕微鏡の検査
坐骨神経に圧潰損傷誘発の前と後、そして、H−Z軟膏治療後、1、2及び3週に全身痲酔を誘発した後、損傷した坐骨神経を切り取り、正常対照群は、圧潰損傷を誘発していない状態で同じ方法で両側坐骨神経を切り取って一般的な組職処理過程を経た後、光学顕微鏡で観察して神経繊維が走行方向に直角に切断された部位を選択した。
また、最も代表的な神経横断面のみを選んで電子顕微鏡を用いて観察した。
その結果、神経組職の光学顕微鏡の写真は、図5の通りであり、神経組職の電子顕微鏡の写真は、図6の通りである。
【0074】
4.電気生理学的検査
圧潰損傷誘発の前と後、そして、H−Z軟膏治療後、1、2及び3週に筋電図器(Multiliner、Tonnies社、Germany)を使って検査室の温度を摂氏23〜27℃に保持しながら神経伝導検査を施行した。筋電図器の設定は、刺激の頻度は秒当たり1回、刺激時間0.1ms、周波数幅10Hz〜10KHz、記録消印速度5ms/div、記録感応度10mV/divに設定した後、刺激の強度は、複合筋活動電位の振幅が最大になるまで、数回刺激しながら増加させた。坐骨神経検査は、白鼠を腹臥位で固定し、表面活動電極を腓腹筋中央部の表皮に付着して筋肉内に位置させ、参考電極は、左側足部に付着した。刺激電極としては、二つの被負荷同軸針状電極を直ちに固定して使って、露出された坐骨神経を直接刺激した。神経伝導検査は、両側坐骨神経で実施して神経伝導速度(m/s)を測定し、その結果は、下記の表9の通りである。
【0075】
【表9】
【0076】
5.損傷した有髄神経の比率測定(画像分析)
光学顕微鏡に装着されたデジタルカメラで代表的な横切断部を選択して400倍に映像を撮影した後、これをイメージ分析システム(image analysis system)を用いて総有髄神経纎維の数と変性された有髄神経纎維の数とを分析した。
すなわち、神経を正確に横切断(cross section)して光学顕微鏡撮影のためのエポンブロック(Epon block)を製作して、これを細微切片化(厚さ1μm)した。このような切片をトルイジンブルーで染色してOlympus BX 51を用いて400倍顕微鏡写真を撮影して観察される全体有髄神経(myelinatednerve fiber)の数と損傷した有髄神経の数とを数えた。これに基づいて単位面積当たり損傷した有髄神経の比率を計算し、その平均を比較評価し、その結果は、下記の表10の通りである。
【0077】
【表10】
【0078】
<実験例3>糖尿病性神経病症モデルでH−Zクリームの神経修復有効性検証
実施例2で製造したH−Zクリームの末梢神経修復有効性を検証するための二番目の実験で糖尿病性神経病症の白鼠モデルにH−Zクリームを塗布して治療した後、組職神経の形態学的評価及び神経伝導度を測定して、末梢神経修復有効性を検証する実験を行った。
7週齢のSprague−Dawley雄白鼠35匹を分譲されて実験室の環境適応のために、1週間予備飼育した後、8週齢に実験を始め、予備飼育及び実験前期間の飼育環境は温度23±2℃、相対湿度60±10%を保持して12時間の明暗周期が保持される室内で飼育し、実験動物用の飼料と飲み水とを自在に供給した。実験動物は、正常対照群(n=5)、糖尿誘発対照群1(n=5)、糖尿誘発後4週が経過した後、治療をしていない対照群2(n=5)、糖尿誘発直後からH−Zクリーム処置を実施した実験群1(n=5)及び糖尿誘発後4週が経過した後からH−Zクリーム処置を実施した実験群2(n=10)に区分した。
【0079】
1.糖尿及び糖尿病性末梢神経病症の誘発
クエン酸緩衝液(pH4.5)に溶かしたSTZ(S−0130、ストレプトゾトシン、Sigma−Aldrich、USA)を100mg/kg濃度で腹腔内1回注射して48時間後、空腹状態で採血して血糖を測定して、血糖が240dl/ml以上である白鼠を実験に使った。糖尿病性末梢神経病症は、一般的に糖尿誘発4週後に始まると知られている。
【0080】
2.H−Zクリーム治療
実験群は、H−Zクリームを左右両足の坐骨神経が分布する皮膚部位に一日1回ずつ塗布治療を実施した。
【0081】
3.光学顕微鏡及び透過電子顕微鏡の検査
糖尿病性神経病症の誘発後及び軟膏治療後、適正時点で全身痲酔を誘発した後、損傷した坐骨神経を切り取り、正常対照群は、糖尿病性神経病症を誘発していない状態で同じ方法で坐骨神経を切り取って一般的な組職処理過程を経た後、光学顕微鏡で観察して神経繊維が走行方向に直角に切断された部位を選択した。
また、最も代表的な神経横断面のみを選んで電子顕微鏡を用いて観察した。
その結果、神経組職の光学顕微鏡の写真は、図7の通りであり、神経組職の電子顕微鏡の写真は、図8の通りである。
【0082】
4.電気生理学的検査
糖尿病性神経病症の誘発前と誘発後、そして、H−Z軟膏治療後、適正時点で筋電図器(Multiliner、Tonnies社、Germany)を使って検査室の温度を摂氏23〜27℃に保持しながら神経伝導検査を施行した。筋電図器の設定は、刺激の頻度は秒当たり1回、刺激時間0.1ms、周波数幅10Hz〜10KHz、記録消印速度5ms/div、記録感応度10mV/divに設定した後、刺激の強度は、複合筋活動電位の振幅が最大になるまで、数回刺激しながら増加させた。坐骨神経検査は、白鼠を腹臥位で固定し、表面活動電極を腓腹筋中央部の表皮に付着して筋肉内に位置させ、参考電極は、左側足部に付着した。刺激電極としては、二つの被負荷同軸針状電極を直ちに固定して使って、露出された坐骨神経を直接刺激した。神経伝導検査は、両側坐骨神経で実施して、神経伝導速度を測定した。
この際、糖尿病性末梢神経病症でH−Zクリームの神経修復効果の有意性を検証するために、実験1(糖尿病誘発後、4週間H−Zクリーム処置;糖尿病性末梢神経病症の予防治療効果を説明するためである)、実験2(糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、1週間のみH−Zクリーム処置;糖尿病性末梢神経病症の治療効果を説明するためである)、及び実験3(糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、2週間のみH−Zクリーム処置;糖尿病性末梢神経病症の治療効果を説明するためである)に分けて検証した。
糖尿病誘発後、4週間H−Zクリーム処置時(実験1)の神経伝導度は、下記の表11の通りであり、分散分析を通じて確認した結果、神経伝導度で3群いずれも有意的な意味があった。
【0083】
【表11】
【0084】
そして、糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、1週間H−Zクリームを処置した場合(実験2)と、糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、2週間H−Zクリーム処置した場合(実験3)との神経伝導度は、下記の表12の通りである。
【0085】
【表12】
【0086】
5.損傷した有髄神経の比率測定(画像分析)
光学顕微鏡に装着されたデジタルカメラで代表的な横切断部を選択して400倍に映像を撮影した後、これをイメージ分析システムを用いて総有髄神経纎維の数と変性された有髄神経纎維の数とを分析した。
すなわち、神経を正確に横切断して光学顕微鏡撮影のためのエポンブロックを製作して、これを細微切片化(厚さ1μm)した。このような切片をトルイジンブルーで染色してOlympus BX 51を用いて400倍顕微鏡写真を撮影して観察される全体有髄神経(myelinatednerve fiber)の数と損傷した有髄神経の数とを数えた。これに基づいて単位面積当たり損傷した有髄神経の比率を計算し、その平均を比較評価し、その結果は、下記の表13の通りである。
【0087】
【表13】
−糖尿誘発群:糖尿誘発後、4週間無処置群
−予防処置群:糖尿誘発後、4週間H−Zクリーム処置群
−1週:糖尿誘発後から4週間は無処置、その後1週間H−Zクリーム処置群
−2週:糖尿誘発後から4週間は無処置、その後2週間H−Zクリーム処置群
【0088】
<実験例4>脳卒中モデル(MCA−O model)で必須燐脂質性物質で構成されたリポビン(登録商標)の神経修復有効性検証
実施例で製造したH−Zクリームのうち、必須燐脂質性物質の脳卒中の治療効果を検証するために、MCA−Oモデル白鼠にリポビン(登録商標)を静脈注射した後、脳内の脳梗塞程度を観察して中樞神経の修復有効性を検証しようとした。
すなわち、7週齢(体重230〜250g)の雄Sprague−Dawley白鼠を購入して中大脳動脈閉塞法(Middle cerebral artery occlusion;MCAO)手術痲酔後にナイロン糸を白鼠のMCA(middle cerebral artery)に入れて血管を1時間閉鎖した後、再貫流した。
リポビン(登録商標)を白鼠のしっぽ静脈にMCAO手術1時間前に始めて1日1回14日間反復投与した。実験群は、模擬手術群(sham operation;1次実験:3匹、2次実験:3匹)、陰性対照群(vehicle control;1次実験:3匹、2次実験:2匹)、リポビン(登録商標)0.6ml(1次実験:3匹、2次実験:3匹)、及びリポビン(登録商標)1.2ml投与群(1次実験:3匹、2次実験:3匹)などを含んで4個実験群に分類した。
【0089】
1.一般行動の検査
毎日投与前/後で一般行動を肉眼で検査して対照群と比較を行い、その結果、対照群に比べて陰性対照群及び薬物投与群のしっぽの投与部位で壊死が一部あったが、全体実験に大きく影響を及ぼさなかった。体重減少が大きい動物の場合では、激しいセデーション(sedation)が表われたが、他の動物では、一般行動で大きな変化は観察されなかった。
【0090】
2.体重
体重変化を毎日1回、午後4時に測定し、図9に表われたように、陰性対照群の場合、5日、11日で対照群と統計的に有意味な差が表われ、低容量薬物投与群(0.6ml)の場合、8日、9日、10日、11日に対照群と有意味な差が表われた。高容量薬物投与群(1.2ml)の場合、1日、2日を除いたあらゆる投与期間で統計的に有意味な体重減少が観察された(One−Way ANOVA,Tukey’s Multiple Comparison Test)。
【0091】
3.脳梗塞面積の判読
リポビン(登録商標)投与14日後に脳を摘出してTTC(2,3,5−Triphenylterazolium chloride)染色した後、各実験群の脳梗塞面積を比較した。すなわち、光を遮断した状態で37℃に保持した2%TTC溶液に摘出した脳をブレインマトリックス(Brain Matrix)を用いて前頭極(frontal pole)から2mm間隔で垂直に切り取って切片を浸けておいた。約1〜2分が経過した時、組職で損傷した部分(脳梗塞部位)のみ白色で残り、正常組職は赤色で染色になった。これを4%パラホルムアルデヒド溶液で移して入れて固定させた後、翌日デジタルカメラを用いて組職を撮影した。撮影した写真は、image−pro plusプログラムを用いて脳梗塞面積を測定し、これをGraph−pad Prism4.0プログラムを用いて統計分析した。
脳梗塞面積は、各脳組織の全体面積に対する脳梗塞部位の面積を%で表示した。図10及び図11のように、治療効果において低容量(0.6ml)及び高容量(1.2ml)投与群で多少間の有意味な傾向性を表わした。(One−Way ANOVA,Tukey’s Multiple Comparison Test.)。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物関連の分野に適用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷した神経組職を迅速に修復させることによって、末梢神経損傷または中枢神経損傷のような神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のような神経疾患を効果的に治療することができる薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、多発性神経病症、脊髄損傷、脳血管障害などの多様な神経疾患は、例えば、環境、遺伝などの要因によって脳や末梢の神経細胞が退化、減少、細胞死するか、または傷害を被るか、除外されることで発病する。したがって、このような神経疾患の治療には、神経細胞の傷害によって消失された神経伝達物質を補充するか、神経細胞を再生することが重要である。神経細胞を再生する方法としては、未分化した神経幹細胞やさまざまな細胞に分化することができる胚芽幹細胞などがある。
損傷した神経の神経再生についての多様な研究が行われた。一般的に、末梢神経の外傷性損傷に対する臨床の外科治療は、まず損傷局所部位付近の損傷した組職を除去し、末梢神経の再生を可能にする環境を提供する複雑で連続した段階からなる(Kline,J Neurosurg,1989、70:166−174)。外科的過程の役割は、一般的に損傷した領域の近位部と遠位部とを直接連結するか、融合するものを含む(Kline and Judice,J Neurosurg,1983,58:631−649)。神経の自発的な再生を待つ間に、筋肉−神経連合の退化の抑制を助ける筋肉の収縮を生成するために、電気的興奮を保持するような、より愼重な外来患者の治療だけではなく(Kimet al.,Korean Academy of Rehabilitation Medicine(Korean),1999,23:893−8983;al−Amoodet al.,J Physiol(Lond),1991,441:243−256)、末梢神経移植のようなさらなる外科的方法(Millesi,Clin Orthop,1988,237:36−42)が使われる。そして、このような過程のほとんどは、依然として筋肉弱化と収縮とを阻み、神経の発芽を促進するために、長期的で制御された運動療法を含む幅広い物理治療法を含む(Pyun et al.,KoreanAcademy of Rehabilitation Medicine(Korean),1999,23:1063−1075)。
【0003】
最近、成体の脳海馬などにおいて、新たな神経細胞が生産される神経新生が報告され、これに基づいて患者の脳内に内在する神経幹細胞を薬剤などで刺激して再生を誘導しながら、神経疾患を治療する方法が検討されている。しかし、いずれもタンパク質またはタンパク性因子を脳内に注入する必要があり、一般的な医療に応用することが困難であるために、タンパク質の代わりにする低分子化合物として、サルビアノール酸Bやリチウムまたはその薬理学的に許容される塩などが提案されている。
【0004】
一方、末梢神経の損傷は、生存及び軸索突起の再生を増進する背根神経節(dorsal root ganglion、DRG)に位置した感覚ニューロンの細胞体内の変化を誘発する。例えば、圧挫損傷の以後、好転した病態下でほとんどの神経纎維が成功的に再生される。しかし、多くの臨床的関連状況において、外傷性または疾病−誘発神経損傷は、機能の単に制限された回復及び度々相当な遅延のような不良な結果をもたらす。そのような場合に、神経病症性または慢性疼痛状態が進行しうる。
【0005】
代表的な神経病症性疼痛としては、帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛が挙げられ、このような神経病症性疼痛は、多くの場合において、疼痛の程度が一生の間に感じることができる最も大きな疼痛であるという分娩時の疼痛と比肩されており、深刻な疼痛を誘発する他の疾患、例えば、末期癌性疼痛、通風性発作、三叉神経痛などとは異なって、周期性ではない持続的な疼痛が誘発されるという点でさらに大きな深刻性がある。
【0006】
帯状疱疹において、現在使用中である抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビルの場合、処方ガイドラインに出ているように、帯状疱疹の最初発疹後、72時間内に適用した時にのみ、ある程度の治療効果を期待することができるが、多くの患者の場合、72時間が経過した後、病院に訪問するので、その有用性が半減される。
【0007】
しかも、帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛において、神経痛を減らすための対症療法剤、例えば、アセトアミノフェン、ピロキシカムのような非ステロイド性消炎鎮痛剤、モルフィン、オキシコドン、フェンタニル、コデインのような麻薬性鎮痛剤、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸のような抗てんかん剤、ノルトリプチリン、デシプラミン、アミトリプチリンのような抗うつ剤、プレドニゾロンのような副腎皮質ホルモン剤またはリドカインのような局所痲酔剤が使われているが、効果的ではない場合が多く、疼痛が激しいか、持続期間が長くなる場合において、神経遮断術を積極的に施行する趨勢である。
【0008】
現在、帯状疱疹の治療に使われる抗ウイルス剤と消炎鎮痛剤との主な処方は、帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の病因的要因である神経組職損傷の修復機能に実際の役割を果たせておらず、効果的な疼痛調節が不可能である。
【0009】
また、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛との場合のように、神経組職の損傷が同伴される疾患である急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脳卒中、脳腫瘍、退行性神経疾患、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛または視床痛のような神経病症または神経病症性疼痛や、脳卒中、脳腫瘍、痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、癲癇、中風または虚血性脳疾患のような脳疾患を直接的に予防または治療することができる治療剤の開発も切実な実情である。
【0010】
したがって、神経組職損傷を迅速に修復して神経損傷または神経疾患を効果的に治療することができる薬物の開発が切実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、化学式1または化学式2の化合物が損傷した神経を修復して末梢神経損傷または中枢神経損傷のような神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のような神経疾患を効果的に予防または治療することができるという点に着眼して、神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物を開発しようとするところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を果たすために、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有する神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する:
【化1】
前記化学式1で、Xは、OH、SHまたはO−であり、R1、R2、R3は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R4、−(CH2)nOH、−(CH2)nNR5R6、−(CH2)nN+R7R8R9、−CH2CH(COOH)NH2、−CH2CH(COO−)NH2、−CH2CH(COOH)NH3+、イノシトール、五炭糖、六炭糖、グリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはHであり、nは、1ないし10の整数であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、またはHであり、
【化2】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4、R5は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R6、ホスホコリン、燐酸、五炭糖、六炭糖またはそれら糖の誘導体、アミノ糖類、アルコキシ燐酸またはHであり、R6は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
【0013】
前記神経損傷及び神経疾患は、末梢神経損傷、中枢神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のうちから選択されたいずれかの疾患であり得る。
【0014】
また、本発明の薬学組成物は、さらに植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物を含みうる。
【0015】
また、本発明の薬学組成物は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物0.1ないし99.9重量%及び植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物0.1ないし99.9重量%を含みうる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の薬学組成物の有効成分である化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物は、損傷した神経組職を迅速に修復させることによって、末梢神経損傷または中枢神経損傷のような神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のような神経疾患を効果的に予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】帯状疱疹ウイルスのバディング(budding)によって損傷した神経部位に本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体が充填されることで損傷神経部位が修復される模式図を示す図である。
【図2】皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数)を示す図である。
【図3】帯状疱疹による疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を示す図である。
【図4】帯状疱疹後神経痛による疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を示す図である。
【図5】それぞれ坐骨神経圧潰損傷モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:1週対照群、c:1週処置群、d:2週対照群、e:2週処置群、f:3週対照群、g:3週処置群)。
【図6】それぞれ坐骨神経圧潰損傷モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:1週対照群、c:1週処置群、d:2週対照群、e:2週処置群、f:3週対照群、g:3週処置群)。
【図7】それぞれ糖尿病性神経病症モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:糖尿誘発後、4週無処置群、c:糖尿誘発後、4週H−Zクリーム処置群、d:糖尿誘発後、5週無処置群、e:糖尿誘発後、4週無処置後、1週H−Zクリーム処置群、f:糖尿誘発後、6週無処置群、g:糖尿誘発後、4週無処置後、2週H−Zクリーム処置群)。
【図8】それぞれ糖尿病性神経病症モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による神経組職の光学顕微鏡及び電子顕微鏡の写真を示す(a:正常対照群、b:糖尿誘発後、4週無処置群、c:糖尿誘発後、4週H−Zクリーム処置群、d:糖尿誘発後、5週無処置群、e:糖尿誘発後、4週無処置後、1週H−Zクリーム処置群、f:糖尿誘発後、6週無処置群、g:糖尿誘発後、4週無処置後、2週H−Zクリーム処置群)。
【図9】脳卒中モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による体重変化を示す図である。
【図10】それぞれ脳卒中モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による脳組織に対するTTC染色写真及び脳梗塞面積を示す図である。
【図11】それぞれ脳卒中モデルで本発明の組成物に含有された燐脂質またはスフィンゴシン誘導体の処置による脳組織に対するTTC染色写真及び脳梗塞面積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有する神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する:
【化3】
前記化学式1で、Xは、OH、SHまたはO−であり、R1、R2、R3は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R4、−(CH2)nOH、−(CH2)nNR5R6、−(CH2)nN+R7R8R9、−CH2CH(COOH)NH2、−CH2CH(COO−)NH2、−CH2CH(COOH)NH3+、イノシトール、五炭糖、六炭糖、グリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはHであり、nは、1ないし10の整数であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、またはHであり、
【化4】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4、R5は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R6、ホスホコリン、燐酸、五炭糖、六炭糖またはそれら糖の誘導体、アミノ糖類、アルコキシ燐酸またはHであり、R6は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
【0019】
前記化合物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、スフィンゴリン脂質、スフィンゴミエリン、プラスマロゲン、スフィンゴプラスマロゲン、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、セレブロシド、セラミド、これらのリソ(lyso−)型物質、及びこれらの可能な塩からなる群から選択されたことが望ましい。
【0020】
前記神経損傷及び神経疾患は、末梢神経損傷、中枢神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のうちから選択された何れかの疾患であり得る。
【0021】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛及び視床痛からなる群から選択されうる。
【0022】
また、前記神経病症または神経病症性疼痛は、望ましくは、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛及び幻肢痛からなる群から選択され、より望ましくは、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、外傷後神経病症及び帯状疱疹後神経痛からなる群から選択され、最も望ましくは、帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛から選択されうる。
【0023】
また、前記脳疾患は、脳卒中、脳腫瘍、痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、癲癇または虚血性脳疾患から選択されうる。
【0024】
また、前記末梢神経損傷または中枢神経損傷は、神経断裂症及び外傷性神経損傷からなる群から選択されうる。
【0025】
また、本発明の薬学組成物は、さらに植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物を含みうる。
【0026】
前記植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂としては、アロエゲルと、昆布抽出物、天草抽出物及びフコイダンからなる群から選択された海藻類抽出物と、これらと類似した機能を行う植物性または合成樹脂と、これらの混合物と、からなる群から選択されうる。
【0027】
本発明の薬学組成物は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物0.1ないし99.9重量%及び植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物0.1ないし99.9重量%を含みうる。
【0028】
本発明の薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使える適切な担体、補助剤またはビヒクルをさらに含みうる。本発明で使用可能な担体、補助剤またはビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、人間血清アルブミンのような血清タンパク質、ホスフェートのような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩のような塩または電解質、コロイダルシリカ、珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体(polyethylene−polyoxypropylene−block polymers)、ポリエチレングリコール及び羊毛脂(wool fat)などを含みうる。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、鼠、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に多様な経路で投与される。投与のあらゆる方式は、予想されうるが、例えば、経口的に、非経口的に、注射によって、無針装置(needle−free device)によって、吸入スプレーによって、局所的に、直腸に、鼻に、頬に(buccally)、膣に(vaginally)、または移植された貯蔵所(implanted reservoir)を通じて投与される。経口投与または注射による投与または無針装置による投与または経皮投与が望ましい。本明細書に使われた“非経口”という用語は、経皮(transdermal)投与及び皮下(subcutaneous)、皮膚内(intracutaneous)、静脈内(intravenous)、筋肉内(intramuscular)、関節内(intra−articular)、滑液膜内(intrasynovial)、胸骨内(intrasternal)、脊髄腔内(intrathecal)、病変内(intralesional)、及び頭蓋腔内(intracranial)注射または注入技術(infusion techniques)を含む。
【0030】
薬学組成物が、注射によってまたは無針装置によって投与される場合、無菌注射することができる製剤の形態または無針装置による伝達に適切な形態であり、これは、水溶性または油性懸濁液であり得る。このような懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤と懸濁剤とを用いて当業界に公知された技術によって製剤化されうる。無菌注射することができる製剤または無針装置による伝達に適切な形態は、また無毒性である非経口的に許容可能な希釈液または溶媒での溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオールでの溶液であり得る。
【0031】
使用可能なビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。そして、無菌の固定油が通常の溶媒または懸濁媒質として採用されうる。このような目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の刺激性の少ない固定油が採用されうる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油、特に、これらのポリオキシエチル化形態(their polyoxyethylated versions)のような天然薬学的に許容可能なオイルである注射剤の製造において有用である。
【0032】
本発明の薬学組成物は、これに制限されるものではないが、カプセル(capsules)、錠剤(tablets)、及び水溶性懸濁液及び溶液を含む任意の経口的に許容可能な剤型で経口投与される。経口投与のための錠剤の場合に、一般的に利用される担体は、ラクトース及びトウモロコシ澱粉を含む。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤が、また典型的に添加されうる。カプセル型の経口投与のために、有用な希釈液は、ラクトース及び乾燥トウモロコシ澱粉を含む。水溶性懸濁液が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁剤と組み合わせられる。所望の場合、甘味剤及び/または着香剤及び/または着色剤が添加されうる。
【0033】
本発明の薬学組成物は、局所的に投与されることがあり、このような局所投与は、所望の治療が局所適用によって容易に接近することができる部位及び器官に関連した場合に、特に有用である。皮膚への局所適用のためには、薬学組成物が担体内に懸濁または溶解された活性成分を含有する適切な軟膏で製剤化されなければならない。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、ミネラルオイル、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を含むが、これに制限されるものではない。
【0034】
また、本発明の薬学組成物は、担体内に懸濁または溶解された活性化合物を含む適切なローションまたはクリームで製造可能であり、適切な担体は、例えば、ミネラルオイル、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含む。本発明の薬学的組成物は、また直腸座薬フォーミュレーションによって、または浣腸フォーミュレーションで下部腸管(lower intestinal tract)に局所的に適用可能である。局所的−経皮性パッチが、また本発明に含まれる。
【0035】
本発明の薬学組成物は、鼻エアゾールまたは吸入によって投与される。このような組成物は、薬学的フォーミュレーションの分野で広く公知された技術によって製造され、ベンジルアルコールまたは他の適した保存剤、生体利用率を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または当業界に公知された他の溶解剤または分散剤を採用して、食塩水内の溶液で製造可能である。
【0036】
本発明で説明された必須的な、または任意的な成分に対して選択されたレベルまたは範囲は、直接使うための組成物または使用前に希釈するための濃縮物を剤型化するかの有無、それだけではなく、選択された特定成分、組成物の究極的な最終用途、及び当業者に公知された他の因子に依存することを当業者は分かる。
【0037】
本発明の薬学組成物において、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物の投与容量は、通常1回100ないし10,000mg/60kg(体重)程度、1日2〜3回投与することが望ましく、このような投与容量は、患者の年齢、性別、体重、疾患の重症度、健康状態などによって増減しうる。
【0038】
また、本発明の薬学組成物を局所塗布する場合、投与量及び頻度数は、治療しようとする患者の年齢、性別、体重、疾患の重症度、疾患部位面積、健康状態、活性成分の濃度などを含む多くの因子に依存して変わりうる。典型的に、薬学組成物は、ほとんどの用途の場合、組職1cm2当たり10ミリグラム(mg/cm2)以上、望ましくは、50mg/cm2以上、より望ましくは、100mg/cm2以上、及び最も望ましくは、200mg/cm2以上の投与量で伝達されうる。このような塗布は、1日以上間に毎日1回または数回(例えば、2〜6回)からなり、典型的に、組成物は、1〜14日間に1ないし2回/日塗布される。
【実施例】
【0039】
本発明の理解を助けるために望ましい実施例を下記に提示する。しかし、このような実施例は、本発明をより容易に理解するために提供され、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>H−Zクリーム製造
ステアリン酸15gを250mLビーカーに入れた後、80〜85℃の水浴上で完全に溶かした溶液に、別途に200mLビーカーに精製水75mLを取った後、水酸化カリウム0.7gとグリセリン10mLとを溶かした後、80〜85℃で加熱した溶液を加えて撹拌した後、常温まで冷やしてバニシングクリームを製造した。
アロエベラジェル229.0gに前記製造されたバニシングクリーム100.7gを入れて十分に撹拌した後、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体であるオロニア大豆レシチン(供給業体:デラコナチュラルソースカンパニーエルティディー)16.03g、α−トコフェロール1.60g及び安息香酸プロピル0.50gを少量ずつ付け加えながら撹拌して、微黄色のクリームを製造した。この際、製造された組成物は、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体として1.7重量%を含有した。
【0041】
<実施例2>H−Zクリーム製造
アロエベラジェル200.0gにトウイーン#80 4.00gを入れて十分に撹拌した後、オロニア大豆レシチン(供給業体:デラコナチュラルソースカンパニーエルティディー)20.00g、α−トコフェロール2.00g、及び安息香酸プロピル0.30gを少量ずつ付け加えながら撹拌して、微黄色のクリームを製造した。この際、製造された組成物は、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体として3.24重量%を含有した。
【0042】
<実施例3>H−Zクリーム製造
アロエベラジェル127.0gにトウイーン#80 14.00gを入れて十分に撹拌した後、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体であるGL−90E(供給業体:ゴーセンバイオテック)70.00g、α−トコフェロール7.00g、及び安息香酸プロピル0.30gを少量ずつ付け加えながら撹拌して、微黄色のクリームを製造した。この際、製造された組成物は、燐脂質またはスフィンゴシン誘導体として29.1重量%を含有した。
【0043】
<実験例1>帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の臨床実験分析
実施例1ないし実施例3によって製造された組成物(H−Zクリームと通称する)を下記のような方法で帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の臨床実験を実施した。
1.施行病院名:○○病院
2.施行医師:○○課長○○○
3.施行期間:2008.10.28〜2009.03.15
4.対象疾患別患者数
1)帯状疱疹:33人
2)帯状疱疹後神経痛:8人
5.年齢分布(表1)
【0044】
【表1】
【0045】
6.帯状疱疹患者分析
1)来院時点
(i)発疹後72時間以内:11人
(ii)発疹後72時間以後:22人(3日後:14人、4日後:5人、7日後:3人)
【0046】
2)治療方法
(i)ファムシクロビル500mg(一日三回、7日間)+H−Zクリーム塗布(来院日に限って1日1回)
(ii)H−Zクリーム塗布(来院日に限って1日1回)単独−キム・ジョンシュク(46)、イム・ジョンブ(67)
(iii)H−Zクリーム塗布方法:皮膚病変が表われた部位に3.0mm程度の厚さに塗った後、ポリエチレンラップ(wrap)で密封
【0047】
3)時間による皮膚病変進行段階(1〜6段階)
帯状疱疹進行段階は、次のように分類し、その結果は、表2の通りである。
(1)1段階:皮膚病変はないが、疼痛はある。
(2)2段階:発疹に引き続き小水疱(small bumps)生成段階
(3)3段階:小水疱が合わせられて水疱(blisters)に転換される段階
(4)4段階:水疱がリンパ液で満たされて裂ける段階
(5)5段階:瘡蓋が生成されて癒える段階
(6)6段階:皮膚病変はほとんど消えて帯状疱疹後神経痛に進行する段階
【0048】
【表2】
I来院当日を“0日”にして、1日、2日、...に表示
II帯状疱疹の皮膚病変の進行段階を1〜6段階に分類して表示する
III、IV 、V小水疱段階で瘡蓋ができる段階に移行されず、水疱が沈んで消滅される場合に該当
VI来院していない日の表示‘−’にする
VII発疹72時間内治療開始
【0049】
また、皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数)を、図2に表わした。
【0050】
4)時間による急性疼痛の強度変化I(0〜10点)
時間による急性疼痛の強度変化(0〜10点)を、下記の表3に表わした。
【0051】
【表3】
I 疼痛解消時点を疼痛指数“2点以下”である時にし、3点以後来院していない場合、最終来院日3日目(*表示日)疼痛指数を2点と仮定して、下記<疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)>を表示する。
II来院当日を“0日”にして、1日、2日、...に表示
III疼痛点数:疼痛を0〜10点の間で患者が自身の疼痛程度を表示するようにして記録する
IV来院していない日の表示‘−’にする
V発疹72時間内治療開始
【0052】
また、疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を、図3に表わした。
【0053】
5)帯状疱疹治療のメタ分析資料との比較
−比較資料出処:Can Fam Physicion[Vol.54,No.3,March 2008,pp.373−377]
<<Treatment of herpes zoster>>Wim Opstelten,MD PhD,Just Eekhof,MD PhD,Arie Knuistingh Neven,MD PhD and Theo Verheij,MDPhD
【0054】
帯状疱疹で皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数)比較は、表4の通りである。
【0055】
【表4】
【0056】
帯状疱疹において、疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)比較は、表5の通りである。
【0057】
【表5】
【0058】
6)帯状疱疹後神経痛への移行
一般的に、帯状疱疹患者の20%が帯状疱疹後神経痛に移行されるが、実施例で製造したH−Zクリームを共に使った総33人の患者では、帯状疱疹後神経痛への移行患者がいなかった。
【0059】
7.帯状疱疹後神経痛の患者分析
1)対象患者の来院時点(表6)
【0060】
【表6】
【0061】
2)治療方法
(i)H−Zクリーム(実施例2使用)塗布(来院日に限って1日1回)
(ii)H−Zクリーム塗布方法:疼痛がある部位に3.0mm程度の厚さに塗った後、ポリエチレンラップで密封
3)時間による疼痛の強度変化I(0〜10点)(表7)
【0062】
【表7】
I疼痛解消時点を疼痛指数“2点以下”である時とし、3点以後来院していない場合、最終来院日3日目(*表示日)疼痛指数を2点と仮定して、下記<疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)>を表示する。
II来院当日を“0日”にして、1日、2日、...に表示
III疼痛点数:疼痛を0〜10点の間で患者が自身の疼痛程度を表示するようにして記録する
IV 来院していない日の表示‘−’にする
【0063】
疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)を、図4に示した。
【0064】
4)帯状疱疹後神経痛治療のメタ分析資料との比較
−比較資料出処:Can Fam Physicion[Vol.54,No.3,March 2008,pp.373−377]
<<Treatment of herpes zoster>>Wim Opstelten,MD PhD,Just Eekhof,MD PhD,Arie Knuistingh Neven,MD PhD and Theo Verheij,MD PhD
【0065】
(i)帯状疱疹後神経痛において、疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)比較(表8)
【0066】
【表8】
【0067】
8.結果及び分析
1)帯状疱疹治療の結果及び分析
(i)全体33人の患者のうち2人の臨床実験でのみH−Zクリームを単独で使い、残りの臨床実験では、ファムシクロビル(1回1錠500mg、1日3回)とH−Zクリーム(来院時1回塗布)とを同時に適用した場合(31人)である。本臨床実験は、ファムシクロビルを適用した患者に対してH−Zクリームの効果をメタ分析資料と間接的に比較したものである。
(ii)帯状疱疹での皮膚病変の改善効果(皮膚病変の全体にかけて瘡蓋の生成にかかる時間のメジアン(中位数))を比較した結果、‘プラシーボ’、‘ファムシクロビル単独’と‘ファムシクロビル+H−Zクリーム’とを比較した結果、それぞれ‘7日’、‘5日’と‘2日’とに表われた(表2、表4及び図2)。しかし、メタ分析での対象患者が皮膚病変発現後、72時間以内治療を始めた場合のみを対象とした点を勘案するならば、皮膚病変の改善日数の短縮(3日)に大きな意味を置くことは無理があると考えられる(表4)。
(iii)帯状疱疹での急性疼痛の改善効果(疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数))を比較した結果、‘プラシーボ’、‘ファムシクロビル単独’と‘ファムシクロビル+H−Zクリーム’とを比較した結果、それぞれ‘30日’、‘20日’と‘3.2日’とに表われた(表3、表5及び図3)。この結果は、前述したとおりにメタ分析で統計対象を皮膚病変発現後、72時間以内治療を始めた場合のみで限定したことを勘案しても、その差が大きくて十分に有意性があると見られ、H−Zクリームが帯状疱疹の急性疼痛の改善に効果があることを裏付ける。
(iv)一般的に、50歳を基準にそれ以上の年齢で帯状疱疹発病率と皮膚病変及び疼痛、そして、帯状疱疹後神経痛への移行率が急増し、皮膚病変発現後、72時間以内に抗ウイルス剤の投薬の有無によって帯状疱疹後神経痛の治療期間が大きく左右される。したがって、疼痛解消効果を50歳以上群、皮膚病変発現後、72時間内治療開始群と全体群とに分けて分析した(図3)。
H−Zクリームの効果をメタ分析資料と比較時、疼痛解消程度及び疼痛解消期間を大きく減らしたが、H−Zクリームを適用した場合は、前述した対象群(50歳以上群、72時間以内抗ウイルス治療開始群と全体群)に関係なく急性疼痛軽減程度及び解消期間に差がなかった(図3及び表3)。これは、患者の年齢及び治療開始時点(皮膚病変発現後72時間)に関係なくH−Zクリームが疼痛解消と疼痛解消期間の軽減に使われうるということを意味する。
(v)H−Zクリームの効果に対して皮膚病変の改善効果を50歳以上群、皮膚病変発現後、72時間内治療開始群と全体群とに分けて分析したが、差がなかった。したがって、抗ウイルス剤の投薬の有無と患者の年齢及び治療開始時点(皮膚病変発現後72時間)は、皮膚病変の改善に大きく影響がないと考えられる。
(vi)一般的に、帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛への移行率が20%であるために、33人の帯状疱疹患者を対象とした場合に、算術的には6.6人が帯状疱疹後神経痛患者に移行せねばならないが、H−Zクリーム適用した本臨床では、一人の帯状疱疹患者も、帯状疱疹後神経痛に移行せず、あらゆる患者が治療開始9日内に完治した。これは、帯状疱疹ウイルスによって損傷した神経組職を修復するH−Zクリームの効果を立証すると見られる。現在、抗ウイルス剤を含んで帯状疱疹後神経痛への移行率を低める薬物と方法とが全くないという点でH−Zクリーム開発が重要であると言える。
(vii)報告されたところによれば、抗ウイルス剤は、帯状疱疹の治療において皮膚病変の改善、疼痛軽減の作用、治癒期間の短縮及び帯状疱疹後神経痛への移行率と関連しては、如何なる利点も提供することができない。単に、皮膚病変発現72時間以内に抗ウイルス剤を服用した50歳以上の帯状疱疹患者で帯状疱疹後神経痛の治療期間短縮という長所が発見されるだけである(Famciclovir for the Treatment of Acute Herpes Zoster:Effects on Acute Disease and Postherpetic Neuralgia,A Randomized,Double−Blind,Placebo−Controlled Trial.Stephen Tyring,MD,PhD;Rick A.Barbarash,PharmD;James E.Nahlik,MD;Anthony Cunningham,MBBS,MD;John Marley,MD;Madalene Heng,MD;Terry Jones,MD;Ted Rea,MD;Ron Boon,BSc(Hons),CBio,MIBiol;Robin Saltzman,MD;the Collaborative Famciclovir Herpes Zoster Study Group.Annals of Internal Medicine,1995,123(2),pp.89−104)。すなわち、帯状疱疹患者での実質的な治癒の核心は、抗ウイルス作用よりは急性疼痛の軽減と治癒期間の短縮、帯状疱疹後神経痛への移行遮断、そして、帯状疱疹後神経痛の疼痛軽減とその治癒期間の短縮とにある。このような側面で、損傷した神経組職の修復を通じて帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛の疼痛軽減と治癒期間の短縮及び帯状疱疹後神経痛への移行遮断を行う核心的な治癒作用を行うH−Zクリームが有用であると言える。
【0068】
2)帯状疱疹後神経痛の治療結果及び分析
(i)全体8人患者の臨床実験では、いずれもH−Zクリームを単独で使った。
(ii)メタ分析での対象患者が、帯状疱疹発現72時間以内ファムシクロビルを投与した場合において、帯状疱疹後神経痛に移行された場合に限って臨床実験した結果である一方、本臨床実験では、あらゆる場合、帯状疱疹治療が本病院で初めからなされず、その治療内訳が分からなかった。
(iii)帯状疱疹後神経痛での神経痛の改善効果(疼痛解消にかかる時間のメジアン(中位数)、図4)を比較した結果、‘プラシーボ(帯状疱疹治療段階でファムシクロビルを投与しない)’、‘ファムシクロビル(帯状疱疹治療段階での投薬)単独’と‘H−Zクリーム’とを比較した結果、それぞれ‘119日’、‘63日’と‘5日’とに表われた(表8)。この結果も、メタ分析での結果と比較条件における差を勘案するとしても、その差が大きくて有意性があると見られ、特に、帯状疱疹後神経痛の治癒期間を減らすために、帯状疱疹段階で現在使われている抗ウイルス剤の投薬(皮膚病変発現72時間以内)の場合と比較をしても、H−Zクリームが帯状疱疹後神経痛の治癒期間を軽減するに当たって、さらに効果があることを示す。
【0069】
3)結果
帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床結果で最も注目しなければならない事項は、帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛への移行がなかったという点である。これは、帯状疱疹段階で生じた神経組職の損傷がH−Zクリームの適用で神経組職が修復されたということを意味するものであって、神経損傷を伴った他の疾患、例えば、急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脳卒中、脳腫瘍、退行性神経疾患、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛及び視床痛の神経病症または神経病症性疼痛でも、本薬学組成物が効果的に適用可能であるということを意味する。
一方、前記H−Zクリームが、帯状疱疹及び帯状疱疹後神経痛で表わした疼痛軽減効果と、帯状疱疹で帯状疱疹後神経痛段階への遮断効果とを表わすことが、帯状疱疹段階で損傷した神経のH−Zクリームによる効果的な修復に起因するものと判断して、H−ZクリームまたはH−Zクリームの主成分が、損傷した神経を修復させる効果を有するか否かを次のように検討した。
【0070】
<実験例2>坐骨神経圧潰損傷モデルでH−Zクリームの神経修復有効性検証
実施例2で製造されたH−Zクリームの末梢神経修復有効性を検証するために、坐骨神経圧潰損傷モデルにH−Zクリームを塗布して治療した後、形態学的評価及び神経伝導度を測定して、末梢神経修復有効性を検証した。
すなわち、7週齢のSprague−Dawley雄白鼠35匹を分譲されて実験室の環境適応のために1週間予備飼育した後、8週齢に実験を始め、予備飼育及び実験全体期間の飼育環境は温度23±2℃、相対湿度60±10%を保持して12時間の明暗周期が保持される室内で飼育し、実験動物用の飼料と飲み水とを自在に供給した。実験動物は3群に分類して、各群ごとに10匹ずつ配置をし、両側坐骨神経に圧潰損傷を誘発して無処置を実施した陰性対照群、H−Zクリーム治療を実施した実験群に区分した。
【0071】
1.坐骨神経の圧潰損傷
ケタミン塩酸塩(15mg/100g、ケタラ(登録商標)、柳韓洋行)を腹腔内注射して全身痲酔を誘発した後、両側大腿部の毛を除去した後、10%ベタジン溶液で手術部位を消毒した後、無菌操作下で通常の方法で手術を施行した。坐骨神経を露出させて脛骨神経と総鼻骨神経との分枝点で1cm上側でチップの直径が1mmである鉗子(forceps)を用いて30秒間圧潰損傷を誘発した後、筋肉と皮膚とを縫合した。
【0072】
2.H−Zクリーム治療
実験群は、圧潰損傷を誘発した部位の皮膚にH−Zクリームを一日1回ずつ1、2及び3週間塗布治療を実施した。
【0073】
3.光学顕微鏡及び透過電子顕微鏡の検査
坐骨神経に圧潰損傷誘発の前と後、そして、H−Z軟膏治療後、1、2及び3週に全身痲酔を誘発した後、損傷した坐骨神経を切り取り、正常対照群は、圧潰損傷を誘発していない状態で同じ方法で両側坐骨神経を切り取って一般的な組職処理過程を経た後、光学顕微鏡で観察して神経繊維が走行方向に直角に切断された部位を選択した。
また、最も代表的な神経横断面のみを選んで電子顕微鏡を用いて観察した。
その結果、神経組職の光学顕微鏡の写真は、図5の通りであり、神経組職の電子顕微鏡の写真は、図6の通りである。
【0074】
4.電気生理学的検査
圧潰損傷誘発の前と後、そして、H−Z軟膏治療後、1、2及び3週に筋電図器(Multiliner、Tonnies社、Germany)を使って検査室の温度を摂氏23〜27℃に保持しながら神経伝導検査を施行した。筋電図器の設定は、刺激の頻度は秒当たり1回、刺激時間0.1ms、周波数幅10Hz〜10KHz、記録消印速度5ms/div、記録感応度10mV/divに設定した後、刺激の強度は、複合筋活動電位の振幅が最大になるまで、数回刺激しながら増加させた。坐骨神経検査は、白鼠を腹臥位で固定し、表面活動電極を腓腹筋中央部の表皮に付着して筋肉内に位置させ、参考電極は、左側足部に付着した。刺激電極としては、二つの被負荷同軸針状電極を直ちに固定して使って、露出された坐骨神経を直接刺激した。神経伝導検査は、両側坐骨神経で実施して神経伝導速度(m/s)を測定し、その結果は、下記の表9の通りである。
【0075】
【表9】
【0076】
5.損傷した有髄神経の比率測定(画像分析)
光学顕微鏡に装着されたデジタルカメラで代表的な横切断部を選択して400倍に映像を撮影した後、これをイメージ分析システム(image analysis system)を用いて総有髄神経纎維の数と変性された有髄神経纎維の数とを分析した。
すなわち、神経を正確に横切断(cross section)して光学顕微鏡撮影のためのエポンブロック(Epon block)を製作して、これを細微切片化(厚さ1μm)した。このような切片をトルイジンブルーで染色してOlympus BX 51を用いて400倍顕微鏡写真を撮影して観察される全体有髄神経(myelinatednerve fiber)の数と損傷した有髄神経の数とを数えた。これに基づいて単位面積当たり損傷した有髄神経の比率を計算し、その平均を比較評価し、その結果は、下記の表10の通りである。
【0077】
【表10】
【0078】
<実験例3>糖尿病性神経病症モデルでH−Zクリームの神経修復有効性検証
実施例2で製造したH−Zクリームの末梢神経修復有効性を検証するための二番目の実験で糖尿病性神経病症の白鼠モデルにH−Zクリームを塗布して治療した後、組職神経の形態学的評価及び神経伝導度を測定して、末梢神経修復有効性を検証する実験を行った。
7週齢のSprague−Dawley雄白鼠35匹を分譲されて実験室の環境適応のために、1週間予備飼育した後、8週齢に実験を始め、予備飼育及び実験前期間の飼育環境は温度23±2℃、相対湿度60±10%を保持して12時間の明暗周期が保持される室内で飼育し、実験動物用の飼料と飲み水とを自在に供給した。実験動物は、正常対照群(n=5)、糖尿誘発対照群1(n=5)、糖尿誘発後4週が経過した後、治療をしていない対照群2(n=5)、糖尿誘発直後からH−Zクリーム処置を実施した実験群1(n=5)及び糖尿誘発後4週が経過した後からH−Zクリーム処置を実施した実験群2(n=10)に区分した。
【0079】
1.糖尿及び糖尿病性末梢神経病症の誘発
クエン酸緩衝液(pH4.5)に溶かしたSTZ(S−0130、ストレプトゾトシン、Sigma−Aldrich、USA)を100mg/kg濃度で腹腔内1回注射して48時間後、空腹状態で採血して血糖を測定して、血糖が240dl/ml以上である白鼠を実験に使った。糖尿病性末梢神経病症は、一般的に糖尿誘発4週後に始まると知られている。
【0080】
2.H−Zクリーム治療
実験群は、H−Zクリームを左右両足の坐骨神経が分布する皮膚部位に一日1回ずつ塗布治療を実施した。
【0081】
3.光学顕微鏡及び透過電子顕微鏡の検査
糖尿病性神経病症の誘発後及び軟膏治療後、適正時点で全身痲酔を誘発した後、損傷した坐骨神経を切り取り、正常対照群は、糖尿病性神経病症を誘発していない状態で同じ方法で坐骨神経を切り取って一般的な組職処理過程を経た後、光学顕微鏡で観察して神経繊維が走行方向に直角に切断された部位を選択した。
また、最も代表的な神経横断面のみを選んで電子顕微鏡を用いて観察した。
その結果、神経組職の光学顕微鏡の写真は、図7の通りであり、神経組職の電子顕微鏡の写真は、図8の通りである。
【0082】
4.電気生理学的検査
糖尿病性神経病症の誘発前と誘発後、そして、H−Z軟膏治療後、適正時点で筋電図器(Multiliner、Tonnies社、Germany)を使って検査室の温度を摂氏23〜27℃に保持しながら神経伝導検査を施行した。筋電図器の設定は、刺激の頻度は秒当たり1回、刺激時間0.1ms、周波数幅10Hz〜10KHz、記録消印速度5ms/div、記録感応度10mV/divに設定した後、刺激の強度は、複合筋活動電位の振幅が最大になるまで、数回刺激しながら増加させた。坐骨神経検査は、白鼠を腹臥位で固定し、表面活動電極を腓腹筋中央部の表皮に付着して筋肉内に位置させ、参考電極は、左側足部に付着した。刺激電極としては、二つの被負荷同軸針状電極を直ちに固定して使って、露出された坐骨神経を直接刺激した。神経伝導検査は、両側坐骨神経で実施して、神経伝導速度を測定した。
この際、糖尿病性末梢神経病症でH−Zクリームの神経修復効果の有意性を検証するために、実験1(糖尿病誘発後、4週間H−Zクリーム処置;糖尿病性末梢神経病症の予防治療効果を説明するためである)、実験2(糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、1週間のみH−Zクリーム処置;糖尿病性末梢神経病症の治療効果を説明するためである)、及び実験3(糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、2週間のみH−Zクリーム処置;糖尿病性末梢神経病症の治療効果を説明するためである)に分けて検証した。
糖尿病誘発後、4週間H−Zクリーム処置時(実験1)の神経伝導度は、下記の表11の通りであり、分散分析を通じて確認した結果、神経伝導度で3群いずれも有意的な意味があった。
【0083】
【表11】
【0084】
そして、糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、1週間H−Zクリームを処置した場合(実験2)と、糖尿病誘発後、4週間は何ら処置もせず、その後、2週間H−Zクリーム処置した場合(実験3)との神経伝導度は、下記の表12の通りである。
【0085】
【表12】
【0086】
5.損傷した有髄神経の比率測定(画像分析)
光学顕微鏡に装着されたデジタルカメラで代表的な横切断部を選択して400倍に映像を撮影した後、これをイメージ分析システムを用いて総有髄神経纎維の数と変性された有髄神経纎維の数とを分析した。
すなわち、神経を正確に横切断して光学顕微鏡撮影のためのエポンブロックを製作して、これを細微切片化(厚さ1μm)した。このような切片をトルイジンブルーで染色してOlympus BX 51を用いて400倍顕微鏡写真を撮影して観察される全体有髄神経(myelinatednerve fiber)の数と損傷した有髄神経の数とを数えた。これに基づいて単位面積当たり損傷した有髄神経の比率を計算し、その平均を比較評価し、その結果は、下記の表13の通りである。
【0087】
【表13】
−糖尿誘発群:糖尿誘発後、4週間無処置群
−予防処置群:糖尿誘発後、4週間H−Zクリーム処置群
−1週:糖尿誘発後から4週間は無処置、その後1週間H−Zクリーム処置群
−2週:糖尿誘発後から4週間は無処置、その後2週間H−Zクリーム処置群
【0088】
<実験例4>脳卒中モデル(MCA−O model)で必須燐脂質性物質で構成されたリポビン(登録商標)の神経修復有効性検証
実施例で製造したH−Zクリームのうち、必須燐脂質性物質の脳卒中の治療効果を検証するために、MCA−Oモデル白鼠にリポビン(登録商標)を静脈注射した後、脳内の脳梗塞程度を観察して中樞神経の修復有効性を検証しようとした。
すなわち、7週齢(体重230〜250g)の雄Sprague−Dawley白鼠を購入して中大脳動脈閉塞法(Middle cerebral artery occlusion;MCAO)手術痲酔後にナイロン糸を白鼠のMCA(middle cerebral artery)に入れて血管を1時間閉鎖した後、再貫流した。
リポビン(登録商標)を白鼠のしっぽ静脈にMCAO手術1時間前に始めて1日1回14日間反復投与した。実験群は、模擬手術群(sham operation;1次実験:3匹、2次実験:3匹)、陰性対照群(vehicle control;1次実験:3匹、2次実験:2匹)、リポビン(登録商標)0.6ml(1次実験:3匹、2次実験:3匹)、及びリポビン(登録商標)1.2ml投与群(1次実験:3匹、2次実験:3匹)などを含んで4個実験群に分類した。
【0089】
1.一般行動の検査
毎日投与前/後で一般行動を肉眼で検査して対照群と比較を行い、その結果、対照群に比べて陰性対照群及び薬物投与群のしっぽの投与部位で壊死が一部あったが、全体実験に大きく影響を及ぼさなかった。体重減少が大きい動物の場合では、激しいセデーション(sedation)が表われたが、他の動物では、一般行動で大きな変化は観察されなかった。
【0090】
2.体重
体重変化を毎日1回、午後4時に測定し、図9に表われたように、陰性対照群の場合、5日、11日で対照群と統計的に有意味な差が表われ、低容量薬物投与群(0.6ml)の場合、8日、9日、10日、11日に対照群と有意味な差が表われた。高容量薬物投与群(1.2ml)の場合、1日、2日を除いたあらゆる投与期間で統計的に有意味な体重減少が観察された(One−Way ANOVA,Tukey’s Multiple Comparison Test)。
【0091】
3.脳梗塞面積の判読
リポビン(登録商標)投与14日後に脳を摘出してTTC(2,3,5−Triphenylterazolium chloride)染色した後、各実験群の脳梗塞面積を比較した。すなわち、光を遮断した状態で37℃に保持した2%TTC溶液に摘出した脳をブレインマトリックス(Brain Matrix)を用いて前頭極(frontal pole)から2mm間隔で垂直に切り取って切片を浸けておいた。約1〜2分が経過した時、組職で損傷した部分(脳梗塞部位)のみ白色で残り、正常組職は赤色で染色になった。これを4%パラホルムアルデヒド溶液で移して入れて固定させた後、翌日デジタルカメラを用いて組職を撮影した。撮影した写真は、image−pro plusプログラムを用いて脳梗塞面積を測定し、これをGraph−pad Prism4.0プログラムを用いて統計分析した。
脳梗塞面積は、各脳組織の全体面積に対する脳梗塞部位の面積を%で表示した。図10及び図11のように、治療効果において低容量(0.6ml)及び高容量(1.2ml)投与群で多少間の有意味な傾向性を表わした。(One−Way ANOVA,Tukey’s Multiple Comparison Test.)。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物関連の分野に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物:
【化1】
前記化学式1で、Xは、OH、SHまたはO−であり、R1、R2、R3は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R4、−(CH2)nOH、−(CH2)nNR5R6、−(CH2)nN+R7R8R9、−CH2CH(COOH)NH2、−CH2CH(COO−)NH2、−CH2CH(COOH)NH3+、イノシトール、五炭糖、六炭糖、グリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはHであり、nは、1ないし10の整数であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、またはHであり、
【化2】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4、R5は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R6、ホスホコリン、燐酸、五炭糖、六炭糖またはそれら糖の誘導体、アミノ糖類、アルコキシ燐酸またはHであり、R6は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
【請求項2】
前記化合物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、スフィンゴリン脂質、スフィンゴミエリン、プラスマロゲン、スフィンゴプラスマロゲン、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、セレブロシド、セラミド、これらのリソ(lyso−)型物質、及びこれらの可能な塩からなる群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記神経損傷及び神経疾患は、末梢神経損傷、中枢神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のうちから選択された何れかの疾患であることを特徴とする請求項1または2に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛及び幻肢痛からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛及び幻肢痛からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記脳疾患は、脳卒中、脳腫瘍、痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、癲癇または虚血性脳疾患から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記末梢神経損傷または中枢神経損傷は、神経断裂症及び外傷性神経損傷からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
さらに植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂は、アロエゲルと、昆布抽出物、天草抽出物及びフコイダンからなる群から選択された海藻類抽出物と、これらと類似した機能を行う植物性または合成樹脂と、これらの混合物と、からなる群から選択されたことを特徴とする請求項9に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項11】
前記薬学組成物は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物0.1ないし99.9重量%及び植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物0.1ないし99.9重量%を含むことを特徴とする請求項9に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項1】
化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物:
【化1】
前記化学式1で、Xは、OH、SHまたはO−であり、R1、R2、R3は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R4、−(CH2)nOH、−(CH2)nNR5R6、−(CH2)nN+R7R8R9、−CH2CH(COOH)NH2、−CH2CH(COO−)NH2、−CH2CH(COOH)NH3+、イノシトール、五炭糖、六炭糖、グリセロール、ホスファチジルグリセロールまたはHであり、nは、1ないし10の整数であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、またはHであり、
【化2】
前記化学式2で、R1、R2、R3、R4、R5は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、−C(=O)R6、ホスホコリン、燐酸、五炭糖、六炭糖またはそれら糖の誘導体、アミノ糖類、アルコキシ燐酸またはHであり、R6は、直線形または環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
【請求項2】
前記化合物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、スフィンゴリン脂質、スフィンゴミエリン、プラスマロゲン、スフィンゴプラスマロゲン、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、セレブロシド、セラミド、これらのリソ(lyso−)型物質、及びこれらの可能な塩からなる群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記神経損傷及び神経疾患は、末梢神経損傷、中枢神経損傷、神経病症、神経病症性疼痛または脳疾患のうちから選択された何れかの疾患であることを特徴とする請求項1または2に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、急性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、慢性炎症性脱髄性多発性末梢神経病症、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、遺伝性末梢神経病症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、大脳皮質や脊髄視床路に沿って発生する癌性病変、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後の中枢性疼痛及び幻肢痛からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、糖尿病性末梢神経病症、帯状疱疹、血管炎神経病症、疼痛性糖尿病性末梢神経病症、三叉神経痛、外傷後神経病症、帯状疱疹後神経痛及び幻肢痛からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記神経病症または神経病症性疼痛は、帯状疱疹または帯状疱疹後神経痛から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記脳疾患は、脳卒中、脳腫瘍、痴呆、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、癲癇または虚血性脳疾患から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記末梢神経損傷または中枢神経損傷は、神経断裂症及び外傷性神経損傷からなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
さらに植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂は、アロエゲルと、昆布抽出物、天草抽出物及びフコイダンからなる群から選択された海藻類抽出物と、これらと類似した機能を行う植物性または合成樹脂と、これらの混合物と、からなる群から選択されたことを特徴とする請求項9に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項11】
前記薬学組成物は、化学式1の化合物、化学式2の化合物、及びこれらの可能な塩からなる群から選択された何れか一つの化合物または二つ以上の化合物0.1ないし99.9重量%及び植物性ゲル、植物性樹脂または合成樹脂のうちから選択された何れか一つまたは二つ以上の混合物0.1ないし99.9重量%を含むことを特徴とする請求項9に記載の神経損傷及び神経疾患の予防または治療用薬学組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図5(e)】
【図5(f)】
【図5(g)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図6(e)】
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【図6(g)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図7(f)】
【図7(g)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図8(d)】
【図8(e)】
【図8(f)】
【図8(g)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
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【図5(e)】
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【図5(g)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図6(e)】
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【図6(g)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
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【図7(g)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図8(d)】
【図8(e)】
【図8(f)】
【図8(g)】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−526104(P2012−526104A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509731(P2012−509731)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002879
【国際公開番号】WO2010/128807
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511265981)ムーン アンド ジェイ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MOON & J INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002879
【国際公開番号】WO2010/128807
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511265981)ムーン アンド ジェイ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MOON & J INC.
【Fターム(参考)】
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