説明

神経障害性疼痛及び神経障害の治療における5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド誘導体の使用

本発明は、運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害性疼痛及び神経障害を治療するための薬物の製造における5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む、神経障害性疼痛及び神経障害の治療のための様々な薬物の製造における5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸エスリカルバゼピン(ESL, S-(-)-10-アセトキシ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド;BIA 2-903としても知られる)は、新しい電位開口型ナトリウムチャネル(voltage-gated sodium channel)(VGSC)遮断剤であり、カルバマゼピン(CBZ)と5-カルボキサミド置換基を有しているジベンズアゼピン核を共有するが、構造的には10,11位で異なる(BENES, J., PARADA, A., FIGUEIREDO, A.A., ALVES, P.C., FREITAS, A.P., LEARMONTH, D.A., CUNHA, R.A., GARRETT, J. 及びSOARES-DA-SILVA, Pの文献、(1999)、「新規の10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の抗痙攣及びナトリウムチャネル遮断特性(Anticonvulsant and sodium channel-blocking properties of novel 10,11-dihydro-5H-dibenz[b,f]azepine-5-carboxamide derivatives)」、J Med Chem, 42, 2582-2587 を参照されたい)。
【0003】
この分子変化は、物質代謝の相違、すなわち、カルバマゼピン-10,11 エポキシドなどの毒性エポキシド代謝物質の生成を抑制し、かつ薬理活性を低下させることなく代謝物質及び複合体の鏡像異性体又はジアステレオ異性体の不必要な生成を抑制することをもたらす(HAINZL, D., PARADA, A. 及び SOARES-DA-SILVA, P.の文献、(2001)、「2つの新しいてんかん薬の代謝作用及びその主要代謝物質S(+)-及びR(-)-10,11-ジヒドロ-10-ヒドロキシカルバマゼピン(Metabolism of two new antiepileptic drugs and their principal metabolites S(+)- and R(-)-10,ll-dihydro-10-hydroxy carbamazepine) Epilepsy Res, 44, 197-206を参照)(先のBenesの文献を参照されたい)。酢酸エスリカルバゼピンは、ラット及びマウスに有効な抗痙攣薬であり、かつ最大電気ショック痙攣(MES)及び様々な痙攣剤に対して保護効果を及ぼすことが知られていた。ラットモデルにおいて、酢酸エスリカルバゼピン(ESL)は、カルバマゼピン(CBZ)の抗痙攣効力と類似しているが、オクスカルバゼピン(OXC,先のBenesの文献を参照されたい)よりも効力が強く、MES誘発の発作に対して特に活性があることがわかった。
【0004】
機構的に、酢酸エスリカルバゼピンは、ベンゾジアゼピン受容体、GABA受容体及びグルタミン酸受容体に干渉することはないようだが、チャネルの不活性化状態の部位2と競合的に相互作用することによってVGSCの強力な遮断剤として作用する(AMBROSIO, A.F., SILVA, A.P., MALVA, J.O., SOARES-DA-SILVA, P., CARVALHO, A.P. 及び CARVALHO, C.M.の文献、(2001)「カルシウムチャネルではなく、ナトリウムチャネル遮断に起因する、2つの新規のカルバマゼピン誘導体であるBIA 2-093及びBIA 2-024によるグルタミン酸放出阻害(Inhibition of glutamate release by BIA 2-093 and BIA 2-024, two novel derivatives of carbamazepine, due to blockade of sodium but not calcium channels)」 Biochem Pharmacol, 61, 1271-1275; AMBROSIO, A.F., SOARES-DA-SILVA, P., CARVALHO, C.M. 及び CARVALHO, A.P. (2002),「カルバマゼピン及びその誘導体、オクスカルバゼピン、BIA 2-093、並びにBIA 2-024の作用メカニズム(Mechanisms of action of carbamazepine and its derivatives, oxcarbazepine, BIA 2-093, and BIA 2-024)」 Neurochem Res, 27, 121-130; 及び上記Benesの文献を参照されたい)。チャネルのこの状態に対する親和性は、カルバマゼピンの親和性に類似しているが、チャネルの静止状態に対する親和性は、カルバマゼピンの親和性の約3分の1である。この特性は、正常な活性を示す神経細胞よりも急速発火神経細胞に対する酢酸エスリカルバゼピンの阻害選択性が高いことを示唆すると言える(BONIFACIO, M.J., SHERIDAN, R.D., PARADA, A., CUNHA, R.A., PATMORE, L. 及び SOARES-DA-SILVA, P.の文献、(2001))「新規の抗痙攣剤BIA 2-093と電位開口型ナトリウムチャネルとの相互作用:カルバマゼピンとの比較(Interaction of the novel anticonvulsant, BIA 2-093, with voltage-gated sodium channels: comparison with carbamazepine)」Epilepsia, 42, 600-608を参照されたい)。
【0005】
オクスカルバゼピンのヒト代謝物質は、リカルバゼピンとしても知られ、親薬物に匹敵する抗てんかん活性を示す(Benesらの文献、1999;Shutzらの文献、1986)。抗てんかん薬として該代謝物質を使用することが記述されたが、実際には使用されていない。また、該代謝物質は本来キラルであり、ヒトにおいて全てが立体選択的に形成されるわけではなく、S-リカルバゼピン(S-Lic)及びR-リカルバゼピン(R-Lic)は、それぞれ約80%対20%の比率で形成されることが見出された。加えて、この鏡像異性体の正確な比率は、対象に依存する。これらはさらに異なる比率で代謝され、場合によっては大きく異なる薬力薬理学的及び薬動力学的挙動並びに副作用を伴い、代謝物質及び複合体の異なる鏡像異性体及び多数のジアステレオ異性体を形成する。
【0006】
機構的な観点から、オクスカルバゼピンの抗痙攣効果は、該チャネルの不活性化状態の部位2と競合的に相互作用することによって電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)が遮断した結果生じると考えられている(Ambrosioらの文献、2001;Ambrosioらの文献、2002;Benesらの文献、1999)。しかし、オクスカルバゼピンのヒトへの治療効果がその主要な代謝物質の効果に関係していることを示唆する証拠があるにもかかわらず(Baruzziらの文献、1994;Leppikの文献、1994;Lloydらの文献、1994;Mayらの文献、1996)、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの相互作用は、詳細に評価されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従って、神経障害性疼痛を治療するための薬物の製造における、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物から選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である。
本発明の第二の態様に従って、神経障害性疼痛を治療するための薬物の製造における、下記のものと組み合わせた、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物から選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用を提供する:アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、コリン、トリサリチル酸マグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジン、オルサラジン、又はそれらの組み合わせ;アセトアミノフェン;インドメタシン、スリンダク、又はそれらの組み合わせ;トルメチン、ジクロフェナク、ケトレラック、又はそれらの組み合わせ;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、又はそれらの組み合わせ;メフェナム酸、メクロフェナム酸、又はそれらの組み合わせ;ピロキシカム、メロキシカム、又はそれらの組み合わせ;及びナブメトンから選択される非選択的COX阻害剤:ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、シミコキシブ、又はそれらの組み合わせ;エトドラク;及びニメスリドから選択される選択的COX阻害剤:モルヒネ、メタドン、エトルフィン、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、トラマドール、レボルファノール、メペリジン、プロポキシフェン、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体アゴニスト:及び/又はペンタゾシン、ブトルファノール、ブプレノルフィン、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体部分アゴニスト。
【0009】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンである。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、R-酢酸リカルバゼピンである。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物である。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である。
【0010】
本発明の第三の態様に従って、運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害を治療するための薬物の製造における、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、オクスカルバゼピン、及びカルバマゼピンから選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用を提供する。
【0011】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ化合物である。
【0012】
本発明の第四の態様に従って、運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害を治療するための薬物の製造における、下記のものと組み合わせた、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、オクスカルバゼピン、及びカルバマゼピンから選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用を提供する:アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、コリン、トリサリチル酸マグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジン、オルサラジン、又はそれらの組み合わせ;アセトアミノフェン;インドメタシン、スリンダク、又はそれらの組み合わせ;トルメチン、ジクロフェナク、ケトレラック、又はそれらの組み合わせ;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、又はそれらの組み合わせ;メフェナム酸、メクロフェナム酸、又はそれらの組み合わせ;ピロキシカム、メロキシカム、又はそれらの組み合わせ;及びナブメトンから選択される非選択的COX阻害剤:ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、シミコキシブ、又はそれらの組み合わせ;エトドラク;及びニメスリドから選択される選択的COX阻害剤:モルヒネ、メタドン、エトルフィン、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、トラマドール、レボルファノール、メペリジン、プロポキシフェン、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体アゴニスト:及び/又はペンタゾシン、ブトルファノール、ブプレノルフィン、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体部分アゴニスト。
【0013】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンである。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、R-酢酸リカルバゼピンである。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物である。
【0014】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、S-リカルバゼピンである。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、R-リカルバゼピンである。
【0015】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物である。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ化合物である。
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、オクスカルバゼピンである。
【0016】
一実施態様において、5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体は、カルバマゼピンである。
一実施態様において、該障害は、多発性神経炎、多発性硬化症、パーキンソン病、脱遠心性神経を伴う(血管、腫瘍及び炎症過程によって起こる)CNS疾患、運動神経疾患、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、脊髄小脳失調症、頚髄症、脊髄損傷、神経根剥離から選択される。
【0017】
本発明の第五の態様に従って、神経障害性疼痛を治療する方法であって、それを必要とする対象に、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物から選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の治療有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0018】
本発明の第六の態様に従って、運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、オクスカルバゼピン、及びカルバマゼピンから選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の治療有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
神経障害性疼痛及び神経障害性疼痛関連障害には、三叉神経痛、幻肢痛、糖尿病性神経障害、及びヘルペス後神経痛が含まれる。
【0019】
別の神経障害は運動障害である。驚くことに、発明人らは、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンが、ほとんど運動障害を引き起こすことはなく、かつカルバマゼピン及びオクスカルバゼピンよりも神経障害性疼痛の治療に有効であることを見出した。このように、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、及びS-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物は、神経障害性疼痛と運動障害との両方を含む神経障害の治療に対する効能が改善されている。酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物は、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物の一例である。S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ混合物は、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物の一例である。
【0020】
発明者らは、酢酸エスリカルバゼピンが、運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害の治療において特に有利であることを見出した。神経障害性疼痛と運動障害との両方を含む神経障害は、多発性神経炎、多発性硬化症、パーキンソン病、脱遠心性神経を伴う(血管、腫瘍及び炎症過程によって起こる)CNS疾患、運動神経疾患、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、脊髄小脳失調症、頚髄症、脊髄損傷、神経根剥離を含む。
【0021】
本明細書では、表現「運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害」、及び同様の表現には、「運動障害と神経障害性疼痛との両方を引き起こす神経障害」が含まれる。
本明細書では、「治療する」又は「治療すること」などの治療及び変形の用語は、ヒト又は非ヒト動物のためになり得る任意の療法をいう。該治療は、現状に関するものでよく、又は予防的なもの(予防治療)でもよい。治療は、治療的効果、軽減効果、又は予防的効果を含むことができる。
【0022】
本発明の5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の別の予想外の利点は、該誘導体が、副作用として鎮静状態をそれほど誘発しないことである。このことは特に、以下の5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が下記薬物に使用される場合に起こる:酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物(酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物を含む)、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピン、及びS-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物(S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ化合物を含む)。
【0023】
驚くことに、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンが電位開口型ナトリウムチャネルの部位2と相互作用する程度が、オクスカルバゼピンと比較して約2.5分の1(2/5)であることがわかったが、このことは、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピン、又はそれらの混合物の鎮痛効果が、オクスカルバゼピンのように電位開口型ナトリウムチャネルの遮断に起因しない可能性があることを示している。
【実施例】
【0024】
これから下記の限定されない例に関して本発明を説明する。
(神経障害性疼痛の治療)
ホルマリン足リッキング試験(formalin paw licking test)によって神経障害性疼痛を測定することができ、ロータロッド試験(rotarod test)によって運動障害を測定することができることは公知である。この2つの試験を、酢酸エスリカルバゼピン、カルバマゼピン、R-リカルバゼピン、オクスカルバゼピンについて実施した。詳細は以下の通りである。
【0025】
(物質及び方法)
(ホルマリン足試験(Formalin paw test))
鎮痛/抗炎症作用を検出する方法は、Wheeler-Acetoらの文献に従う(WHEELER-ACETO, H. 及びA., C. の文献(1991)、「鎮痛剤評価のための、ラット足ホルマリン試験の標準化(Standardization of the rat paw formalin test for the evaluation of analgesics)」 Psychopharmacology, 104, 35-44を参照されたい)。マウス(NMRI)の左後ろ足に5%のホルマリン(25μml)を皮下注射した。この処置によって、対照動物を、足をリッキングするように誘発した。ホルマリン注射の15分後に開始して、15分間リッキングしている時間を数えた。1グループあたり、10匹のマウスを調査した。この試験は盲検法で行った。試験の60分前(すなわち、ホルマリン投与の45分前)に、酢酸エスリカルバゼピン及びカルバマゼピンを経口で10、30、100及び300mg/kgの用量で投与することによって試験し、かつオクスカルバゼピン及びR-リカルバゼピンを経口で100及び300mg/kgの用量で投与することによって試験して、各実験でビヒクル対照グループと比較した。同じ実験条件下でモルヒネ(経口で64mg/kg)を投与し、参照物質として使用する。
【0026】
(ロータロッド試験)
正常なマウスは回転ロッドで長い間平衡状態を保つことができる。回転ロッド装置(Accelerator Rota-Rod[Jones & Roberts] 7650;Ugo Basile社)で、マウスの運動毒性(motor toxicity)を検査した。ネイティブマウス(Charles River 雄、重さ30〜35g)の運動動作を、試験化合物の投与15分後に評価した。15r.p.mの速さの回転ロッド上に動物を置いた。薬物処置されたマウスについて、神経障害は、3回の各試験で、動物が1分間平衡状態を維持できないことによって示される。酢酸エスリカルバゼピン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン及びR-リカルバゼピンをジメチルスルホキシド(DMSO)(2ml/kg)に溶解して、腹腔内に投与した(ROGAWSKI, M.A., YAMAGUCHI, S., JONES, S.M., RICE, K.C., THURKAUF, A. 及び MONN, J.A.の文献、(1991)「低親和性非拮抗的 N-メチル-D-アスパラギン酸アンタゴニスト(+-)-5-アミノカルボニル-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5,10-イミン(ADCI)の抗痙攣作用:構造的類似薬ジゾシルピン(MK-801)及びカルバマゼピンとの比較(Anticonvulsant activity of the low-affinity uncompetitive N-methyl-D-aspartate antagonist (+-)-5-aminocarbonyl-10, 11-dihydro-5H-dibenzo[a,d]cyclohepten-5, 10-imine (ADCI):comparison with the structural analogs dizocilpine(MK-801) and carbamazepine)」J Pharmacol Exp Ther, 259, 30-37を参照されたい)。
【0027】
(結果)
(酢酸エスリカルバゼピン及びカルバマゼピン)
ビヒクル処置したマウスのリッキング時間(licking time)(単位;秒)は、81.0±13.8(n=10)であった。酢酸エスリカルバゼピン及びカルバマゼピンは、それぞれED50値(単位;mg/kg)69.7及び38.2で、リッキング時間を用量依存的に短縮した(図1)。このホルマリン試験では、両化合物とも、300mg/kgでリッキングしなくなった。
【0028】
酢酸エスリカルバゼピン300mg/kgを投与した10匹中1匹(1/10)のマウス及びカルバマゼピン300mg/kgを投与した10匹中10匹(10/10)のマウスについて鎮静状態が観察された。モルヒネ(64mg/kg)を同じ実験条件下で投与すると、リッキングは完全に抑制された(-100%、p<0.01)。
【0029】
酢酸エスリカルバゼピン及びカルバマゼピンの用量を増加して腹腔内に投与することによって、ロータロッド試験で用量依存的運動障害が生じたが、このことはカルバマゼピンについてより顕著であった。図2に、酢酸エスリカルバゼピン及びカルバマゼピンについてそれぞれED50の139.7 mg/kg及び29.7mg/kgを用いたロータロッド試験の用量反応曲線を示す。
【0030】
治療耐容性(therapeutic tolerability)の1つの指標として、有効性−リスク(運動)指数(Efficacy-Risk(motor)Index)(ホルマリン足試験におけるリッキング時間/ロータロッド試験におけるED50)を考慮すると、これらのデータは、酢酸エスリカルバゼピンがカルバマゼピンよりも耐容性が良いことを示している。
【0031】
ホルマリン足試験における100mg/kgでのリッキング時間(秒)、及びロータロッド試験におけるED50値(単位:mg/kg)を、カルバマゼピン、酢酸エスリカルバゼピン、オクスカルバゼピン及びR-リカルバゼピンについて測定し、全ての化合物に対して、有効性−リスク(運動)指数(ホルマリン足試験における100mg/kgでのリッキング時間(秒)/ロータロッド試験におけるED50(単位:mg/kg))と有効性−リスク(鎮静)指数(efficacy-risk(sedation)index)(ホルマリン足試験における100mg/kgでのリッキング時間(秒)/300mg/kgでの鎮静(%))とを比較した。これらの値から、有効性−リスクの総指数(運動×鎮静)(efficacy-risk index(motor x sedation))、すなわち有効性−リスク(運動)指数/鎮静%(Efficacy-Risk(Motor) Index/%sedation)を算出した(表1)。
【0032】
【表1】


【0033】
(考察)
((1)酢酸エスリカルバゼピン及びカルバマゼピン)
図1に示すように、ホルマリン足試験においてカルバマゼピンは酢酸エスリカルバゼピンよりもわずかであるがより強く作用した。ロータロッド試験において、カルバマゼピンがより少ない用量でかなりの運動障害を引き起こすことを見出したが、このことは酢酸エスリカルバゼピンには起こらなかった。酢酸エスリカルバゼピンの有効性−リスク(運動)指数は、カルバマゼピンについて観察されたものの1.4倍であり、このことは、酢酸エスリカルバゼピンがカルバマゼピンと比べて疼痛状態の治療への効果が全体的に改善されていることを示している。理論的制約にとらわれることはないが、この驚くべき効果は、正常な活性を示す神経細胞よりも急速発火神経細胞に対する酢酸エスリカルバゼピンの選択性に関係し得ると考えられる。
【0034】
(R-リカルバゼピン及びオクスカルバゼピン)
ロータロッド試験において、オクスカルバゼピンは、より少ない用量でかなりの運動障害を引き起こすことが見出されたが、このことはR-リカルバゼピンには起こらなかった。R-リカルバゼピンの有効性−リスク(運動)指数は、オクスカルバゼピンについて観察されたものの18.9倍であり、このことは、R-リカルバゼピンがオクスカルバゼピンと比べて疼痛状態の治療への効果が改善されていることを示している。理論的制約にとらわれることはないが、この驚くべき効果は、電位開口型ナトリウムチャネルへのR-リカルバゼピンの親和性低下に関係し得ると考えられる。
【0035】
(酢酸エスリカルバゼピン、カルバマゼピン、R-リカルバゼピン及びオクスカルバゼピン)
神経障害性疼痛の治療及び運動障害の軽減を考慮する場合、R-リカルバゼピンは特に神経障害性疼痛及び制限的運動障害の治療に効能がある。酢酸エスリカルバゼピンもそれほどではないにせよ効能がある。R-リカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンはいずれもオクスカルバゼピン及びカルバマゼピンよりも効能がある。
【0036】
副作用として鎮静状態を誘発せずに神経障害性疼痛を治療することを考慮する場合、酢酸エスリカルバゼピンが最も有効である。R-リカルバゼピンもこの点では効能があるが、酢酸エスリカルバゼピンほどではない。酢酸エスリカルバゼピン及びR-リカルバゼピンはいずれもオクスカルバゼピン及びカルバマゼピンよりも効能がある。
鎮静状態を誘発せず、かつ運動障害を軽減して神経障害性疼痛の治療を考慮する場合の総体的状況では、酢酸エスリカルバゼピンが最も効能がある。
【0037】
マウスにおけるオクスカルバゼピンの代謝作用(Hainzlらの文献、2001)は、ヒトにおいて記述されたものと同じであり(Almeidaらの文献、2005)、こうした理由からマウスは、オクスカルバゼピンの使用に伴う利点及びリスクを評価するのに最も関連性のある種であると考えられる。S-リカルバゼピン又はR-リカルバゼピンが投与される場合、マウスが、これらの物質をもとのオクスカルバゼピンに変換しないという知見(Hainzlらの文献、2001)は、極めて関連性が深い。その一方、マウスへオクスカルバゼピンを投与すると、ヒトの場合と同様、オクスカルバゼピンをMHDとしても知られるS-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの混合物へ変換することになる。このようなオクスカルバゼピンのS-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンへの変換は完全には行われず、循環血液中及び脳内のオクスカルバゼピンの濃度は、相当な時間測定することができる。理論的制約にとらわれることはないが、脳内のオクスカルバゼピンの存在自体が、疼痛治療において耐容性(tolerability)を軽減する原因になると考えられる。
【0038】
神経障害性疼痛は、末梢神経系又は中枢神経系内の体性感覚的求心性神経線維(somatosensible afferent nerve fibres)が破壊されることに起因する。該疼痛は、非ステロイド性抗炎症性薬物では十分治療できないことがよくある。発症機序に依存するが、ニューロン発火を減少させる酢酸エスリカルバゼピン、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン又はそれらの混合物と、先に述べた体系の異なる濃度で作用する薬物との組合せ投与を考慮することは治療的に重要である。これらには、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物(酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物を含む)、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物(S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ化合物を含む)、オクスカルバゼピン及びカルバマゼピン又はそれらの混合物、並びに表2に示される1種以上のクラスから選択される1種以上の薬物が含まれる。
【0039】
【表2】

【0040】
(オクスカルバゼピン、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンによる電位感受性ナトリウムチャネルの遮断)
(物質及び方法)
([3H]BTX結合)
電位感受性ナトリウムチャネルの遮断は、全脳膜に結合する[3H]バトラコトキシニン A 20-R-ベンゾアート([3H]BTX)置換を調べることによって研究した。動物を断頭し、その脳を直ちに取り出した。基本的に先に記載されるように膜標本及び結合アッセイを行った(Shimidzuらの文献、1997)。(小脳を含まない)脳を、10容量のショ糖 0.32M、EDTA 1mM、ウシ血清アルブミン(BSA) 1mg/ml、HEPES/TRIS pH7.4 5 mM中で、テフロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした(400r.p.mで8ストローク)。1,000 gで10分間遠心分離した後に、上清を39,000 gで20分間遠心分離し、かつ [3H]バトラコトキシニン A 20-α-ベンゾアート([3H]-BTX)結合アッセイのために、Na非含有の20容量又は40容量の各緩衝液で、ペレットをホモジナイズした。Na非含有の緩衝液は、下記成分を含ませた(単位;mM):塩化コリン 130、MgSO4 0.8、KCl 5.4、D-グルコース 5.5、HEPES/TRIS pH7.4 50。該ホモジネートを39,000 gで20分間遠心分離し、結果として生じたペレットをNa非含有の緩衝液中で再懸濁した。膜標本中のタンパク質濃度をBSA(50〜250μg/ml)の検量線を使用するバイオラッドタンパク質アッセイ(BioRad Protein Assay)(BioRad社)を用いて測定した。[3H]-BTX結合アッセイ実験では、サソリ毒2μM、テトロドトキシン1μM及びBSA 1mg/mlを含む、Na非含有の緩衝液中の[3H]-BTX 10nM(抑制実験)又は1〜200nM(飽和実験)を用いて、膜標本(タンパク質200μg)を96ウェルEIA/RIAプレート(COSTAR社)中、37℃で1時間インキュベートした。また、抑制実験において、該反応緩衝液には試験薬物3〜1000μMを含ませた。非特異的結合を、ベラトリジン300μMの存在下で測定した。非特異的結合は、[3H-BTX]10nMで全結合量の26±2%であった。インキュベーション後、ガラス繊維の濾過マット(Wallac社)を通して減圧濾過(ブランデル96採取器((Brandel 96 harvester))によって該反応を終了させた。フィルターを氷冷の洗浄緩衝液(BSA 1mg/ml、塩化コリン 130mM、MgSO4 0.8mM、CACl2 1.8mM、HEPES/TRIS pH7.4 5 mM)で3回洗浄した。濾過マットを乾燥させ、メルチレックスAシンチレーション混合物(MeltiLex A scintillation mixture)(Wallac社)に浸透させ、プラスチックサンプル袋(Wallac社)の中に挿入し、マイクロベータ1224-510カウンター(Wallac社)で放射活性を測定した。
【0041】
(結果)
全脳膜における結合部位からの[3H]-バトラコトキシニン A 20-α-ベンゾアート([3H]-BTX)置換に対して、その能力の低下が示すように、神経障害性疼痛治療でのR-リカルバゼピンの効能が、オクスカルバゼピンと比べて改善されたことは、電位開口型ナトリウムチャネルの部位2の相互作用に対するR-リカルバゼピンの効力と逆の相関関係にある(図3)。従って、理論的制約にとらわれることはないが、疼痛の軽減における治療的利点よりもむしろ逆の特性が脳電位開口型ナトリウムチャネルの遮断に起因し得ると説明するのがもっとも適当である。
本発明は、添付の請求項の範囲内で改変され得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
添付図面について以下のとおり参照する:
【図1】マウスのホルマリン足試験でのリッキング時間に対する酢酸エスリカルバゼピン(ESL)及びカルバマゼピン(CBZ)の効果を図示する。記号は1グループあたり10匹の動物の平均であり;垂線はS.E.M.値を示す。
【図2】回転ロッドでの時間に対する酢酸エスリカルバゼピン(ESL)及びカルバマゼピン(CBZ)の効果を図示する。記号は1グループあたり15〜30匹の動物の平均であり;垂線はS.E.M.値を示す。
【図3】オクスカルバゼピン(OXC)、S-リカルバゼピン(S-Lic)及びR-リカルバゼピン(R-Lic)の全脳膜における[3H]-バトラコトキシニンA 20-α-ベンゾアート([3H]BTX)結合部位の置換に対する効果を図示する。記号は1グループあたり独立した4〜5回の実験の平均であり;垂線はS.E.M.値を示す。対照値(*P<0.05)と、S-リカルバゼピン(#P<0.05)及びR-リカルバゼピン(#P<0.05)の値とは、有意差がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害性疼痛を治療するための薬物の製造における、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物から選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用。
【請求項2】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
神経障害性疼痛を治療するための薬物の製造における、下記のものと組み合わせた、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物から選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用:アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、コリン、トリサリチル酸マグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジン、オルサラジン、又はそれらの組み合わせ;アセトアミノフェン;インドメタシン、スリンダク、又はそれらの組み合わせ;トルメチン、ジクロフェナク、ケトレラック、又はそれらの組み合わせ;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、又はそれらの組み合わせ;メフェナム酸、メクロフェナム酸、又はそれらの組み合わせ;ピロキシカム、メロキシカム、又はそれらの組み合わせ;及びナブメトンから選択される非選択的COX阻害剤:ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、シミコキシブ、又はそれらの組み合わせ;エトドラク;及びニメスリドから選択される選択的COX阻害剤:モルヒネ、メタドン、エトルフィン、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、トラマドール、レボルファノール、メペリジン、プロポキシフェン、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体アゴニスト:及び/又はペンタゾシン、ブトルファノール、ブプレノルフィン、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体部分アゴニスト。
【請求項4】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンである、請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、R-酢酸リカルバゼピンである、請求項3記載の使用。
【請求項6】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物である、請求項3記載の使用。
【請求項7】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記神経障害性疼痛が、三叉神経痛、幻肢痛、糖尿病性神経障害、又はヘルペス後神経痛によって起こる、請求項1〜7記載の使用。
【請求項9】
運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害を治療するための薬物の製造における、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、オクスカルバゼピン、及びカルバマゼピンから選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用。
【請求項10】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ化合物である、請求項9記載の使用。
【請求項12】
運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害を治療するための薬物の製造における、下記のものと組み合わせた、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、オクスカルバゼピン、及びカルバマゼピンから選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の使用:アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、コリン、トリサリチル酸マグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジン、オルサラジン、又はそれらの組み合わせ;アセトアミノフェン;インドメタシン、スリンダク、又はそれらの組み合わせ;トルメチン、ジクロフェナク、ケトレラック、又はそれらの組み合わせ;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、又はそれらの組み合わせ;メフェナム酸、メクロフェナム酸、又はそれらの組み合わせ;ピロキシカム、メロキシカム、又はそれらの組み合わせ;及びナブメトンから選択される非選択的COX阻害剤:ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、シミコキシブ、又はそれらの組み合わせ;エトドラク;及びニメスリドから選択される選択的COX阻害剤:モルヒネ、メタドン、エトルフィン、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、トラマドール、レボルファノール、メペリジン、プロポキシフェン、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体アゴニスト:及び/又はペンタゾシン、ブトルファノール、ブプレノルフィン、及びそれらの組み合わせから選択されるオピオイド受容体部分アゴニスト。
【請求項13】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンである、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、R-酢酸リカルバゼピンである、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物である、請求項12記載の使用。
【請求項16】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとのラセミ化合物である、請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、S-リカルバゼピンである、請求項12記載の使用。
【請求項18】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、R-リカルバゼピンである、請求項12記載の使用。
【請求項19】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物である、請求項12記載の使用。
【請求項20】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとのラセミ化合物である、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、オクスカルバゼピンである、請求項12記載の使用。
【請求項22】
前記5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体が、カルバマゼピンである、請求項12記載の使用。
【請求項23】
前記障害が、多発性神経炎、多発性硬化症、パーキンソン病、脱遠心性神経を伴う(血管、腫瘍及び炎症過程によって起こる)CNS疾患、運動神経疾患、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、脊髄小脳失調症、頚髄症、脊髄損傷、神経根剥離から選択される請求項9〜22のいずれか1項記載の使用。
【請求項24】
神経障害性疼痛を治療する方法であって、それを必要とする対象に、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、又は酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物から選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
運動障害と神経障害性疼痛との両方を含む神経障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、酢酸エスリカルバゼピン、R-酢酸リカルバゼピン、酢酸エスリカルバゼピンとR-酢酸リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン、S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの任意の割合の混合物、オクスカルバゼピン、及びカルバマゼピンから選択される5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミド誘導体の治療有効量を投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−528278(P2009−528278A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555186(P2008−555186)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/PT2007/000011
【国際公開番号】WO2007/094694
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(596095518)バイアル−ポルテラ アンド シーエー,エス.エー. (25)
【Fターム(参考)】