神経筋刺激
麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施すための装置であって、a)麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位の随意筋に適用されるように適合され、少なくとも1つのセンサが少なくとも1つのEMG信号を生成する、少なくとも1つの筋電図検査法(EMG)センサと、b)麻痺した体の部位の少なくとも1つの随意筋を刺激するために適合された神経筋電気刺激(NMES)装置と、c)健康な体の部位からのEMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成して、NMESを制御するコントローラと、を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、その両出願の開示が参照により本明細書に組み込まれる、2004年2月5日出願の米国仮出願No.60/542,022、および2004年4月29日出願の米国仮出願No.60/566,078の119(e)に基づく利益を主張する。また、この出願は、本願と同日に同一出願人により出願された、「Gait Rehabilitation Methods and Apparatuses(歩行リハビリテーションの方法および装置)」、「Rehabilitation with Music(音楽を用いたリハビリテーション)」、「Fine Motor Control Rehabilitation(微細運動制御リハビリテーション)」、「Methods and Apparatuses for Rehabilitation Exercise and Training(リハビリテーション運動およびトレーニングのための方法および装置)」、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」と題され、代理人整理番号がそれぞれ414/04391、414/04396、414/04401、414/04388、414/04213、414/04404、および414/04405である、PCT出願に関連する。これら全ての出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の分野は、運動制御の不具合を有する患者のリハビリテーションのための装置である。
【背景技術】
【0003】
随意筋の動作は、脳の体性運動皮質内で発生する電気的刺激に起因する。体性運動皮質内の神経細胞は、脊髄中の運動神経細胞へ電気信号を送り、筋繊維の収縮を促す電気信号を次々と送り、動作を実現させる。所定の運動神経細胞によって刺激される筋繊維の全ては、「運動単位(motor unit)」と呼ばれている。各筋繊維は、その細胞膜上で電位を示し、それは筋肉が収縮する時に変化する。
【0004】
筋電図検査法(EMG)では、皮膚表面上の電位差を筋肉の中央部と端部との間において測定し、収縮している筋繊維の数を測定する。EMGは、患者の種々の病状を診断するために恒常的に使用されており、また、筋機能の研究のために健常者にも使用されている。
【0005】
体性運動皮質に損傷のある脳卒中患者においては、一つ以上の筋肉或いは筋肉の部分へ向かう電気信号が発生せず或いはそれらの筋肉には届かず、それらの筋肉は通常の収縮ができない。しばしば、筋肉を収縮させるには微弱過ぎまたは拡散し過ぎている残留EMG信号は、依然として検出可能である。
【0006】
神経筋電気刺激(NMES)は、脳卒中患者における通常は収縮できない筋肉の収縮を引き起こすために用いられる。NMESは、筋肉の痙縮を停止させることができ、また、筋肉の萎縮を防止することができる。また、単筋から検出される残留EMG信号に応じて単筋のNMESをオンまたはオフし、それによって、患者の制御に基づいてその単筋を収縮できることが知られている。
【発明の開示】
【0007】
本発明の実施形態の一側面は、所望の動作を生じさせるには不十分な方法で、麻痺患者の腕に或いは随意筋を備える体の他の部分にNMESを適用することに関する。本発明の典型的な実施形態では、その所望の動作は、麻痺した部分を動作させる或いは動作を助けるアクチュエータにより提供されまたは支援される。代替的にまたは付加的に、患者は必要な付加的な神経信号を提供する(例えば、神経経路を介して)。いくつかの実施形態においては、そのアクチュエータは、動作に抵抗するために及び/又は所望の経路へ動作を導くために用いられる。選択的に、コントローラは、患者による複数の所望の動作および期待される反応を、様々な刺激および支援レベルに対して、その上に記憶するよう提供される。
【0008】
本発明の典型的な実施形態では、NMESは、低すぎてそれ自体で動作を実現することができない強度で提供されるが、患者の運動皮質中で生じる神経刺激と組み合わせて腕または体の他の部位を動かすことができ或いはNMESが提供されない場合よりもより効果的に動かすことができる。それは、例えば、その体の部位を動かすための運動皮質の訓練に役立つ筋肉のフィードバックを生成することによりなされる。いくつかの実施形態においては、NMESは、これを行うために、あまり強い必要はなく、或いはあまり正確に方向づけされている必要はない。この応用は腕に適用されるときはいつでも、随意筋を持つ他の体の部位いずれであっても或いは体の部位の組み合わせであっても代わりに用いることができることが理解されよう。選択的に、同じ腕からの、或いは患者の他の腕の対応する筋肉からの、或いは他人の腕からのEMG信号を用いて、NMESのパターン(例えば、タイミング及び/又は強度)を決定する。
【0009】
本発明の実施形態の他の側面は、随意運動を経る一つの腕、選択的に健康な腕からのEMG信号を使用して、麻痺患者の腕であるもう一方の腕に適用されるNMESのパターンを決定することに関する。選択的には、また、麻痺した腕からのEMG信号を使用し、NMESのタイミングを少なくとも決定する。選択的には、健康な腕は、患者のもう一方の腕であり、患者は鏡対象パターンで両腕を同期して動かそうと試みる。
【0010】
選択的に、本発明のこれらの実施形態のいずれかにとっては、EMGおよびNMESは、一つの筋肉に対してNMESをオン又はオフすることよりもむしろ、二つ以上の筋肉の協調的な一連の収縮、及び/又は、一連のNMESの強度を含んでいる。
【0011】
協調的な一連の筋収縮のフィードバックを運動感覚を介して提供することによって、患者の神経系は神経刺激のための代替的な無傷の経路または運動皮質中の代替的な位置を利用するよう促され、患者は自身で自分の腕をより効率的に動かすことを学習することができる。NMESが、EMGにより測定されるような患者自身が生み出す微弱な神経刺激と協調する場合、これは特に正確であろう。
【0012】
選択的に、ロボットアーム等、そのアームの動作をモニタする及び表示する装置は、麻痺した腕に使用され、また選択的に、健康な腕にも使用可能である。アームの動作についての情報は、患者へのさらなるフィードバックを、またNMESを制御するためのフィードバックを、および、患者のリハビリテーションの進捗を監視する理学療法士へのフィードバックを提供する。また、ロボットアーム或いは同等の装置は、麻痺した腕を機械的に動かすことができ、違った種類の運動感覚のフィードバックを提供することによりNMESを補完する。また、ロボットアームは、筋肉に逆らって働く力を与え、腕の増強の進展を測定するだけでなく腕を増強する方法をも提供する。
【0013】
したがって、本発明の典型的な実施形態によれば、麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施すための装置であって、
a)麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位の随意筋に適用されるように適合され、少なくとも1つのセンサが少なくとも1つのEMG信号を生成する、少なくとも1つの筋電図検査法(EMG)センサと、
b)麻痺した体の部位の少なくとも1つの随意筋を刺激するために適合された神経筋電気刺激(NMES)装置と、
c)前記NMES刺激がそれ自体でコントローラにより期待される動作で前記麻痺した体の部位を動作させるのに十分でないように健康な体の部位からのEMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成して、NMESを制御し且つ麻痺した体の部位の動作を期待するコントローラと、を含む装置が提供される。
【0014】
選択的に、健康な体の部位の少なくとも1つの筋肉が、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉に対応する。
【0015】
本発明の典型的な実施形態では、前記コントローラが、前記EMG信号を処理して、前記NMES信号の少なくとも1つの性質を決定するように構成されている。
【0016】
本発明の典型的な実施形態では、コントローラは、NMESにより麻痺した体の部位を刺激させ、EMG信号の感知時に健康な体の部位が生成する動作に対応する動作を作り出すように構成されている。選択的に、コントローラは、健康な体の部位の対応する筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉の少なくとも1つの刺激の強度を増加させるように構成されている。
【0017】
本発明の典型的な実施形態では、麻痺した体の部位の少なくとも一つの筋肉が筋肉の拮抗対を含み、コントローラは、筋肉の拮抗対の一方の筋肉に対応する健康な体の部位における筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、筋肉の拮抗対のうちの他方の筋肉の刺激の強度を減少させるように構成されている
【0018】
本発明の典型的な実施形態では、コントローラとNMES装置のうち1つ又は双方は、自身で麻痺した体の部位を動かすことができない少なくとも何人かの患者に対しては、刺激強度が、患者の脳からの神経刺激がない場合には刺激された筋肉を収縮させるのに不十分となるように、しかし患者の脳からの神経刺激がある場合にはその筋肉を収縮させるのに十分となるように構成されている。
【0019】
本発明の典型的な実施形態では、少なくとも1つのEMGセンサは、複数のEMGセンサを含んでおり、各EMGセンサは健康な体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるために適合されている。選択的に、各EMGセンサは別々のEMG信号を生成する。選択的に、NMES装置が、麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に独立して刺激を与えるよう適合されている。選択的に、前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分が、複数のEMGセンサを適合させて適用する健康な体の部位の筋肉または筋肉の部分に対応する。選択的に、コントローラは、前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分のNMES刺激の強度が、複数のEMGセンサからのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている。選択的に、コントローラは、前記複数の筋肉または筋肉の部分の各々のNMES刺激の強度が、対応する筋肉または筋肉の部分からのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている。
【0020】
本発明の典型的な実施形態では、前記麻痺した体の部位は、対となっている体の部位である。選択的に、麻痺した体の部位が腕である。代替的にまたは追加的に、麻痺した体の部位が足である。
【0021】
本発明の典型的な実施形態では、健康な体の部位が患者に属している。代替的に、健康な体の部位が違う人間に属している。
【0022】
本発明の典型的な実施形態では、コントローラが、EMG信号の処理後の形状に少なくとも部分的に依存する刺激強度を生成する。選択的に、EMG信号の処理後の形状は、EMG信号のタイミングに合わせて引き延ばされる。代替的にまたは追加的に、EMG信号の処理後の形状が、EMG信号の発生時に健康な体の部位が経験していた動作の鏡像となる健康な体の部位の動作により生成されるであろうEMG信号に対応する。代替的にまたは追加的に、EMG信号の処理後の形状が、EMG信号からの時間遅延である。
【0023】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、健康な体の部位の位置をモニタする第1の位置検知装置を含む。選択的に、その装置は、健康な体の部位の位置を機械的に変化させる第1のアクチュエータを含む。
【0024】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、麻痺した体の部位の位置をモニタする第2の位置検知装置を含む。
【0025】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、前記コントローラの制御に基づいておよび前記期待動作に従って、麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる麻痺アクチュエータを含む。
【0026】
また、本発明の典型的な実施形態によれば、麻痺した体の部位を有する患者の部類にリハビリを施すために適合された装置であって、麻痺した体の少なくとも一つの随意筋を刺激するよう適合された神経筋電気刺激(NMES)装置を含み、刺激の強度はそれ自体で前記筋肉を収縮させるほどではないものの、同時に前記部類の患者がその体の部位を動作させようと試みるとき、刺激の強度は前記筋肉を収縮させるのに十分である、装置が提供される。
【0027】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、麻痺した体の部位の随意筋に適用するために適合される少なくとも1つの麻痺EMGセンサを含み、少なくとも1つの麻痺EMGセンサは少なくとも1つの麻痺EMG信号を生成する。選択的に、コントローラは、少なくとも1つの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成する。選択的に、麻痺した体の部位に適用するために適合された少なくとも1つの麻痺EMGセンサは、それぞれが麻痺した体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるように適合された、およびそれぞれが別々の麻痺EMG信号を生成する、複数の麻痺EMGセンサを含む。選択的に、NMES装置は、麻痺EMG信号センサが適用されるよう適合された麻痺した体の筋肉または筋肉の部分を刺激するために適合されており、コントローラは、それぞれの筋肉または筋肉の部分の刺激の強度をその筋肉または筋肉の部分からの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存させるよう構成されている。
【0028】
本発明の典型的な実施形態では、前記第1のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0029】
本発明の典型的な実施形態では、前記第1のアクチュエータは、前記健康な体の部位の動作範囲を制限することによって前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0030】
本発明の典型的な実施形態では、前記第2のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0031】
本発明の典型的な実施形態では、前記第2のアクチュエータは、前記麻痺した体の部位の動作範囲を制限することによって、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0032】
また、本発明の典型的な実施形態によれば、麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施す方法であって、
a)患者または他の人間に、麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位を動かしてもらい、
b)動かしている間、その健康な体の部位からEMG信号を検出し、
c)NMES信号の少なくとも1つの性質を決定するために前記EMG信号を処理し、
d)前記処理に応じて、麻痺した体の部位にNMES信号を適用し、およびe)前記NMES刺激によって最大限でも部分的に前記麻痺した体の部位を動かすことを含む方法が提供される。
【0033】
選択的に、前記NMESは、前記EMG信号に従ったタイミングで適用される。代替的にまたは追加的に、前記NMESは、前記EMG信号に従った強度で適用される。
【0034】
本発明の典型的な実施形態では、その方法は、EMG信号を検出中に健康な体の部位を動作させるのと同じ動作パターンで、NMESを適用しながら、患者に麻痺した体の部位を動かすよう試みさせることを含む。選択的に、EMG信号を検出することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部位からEMG信号を検出することを含み、NMESを適用することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に対応する麻痺した体の部分の複数の筋肉または筋肉の部分にNMESを適用することを含む。選択的に、麻痺した体の部位の試みられている動作パターンの時間間隔中に麻痺した体の部位のそれぞれの筋肉または筋肉の部分に適用されるNMESの強度は、健康な体の部位の動作パターンにおける対応する時間間隔中に、健康な体の部位の対応する筋肉または筋肉の部分から検出されるEMG信号に少なくとも部分的に依存する。
【0035】
本発明の典型的な実施形態では、麻痺した体の部位は、動作がアクチュエータにより機械的に提供される。選択的に、前記アクチュエータは、前記検出されたEMGと同期する。代替的にまたは追加的に、前記アクチュエータは、前記適用されるNMESと同期する。代替的にまたは追加的に、麻痺した体の部位は、アクチュエータの動作によって機械的に支援される。代替的にまたは追加的に、麻痺した体の部位の動作が、アクチュエータによって制限される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の典型的な実施形態は図面を参照して以下の部分に記述される。図面は概して共通の尺度を持つものではなく、異なる図面間において同一又は関連する特徴に対して同一又は同様の符号が用いられる。
【0037】
図1は、健康な腕の対応する筋肉からのEMG信号によって案内される麻痺した腕の幾つかの筋肉へ、NMESを適用するための装置を示す。麻痺した腕を持つ患者またはその他の人のいずれかに属している健康な腕102は、その皮膚にEMG電極が取り付けられている。その腕を持つ人は特定のパターンでその腕を自発的に動かし、それによりその筋肉中においてEMG電圧の一定の時間依存パターンが発生する。選択的に、4つのEMGチャネルがあり、それぞれのチャネルは二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋の4つの筋肉それぞれからのEMG信号を測定する。それぞれのチャネルは、筋肉の各端部付近からの信号を記録する2つの電極と、中央部の1つの参照電極とからなる、3つの電極を用いている。例えば、電極104は二頭筋を測定し、電極106は三頭筋を測定し、電極108は屈筋を測定し、及び電極110は伸筋を測定する。選択的に同様の配置は大胸筋と三角筋の対のような他の筋肉の対のグループに対しても配置されることは、本発明の詳細な説明から理解されよう。その腕が自発的に動くとき、これらの電極は、その腕のその動作を生み出している筋収縮のパターンに対応するEMG信号を、ケーブル束112,114,116,118を介してEMG装置120へ送信する。このEMG装置、或いは別途のコントローラは、例えば増幅、デジタル化、及び/又は記録等、EMG信号の予備処理をする。
【0038】
その後、EMG信号は、ケーブル122を介して、パーソナルコンピュータ等である、或いは特別の専用ハードウエアを含むコントローラ124へ伝送される。選択的に、そのコントローラは、さらに、例えばフィルタリング、整流、平滑化、タイミングの変更、或いはシーケンスの一部のカットアンドペースト等を異なった順序で実行することにより、EMG信号を処理する。選択的に、その信号処理は自動的になされ、或いは理学療法士の制御に基づいて部分的又は全体的になされる。図2は、一つのチャネルからのフィルタリングされた未加工のEMG信号202、整流信号204、その信号の二乗平均を連続した時間間隔、例えば10ミリ秒毎、のそれぞれにおいて計算した平滑化整流信号206のプロットを示す。平滑化整流信号は、個々の筋繊維の電位変化に関連する高周波ノイズを除去中の、そのチャネルによって測定される筋肉または筋肉の部分の全体的な収縮の程度の測定値である。選択的に、平滑化整流EMG信号は、同じ動作パターンが何度も繰返される間に平均化される。選択的に、EMGセンサは、筋肉の幾つかの異なる部分から生じるEMG信号を加算または平均化する、つまりこれは信号処理によりなされる。信号処理の選択可能な形式は、例えば、健康な手足上でEMGを測定すると同時に健康な手足の実際の動作を測定することによって、EMG信号が所望の動作に起因することが明らかとなるように、EMG信号を検証している。選択的に、信号処理の一つ以上のパラメータは、理学療法士によって制御される。本発明のいくつかの実施形態においては、平滑化整流EMG信号は、例えば、高いまたは低い測定値を要素とせずに、残りの測定値を多重反復後に平均化するなどして、異常なEMGの測定値を計算に入れずに生成される。いくつかの実施形態においては、EMGが測定された後、例えば多重EMG信号を収集および平均化することができる時間遅延をもってNMESが適用される。
【0039】
また、コントローラ124は、ケーブル128を介してNMES装置126を制御する。選択的に、コントローラ124は、NMES装置に対して、4つのチャネルのそれぞれにおいてNMES信号を生成するよう命令する。4つのチャネルにおける信号は、ケーブル130,132,134,136を通って電極138,140,142,144へ進み、患者の麻痺した腕146の二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋(或いは選択的に場合によっては他の筋肉対)をそれぞれ刺激する。選択的に、各チャネルにおけるNMES信号は、健康な腕で行われたような動作と同様の動作を麻痺した腕において実現させる時間依存強度が与えられている。例えば、4つのEMGチャネルのうちの対応する1つからの処理された信号の強度に依存する各NMESチャネル中の信号強度を生成することによって、これは為される。例えば、NMES信号は、対応するチャネルにおいて、処理されたEMG信号の強度に比例する、すなわち、処理されたEMG信号の強度の一定の単調関数となる。
【0040】
また、選択的に、NMES信号は、1つ以上の他のチャネルからのEMG信号に依存する。例えば、二頭筋と三頭筋は互いに逆に作用するので、二頭筋と三頭筋を制御するNMES信号は、選択的に、三頭筋からのEMG信号に関して負の係数を持つ、二頭筋からのEMG信号と三頭筋からのEMG信号との一次結合に依存する。一次結合が正であれば二頭筋のみが刺激されており、一次結合が負であれば三頭筋のみが刺激されている。選択的に、同様の方法は、また、互いに逆に作用する屈筋と伸筋等の他の主動筋‐拮抗筋の対に用いられる。
【0041】
選択的に、NMES信号は、対応する筋肉からのEMG信号に直接的にではなく基づいており、EMG信号に関連した動作から何らかの方法で反転された動作を生成するために修正される。例えば、左腕からEMG信号が生じ、右腕にNMES信号が適用されれば、その後選択的に、NMES信号は、2つの腕における対応する筋肉が同時に収縮する場合に生じるように、その鏡像というよりもむしろ、左腕の動作と同じである右腕中の動作を実現するように変換される。代替的にまたは追加的に、その2つの腕が左腕と右腕であろうとなかろうと、健康な腕の動作が周期的であれば、その後、NMES信号は健康な腕の動作から180度位相がずれた麻痺した腕の動作を実現するように変換される。NMESにおけるそのような変更は、例えば、歩き方や自転車の乗り方を再学習する患者において、左右の足に対して用いると特に有用である。
【0042】
また、選択的に、麻痺した腕には、EMG電極148,150,152,154が取り付けられている。これらのセンサは、ケーブル156,158,160,162のそれぞれに沿って、EMG装置120の4つの付加的なチャネルへ信号を送信する(従って、EMG装置120は計8つのチャネルを有する)。これらの付加的なEMG信号は、健康な腕102からのEMG信号の処理と同様、EMG装置およびコントローラ124により処理される。また、選択的に、麻痺した腕146からのEMG信号はNMES信号を制御する際にコントローラ124によって使用される。患者の感覚運動皮質は依然として麻痺した腕146中の微弱な神経刺激を生成する能力があるので、たとえこれらの神経刺激が弱すぎて麻痺した腕を動かすことができないとしても、EMG信号は発生し得る。麻痺した腕においてNMES信号を対応するEMG信号との間でタイミングをとることによって、患者へ運動感覚のフィードバックを提供することにより、麻痺した腕は、患者が腕を動かそうとする試みに応じて動作可能である。代替的にまたは追加的に、麻痺した腕146におけるEMG信号は、例えば、図3の記載において以下で検討されるようなロボットアームによって、受動的に、麻痺した腕146を動かすことにより生じ得る。
【0043】
また、選択的に、コントローラ124は、NMES信号の強度を制御する際に、他の情報を用いる。例えば、健康な腕には、肘の曲がり具合を測定する歪みセンサ等のセンサ164、および指の伸長具合を測定するセンサ166が備えられており、さらに麻痺した腕にも同様のセンサ168と170とが備えられている。それらセンサは、腕と指の曲がり具合を測定するためのセンサデータを処理するユニット172へ入力し、この情報は例えばケーブル174によってコントローラ124へ伝達される。選択的に、ユニット172とコントローラ124は、単一のコントロールユニットの一部分である。選択的に、これらのセンサは一本の腕にのみ使用される。選択的に、特にEMGとNMESがさらなる筋肉に使用される場合には、腕および手の位置の他の側面を測定する他のセンサが使用される。他の形式の様々なセンサは、追加的にまたは代替的に、腕又は手の位置を測定するために用いられ、例えば、腕は、以下に記載される図3に示すように、それ自体の状態を測定するためのそのようなセンサを備えたロボットアームに取り付けられる。或いは、腕と手の所定点(key points)にLEDを取り付けてそれらの位置をビデオカメラを用いて追跡記録し、或いは、腕と手の所定点に磁場センサを取り付けて外部磁場及び/又は磁場の勾配をかける。体の部分の位置と方向をセンシングする技術分野における当業者にとっては、他の方法は明らかであろう。
【0044】
麻痺した腕の位置は、例えば、NMES信号への負のフィードバックとして使用可能である。リハビリテーションの進行中、患者自身の神経刺激はより強くなり及び/又はより効果的になり、例えば筋肉の拮抗対間をより明確に区別するので、同じ腕の動作を実現するのであっても、NMES信号を減少させることができる。また、この種のフィードバックは、所定のリハビリテーション活動内で使用可能である。例えば、患者が一時的に腕の動作を継続することが困難となれば、患者が再び腕の動作を開始できるまで、一時的にNMESの強度を増加させる。選択的に、この場合、コントローラは、例えば麻痺した腕におけるEMG信号レベルに注目することによって、患者が単に休憩していることと患者が腕を動かそうとして失敗していることとを区別する。
【0045】
健康な腕の位置は、例えば、健康な腕における筋肉の収縮具合の一つの指標として、健康な腕からのEMG信号を補うために用いることができる。代替的にまたは追加的に、両腕の位置のデータを用いて、患者のリハビリテーションの進捗状況をモニタすることができる。
【0046】
図3は、図1の健康な腕か麻痺した腕のいずれか一方であって、ロボットアーム300が取り付けられている腕302を示す。上腕はホルダ304により把持されており、前腕はホルダ306により把持されている。上腕ホルダ304は、制御可能ボールジョイント310に接続された伸縮可能ロッド308に取り付けられており、同様に前腕ホルダ306は、制御可能ボールジョイント314に接続された伸縮可能ロッド312に取り付けられている。ボールジョイント310および314は、剛性コネクタ316を用いて互いに接続されている。ボールジョイントと伸縮可能ロッドは、この場合、各ボールジョイントに対し自由度が2、および各伸縮可能ロッドに対し自由度が1である、それら全ての自由度のためのアクチュエータとセンサの双方を含んでいる。センサは腕302の肘の曲がり具合を感知可能であり、アクチュエータは肘を曲げる或いは伸ばす、及び/又は患者による肘の曲げ伸ばしに抵抗する力を加えることができる。選択的に、アクチュエータとセンサは、例えばどの筋肉がリハビリ中か等に依存する、より多くの又はより少ない自由度を有しており、また選択的に、ロボットアームは、例えば、腕、手、指上の別の位置である、腕302上の追加的な位置に取り付けられる。センサからアクチュエータへの信号は、図3に示されていない、ロボットアーム制御ボックスにより処理される。
【0047】
ロボットアームは選択的に、図1中のセンサ164,166,168,170と同じように使用される。さらに、ロボットアームが制御された方法で自力で動作可能であるという事実は、麻痺した腕に使用される場合であって、患者へ運動感覚のフィードバックを提供する際に、それがNMESを補完することができるということを意味する。ロボットアームは、筋肉それ自体の力に基づいて筋肉を収縮させることなく麻痺した腕を動かすことができるので、NMESが提供するものよりも様々な種類の運動感覚のフィードバックを提供し、場合によってはフィードバックの両方の形式がリハビリテーションに有用である。例えば、NMESは単独では滑らかな及び正確な動作を実現することができない場合があり、ロボットアームがNMESにより生じる動作の補正及び平滑化に貢献することができる。
【0048】
選択的に、ロボットアームの受動及び能動モードの双方は、NMESと併用される。ロボットアームにより生成される動作は、NMESによる筋収縮により補助される。能動的手法で患者がロボットアームを動かすとき、NMES信号はそれ相応に調整される。
【0049】
選択的に、麻痺した腕に取り付けられたロボットアームの動作は、健康な腕の動作に関連したEMGの測定値に基づいている。
【0050】
リハビリテーションを提供する場合、ロボットアームにより様々な形式の動作を支援することができ、例えばそれは下記のうちの少なくとも1つからなる。
【0051】
a)受動的動作。ロボットアームが動かされ、患者はロボットアームと共に動く。
【0052】
b)抵抗的動作。患者はロボットアームを動作させ、抵抗力を受ける。その抵抗力は様々な大きさとすることができ、また、全方向に均一とすること或いは指向性とすることができる。
【0053】
c)支援的動作。患者がロボットアームを動作させるとき、腕における正のフィードバックが、患者により動作させられている方向に動作の力を増加させる。
【0054】
d)力場動作。患者がロボットアームを動作させる。ある軌道に沿って、一定レベルの抵抗力(又は無抵抗力)に直面する。その軌道からの逸脱は許容されず、逸脱すると抵抗力を受ける。「正しい」軌道に沿った動作は、抵抗力なしで為し得、場合によっては支援を受けることができる。軌道を取り囲む体積(volume)中では、抵抗力の増加が見られる。体積の周囲では、抵抗力のより一層のさらなる増加が見られる。体積の外側では、動作を妨げることができる。本発明の典型的な実施形態では、軌道上にない場合に軌道へ向ける、矯正力ベクトルが適用される。選択的に、矯正力に代えて、軌道からの距離の関数として抵抗力を変化させることで、ロボットアームの動作が自然と軌道へ戻されるよう促す。選択的に、その力は、その経路の方向に働く。代替的に、その力は、一定方向だけに作用する抵抗力であってもよい。
【0055】
この動作形式は所望の動作における患者の訓練に役立つ。
【0056】
e)鏡映動作(mirrored motion)。ロボットアームの動作は、例えば両手足のリハビリテーションにおいては、異なった要素の動作の軌道を鏡映するよう要求される。
【0057】
f)自由動作。患者は望み通りの方向にロボットアームを動かし、場合によってはフィードバックを受ける。患者(又は理学療法士又はヘルパー)がロボットアームを動作させている最中、装置は、その後再生するためにそれを記録することができる。再生モードにおいて、記録済みの動作(又は経路)は、場合によっては他のモードで再現される。選択的に、記録済みの経路は、例えば自動的に又は手動で修正される(例えば、平滑化など)。
【0058】
g)全体的な力場(General Force Field)。特定の軌道には関連しない、力場及び/又は支援場(assistance field)が定義される。例えば、ある範囲の軌道、すなわち実際の又はシミュレーションされた仮想の状態(例えば、水中、障害のある場所)が、ユーザの実施を許容するであろう。
【0059】
h)局所的な力場。力場は、狭い局所にのみ、及び/又は、1次元または2次元にのみ適用される。
【0060】
i)制限的動作。被験者の体の少なくとも1つの位置を支持する或いはそれが動かないようにする。選択的に、そのような位置と動作位置との間の装置上の角度が測定される。一例を挙げれば、肩の動作のみ許容する専用の装着帯で肘を固定する。いくつかの実施形態においては、その制限は部分的であり、及び/又は、可動要素(例えば腕)によって提供される。
【0061】
j)初期動作。患者が動作を開始すると(例えば、1cmの動作又は100グラム重量)、ロボットアームが、空間におけるその動作を完結する或いは患者がその動作を完結するのを手助けする。その完結は、軌道の全てにおけるものであっても、軌道の一部におけるものであってもよい。
【0062】
k)暗示的動作。ロボットアームが動作を開始し、患者がそれを完結する。ロボットアームは、様々な方法で(例えば、動作開始後、本明細書中に述べるモードのうちの1つに変更することによって)その後の動作を支援する。患者がその動作を逸脱した場合、ロボットアームは例えば音声による合図等の合図を発する。単一の動作軌道のうちの様々な部分には、それぞれ、装置開始の定義付けを持たせることができる。選択的に、患者の動作が遅すぎる場合には、ロボットアームは動作を開始する。
【0063】
l)合図動作。患者は、異なるモードの開始に応じて、動作前にシステムから合図を受け取る。その合図としては、例えば、ロボットアームの振動、皮膚上の刺激パッド、音声又は視覚的な合図等を用いることができる。本発明のいくつかの実施形態においては、合図の強度及び/又はそのタイミング及び/又は他の継続中の活動(例えば、画像表示やゲーム)が、視覚と手の協調関係等の異なった治療法間の連携の訓練を支援するために使用される。動作合図は、運動感覚の訓練に用いることができる。
【0064】
m)教育モード。ロボットアームは動作を学ぶ。一例を挙げれば、理学療法士が動作を実行すると、各点(point)における動作パラメータが記録され、その後、運動に利用することができる。そのシステムに学ばせる他の方法は、理学療法士が自身の動作で辿る経路に従うことである。理学療法士は、コントローラを用いて、教えようとする点を示すことができ、または連続的なモードを定義することが可能であり、それにより軌道全体を学習させることができる。選択的に、経路と点は再生の前に編集される。選択的に、経路に対しては、再生前に、例えば平滑化や動作点の同定等の処理がなされる。
【0065】
したがって、本発明のいくつかの実施形態においては、ロボットアームは、等運動性の、同緊張の、均衡の運動のうちの少なくとも1つを提供することができる。
【0066】
当然のことながら、ロボットアームが追跡する軌道を定義する際には、速度パラメータを含めることが可能である。例えば、ユーザを支援し又は促し又は予測して、特定の速度でロボットアームを動かす。その速度は、例えば、絶対的ないし相対的である(例えば、均一な速度または不均一なプロファイルに一致する速度を要求している)。
【0067】
選択的に、角度の軌道を定義し、ロボットアームの角度方向に対する制限を認識する。いくつかの実施形態においては、その制限は一次元である。他の実施形態においては、それは2又は3次元である。
【0068】
特定のリハビリテーションのシナリオにおける、速度、角度、空間の軌道は、上述の動作形式の別々の形式にそれぞれ所属させることが可能である。例えば、空間の軌道は力場形式とすることができ、一方、速度の軌道は自由又は支援形式である。また、軌道の形状及び/又はそのパラメータは、時間の関数として及び/又は以前の動作の関数として、軌道に沿って変化可能である。例えば、軌道の前半部分において適切に(或いは期待されているよりも良好に)実行された動作の形状に対しては、軌道の後半部分において提供する支援はより少なくてよい。
【0069】
軌道は絶対的であってもよく、例えば、ロボットアーム上の休止点又は別の点の関数として定義される。他の実施形態では、軌道は純粋に相対的であり、例えば、開始点にもかかわらず、一直線に腕を動かすよう患者に要求する。他の実施形態では、動作開始直後に、例えば患者が立っているところか座っているところかどうか、またどんな種類の手の動作が期待されているかを示す軌道の出だし等、残りの軌道の形状を決定するという点において、部分的に相対的である。
【0070】
いくつかの実施形態においては、以下に示すように、多数の点が定義されている場合には、各点の軌道を別々の形式とすることが可能である。いくつかの実施形態においては、定義されているものは、2つ以上の点の関数としての軌道である。例えば、2つの点を用いて肘の配置(例えば、骨の間の角度)が定義されれば、肘の動作における軌道の制限を定義することができる。そのような動作は、空間中において相対的であって(例えば、2つの位置の比較)、また絶対的でなくてもよい(例えば、装置の参照位置と比較して)。本発明のいくつかの実施形態においては、それらの全てがスカラー量又はベクター量である、速度、力、及び/又は回転に関連づけられ得る、空間中における各点のような、テンソル又はテンソル場が提供されることに留意すべきである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態においては、軌道の異なる部分に対して又は空間の異なる部分に対して(例えば、特定の腕に対して)、異なるモードが定義される。選択的に、モードは、実際の動作に基づいて始動する。例えば、動作速度がある閾値以下であれば、より支援型のモードを提供する。同様に、閾値を超える小休止は、より支援型のモードを示唆する。正確な動作は、より低支援型のモードを示唆する。
【0072】
図4は、本発明のその他の典型的な実施形態に記載の配置を示すものであり、麻痺した腕146のみを用いている。図1と同様に、麻痺した腕の二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋には、各筋肉に対して3つの電極となるように、EMG電極148,150,152,154をそれぞれ取り付け、ケーブル156,158,160,162に沿ってEMG装置120へEMG信号が伝達され、予備処理後、その信号はコントローラ124へ伝送される。図1と同様に、コントローラ124は、EMG信号を使用して、NMES装置126により送信されるNMES信号の強度とタイミングを決定し、NMES電極138,140,142,144を介して二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋を刺激する。
【0073】
図4のNMES装置126によって送信されたNMES信号は、それ自体、麻痺した腕146を著しく動作させるほど充分な強度を有しておらず、また選択的にこれは図1においても当てはまる。しかし、NMES信号は、患者自身の神経刺激と一緒になれば、その腕を動かすには充分な強度を有する。従って、麻痺した腕は患者がそれを動作させようとするときにのみ動作し、そして、その動作により与えられる運動感覚のフィードバックは、患者における神経刺激のための代替経路、又は同じ筋肉に神経刺激をもたらすための運動皮質中の代替位置の発達をさらに促進させ、最終的には、患者は自身で麻痺した腕を動かすことができるようになる。これは、動作が、2つ以上の筋肉の協調的な一連の収縮を必要とする場合に特に有用であろう。選択的に、リハビリテーションの進行中、患者が麻痺した腕を動作させるために必要とされるNMES信号が低くなるにつれて、NMES信号を低下させる。
【0074】
選択的に、患者の運動皮質からの神経刺激がない場合、NMES信号は、平均的な健常者又は平均的な麻痺患者に対して動作を生成するのに必要とされる強度の100%から120%であり、或いは特定の患者に対してはそのレベルが調整される。代替的に、NMES信号は、これらの人々のいずれに対してもその強度の120%から140%とされ、または80%から100%、または60%未満とされる。選択的に、こられの人々のいずれに対しても、NMES信号は、動作させようと努力する際に運動皮質から生じる神経刺激の存在下で動作を実現するのに必要とされるレベルの100%から120%であり、または120%から140%、または140%から200%、または200%よりも大きい。
【0075】
選択的に、NMESは、平均的な健常者が神経刺激を筋肉の一部分へ自発的に導く際に達成する能力と少なくとも同じくらいの空間的精度で筋肉の一部に狙いを絞り込んでいる。代替的に、NMESは、この高精度よりも低めで狙いを絞り込むが、少なくともこの高い精度の半分、或いはこの高い精度の半分未満ではあるが、少なくともこの高い精度の4分の1、或いはこの高い精度の4分の1未満である。
【0076】
図1および図4に記載の手順の特徴は、リハビリテーションを容易にするために、患者のニーズに合わせて変更可能である。いくつかの実施形態を以下に示す。
【0077】
EMGおよびNMESは、図1と図4において使用されており示されている筋肉を4つとも用いる必要はない。選択的に、初期には、二頭筋と三頭筋のみが使用される。その後、患者は二頭筋と三頭筋とを効果的に使う能力を幾分得た時点で、屈筋と伸筋がEMGおよびNMESチャネルに追加される。これら4つの筋肉は、胸筋や三角筋等の他の筋肉に加えて、腕の全体制御の基本をなす。その後、個々の指、及び/又はもう一方の手首および手が加えられ、微細な運動制御を向上させる。腕以外の体の部位のリハビリテーションのためには、当然ながら、他の筋肉群が選択される。
【0078】
選択的に、NMESの強度は、種々のソースからのフィードバックに依存して、およびリハビリテーションプログラムの当面の目標に依存して変更される。前述のように、選択的に、患者が神経刺激の生成および自身による筋肉の動作の能力を回復するにつれて、NMES信号を減少させる。代替的に、当面の目標が退化した筋肉の強化であれば、その筋肉がより強くなるにつれて、選択的に、NMESの強度を増加させる、そうするとより激しい運動となり、その運動から恩恵を受けることができる。この場合、選択的に、筋肉がより強くなるにつれて増加するおもり又はロボットアーム等のような抵抗力に逆らって腕を動作させるので、同じ量だけ腕を動作させるためにはNMES信号をより強くする必要がある。
【0079】
神経刺激の代替経路の発達を促すために運動感覚のフィードバックを用いることに加えて、上述のような、他の種類のフィードバックを選択的に用いて、筋肉をより効果的にコントロールする方法を患者が学習できるよう支援する。例えば、NMES刺激により神経刺激が補完される場合の腕の動作を観察することは、患者が自身の腕を動かすために加える力を調整するのに役立つ。同様に、患者による意識的な学習のためのそのようなフィードバックは、腕の動作を測定及び記録する図3のロボットアーム等の装置により、および処理済みのEMG信号により提供することができる。例えば、患者は、健康な腕が所望の動作を実行しているときに、麻痺した腕からのEMG信号を、健康な腕により生成されるEMG信号に更に酷似させようと試みることができ、または、患者は、麻痺した腕からのEMG信号を、おそらく健康な腕からの若しくは同様のリハビリテーションを経験した他の患者の麻痺した腕からの記録済みEMG信号を考察することにより構築されたいくつかのテンプレートに更に酷似させようと試みることができる。
【0080】
図1に示す配置においては、患者のもう一方の腕が健康な腕として用いられれば、その後、選択的に、患者は両腕を鏡像動作で同調して動作させるよう試みる。選択的に、健康な腕のEMG信号に基づくNMES信号は麻痺した腕を動作させることができ、患者は両腕を同時に動作させようと試みているので、患者は麻痺した腕から運動感覚のフィードバックを受け取る、このことは神経刺激の代替経路の発達の促進を支援する。本発明のいくつかの実施形態においては、健康な腕の鏡像動作に対応する麻痺した腕の動作は、部分又は全体において、ロボットアーム300によって支援される。
【0081】
選択的に、NMES信号は、麻痺した腕の能力に適合させられる。例えば、麻痺した腕の筋肉がNMESに対して通常のものと同じくらい迅速に反応する能力がなければ、その後、選択的に、NMES信号は減速され、或いは高周波成分が低減若しくは除外される。筋肉がより迅速な反応の能力を回復するにつれて、NMES信号は再び速度が向上される。NMES信号の速度は、麻痺した腕の動作に対するセンサデータに応じて自動的に、または、患者を評価するためのそのようなセンサデータを状況に応じて使用する理学療法士により手動で、調整される。麻痺した腕の動作を支援するためにNMESと連携してロボットアームを用いる場合、選択的にロボットアームの動作はNMESと共に減速する。たとえNMESを用いることなく麻痺した腕の動作を支援するためにロボットアームが使用されたとしても、例えば、ロボットアームが患者自身の神経刺激による動作に対してより大きく貢献するよう患者を支援するであろう場合、またはリハビリテーション中の何らかの他の理由に役立つであろう場合には、ロボットアームの動作は状況に応じて減速する。
【0082】
図5Aから5Gは、体性運動皮質内の脳卒中に続いてよく起こる問題、すなわち二頭筋と三頭筋或いは屈筋と伸筋のような拮抗対を形成する2つの筋肉の間を適切に区別するための患者の神経刺激の障害、を抱えている患者にリハビリを施す手順を示している。図5Aに示すように、患者が自身の手を開閉しようとする際の、伸筋からのEMG信号402、および屈筋からの信号404は、しきい値406よりも高いので、両筋肉を収縮させるだけの強さがある。しかし、両筋肉が同時に収縮すると、それらは互いに逆に作用するので、手はほとんど動作しない。まず、図5B,5C,5Dに漸次示すように、患者は、屈筋と伸筋の双方の全体的な活動を、収縮のしきい値以下に低下させることを学ぶ。その後、図5E,5F,5Gに示すように、患者は、屈筋を緩めた状態を維持しながら、伸筋の活動を増加させるよう教えられる。例えば、これは、患者が伸筋を収縮させよとする場合に運動感覚のフィードバックを増加させて、伸筋にNMESを適用することにより為される。
【0083】
要約のために、本発明のいくつかの実施形態において使用可能なリハビリテーション方法のいくつかを以下に記載した。
1) 健康な腕におけるEMGを記録し、リアルタイムであるかどうかにかかわらず、麻痺した腕に同じパターンのNMESを適用する。
2) 麻痺した腕におけるEMGで測定されるとおりに、麻痺した腕における神経刺激を補完するようにNMESの強度を調整する。
3) EMGが弱い場所である麻痺した腕の部分にNMESの狙いを定める。
4) 麻痺した腕の反応時間の低下に合わせてNMESを減速させる。
5) 健康な腕におけるEMGに基づいてNMESを適用しながら、患者に両腕を同時に鏡像で動かしてもらう。
6) 健康な腕におけるEMGに基づいて(ただし修正して)NMESを適用しながら、患者に両腕を同時に鏡像でなく、及び/又は180度の位相差の循環動作で動かしてもらう。
7) 健康な腕による動作の多くの繰返しの間の平均EMGに基づいてNMESの基礎を形成する。
8) 麻痺した腕の位置を検知し、NMESに対して負のフィードバックを用いる、すなわち、選択的に、腕の動作不能と意図的な休止とを区別するために麻痺した腕のEMGを用いる。
9) EMG信号を記録しながら、時間の関数として健康な腕の検出位置を記録し、その後、麻痺した腕が対応した位置にあるとき、対応するNMESを麻痺した腕に適用する。
10) ロボットアームを用いて所望のパターンで健康な腕を動作させ、健康な腕において受動的に生成され結果として生じるEMG信号を検知し、そして、対応する動作を実現するために、麻痺した腕に適用されるNMESの基礎としてそれらを用いる。
11) ロボットアーム及び/又はNMESを用いて麻痺した腕を動作させ又は動作を支援し、麻痺した腕を健康な腕の測定された位置にマッチングさせる。
12) ロボットアームを用いて動作に対する麻痺した腕の抵抗力を測定し、それによって、動作に対する麻痺した腕の障害が筋肉の収縮の障害によるものであるか、筋肉の拮抗対間の区別の障害であるのかを決定し、場合によっては、それに応じてNMESを調整する。
13) 麻痺した腕の動作を支援するために、NMESを用いて又は用いずにロボットアームを使用し、麻痺した腕の能力に合あわせてロボットアームを減速させる。
14) NMESを用いてまたは用いずに、麻痺した腕の筋肉に逆らって働くようにロボットアームを用い、場合によっては、力を麻痺した腕の能力に適合させる。
15) 麻痺した腕のEMGを用い、患者に麻痺した腕のより良い制御の仕方を教え、場合によっては、筋肉の拮抗対間をより明確に区別することを含む。
【0084】
本発明の典型的な実施形態では、NMESを適用する方法は、本出願人により出願された他の出願の教示と組み合わされる。
【0085】
2004年12月7日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Methods and Apparatuses for Rehabilitation Exercise and Training(リハビリテーション運動およびトレーニングのための方法および装置)」と題され、代理人整理番号414/04388を有し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/633,442は、平衡性のリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、NMESは、患者が体の両側を調整する支援をするため、或いは体の一部分が動作するとき(例えば足)に平衡性に関わる体の他の部分(例えば胴体)の筋肉を刺激するために使用される。
【0086】
2004年4月29日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Fine Motor Control Rehabilitation(微細運動制御リハビリテーション)」と題され、代理人整理番号414/04401を有し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/566,079は、微細な運動制御のリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、NMESは、患者による総体的な及び微細な運動動作の調整を支援するために(例えば、大きな筋肉の測定、及び小さな筋肉の刺激、逆もまた同様)、或いは健康な腕から麻痺した腕への微細な運動制御を複製するために用いられる。
【0087】
2004年12月7日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Gait Rehabilitation Methods and Apparatuses(歩行リハビリテーションの方法および装置)」と題され、代理人整理番号414/04391を有し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/633,428は、歩行のリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、NMESは、2つの足の動作及び/又はそれぞれの足の動作を調整するために使用され、例えば、(健康なまたは麻痺した)大腿部におけるEMG測定値を用いて、麻痺したふくらはぎにNMES信号を駆動する。
【0088】
2004年2月5日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」と題され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/542,022は、様々な形式のリハビリテーション装置を記載している。本発明の典型的な実施形態では、そのような装置において、NMES刺激及び/又はEMG測定が提供される。
【0089】
2004年8月25日に出願され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/604,615は、脳の可塑性を測定する及び/又はさもなければ考慮しながらのリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、麻痺した手足への神経信号の生成に関与する脳中心の活動を調整する方法において、及び/又は麻痺した手足からの信号を受信するために、NMES刺激が提供される。例えば、EEGやfMRIの手法を用いて、そのような脳の領域を検知することができる。
【0090】
本明細書に用いられているように、腕または他の体の部分の「位置(position)」は、その腕または体の部分の特定部位の空間的な位置だけを含むのではなく、例えば、どのくらい肘が曲げられているか、どのくらい前腕がねじれているか、どのくらい手首が曲がっているか等、その空間状態を明確にするために必要とされる他の情報をも含む。いくつかの実施形態においては、その部分の速度及び/又はその方向が制御される。
【0091】
本発明は、それを実施するための最良の形態に照らして記載されている。当然のことながら、図に示されている又は関連した本文中に記載されている全ての特徴が、本発明のいくつかの実施形態に従って、実際の装置に表れているわけではない。さらに、開示された方法および装置の変形は本発明の範囲内に含まれ、それは請求の範囲によってのみ限定される。また、1つの実施形態の特徴を本発明の他の実施形態の特徴と組み合わせて提供することができる。本文中で使用されているように、用語「含む(have)」、「含む(include)」及び「含む(comprise)」、或いはそれらの活用形は「含むがそれに限定されるものではない(including but not limited to)」ことを意味するものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、EMG電極を備えた健康な腕、EMGユニット、信号処理ユニット、NMESユニット、およびNMESとEMG電極を備えた麻痺した腕の概略図である。
【図2】図2は、本発明の典型的な実施形態による、未加工のEMG信号、整流信号、平滑化rms(二乗平均平方根)信号を示す。
【図3】図3は、本発明の典型的な実施形態による、ロボットアームに取り付けられた腕の概略図である。
【図4】図4は、図1と比較した本発明の他の典型的な実施形態による、NMES電極とEMG電極を備えた麻痺した腕、脳からの神経信号、および信号処理ユニットの概略図である。
【図5A】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5B】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5C】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5D】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5E】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5F】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5G】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【関連出願】
【0001】
この出願は、その両出願の開示が参照により本明細書に組み込まれる、2004年2月5日出願の米国仮出願No.60/542,022、および2004年4月29日出願の米国仮出願No.60/566,078の119(e)に基づく利益を主張する。また、この出願は、本願と同日に同一出願人により出願された、「Gait Rehabilitation Methods and Apparatuses(歩行リハビリテーションの方法および装置)」、「Rehabilitation with Music(音楽を用いたリハビリテーション)」、「Fine Motor Control Rehabilitation(微細運動制御リハビリテーション)」、「Methods and Apparatuses for Rehabilitation Exercise and Training(リハビリテーション運動およびトレーニングのための方法および装置)」、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」と題され、代理人整理番号がそれぞれ414/04391、414/04396、414/04401、414/04388、414/04213、414/04404、および414/04405である、PCT出願に関連する。これら全ての出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の分野は、運動制御の不具合を有する患者のリハビリテーションのための装置である。
【背景技術】
【0003】
随意筋の動作は、脳の体性運動皮質内で発生する電気的刺激に起因する。体性運動皮質内の神経細胞は、脊髄中の運動神経細胞へ電気信号を送り、筋繊維の収縮を促す電気信号を次々と送り、動作を実現させる。所定の運動神経細胞によって刺激される筋繊維の全ては、「運動単位(motor unit)」と呼ばれている。各筋繊維は、その細胞膜上で電位を示し、それは筋肉が収縮する時に変化する。
【0004】
筋電図検査法(EMG)では、皮膚表面上の電位差を筋肉の中央部と端部との間において測定し、収縮している筋繊維の数を測定する。EMGは、患者の種々の病状を診断するために恒常的に使用されており、また、筋機能の研究のために健常者にも使用されている。
【0005】
体性運動皮質に損傷のある脳卒中患者においては、一つ以上の筋肉或いは筋肉の部分へ向かう電気信号が発生せず或いはそれらの筋肉には届かず、それらの筋肉は通常の収縮ができない。しばしば、筋肉を収縮させるには微弱過ぎまたは拡散し過ぎている残留EMG信号は、依然として検出可能である。
【0006】
神経筋電気刺激(NMES)は、脳卒中患者における通常は収縮できない筋肉の収縮を引き起こすために用いられる。NMESは、筋肉の痙縮を停止させることができ、また、筋肉の萎縮を防止することができる。また、単筋から検出される残留EMG信号に応じて単筋のNMESをオンまたはオフし、それによって、患者の制御に基づいてその単筋を収縮できることが知られている。
【発明の開示】
【0007】
本発明の実施形態の一側面は、所望の動作を生じさせるには不十分な方法で、麻痺患者の腕に或いは随意筋を備える体の他の部分にNMESを適用することに関する。本発明の典型的な実施形態では、その所望の動作は、麻痺した部分を動作させる或いは動作を助けるアクチュエータにより提供されまたは支援される。代替的にまたは付加的に、患者は必要な付加的な神経信号を提供する(例えば、神経経路を介して)。いくつかの実施形態においては、そのアクチュエータは、動作に抵抗するために及び/又は所望の経路へ動作を導くために用いられる。選択的に、コントローラは、患者による複数の所望の動作および期待される反応を、様々な刺激および支援レベルに対して、その上に記憶するよう提供される。
【0008】
本発明の典型的な実施形態では、NMESは、低すぎてそれ自体で動作を実現することができない強度で提供されるが、患者の運動皮質中で生じる神経刺激と組み合わせて腕または体の他の部位を動かすことができ或いはNMESが提供されない場合よりもより効果的に動かすことができる。それは、例えば、その体の部位を動かすための運動皮質の訓練に役立つ筋肉のフィードバックを生成することによりなされる。いくつかの実施形態においては、NMESは、これを行うために、あまり強い必要はなく、或いはあまり正確に方向づけされている必要はない。この応用は腕に適用されるときはいつでも、随意筋を持つ他の体の部位いずれであっても或いは体の部位の組み合わせであっても代わりに用いることができることが理解されよう。選択的に、同じ腕からの、或いは患者の他の腕の対応する筋肉からの、或いは他人の腕からのEMG信号を用いて、NMESのパターン(例えば、タイミング及び/又は強度)を決定する。
【0009】
本発明の実施形態の他の側面は、随意運動を経る一つの腕、選択的に健康な腕からのEMG信号を使用して、麻痺患者の腕であるもう一方の腕に適用されるNMESのパターンを決定することに関する。選択的には、また、麻痺した腕からのEMG信号を使用し、NMESのタイミングを少なくとも決定する。選択的には、健康な腕は、患者のもう一方の腕であり、患者は鏡対象パターンで両腕を同期して動かそうと試みる。
【0010】
選択的に、本発明のこれらの実施形態のいずれかにとっては、EMGおよびNMESは、一つの筋肉に対してNMESをオン又はオフすることよりもむしろ、二つ以上の筋肉の協調的な一連の収縮、及び/又は、一連のNMESの強度を含んでいる。
【0011】
協調的な一連の筋収縮のフィードバックを運動感覚を介して提供することによって、患者の神経系は神経刺激のための代替的な無傷の経路または運動皮質中の代替的な位置を利用するよう促され、患者は自身で自分の腕をより効率的に動かすことを学習することができる。NMESが、EMGにより測定されるような患者自身が生み出す微弱な神経刺激と協調する場合、これは特に正確であろう。
【0012】
選択的に、ロボットアーム等、そのアームの動作をモニタする及び表示する装置は、麻痺した腕に使用され、また選択的に、健康な腕にも使用可能である。アームの動作についての情報は、患者へのさらなるフィードバックを、またNMESを制御するためのフィードバックを、および、患者のリハビリテーションの進捗を監視する理学療法士へのフィードバックを提供する。また、ロボットアーム或いは同等の装置は、麻痺した腕を機械的に動かすことができ、違った種類の運動感覚のフィードバックを提供することによりNMESを補完する。また、ロボットアームは、筋肉に逆らって働く力を与え、腕の増強の進展を測定するだけでなく腕を増強する方法をも提供する。
【0013】
したがって、本発明の典型的な実施形態によれば、麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施すための装置であって、
a)麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位の随意筋に適用されるように適合され、少なくとも1つのセンサが少なくとも1つのEMG信号を生成する、少なくとも1つの筋電図検査法(EMG)センサと、
b)麻痺した体の部位の少なくとも1つの随意筋を刺激するために適合された神経筋電気刺激(NMES)装置と、
c)前記NMES刺激がそれ自体でコントローラにより期待される動作で前記麻痺した体の部位を動作させるのに十分でないように健康な体の部位からのEMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成して、NMESを制御し且つ麻痺した体の部位の動作を期待するコントローラと、を含む装置が提供される。
【0014】
選択的に、健康な体の部位の少なくとも1つの筋肉が、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉に対応する。
【0015】
本発明の典型的な実施形態では、前記コントローラが、前記EMG信号を処理して、前記NMES信号の少なくとも1つの性質を決定するように構成されている。
【0016】
本発明の典型的な実施形態では、コントローラは、NMESにより麻痺した体の部位を刺激させ、EMG信号の感知時に健康な体の部位が生成する動作に対応する動作を作り出すように構成されている。選択的に、コントローラは、健康な体の部位の対応する筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉の少なくとも1つの刺激の強度を増加させるように構成されている。
【0017】
本発明の典型的な実施形態では、麻痺した体の部位の少なくとも一つの筋肉が筋肉の拮抗対を含み、コントローラは、筋肉の拮抗対の一方の筋肉に対応する健康な体の部位における筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、筋肉の拮抗対のうちの他方の筋肉の刺激の強度を減少させるように構成されている
【0018】
本発明の典型的な実施形態では、コントローラとNMES装置のうち1つ又は双方は、自身で麻痺した体の部位を動かすことができない少なくとも何人かの患者に対しては、刺激強度が、患者の脳からの神経刺激がない場合には刺激された筋肉を収縮させるのに不十分となるように、しかし患者の脳からの神経刺激がある場合にはその筋肉を収縮させるのに十分となるように構成されている。
【0019】
本発明の典型的な実施形態では、少なくとも1つのEMGセンサは、複数のEMGセンサを含んでおり、各EMGセンサは健康な体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるために適合されている。選択的に、各EMGセンサは別々のEMG信号を生成する。選択的に、NMES装置が、麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に独立して刺激を与えるよう適合されている。選択的に、前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分が、複数のEMGセンサを適合させて適用する健康な体の部位の筋肉または筋肉の部分に対応する。選択的に、コントローラは、前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分のNMES刺激の強度が、複数のEMGセンサからのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている。選択的に、コントローラは、前記複数の筋肉または筋肉の部分の各々のNMES刺激の強度が、対応する筋肉または筋肉の部分からのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている。
【0020】
本発明の典型的な実施形態では、前記麻痺した体の部位は、対となっている体の部位である。選択的に、麻痺した体の部位が腕である。代替的にまたは追加的に、麻痺した体の部位が足である。
【0021】
本発明の典型的な実施形態では、健康な体の部位が患者に属している。代替的に、健康な体の部位が違う人間に属している。
【0022】
本発明の典型的な実施形態では、コントローラが、EMG信号の処理後の形状に少なくとも部分的に依存する刺激強度を生成する。選択的に、EMG信号の処理後の形状は、EMG信号のタイミングに合わせて引き延ばされる。代替的にまたは追加的に、EMG信号の処理後の形状が、EMG信号の発生時に健康な体の部位が経験していた動作の鏡像となる健康な体の部位の動作により生成されるであろうEMG信号に対応する。代替的にまたは追加的に、EMG信号の処理後の形状が、EMG信号からの時間遅延である。
【0023】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、健康な体の部位の位置をモニタする第1の位置検知装置を含む。選択的に、その装置は、健康な体の部位の位置を機械的に変化させる第1のアクチュエータを含む。
【0024】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、麻痺した体の部位の位置をモニタする第2の位置検知装置を含む。
【0025】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、前記コントローラの制御に基づいておよび前記期待動作に従って、麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる麻痺アクチュエータを含む。
【0026】
また、本発明の典型的な実施形態によれば、麻痺した体の部位を有する患者の部類にリハビリを施すために適合された装置であって、麻痺した体の少なくとも一つの随意筋を刺激するよう適合された神経筋電気刺激(NMES)装置を含み、刺激の強度はそれ自体で前記筋肉を収縮させるほどではないものの、同時に前記部類の患者がその体の部位を動作させようと試みるとき、刺激の強度は前記筋肉を収縮させるのに十分である、装置が提供される。
【0027】
本発明の典型的な実施形態では、その装置は、麻痺した体の部位の随意筋に適用するために適合される少なくとも1つの麻痺EMGセンサを含み、少なくとも1つの麻痺EMGセンサは少なくとも1つの麻痺EMG信号を生成する。選択的に、コントローラは、少なくとも1つの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成する。選択的に、麻痺した体の部位に適用するために適合された少なくとも1つの麻痺EMGセンサは、それぞれが麻痺した体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるように適合された、およびそれぞれが別々の麻痺EMG信号を生成する、複数の麻痺EMGセンサを含む。選択的に、NMES装置は、麻痺EMG信号センサが適用されるよう適合された麻痺した体の筋肉または筋肉の部分を刺激するために適合されており、コントローラは、それぞれの筋肉または筋肉の部分の刺激の強度をその筋肉または筋肉の部分からの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存させるよう構成されている。
【0028】
本発明の典型的な実施形態では、前記第1のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0029】
本発明の典型的な実施形態では、前記第1のアクチュエータは、前記健康な体の部位の動作範囲を制限することによって前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0030】
本発明の典型的な実施形態では、前記第2のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0031】
本発明の典型的な実施形態では、前記第2のアクチュエータは、前記麻痺した体の部位の動作範囲を制限することによって、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる。
【0032】
また、本発明の典型的な実施形態によれば、麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施す方法であって、
a)患者または他の人間に、麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位を動かしてもらい、
b)動かしている間、その健康な体の部位からEMG信号を検出し、
c)NMES信号の少なくとも1つの性質を決定するために前記EMG信号を処理し、
d)前記処理に応じて、麻痺した体の部位にNMES信号を適用し、およびe)前記NMES刺激によって最大限でも部分的に前記麻痺した体の部位を動かすことを含む方法が提供される。
【0033】
選択的に、前記NMESは、前記EMG信号に従ったタイミングで適用される。代替的にまたは追加的に、前記NMESは、前記EMG信号に従った強度で適用される。
【0034】
本発明の典型的な実施形態では、その方法は、EMG信号を検出中に健康な体の部位を動作させるのと同じ動作パターンで、NMESを適用しながら、患者に麻痺した体の部位を動かすよう試みさせることを含む。選択的に、EMG信号を検出することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部位からEMG信号を検出することを含み、NMESを適用することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に対応する麻痺した体の部分の複数の筋肉または筋肉の部分にNMESを適用することを含む。選択的に、麻痺した体の部位の試みられている動作パターンの時間間隔中に麻痺した体の部位のそれぞれの筋肉または筋肉の部分に適用されるNMESの強度は、健康な体の部位の動作パターンにおける対応する時間間隔中に、健康な体の部位の対応する筋肉または筋肉の部分から検出されるEMG信号に少なくとも部分的に依存する。
【0035】
本発明の典型的な実施形態では、麻痺した体の部位は、動作がアクチュエータにより機械的に提供される。選択的に、前記アクチュエータは、前記検出されたEMGと同期する。代替的にまたは追加的に、前記アクチュエータは、前記適用されるNMESと同期する。代替的にまたは追加的に、麻痺した体の部位は、アクチュエータの動作によって機械的に支援される。代替的にまたは追加的に、麻痺した体の部位の動作が、アクチュエータによって制限される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の典型的な実施形態は図面を参照して以下の部分に記述される。図面は概して共通の尺度を持つものではなく、異なる図面間において同一又は関連する特徴に対して同一又は同様の符号が用いられる。
【0037】
図1は、健康な腕の対応する筋肉からのEMG信号によって案内される麻痺した腕の幾つかの筋肉へ、NMESを適用するための装置を示す。麻痺した腕を持つ患者またはその他の人のいずれかに属している健康な腕102は、その皮膚にEMG電極が取り付けられている。その腕を持つ人は特定のパターンでその腕を自発的に動かし、それによりその筋肉中においてEMG電圧の一定の時間依存パターンが発生する。選択的に、4つのEMGチャネルがあり、それぞれのチャネルは二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋の4つの筋肉それぞれからのEMG信号を測定する。それぞれのチャネルは、筋肉の各端部付近からの信号を記録する2つの電極と、中央部の1つの参照電極とからなる、3つの電極を用いている。例えば、電極104は二頭筋を測定し、電極106は三頭筋を測定し、電極108は屈筋を測定し、及び電極110は伸筋を測定する。選択的に同様の配置は大胸筋と三角筋の対のような他の筋肉の対のグループに対しても配置されることは、本発明の詳細な説明から理解されよう。その腕が自発的に動くとき、これらの電極は、その腕のその動作を生み出している筋収縮のパターンに対応するEMG信号を、ケーブル束112,114,116,118を介してEMG装置120へ送信する。このEMG装置、或いは別途のコントローラは、例えば増幅、デジタル化、及び/又は記録等、EMG信号の予備処理をする。
【0038】
その後、EMG信号は、ケーブル122を介して、パーソナルコンピュータ等である、或いは特別の専用ハードウエアを含むコントローラ124へ伝送される。選択的に、そのコントローラは、さらに、例えばフィルタリング、整流、平滑化、タイミングの変更、或いはシーケンスの一部のカットアンドペースト等を異なった順序で実行することにより、EMG信号を処理する。選択的に、その信号処理は自動的になされ、或いは理学療法士の制御に基づいて部分的又は全体的になされる。図2は、一つのチャネルからのフィルタリングされた未加工のEMG信号202、整流信号204、その信号の二乗平均を連続した時間間隔、例えば10ミリ秒毎、のそれぞれにおいて計算した平滑化整流信号206のプロットを示す。平滑化整流信号は、個々の筋繊維の電位変化に関連する高周波ノイズを除去中の、そのチャネルによって測定される筋肉または筋肉の部分の全体的な収縮の程度の測定値である。選択的に、平滑化整流EMG信号は、同じ動作パターンが何度も繰返される間に平均化される。選択的に、EMGセンサは、筋肉の幾つかの異なる部分から生じるEMG信号を加算または平均化する、つまりこれは信号処理によりなされる。信号処理の選択可能な形式は、例えば、健康な手足上でEMGを測定すると同時に健康な手足の実際の動作を測定することによって、EMG信号が所望の動作に起因することが明らかとなるように、EMG信号を検証している。選択的に、信号処理の一つ以上のパラメータは、理学療法士によって制御される。本発明のいくつかの実施形態においては、平滑化整流EMG信号は、例えば、高いまたは低い測定値を要素とせずに、残りの測定値を多重反復後に平均化するなどして、異常なEMGの測定値を計算に入れずに生成される。いくつかの実施形態においては、EMGが測定された後、例えば多重EMG信号を収集および平均化することができる時間遅延をもってNMESが適用される。
【0039】
また、コントローラ124は、ケーブル128を介してNMES装置126を制御する。選択的に、コントローラ124は、NMES装置に対して、4つのチャネルのそれぞれにおいてNMES信号を生成するよう命令する。4つのチャネルにおける信号は、ケーブル130,132,134,136を通って電極138,140,142,144へ進み、患者の麻痺した腕146の二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋(或いは選択的に場合によっては他の筋肉対)をそれぞれ刺激する。選択的に、各チャネルにおけるNMES信号は、健康な腕で行われたような動作と同様の動作を麻痺した腕において実現させる時間依存強度が与えられている。例えば、4つのEMGチャネルのうちの対応する1つからの処理された信号の強度に依存する各NMESチャネル中の信号強度を生成することによって、これは為される。例えば、NMES信号は、対応するチャネルにおいて、処理されたEMG信号の強度に比例する、すなわち、処理されたEMG信号の強度の一定の単調関数となる。
【0040】
また、選択的に、NMES信号は、1つ以上の他のチャネルからのEMG信号に依存する。例えば、二頭筋と三頭筋は互いに逆に作用するので、二頭筋と三頭筋を制御するNMES信号は、選択的に、三頭筋からのEMG信号に関して負の係数を持つ、二頭筋からのEMG信号と三頭筋からのEMG信号との一次結合に依存する。一次結合が正であれば二頭筋のみが刺激されており、一次結合が負であれば三頭筋のみが刺激されている。選択的に、同様の方法は、また、互いに逆に作用する屈筋と伸筋等の他の主動筋‐拮抗筋の対に用いられる。
【0041】
選択的に、NMES信号は、対応する筋肉からのEMG信号に直接的にではなく基づいており、EMG信号に関連した動作から何らかの方法で反転された動作を生成するために修正される。例えば、左腕からEMG信号が生じ、右腕にNMES信号が適用されれば、その後選択的に、NMES信号は、2つの腕における対応する筋肉が同時に収縮する場合に生じるように、その鏡像というよりもむしろ、左腕の動作と同じである右腕中の動作を実現するように変換される。代替的にまたは追加的に、その2つの腕が左腕と右腕であろうとなかろうと、健康な腕の動作が周期的であれば、その後、NMES信号は健康な腕の動作から180度位相がずれた麻痺した腕の動作を実現するように変換される。NMESにおけるそのような変更は、例えば、歩き方や自転車の乗り方を再学習する患者において、左右の足に対して用いると特に有用である。
【0042】
また、選択的に、麻痺した腕には、EMG電極148,150,152,154が取り付けられている。これらのセンサは、ケーブル156,158,160,162のそれぞれに沿って、EMG装置120の4つの付加的なチャネルへ信号を送信する(従って、EMG装置120は計8つのチャネルを有する)。これらの付加的なEMG信号は、健康な腕102からのEMG信号の処理と同様、EMG装置およびコントローラ124により処理される。また、選択的に、麻痺した腕146からのEMG信号はNMES信号を制御する際にコントローラ124によって使用される。患者の感覚運動皮質は依然として麻痺した腕146中の微弱な神経刺激を生成する能力があるので、たとえこれらの神経刺激が弱すぎて麻痺した腕を動かすことができないとしても、EMG信号は発生し得る。麻痺した腕においてNMES信号を対応するEMG信号との間でタイミングをとることによって、患者へ運動感覚のフィードバックを提供することにより、麻痺した腕は、患者が腕を動かそうとする試みに応じて動作可能である。代替的にまたは追加的に、麻痺した腕146におけるEMG信号は、例えば、図3の記載において以下で検討されるようなロボットアームによって、受動的に、麻痺した腕146を動かすことにより生じ得る。
【0043】
また、選択的に、コントローラ124は、NMES信号の強度を制御する際に、他の情報を用いる。例えば、健康な腕には、肘の曲がり具合を測定する歪みセンサ等のセンサ164、および指の伸長具合を測定するセンサ166が備えられており、さらに麻痺した腕にも同様のセンサ168と170とが備えられている。それらセンサは、腕と指の曲がり具合を測定するためのセンサデータを処理するユニット172へ入力し、この情報は例えばケーブル174によってコントローラ124へ伝達される。選択的に、ユニット172とコントローラ124は、単一のコントロールユニットの一部分である。選択的に、これらのセンサは一本の腕にのみ使用される。選択的に、特にEMGとNMESがさらなる筋肉に使用される場合には、腕および手の位置の他の側面を測定する他のセンサが使用される。他の形式の様々なセンサは、追加的にまたは代替的に、腕又は手の位置を測定するために用いられ、例えば、腕は、以下に記載される図3に示すように、それ自体の状態を測定するためのそのようなセンサを備えたロボットアームに取り付けられる。或いは、腕と手の所定点(key points)にLEDを取り付けてそれらの位置をビデオカメラを用いて追跡記録し、或いは、腕と手の所定点に磁場センサを取り付けて外部磁場及び/又は磁場の勾配をかける。体の部分の位置と方向をセンシングする技術分野における当業者にとっては、他の方法は明らかであろう。
【0044】
麻痺した腕の位置は、例えば、NMES信号への負のフィードバックとして使用可能である。リハビリテーションの進行中、患者自身の神経刺激はより強くなり及び/又はより効果的になり、例えば筋肉の拮抗対間をより明確に区別するので、同じ腕の動作を実現するのであっても、NMES信号を減少させることができる。また、この種のフィードバックは、所定のリハビリテーション活動内で使用可能である。例えば、患者が一時的に腕の動作を継続することが困難となれば、患者が再び腕の動作を開始できるまで、一時的にNMESの強度を増加させる。選択的に、この場合、コントローラは、例えば麻痺した腕におけるEMG信号レベルに注目することによって、患者が単に休憩していることと患者が腕を動かそうとして失敗していることとを区別する。
【0045】
健康な腕の位置は、例えば、健康な腕における筋肉の収縮具合の一つの指標として、健康な腕からのEMG信号を補うために用いることができる。代替的にまたは追加的に、両腕の位置のデータを用いて、患者のリハビリテーションの進捗状況をモニタすることができる。
【0046】
図3は、図1の健康な腕か麻痺した腕のいずれか一方であって、ロボットアーム300が取り付けられている腕302を示す。上腕はホルダ304により把持されており、前腕はホルダ306により把持されている。上腕ホルダ304は、制御可能ボールジョイント310に接続された伸縮可能ロッド308に取り付けられており、同様に前腕ホルダ306は、制御可能ボールジョイント314に接続された伸縮可能ロッド312に取り付けられている。ボールジョイント310および314は、剛性コネクタ316を用いて互いに接続されている。ボールジョイントと伸縮可能ロッドは、この場合、各ボールジョイントに対し自由度が2、および各伸縮可能ロッドに対し自由度が1である、それら全ての自由度のためのアクチュエータとセンサの双方を含んでいる。センサは腕302の肘の曲がり具合を感知可能であり、アクチュエータは肘を曲げる或いは伸ばす、及び/又は患者による肘の曲げ伸ばしに抵抗する力を加えることができる。選択的に、アクチュエータとセンサは、例えばどの筋肉がリハビリ中か等に依存する、より多くの又はより少ない自由度を有しており、また選択的に、ロボットアームは、例えば、腕、手、指上の別の位置である、腕302上の追加的な位置に取り付けられる。センサからアクチュエータへの信号は、図3に示されていない、ロボットアーム制御ボックスにより処理される。
【0047】
ロボットアームは選択的に、図1中のセンサ164,166,168,170と同じように使用される。さらに、ロボットアームが制御された方法で自力で動作可能であるという事実は、麻痺した腕に使用される場合であって、患者へ運動感覚のフィードバックを提供する際に、それがNMESを補完することができるということを意味する。ロボットアームは、筋肉それ自体の力に基づいて筋肉を収縮させることなく麻痺した腕を動かすことができるので、NMESが提供するものよりも様々な種類の運動感覚のフィードバックを提供し、場合によってはフィードバックの両方の形式がリハビリテーションに有用である。例えば、NMESは単独では滑らかな及び正確な動作を実現することができない場合があり、ロボットアームがNMESにより生じる動作の補正及び平滑化に貢献することができる。
【0048】
選択的に、ロボットアームの受動及び能動モードの双方は、NMESと併用される。ロボットアームにより生成される動作は、NMESによる筋収縮により補助される。能動的手法で患者がロボットアームを動かすとき、NMES信号はそれ相応に調整される。
【0049】
選択的に、麻痺した腕に取り付けられたロボットアームの動作は、健康な腕の動作に関連したEMGの測定値に基づいている。
【0050】
リハビリテーションを提供する場合、ロボットアームにより様々な形式の動作を支援することができ、例えばそれは下記のうちの少なくとも1つからなる。
【0051】
a)受動的動作。ロボットアームが動かされ、患者はロボットアームと共に動く。
【0052】
b)抵抗的動作。患者はロボットアームを動作させ、抵抗力を受ける。その抵抗力は様々な大きさとすることができ、また、全方向に均一とすること或いは指向性とすることができる。
【0053】
c)支援的動作。患者がロボットアームを動作させるとき、腕における正のフィードバックが、患者により動作させられている方向に動作の力を増加させる。
【0054】
d)力場動作。患者がロボットアームを動作させる。ある軌道に沿って、一定レベルの抵抗力(又は無抵抗力)に直面する。その軌道からの逸脱は許容されず、逸脱すると抵抗力を受ける。「正しい」軌道に沿った動作は、抵抗力なしで為し得、場合によっては支援を受けることができる。軌道を取り囲む体積(volume)中では、抵抗力の増加が見られる。体積の周囲では、抵抗力のより一層のさらなる増加が見られる。体積の外側では、動作を妨げることができる。本発明の典型的な実施形態では、軌道上にない場合に軌道へ向ける、矯正力ベクトルが適用される。選択的に、矯正力に代えて、軌道からの距離の関数として抵抗力を変化させることで、ロボットアームの動作が自然と軌道へ戻されるよう促す。選択的に、その力は、その経路の方向に働く。代替的に、その力は、一定方向だけに作用する抵抗力であってもよい。
【0055】
この動作形式は所望の動作における患者の訓練に役立つ。
【0056】
e)鏡映動作(mirrored motion)。ロボットアームの動作は、例えば両手足のリハビリテーションにおいては、異なった要素の動作の軌道を鏡映するよう要求される。
【0057】
f)自由動作。患者は望み通りの方向にロボットアームを動かし、場合によってはフィードバックを受ける。患者(又は理学療法士又はヘルパー)がロボットアームを動作させている最中、装置は、その後再生するためにそれを記録することができる。再生モードにおいて、記録済みの動作(又は経路)は、場合によっては他のモードで再現される。選択的に、記録済みの経路は、例えば自動的に又は手動で修正される(例えば、平滑化など)。
【0058】
g)全体的な力場(General Force Field)。特定の軌道には関連しない、力場及び/又は支援場(assistance field)が定義される。例えば、ある範囲の軌道、すなわち実際の又はシミュレーションされた仮想の状態(例えば、水中、障害のある場所)が、ユーザの実施を許容するであろう。
【0059】
h)局所的な力場。力場は、狭い局所にのみ、及び/又は、1次元または2次元にのみ適用される。
【0060】
i)制限的動作。被験者の体の少なくとも1つの位置を支持する或いはそれが動かないようにする。選択的に、そのような位置と動作位置との間の装置上の角度が測定される。一例を挙げれば、肩の動作のみ許容する専用の装着帯で肘を固定する。いくつかの実施形態においては、その制限は部分的であり、及び/又は、可動要素(例えば腕)によって提供される。
【0061】
j)初期動作。患者が動作を開始すると(例えば、1cmの動作又は100グラム重量)、ロボットアームが、空間におけるその動作を完結する或いは患者がその動作を完結するのを手助けする。その完結は、軌道の全てにおけるものであっても、軌道の一部におけるものであってもよい。
【0062】
k)暗示的動作。ロボットアームが動作を開始し、患者がそれを完結する。ロボットアームは、様々な方法で(例えば、動作開始後、本明細書中に述べるモードのうちの1つに変更することによって)その後の動作を支援する。患者がその動作を逸脱した場合、ロボットアームは例えば音声による合図等の合図を発する。単一の動作軌道のうちの様々な部分には、それぞれ、装置開始の定義付けを持たせることができる。選択的に、患者の動作が遅すぎる場合には、ロボットアームは動作を開始する。
【0063】
l)合図動作。患者は、異なるモードの開始に応じて、動作前にシステムから合図を受け取る。その合図としては、例えば、ロボットアームの振動、皮膚上の刺激パッド、音声又は視覚的な合図等を用いることができる。本発明のいくつかの実施形態においては、合図の強度及び/又はそのタイミング及び/又は他の継続中の活動(例えば、画像表示やゲーム)が、視覚と手の協調関係等の異なった治療法間の連携の訓練を支援するために使用される。動作合図は、運動感覚の訓練に用いることができる。
【0064】
m)教育モード。ロボットアームは動作を学ぶ。一例を挙げれば、理学療法士が動作を実行すると、各点(point)における動作パラメータが記録され、その後、運動に利用することができる。そのシステムに学ばせる他の方法は、理学療法士が自身の動作で辿る経路に従うことである。理学療法士は、コントローラを用いて、教えようとする点を示すことができ、または連続的なモードを定義することが可能であり、それにより軌道全体を学習させることができる。選択的に、経路と点は再生の前に編集される。選択的に、経路に対しては、再生前に、例えば平滑化や動作点の同定等の処理がなされる。
【0065】
したがって、本発明のいくつかの実施形態においては、ロボットアームは、等運動性の、同緊張の、均衡の運動のうちの少なくとも1つを提供することができる。
【0066】
当然のことながら、ロボットアームが追跡する軌道を定義する際には、速度パラメータを含めることが可能である。例えば、ユーザを支援し又は促し又は予測して、特定の速度でロボットアームを動かす。その速度は、例えば、絶対的ないし相対的である(例えば、均一な速度または不均一なプロファイルに一致する速度を要求している)。
【0067】
選択的に、角度の軌道を定義し、ロボットアームの角度方向に対する制限を認識する。いくつかの実施形態においては、その制限は一次元である。他の実施形態においては、それは2又は3次元である。
【0068】
特定のリハビリテーションのシナリオにおける、速度、角度、空間の軌道は、上述の動作形式の別々の形式にそれぞれ所属させることが可能である。例えば、空間の軌道は力場形式とすることができ、一方、速度の軌道は自由又は支援形式である。また、軌道の形状及び/又はそのパラメータは、時間の関数として及び/又は以前の動作の関数として、軌道に沿って変化可能である。例えば、軌道の前半部分において適切に(或いは期待されているよりも良好に)実行された動作の形状に対しては、軌道の後半部分において提供する支援はより少なくてよい。
【0069】
軌道は絶対的であってもよく、例えば、ロボットアーム上の休止点又は別の点の関数として定義される。他の実施形態では、軌道は純粋に相対的であり、例えば、開始点にもかかわらず、一直線に腕を動かすよう患者に要求する。他の実施形態では、動作開始直後に、例えば患者が立っているところか座っているところかどうか、またどんな種類の手の動作が期待されているかを示す軌道の出だし等、残りの軌道の形状を決定するという点において、部分的に相対的である。
【0070】
いくつかの実施形態においては、以下に示すように、多数の点が定義されている場合には、各点の軌道を別々の形式とすることが可能である。いくつかの実施形態においては、定義されているものは、2つ以上の点の関数としての軌道である。例えば、2つの点を用いて肘の配置(例えば、骨の間の角度)が定義されれば、肘の動作における軌道の制限を定義することができる。そのような動作は、空間中において相対的であって(例えば、2つの位置の比較)、また絶対的でなくてもよい(例えば、装置の参照位置と比較して)。本発明のいくつかの実施形態においては、それらの全てがスカラー量又はベクター量である、速度、力、及び/又は回転に関連づけられ得る、空間中における各点のような、テンソル又はテンソル場が提供されることに留意すべきである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態においては、軌道の異なる部分に対して又は空間の異なる部分に対して(例えば、特定の腕に対して)、異なるモードが定義される。選択的に、モードは、実際の動作に基づいて始動する。例えば、動作速度がある閾値以下であれば、より支援型のモードを提供する。同様に、閾値を超える小休止は、より支援型のモードを示唆する。正確な動作は、より低支援型のモードを示唆する。
【0072】
図4は、本発明のその他の典型的な実施形態に記載の配置を示すものであり、麻痺した腕146のみを用いている。図1と同様に、麻痺した腕の二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋には、各筋肉に対して3つの電極となるように、EMG電極148,150,152,154をそれぞれ取り付け、ケーブル156,158,160,162に沿ってEMG装置120へEMG信号が伝達され、予備処理後、その信号はコントローラ124へ伝送される。図1と同様に、コントローラ124は、EMG信号を使用して、NMES装置126により送信されるNMES信号の強度とタイミングを決定し、NMES電極138,140,142,144を介して二頭筋、三頭筋、屈筋、伸筋を刺激する。
【0073】
図4のNMES装置126によって送信されたNMES信号は、それ自体、麻痺した腕146を著しく動作させるほど充分な強度を有しておらず、また選択的にこれは図1においても当てはまる。しかし、NMES信号は、患者自身の神経刺激と一緒になれば、その腕を動かすには充分な強度を有する。従って、麻痺した腕は患者がそれを動作させようとするときにのみ動作し、そして、その動作により与えられる運動感覚のフィードバックは、患者における神経刺激のための代替経路、又は同じ筋肉に神経刺激をもたらすための運動皮質中の代替位置の発達をさらに促進させ、最終的には、患者は自身で麻痺した腕を動かすことができるようになる。これは、動作が、2つ以上の筋肉の協調的な一連の収縮を必要とする場合に特に有用であろう。選択的に、リハビリテーションの進行中、患者が麻痺した腕を動作させるために必要とされるNMES信号が低くなるにつれて、NMES信号を低下させる。
【0074】
選択的に、患者の運動皮質からの神経刺激がない場合、NMES信号は、平均的な健常者又は平均的な麻痺患者に対して動作を生成するのに必要とされる強度の100%から120%であり、或いは特定の患者に対してはそのレベルが調整される。代替的に、NMES信号は、これらの人々のいずれに対してもその強度の120%から140%とされ、または80%から100%、または60%未満とされる。選択的に、こられの人々のいずれに対しても、NMES信号は、動作させようと努力する際に運動皮質から生じる神経刺激の存在下で動作を実現するのに必要とされるレベルの100%から120%であり、または120%から140%、または140%から200%、または200%よりも大きい。
【0075】
選択的に、NMESは、平均的な健常者が神経刺激を筋肉の一部分へ自発的に導く際に達成する能力と少なくとも同じくらいの空間的精度で筋肉の一部に狙いを絞り込んでいる。代替的に、NMESは、この高精度よりも低めで狙いを絞り込むが、少なくともこの高い精度の半分、或いはこの高い精度の半分未満ではあるが、少なくともこの高い精度の4分の1、或いはこの高い精度の4分の1未満である。
【0076】
図1および図4に記載の手順の特徴は、リハビリテーションを容易にするために、患者のニーズに合わせて変更可能である。いくつかの実施形態を以下に示す。
【0077】
EMGおよびNMESは、図1と図4において使用されており示されている筋肉を4つとも用いる必要はない。選択的に、初期には、二頭筋と三頭筋のみが使用される。その後、患者は二頭筋と三頭筋とを効果的に使う能力を幾分得た時点で、屈筋と伸筋がEMGおよびNMESチャネルに追加される。これら4つの筋肉は、胸筋や三角筋等の他の筋肉に加えて、腕の全体制御の基本をなす。その後、個々の指、及び/又はもう一方の手首および手が加えられ、微細な運動制御を向上させる。腕以外の体の部位のリハビリテーションのためには、当然ながら、他の筋肉群が選択される。
【0078】
選択的に、NMESの強度は、種々のソースからのフィードバックに依存して、およびリハビリテーションプログラムの当面の目標に依存して変更される。前述のように、選択的に、患者が神経刺激の生成および自身による筋肉の動作の能力を回復するにつれて、NMES信号を減少させる。代替的に、当面の目標が退化した筋肉の強化であれば、その筋肉がより強くなるにつれて、選択的に、NMESの強度を増加させる、そうするとより激しい運動となり、その運動から恩恵を受けることができる。この場合、選択的に、筋肉がより強くなるにつれて増加するおもり又はロボットアーム等のような抵抗力に逆らって腕を動作させるので、同じ量だけ腕を動作させるためにはNMES信号をより強くする必要がある。
【0079】
神経刺激の代替経路の発達を促すために運動感覚のフィードバックを用いることに加えて、上述のような、他の種類のフィードバックを選択的に用いて、筋肉をより効果的にコントロールする方法を患者が学習できるよう支援する。例えば、NMES刺激により神経刺激が補完される場合の腕の動作を観察することは、患者が自身の腕を動かすために加える力を調整するのに役立つ。同様に、患者による意識的な学習のためのそのようなフィードバックは、腕の動作を測定及び記録する図3のロボットアーム等の装置により、および処理済みのEMG信号により提供することができる。例えば、患者は、健康な腕が所望の動作を実行しているときに、麻痺した腕からのEMG信号を、健康な腕により生成されるEMG信号に更に酷似させようと試みることができ、または、患者は、麻痺した腕からのEMG信号を、おそらく健康な腕からの若しくは同様のリハビリテーションを経験した他の患者の麻痺した腕からの記録済みEMG信号を考察することにより構築されたいくつかのテンプレートに更に酷似させようと試みることができる。
【0080】
図1に示す配置においては、患者のもう一方の腕が健康な腕として用いられれば、その後、選択的に、患者は両腕を鏡像動作で同調して動作させるよう試みる。選択的に、健康な腕のEMG信号に基づくNMES信号は麻痺した腕を動作させることができ、患者は両腕を同時に動作させようと試みているので、患者は麻痺した腕から運動感覚のフィードバックを受け取る、このことは神経刺激の代替経路の発達の促進を支援する。本発明のいくつかの実施形態においては、健康な腕の鏡像動作に対応する麻痺した腕の動作は、部分又は全体において、ロボットアーム300によって支援される。
【0081】
選択的に、NMES信号は、麻痺した腕の能力に適合させられる。例えば、麻痺した腕の筋肉がNMESに対して通常のものと同じくらい迅速に反応する能力がなければ、その後、選択的に、NMES信号は減速され、或いは高周波成分が低減若しくは除外される。筋肉がより迅速な反応の能力を回復するにつれて、NMES信号は再び速度が向上される。NMES信号の速度は、麻痺した腕の動作に対するセンサデータに応じて自動的に、または、患者を評価するためのそのようなセンサデータを状況に応じて使用する理学療法士により手動で、調整される。麻痺した腕の動作を支援するためにNMESと連携してロボットアームを用いる場合、選択的にロボットアームの動作はNMESと共に減速する。たとえNMESを用いることなく麻痺した腕の動作を支援するためにロボットアームが使用されたとしても、例えば、ロボットアームが患者自身の神経刺激による動作に対してより大きく貢献するよう患者を支援するであろう場合、またはリハビリテーション中の何らかの他の理由に役立つであろう場合には、ロボットアームの動作は状況に応じて減速する。
【0082】
図5Aから5Gは、体性運動皮質内の脳卒中に続いてよく起こる問題、すなわち二頭筋と三頭筋或いは屈筋と伸筋のような拮抗対を形成する2つの筋肉の間を適切に区別するための患者の神経刺激の障害、を抱えている患者にリハビリを施す手順を示している。図5Aに示すように、患者が自身の手を開閉しようとする際の、伸筋からのEMG信号402、および屈筋からの信号404は、しきい値406よりも高いので、両筋肉を収縮させるだけの強さがある。しかし、両筋肉が同時に収縮すると、それらは互いに逆に作用するので、手はほとんど動作しない。まず、図5B,5C,5Dに漸次示すように、患者は、屈筋と伸筋の双方の全体的な活動を、収縮のしきい値以下に低下させることを学ぶ。その後、図5E,5F,5Gに示すように、患者は、屈筋を緩めた状態を維持しながら、伸筋の活動を増加させるよう教えられる。例えば、これは、患者が伸筋を収縮させよとする場合に運動感覚のフィードバックを増加させて、伸筋にNMESを適用することにより為される。
【0083】
要約のために、本発明のいくつかの実施形態において使用可能なリハビリテーション方法のいくつかを以下に記載した。
1) 健康な腕におけるEMGを記録し、リアルタイムであるかどうかにかかわらず、麻痺した腕に同じパターンのNMESを適用する。
2) 麻痺した腕におけるEMGで測定されるとおりに、麻痺した腕における神経刺激を補完するようにNMESの強度を調整する。
3) EMGが弱い場所である麻痺した腕の部分にNMESの狙いを定める。
4) 麻痺した腕の反応時間の低下に合わせてNMESを減速させる。
5) 健康な腕におけるEMGに基づいてNMESを適用しながら、患者に両腕を同時に鏡像で動かしてもらう。
6) 健康な腕におけるEMGに基づいて(ただし修正して)NMESを適用しながら、患者に両腕を同時に鏡像でなく、及び/又は180度の位相差の循環動作で動かしてもらう。
7) 健康な腕による動作の多くの繰返しの間の平均EMGに基づいてNMESの基礎を形成する。
8) 麻痺した腕の位置を検知し、NMESに対して負のフィードバックを用いる、すなわち、選択的に、腕の動作不能と意図的な休止とを区別するために麻痺した腕のEMGを用いる。
9) EMG信号を記録しながら、時間の関数として健康な腕の検出位置を記録し、その後、麻痺した腕が対応した位置にあるとき、対応するNMESを麻痺した腕に適用する。
10) ロボットアームを用いて所望のパターンで健康な腕を動作させ、健康な腕において受動的に生成され結果として生じるEMG信号を検知し、そして、対応する動作を実現するために、麻痺した腕に適用されるNMESの基礎としてそれらを用いる。
11) ロボットアーム及び/又はNMESを用いて麻痺した腕を動作させ又は動作を支援し、麻痺した腕を健康な腕の測定された位置にマッチングさせる。
12) ロボットアームを用いて動作に対する麻痺した腕の抵抗力を測定し、それによって、動作に対する麻痺した腕の障害が筋肉の収縮の障害によるものであるか、筋肉の拮抗対間の区別の障害であるのかを決定し、場合によっては、それに応じてNMESを調整する。
13) 麻痺した腕の動作を支援するために、NMESを用いて又は用いずにロボットアームを使用し、麻痺した腕の能力に合あわせてロボットアームを減速させる。
14) NMESを用いてまたは用いずに、麻痺した腕の筋肉に逆らって働くようにロボットアームを用い、場合によっては、力を麻痺した腕の能力に適合させる。
15) 麻痺した腕のEMGを用い、患者に麻痺した腕のより良い制御の仕方を教え、場合によっては、筋肉の拮抗対間をより明確に区別することを含む。
【0084】
本発明の典型的な実施形態では、NMESを適用する方法は、本出願人により出願された他の出願の教示と組み合わされる。
【0085】
2004年12月7日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Methods and Apparatuses for Rehabilitation Exercise and Training(リハビリテーション運動およびトレーニングのための方法および装置)」と題され、代理人整理番号414/04388を有し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/633,442は、平衡性のリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、NMESは、患者が体の両側を調整する支援をするため、或いは体の一部分が動作するとき(例えば足)に平衡性に関わる体の他の部分(例えば胴体)の筋肉を刺激するために使用される。
【0086】
2004年4月29日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Fine Motor Control Rehabilitation(微細運動制御リハビリテーション)」と題され、代理人整理番号414/04401を有し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/566,079は、微細な運動制御のリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、NMESは、患者による総体的な及び微細な運動動作の調整を支援するために(例えば、大きな筋肉の測定、及び小さな筋肉の刺激、逆もまた同様)、或いは健康な腕から麻痺した腕への微細な運動制御を複製するために用いられる。
【0087】
2004年12月7日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Gait Rehabilitation Methods and Apparatuses(歩行リハビリテーションの方法および装置)」と題され、代理人整理番号414/04391を有し、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/633,428は、歩行のリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、NMESは、2つの足の動作及び/又はそれぞれの足の動作を調整するために使用され、例えば、(健康なまたは麻痺した)大腿部におけるEMG測定値を用いて、麻痺したふくらはぎにNMES信号を駆動する。
【0088】
2004年2月5日に出願され、また、本出願と同日に同一出願人によりPCT出願として出願され、「Methods and Apparatus for Rehabilitation and Training(リハビリテーションおよびトレーニングのための方法および装置)」と題され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/542,022は、様々な形式のリハビリテーション装置を記載している。本発明の典型的な実施形態では、そのような装置において、NMES刺激及び/又はEMG測定が提供される。
【0089】
2004年8月25日に出願され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願No.60/604,615は、脳の可塑性を測定する及び/又はさもなければ考慮しながらのリハビリテーションを記載している。本発明の典型的な実施形態では、麻痺した手足への神経信号の生成に関与する脳中心の活動を調整する方法において、及び/又は麻痺した手足からの信号を受信するために、NMES刺激が提供される。例えば、EEGやfMRIの手法を用いて、そのような脳の領域を検知することができる。
【0090】
本明細書に用いられているように、腕または他の体の部分の「位置(position)」は、その腕または体の部分の特定部位の空間的な位置だけを含むのではなく、例えば、どのくらい肘が曲げられているか、どのくらい前腕がねじれているか、どのくらい手首が曲がっているか等、その空間状態を明確にするために必要とされる他の情報をも含む。いくつかの実施形態においては、その部分の速度及び/又はその方向が制御される。
【0091】
本発明は、それを実施するための最良の形態に照らして記載されている。当然のことながら、図に示されている又は関連した本文中に記載されている全ての特徴が、本発明のいくつかの実施形態に従って、実際の装置に表れているわけではない。さらに、開示された方法および装置の変形は本発明の範囲内に含まれ、それは請求の範囲によってのみ限定される。また、1つの実施形態の特徴を本発明の他の実施形態の特徴と組み合わせて提供することができる。本文中で使用されているように、用語「含む(have)」、「含む(include)」及び「含む(comprise)」、或いはそれらの活用形は「含むがそれに限定されるものではない(including but not limited to)」ことを意味するものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、EMG電極を備えた健康な腕、EMGユニット、信号処理ユニット、NMESユニット、およびNMESとEMG電極を備えた麻痺した腕の概略図である。
【図2】図2は、本発明の典型的な実施形態による、未加工のEMG信号、整流信号、平滑化rms(二乗平均平方根)信号を示す。
【図3】図3は、本発明の典型的な実施形態による、ロボットアームに取り付けられた腕の概略図である。
【図4】図4は、図1と比較した本発明の他の典型的な実施形態による、NMES電極とEMG電極を備えた麻痺した腕、脳からの神経信号、および信号処理ユニットの概略図である。
【図5A】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5B】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5C】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5D】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5E】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5F】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【図5G】図5Aから図5Gは、本発明の典型的な実施形態による、リハビリテーション中の異なる時点における、屈筋と伸筋からのEMG信号の時系列のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施すための装置であって、
a)麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位の随意筋に適用されるように適合され、少なくとも1つのセンサが少なくとも1つのEMG信号を生成する、少なくとも1つの筋電図検査法(EMG)センサと、
b)麻痺した体の部位の少なくとも1つの随意筋を刺激するために適合された神経筋電気刺激(NMES)装置と、
c)前記NMES刺激がそれ自体でコントローラにより期待される動作で前記麻痺した体の部位を動作させるのに十分でないように健康な体の部位からのEMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成して、NMESを制御し且つ麻痺した体の部位の動作を期待するコントローラと、を含む装置。
【請求項2】
健康な体の部位の少なくとも1つの筋肉が、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉に対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、前記EMG信号を処理して、前記NMES信号の少なくとも一つの性質を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
コントローラは、NMESにより麻痺した体の部位を刺激させ、EMG信号の感知時に健康な体の部位が生成する動作に対応する動作を作り出すように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
コントローラは、健康な体の部位の対応する筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉の少なくとも1つの刺激の強度を増加させるように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
麻痺した体の部位の少なくとも一つの筋肉が筋肉の拮抗対を含み、コントローラは、筋肉の拮抗対の一方の筋肉に対応する健康な体の部位における筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、筋肉の拮抗対のうちの他方の筋肉の刺激の強度を減少させるように構成されている、請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
コントローラとNMES装置のうち1つ又は双方は、自身で麻痺した体の部位を動かすことができない少なくとも何人かの患者に対しては、刺激強度が、患者の脳からの神経刺激がない場合には刺激された筋肉を収縮させるのに不十分となるように、しかし患者の脳からの神経刺激がある場合にはその筋肉を収縮させるのに十分となるように構成されている前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つのEMGセンサは、複数のEMGセンサを含んでおり、各EMGセンサは健康な体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるために適合されている、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
各EMGセンサは別々のEMG信号を生成する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
NMES装置が、麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に独立して刺激を与えるよう適合されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分が、複数のEMGセンサを適合させて適用する健康な体の部位の筋肉または筋肉の部分に対応する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
コントローラは、前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分のNMES刺激の強度が、複数のEMGセンサからのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
コントローラは、前記複数の筋肉または筋肉の部分の各々のNMES刺激の強度が、対応する筋肉または筋肉の部分からのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
麻痺した体の部位が対となっている体の部位である、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
麻痺した体の部位が腕である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
麻痺した体の部位が足である、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
健康な体の部位が患者に属している、請求項14から16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
健康な体の部位が違う人間に属している、請求項14から16のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
コントローラが、EMG信号の処理後の形状に少なくとも部分的に依存する刺激強度を生成する、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
EMG信号の処理後の形状は、 EMG信号のタイミングに合わせて引き延ばされる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
EMG信号の処理後の形状が、EMG信号の発生時に健康な体の部位が経験していた動作の鏡像となる健康な体の部位の動作により生成されるであろうEMG信号に対応する、請求項19または請求項20に記載の装置。
【請求項22】
EMG信号の処理後の形状が、EMG信号からの時間遅延である、請求項19から21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
健康な体の部位の位置をモニタする第1の位置検知装置をさらに含む、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
健康な体の部位の位置を機械的に変化させる第1のアクチュエータをさらに含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
麻痺した体の部位の位置をモニタする第2の位置検知装置をさらに含む、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記コントローラの制御に基づいておよび前記期待動作に従って、麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる麻痺アクチュエータを含む、請求項1から25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記第1のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記第1のアクチュエータは、前記健康な体の部位の動作範囲を制限することによって前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項24に記載の装置。
【請求項29】
前記第2のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記第2のアクチュエータは、前記麻痺した体の部位の動作範囲を制限することによって、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項26に記載の装置。
【請求項31】
麻痺した体の部位を有する患者の部類にリハビリを施すために適合された装置であって、麻痺した体の少なくとも一つの随意筋を刺激するよう適合された神経筋電気刺激(NMES)装置を含み、刺激の強度はそれ自体で前記筋肉を収縮させるほどではないものの、同時に前記部類の患者がその体の部位を動作させようと試みるとき、刺激の強度は前記筋肉を収縮させるのに十分である、装置。
【請求項32】
麻痺した体の部位の随意筋に適用するために適合される少なくとも1つの麻痺EMGセンサをさらに含み、少なくとも1つの麻痺EMGセンサは少なくとも1つの麻痺EMG信号を生成する、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
コントローラは、少なくとも1つの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
麻痺した体の部位に適用するために適合された少なくとも1つの麻痺EMGセンサは、それぞれが麻痺した体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるように適合された、およびそれぞれが別々の麻痺EMG信号を生成する、複数の麻痺EMGセンサを含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
NMES装置は、麻痺EMG信号センサが適用されるよう適合された麻痺した体の筋肉または筋肉の部分を刺激するために適合されており、コントローラは、それぞれの筋肉または筋肉の部分の刺激の強度をその筋肉または筋肉の部分からの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存させるよう構成されている、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施す方法であって、
a)患者または他の人間に、麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位を動かしてもらい、
b)動かしている間、その健康な体の部位からEMG信号を検出し、
c)NMES信号の少なくとも1つの性質を決定するために前記EMG信号を処理し、
d)前記処理に応じて、麻痺した体の部位にNMES信号を適用し、および、
e)前記NMES刺激によって最大限でも部分的に前記麻痺した体の部位を動かすことを含む方法。
【請求項37】
前記NMESは、前記EMG信号に従ったタイミングで適用される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記NMESは、前記EMG信号に従った強度で適用される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
また、EMG信号を検出中に健康な体の部位を動作させるのと同じ動作パターンで、NMESを適用しながら、患者に麻痺した体の部位を動かすよう試みさせることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
EMG信号を検出することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部位からEMG信号を検出することを含み、NMESを適用することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に対応する麻痺した体の部分の複数の筋肉または筋肉の部分にNMESを適用することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
麻痺した体の部位の試みられている動作パターンの時間間隔中に麻痺した体の部位のそれぞれの筋肉または筋肉の部分に適用されるNMESの強度は、健康な体の部位の動作パターンにおける対応する時間間隔中に、健康な体の部位の対応する筋肉または筋肉の部分から検出されるEMG信号に少なくとも部分的に依存する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
麻痺した体の部位は、アクチュエータの動作によって機械的に提供される、請求項36から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記アクチュエータは、前記検出されたEMGと同期する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アクチュエータは、前記適用されるNMESと同期する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
麻痺した体の部位は、アクチュエータの動作によって機械的に支援される、請求項36から44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
麻痺した体の部位の動作が、アクチュエータによって制限される、請求項36から45のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施すための装置であって、
a)麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位の随意筋に適用されるように適合され、少なくとも1つのセンサが少なくとも1つのEMG信号を生成する、少なくとも1つの筋電図検査法(EMG)センサと、
b)麻痺した体の部位の少なくとも1つの随意筋を刺激するために適合された神経筋電気刺激(NMES)装置と、
c)前記NMES刺激がそれ自体でコントローラにより期待される動作で前記麻痺した体の部位を動作させるのに十分でないように健康な体の部位からのEMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成して、NMESを制御し且つ麻痺した体の部位の動作を期待するコントローラと、を含む装置。
【請求項2】
健康な体の部位の少なくとも1つの筋肉が、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉に対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、前記EMG信号を処理して、前記NMES信号の少なくとも一つの性質を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
コントローラは、NMESにより麻痺した体の部位を刺激させ、EMG信号の感知時に健康な体の部位が生成する動作に対応する動作を作り出すように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
コントローラは、健康な体の部位の対応する筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、麻痺した体の部位の少なくとも1つの筋肉の少なくとも1つの刺激の強度を増加させるように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
麻痺した体の部位の少なくとも一つの筋肉が筋肉の拮抗対を含み、コントローラは、筋肉の拮抗対の一方の筋肉に対応する健康な体の部位における筋肉からのEMG信号が健康な体の部位の動作中における対応する時間において増加するとき、筋肉の拮抗対のうちの他方の筋肉の刺激の強度を減少させるように構成されている、請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
コントローラとNMES装置のうち1つ又は双方は、自身で麻痺した体の部位を動かすことができない少なくとも何人かの患者に対しては、刺激強度が、患者の脳からの神経刺激がない場合には刺激された筋肉を収縮させるのに不十分となるように、しかし患者の脳からの神経刺激がある場合にはその筋肉を収縮させるのに十分となるように構成されている前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つのEMGセンサは、複数のEMGセンサを含んでおり、各EMGセンサは健康な体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるために適合されている、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
各EMGセンサは別々のEMG信号を生成する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
NMES装置が、麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に独立して刺激を与えるよう適合されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分が、複数のEMGセンサを適合させて適用する健康な体の部位の筋肉または筋肉の部分に対応する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
コントローラは、前記麻痺した体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分のNMES刺激の強度が、複数のEMGセンサからのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
コントローラは、前記複数の筋肉または筋肉の部分の各々のNMES刺激の強度が、対応する筋肉または筋肉の部分からのEMG信号に少なくとも部分的に依存するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
麻痺した体の部位が対となっている体の部位である、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
麻痺した体の部位が腕である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
麻痺した体の部位が足である、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
健康な体の部位が患者に属している、請求項14から16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
健康な体の部位が違う人間に属している、請求項14から16のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
コントローラが、EMG信号の処理後の形状に少なくとも部分的に依存する刺激強度を生成する、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
EMG信号の処理後の形状は、 EMG信号のタイミングに合わせて引き延ばされる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
EMG信号の処理後の形状が、EMG信号の発生時に健康な体の部位が経験していた動作の鏡像となる健康な体の部位の動作により生成されるであろうEMG信号に対応する、請求項19または請求項20に記載の装置。
【請求項22】
EMG信号の処理後の形状が、EMG信号からの時間遅延である、請求項19から21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
健康な体の部位の位置をモニタする第1の位置検知装置をさらに含む、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
健康な体の部位の位置を機械的に変化させる第1のアクチュエータをさらに含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
麻痺した体の部位の位置をモニタする第2の位置検知装置をさらに含む、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記コントローラの制御に基づいておよび前記期待動作に従って、麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる麻痺アクチュエータを含む、請求項1から25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記第1のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記第1のアクチュエータは、前記健康な体の部位の動作範囲を制限することによって前記健康な体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項24に記載の装置。
【請求項29】
前記第2のアクチュエータは、完全な支援、部分的な支援、非支援からなるグループから選択される様々なレベルで、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記第2のアクチュエータは、前記麻痺した体の部位の動作範囲を制限することによって、前記麻痺した体の部位の位置を機械的に変化させる、請求項26に記載の装置。
【請求項31】
麻痺した体の部位を有する患者の部類にリハビリを施すために適合された装置であって、麻痺した体の少なくとも一つの随意筋を刺激するよう適合された神経筋電気刺激(NMES)装置を含み、刺激の強度はそれ自体で前記筋肉を収縮させるほどではないものの、同時に前記部類の患者がその体の部位を動作させようと試みるとき、刺激の強度は前記筋肉を収縮させるのに十分である、装置。
【請求項32】
麻痺した体の部位の随意筋に適用するために適合される少なくとも1つの麻痺EMGセンサをさらに含み、少なくとも1つの麻痺EMGセンサは少なくとも1つの麻痺EMG信号を生成する、前請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
コントローラは、少なくとも1つの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存する麻痺した体の部位の刺激の強度を生成する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
麻痺した体の部位に適用するために適合された少なくとも1つの麻痺EMGセンサは、それぞれが麻痺した体の部位の異なる筋肉または筋肉の部分に適用されるように適合された、およびそれぞれが別々の麻痺EMG信号を生成する、複数の麻痺EMGセンサを含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
NMES装置は、麻痺EMG信号センサが適用されるよう適合された麻痺した体の筋肉または筋肉の部分を刺激するために適合されており、コントローラは、それぞれの筋肉または筋肉の部分の刺激の強度をその筋肉または筋肉の部分からの麻痺EMG信号に少なくとも部分的に依存させるよう構成されている、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
麻痺した体の部位を有する患者にリハビリを施す方法であって、
a)患者または他の人間に、麻痺した体の部位と同種の健康な体の部位を動かしてもらい、
b)動かしている間、その健康な体の部位からEMG信号を検出し、
c)NMES信号の少なくとも1つの性質を決定するために前記EMG信号を処理し、
d)前記処理に応じて、麻痺した体の部位にNMES信号を適用し、および、
e)前記NMES刺激によって最大限でも部分的に前記麻痺した体の部位を動かすことを含む方法。
【請求項37】
前記NMESは、前記EMG信号に従ったタイミングで適用される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記NMESは、前記EMG信号に従った強度で適用される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
また、EMG信号を検出中に健康な体の部位を動作させるのと同じ動作パターンで、NMESを適用しながら、患者に麻痺した体の部位を動かすよう試みさせることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
EMG信号を検出することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部位からEMG信号を検出することを含み、NMESを適用することは、健康な体の部位の複数の筋肉または筋肉の部分に対応する麻痺した体の部分の複数の筋肉または筋肉の部分にNMESを適用することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
麻痺した体の部位の試みられている動作パターンの時間間隔中に麻痺した体の部位のそれぞれの筋肉または筋肉の部分に適用されるNMESの強度は、健康な体の部位の動作パターンにおける対応する時間間隔中に、健康な体の部位の対応する筋肉または筋肉の部分から検出されるEMG信号に少なくとも部分的に依存する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
麻痺した体の部位は、アクチュエータの動作によって機械的に提供される、請求項36から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記アクチュエータは、前記検出されたEMGと同期する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アクチュエータは、前記適用されるNMESと同期する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
麻痺した体の部位は、アクチュエータの動作によって機械的に支援される、請求項36から44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
麻痺した体の部位の動作が、アクチュエータによって制限される、請求項36から45のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【公表番号】特表2007−520308(P2007−520308A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552008(P2006−552008)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000135
【国際公開番号】WO2005/087307
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506085468)モトリカ インク (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000135
【国際公開番号】WO2005/087307
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506085468)モトリカ インク (11)
【Fターム(参考)】
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