説明

移動する紙ウェブ又は厚紙ウェブにコーティングする装置

【課題】移動する紙ウェブ又は厚紙ウェブに、粘性の高いコーティング配合物を、平滑にコーティングする装置を得る。
【解決手段】紙、又は板紙の移動するウェブにコーティング配合物をコーティングする装置において、紙、又は板紙の移動するウェブの表面を支持する支持手段19,20と、コーティングするアップリケータユニット16とを具え、このアップリケータユニット16は、ウェブの幅にわたり配置された複数個の高圧無気式の噴霧ノズル17であって、各噴霧ノズルの噴霧パターンにおける噴霧ノズルから発射される微粒化噴霧がウェブ表面に接触するポイントでの直径がウェブの幅より小さいものとなるよう構成した噴霧ノズルと17、ウェブの支持されていない側の表面に前記複数個の噴霧ノズルを包囲する寸法および形状を有してこれら複数個の噴霧ノズル17を包囲するよう位置決めしたノズル包囲体とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上記の方法を実施するのに適する装置、即ち、直接接触することなく、希望する厚さのコーティング層としてコーティングをウェブに加えるアップリケータ装置を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
紙の印刷性能を向上させるため、無機顔料と粘結剤成分とを含むコーティング配合物を紙にコーティングする。数年にわたり、種々の装置を使用し、コーティングの適用と、レベリングとが実施されてきた。ウェブの速度が一層早くなり、プロセスの効率を高め、紙の質を向上させたいという要望のためアップリケータ装置の開発が進められてきた。
【0003】
最初は、顔料を含む配合による紙のコーティングはゲートロール形のコーター(コーティング装置)を使用して行われ、供給ロールの助けを借りて、コーティング配合物を計量して、1組のトランスファロールに送り、更に移動する紙ウェブにこのコーティング配合物を送っていた。しかし、このようなコーターの機能はウェブの速度が 400m/分を越えると損なわれる。ロールのニップはコーティング配合物のスプラッシュを飛ばし始め、必要なコーティング品質を達成するのに必要な安定性をコーティングプロセスが失ってしまう。更に、上述の技術を使用する時に達成すべきコーティング重量の良好な制御を行うのが困難である。
【0004】
特に表面のサイジングのため、ロールでシールされたコーティング配合物溜めに、下方に走行するウェブを通すサイジングプレスが使用されている。この場合、ウェブの湿分含有量が急激に増大すること、及び与えられた寸法の正しい大きさを制御することが困難なことから問題が生ずる。
【0005】
キスコーティング技術では、キャスティングロールから紙ウェブの表面までニップ内でコーティング配合物を直接計量する。初期の時代でも、また今日の板紙コーティングにおいても、エアナイフを使用して余分なコーティングを除去している。しかし、ウェブの速度が 500m/分以上では、ウェブの表面に加えられたコーティング層の余分な層を有効に除去するには、エアナイフのスロットオリフィスからの空気の流れの衝撃力は不十分である。
【0006】
最終的なコーティング重量を制御するためのドクタブレードレベリング技術の適用によって、コーティング速度の根本的な増大が容易になった。ブレードコーターの最初の時代には、上方から下方に走行するようにウェブを配置し、バッキングロールとブレードとの間の凹所内に形成された溜めの中にコーティング配合物をポンプで汲み入れていた。実際に、同一の技術が両面コーティングになお使用されている。
【0007】
ブレードコーティング技術の実際の出現はトランスファーコーティング法の採用と共に生じた。この場合、トランスファーロールとバッキングロールとの間のニップ内で、ウェブ表面にコーティングを直接加える。ウェブの全幅に延びるドクタブレードによって過剰のコーティングを除去している。この種のコーティング技術は約1300m/分までのウェブ速度の増大を可能にしている。これ以上のウェブ速度では、ニップにおけるコーティングのスプラッシングのため、及び移動するウェブと共にニップに捕捉される空気被膜のため、コーティングされたウェブ上にスキップマークを生じ、このため、使用不可能ではないまでも、この方法の使用を非常に複雑なものにしてしまう。ウェブ速度が早ければ早い程、コーティング配合物の成分の選択の自由度が一層少なくなる。この場合、コーティング配合物の配合はウェブの走行能力の拘束の許で選択する必要があり、最終製品の品質を犠牲にしなければならないことすらある。
【0008】
トランスファーコーターの走行性能が低いため、ショートドエルドクタブレードコーターが開発され、種々のグレードの薄いキャリパ紙に軽量のコーティングを加えるための代案の技術が提供された。この形式のコーターでは、ショートドエル適用室とドクタブレードとによって形成されたスロットオリフィスボックスを経て、ウェブを案内し、ウェブをバッキングロールに作用させる。この方法はこの分野で非常にポピュラーになっており、機械上での有効なコーティングを容易にした。また、この方法では、その実行し得るウェブ速度が更なる発展のための制限因子となった。1300m/分以上のウェブ速度では、アップリケータフロー室内での乱流のため、9g/m2以上のコーティング重量では剥離が現れる。更に、一層大きなコーティング重量では、ウェブ幅方向のコーティングプロフィル(断面輪郭)が本質的に悪くなる。
【0009】
紙の表面のサイジングに通常使用されているフィルムトランスファ形コータの設計における向上は、また顔料コーティングの適用までこれ等のコータの使用を拡大した。この場合、ショートドエルコーターに類似する装置により、コーティング配合物をトランスファロールまで計量し、ここからコーティングフィルムを更に2個のロールのニップ内から紙ウェブの表面まで運ぶ。この新規な技術は最初は表面サイジングに導入され、後には過去のウェブに拘らない高いウェブ速度での顔料コーティングの適用に導入された。しかし、ウェブがフィルムトランスファニップを出る時、コーティングフィルムのスリット点に発生するコーティングミスト、及びスプラッシングの形で問題が生じている。高いウェブ速度を与えた時、10g/m2以上の重コーティング状態では、全ての仕様を満たすことができないみかん肌組織、及びその他の低品質の表面性質が仕上げ最終製品に生ずる。
【0010】
適用ロール上に生ずるコーティングスプラッシング、及びスキッピングの問題は一層高いウェブ速度の方向の広い許容範囲を与えるノズル適用技術によって打ち勝つことができた。更に、一層長い一時停止時間によって生じた一層有効な水の排水によって、大きなコーティング重量を加える一層高い可能性が達成された。
【0011】
更に、コーティングはドクタブレードに支持部を提供する一層固体含有量が多い層をベースシート表面に密接して形成し、これによりブレードの安定性を向上し、ウェブ幅方向における断面輪郭の平坦性を向上させている。
【0012】
ドクタブレードに基づくノズル適用工程、及びスクレーパ素子に基づくその後のレベリング工程を同一のバッキング素子に対し行った時、一般に、襞、及び/又は袋の形状がウェブに発生し、走行性の複雑化を生ずる。この問題は別個のバッキング素子に対し、ノズル適用工程、及びレベリング工程を実施することによって解消することができる。停止時間、及び紙の湿分含有量の増大に基因し、軽量な紙質、及び湿分吸収性が高い紙質の場合の走行性について若干の困難に遭遇している。
【0013】
ショートドエルコーターの剥離の問題はコーティングのフィルムトランスファー法から知られているダムブレード構造によって軽減された。しかし、上述の適用法の全部はコーターによってウェブに機械的に接触し、負荷が加わることによって妨げられている。特に、ブレードコーターでは、ベースシートの欠陥によって紙の生産が容易に瓦解する。コーターラインの効率を向上させるためペーパミルは強力な推進力を有する。ウェブの破断によって、貴重な生産時間が失われることは明らかである。従来の適用技術においては、ウェブの破断後、許容できる品質を再び取り戻すための時間は不当に長い時間である。
【0014】
ウェットオンウェットコーティングのためには、ブレードコーターは必ずしも可能最高の代案ではない。このコーティング法では、ウェブの同一側に少なくとも2個のコーティング層を加える。中間的な乾燥を行うことなく、第1層がまだ湿潤している間にその上に次のコーティング層を直接加える。特にプリコーティングを加える場合、剥離や非平坦のようなウェブの欠陥は非常に不利である。従って、ブレードコーターはコーティング重量を設定値に維持するための連続する制御が必要である。それ故、プリコーティングの重量を容易に測定し得ることは、制御されたコーティングの適用を維持するため絶対に必要である。しかし、コーティング層の順次の適用工程間で操作するそのようなコーティング重量測定システムは高価であり、或る場合には設置するのが不可能な程、高価である。従って、既に加えられ、まだ湿潤しているコーティング層を損なうことなく、次のコーティング層の適用と、レベリングとを実施し得るように、安定した操作を行うことはウェットオンウェットコーターにとって必要である。
【0015】
支持されたウェブを通すことによって、抄紙機、及びコーティングステーションにおいて走行性を向上させる試みがなされて来た。その場合、コーターに使用される支持ワイヤ、又はベルトには非常に平滑な表面が要求される。更に、バッキング表面の最小の不規則性でも、特にブレードコーターにおいてだけでなく、トランスファーコーターにおいてもコーティングのマーキングを発生させる。
【0016】
一層高いウェブ速度では、オフマシンコーターの巻戻し機において上首尾で行われるフライングスプライシングの割合は著しく低下する。この場合に必要なスプライシング装置は高価になっており、それにも拘らず、スプライシングの正確なタイミングに関し問題が生じる。従って、コーターの将来の開発はスプライシング、及びロール交換に関連するこのような問題が仕上げ処理を乱し得ないようにオンマシンコーターを具体化することである。
【0017】
ウェブに加えられたコーティングのドクタリングを行うブレードはブレード端縁の下に汚れの凝集体を蓄積する傾向があり、これによりコーティングの剥離を引き起こす。このようなコーティングの欠陥に起因し、仕上げられた大量の紙が廃棄されている。
【0018】
ブレード先端区域においてコーティング配合物に作用する高い剪断力の非常に強力な部分に起因し、コーティング配合物の流動学的性質により、ウェブの走行性に関して問題を引き起こす。従って、コーティング配合物の配合の可能な選択はブレードの幾何学的形状に関連する流動学的拘束によって、狭くなることが多い。
【0019】
上述の欠点に打ち勝つため、紙のコーティングは、接触しない方法を使用して実施するのが好適であるはずである。ウェブにコーティングするため接触しない方法を使用することにより、仕上げ処理を乱さないようにしてベースシートの欠陥を防止している。ワイヤ、及びベルトによって完全に支持されるウェブ通過システムで補助することにより、完全に自動化されたコーティングプロセスでもウェブの破断を無くすることができる。この場合、紙ウェブの欠陥は欠陥検出器によって確認され、これが次のプロセスに干渉しないようにするため、確認された欠陥は中間巻取り中に除去される。一層高いウェブ速度に対する装置の開発はウェブに加わる負荷によって、も早、進歩を妨げられることはない。加えられたコーティングの隠蔽力は非常に良くなっており、今日、板紙コーターの最高速度を制限している主要な因子であるエアナイフを新規な技術によって置き替えている。従って、コーティングラインの効率、及びコーターの生産高を著しく高いレベルに上昇させることができる。
【0020】
非接触コーティング法は例えば国際特許出願PCT/US91/03830、及びフィンランド特許出願第925404号、及び第933323号に記載されている。ここに説明するコーターは、別個のダクトを通じてコーティング配合物をノズルに送り、ノズルに通る圧縮空気の助けを借りてコーティング配合物の微粒化を行う。しかし、テストの結果は圧縮空気による噴射拡散に基づくノズルの使用から不十分な微粒化が生ずることを示した。更に、このような強力な空気の流れはコーティング配合物がシート表面に衝突する前に、コーティング配合物の液滴を過剰に蒸発乾燥させる。また、コーティングミスト内の過大な寸法の液滴は仕上げ面にピット(小さなクレーター)を生ぜしめ、コーティングを不平滑にする。これはコーティングプロフィルにクレーター、及び小突起として現れる。
【0021】
フィンランド特許出願第911390号、米国特許第248177号、更に国際出願PCT/FI89/00177はアップリケータ装置を論じており、これ等の装置では、ガス液体ノズル、又は超音波拡散ノズルを使用する別個の室、又は装置内でコーティング配合物エーロゾルを形成している。コーティングエーロゾルをアップリケータノズル内に通し、別個のガス噴射によってコーティングエーロゾルをシート表面に指向させ、衝突させている。ウェブに付着しなかったコーティング配合物エーロゾルの一部を吸引によってコーティング配合物循環路に復帰させる。このような装置においては、コーティング配合物の液滴はシート表面に到達する前に蒸発し、シートへの付着が妨げられる。従って、この紙を印刷部門で使用する時は、大量の埃が印刷機のロールに堆積し、コーティングは埃をトリミング装置、及び折り装置に放出する。
【0022】
国際特許出願PCT/FI93/00453に記載された装置においては、上述の方法を使用してコーティングを加え、次にドクタユニットを使用してレベリングを行う。この方法は、上に説明した欠点を有する通常のドクタブレード技術を除き、直接適用の種類を代表している。
【0023】
非接触コーター装置は良く知られており、塗装システム、及びコーティングシステム技術の分野でしばしば使用された装置である。適当なノズルを有する高圧噴霧装置は塗装用に市販されている。しかし、後に詳細に説明するように、紙、又は板紙の移動するウェブにコーティング配合物を加えるため高圧噴霧を使用することは非接触適用技術の新規な適用である。
【0024】
コーティングすべき表面にコーティング配合物、又は材料を噴霧するのを可能にするため、流体材料を小さな液滴に分散させることが必要である。この工程は微粒化と呼ばれる。微粒化の基本的な概念は、塗装から、種々の燃焼設備、機関、更にガススクラバー、及び蒸発塔のような質量、及び熱の移送のための装置までの範囲にわたる種々の用途をカバーしている。一般的な語として、微粒化とは流体材料を液滴の形(即ち丸い、又は類似の形状の粒子)に変換することを称する。噴霧の形式は噴霧ジェットの横断面の形状により類別される。通常、中空、又は密実の円錐形、又は扇形の噴霧が使用される。噴霧がカバーする範囲はノズルの先端から或る距離の噴霧パターンの幅として定義されている。噴霧角はノズルから放出される噴霧円錐形の開放角である。
【0025】
微粒化ノズルは4つの異なる種類に分けられる。
(1)高圧ノズル(圧力微粒化装置)
(2)回転遠心微粒化に基づく微粒化装置(回転微粒化装置)
(3)空気補助空気噴射ノズル(双流体微粒化装置)
(4)他の方法
【0026】
高圧微粒化装置は微粒化すべき流体の内圧によってのみ押されて微粒化が起こる特徴がある。微粒化用空気は使用しない。実際のテストでは、空気のない微細化ノズルは空気噴射ノズルより優れていることがわかった。
【0027】
本発明の先導規模のテストにおいて、噴霧技術をコーティング配合物の適用工程にまず適合した。加えたコーティングのレベリングは通常のドクタブレード技術を使用して行われた。しかし、この組合せは先行技術のノズル適用方法以上の利点はなかった。
【0028】
この方法では次のような欠点がわかった。
・テストに使用された形式のノズルに関しては、平滑なコーティングを加えるためコーティング配合物を十分に微粒化するためにはコーティング配合物の粘性が余りに高かった。
・コーティング配合物の液滴はシート面に十分に付着し拡がるだけの十分な運動のエネルギーを得ることができなかった。
・流体の微粒化ノズルに使用される圧力レベルはコーティング配合物の微粒化のためには不十分であった。
微粒化適用方法に使用されるコーティング配合物は、ノズル内で形成されたコーティング液滴をシート表面に駆動してウェブの表面に液滴を平坦にし、接着するために十分に高い運動のエネルギーを有することが必要である。ウェブ速度が一層高い場合、移動するシート表面と共に移動する空気被膜によって形成された遮断層に液滴が貫入し得ることが必要である。これ等の要件は空気噴射微粒化ノズルによっては満たされない。これは、噴射空気の流れはコーティング液滴の強烈な蒸発を生ぜしめ、このためシート表面上のコーティング配合物液滴の被着と拡がりとが一層悪くなるからである。従って、達成可能なコーティング品質は不満足なまま留まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は上述の技術のような欠点が無く、接触しないでコーティングを加える方法を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の目的は高圧無気式の噴霧ノズルの助けを借りてシート表面上にコーティング噴霧工程を行うことによって達成される。
更に、本発明装置は請求の範囲の請求項の特徴とするの部分に述べた特徴を有する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は顕著な利点がある。
コーティングにドクタリングをする必要がなく、全く接触することなくコーティングを加える本発明方法はコーティング装置の操業性を著しく向上させることができる。この方法はウェブに大きな力が加わらず、バッキングロール、又はベルト上を走行するウェブ、又は支えられていないウェブに対してもコーティングを実施することができる。高圧無気式の噴霧ノズルにより非常に平滑な表面が得られ、この表面はエアナイフによって得られた表面のコーティングプロフィル(断面輪郭)に類似するコーティングプロフィルを有し、或る場合にはドクタリングを加えたコーティングの表面よりも一層平滑である。コーティングウェブの平滑さはベースシートのプロフィル(断面輪郭)によって影響を受けることは明らかであり、従って、コーティングすべきベースシートに噴霧コーティングを加える前に、このベースシートをプリカレンダリング工程に通して走行させるのが有利である。この方法においては、ベースシート表面上に一定厚さの均一な層としてコーティングが安定し、これによりコーティング層の高い隠蔽力が得られる。従って、この方法は種々のグレードの半漂白板紙のみにコーティングするのに特に適している。ノズルの数、及び各個のノズルへのコーティング送給流量を変化させることによってコーティングの重量、およびプロフィル(断面輪郭)の制御は容易である。行ったテストに基づくと、シート上へのコーティング噴霧の衝撃は、水分をコーティング配合物からベースシート内に激しく移動させない。この方法はウェットオンウェットコーティングに非常によく適しており、これはノズルによって放出したコーティング噴霧は予め加えた層を攪拌せず、湿潤しているウェブに加わる負荷が小さいからである。
【0032】
本発明アップリケータ装置は簡単でコンパクトな構造であり、最少のスペースを要するのみであり、コーティングラインの一ユニットとして比較的自由にアップリケータに一体化することができ、希望すれば、抄紙機内にコーターユニットとして設置することができる。この装置はコスト上有利な構造であるから、先行技術におけるより一層安価に多数層のコーティングが可能になり、全体としてのコーティングの厚さを増大することができ、更に種々のコーティング層を加えることによって、先行技術におけるより一層コスト上有利に紙の質を制御することができ、単一のコーティングラインにおいて一層融通性あるように異なるグレードのコーティング紙を造ることができる。
【実施例】
【0033】
次に添付図面を参照して本発明を一層詳細に説明する。
本発明によれば、高圧無気式の噴霧ノズルによってコーティングをウェブに加える。加圧液体を小さなオリフィスノズルに通すことによってノズルヘッド内で流体を微粒化する。従って、噴霧コータへー装置の心部構成部分はコーティング微粒化ノズルである。テスト結果は、無気形の、即ち空気を使用しない高圧噴霧ノズルは一般に好適であることを示している。流体は1〜1000バールの範囲内で加圧される。しかし、代表的な圧力は 100〜300 バールの範囲内で変化する。100 バール以下の圧力はコーティング配合物を十分小さい寸法の液滴に微粒化する条件下にあり得ないことがわかった。
【0034】
通常、この噴霧コータ装置は扇形の噴霧を放出するように設計されたノズルを組み込んだノズル組立体を有する。ノズルの扇形の噴霧パターンの主軸線はノズルのウェブ幅方向に延在する主軸線に対し約7〜15°だけ回転しており、これにより比較的平滑なコーティングプロフィル(断面輪郭)結果を得ている。また、このノズル組立体は相互のノズルの距離、及びベースシートからの全体のノズル組立体の距離を容易に調整し得る特徴を有する。ノズル調整部分の最も複雑でない設計は、このシステムの全てのノズルを同時に調整し得ること、及びできるだけ全てのノズルに同一の状態を付与し得ることである。各ノズルの別個の調整は、ノズル噴霧パターンのウェブの幅にわたりコーティングプロフィル(断面輪郭)制御について或る寛容度を与える。更に、ノズルの個々の制御はノズル内のオリフィスの摩耗を補正するために或る程度使用することができる。
【0035】
行われたテストに基づいて、単一のノズルによって達成し得る有効な実際上の噴霧パターン幅は約10〜30cmであることがわかった。このことはウェブ幅の直線メートル当たりそれぞれ10〜3個のノズルが必要であることを意味する。均一なコーティング品質は全体のウェブ幅にわたって延在する単一のノズル直線列では達成されそうもないから、噴霧コーター装置はノズルの複数直線列を使用するように構成する必要がある。
【0036】
コーティングミストの形成は有効な溶液を必要とする噴霧コーティング法の問題点の1つである。コーティングミストの形成を無くする課題は4つに分けられる。(1)ウェブ上への噴霧粒子の被着ができるだけ妨げられず行われるようにコーティング配合物を噴霧状態にすることである。このことは実際上、移動するウェブの表面と共に移動する空気の被膜を除去することを意味する。(2)できるだけ均一な寸法の液滴を発生し、小さい寸法、及び小さい運動のエネルギーの液滴の数を最少にするようにノズルの設計を選択することである。(3)液滴の静電荷、コーティングミストの形成、及びウェブへの流体滴の適切な衝撃力のような作用パラメータを検討して、ウェブへのコーティング滴の接着を是が非でも最大にすることである。(4)適切な機械的ミスト捕集システムを使用することである。
【0037】
適切なバッキング表面に十分緊密にシールされるように噴霧ノズルユニットを設置する必要がある。このような表面は少なくともウェブ支持ロール、ベルト、フェルト、又はワイヤによって提供される。これに関連して、シールの語はアップリケータユニットの周縁区域、及びウェブの端縁区域、更に噴霧コーターの進入部、及び送出部におけるウェブの制御された移動部の気密なシールを意味する。このようなシールは過剰なコーティングミストの適正な捕集のために非常に重要である。
【0038】
噴霧コーティングにはウェブと共に移動する空気被膜の有効な除去が必要である。この空気被膜はウェブ上への噴霧粒子の被着に対する遮断層を形成している。また空気被膜の除去はコーティングミストの形成を減らすのを助けるから、空気被膜はできるだけ有効に除去すべきであり、噴霧コーターユニットの進入口にできるだけ近く除去すべきである。この空気被膜の除去は、ドクタブレードのように操作される装置、又は代案としてウェブの移動方向に逆らって吹き付けるようエアナイフを適合させることによって達成することができる。これに対し、噴霧コーターユニットの内側のウェブ表面から空気被膜を除去することは複雑な課題となる。これはコーティングミストは噴霧コーターユニットの内側のいかなる面にも被着する傾向があるからである。
【0039】
空気被膜のドクタリング方法は、噴霧コーティング装置の進入側の直前で実施すべき重要な工程である。空気被膜のこのようなドクタリングは、例えばウェブの移動方向の逆方向のエアナイフからの空気噴射に基づく逆吹き付けによって実施することができる。また、種々のドクタブレード装置が空気被膜の除去に適している。このような空気層ドクタリングアクセッサリの最適の位置は噴霧コーター進入側の密接する位置である。噴霧コーターユニットのノズル包囲体の内側にこのようなアクセッサリの素子を配置するが、このような設置には付加的な清潔維持装置が必要である。
【0040】
コーティング配合物は噴霧コーティングに適する特定の配合で各コーティング走行部に別々にコーターのコーティング配合物機械タンクに供給される必要がある。機械タンクへの新鮮なコーティング配合物の送給は連続的に、又はバッチ式にすることができる。必須の要件はコーティング配合物は適切な物理的性質を有し均質な配合を有することである。望ましいコーティング配合物の成分は各ベースシートの形式、及びグレードに対して別個に決定される。コーティング配合物の粘性、及び固体分含有量は噴霧コーティング法に適合するように調整される。一般に、噴霧コーティングに最適なコーティング配合物の配合はドクターブレードコーターに使用されるコーティング配合物に比較し、固体分含有量、及び粘性が小さい。
【0041】
噴霧コーターユニットの使用に当たり、少なくとも3つの異なるモードが分類される。即ち(1)走行モード、(2)洗浄モード、(3)ノズル交換モードであり、これ等の全てのモードはコーターユニットの実際の機能を中断することなく行えるように構成される。
【0042】
噴霧コーターユニットは十分に剛強な本体を有することが必要であり、この本体はウェブを支持するバッキング面に対し、合理的に緊密にシールすることができ、噴霧コーティングノズル、又はノズル列を取り付けるための取付具を有するようにコーターユニット本体は配置される。また全体のユニットはその本体によって外部支持体に取り付けられることが必要である。走行、洗浄、又は交換に関連する種々の作動モードを容易に実施し得るようにコーターユニット本体は設計されるべきである。
【0043】
コーターユニット本体へのノズルの取付けは複数個の種々の方法で実施することができる。基本的な構成は、ウェブの幅にわたって延在する直線ノズル列にノズルを組み立てるか、又は代案として、各ノズルを交互に噴霧コーターユニットの本体に取り付けることである。直線の列に配置すれば、作用させるため、又はその他の操作のため、噴霧コーターユニットからノズルの全体の直線列を自動化して除去する際のロボットによる操作が容易になる利点がある。更に、直線列のノズルは単一の導入口を有する共通コーティング配合物供給流路を一層容易に設けることができる。
【0044】
コーティングミスト捕集システムの作動原理によって、噴霧コーターユニットの内部に噴射流デフレクタを設けることができ、これにより紙ウェブに上首尾でコーティングを加えると共に、一方、コーターユニット内部から最高の効率で過剰なコーティングミストを捕集するようコーターユニットの空気力学的性質を向上させる。
【0045】
このコーターユニットの内部の空気力学的流動パターンは少なくとも次の素子によって制御することができる。即ち、デフレクタ、蒸気管、空気注入、水分加湿、及び表面での結露(水分凝集)である。
【0046】
ノズルへのコーティング配合物の送給装置は使用されるノズル技術に適合するように配置されることが必要である。高圧の無気ノズルは低圧噴霧ノズルよりも送給システムに関して一層要件が厳しい。
【0047】
しかし、必須の課題はノズル、又はノズル列の独立した制御が或る程度必要なことによって示される。これにより、実際上、送給ラインが十分な数の制御弁を具えることが必要である。他のノズル、ノズルの直線列、又は噴霧コーターユニットの作動を乱すことなく、ノズル、及びノズル列の作動中、又は交換中、選択したノズル、又はノズル列へのコーティング配合物の送給を遮断する手段を設けることが必要である。コーターユニットの設計に当たり、次のような因子によって制御の結果が影響を受ける。即ち、超音波技術、及び静電技術を含むノズルの形式と、ノズルの距離、及び噴霧角の制御と共にコーティング配合物の適用技術と、コーティングミストの形成の制御とである。
【0048】
その最も簡単な実施例においては、噴霧コーターユニットは、ウェブから適切な距離にあって噴霧ノズルの希望する噴霧幾何学形状を有するノズルの直線列を具える。この種のアップリケータ装置を使用して、ウェブの全幅にわたり延在する均一なコーティング層を加えるようにコーティング配合物噴霧をウェブ上に衝突させる。コーティングプロフィル(断面輪郭)制御のために、この噴霧コーターユニットを使用する時、噴霧ノズル組立体は必ずしもウェブの全幅に対しコーティング層を加える必要はなく、むしろ望ましい局部的なコーティング層の適用によってコーティングプロフィル(断面輪郭)制御を達成することができる。ノズルの他に、全機能噴霧コーターユニットは、コーティング工程で余分なものとして形成されたコーティングミストを回収し、及び/又は分離し得るコーティングミスト捕集システムを有する必要がある。コーティングミスト捕集システムの異なる装置については後に本明細書中に説明する。
【0049】
噴霧コーターユニットでコーティングされる紙ウェブに高品質を達成するため、最も重要な工程は紙ウェブ表面へのコーティングの噴霧である。この場合、使用されるノズル技術は、この方法によって達成し得るコーティングの品質を決定する主要な設計因子を形成している。種々のテストにおいて、高圧無気式の噴霧ノズル(100バール以上の圧力で作動)が噴霧コーティングに最適の性能を発揮することがわかった。この形式の独立した複数個のノズルをウェブの全幅にわたり延在するノズルの直線列に組み立てることができる。
【0050】
噴霧コーティング工程において形成されたコーティングミストを捕集し、空気から分離するための設備を設ける必要がある。コーティングミストの上首尾な捕集には、周囲から分離された包囲空間内に噴霧ノズルを設置することが必要である。このシールされた空間の容積は広く変化させることができる。最も小さい形状では、各ノズルの周りに別々の閉じた空間を設計する。その最も大きい形状では、全体のコーターユニットをフードのようなもので包囲することが考えられる。また、フードの下の全体のコーティングラインのノズル包囲体は可能な構成である。
【0051】
コーティングミスト捕集システムの最適の寸法はノズルの多数のノズル列を包囲するものと考えられる。以下に使用する噴霧コーターユニットは少なくともノズル、又はノズル列と、作動手段を有するコーティングミスト捕集システムとを具えるアップリケータ装置を示している。コーティングラインの他の部分へのコーターユニットの連結は重大でなく、従って、コーティングラインに沿うコーターユニットの位置を変化させることができる。
【0052】
コーティングミスト捕集の最も簡単な構成においては、噴霧コーターユニット内に浮遊するコーティングミストを除去するために真空吸引のみを使用する。このシステムの設計における問題点はコーティング工程それ自身に影響を及ぼさないようにして、空気除去の適切な割合をどのように見出し、最適の吸引点をどのように選択するかである。コーティングミスト真空吸引システムのこの形式の機能は重力に無関係であるから、設計者はそれを任意の物理的な位置に自由に配列することができる。この技術においては、コーティングミストの実際の分離は噴霧コーターユニットの外側で行われる。真空ダクトの設置と寸法とを変化させることができ、真空ダクトの適切な配列、寸法、及び吸引速度を選択することによってコーターユニットの内部の気流パターンを最適にすることができる。
【0053】
コーティングミスト捕集システムの他の実施例では、コーティングミストを捕捉するため、噴霧コーターユニットにおけるノズル包囲体の内壁を降下するコーティング、又は他の液体を使用する。この場合、種々の装置を採用し、コーティング、又は液体の降下する被膜に接触するよう、コーターユニット内に浮遊するコーティングミストを案内し、これによりコーティングミストエーロゾル粒子を落下する被膜に付着させる。この構成はコーティング、又は液体の降下する被膜を発生させ、除去する両方の操作のために連続してポンプ作用を行う必要がある。コーティングミストの分離は、上述の真空吸引技術の場合におけるようにユニットの外側で分離が行われるのでなく、ここではコーターユニットの内側で既に発生している。しかし、降下する被膜を利用するコーティングミスト分離システムを具える噴霧コーターユニットは種々の位置に自由に設置することはできない。これは降下する被膜を発生させるためには重力の助けを借りなければならないからである。従って、コーティングミスト捕集システムの最も融通性ある構成を具体化するため、噴霧コーター本体の設計を変化させることがあり得る。
【0054】
2個の基本的な変形の構成は水平に作動し吸引をベースにするコーティングミスト捕集システムと、垂直に配列された降下被膜システムとを具える。
【0055】
上述の2つの基本的な技術は組み合わせることができる。これによりコーティングミスト除去の最高効率を提供する。更に、浮遊する粒子の任意の流れをコーティング、又は液体の降下する被膜に強制的に有効に接触させるように、吸引する流れのパターンを配置することができる。
【0056】
コーティングを加えるため本発明噴霧コーターユニットを使用するコーティングラインの構成の2つの例を次に示す。この噴霧コーターシステム自身はフィンランド特許出願第954745号に基づく係属出願に記載されている。
【0057】
紙ウェブに単一層の2面コーティングするようにした単一オフマシンコーティングラインを図1に示す。このラインの第1ユニットは巻戻し機1であり、この巻戻し機から後方にウェブをプリカレンダ2に送る。このプリカレンダは、例えば2個のソフトローラ、及び1個のハードローラのニップを具える。プリカレンダ2の次に噴霧コーターユニット(噴霧コーティングユニット)3を配置し、このユニットで希望するコーティング層をウェブの第1面に加える。実際のコーターユニットはベルトバックドコータであって、ベルトで支持されたウェブに2工程でコーティングを加える。このようなコーターユニットは単一パスで重コーティングを加えることができる。このコーティング工程の後に、ウェブを赤外線乾燥器4に送り、次に浮遊乾燥器5で、最終的に円筒乾燥器6で乾燥する。乾燥直後に、この乾燥されたウェブを第2噴霧コーターユニット7に通し、次に上述の装置と同一の順序で、即ち赤外線乾燥器8、浮遊乾燥器9、及び円筒乾燥器10で乾燥する。この乾燥の後、4個のニップを有する機械カレンダ11でこの紙ウェブをリカレンダリングし、巻取機12のロールに再巻き取りする。図2のコーティングラインは第2のコーター、及び乾燥部の直後に巻取機を配置する点で上述のシステムと相違している。このコーティングラインにはソフトニップカレンダ13、及びスーパカレンダ14のような異なるカレンダを追加している。
【0058】
図1、及び図2に示すコーティングラインの利点の1つは構造が簡単であるにも拘らず、プリカレンダリング、及びポストカレンダリングの助けにより噴霧コーティングの特徴である非常に良好な隠蔽力に組み合わせた非常に平滑なコーティングを行うことである。更に、コーティング配合物の配合、及びカレンダリングを変化させることによって紙のグレードの種々の仕上げを行うよう図2の装置を容易に変更することができる。
【0059】
噴霧コーター装置の2つの実施例を図3、及び図4に示す。図3の装置はバッキングロール15と、ウェブをこのバッキングロールに通すガイドロール18と、4個のアップリケケータユニット16とを具え、各アップリケータユニット16は3個の平行なノズル直線列17を有する。このノズル直線列のレイアウトと異なるレイアウトのノズルを有するノズル組立体をこのノズル直線列の代わりに使用し、これ等ノズルの噴霧範囲を少なくとも1列、又は2列のノズル直線列の噴霧範囲に相当するようにする。従って、このコーティング方法は単一のコーターユニットで行う4工程でコーティングを加えることができる。1個のノズル列17の噴霧ジェットが先行するノズル列の相互のノズル間の間隙に常に配列されているように互い違いにノズル列17を設置する。ウェブへの適用区域を区切るノズル包囲体25内にノズル列17を収容する。図4に示すコーターは3個のアップリケータユニットを有する。この線図から明らかなように、アップリケータユニットは非常に簡単な構造であり、これ等ユニットを非常に狭い空間に設置することを可能とし、従って、単一のバッキングロール15に例えば1個〜4個の隣接するアップリケータユニット16を設けることができ、ロール15の直径を大きくすれば更に多くのアップリケータユニットを設けることができる。アップリケータユニットがコンパクトな構造であることと、僅かなスペースを必要とするに過ぎないから、このアップリケータユニットはコーティングラインに沿って殆どいかなる場所にも設置することができ、抄紙機の内側にすら設置することができ、これによりこの形式のコーターは大部分の変更した形態のコーティングラインを具体化することができる。3個のノズル列17を具備したアップリケータユニットでも比較的平滑なコーティングを得ることができ、望ましければ一層平滑なコーティングを行い、全体のコーティング厚さを増大させるためアップリケータユニットの数を増大することができる。
【0060】
図5はベルトで支持されたコーターユニットを示す。このユニットは2個のベルト案内ロール19を有し、このローの上にウェブに平行に走行する支持ベルト20を通す。支持ベルト20に緊密にシールして静止するようアップリケータユニット16を配置し、支持ベルト20によって支持されたアップリケータユニットの正面を通過するようウェブを配置する。ベルト20を清潔に保つため他方のバッキングロール19に協働して働くようスクレーパ21を適合させる。このようなベルトで支持されたアップリケータ装置の助けを借りて、必要なら非常に多くのアップリケータユニット16を単一のコーターユニットに適合させることができる。直線支持ベルト20上に順次設置されたアップリケータユニットを有する図5に示す装置の最も重要な利点は、ウェブの方向を変換することなくウェブをコーターユニットに直接通すことができることである。赤外線乾燥器、又は浮遊乾燥器のように接触しない乾燥器を使用してウェブの乾燥を行えば、この形式のコーターユニットは、コーティングすべきウェブをコーター設備の全長にわたり真直ぐに通すように全体のコーティングラインを配置することができる。摩耗や塵埃の堆積に起因し、或る時間間隔で噴霧ノズルを交換しなければならないから、自動的にノズル23を交換するため、このコーターユニットにロボットノズル交換器22を設ける。
【0061】
図6には支持ベルト20によって支持されるウェブをベルト案内ロール19上に通すようにしたベルトで支持されるアップリケータユニットを示す。2個のアップリケータユニット16と、ノズル23のロボットノズル交換器22とを無終端ベルトの両側に設置する。このようなコーターユニットは使用に当たり非常に融通性がある。例えば、ノズルの交換、又は清掃のためアップリケータユニット16の1個を連続的に不作動にすることができ、又は代案として、支持ベルトの一側の少なくとも1個のアップリケータユニットを仕事に就かせるため休止から戻すようなスケジュールを引き出すことができる。またここでもスクレーパ21によってベルト20を清掃する。
【0062】
ウェブに沿って移動する空気被膜を除去するための空気噴射手段として、リバースブローイングエアナイフ組立体24を有する上述の形式のアップリケータユニット16を図7に示す。このリバースブローイングエアナイフ組立体24は、ウェブの移動方向の反対方向に空気ジェットを吹き付けるためスロットオリフィス34を有し、アップリケータユニットにおけるノズル包囲体25の侵入端に設置された空気管を具える。更にこのアップリケータユニットは空中に舞い上がっているコーティング配合物エーロゾルをアップリケータユニットにおけるノズル包囲体25から除去のため、真空ダクト26を具えるコーティングミスト捕集システムを組み込んでいる。ノズル包囲体25の内壁から或る距離に最外側のノズル列17に密接して気流デフレクタ27を適合して設ける。この気流デフレクタ27はノズル包囲体25の内壁に沿って流れる気流のように真空ダクト26の吸引作用により導入される流れの助けを借りて、ノズル23によって放出した主噴霧から逸出したコーティングミストをノズル包囲体25から離して除去し、しかもノズルの噴霧パターンを乱すことがない。図8に示す装置においては、ウェブの表面から空気被膜を除去するため、機械的なスクレーパとしてのドクターブレード28を設けると共に、コーティングミスト除去のための真空ダクト26をノズル列の間に配置する。この構成はウェブが低速である場合に使用して適している。低速であると、ウェブに沿って移動する空気被膜の量、及び噴霧から形成される過剰なコーティングミストの作用は一層少ない。
【0063】
図9にはコーティングミスト捕集の他の方法を示す。ここではウェブの侵入点、及び送出点に近く、アップリケータユニットにおけるノズル包囲体の側部に、コーティング配合物送入管29を設置し、ノズル包囲体25の内側壁にコーティング配合物を送るためスロットオリフィス開口30をこの配合物送入管29に設ける。捕集されたコーティングミストの除去のための吸引ダクト26は側壁の下部隅角部に設置される。この構成では、側壁を降下する液体被膜はノズル包囲体25内に浮遊するコーティング配合物エーロゾル粒子を捕捉し、この捕集されたコーティングミストを吸引管26内に運ぶ。
【0064】
個々に取り外し得るノズル23の代わりに採用することができる取外し得るノズル直線列を図10に示す。このノズル列はマニホールド管31を具え、このマニホールド管31に取り付けられたノズルに対しマニホールド管31に沿ってコーティング配合物を送る。またこのノズル列はアップリケータユニット16に連結するための取付け具34を具える。従って、全体のノズル列を一体のものとして交換することが容易である。
【0065】
垂直位置に取り付けるために適するアップリケータユニットを図11に示す。このようなアップリケータは例えば垂直に走行するように配置されたベルトを有し、ベルトで支持されたコーティング装置に使用することができる。このアップリケータユニットのノズル包囲体において、ウェブに向く側壁の下端縁には側壁に沿ってコーティング配合物を送る役割を果たすコーティング配合物送入管29を設ける。捕集されたコーティング配合物の除去のための吸引管26は同一の側壁の下部隅角端縁に設置する。ノズル包囲体内に浮遊しているコーティング配合物エーロゾルは、ノズル包囲体の内側壁を降下するコーティング配合物被膜に衝突するように、吹付け管33の助けを借りて、この配合物被膜に向け指向せしめられる。ノズル列17の間に残っている区域内で、吹付け管33から空気、又は蒸気をコーティング配合物の降下する被膜に向け注入し、浮遊するコーティングミストのエーロゾル粒子をこの空気、又は蒸気によって捕捉する。
【0066】
図12にアップリケータユニットを示し、このユニットはウェブの表面上を移動する空気被膜を除去する目的に適合されたリバースブローイングエアナイフ組立体を具え、更に浮遊するコーティング配合物を捕捉するコーティング配合物の降下する被膜を形成するようノズル包囲体25の内側壁に配置されたコーティング配合物送入管29を付加的に有する。更に、ノズル包囲体は空気、又は蒸気を注入するためノズル列17の間に配置された管33を収容しており、更に浮遊するコーティングミストの流れをノズル包囲体25の内側壁に向け案内するのに役立つ気流デフレクタ27を設ける。
【0067】
コーティング配合物の循環の実施例を図13に示す。この実施例では、このコーティング配合物の送り圧力を一様にするのに役立つ蓄圧器37を介して、高圧ポンプ36によって、コーティング配合物タンク35からコーティング配合物を送り出し、蓄圧器37からこのコーティング配合物をノズル直線列17に送る。別個の低圧ポンプ39を使用して、コーティング配合物を機械タンク35からコーティング配合物送入管29に送り、内壁から捕集されたコーティング配合物の下降する流れと共に、過剰なコーティングミストをポンプ38によってアップリケータユニットにおけるノズル包囲体25から除去する。含まれている豊富な空気と共に、除去したコーティング配合物をストレーナ40に送り、ここで凝集体をコーティング配合物から濾過して除去し、残りの濾液をコーティング配合物タンクに復帰させる。
【0068】
コーティング配合物の他の循環を図14に示し、この構成は付加的な層状分離器、又はサイクロン分離器を有し、含まれている大量の空気と共に、コーティングミストをこの分離器に通すことができる。
【0069】
コーティング配合物の循環の最も好適な構成を図15に示し、この構成は含んでいる空気を分離するため、アップリケータユニットから除去した全部のコーティング配合物を有利に層状分離器、又はサイクロン分離器に通す。通常、噴霧コーターから復帰したコーティング配合物は非常に多くの空気を含んでおり、このためこのコーティング配合物を配合物タンクに復帰循環させる前に有効に空気を分離することは絶対に必要な工程である。ここに図示する循環システムにおいては、コーティング配合物タンク35からの送給の他に付加的な送給を行い、コーティング配合物から空気を除去するのを助ける。図15の循環システムはポンプ44を有する水タンク43と、ノズル17、及び蓄圧器37に水を送る弁45とから成る洗浄ラインを付加的に設ける。
【0070】
本発明方法はコーティングテストに適用して以下に説明する結果を得た。
このテストにおける全幅ウェブのコーティングは予期しなかった程、ほぼ好結果が得られた。3個の隣接する噴霧帯域はウェブが高速に達するだけの十分なコーティング能力を提供しなかった。このコーティング能力はウェブの速度220m/分でほぼ10g/m2であり、ウェブ速度470m/min で5g/m2であった。コーティング配合物の固体含有率は40%であった。このテストはこの方法の最高性能値を決定することをねらったものでない。
【0071】
噴霧コーティングはコーティング配合物の粒子によって噴霧位置の雰囲気が甚だしく汚れることにより阻害される。制御された方法で捕集しない限り、コーティングの配合物の小さな液滴の微粒化噴霧は気流と共にいたるところに拡がる。更に、移動するウェブの表面と共に移動する空気被膜は埃と共に引きずられる傾向がある。テストでの走行の場合には、空気被膜を処理するためポリマーシートから成るブレードを使用した。
【0072】
噴霧がウェブ表面に衝突する前に、移動する空気被膜がコーティング配合物噴霧を奪い去るのを防止するため、特にウェブが高速の場合には噴霧液滴に与えられる運動のエネルギーを十分に大きくすることが必要である。
【0073】
テスト走行において、単位時間当たりのノズルの性能を測定した。ウェブに付着しているコーティング配合物の量が知られている時は、周囲に失われた部分を計算することができる。吸引ファンの能力調整は加えたコーティングの重量に著しく影響を及ぼすことがわかった。吸引を強くすればする程、ウェブの表面に被着するコーティングを少なくすることができる。
【0074】
2個の異なる形式のノズルでノズルの能力を測定した。ノズル法規FF-610は60°の噴霧角、0.254mm(0.01インチ) のノズルオリフィス直径のノズルを示している。テストを行った他のノズルは同一の噴霧角で0.305mm(0.012 インチ) のノズルオリフィス直径であった。
【0075】
実際のテストは160ミリバールの圧力でFF-610ノズルについて行われ、ノズル出力は湿潤コーティング配合物の7.5g/秒であった。種々のウェブ速度でのコーティング効率(噴霧したコーティング配合物の全量に対するウェブに付着されたコーティング配合物の量)は表1のように計算される。
【0076】
【表1】

【0077】
表から明らかなように、コーティング効率は83〜93%の間で変化した。平均して、噴霧コーティング配合物の損失は12%であった。
ウェブはベースウェイト、灰分、及びキャリパのウェブ幅方向におけるプロフィル(断面輪郭)について測定した。測定を早くするため、全部で5個のプロフィルを同一のプロフィルプロット図上に順次プリントした。
【0078】
測定結果は、個々のノズルの扇形の噴霧パターンが非常に明瞭に検出されるように残っており、コーティングの重量のプロフィルはピークの部分があることがわかった。称呼のコーティング重量からのプロフィルのずれは側部について約6g/m2にもなる。ピーク値は扇形の端縁の交差点でコーティング重量プロフィルに見られる。コーティングプロフィルの試験は全体のコーティング重量に対してピーク値からピーク値までのずれは40〜60%である。しかし、プロフィルの誤差はでき上がった製品では特に眼で見得るものでなく、このことはコーティングの隠蔽力が良好であることを示していることが興味深く観察されている。噴霧の端縁の区域は噴霧の角度を広くすることによって平滑に混在させることができ、ウェブ速度が一層高速の時に必要な非常に多くの数の噴霧帯域は扇形の交差誤差を最終的に著しく減少させる。ウェブ速度が遅いと、単一の適用帯域の誤差が過大に顕著になるのを防止するため低出力のノズルを使用することが必要である。ノズルを3列の列に配置した時、ここでテストされたノズルはウェブ速度220m/分で10g/m2のコーティング重量を加えるのに十分である。ウェブ速度440m/分で同一のコーティング重量を加えるには、噴霧コーティング装置としては6列のノズル組立体が必要であり、ウェブ速度880m/分では12列のノズル組立体が必要であるという具合である。このようにして単一のノズルによって生ずるプロフィル誤差はそれぞれ減少する。
【0079】
SymSizerサイズプレスに通した紙のコーティングプロフィル(断面輪郭)にはピーク値はないが、駆動側へ向かう或る量の斜めの部分が見られる。駆動側端縁に非常に密接してコーティング重量プロフィルに顕著な谷間が生ずる。
【0080】
テストの前に、噴霧されたコーティングの表面強度に関して最大の疑問が示された。直観的に、シート表面上のスノーフレークと同様に、コーティングミストは鎮静するものと期待された。しかし、SymSizerサイズプレスに通過させた紙とは相違して、コーティング表面強度に差を見出すことができなかった。また、スーパカレンダ、及び印刷機のロールはコーティング汚れの蓄積が無い状態に留まっていた。更に、このような高いコーティング表面強度であることは、ノズルを出た時、コーティング配合物は位相分離を生じていないことを示した。
【0081】
全規模スーパカレンダ上の噴霧コーティングした紙の走行能力をテストすると共に、SymSizerサイズプレスに通したスーパカレンダ紙の場合の挙動と比較するため、コーティングした紙にスーパカレンダ作用を加えた。種々のグレードの噴霧コーティングした紙をカレンダ上に走行させることは煩瑣でないことがわかった。カレンダロールはコーティングの汚れの蓄積が無い状態に留まっていた。
【0082】
種々のグレードの噴霧コーティングした紙は容易に印刷可能であった。印刷部門から戻されたサンプルに基づいて次の観察を行うことができた。
【0083】
・噴霧コーティングはウェブをコーティングするための今後成長可能な方法である。
・噴霧コーティングした紙を使用しても印刷機のロールのコーティングの汚れはあまりひどくない状態に留まる。
・種々のグレードのトランスファーコーティングされた表面と噴霧コーティングされた表面との間には顕著な差が見られる。これはコーティング重量が多くなると一層顕著である。
・噴霧コーティングは一層平滑な視覚による外観を有するが、トランスファーコーティング紙による程は印刷表面の光沢、及び密度が良くない。
・みかん肌組織はトランスファーコーティングシートで一層顕著である。
・ベースシートのスーパカレンダリングは噴霧コーティング紙の表面品質を明らかに向上させる。
【0084】
噴霧技術によるウェブコーティングの全体の結果はこの方法で以前からあった期待をはるかに上回った。カレンダリング、及び印刷における紙の表面強度はこの方法の更なる発展のためには緊急の必須事項である。少なくとも行ったテストに基づいて判断すれば、コーティング表面の十分な強度は得られるように思われる。
【0085】
SymSizerサイズプレスに通した比較サンプルに視覚で比較したところ、この紙の表面、及び印刷の品質は平滑で有望であるようにすら見えた。視覚的な試験では、噴霧コーティング紙の印刷光沢、及び密度は比較サンプルの品質レベルには及ばなかった。
【0086】
紙の表面は良好に不透明化されており、「クラッカブレッド」効果(シート表面上の大きな液滴のため、コーティングで生ずるスプラッシング)の徴候はなかった。噴霧技術によって加えられたコーティング層の完全に適合する被着に起因し、この方法は若干の特殊な特性を有し、従ってコーティングプロセスに対する或る要求を課していることは明らかである。それ故、ベースシートは最高に平滑な表面を有すべきである。
【0087】
ノズルの作動寿命は、行ったテストの時間内では評価することができなかった。印刷技術で使用された同様のノズルからの経験ではノズルの寿命はむしろ限定されていることを示している。これはノズルの摩損により噴霧角が徐々に狭くなり、ノズルオリフィスは拡大しており、そのため表面品質、及びコーティングプロフィルの両方が損害を受けているためである。従って、コーティング配合物の噴霧におけるノズルのサービス寿命は詳細に算定されることが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明アップリケータ装置を使用して実施する第1コーティングラインの形態を示す。
【図2】本発明アップリケータ装置を使用して実施する第2コーティングラインの形態を示す。
【図3】本発明アップリケータ装置を示す。
【図4】本発明の他のアップリケータ装置を示す。
【図5】本発明の第3のアップリケータ装置を示す。
【図6】本発明の第4のアップリケータ装置を示す。
【図7】本発明の第5のアップリケータ装置を示す。
【図8】本発明の第6のアップリケータ装置を示す。
【図9】本発明の第7のアップリケータ装置を示す。
【図10】本発明アップリケータ装置に使用して適するノズルの直線列を示す。
【図11】本発明の第8のアップリケータ装置を示す。
【図12】本発明の第9のアップリケータ装置を示す。
【図13】コーティング配合物循環システムを示す。
【図14】他のコーティング配合物循環システムを示す。
【図15】最も好適な他のコーティング配合物循環システムを示す。
【符号の説明】
【0089】
1 巻戻し機
2 プリカレンダ
3 噴霧コーターユニット(噴霧コーティングユニット)
4 赤外線乾燥器
5 浮遊乾燥器
6 円筒乾燥器
7 第2噴霧コーターユニット
8 赤外線乾燥器
9 浮遊乾燥器
10 円筒乾燥器
11 機械カレンダ
12 巻取機
13 ソフトニップカレンダ
14 スーパカレンダ
15 バッキングロール
16 アップリケケータユニット
17 ノズル直線列
18 ガイドロール
19 ベルト案内ロール
20 支持ベルト
21 スクレーパ
22 ロボットノズル交換器
23 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、又は板紙の移動するウェブにコーティング配合物をコーティングする装置において、
紙、又は板紙の移動するウェブの表面を支持する支持手段と、
コーティングするアップリケータユニットとを具え、
このアップリケータユニットは、
ウェブの幅にわたり配置された複数個の高圧無気式の噴霧ノズルであって、各噴霧ノズルの噴霧パターンにおける噴霧ノズルから発射される微粒化噴霧がウェブ表面に接触するポイントでの直径がウェブの幅より小さいものとなるよう構成した噴霧ノズルと、
ウェブの支持されていない側の表面に前記複数個の噴霧ノズルを包囲する寸法および形状を有してこれら複数個の噴霧ノズルを包囲するよう位置決めしたノズル包囲体と
により構成した
ことを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記複数個の噴霧ノズルは、少なくとも3個の列に配列し、各列の噴霧ノズルが隣接する列の噴霧ノズルに対して互い違いにずれるよう配置したことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記支持手段をバッキングロールで構成したことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも3個のアップリケータユニットを設けたことを特徴とする請求項記載の装置。
【請求項5】
前記支持手段をベルトで構成したことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも2個のアップリケータユニットを設けたことを特徴とする請求項記載の装置。
【請求項7】
空気ジェットを噴射する空気噴射手段を設け、この空気噴射手段は、コーティングすべきウェブの表面に向けてウェブの移動方向と反対方向に前記空気ジェットを噴射するよう位置決めしたスロットオリフィス開口を有するものとしたことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記ノズル包囲体の側面に配置したエアナイフであって、前記ウェブの表面が前記アップリケータユニットに進入する前にコーティングすべきウェブの表面から空気被膜を除去する該エアナイフを設けたことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記ノズル包囲体の内面にコーティング配合物を送給し、前記ノズル包囲体の内面に溜まったコーティング配合物を捕集するよう構成した少なくとも1個のコーティング配合物送入管を設けたことを特徴とする請求項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−169874(P2007−169874A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29734(P2007−29734)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【分割の表示】特願平9−513998の分割
【原出願日】平成8年10月7日(1996.10.7)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】