説明

移動体の追跡装置、移動体の追跡方法及びプログラム

【課題】画面上を移動する移動体を、処理速度を維持しつつ、精度よく検出する。
【解決手段】差分画像の変化領域が、背景画像としての画像に含まれる特異領域と、撮像画像としての画像に含まれる移動体に対応した領域とで構成される場合に、変化領域を、撮像画像に含まれる移動体に対応した第1領域と、それ以外の第2領域に分割する。そして、撮像画像に含まれる移動体に対応した第1領域の位置情報を移動体の位置情報として検出する。これにより、背景画像に特異領域が含まれていたとしても、差分画像の変化領域に基づいて、撮像画像に含まれる移動体の位置情報を精度よく検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の追跡装置、移動体の追跡方法及びプログラムに関し、更に詳しくは、撮像手段の視野内を移動する移動体を追跡する移動体の追跡装置、撮像手段の視野内を移動する移動体を追跡するための移動体の追跡方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場の監視システムなどでは、自動車などの移動体を撮像した画像に含まれる移動体を特定し、特定した移動体を追跡することで、実際の移動体の位置及び移動速度などを検出する。この移動体の追跡は、例えば、移動体を連続して撮像することにより得られる複数枚の画像それぞれに含まれる移動体の位置を、時系列的に検出することにより行う。
【0003】
画像に含まれる移動体の検出は、例えば撮像された画像と、背景画像との差分画像を生成し、この差分画像に含まれる変化領域を抽出することにより行うことが考えられる。この方法では、背景画像に移動体が含まれていない場合には、変化領域は移動体が写り込んだ領域と等価の領域となる。しかしながら、移動体が移動しているときなどには、背景画像と撮像画像の双方に移動体が含まれることがある。また、移動体が長時間停止していた場合には、背景画像の移動体と重なる領域の更新がなされず、背景画像に、周囲の領域と著しく異なる特異な領域が形成されることがある。この状態のときには、差分画像の変化領域に、背景画像の特異な領域等と、撮像画像の移動体が占める領域との双方が含まれることになってしまう。この場合には、例えば特許文献1に開示された方法などにより、差分画像から抽出された変化領域のうちから、移動体が占める領域を抽出する必要がある。
【0004】
また、差分画像を生成するための背景画像は、移動体が移動する領域の環境の変化に応じて更新する必要がある。このため、背景画像を精度よく更新する技術が種々提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−43383号公報
【特許文献2】特開2001−155163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシステムは、差分画像の変化領域のうち、エッジ成分を多く含む領域、又は所定の長さ以上のエッジを所定の本数以上含む領域を、移動体に対応する移動体領域として検出する。そして、撮像画像中の移動体領域に対応した領域以外の領域を、差分画像を生成したときに用いた背景画像に組み入れることで背景画像の更新を行う。この更新された背景画像は次回の差分画像の生成に用いられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムは、変化領域に現れるエッジを用いて移動体領域を特定するため、移動体の形状などによっては、変化領域から正確に移動体領域を検出することが困難となる場合がある。また、変化領域から正確に移動体領域が検出されなかった場合には、背景画像の更新が正確に行われなくなるという問題も考えられる。
【0008】
特許文献2に記載の装置は、それぞれの画像ごとに時系列的に記憶された画素値の中から、例えばその値が急峻に変化する画素値を除去し、残りの画素値の時間的な変化を示す近似式を算出する。そして、この近似式を用いて背景画像を生成する。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の装置を用いた場合には、背景画像を更新するための処理が複雑になるため、移動体を検出するための処理が煩雑になるという不都合が考えられる。
【0010】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、処理速度を維持しつつ、精度よく移動体を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の移動体の追跡装置は、移動体が移動する移動領域を順次撮像する撮像手段と、移動領域の背景画像と、撮像手段によって撮像された撮像画像との差分画像を生成する差分画像生成手段と、差分画像から移動体が含まれる変化領域を抽出する抽出手段と、変化領域を、移動体の画像を含む第1領域と、第1領域以外の第2領域とに分割する分割手段と、第1領域の位置を検出する検出手段と、撮像画像のうちの、変化領域以外の領域と、第2領域とを、背景画像に組み入れて、背景画像を更新する更新手段と、を備える。
【0012】
また、分割手段は、移動体が停止した状態から移動を開始した場合に、移動体が停止していたときに抽出手段に抽出された変化領域の、移動体の移動方向の大きさよりも、移動体が移動しているときに抽出手段に抽出された変化領域の、移動体の移動方向の大きさの方が大きい場合に、変化領域を分割することとしてもよい。
【0013】
また、分割手段は、移動体が停止していたときに検出手段に検出された位置と、抽出手段に抽出された変化領域の位置とから、移動体の移動量と移動方向とを検出し、変化領域を、変化領域の移動方向とは反対の端部から、移動量に応じた量だけずれた位置までの第1領域と、第1領域以外の第2領域とに分割することとしてもよい。
【0014】
また、分割手段は、変化領域を、移動体の移動方向の端部から、移動体の移動方向とは逆の方向に、移動体が停止していたときに抽出手段に抽出された変化領域の、移動方向の大きさだけ離れた境界で分割することとしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の移動体の追跡方法は、撮像手段に、移動体が移動する移動領域を順次撮像させる工程と、移動領域の背景画像と、撮像手段によって撮像された撮像画像との差分画像を生成する工程と、差分画像から移動体が含まれる変化領域を抽出する工程と、変化領域を、移動体の画像を含む第1領域と、第1領域以外の第2領域とに分割する工程と、第1領域の位置を検出する工程と、撮像画像のうちの、変化領域以外の領域と、第2領域とを、背景画像に組み入れて、背景画像を更新する工程と、を含む。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムは、追跡装置の制御手段に、撮像手段に、移動体が移動する移動領域を順次撮像させる手順と、移動領域の背景画像と、撮像手段によって撮像された撮像画像との差分画像を生成する手順と、差分画像から移動体が含まれる変化領域を抽出する手順と、変化領域を、移動体の画像を含む第1領域と、第1領域以外の第2領域とに分割する手順と、第1領域の位置を検出する手順と、撮像画像のうちの、変化領域以外の領域と、第2領域とを、背景画像に組み入れて、背景画像を更新する手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、処理速度を維持しつつ、精度よく移動体を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る移動体追跡装置のブロック図である。
【図2】画像P1を示す図である。
【図3】画像P2を示す図(その1)である。
【図4】画像P2を示す図(その2)である。
【図5】画像D1を示す図である。
【図6】画像P2を示す図(その3)である。
【図7】画像P01を示す図である。
【図8】画像P02を示す図(その1)である。
【図9】画像D01を示す図(その1)である。
【図10】画像D01を示す図(その2)である。
【図11】変化領域の中心間の差を説明するための図である。
【図12】第2の実施形態に係る移動体追跡装置のブロック図である。
【図13】移動体追跡装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図11を参照しつつ説明する。図1は本実施形態にかかる移動体追跡装置10の概略的な構成を示すブロック図である。移動体追跡装置10は、例えば撮像装置によって順次撮像される画像に含まれる移動体の位置を検出し、検出した移動体の位置を外部装置などに出力する装置である。この移動体追跡装置10は、図1に示されるように、撮像装置20と、撮像装置20の視野内を移動する移動体の位置を検出し出力する検出装置30とを有している。
【0020】
撮像装置20は、被写体を撮像することにより取得した画像を電気信号に変換して出力するCCDカメラを含んで構成されている。この撮像装置20は、例えば駐車場などに設置され、視野内を移動する車両などの移動体を含む画像を順次撮像し出力する。
【0021】
図2は、一例として撮像装置20によって撮像された画像P1を示す図である。図2の画像P1を参照するとわかるように、撮像装置20は、視野内に駐車場へのゲート60を含むように配置されている。そして、所定のレートで視野内の移動体を含む画像を順次撮像し出力する。
【0022】
図1に戻り、検出装置30は、記憶部31、差分画像生成部32、変化領域抽出部33、変化領域分割部34、背景画像更新部35、及び位置検出部36を含んで構成されている。
【0023】
記憶部31は、撮像装置20から順次出力される画像に関する情報を時系列的に記憶する。
【0024】
差分画像生成部32は、背景画像と撮像装置20よって撮像された画像とに差分処理を施すことにより、差分画像を生成する。例えば、移動体追跡装置10が起動された後、最初に撮像装置20から図2に示される移動体50を含まない画像P1が記憶部31に出力され、次に、図3に示される移動体50を含む画像P2が記憶部31に出力された場合には、差分画像生成部32は、背景画像としての画像P1と、画像P2とに差分処理を施し、二値化された差分画像を生成する。
【0025】
説明の便宜上、図3における移動体50を、図4に示されるように長方形で示すと、差分画像は、図5に示されるように、画像P2に含まれる移動体50に対応した部分が変化領域R1となった画像D1のようになる。
【0026】
差分画像生成部32は、差分画像の生成が完了すると、この差分画像としての画像D1を記憶部31へ保存するとともに、変化領域抽出部33に対して、差分画像の生成が完了したことを通知する。
【0027】
図1に戻り、変化領域抽出部33は、差分画像の生成が完了した旨の通知を受けると、記憶部31に記憶された差分画像としての画像D1から、変化領域R1を抽出する。
【0028】
背景画像更新部35は、背景画像に、撮像画像から変化領域R1に対応した領域を除いた領域を組み入れることにより、背景画像を更新する。
【0029】
例えば、背景画像更新部35は、図6を参照するとわかるように、画像P2から、画像D1の変化領域R1に対応した領域F1を除外し、残りの領域を画像P1に組み入れて新たな背景画像を生成する。
【0030】
位置検出部36は、記憶部31に記憶された差分画像から、変化領域の位置情報を検出し出力する。例えば差分画像が、図5に示される画像D1である場合には、位置検出部36は、変化領域R1の位置情報を検出し出力する。
【0031】
上述のように背景画像が更新される場合には、移動体50が昼夜にかけて停止したままだと、背景画像としての画像P1は、移動体に対応する領域以外の部分のみが何度も更新される。これにより、背景画像としての画像P1は、例えば、図7に示される画像P01のように、移動体領域に対応する領域G1が、他の更新された領域に対して、例えば輝度等が著しく異なる特異な領域となる。
【0032】
このような背景画像としての画像P01と、上述の一昼夜停止していた移動体50が移動を開始した直後に撮像された画像とから差分画像を生成すると、変化領域には、領域G1に対応する領域と、移動体50に対応する領域とが混在することとなる。そこで、本実施形態にかかる追跡装置10は、変化領域から移動体50に対応する領域を抽出するために、変化領域分割部34を備えている。以下、背景画像が図7に示される画像P01であり、画像P01の領域G1に対応する位置に停止していた移動体50が移動を開始した直後に撮像された画像が図8に示される画像P02である場合の処理について説明する。
【0033】
差分画像生成部32は、図7に示される背景画像としての画像P01と、図8に示される画像P02とに差分処理を施し、図9に示されるような二値化された差分画像としての画像D01を生成する。この画像D01の変化領域R2には、背景画像としての画像P01に含まれる領域G1に対応した部分と、画像P02に含まれる移動体50に対応した部分とが含まれる。
【0034】
差分画像生成部32は、差分画像の生成が完了すると、この差分画像としての画像D01を記憶部31へ保存するとともに、変化領域抽出部33に対して、差分画像の生成が完了したことを通知する。
【0035】
図1に戻り、変化領域抽出部33は、差分画像の生成が完了した旨の通知を受けると、記憶部31に記憶された差分画像としての画像D01から、変化領域R2を抽出する。変化領域R2は、背景画像としての画像P01に含まれる領域G1と、画像P02に含まれる移動体50の双方に対応する領域である。このため、停止していた移動体50が+X方向へ移動したときの距離をαとすると、変化領域R2のX軸方向の大きさはT+α(≧T)となる。変化領域抽出部33は、例えば背景画像としての画像P01に含まれる領域G1と、変化領域R2とのサイズが異なる場合に、変化領域に関する情報を変化領域分割部34へ出力する。
【0036】
変化領域分割部34は、変化領域抽出部33によって抽出された変化領域を、撮像された画像に含まれる移動体に対応する第1領域と、それ以外の第2領域に分割する。
【0037】
例えば、変化領域分割部34は、図5に示される画像D1に含まれる、移動体50のみに対応する変化領域R1のX軸方向の大きさと、図9に示される画像D01に含まれる、変化領域R2のX軸方向の大きさとを比較する。そして、変化領域R1の大きさよりも、変化領域R2の大きさの方が大きい場合に、変化領域R2の分割を行う。
【0038】
変化領域R1のX軸方向の大きさをTとし、停止位置からの移動体50の移動量をα(≧0)とすると、変化領域R2のX軸方向の大きさはT+αとなる。変化領域分割部34は、αが0より大きくなった場合、すなわち移動体が移動を開始した場合に、変化領域R2を、移動体50の移動方向の端からT隔てた境界で分割する。
【0039】
具体的には、変化領域R2の分割は、図10を参照するとわかるように、変化領域R2の+X側端部から−X方向へT隔てた位置の境界線で、変化領域R2を、画像P02に含まれる移動体50に対応する第1領域A1と、それ以外の第2領域A2とに分割する。なお、図11を参照するとわかるように、移動体50の移動方向は、例えば画像D01の変化領域R2の中心の位置座標と、画像D01の1フレーム前に生成された差分画像としての画像D02の変化領域R3との位置座標との差Aに基づいて検出することができる。
【0040】
変化領域分割部34は、変化領域を第1領域A1と第2領域A2に分割すると、第1領域A1と第2領域A2とに関する情報を背景画像更新部35に出力する。
【0041】
図1に戻り、背景画像更新部35は、背景画像に、撮像画像から第1領域以外の領域を除いた領域を組み入れることにより、背景画像を更新する。
【0042】
例えば、差分画像が、図7に示される背景画像としての画像P01と、図8に示される画像P02とによって生成された場合には、図8に示される画像P02から、図10の第1領域A1に対応する領域を除いた領域を、画像P01に組み入れて新たな背景画像を生成する。背景画像更新部35は、新たに生成した背景画像を以降の差分処理を行う画像として、記憶部31へ保存する。
【0043】
位置検出部36は、図10を参照するとわかるように、変化領域R2の分割が行われた場合に、変化領域R2に含まれる第1領域A1の中心の位置座標を検出し、外部へ出力する。
【0044】
以上説明したように、本第1の実施形態では、変化領域が、背景画像としての画像に含まれる領域G1と、撮像画像としての画像に含まれる移動体50に対応した領域とで構成される場合に、変化領域が、移動体50に対応した第1領域A1と、それ以外の第2領域A2に分割される。そして、撮像画像に含まれる移動体に対応した第1領域の位置情報(画像における位置座標)が移動体の位置情報として検出され出力される。
【0045】
これによれば、移動体が長時間停止することなどにより、背景画像に長時間更新されない特異な領域G1が存在したとしても、差分画像の変化領域に基づいて、撮像画像に含まれる移動体の位置情報を精度よく検出することができる。
【0046】
また、本第1の実施形態では、変化領域が、背景画像の特異な領域G1と、撮像画像としての画像に含まれる移動体50に対応した領域とで構成される場合に、変化領域が、撮像画像に含まれる移動体50に対応した第1領域と、それ以外の第2領域に分割される。そして、撮像画像中の第1領域A1に対応する領域以外の部分のみが、背景画像に組み入れられることにより、背景画像の更新が順次行われる。これにより、背景の更新を、複雑な処理を行うことなく実行することが可能となる。
【0047】
なお、本第1の実施形態では、変化領域分割部34は、変化領域R2の+X側端部から−X方向へT隔てた位置の境界線で、変化領域R2を、移動体50に対応する第1領域A1と、それ以外の第2領域A2とに分割した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図11を参照するとわかるように、画像D01の変化領域R2の中心の位置座標と、画像D01の1フレーム前に生成された差分画像としての画像D02の変化領域R3との位置座標との差Aを算出し、変化領域R2の−X側端から、差Aによって決定される量だけ+X側にずれた境界によって、変化領域R2を第1領域A1と第2領域A2とに分割してもよい。
【0048】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図12及び図13を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
【0049】
本実施形態にかかる移動体追跡装置10は、検出装置30が、一般的なコンピュータ、又はワークステーションなどの装置と同様の構成によって実現されている点で、第1の実施形態にかかる移動体追跡装置10と相違している。
【0050】
図12は、移動体追跡装置10の物理的な構成を示すブロック図である。図12に示されるように、移動体追跡装置10は、撮像装置20と、コンピュータからなる検出装置30とから構成されている。
【0051】
検出装置30は、CPU(Central Processing Unit)30a、主記憶部30b、補助記憶部30c、表示部30d、入力部30e、インターフェイス部30f、及び上記各部を相互に接続するシステムバス30gを含んで構成されている。
【0052】
CPU30aは、補助記憶部30cに記憶されているプログラムに従って、撮像装置20によって撮像された画像に対して、後述する画像処理を実行する。
【0053】
主記憶部30bは、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成され、CPU30aの作業領域として用いられる。
【0054】
補助記憶部30cは、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリを含んで構成されている。この補助記憶部30cは、CPU30aが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、撮像装置20から出力される画像情報、及びCPU30aによる処理結果などを含む情報を順次記憶する。
【0055】
表示部30dは、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などを含んで構成され、CPU30aの処理結果を表示する。本実施形態では、撮像装置20によって撮像された画像に対する処理が実行されるごとに、その処理結果としての画像などが表示される。
【0056】
入力部30eは、キーボードやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成されている。オペレータの指示は、この入力部30eを介して入力され、システムバス30gを経由してCPU30aに通知される。
【0057】
インターフェイス部30fは、シリアルインターフェイスまたはLAN(Local Area Network)インターフェイス等を含んで構成されている。撮像装置20は、インターフェイス部30fを介してシステムバス30gに接続される。
【0058】
図13のフローチャートは、CPU30aによって実行されるプログラムの一連の処理アルゴリズムに対応している。以下、図13を参照しつつ、検出装置30が実行する処理について説明する。なお、この処理は、移動体追跡装置10の電源が投入された後に、CPU30aが、補助記憶部30cから読み出したプログラムに従って、主記憶部30b、補助記憶部30c、表示部30d、インターフェイス部30fを統括的に制御することにより実現される。前提として、補助記憶部には、背景画像が予め保存されているものとする。
【0059】
まず、最初のステップS101では、CPU30aは、撮像装置20から出力された画像と、補助記憶部30cに保存された背景画像の差分画像を生成する。
【0060】
例えば、背景画像が図2に示される画像P1であり、撮像装置20から図4に示される移動体50を含む画像P2が出力された場合には、CPU30aは、背景画像としての画像P1と、画像P2とに差分処理を施し、図5に示される画像D1を生成する。一方、背景画像が図7に示される画像P01であり、撮像装置20から、例えば図8に示される移動体50を含む画像P02が出力された場合には、CPU30aは、背景画像としての画像P01と、画像P02とに差分処理を施し、図9に示される画像D01を生成する。
【0061】
次のステップS102では、CPU30aは、差分画像から、変化領域を抽出する。例えば、差分画像が図5に示される画像D1である場合には、CPU30aは、画像D1から変化領域R1を抽出する。また、差分画像が図9に示される画像D01である場合には、CPU30aは、画像D01から変化領域R2を抽出する。
【0062】
次のステップS103では、CPU30aは、変化領域の大きさがTより大きいか否かを判断する。
【0063】
図5に示される変化領域R1は、撮像画像P1に含まれる移動体50にのみ対応する領域である。このため、変化領域R1の、移動体50の移動方向となるX軸方向の大きさは、移動体50の移動方向の大きさ(X軸方向の大きさ)に等しいTとなる。また、図9に示される変化領域R2は、図7に示される背景画像としての画像P01に含まれる領域G1と、図8に示される画像P02に含まれる、移動を開始した移動体50の双方に対応する領域である。この場合は、変化領域R2の大きさはT+αとなる。
【0064】
したがって、ステップS102で抽出された変化領域が変化領域R1である場合は、ここでの判断は否定され、CPU30aは、ステップS105へ移行する。一方、ステップS102で抽出された変化領域が変化領域R2である場合は、ここでの判断は肯定され、CPU30aは、次のステップS104へ移行する。
【0065】
次のステップS104では、CPU30aは、抽出した変化領域を、撮像された画像に含まれる移動体に対応する第1領域と、それ以外の第2領域に分割する。
【0066】
例えば、CPU30aは、図10を参照するとわかるように、変化領域R2の+X側端部から−X方向へT隔てた位置の境界線で、変化領域R2を、画像P02に含まれる移動体50に対応する第1領域A1と、それ以外の第2領域A2とに分割する。
【0067】
次のステップS105では、CPU30aは、背景画像の更新を行う。例えば、差分画像が、図2に示される背景画像としての画像P1と、図4に示される画像P2とによって生成された場合には、ステップS104での判断が否定され、ステップS105の処理は行われない。この場合には、CPU30aは、図6に示される画像P2上の領域F1を除いた領域を、画像P1に組み入れて新たな背景画像を生成する。
【0068】
一方、差分画像が、図7に示される背景画像としての画像P01と、図8に示される画像P02とによって生成された場合には、CPU30aは、図10に示される第1領域A1に相当する画像P2上の領域を除いた領域を、背景画像としての画像P01に組み入れて新たな背景画像を生成する。
【0069】
次のステップS106では、CPU30aは、変化領域或いは変化領域に含まれる第1領域の位置情報を出力する。
【0070】
例えば、CPU30aは、図5を参照するとわかるように、変化領域R1の分割が行われなかった場合には、変化領域R1の中心の位置座標を検出し、外部へ出力する。また、CPU30aは、図10を参照するとわかるように、変化領域R2の分割が行われた場合には、変化領域R2に含まれる第1領域A1の中心の位置座標を検出し、外部へ出力する。
【0071】
以降、CPU30aは、ステップS101〜ステップS106までの処理を繰り返し実行する。
【0072】
以上説明したように、本第2の実施形態では、変化領域が背景画像としての画像に含まれる領域G1と、撮像画像としての画像に含まれる移動体50に対応した領域とで構成される場合に、変化領域が、移動体50に対応した第1領域A1と、それ以外の第2領域A2に分割される。そして、撮像画像に含まれる移動体に対応した第1領域の位置情報(画像における位置座標)が移動体の位置情報として検出され出力される。
【0073】
これによれば、移動体が長時間停止することなどにより、背景画像に長時間更新されない特異な領域G1が存在したとしても、差分画像の変化領域に基づいて、撮像画像に含まれる移動体の位置情報を精度よく検出することができる。
【0074】
また、本第2の実施形態では、変化領域が、背景画像の特異な領域G1と、撮像画像としての画像に含まれる移動体50に対応した領域とで構成される場合に、変化領域が、撮像画像に含まれる移動体50に対応した第1領域と、それ以外の第2領域に分割される。そして、撮像画像中の第1領域A1に対応する領域以外の部分のみが、背景画像に組み入れられることにより、背景画像の更新が順次行われる。これにより、背景の更新を、複雑な処理を行うことなく実行することが可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。
【0076】
例えば、上記各実施形態では、撮像装置20の視野内を1つの移動体50のみが移動する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、撮像装置20の視野内を複数の移動体が移動する場合にも好適である。その場合には、変化領域のサイズ、移動方向に応じて、前後して撮像される画像における複数の変化領域それぞれの紐つけを行う。これにより、複数の移動体の追跡が可能となる。
【0077】
また、移動体が車両ではない歩行者などである場合には、差分画像から抽出された変化領域のサイズや、変化領域に含まれる第1領域のサイズが、所定のサイズよりも小さくなる。この場合には、当該移動体の追跡を中止することとしてもよい。これにより、視野内の他の移動体を抽出する際にハンドリングするデータ量が少なくなるため、追跡の効率化を図ることができる。
【0078】
なお、上記各実施形態に係る検出装置30の機能は、専用のハードウェアによっても、また、通常のコンピュータシステムによっても実現することができる。
【0079】
また、第2の実施形態において検出装置30の補助記憶部30cに記憶されているプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することとしてもよい。
【0080】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしても良い。
【0081】
また、プログラムは、通信ネットワークを介して転送しながら起動実行することとしてもよい。
【0082】
また、プログラムは、全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報を通信ネットワークを介して送受信しながら、上述の画像処理を実行することとしてもよい。
【0083】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等しても良い。
【0084】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の移動体追跡装置、移動体追跡方法及びプログラムは、移動体を追跡するのに適している。
【符号の説明】
【0086】
10 移動体追跡装置
20 撮像装置
30 検出装置
30a CPU
30b 主記憶部
30c 補助記憶部
30d 表示部
30e 入力部
30f インターフェイス部
30g システムバス
31 記憶部
32 差分画像生成部
33 変化領域抽出部
34 変化領域分割部
35 背景画像更新部
36 位置検出部
50 移動体
60 ゲート
A1 第1領域
A2 第2領域
R1,R2,R3 変化領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する移動領域を順次撮像する撮像手段と、
前記移動領域の背景画像と、前記撮像手段によって撮像された撮像画像との差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記差分画像から前記移動体が含まれる変化領域を抽出する抽出手段と、
前記変化領域を、前記移動体の画像を含む第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とに分割する分割手段と、
前記第1領域の位置を検出する検出手段と、
前記撮像画像のうちの、前記変化領域以外の領域と、前記第2領域とを、前記背景画像に組み入れて、前記背景画像を更新する更新手段と、
を備える移動体の追跡装置。
【請求項2】
前記分割手段は、
前記移動体が停止した状態から移動を開始した場合に、
前記移動体が停止していたときに前記抽出手段に抽出された前記変化領域の、前記移動体の移動方向の大きさよりも、
前記移動体が移動しているときに前記抽出手段に抽出された前記変化領域の、前記移動体の移動方向の大きさの方が大きい場合に、前記変化領域を分割する請求項1に記載の追跡装置。
【請求項3】
前記分割手段は、
前記移動体が停止していたときに前記検出手段に検出された位置と、前記抽出手段に抽出された前記変化領域の位置とから、前記移動体の移動量と移動方向とを検出し、
前記変化領域を、該変化領域の前記移動方向とは反対の端部から、前記移動量に応じた量だけずれた位置までの前記第1領域と、前記第1領域以外の前記第2領域とに分割する請求項2に記載の追跡装置。
【請求項4】
前記分割手段は、前記変化領域を、前記移動体の移動方向の端部から、前記移動体の移動方向とは逆の方向に、前記移動体が停止していたときに前記抽出手段に抽出された前記変化領域の、前記移動方向の大きさだけ離れた境界で分割する請求項1又は2に記載の追跡装置。
【請求項5】
撮像手段に、移動体が移動する移動領域を順次撮像させる工程と、
前記移動領域の背景画像と、撮像手段によって撮像された撮像画像との差分画像を生成する工程と、
前記差分画像から前記移動体が含まれる変化領域を抽出する工程と、
前記変化領域を、前記移動体の画像を含む第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とに分割する工程と、
前記第1領域の位置を検出する工程と、
前記撮像画像のうちの、前記変化領域以外の領域と、前記第2領域とを、前記背景画像に組み入れて、前記背景画像を更新する工程と、
を含む移動体の追跡方法。
【請求項6】
追跡装置の制御手段に、
撮像手段に、移動体が移動する移動領域を順次撮像させる手順と、
前記移動領域の背景画像と、撮像手段によって撮像された撮像画像との差分画像を生成する手順と、
前記差分画像から前記移動体が含まれる変化領域を抽出する手順と、
前記変化領域を、前記移動体の画像を含む第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とに分割する手順と、
前記第1領域の位置を検出する手順と、
前記撮像画像のうちの、前記変化領域以外の領域と、前記第2領域とを、前記背景画像に組み入れて、前記背景画像を更新する手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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